(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記溶媒が、水、エタノール、イソプロパノール、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、アセトン、およびメチルイソブチルケトンからなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の充填用組成物。
前記溶媒が、水、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートからなる群から選択される、請求項6〜9のいずれか1項に記載の方法。
前記犠牲材料の除去が、加熱により犠牲材料を分解させて除去する方法、プラズマ処理によって除去する方法、犠牲材料を溶解する溶媒によって溶解させて除去する方法、高エネルギー線を照射して除去する方法のいずれかにより行われる、請求項11または12に記載の方法。
前記溶媒が、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルイソブチルケトン、メチルイソブチルケトンとプロピレングリコールモノメチルエーテルとの混合溶媒、またはメチルイソブチルケトンとプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとの混合溶媒である、請求項11〜14のいずれか1項に記載の方法。
前記溶媒が、水、エタノール、イソプロパノール、乳酸エチル、およびプロピレングリコールモノメチルエーテル、およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートからなる群から選択される、請求項17〜22のいずれか1項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明すると以下の通りである。
【0016】
[充填用組成物]
本発明は充填用組成物に関するものである。ここで、充填用組成物とは、基板表面などにあらかじめ存在する空隙に充填するものを意味する。ただし、本発明においては、基板表面などにその組成物を配置し、配置された組成物の層をキャッピング層で被覆したのちにその組成物を除去することによって、キャッピング層によって画成された空隙を形成させるものも包含するものとする。
【0017】
このような充填用組成物は、特定の構造を有するポリマーと、そのポリマーを溶解し得る溶媒とを含んでなる。特定の構造は、下記式(1):
【化2】
で表される繰り返し単位である。
【0018】
式中、R
11は、水素、炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜5のアルキル基、炭素数3〜10、好ましくは炭素数4〜7のシクロアルキル基、炭素数2〜10、好ましくは炭素数2〜5のアルケニル基、炭素数3〜10、好ましくは炭素数4〜7のシクロアルケニル基、炭素数6〜10、好ましくは炭素数6〜8のアリール基、および炭素数2〜5の環状アミン基からなる群から選択される置換基である。これらの基は置換基を有していてもよく、置換基としては、水酸基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルキルカルボキシレート基、スルホ基などが挙げられる。R
11はこれらのうち、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、またはフェニル基が特に好ましい。
【0019】
R
12は、炭素数1〜6、好ましくは炭素数2〜4のアルキレン基、および炭素数2〜6、好ましくは炭素数2〜4のアルケニレン基からなる群から選択される2価の連結基である。これらの連結基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。また、これらの連結基は置換基を有していてもよく、置換基としては水酸基、アミノ基、カルボニル基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルキルカルボキシレート基、スルホ基などが挙げられる。また、これらの連結基を構成するメチレン基−CH
2−のいずれかがエーテル結合またはチオエーテル結合によって置換されていてもよい。R
12は、これらのうち、エチレン基、トリメチレン基(−(CH
2)
3−)、またはプロピレン基(−CH(CH
3)CH
2−)が特に好ましい。
【0020】
このような繰り返し単位を含むポリマーは、式(1)の繰り返し単位のみから構成されるホモポリマーであっても、式(1)以外の繰り返し単位を含むコポリマーであってもよい。また、式(1)で表される繰り返し単位のうち、異なった構造を有する繰り返し単位を2種類以上含むコポリマーであってもよい。これらのうち、本発明において用いるポリマーは、式(1)で表される繰り返し単位の含有率が高いことが好ましい。具体的には、ポリマーに含まれる繰り返し単位の総モル数に対する、式(1)で表される繰り返し単位の含有率が70モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましく、100モル%であることが特に好ましい。
