(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記ラミネート層(A)の厚みが1.5〜50μmであり、該ラミネート層(A)、中間層(B)およびシール層(C)が、共押出法によって積層されたものである、請求項1に記載の多層シーラントフィルム。
上記ポリプロピレン系樹脂(B1)の融点が125〜165℃であり、上記プロピレンランダム共重合体の融点が115〜155℃であって、該ポリプロピレン系樹脂(B1)の融点が該プロピレンランダム共重合体の融点よりも高いことを特徴とする、請求項1または2に記載の多層シーラントフィルム。
基材上に、請求項1〜3のいずれかに記載の多層シーラントフィルムを、該多層シーラントフィルムのラミネート層(A)側を貼付面として貼付して得られることを特徴とする包装材。
上記基材が、少なくとも、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂およびポリアミド系樹脂よりなる群から選択される1又は2以上の樹脂または金属からなる層を有する、請求項4に記載の包装材。
破裂強度が10KPa以上であり、透明度が10%以下であり、像鮮明度が55%以上であり、密封包装体を開口する開封強度が40N/袋以下である請求項8に記載の密封包装体。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明について、その最良な形態を含めて、図面を参照して、さらに具体的に説明する。
【0024】
本発明に係る多層シーラントフィルム1は、
図1に示すように、最外層であるラミネート層(A)と少なくとも1層の中間層(B)と、もう一方の最外層であるシール層(C)を有する多層フィルムである。また、本発明の包装材2は、基材3と、上記多層シーラントフィルム1とを、ラミネート層(A)を介して積層してなる。以下、ラミネート層(A)、中間層(B)、シール層(C)からなる多層シーラントフィルム1および基材3について説明する。
【0025】
ラミネート層(A)
ラミネート層(A)は、基材3との積層に用いられ、また包装袋の開封時に凝集破壊を起す層である。
【0026】
ラミネート層(A)は、ポリブテン系樹脂(A1)と、直鎖状低密度ポリエチレン(A2)と低密度ポリエチレン(A3)を含む。
【0027】
ラミネート層(A)において、上記ポリブテン系樹脂(A1)および直鎖状ポリエチレン(A2)に加えて、低密度ポリエチレン(A3)を配合することで、よりポリブテン系樹脂(A1)とその他の樹脂材料との相溶性が低下することから、ラミネート層(A)が上下方向から引っ張られると凝集破壊を起し、開封強度が低下して、包装体5の開封性が向上する。凝集破壊を起す引張力は、上記ポリブテン系樹脂(A1)、直鎖状ポリエチレン(A2)および低密度ポリエチレン(A3)の相溶状態で決まるため、ヒートシール条件に関わらず、一定の引張力で包装袋を開封できる。また非相溶であるためラミネート層表面が凸凹となり表面積が増加することから、基材3との接着性が高くなる。
【0028】
本発明において、ラミネート層(A)における上記ポリブテン系樹脂(A1)、直鎖状ポリエチレン(A2)および低密度ポリエチレン(A3)の含有量を下記範囲とし、且つ低密度ポリエチレン(A3)の密度を下記範囲とすることで、イージーピール性、密封性に優れるだけでなく、透明性、像鮮明性に優れる多層シーラントフィルムが得られる。
【0029】
ポリブテン系樹脂(A1)は、1−ブテンの単独重合体及び1−ブテンと、エチレンおよび/またはプロピレン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等の炭素数が2〜10のα−オレフィンとのランダム共重合体であり、エチレン−ブテン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体及びブテン−1の単独重合体からなる群から適宜選択して使用すればよい。これらの樹脂のうちエチレン−ブテン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、及びブテン−1の単独重合体が好ましく、ブテン−1の単独重合体がより好ましい。
【0030】
本発明で用いられるポリブテン系樹脂(A1)におけるブテン単位の含有量は、該ポリブテン系樹脂(A1)の全量100重量部あたり、50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%である。50重量%未満の場合は多層シーラントフィルム1のブロッキングが発生しやすくなる。
【0031】
