(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的の一つは、軽量(低密度)でありながら優れた剛性(曲げ弾性率)及び耐衝撃性を有する複合材料であって、特に低温(例えば−15℃)での耐衝撃性に優れる複合材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面は、マトリックス樹脂、並びに、上記マトリックス樹脂中に分散したガラスファイバー及びガラスバルーンを含む複合材料に関するものであり、上記ガラスファイバーの70%以上は1.0mm以上の繊維長を有し、上記ガラスバルーンのメジアン径は10μm以上40μm以下である。
【0007】
このような複合材料によれば、密度の小ささと、曲げ弾性率及び耐衝撃性等の優れた機械的特性とを両立することができ、特に低温(例えば−15℃)での優れた耐衝撃性を得ることができる。
【0008】
一実施形態において、上記ガラスファイバーの含有量C
Fに対する上記ガラスバルーンの含有量C
Bの質量比C
B/C
Fは0.1以上10以下であってよい。このような質量比で上記特定のガラスファイバー及びガラスバルーンを含有することで、低温での耐衝撃性に一層優れる複合材料が得られる。
【0009】
また、一実施形態において、上記ガラスファイバーの含有量は、上記複合材料の全量基準で1質量%以上40質量%以下であってよい。また、一実施形態において、上記ガラスバルーンの含有量は、上記複合材料の全量基準で1質量%以上30質量%以下である。これらの複合材料によれば、一層の軽量化及び機械的特性の向上が実現される。
【0010】
また、一実施形態において、上記ガラスバルーンの90体積%残存耐圧強度は、50MPa以上であってよい。このようなガラスバルーンによれば、より確実に軽量化及び機械的特性の向上の両立を実現できる。
【0011】
また、一実施形態において、上記ガラスバルーンの真密度は0.3g/cm
3以上0.9g/cm
3未満であってよい。このようなガラスバルーンによれば、複合材料の一層の軽量化が実現できる。
【0012】
また、一実施形態において、複合材料は、ガラスファイバーの繊維束にベース樹脂を含浸させた樹脂ペレットとガラスバルーンを含有する樹脂材料とを溶融混練して得られるものであってよい。このような溶融混練によれば、ガラスファイバーの繊維長を長く維持したまま複合材料中に分散させることができる。そのため、このようにして得られた複合材料によれば、一層優れた機械的特性(特に、低温での耐衝撃性)が得られる。
【0013】
また、一実施形態において、複合材料は、上記樹脂ペレットと上記樹脂材料との溶融混練物を射出成形してなるものであってもよい。このような射出成形によれば、複合材料中に繊維長の長いガラスファイバーを多く分散させた状態で、容易に複合材料を成形することができる。そのため、このようにして得られた複合材料は、所望の形状に成形されており、且つ、一層優れた機械的特性(特に低温での耐衝撃性)を有するものとなり得る。
【0014】
本発明の他の側面は、上記複合材料を含む成形品に関する。本発明に係る成形品は、上記複合材料の採用によって軽量化が図られており、且つ優れた機械的特性を有する。また、成形品は、低温での耐衝撃性に優れた上記複合材料を用いているため、自動車用部材等の低温環境下での使用が想定される用途に好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、軽量(低密度)でありながら曲げ弾性率及び耐衝撃性(特に、低温での耐衝撃性)に優れる成形品を形成可能な複合材料が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の好適な一実施形態について以下に説明する。
【0017】
(複合材料)
本実施形態に係る複合材料は、マトリックス樹脂並びにマトリックス樹脂中に分散したガラスファイバー及びガラスバルーンを含む。また、この複合材料において、ガラスファイバーの70%以上は、1.0mm以上の繊維長を有しており、ガラスバルーンのメジアン径は、10μm以上40μm以下である。
【0018】