【0021】
式(1)で表される繰り返し単位のみからなるポリマーは、たとえば環状イミノエーテルを開環重合させることによって得ることができる。このような開環重合は任意の様式で行うことができるが、カチオン重合によって反応させることによって、分子量の制御などが容易に行うことができるので好ましい。
【0022】
上記した開環重合に用いられる環状イミノエーテルとしては、たとえば、2−メチルオキサゾリン、2−エチルオキサゾリン、2−n−プロピルオキサゾリン、2−イソプロピルオキサゾリン、2−フェニルオキサゾリン、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−エチルオキサジン、2−オキサゾリン、5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、5−オキサゾロン、2−イミノテトラハイドロフラン、5−メチル−2−オキサゾリン、および2−ピロリジノ−2−オキサゾリンが挙げられる。または以下の式で表されるイミノエーテルを用いることもできる。
【0024】
上記したオキサゾリン誘導体の開環重合により種々のイミノエーテルポリマーが得られる。イミノエーテルポリマーの構造は用いられるオキサゾリン誘導体の種類によって決まるが、イミノエーテルポリマーの具体的な構造としては、たとえば以下のようなものが挙げられる。
【化4】
(式中、nはそれぞれ独立に重合度を表す数である)
【0025】
本発明において用いられるコポリマーが、式(1)以外の構造を有する繰り返し単位を含む場合には、不飽和二重結合を有するモノマーに由来する繰り返し単位を含むことが好ましい。そのようなモノマーは前記したオキサゾリン誘導体と容易に重合させることができる。そのようなポリマーは、ビニルアルコール、アクリル酸、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸、メタクリル酸アルキルエステル、スチレンなどが挙げられる。
【0026】
本発明に用いることができるポリマーの分子量は、目的に応じて任意に調整することができる。一般的には、重量平均分子量が、1,000〜1,000,000であることが好ましく、4,000〜500,000であることがより好ましい。本発明において、重量平均分子量とは、ポリスチレン換算の重量平均分子量をいう。また、組成物を塗布する場合の浸透性や、形成される被膜の均一性などの観点からポリマーの分子量分布は小さいことが好ましい。
【0027】
本発明による充填用組成物は、溶媒を含む。この溶媒は、前記ポリマーを溶解し得ることが必要である。
【0028】
このような溶媒は、たとえば、水、エタノール、イソプロパノール(IPA)、乳酸エチル(EL)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、アセトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルイソブチルカルビノール(MIBC)、メチルアミルケトン(MAK)、γ−ブチロラクトン(GBL)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、シクロヘキサノン、アセトニトリル、トルエンなどが挙げられる。これらのうち、ポリマーの溶解度の観点から水などの極性溶媒が好ましく、塗布性の観点からは水、EL、NMP、GBL、シルオヘキサノンが好ましい。また、必要に応じてこれらの溶媒を2種類以上組み合わせて用いてもよい。たとえば、組成物の空隙への浸透性の観点からは、PGME、PGMEA、MIBK、MIBKとPGMEとの混合溶媒、またはMIBKとPGMEAとの混合溶媒が好ましい。
【0029】
本発明による充填用組成物は、前記ポリマーと前記溶媒とを必須とするものである。ここで、組成物に含まれるポリマーの含有量は、対象となる空隙のサイズ、組成物の粘度などに応じて適切に調整されるが、組成物の総重量を基準として、一般に0.2〜10重量%、好ましくは0.3〜5重量%、より好ましくは0.5〜3重量%である。
【0030】
本発明による充填用組成物は、必要に応じてその他の成分を含むこともできる。具体的には、界面活性剤、平滑剤、殺菌剤などが挙げられる。これらのうち、組成物の塗布性の観点から組成物は界面活性剤を含むことが好ましい。界面活性剤は、従来知られている任意のものを用いることができるが、特にフッ素含有界面活性剤が好ましい。これらの添加剤は原則的に微細パターン形成用組成物の性能には影響を与えないものであり、通常組成物の全重量を基準として一般に1%以下、好ましくは0.1%以下、より好ましくは0.05%以下の含有量とされる。また、本発明による充填用組成物が、加熱によって分解除去される犠牲領域を形成させるのに用いる場合には、犠牲領域が分解除去される温度を制御するために、組成物に任意の酸を添加することができる。任意の酸、例えば、沸点が、形成される犠牲領域の分解開始温度程度である酸を添加することにより、犠牲領域の分解開始温度(犠牲材料の重量減少が始まる温度)を低下させることができる。このような酸としては、たとえばp−トルエンスルホン酸などが挙げられる。