上記ポリブテン系樹脂(A1)の含有量は、ラミネート層(A)におけるポリブテン系樹脂(A1)、直鎖状低密度ポリエチレン(A2)および低密度ポリエチレン(A3)の合計100重量部に対して、30〜70重量部、好ましくは35〜60重量部である。30重量部未満の場合は、ラミネート層(A)における凝集破壊が起りにくくなり、開封強度が高くなって、開封時のフィルム破れが発生しやすくなる。70重量部を超える場合は、開封時の剥離外観に劣る。
【0032】
上記ポリブテン系樹脂(A1)の密度は、好ましくは0.900〜0.930g/cm
3、さらに好ましくは0.910〜0.920g/cm
3である。ポリブテン系樹脂の密度が低すぎる場合には、多層シーラントフィルム1のブロッキングが発生しやすくなる。また密度が高すぎる場合には、多層シーラントフィルム1がカールしてハンドリング性が低下する。なお、本明細書における密度は、ASTM D1505により測定された密度をいう。
【0033】
上記ポリブテン系樹脂(A1)の融点は、50〜135℃、さらに好ましくは70〜125℃である。50℃未満の場合は、開封時の剥離外観に劣る。135℃を超える場合は、開封強度が高くなる。また、ポリブテン系樹脂の融点が低過ぎる場合には、多層シーラントフィルム1のブロッキングが発生しやすくなる。融点が高すぎる場合はヒートシール開始温度が高くなり、特にラミネートする基材が二軸延伸ポリプロピレンの場合はヒートシール温度が高すぎると熱収縮を引き起こすためヒートシール温度範囲が狭くなる。なお、本明細書における融点は、示差走査熱量計を用いた測定において最大吸熱を示すピーク温度をいう。
【0034】
また、上記ポリブテン系樹脂(A1)のMFR(190℃)は、特に限定されるものではないが、製膜性を考慮すると、MFRは、0.1〜50.0g/10分が好ましく、1.0〜20.0g/10分がさらに好ましい。0.1g/10分未満の場合は、開封強度が高くなる。50.0g/10分を超える場合は、開封時の剥離外観に劣る。また、ポリブテン系樹脂のMFRが低過ぎる場合には、溶融時の粘度が高いことから多層シーラントフィルム1の生産において、押出機内の樹脂圧力が上昇し生産性が著しく悪くなり、一方、ポリブテン系樹脂のMFRが高過ぎる場合には、多層シーラントフィルム1のブロッキングが発生しやすくなる。
【0035】
直鎖状低密度ポリエチレン(A2)は、エチレンと若干量のα‐オレフィンとを共重合させた、熱可塑性樹脂であり、α‐オレフィンとしては、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテンなどが用いられるが、これらに限定はされない。直鎖状低密度ポリエチレン(A2)における上記α‐オレフィンの含有量は、通常30モル%以下、好ましくは2〜20モル%の範囲である。
【0036】
直鎖状低密度ポリエチレン(A2)の含有量は、ラミネート層(A)におけるポリブテン系樹脂(A1)、直鎖状低密度ポリエチレン(A2)および低密度ポリエチレン(A3)の合計100重量部に対して、20〜60重量部、好ましくは25〜50重量部である。20重量部未満の場合、および60重量部を超える場合は何れも開封強度が高くなり、開封時のフィルム破れが発生しやすくなる。
【0037】
直鎖状低密度ポリエチレン(A2)の密度は、好ましくは0.900〜0.945g/cm
3、さらに好ましくは0.910〜0.940g/cm
3である。直鎖状低密度ポリエチレン(A2)の密度が低過ぎる場合には、透明性、像鮮明性が低下する。さらに多層シーラントフィルム1のブロッキングが発生しやすくなる。一方、直鎖状低密度ポリエチレン(A2)の密度が高過ぎる場合には、多層シーラントフィルム1がカールしてハンドリング性が低下する。
【0038】
直鎖状低密度ポリエチレン(A2)の融点は、好ましくは130℃以下であり、さらに好ましくは100〜130℃である。直鎖状低密度ポリエチレン(A2)の融点が低過ぎる場合には、多層シーラントフィルム1のブロッキングが発生しやすくなる。一方、直鎖状低密度ポリエチレン(A2)の融点が高過ぎる場合には、多層シーラントフィルム1がカールしてハンドリング性が低下する。
【0039】
また、直鎖状低密度ポリエチレン(A2)のMFR(190℃)は、好ましくは0.1〜50.0g/10分、さらに好ましくは2.0〜20.0g/10分の範囲にある。直鎖状低密度ポリエチレン(A2)のMFRが低過ぎる場合には、溶融時の粘度が高いことから多層シーラントフィルム1の生産において、押出機内の樹脂圧力が上昇し生産性が著しく悪くなり、一方、直鎖状低密度ポリエチレン(A2)のMFRが高過ぎる場合には、多層シーラントフィルム1のブロッキングが発生しやすくなる 。
【0040】
低密度ポリエチレン(A3)の密度は、好ましくは0.930g/cm
3以上、さらに好ましくは0.930〜0.950g/cm