本実施形態に係る複合材料は、このような特定のガラスファイバー及びガラスバルーンがマトリックス樹脂中に分散されたものであるため、軽量でありながら優れた機械的特性(例えば、曲げ強度、曲げ弾性率、引張強度、耐衝撃性)を有する。特に、本実施形態に係る複合材料は、低温(例えば−15℃)での耐衝撃性に優れており、自動車用部材等の低温環境下での使用が想定される用途に好適に用いることができる。
【0019】
複合材料は、その製造時に混練等の操作を行って、マトリックス樹脂中にガラスファイバー及びガラスバルーンを分散させることが一般的であるが、従来の方法では、この混練時にガラスファイバーは破砕して、繊維長が混練前と比べて著しく短くなる。これに対して、本実施形態では、後述する特定の溶融混練によって、ガラスファイバーの70%以上が1.0mm以上の繊維長を有するように、複合材料を製造している。
【0020】
また、従来の方法では、混練時のガラスファイバーの破砕による繊維片が、ガラスバルーンと接触してガラスバルーンを破壊すること等が考えられる。これに対して、本実施形態では、ガラスファイバーの破砕が従来の方法と比較して抑制されているため、ガラスバルーンの破壊も抑制されていると考えられる。
【0021】
このように、本実施形態に係る複合材料は、ガラスファイバーの70%以上が1.0mm以上の繊維長を有するように製造されたものであり、且つ、メジアン径が10μm以上40μm以下のガラスバルーンを有するものである。そして、本実施形態に係る複合材料では、これらの特徴を備えることにより、軽量化と機械的特性の向上(特に低温での耐衝撃性の向上)との両立という優れた効果が奏される。
【0022】
以下、本実施形態に係る複合材料に含まれる各成分について詳述する。
【0023】
マトリックス樹脂は、ガラスファイバー及びガラスバルーンを支持する母材である。マトリックス樹脂は、複合材料の用途等に応じて様々な樹脂から適宜選択することができる。
【0024】
マトリックス樹脂は、溶融混練によるガラスファイバー及びガラスバルーンの分散が容易となる観点から、熱可塑性樹脂であることが好ましい。
【0025】
好ましいマトリックス樹脂としては、ポリオレフィン樹脂(例えば、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、ポリプロピレン樹脂(PP))、ポリオレフィンコポリマー樹脂(例えば、エチレン−ブテン樹脂、エチレン−オクテン樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂)、ポリスチレン樹脂、ポリスチレンコポリマー樹脂(例えば、耐衝撃性ポリスチレン樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマー樹脂)、ポリアクリレート樹脂、ポリメタクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、フルオロポリマー樹脂、液晶ポリマー樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリウレタン樹脂、熱可塑性エラストマー樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ビニルエステル樹脂等が挙げられる。また、マトリックス樹脂は上記のうち一種を単独で用いても、二種以上を併用してもよい。
【0026】
マトリックス樹脂は、ポリオレフィン樹脂の中で最も工業的に広く使用されているポリプロピレン樹脂を含むことが好ましい
【0027】
マトリックス樹脂の含有量は、複合材料の全量基準で50〜95質量%であることが好ましく、より好ましくは55〜91質量%である。
【0028】
ガラスファイバーは、ガラスを融解して引き伸ばし、繊維状に成形したものである。本実施形態において、複合材料中に含まれるガラスファイバーの70%以上(好ましくは74%以上)は、1.0mm以上の繊維長を有している。
【0029】
上述のとおり、一般的に複合材料中のガラスファイバーは、マトリックス樹脂中にガラスファイバーを分散させる際にその一部又は全部が破砕され、その繊維長が配合前と比較して短くなっている。本実施形態においては、この破砕の程度を、1.0mm以上の繊維長を有するガラスファイバーが全ガラスファイバーの70%以上となるように調整することで、特定のメジアン径を有するガラスバルーンとの組合せにおいて上述の優れた効果を得ることができる。
【0030】