【0031】
また、本発明による充填用組成物は、幅の狭いトレンチや小さな空孔内に浸透する必要があるため、その粘度が重要な意味を有する場合がある。組成物の粘度は、用いる目的などに応じて適切に調整される。しかしながら、充填用組成物を空孔内に浸透させる場合には、塗布後の組成物を高温条件下におくことで粘度を低下させて空孔内に浸透させることもできる。このような場合には、常温において比較的粘度の高い組成物であっても空孔内に十分に浸透させることができる。
【0032】
[半導体装置の製造方法]
本発明による半導体装置の製造方法は、その工程の一部において、前記の充填用組成物を用いるものである。本発明による充填用組成物は、空隙に充填するのが容易であり、またその組成物から形成された犠牲材料は所望の温度で分解気化するので、半導体装置の種々の製造工程に用いることができる。このような半導体装置の製造方法を図を参照しながら説明すると以下の通りである。
【0033】
[第一の半導体装置の製造方法]
本発明による第一の実施態様による半導体装置の製造方法は、前記の充填用組成物を基板上に配置し、組成物に含まれる溶媒の一部またはすべてを蒸発させて、犠牲材料からなる犠牲領域を形成させる。ここで犠牲材料とは、本発明による充填用組成物から溶媒の一部またはすべてが除去されて固化された材料を意味する。そして、その犠牲材料によって占められている領域を犠牲領域という。本発明の第一の半導体装置の製造方法においては、その犠牲領域をさらにキャッピング層で被覆し、その後に加熱することによって犠牲材料を分解気化させて除去することを含むものである。この結果、最初に形成させた犠牲領域が存在した部分に空隙を形成させることができる。このような空隙は、半導体装置中で低誘電率の層となり、半導体装置中の絶縁構造などとして機能する。
【0034】
このような空隙の形成方法の一例を
図1を参照しながら説明すると以下の通りである。まず、基板100の表面に前記の充填用組成物102を配置する。基板100は特に限定されず、半導体装置に一般的に用いられるものから任意に選択することができる。具体的には、シリコン基板、半導体基板、ガラス基板、樹脂フィルム等の適当な基材を用いることができる。これらの基材には、必要に応じて各種の半導体素子などが形成されていてもよい。また、基板表面に溝などが形成され、凹凸を有するものであってもよい。
図1(A)に示された半導体基板は、表面にゲート101が形成されたものである。また、基板の種類などに応じて、充填用組成物に用いる溶媒を選択することができるが、水、EL、PGME、およびPGMEAからなる群から選択されるものが好ましい。
【0035】
この基板表面に充填用組成物102を配置する方法は特に限定されず、任意の方法を採用することができる。たとえば、浸漬塗布、ロールコート、バーコート、刷毛塗り、スプレーコート、ドクターコート、フローコート、スピンコート、およびスリット塗布等から任意に選択することができる。本発明による充填用組成物は、塗布時のボイド、または塗布ムラも少ないという特徴がある。さらに必要に応じて加熱して、溶媒を除去する。さらには溶媒除去後にポリマーのガラス転移点温度以上に加熱して、空隙の充填を促進させることもできる。このようにして、最終的に空隙となる部位に犠牲領域102Aが形成される。この犠牲領域は犠牲材料層と呼ばれることもある(
図1(B))。
【0036】
犠牲領域が形成された基板の表面に、さらにキャッピング層103を形成させる(
図1(C))。ここでキャッピング層は、化学気相蒸着法、物理蒸着法、電気メッキ、無電解めっきなどによって、金属等を堆積させてもよいし、硬化性組成物を塗布し、硬化させることによって形成させてもよい。ここで、化学気相蒸着法などを採用した場合、たとえば340℃程度の高温になる。この工程において犠牲材料が分解してしまうと、所望の形状の空隙を得ることができない場合がある。このため、このような場合には、犠牲材料は340℃で分解しないものであることが好ましい。
【0037】
次いで形成されたキャッピング層の余剰部分を、必要に応じてドライエッチングや化学的機械的研磨によって除去し、その後犠牲材料を選択的に除去する。ここで「選択的に除去する」というのは、犠牲材料を充填した材料、この例では基板の形状を変化させず、犠牲材料だけを除去することをいう。言い換えれば、犠牲材料を充填した材料を、犠牲材料の充填前の状態に戻すことをいう。このように犠牲材料を選択的に除去する方法は特に限定されないが、加熱により犠牲材料を分解させて除去する方法、プラズマ処理によって除去する方法、犠牲材料を溶解する溶媒によって溶解させて除去する方法、高エネルギー線を照射して除去する方法、またはフラッシュレーザーアニーリング法が挙げられる。ここで、プラズマ処理とは、犠牲領域が形成された基板などの材料を、プラズマガスに暴露することによって、犠牲材料とプラズマガスとを反応させて犠牲材料を分解除去することをいう。なお、プラズマ処理により犠牲材料を除去する場合には、H