3である。低密度ポリエチレン(A3)の密度が低過ぎる場合には、透明性への影響は小さいが像鮮明性が大きく低下する。さらに多層シーラントフィルム1のブロッキングが発生しやすくなる。一方、低密度ポリエチレン(A3)の密度が高過ぎる場合には、多層シーラントフィルム1がカールしてハンドリング性が低下する。このような低密度ポリエチレンとしては、一般に高圧法で製造される高圧法低密度ポリエチレン(HPLD)が好ましく用いられる。
【0041】
低密度ポリエチレン(A3)の含有量は、ラミネート層(A)におけるポリブテン系樹脂(A1)、直鎖状低密度ポリエチレン(A2)および低密度ポリエチレン(A3)の合計100重量部に対して、10〜50重量部、好ましくは20〜40重量部である。10重量部未満の場合、開封強度が高くなり、開封時のフィルム破れが発生しやすくなる。50重量部を超える場合は像鮮明性が低下する。
【0042】
低密度ポリエチレン(A3)の融点は、好ましくは120℃以下であり、さらに好ましくは100〜120℃である。低密度ポリエチレン(A3)の融点が低過ぎる場合には、多層シーラントフィルム1のブロッキングが発生しやすくなる。一方、低密度ポリエチレン(A3)の融点が高過ぎる場合には、多層シーラントフィルム1がカールしてハンドリング性が低下する。
【0043】
また、低密度ポリエチレン(A3)のMFR(190℃)は、好ましくは0.1〜50.0g/10分、さらに好ましくは2.0〜20.0g/10分の範囲にある。低密度ポリエチレン(A3)のMFRが低過ぎる場合には、溶融時の粘度が高いことから多層シーラントフィルム1の生産において、押出機内の樹脂圧力が上昇し生産性が著しく悪くなり、一方、低密度ポリエチレン(A3)のMFRが高過ぎる場合には、多層シーラントフィルム1のブロッキングが発生しやすくなる。
【0044】
なお、上記したポリブテン系樹脂(A1)、直鎖状ポリエチレン(A2)および低密度ポリエチレン(A3)の密度、融点、MFR等は、何れも公知の手段により制御可能であり、たとえばコモノマー種、その量、分子量などにより制御でき、また各種市販品の中から所望の物性を有する材料を選択してもよい。
【0045】
ラミネート層(A)には、上記(A1)〜(A3)に加え、ラミネート層と基材との接着性や、ラミネート層の凝集破壊性能を損なわない範囲で、石油樹脂、テルペン樹脂、ロジン、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、防曇剤、着色剤、核剤、抗菌剤などを配合できる。
【0046】
また、ラミネート層(A)は、上記各成分を、必要に応じ押出機により溶融混合し、フィルム状に製膜して得られる。
【0047】
ラミネート層(A)の厚みは、凝集破壊を効果的に起こすために、1.5μm以上、好ましくは2μ以上が推奨される。一方、ラミネート層が厚すぎると、破壊するために多くのエネルギーが必要となるだけでなく、経済性に劣り、また包装体の重量が増加するため、ラミネート層(A)の厚みは、50μm以下、好ましくは30μm以下が推奨される。
【0048】
中間層(B)
中間層(B)は、ラミネート層(A)とシール層(C)とを強固に接着することを目的として、ラミネート層(A)とシール層(C)との間に形成される。
【0049】
中間層(B)に用いるポリプロピレン系樹脂(B1)の融点は、125〜165℃が好ましく、さらに好ましくは130〜155℃である。また、ポリプロピレン系樹脂(B1)の融点は、後述するシール層(C)におけるプロピレンランダム共重合体の融点よりも高いことが好ましい。ポリプロピレン系樹脂(B1)の融点が低過ぎる場合には、ヒートシールをしたときに、ラミネート層樹脂やヒートシール層樹脂との溶融混合が生じ、ラミネート層の凝集破壊性能が発現せず、包装袋4の開封ができないことがある。更に開封したときに中間層が伸びてケバ、糸引きが発生する。また、ポリプロピレン系樹脂の融点が高すぎる場合は、ヒートシールするために多くのエネルギーが必要となり、そのエネルギーが不足した場合、開封時に糸引きやケバ立ちが発生する。
【0050】
上記ポリプロピレン系樹脂(B1)のMFR(230℃)は、特に限定されるものではないが、製膜性を考慮すると好ましくは0.5〜50.0g/10分、さらに好ましくは1.0〜30.0g/10分である。
【0051】
中間層(B)は、ポリプロピレン系樹脂(B1)単独で形成されていてもよく、またポリプロピレン系樹脂(B1)以外に、上記したポリブテン系樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、その他の熱可塑性樹脂を含有していてもよい。中間層(B)における、ポリプロピレン系樹脂(B1)以外の樹脂の含有量は、ポリプロピレン系樹脂(B1)80重量部以上に対して、20重量部以下であることが好ましく、ポリプロピレン系樹脂(B1)90重量部以上に対して、10重量部以下であることがさらに好ましい。ポリプロピレン系樹脂(B1)以外の樹脂の含有量が20重量部を超える場合、透明性や像鮮明性といった光学的特性が損なわれる可能性がある。