ここで、全ガラスファイバーに対する1.0mm以上の繊維長を有するガラスファイバーの割合(本数割合)は、以下の方法で測定することができる。まず、複合材料からなる試験片を燃焼させて、ガラスファイバー及びガラスバルーンを灰分として取り出す。次いで、この灰分の約1gを300ml程度の水に添加し、超音波分散をかける。この超音波分散で、密度差によりガラスファイバーを沈殿させ、ガラスバルーンを水面に浮かせ、ガラスバルーンのみを排除する。この操作を複数回繰り返してガラスバルーンを除去した後、ガラスファイバーをスライドグラス上に一定量移し、乾燥させる。乾燥後、デジタルマイクロスコープにて観察してガラスファイバーの繊維長を測定することで、繊維長が1.0mm以上のガラスファイバーの割合を求めることができる(例えば、100本のガラスファイバーのうち繊維長が1.0mm以上のガラスファイバーの本数を、繊維長が1.0mm以上のガラスファイバーの割合(%)とすることができる。)。
【0031】
また、ガラスファイバーはその50%以上が1.5mm以上の繊維長を有することが好ましい。全ガラスファイバーに対する1.5mm以上の繊維長を有するガラスファイバーの割合は、好ましくは50%以上である。
【0032】
複合材料中のガラスファイバーの繊維長の上限は、特に制限されないが、例えば、8mm以下であってよい。なお、複合材料中のガラスファイバーの繊維長の上限は、配合前のガラスファイバーの繊維長であってよい。
【0033】
ガラスファイバーの繊維径は、例えば5μm以上であってよく、10μm以上であってもよい。また、ガラスファイバーの繊維径は、30μm以下であってよく、20μm以下であってもよい。
【0034】
ガラスファイバーの含有量は、複合材料の全量基準で1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることがさらに好ましい。また、ガラスファイバーの含有量は、複合材料の全量基準で40質量%以下であることが好ましく、35質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましい。ガラスファイバーの含有量を1質量%以上とすることで、十分な機械的特性をより確実に得ることができる。また、ガラスファイバーの含有量を40質量%以下とすることで十分な軽量化の効果をより確実に得るとともに、優れた成形性を維持することができる。すなわち、ガラスファイバーの含有量を上記範囲とすることで、一層の軽量化及び機械的特性の向上が実現される。
【0035】
ガラスバルーンは、中空球状のガラス粉体である。ガラスバルーンは、その密度が小さいため、複合材料の密度を低減させて軽量化させることができる。
【0036】
ガラスバルーンのメジアン径は10μm以上40μm以下である。このようなガラスバルーンによれば、上述の特定のガラスファイバーとの組み合わせにおいて、上述の優れた効果を得ることができる。
【0037】
ガラスバルーンのメジアン径は、好ましくは10μm以上であり、より好ましくは15μm以上である。また、ガラスバルーンのメジアン径は、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは30μm以下である。
【0038】
なお、本明細書中、メジアン径は、ガラスバルーンをその粒子径で2つに分けたとき、その粒子径より小さいガラスバルーンとその粒子径より大きいガラスバルーンとが体積基準で等量となる粒子径をいう。ガラスバルーンのメジアン径は、例えば、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置Partica LA−950V2(株式会社堀場製作所(京都府京都市))により測定することができる。
【0039】
ガラスバルーンは、その90体積%残存耐圧強度が50MPa以上であることが好ましく、100MPa以上であることがより好ましい。90体積%残存耐圧強度が50MPa未満であると、溶融混練におけるガラスバルーンの破壊が生じ易い傾向にある。そして、90体積%残存耐圧強度が50MPa以上であると、ガラスファイバーの70%以上が1.0mm以上の繊維長となるような製造時の混練において、その破壊が十分に抑制されて、複合材料の軽量化が一層顕著に実現される。
【0040】