2、He、Xeまたはそれらの混合ガスなどをエッチングガスとして使用するのが一般的である。これらのうち、第一の半導体装置の製造方法においては、犠牲材料の除去は、加熱またはプラズマ処理によって行うことが好ましく、加熱によって行うことが特に好ましい。また、加熱により犠牲材料を除去する場合には、犠牲材料が分解するのに十分な温度、たとえば450℃で加熱することによって、犠牲材料が分解気化して除外される。その結果、犠牲領域102Aが存在した部分に空隙104が形成される(
図1(D))。なお、キャッピング層が金属性材料で形成された場合には、キャッピング層は空隙によって基板等から離間された回路とすることができる。また、キャッピング層が絶縁性材料で形成された場合には、基板上に設けられた素子や、空隙を構成するレジスト壁などの機械的支持部材とすることができる。
【0038】
このような半導体装置の製造方法において、充填用組成物は塗布性および狭い溝部への浸透性に優れていることが好ましい。このため、溶媒としては、水、PGME、ELなどが好ましく用いられる。また、犠牲材料はキャッピング層の形成時までは分解気化せず、その後の加熱によっては完全に分解気化することが好ましい。キャッピング層の形成時の温度や、加熱温度は種々の理由によって調整されるため、犠牲材料が分解気化する温度はそれに応じて調整される。しかし、一般的には、犠牲材料は340℃で分解気化せず450℃で加熱することによって、完全に分解気化することが好ましい。ここで、犠牲材料の分解気化する温度が340℃程度であることが好ましい理由は、犠牲領域を維持したまま加工する温度が340℃程度になることがあるためである。具体的には、半導体装置のエアギャップ形成工程において、CVDプロセスやエッチングプロセスを用いることがあるが、このようなプロセスにおいては、犠牲領域が340℃程度の温度条件におかれることがあるためである。このような温度条件下で犠牲材料が分解してしまうと、犠牲領域の形状が維持できず、所望の空隙を形成できないことがあるため、犠牲材料には340℃程度の熱耐性が求められる。
【0039】
上記の方法では、基板上に形成された凹部に犠牲領域を設ける場合を説明した。しかし、凹凸のない基板表面に空隙を形成させることもできる。
【0040】
まず
図2(A)に示した通り、平坦な基板100の表面に充填用組成物102を配置する。ここで組成物102は基板表面に均一に塗布するのではなく、空隙を設ける位置にのみ配置する。すなわち、印刷法などによって基板表面の特定の位置だけに充填用組成物を配置して、犠牲領域102Aを形成させる。その後、基板表面全体にキャッピング層103を設け(
図2(B))、さらに犠牲材料を加熱することで分解気化させて、空隙104を形成させる(
図2(C))。このようにして、平坦な基板表面に特定の形状の空隙を形成させることもできる。
【0041】
[第二の半導体装置の製造方法]
本発明によるほかの半導体装置の製造方法は、あらかじめ形成されていた空隙、空孔、溝、凹部などを有する材料を、半導体装置の製造過程において保護するものである。本発明においては、このような材料を総称して多孔質材料という。すなわち、そのような多孔質材料は密度が低いために、たとえばドライエッチング処理などを施すと、物理的または化学的に損傷を受けやすい。また、材料中に空孔が含まれる材料は、その表面に空孔に起因する凹部などが散在するが、その縁部は平坦部分に比較して、物理的または化学的に損傷を受けやすい。本発明による第二の方法は、そのような損傷を防止するものである。このような方法を図面を参照しながら説明すると以下の通りである。
【0042】
まず、多孔質材料300の表面に充填用組成物102を塗布する(
図3(A))。多孔質材料としては、たとえば二酸化ケイ素やポリアミドからなる材料が挙げられる。また、多孔質材料に形成されている空孔または空隙の大きさや空孔率は、目的とする半導体装置に求められる性能などに応じて変化するが、一般的には空孔の平均直径は100nm以下であり、好ましくは40nm以下であり、また一般に空孔率は5〜70%であり、好ましくは5〜50%である。ここで、空孔の平均直径は透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することにより測定することができ、また空孔率は誘電率を用いて対数混合法則に従って計算することにより求めることができる。
【0043】
多孔質材料300の表面に塗布された充填用組成物は、経時により多孔質材料に浸透して空孔を充填するが、加圧または加熱により浸透を加速することもできる。特に加温することが好ましい。温度上昇によって組成物の粘度が下がり、空孔への浸透が加速されるためである。なお、充填用組成物の塗布性や浸透性などを考慮して、用いる溶媒を選択することが好ましい。具体的には、PGME、PGMEA、MIBK、MIBKとPGMEとの混合溶媒、またはMIBKとPGMEAとの混合溶媒が好ましい。
【0044】
多孔質材料300に充填用組成物を十分に浸透させた後、加熱するなどによって組成物中の溶媒の一部またはすべてを蒸発させて空孔内の組成物を固化させて、犠牲材料102Aに転換させる。その後、必要に応じて表面に露出している犠牲材料を除去し、空孔内が犠牲材料で埋められた多孔質材料が得られる(