【0052】
また、中間層(B)には、ポリプロピレン系樹脂(B1)に加え、ラミネート層(A)やシール層(C)との接着性や、ラミネート層(A)の凝集破壊性能を損なわない範囲で、石油樹脂、テルペン樹脂、ロジン、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、防曇剤、着色剤、核剤、抗菌剤などを配合することができる。
【0053】
中間層(B)は、ポリプロピレン系樹脂(B1)および任意に配合される他の成分を、必要に応じ押出機により混合し、フィルム状に製膜して得られる。
【0054】
中間層(B)の厚みは、ラミネート層(A)やシール層(C)との接着性や、ラミネート層(A)の凝集破壊性能を損なわない範囲であれば特に限定はなく、通常は3〜50μm程度であり、さらに好ましくは4〜45μm程度である。中間層(B)が薄過ぎると、ラミネート層(A)やシール層(C)との接着性が不十分になることがある。一方、中間層(B)が厚過ぎると、透明性や像鮮明度といった光学的特性が損なわれる可能性があるほか、経済性に劣り、また包装袋4の重量が増加する。
【0055】
シール層(C)
シール層(C)は、包装袋4をヒートシールする際に、対向するシール層(C)同士を熱圧着し、包装袋4を封止するために設けられる。
【0056】
シール層(C)に用いるプロピレンランダム共重合体としては特に限定されるものではないが、低温ヒートシール性の点から融点が115〜155℃の範囲内、好ましくは120〜150℃の範囲内である。また、上記プロピレンランダム共重合体の融点は、上記ポリプロピレン系樹脂(B1)の融点よりも低いことが好ましい。融点が低すぎる場合、ヒートシール部の耐熱性に劣る場合がある。一方、融点が高過ぎる場合には、低温ヒートシール性が不足する傾向にある。
【0057】
上記プロピレンランダム共重合体のMFR(230℃)は、特に限定されるものではないが、製膜性を考慮すると、MFRは、0.5〜50.0g/10分であることが好ましく、1.0〜30.0g/10分の範囲がさらに好ましい。
【0058】
上記プロピレンランダム共重合体としては、上記融点を満足する限り、種々のポリプロピレン系樹脂が制限なく使用される。例えば、プロピレンと、エチレンおよび/または1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1ペンテン等の炭素数が4〜10のα−オレフィンとのランダム共重合体、ブロック共重合体あるいはプロピレンの単独重合体と上記炭素数が2〜10のα−オレフィン(共)重合体とのブレンド物が挙げられ、これらの中から適宜選択して使用すればよい。これらの中でも、プロピレンランダム共重合体としては、プロピレンと、エチレンおよび/または炭素数4〜10のα−オレフィンとのランダム共重合体が好ましく、特にプロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ブテンランダム共重合体が好ましく用いられる。
【0059】
上記プロピレンランダム共重合体におけるプロピレン単位の含有量は、該ポリプロピレン系ランダム共重合体の全量100重量部あたり、好ましくは99〜80重量%、さらに好ましくは98〜85重量%である。
【0060】
シール層(C)は、プロピレンランダム共重合体単独で形成されていてもよく、また、プロピレンランダム共重合体以外に、上記したポリブテン系樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、その他の熱可塑性樹脂を含有していてもよい。シール層(C)における、プロピレンランダム共重合体以外の樹脂の含有量は、10重量部以下であることが好ましい。
【0061】
また、シール層(C)には、プロピレンランダム共重合体に加え、シール層同士の接着性や、ラミネート層の凝集破壊性能を損なわない範囲で、石油樹脂、テルペン樹脂、ロジン、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、防曇剤、着色剤、核剤、抗菌剤などを配合することができる。
【0062】
シール層(C)は、プロピレンランダム共重合体および任意に配合される他の成分を、必要に応じ押出機により混合し、フィルム状に製膜して得られる。
【0063】