また、ガラスバルーンの90体積%残存耐圧強度は、300MPa以下であることが好ましく、200MPa以下であることがより好ましい。90%残存耐圧強度が300MPaを超える場合は、ガラスバルーンのガラス厚が厚くなるため、軽量化の効果が十分に得られない場合がある。そして90%残存耐圧強度が300MPa以下であっても、本実施形態に係る複合材料では、その製造時の混練におけるガラスバルーンの破壊を十分に抑制することができる。
【0041】
なお、本明細書中、ガラスバルーンの90体積%残存耐圧強度は、ASTM D3102−78(1982年度版)に準拠して、グリセロールを用いて測定して得られる値である。より具体的には、一定量のガラスバルーンをグリセロールと混合し、空気が入らないように密封したものを測定サンプルとし、該測定サンプルをテストチャンバーにセットする。次いで、徐々に加圧しながら測定サンプル中のガラスバルーンの体積変化を観察し、測定サンプル中のガラスバルーンの残存体積が90体積%となる時(10体積%破壊時)の圧力を測定し、この圧力を90体積%残存耐圧強度とする。
【0042】
ガラスバルーンの真密度は、0.3g/cm
3以上であることが好ましく、0.4g/cm
3以上であることがより好ましい。ガラスバルーンの真密度が0.3g/cm
3以上であると、破壊されにくくなり、上述の好適な耐圧強度を容易に得ることができる。
【0043】
また、ガラスバルーンの真密度は、軽量化効果をより有効に得るために、0.9g/cm
3未満であることが好ましく、0.6g/cm
3以下であることがより好ましい。
【0044】
なお、本明細書中、ガラスバルーンの真密度は、ASTM D2856−94:1998年度版に準拠して測定される真密度であり、例えば、乾式自動真密度計アキュピックII 1340(株式会社島津製作所(京都府京都市))を用いて測定できる。
【0045】
ガラスバルーンの含有量は、複合材料の全量基準で1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることがさらに好ましい。また、ガラスバルーンの含有量は、複合材料の全量基準で40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることがさらに好ましい。ガラスバルーンの含有量を1質量%以上とすることで十分な軽量化効果をより確実に得ることができる。また、ガラスバルーンの含有量を40質量%以下とすることで、ガラスバルーン同士の衝突等によるガラスバルーンの破壊が抑制されて、より有効に本願発明の効果を得られるとともに、より良質な成形品が実現できる。
【0046】
ここで、ガラスファイバーの含有量C
Fに対する上記ガラスバルーンの含有量C
Bの質量比C
B/C
Fは0.1以上10以下であることが好ましい。このような質量比で上記特定のガラスファイバー及びガラスバルーンを含有することで、低温での耐衝撃性に一層優れる複合材料が得られる。比C
B/C
Fは、好ましくは0.2以上であり、より好ましくは0.5以上である。また、比C
B/C
Fは、好ましくは8以下であり、より好ましくは4以下である。これにより上記の効果が一層顕著に奏される。
【0047】
本実施形態に係る複合材料は、例えば、ガラスファイバーの繊維束にベース樹脂を含浸させた樹脂ペレットとガラスバルーンを含有する樹脂材料とを溶融混練して得ることができる。このような溶融混練によれば、ガラスファイバーを、長い繊維長を維持したまま複合材料中に分散させることができる。そのため、このようにして得られた複合材料によれば、一層優れた機械的特性(特に、低温での耐衝撃性)が得られる。
【0048】
ここで樹脂ペレットは、例えば、連続ガラス繊維束を引抜きながら該ガラス繊維束にベース樹脂を含浸させ、繊維方向に垂直に所定の長さで切断して得ることができる。このようにして得られた樹脂ペレットは、略同一の繊維長(切断時の上記所定の長さ)を有する複数のガラスファイバーからなる繊維束にベース樹脂を含浸させた構成を有するということができる。
【0049】
ベース樹脂は、樹脂材料との溶融混練が可能なものであれば特に制限されず、例えば上述したマトリックス樹脂と同様のものを用いることができる。
【0050】