図3(B))。この埋められた空孔部分が犠牲領域となる。
【0045】
引き続き、プラズマエッチングまたはドライエッチングなどにより材料の表面を加工して、たとえば溝構造301を形成させる(
図3(C))。また、この方法において多孔質材料の表面加工に採用されるプラズマエッチングまたはドライエッチングは、犠牲材料を除去する際に行われるプラズマ処理とは異なる条件で行われる。具体的には、多孔質材料が二酸化ケイ素からなるものである場合には、ドライエッチングに用いるガスとしてCF
4、CHF
3、およびそれらの混合ガスが選択されるのが一般的である。このとき、本発明による方法では、空孔内が組成物に満たされていることによって、材料全体の機械的強度も高くため、リソグラフィー処理、プラズマエッチング、またはドライエッチングによる損傷を受けにくい。
【0046】
プラズマ処理またはエッチング処理が完了した後、犠牲材料を選択的に除去する。犠牲材料を選択的に除去する方法は特に限定されないが、加熱により犠牲材料を分解させて除去する方法、プラズマ処理によって除去する方法、犠牲材料を溶解する溶媒によって溶解させて除去する方法、高エネルギー線を照射して除去する方法などが好ましく、加熱によって行うことが特に好ましい。具体的には、材料全体を加熱することによって、空孔に充填されていた犠牲材料を分解気化させて除去する(
図3(D))。この結果、犠牲領域が中空状態に戻る。このようにして、プラズマエッチングまたはドライエッチングの過程において損傷を与えることなく、表面が加工された多孔質材料を得ることができる。このように損傷を受けていない多孔質材料を用いて製造された半導体装置は欠陥が少ないので、高い生産性で製造することができる。
【0047】
このような半導体装置の製造方法において、充填用組成物は塗布性および多孔質材料への浸透性に優れていることが好ましい。このため、溶媒としては、MIBKなどの非極性溶媒が好ましく用いられる。組成物の浸透性を良好に維持するために、組成物に含まれるポリマーの分子量を調整することもできる。このような場合、ポリマーの重量平均分子量は、一般に1,000〜150,000であり、1,500〜50,000であることが好ましい。また、プラズマエッチングまたはドライエッチングの際には分解気化せず、その後の加熱によっては完全に分解気化することが好ましい。プラズマエッチングまたはドライエッチングの条件や、加熱温度は種々の理由によって調整されるため、犠牲材料が分解気化する温度はそれに応じて調整される。しかし、一般的には、犠牲材料は150℃で分解気化せず、420℃で、たとえば15分間加熱することによって、完全に分解気化することが好ましい。
【0048】
[第三の半導体装置の製造方法]
本発明による、さらにほかの半導体装置の製造方法は、製造過程におけるパターン倒れを改善するものである。半導体装置の製造過程においては、基板そのものや、基板表面に形成された層などに凹凸を有するパターンが形成されることがある。具体的には、これらの凹凸構造は、レジストパターン、シャロー・トレンチ・アイソレーション構造、キャパシターの一部分として形成される。このようなパターンのうち、凹凸構造の凸部アスペクト比の高いものは、半導体製造プロセスの過程において損傷を受けやすい。特に、壁状構造や柱状構造は、根元部分から折れて倒れてしまうことがある。
【0049】
このようなパターン倒れは、外部からの物理的応力が原因で起こるほかに、パターンの凹部に水などが存在することによって引き起こされることがある。たとえば、フォトリソグラフィーによるパターン形成においては、現像後に用いられる水が凹部に残存しやすく、この水に起因する表面張力でパターン倒れが起こることがある。また、高アスペクト比のパターンの形成過程において、凹部に水溶性犠牲材料を充填し、パターン形成後に水洗することによって水溶性犠牲材料を除去する方法が採用される場合がある。この場合にも水洗後にパターンの溝部に水が残存することがあり、それに起因する表面張力でパターン倒れが起こることがある。このようなパターン倒れを低減するために、水に代えて表面張力の少ないリンス液を用いることも検討されているが、本発明の方法によれば、リンス液を用いる場合と同等以上のパターン倒れ低減効果が得られる。すなわち、前記したような場合に、凹部または溝部に存在する水またはリンス液などの液体を、本発明による充填用組成物で置換し、表面張力によるパターン倒れを防止することができる。本発明による充填用組成物は、水などの液体を使用せずに分解除去できるので、その後に組成物を除去しても表面張力に起因するパターン倒れが起こりにくい。この方法を図を参照しながら説明すると以下の通りである。
【0050】
まず、現像過程における洗浄処理に起因するパターン倒れを防止する方法について、
図4を参照しながら説明する。このような方法では、たとえば
基板上にフォトレジスト組成物を塗布してフォトレジスト層を形成させ、
前記フォトレジスト層を像様露光し、