シール層(C)の厚みは、シール層同士の接着性を損なわない範囲であれば特に限定はなく、通常は3〜50μm程度であり、さらに好ましくは3〜45μm程度である。シール層(C)が薄過ぎると、包装袋をヒートシールした際の接着性が不十分になることがある。一方、シール層(C)が厚過ぎると、経済性に劣り、また包装袋の重量が増加する。
【0064】
多層シーラントフィルム1
本発明に係る多層シーラントフィルム1は、上記したラミネート層(A)、中間層(B)およびシール層(C)がこの順に積層してなる。各層は低延伸または実質的に無延伸で積層されるのが好ましく、各層の積層法は、共押出法によって積層されるのが好ましい。
【0065】
製膜法は無延伸法を用い、代表的な方法を例示すれば、Tダイスを使用した押出成形法、環状ダイスを使用したインフレーション成形法が挙げられる。上記成形法において、例えば、Tダイスを使用したフィードブロック法やマルチマニホールド法による共押出法が好適に用いられる。
【0066】
上記Tダイスを使用した押出成形法について、具体的に示せば、各層を構成する樹脂組成物をそれぞれの押出機にてTダイス法により溶融物を押し出し、温度調整可能なロールまたは温度調整可能な水槽により冷却し巻き取る方法、あるいは、該溶融物を空冷法または水冷法により冷却し巻き取る方法等を挙げることができる。得られる多層シーラントフィルムは、巻き取り時のテンション等によりわずかに延伸される程度の低延伸または実質的に無延伸のフィルムである。
【0067】
本発明の多層シーラントフィルム1の厚みは、例えば10〜150μmとすることができ、15〜120μmであることが好ましい。
【0068】
ラミネート層(A)、中間層(B)およびシール層(C)には、各層の密着性を向上する目的でコロナ放電処理、火炎処理等を行ってもよい。また、表面処理を施す面も特に制限はなく、片面、両面のいずれでも構わない。
【0069】
包装材2
本発明の包装材2は、基材3と、上記多層シーラントフィルム1とを、ラミネート層(A)を介して積層してなる。基材3には、内容物の商品名や製造会社名等を示す印刷が施されていても良い。
【0070】
基材3は、包装材2に求められる強度や硬さ等に応じて適宜に選択され、少なくとも、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂およびポリアミド系樹脂よりなる群から選択される1又は2以上の樹脂または金属からなる層を有する。たとえば、二軸延伸ポリエステルフィルム、二軸延伸ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルム等が用いられ、またこれらのフィルムに金属膜を蒸着した蒸着フィルムであってもよい。また、これらのフィルムと他の熱可塑性樹脂フィルムとの積層フィルムであってもよい。
【0071】
基材3の厚みは、包装材の用途により様々であるが、一般的には10〜300μm程度である。基材3のシーラントフィルム1が積層される側の面には、密着性を向上する目的でコロナ放電処理、火炎処理等を行ってもよい。
【0072】
基材3と、多層シーラントフィルム1とは、多層シーラントフィルム1のラミネート層(A)を介して積層される。具体的には、基材3の片面に、ラミネート層(A)が接するように、多層シーラントフィルム1を載置し、両者を熱圧着する。熱圧着温度は、ラミネート層(A)の軟化温度以上であり、また0.1MPa程度に加圧して、0.5〜5.0秒間程度熱圧着を行う。
【0073】
また、基材3の片面に、ラミネート層(A)、中間層(B)およびシール層(C)を構成する樹脂組成物を、共押出して、包装材2を得てもよい。
【0074】
また、基材3の片面とラミネート層(A)について、接着剤を介して積層して包装材2を得ることもできる。
【0075】
ここで使用される接着剤としては、市販の接着剤を用いてもよく、あるいは溶融樹脂(例えば溶融したポリエチレン系樹脂)を用いてもよい。接着剤の塗布方法としては、例えばグラビア、グラビアリバース、オフセットなどの転写手段;バー、コンマバーなどの掻き取り手段などを挙げることができる。
【0076】
包装袋および密封包装体
包装袋4および密封包装体5の概略図を
図2に示す。包装材2を、シール層(C)を内側にして、開口部を有する袋状に成形することで、本発明の包装袋4が得られる。具体的には、適宜な大きさに包装材を折り畳み、端部を熱圧着して袋状に成形する。熱圧着温度は、シール層が熱圧着しうる温度であり、通常は100〜200℃程度であり、また0.1〜1.0MPa程度に加圧して、0.5〜5.0秒間程度熱圧着を行う。
【0077】
本発明において、上記包装袋4は、シール層を熱圧着した後も、包装材2は透明性、像鮮明性に優れる。シール層熱圧着後の包装材2の透明度は10%以下、好ましくは8%以下であり、像鮮明度は55%以上、好ましくは65%以上である。