また、本実施形態に係る複合材料は、樹脂ペレットと樹脂材料との溶融混練物を射出成形して得られたものであってよい。このような射出成形によれば、複合材料中に繊維長の長いガラスファイバーを多く分散させた状態で、容易に複合材料を成形することができる。そのため、このようにして得られた複合材料は、所望の形状に成形されており、且つ、一層優れた機械的特性(特に低温での耐衝撃性)を有するものとなり得る。
【0051】
樹脂ペレットと樹脂材料との溶融混練及び射出成形の条件は、得られる複合材料においてガラスファイバーの70%以上が1.0mm以上の繊維長を有するものとなるように、適宜調整することができる。
【0052】
溶融混練及び射出成形は、例えば、公知の射出成形機(例えば、FNX140;日精樹脂工業株式会社(長野県埴科郡坂城町)製)を用いて行うことができる。また、その条件は、例えばマトリックス樹脂がポリプロピレン樹脂である場合には、シリンダー温度約230℃、樹脂温度約230℃、金型温度約50℃、充填速度約10mm/s、スクリュー回転数約80rpmとすることができる。
【0053】
本実施形態に係る樹脂材料は、低密度であり、且つ曲げ強度、曲げ弾性率、引張強度及び耐衝撃性(特に低温での耐衝撃性)に優れる。そのため、本実施形態に係る樹脂材料は、低密度・強度・衝撃性がバランス良く求められる用途に幅広く適用することができる。
【0054】
本実施形態に係る樹脂材料は、例えば、自動車用部材、家電製品、日用品、住宅設備、コンテナ、パレット、容器等の用途に好適に用いることができ、自動車用部材として特に好適に用いることができる。
【0055】
自動車用部材としては、例えば、エンジン用部材、シャシー用部材、外装・車体用部材、内装用部材が挙げられる。
【0056】
すなわち、本実施形態に係る樹脂材料は、例えば、エンジン用部材としてエアダクト、レゾネーター、エアクリーナーケース、ベルトカバー、エンジンカバー、エンジンアンダーカバー等に適用することができる。
【0057】
また、本実施形態に係る樹脂材料は、例えば、シャシー用部材としてブレーキマスターシリンダータンク等に適用することができる。
【0058】
また、本実施形態に係る樹脂材料は、例えば、外装・車体用部材としてバンパー、サイドガードモール、ヘッドランプハウジング、マッドガード、フェンダープロテクター、ウインドヲッシャータンク、シルスボイラー、エアコンケース、エアコンダクト、モーターファン、ファンシュラウド、キッキングプレート、フロントエンドモジュール、バックドアインナー等に適用することができる。
【0059】
また、本実施形態に係る樹脂材料は、例えば、内装用部材としてインストルメントパネル、コンソールボックス、グローブボックス、ドアトリム、ピラートリム、コラムシフトカバー、メーターハウジング、トランクトリム、サンバイザー、バッテリーケース等に適用することができる。
【0060】
(成形品)
本実施形態に係る成形品は、上記複合材料を含む。このような成形品は、上記複合材料を採用しているため、軽量化が図られているとともに、優れた機械的特性を有する。また、この成形品は、上記複合材料が低温での耐衝撃性に特に優れたものであるため、自動車用部材等、低温環境下での使用が想定される用途に好適に用いることができる。
【0061】
本実施形態に係る成形品は例えば、上述した自動車用部材、家電製品、日用品、住宅設備、コンテナ、パレット、容器等として用いることができる。
【0062】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0063】
例えば、本発明の一側面は、ガラスファイバーの70%以上を1.0mm以上の繊維長を有するものとする、複合材料の低温における耐衝撃性の向上方法ということができる。また、本発明の一側面は、ガラスファイバーの70%以上が1.0mm以上の繊維長となるように溶融混練を行う、複合材料の製造材料ということができる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0065】
実施例及び比較例における材料を以下に示す方法で入手した。
成分Aとして、ポリプロピレン(ブロックコポリマー)(曲げ弾性率1326MPa、シャルピー衝撃強度(23℃)8.8kJ/m
2、密度0.9g/cm
3)を、住友化学株式会社(東京都中央区)から入手した(製品名:AZ864)。
【0066】
成分Bとして、成分Aのポリプロピレン及び下記成分Gのガラスバルーンを溶融混練してなる複合材料(密度0.7g/cm
3)を作製した。