露光後の前記フォトレジスト層を現像して、基板表面にレジストパターンを形成させ、
露光後のレジストパターンを水を用いて洗浄処理する。
【0051】
このようなレジストパターンの現像方法は、従来行われている方法と同様にして行うことができる。具体的には、現像によって、基板100の表面にレジストパターン400が形成される。通常、洗浄水処理後のフォトレジストにおいては表面の凹凸構造の凹部に水401が残存している(
図4(A))。このまま乾燥処理に付すと、毛管現象によってレジストパターンに応力がかかってパターン倒れが起こることがある。そこで、本発明においては水が付着している現像後のレジストパターン表面に充填用組成物102を塗布する(
図4(B))。塗布された組成物は、溝内に浸透し、水と置き換わる。その後、加熱することで溶媒が除去されて、犠牲領域102Aが形成される(
図4(C))。この際、組成物中に含まれる固形分が多いため、水が蒸発する場合に比較して応力の発生が少なく、パターン倒れが抑制されたまま、犠牲領域が形成される。この犠牲領域を構成する犠牲材料は、その後選択的に除去される。たとえば、基板を加熱することで犠牲材料が分解気化して除外される。この結果、パターン倒れを抑制しながらレジストパターンを得ることができる(
図4(D))。なお、犠牲領域を除去する前に、レジストパターン表面などに加工を加えることもできる。このような場合、犠牲領域によってレジストパターンの強度が高くなっているため、レジストパターンの損傷や物理適応力によるパターン倒れが防止されるので好ましい。
【0052】
本発明による充填用組成物は、上記の方法のほか、たとえば特許文献4にも記載されているような半導体装置の製造方法に応用することもできる。この方法を
図5を参照しながら説明すると以下の通りある。
【0053】
まず、シリコン基板の表面にアスペクト比の高いパターン500を形成させる。このようなパターンはリソグラフィーやエッチングなどの任意の方法で形成させることができる。ここで、パターンの溝内に水溶性犠牲材料501が充填され、必要に応じて支持部材502が任意の部分、たとえばパターン上部に形成されている(
図5(A))。ここで水溶性犠牲材料501は本発明による組成物から形成されるものとは異なり、たとえば50%フッ酸などで水洗することによって除去できるものである。
【0054】
パターン間の、水溶性犠牲材料501は、たとえば50%フッ酸で洗浄除去し、引き続き水洗されることによって除去される。このとき、水溶性犠牲材料501が存在した場所に最終的に水503が残存する(
図5(B))。このように溝内に水が残存したパターンを乾燥処理に付すと、毛管現象によってパターンに応力がかかってパターン倒れが起こることがある。そこで、溝内に水が残存しているシリコンパターンの表面に本発明による充填用組成物を塗布する。塗布された組成物は、溝内に浸透し、溝内に存在した水が充填用組成物に置き換わる。その後、加熱することで水または充填用組成物の溶剤が除去されることによって、犠牲領域102Aが形成される(
図5(C))。その後、犠牲材料が選択的に除去され、パターン倒れの少ないパターンを得ることができる(
図5(D))。ここで犠牲材料の除去は、加熱またはプラズマ処理によって行うことが好ましい。また、犠牲材料を溶解する溶媒によって溶解させて除去する方法、高エネルギー線を照射して除去する方法、またはフラッシュレーザーアニーリング法を用いることもできる。なお、ここでは水に対する溶解性が高い、水溶性犠牲材料を用いた例を示したが、水以外の溶剤に対して溶解性の高い犠牲材料を用いたパターン形成方法にも応用できることは明らかである。
【0055】
このような方法において、パターン倒れ防止効果が高いのは、レジストパターン、シャロー・トレンチ・アイソレーション構造、キャパシターなどのアスペクト比が高い場合である。具体的には、本発明の方法によるパターン倒れを防止する効果を得るためには、凹凸構造の凸部のアスペクト比が一般に1〜100であり、1〜60であることが好ましい。また、凹凸構造の凹部の幅が10〜300nmである場合に本発明の効果がより強く発現するので好ましい。
【0056】
このような半導体装置の製造方法において、充填用組成物は塗布性およびアスペクト比の高いレジストパターンへの浸透性に優れ、また水や溶剤に対する相溶性が優れていることが好ましい。このため、組成物に用いられる溶媒としては、水、エタノール、IPA、EL、PGME、およびPGMEAからなる群から選択されるものが好ましい。また、犠牲材料は最後のエッチングまたは加熱によっては完全に分解気化することが好ましい。具体的には、300℃で、たとえば10分間加熱することによって、完全に分解気化することが好ましい。
【0057】
本発明を諸例を用いて説明すると以下の通りである。
【0058】
実施例1
ポリ(2−エチル−2−オキサゾリン)(シグマアルドリッチ社製)、重量平均分子量約200,000)2gをPGME98gに溶解させ、フッ素含有界面活性剤(メガファックR−08(商品名)、DIC株式会社製)500ppmを加え一昼夜撹拌した。その後、孔径0.3μmのUPEフィルターで、ろ過して充填用組成物を得た。