【0078】
得られる包装袋4には、食品等の内容物6が収容され、開口部において対向するシール層を熱圧着し、包装袋の開口部をヒートシールして密封包装体5とする。熱圧着条件は前記と同様である。
【0079】
上記密封包装体5の開封時の剥離モードは、ラミネート層(A)の凝集破壊である。具体的には、
図3に示すように、開封時に、ヒートシールされた袋口の直下の対向する表面を掴み、強い力で両者を逆方向に引っ張ると、ラミネート層(A)の凝集破壊により開封が行われる。熱圧着時の温度や圧力、時間を増大することで、シール層(A3)同士は強固に密着するが、ラミネート層の状態、性状は大幅に変化することはない。このため、ラミネート層(A)の凝集破壊に要する力は一定となり、熱圧着条件に関わらず、安定した開封性が得られる。開封強度としては、通常40N/袋以下、好ましくは10〜40N/袋、さらに好ましくは15〜35N/袋である。また、密封性を表す破裂強度は、通常10kPa以上、好ましくは15kPa以上である。
【実施例】
【0080】
以下、本発明を実施例及び比較例を掲げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、樹脂およびフィルムの物性は、以下のように測定した。
【0081】
(1) MFR
JISK6758に準拠して、ポリプロピレンについては230℃、ポリブテンおよびポリエチレンについては190℃ におけるMFRを測定した。
【0082】
(2) 融点
樹脂試料約5mgを精秤後アルミパンに封入し、これを示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ(株)製、型式「SSC/5200」)に装着し、20mL/分の窒素気流中、230℃まで昇温し、この温度において10分間保持した後、降温速度10℃/分で−10℃まで冷却し、次いで昇温速度10℃/分で210℃まで昇温する際に得られた吸熱曲線において、最大吸熱を示したピーク温度を融点とした。
【0083】
(3)透明度
透明性の指標として、日本電色工業(株)製、ヘイズメーター(NDH5000)を用い、JISK7136に準拠して透明度の測定を行った。
【0084】
(4)像鮮明度
像鮮明性の指標として、スガ試験機(株)製、写像性測定器(ICM-IDP)を用い、JISK7105に準拠し、光学くしのスリット幅を0.125mmとして像鮮明度の測定を行った。
【0085】
(5)開封強度
包装袋4のヒートシールされた袋口上部から30mm離れた対抗する表面を引張試験機のチャックで掴み、500mm/minの引張速度で逆方向に引っ張り、包装袋4を開封して最高強度を測定した。測定は10回行い、平均値を開封強度とした。
【0086】
(6)開封時のフィルム破れ
包装袋4のヒートシールされた袋口上部から30mm離れた対抗する表面を手で掴み、強い力で両者を逆方向に引っ張り、包装袋4を開封し、フィルム(包装材)の破れを目視にて確認し、以下の判定を行った。
開封時のフィルム破れ判定基準
○ :良好(開封時にフィルムが破れなかった)
× :不良(開封時にフィルムが破れた)
【0087】
(7)開封時の剥離外観
包装袋4のヒートシールされた袋口上部から30mm離れた対抗する表面を手で掴み、強い力で両者を逆方向に引っ張り、包装袋4を開封し、剥離部の外観を目視にて確認し、以下の判定を行った。
剥離部外観判定基準
○ :良好(糸状もしくは層状の剥離物は発生しなかった)
× :不良(糸状もしくは層状の剥離物が発生した)
【0088】
(8)破裂強度
(株)サン科学製 破裂強度測定機(305−BP)を用いて、包装袋4に1.0L/分の空気を送り込み、破裂した時の圧力を測定した。
【0089】
<用いた樹脂>
PB1:ポリブテン単独重合体(三井化学(株)製 BL4000、密度 0.915g/cm
3、融点 112℃、MFR 1.8g/10分)
PB2:1−ブテンプロピレンランダム共重合体 (三井化学(株)製 BL2481、密度0.900g/cm
3 融点75℃、MFR4.0g/10分、ブテン含有量79.2重量部)
【0090】
LLDPE1:直鎖状低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン(株)製 4040FC、密度 0.937g/cm
3、融点 126℃、MFR 3.5g/10分)
LLDPE2:直鎖状低密度ポリエチレン(住友化学(株)製 CW8003、密度 0.912g/cm
3、融点 110℃、MFR 8.0g/10分)
【0091】
LDPE1:低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン(株)製 Z372、密度 0.934g/cm