【0067】
成分Cとして、ポリプロピレン(ブロックコポリマー)及びガラスファイバーの複合材料(ガラスファイバー60質量%、カット長さ6mm、フィラメント径10数μm、連続繊維(ロービング))を、オーウェンスコーニングジャパン株式会社(東京都港区)から入手した(製品名:LP6010−L8)。
【0068】
成分Dとして、成分Aのポリプロピレン及び下記成分Fのガラスファイバーを溶融混練してなる複合材料を作製した。
【0069】
成分Eとして、ポリプロピレン(ブロックコポリマー)及びガラスファイバーの複合材料(ガラスファイバー30質量%、カット長さ0.3mm、フィラメント径10数μm)を、株式会社プライムポリマー(東京都港区)から入手した(製品名:プライムポリプロR−350G)。
【0070】
成分Fとして、ガラスファイバー(カット長さ3mm、フィラメント径10μm、ガラスチョップドストランド)を日東紡株式会社(福岡県福岡市)から入手した。
【0071】
成分Gとして、ガラスバルーン(真密度0.46g/cm
3、90体積%残存耐圧強度110MPa、メジアン径20μm)を、住友スリーエム株式会社(神奈川県相模原市)から入手した(製品名:3M
TMグラスバブルズiM16K)。
【0072】
(実施例1〜8、比較例1〜3、参考例1)
成分A〜Eのペレットを表1及び表2に記載の配合比(質量%)で均一にドライブレンドした後、射出成形機(FNX140;日精樹脂工業株式会社(長野県埴科郡坂城町)製)に投入して、下記の条件で溶融混練及び射出成形を行い、複合材料からなる試験片を作成した。作成した試験片について、下記の方法で、全ガラスファイバーに対する1.0mm以上、1.5mm以上及び2.0mm以上の繊維長のガラスファイバーの割合、密度、曲げ強度、曲げ弾性率、引張強度、常温(23℃)下での耐衝撃性及び低温(−15℃)下での耐衝撃性を測定した。得られた結果を表3及び表4に示す。
【0073】
(試験片の作成方法)
射出成形機(FNX140;日精樹脂工業株式会社(長野県埴科郡坂城町)製)を用い、ISO0294−1:1996年度版に準拠した成形条件により、シリンダー温度230℃、樹脂温度230℃、金型温度53℃、充填速度10mm/s、スクリュー回転数80rpmにて溶融混練及び射出成形を行い、ISO3167:1993年度版に準拠したA1形の厚さ4mmの多目的試験片を作成した。
【0074】
(ガラスファイバーの繊維長の測定)
試験片を550℃にて3時間燃焼後、ガラスファイバーとガラスバルーンを灰分として取り出した。得られた灰分の約1gを300ml程度の水に添加し、ガラスファイバーとガラスバルーンに分けるため、超音波分散をかけた。密度差でガラスファイバーが沈澱し、ガラスバルーンが水面上に浮いたところで、ガラスバルーンのみを排除した。その後追加で水を添加し、再度超音波分散させ、ガラスバルーンのみを排除し、ガラスバルーンが水面になくなるまでこれを数回繰り返した。その後、ガラスファイバーを水中で分散させながら、スライドグラス上に一定量移し、水分が蒸発するまで乾燥させた。得られたサンプルをデジタルマイクロスコープ30倍の倍率にて観察し、任意に選定した100本のガラス繊維の残存長さの測定を実施した。ガラスファイバー100本中の、1.0mm、1.5mm以上及び2.0mm以上の繊維長のガラスファイバーの本数を求め、%表示した。
【0075】
(密度の測定)
試験片の密度は、ISO1183:1987年度版に準拠して測定した。
(曲げ強度の測定)
試験片の曲げ強度は、ISO178:2003年度版に準拠して測定した。
(曲げ弾性率の測定)
試験片の曲げ弾性率は、ISO178:2003年度版に準拠して測定した。
(引張強度の測定)
試験片の引張強度は、ISO527−1、ISO527−2:1993年度版に準拠して測定した。
【0076】
(常温(23℃)下での耐衝撃性の測定)
試験片の23℃におけるシャルピー衝撃強度は、ISO179:2010年度版に準拠し、1eA(タイプAノッチ)で測定した。
(低温環境(−15℃)下での耐衝撃性の測定)
試験片の−15℃におけるシャルピー衝撃強度は、ISO179:2010年度版に準拠し、1eA(タイプAノッチ)で測定した。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
【表3】
【0080】
【表4】