【0059】
この組成物をライン幅40nmの1:1のラインアンドスペースでパターニングされたシリコンウエハ上に塗布した。この際、熱処理後の膜厚が約200nmとなるように、スピンコーターの回転数と時間を設定した。塗布後、100℃のホットプレート上で120秒間加熱して、溶媒の一部を蒸発させた後、さらに窒素を流入して酸素濃度を100ppm以下に制御したオーブンを用いて、300℃で5分間加熱し、パターン上の空隙間に組成物を充填した。
【0060】
さらに、窒素雰囲気下で340℃で10分加熱した結果、パターン上の空隙は犠牲材料で満たされていた。
【0061】
さらに、窒素雰囲気下で450℃で10分加熱した結果、空隙内部に存在していた犠牲材料は残渣なく除去された。
【0062】
実施例2
2−フェニル−2−オキサゾリンを重合反応させることによって、ポリ(2−フェニル−2−オキサゾリン)(重量平均分子量約200,000)をえた。このポリマー2gをPGME98gに溶解させ、フッ素含有界面活性剤(メガファックR−08(商品名)、DIC株式会社製)500ppmを加え一昼夜撹拌した。その後、孔径0.3μmのUPEフィルターで、ろ過して充填用組成物を得た。
【0063】
この組成物をライン幅40nmの1:1のラインアンドスペースでパターニングされたシリコンウエハ上に塗布した。この際、熱処理後の膜厚が約200nmとなるように、スピンコーターの回転数と時間を設定した。塗布後、100℃のホットプレート上で120秒間乾燥した後、さらに窒素を流入して酸素濃度を100ppm以下に制御したオーブンを用いて、300℃で5分間加熱し、パターン上の空隙間に組成物を充填した。
【0064】
さらに、窒素雰囲気下で340℃で10分加熱した結果、パターン上の空隙は犠牲材料で満たされていた。
【0065】
さらに、窒素雰囲気下で450℃で10分加熱した結果、空隙内部に存在していた犠牲材料は残渣なく除去された。
【0066】
実施例3
2−n−プロピル−2−オキサゾリンを重合反応させることによって、ポリ(2−n−プロピル−2−オキサゾリン)(重量平均分子量約200,000)を得た。このポリマー2gをPGME98gに溶解させ、フッ素含有界面活性剤(メガファックR−08(商品名)、DIC株式会社製)500ppmを加え一昼夜撹拌した。その後、孔径0.3μmのUPEフィルターで、ろ過して充填用組成物を得た。
【0067】
この組成物をライン幅40nmの1:1のラインアンドスペースでパターニングされたシリコンウエハ上に塗布した。この際、熱処理後の膜厚が約200nmとなるように、スピンコーターの回転数と時間を設定した。塗布後、100℃のホットプレート上で120秒間乾燥した後、さらに窒素を流入して酸素濃度を100ppm以下に制御したオーブンを用いて、300℃で5分間加熱し、パターン上の空隙間に組成物を充填した。
【0068】
さらに、窒素雰囲気下で340℃で10分加熱した結果、パターン上の空隙は犠牲材料で満たされていた。
【0069】
さらに、窒素雰囲気下で450℃で10分加熱した結果、空隙内部に存在していた犠牲材料は残渣なく除去された。
【0070】
実施例4
2−イソプロピル−2−オキサゾリンを重合反応させることによって、ポリ(2−イソプロピル−2−オキサゾリン)(重量平均分子量約200,000)を得た。このポリマー2gをPGME98gに溶解させ、フッ素含有界面活性剤(メガファックR−08(商品名)、DIC株式会社製)500ppmを加え一昼夜撹拌した。その後、孔径0.3μmのUPEフィルターで、ろ過して充填用組成物を得た。
【0071】
この組成物をライン幅40nmの1:1のラインアンドスペースでパターニングされたシリコンウエハ上に塗布した。この際、熱処理後の膜厚が約200nmとなるように、スピンコーターの回転数と時間を設定した。塗布後、100℃のホットプレート上で120秒間乾燥した後、さらに窒素を流入して酸素濃度を100ppm以下に制御したオーブンを用いて、300℃で5分間加熱し、パターン上の空隙間に組成物を充填した。
【0072】
さらに、窒素雰囲気下で340℃で10分加熱した結果、パターン上の空隙は犠牲材料で満たされていた。
【0073】
さらに、窒素雰囲気下で450℃で10分加熱した結果、空隙内部に存在していた犠牲材料は残渣なく除去された。
【0074】
実施例5
ポリ(2−エチル−2−オキサゾリン)(シグマアルドリッチ社製、重量平均分子量約50,000)2gをMIBKとPGME(重量比80:20)の混合溶液98gに溶解し、一昼夜撹拌した。その後、孔径0.3μmのUPEフィルターで、ろ過して充填用組成物を得た。
【0075】
この組成物を平均直径が30nmの空孔がある低誘電率ウエハに塗布した。この際、熱処理後の膜厚が約300nmとなるように、スピンコーターの回転数と時間を設定した。塗布後、150℃で1時間加熱して、空孔内に充填用組成物が浸透したウエハを得た。
【0076】
さらに、窒素雰囲気下で420℃で15分加熱すると犠牲材料は残渣なく除去された。
【0077】
実施例6