3、融点 118℃、MFR 5.0g/10分)
LDPE2:低密度ポリエチレン (宇部丸善ポリエチレン(株)製 Z322、密度 0.933g/cm
3、融点 119℃、MFR 1.0g/10分)
LDPE3:低密度ポリエチレン(住友化学(株)製 L405、密度 0.924g/cm
3、融点 102℃、MFR 5.0g/10分)
LDPE4:低密度ポリエチレン(住友化学(株)製 L705、密度 0.919g/cm
3、融点 107℃、MFR 7.0g/10分)
LDPE5:低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン(株)製 F522N、密度 0.922g/cm
3、融点 110℃、MFR 5.0g/10分)
【0092】
PP1:プロピレン−エチレンランダム共重合体(日本ポリプロ(株)製 FW3GT、融点 148℃、MFR 7.0g/10分)
【0093】
R−PP1:プロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体((株)プライムポリマー製 F794NV、融点 134℃、MFR 5.0g/10分)
【0094】
(実施例1)
中間層用のスクリュー径75mmの単軸押出機が1台、両外層(ラミネート層およびシール層)用のスクリュー径50mmの単軸押出機が2台の合計3台の押出機からなる3種3層構成のTダイ方式フィルム製膜装置を用い、ラミネート層(A)の原料樹脂としてポリブテン単独重合体(PB1)30重量部と直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE1)60重量部と低密度ポリエチレン(LDPE1)10重量部を配合した混合樹脂を、中間層(B)の原料樹脂としてプロピレン−エチレンランダム共重合体(PP1)を、シール層(C)の原料としてプロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体(R−PP1)をそれぞれ供給し、各230℃で加熱溶融してフィードブロック方式で共押出法にてダイリップ間隙1.5mmのTダイスより共押出し、冷却ロール状で冷却固化しながら押出機Aからの層が5μm、押出機Bからの層が11μm、押出機Cからの層が4μmになるように調整して、合計の厚み20μmの多層フィルムを得た。次いで、押出機Aからの層を有する側の表面のぬれ張力が40mN/mになるようにコロナ放電処理を施した後、巻取機にて巻き取ることにより、ラミネート層(A)/中間層(B)/シール層(C)からなる多層シーラントフィルム1を得た。
【0095】
多層シーラントフィルム1のコロナ放電処理を施したラミネート層(A)側の表面と基材3(フタムラ化学(株)製 二軸延伸ポリエステルフィルム E2001、厚み12μm)のコロナ処理面とを、ウレタン系接着剤を介して貼り合わせ、包装材2を得た。
【0096】
縦ピロー包装機((株)東京自働機械製作所製 TWX1N)を用いて、包装材2のシール層(C)同士を、ヒートシール温度140℃、時間0.6秒、圧力0.5MPaの条件(製袋条件:A)にてヒートシールし、包装袋4(縦200mm、横130mm)を作成した。
上記で得た包装袋4を用いて、上記(3)〜(8)の評価を行った。結果は表1に示した。
【0097】
(実施例2〜4、6)
上記実施例1の多層シーラントフィルム1の作成において、ラミネート層(A)の混合樹脂におけるポリブテン系樹脂と直鎖状低密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンの混合割合をそれぞれ表1に記載の値としたほかは実施例1と同様にして、多層シーラントフィルム1を得た。さらに実施例1と同様にして、包装材2を作成し、次いで実施例1と同様にして、包装袋4を作成した。この包装袋4を用いて、上記(3)〜(8)の評価を行った。結果は表1に示した。
【0098】
(実施例5)
上記実施例4の包装袋4(縦200mm、横130mm)の作成において、製膜条件をヒートシール温度200℃、時間0.8秒、圧力1.0MPaの条件(製袋条件:B)としたほかは実施例4と同様にして、包装材2を作成し、次いで実施例1と同様にして、包装袋4を作成した。この包装袋4を用いて、上記(3)〜(8)の評価を行った。結果は表1に示した。
【0099】
(実施例7)
上記実施例4の多層シーラントフィルム1の作成において、中間層(B)をプロピレン−エチレンランダム共重合体(PP1)90重量部と実施例1におけるラミネート層(A)の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE1)10重量部としたほかは実施例4と同様にして、多層シーラントフィルム1を得た。さらに実施例1と同様にして、該多層シーラントフィルム1を用いて、包装材2を作成し、次いで実施例4と同様にして、包装袋4を作成した。この包装袋4を用いて、上記(3)〜(8)の評価を行った。結果は表1に示した。