ポリ(2−エチル−2−オキサゾリン)(シグマアルドリッチ社製、数平均分子量5,000)5gを水95gに溶解させ、フッ素含有界面活性剤(メガファックR−08)(商品名)、DIC株式会社製)500ppmを加え一昼夜撹拌した。その後、孔径0.3μmのUPEフィルターで、ろ過して充填用組成物を得た。
【0078】
この組成物を水で満たされている1:1のラインアンドスペースのピラーパターン(ライン幅100nm、アスペクト比10)上に塗布した。この際、熱処理後の膜厚が約1μmとなるように、スピンコーターの回転数と時間を設定した。塗布後、150℃のホットプレート上で120秒間加熱し、パターン上の空隙間に組成物を浸透させた。
【0079】
さらに、窒素雰囲気下で300℃で10分加熱した結果、空隙内部に存在していた犠牲材料は残渣なく除去された。また、パターン倒れは起きていなかった。
【0080】
また、空隙内部に存在していた犠牲材料はプラズマエッチングによって除去することもできた。
【0081】
比較例1
ビスマレイミド樹脂(BMI3000(商品名)、エア・ブラウン株式会社より販売、重量平均分子量約3,000)5gをトルエン95gに溶解し、一昼夜撹拌した。その後、孔径0.3μmのUPEフィルターで、ろ過して充填用組成物を得た。
【0082】
この組成物を実施例1で用いたものと同じシリコンウエハ上に塗布した。この際、熱処理後の膜厚が約200nmとなるように、スピンコーターの回転数と時間を設定した。塗布後、100℃のホットプレート上で120秒間乾燥し、パターン上の空隙間に組成物を充填した。後、さらに窒素を流入して酸素濃度を100ppm以下に制御したオーブンを用いて、300℃で5分間加熱し、パターン上の空隙間に組成物を充填した。
【0083】
さらに、窒素雰囲気下で340℃で10分加熱した結果、充填物はパターン上の空隙間に残されていた。
【0084】
さらに、窒素雰囲気下で450℃で10分加熱した結果、空隙内にあった組成物のほとんどが除去されていたが、残渣が確認された。
【0085】
比較例2
ポリベンゾイミダゾール3gをDMAC97gに溶解させ、一昼夜撹拌した。その後、孔径0.3μmのUPEフィルターで、ろ過して充填用組成物を得た。
【0086】
この組成物をライン幅40nmの1:1のラインアンドスペースでパターニングされたシリコンウエハ上に塗布した。この際、熱処理後の膜厚が約200nmとなるように、スピンコーターの回転数と時間を設定した。塗布後、100℃のホットプレート上で120秒間乾燥 した後、さらに窒素を流入して酸素濃度を100ppm以下に制御したオーブンを用いて、300℃で5分間加熱し、パターン上の空隙間に犠牲領域を形成させた。
【0087】
さらに、窒素雰囲気下で340℃で10分加熱した結果、パターン上の空隙は犠牲材料で満たされていた。
【0088】
さらに、窒素雰囲気下450℃で10分加熱した結果、空隙内部に存在していた犠牲材料はそのまま除去されずに残っていた。
【0089】
比較例3
ポリスチレン(シグマアルドリッチ社製)2gをPGMEA98gに溶解させ、一昼夜撹拌した。その後、孔径0.3μmのUPEフィルターで、ろ過して充填用組成物を得た。
【0090】
この組成物をライン幅40nmの1:1のラインアンドスペースでパターニングされたシリコンウエハ上に塗布した。この際、熱処理後の膜厚が約200nmとなるように、スピンコーターの回転数と時間を設定した。塗布後、100℃のホットプレート上で120秒間乾燥 した後、さらに窒素を流入して酸素濃度を100ppm以下に制御したオーブンを用いて、300℃で5分間加熱し、パターン上の空隙間に犠牲領域を形成させた。
【0091】
エアギャップ形成工程に於いて、充填物が充填されたライン幅40nmの1:1のラインアンドスペースのパターンは、その後一般的にCVDプロセスやエッチングプロセスを経て最後に熱分解により充填物が除かれ、空気層が形成される。この工程中で、充填物には340℃付近の熱耐性が求められる。
【0092】
実施例1では窒素を流入して酸素濃度を100ppm以下のオーブンを用いて、340℃で10分間加熱しても空隙内部の充填物は減少することなかったが、比較例3の組成物は除去されてしまった。
【0093】
比較例4
ポリビニルアルコール(シグマアルドリッチ社製、数平均分子量27,000)3gを水97gに溶解させ、フッ素含有界面活性剤(メガファックR−08)(商品名)、DIC株式会社製)500ppmを加え一昼夜撹拌した。その後、孔径0.3μmのUPEフィルターで、ろ過して充填用組成物を得た。
【0094】
この組成物を水で満たされている1:1のラインアンドスペースのピラーパターン(ライン幅100nmアスペクト比10)上に塗布した。この際、熱処理後の膜厚が約1μmとなるように、スピンコーターの回転数と時間を設定した。塗布後、150℃のホットプレート上で120秒間加熱し、パターン上の空隙間に組成物を充填したが、組成物が充填されていない空洞が確認された。参照として、パターニングされていないシリコンウエハ上に同一の組成物を塗布し、加熱を行ったところ、膜厚の減少は確認されなかった。このことから、前記した空洞は組成物の分解に起因するものでなく、組成物が最初から充填されなかったことが確認された。