【0100】
(実施例8)
上記実施例4の多層シーラントフィルム1の作成において、ラミネート層(A)に直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE2)を用いたほかは実施例4と同様にして、多層シーラントフィルム1を得た。さらに実施例4と同様にして、該多層シーラントフィルム1を用いて、包装材2を作成し、次いで実施例4と同様にして、包装袋4を作成した。この包装袋4を用いて、上記(3)〜(8)の評価を行った。結果は表1に示した。
【0101】
(実施例9)
上記実施例4の多層シーラントフィルム1の作成において、ラミネート層(A)に1−ブテンプロピレンランダム共重合体(PB2)を用いたほかは実施例4と同様にして、多層シーラントフィルム1を得た。さらに実施例4と同様にして、該多層シーラントフィルム1を用いて、包装材2を作成し、次いで実施例4と同様にして、包装袋4を作成した。この包装袋4を用いて、上記(3)〜(8)の評価を行った。結果は表1に示した。
【0102】
(実施例10)
上記実施例4の多層シーラントフィルム1の作成において、ラミネート層(A)に低密度ポリエチレン(LDPE2)を用いたほかは実施例4と同様にして、多層シーラントフィルム1を得た。さらに実施例4と同様にして、該多層シーラントフィルム1を用いて、包装材2を作成し、次いで実施例4と同様にして、包装袋4を作成した。この包装袋4を用いて、上記(3)〜(8)の評価を行った。結果は表1に示した。
【0103】
(実施例11〜13)
上記実施例4の多層シーラントフィルム1の作成において、ラミネート層(A)の厚みをそれぞれ表1に記載の値としたほかは実施例4と同様にして、包装袋4を作成した。この包装袋4を用いて、上記(3)〜(8)の評価を行った。結果は表1に示した。
【0104】
(比較例1〜3)
上記実施例1の多層シーラントフィルム1の作成において、ラミネート層(A)の混合樹脂におけるポリブテン系樹脂と直鎖状低密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンの混合割合をそれぞれ表1に記載の値としたほかは実施例1と同様にして、多層シーラントフィルム1を得た。さらに実施例1と同様にして、該多層シーラントフィルム1を用いて、包装材2を作成し、次いで実施例1と同様にして、包装袋4を作成した。該包装袋4を用いて、上記(3)〜(8)の評価を行った。結果は表1に示した。袋開封時にフィルム破れが発生した。
【0105】
(比較例4)
上記実施例4の多層シーラントフィルム1の作成において、ラミネート層(A)に低密度ポリエチレン(LDPE3)を用いたほかは実施例4と同様にして、多層シーラントフィルム1を得た。さらに実施例4と同様にして、該多層シーラントフィルム1を用いて、包装材2を作成し、次いで実施例4と同様にして、包装袋4を作成した。該包装袋4を用いて、上記(3)〜(8)の評価を行った。結果は表1に示した。像鮮明性が著しく低下した。
【0106】
(比較例5)
上記実施例7の多層シーラントフィルム1の作成において中間層(B)におけるプロピレン−エチレンランダム共重合体(PP1)70重量部にラミネート層(A)の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE1)30重量部を混合したほかは実施例4と同様にして、多層シーラントフィルム1を得た。さらに実施例4と同様にして、該多層シーラントフィルム1を用いて、包装材2を作成し、次いで実施例4と同様にして、包装袋4を作成した。該包装袋4を用いて、上記(3)〜(8)の評価を行った。結果は表1に示した。透明性および像鮮明性が著しく低下した。
【0107】
(比較例6)
上記実施例4の多層シーラントフィルム1の作成において、ラミネート層(A)に低密度ポリエチレン(LDPE4)を用いたほかは実施例4と同様にして、多層シーラントフィルム1を得た。さらに実施例4と同様にして、該多層シーラントフィルム1を用いて、包装材2を作成し、次いで実施例4と同様にして、包装袋4を作成した。この包装袋4を用いて、上記(3)〜(8)の評価を行った。結果は表1に示した。像鮮明性が著しく低下した。
【0108】
(比較例7)
上記実施例4の多層シーラントフィルム1の作成において、ラミネート層(A)に低密度ポリエチレン(LDPE5)を用いたほかは実施例4と同様にして、多層シーラントフィルム1を得た。さらに実施例4と同様にして、該多層シーラントフィルム1を用いて、包装材2を作成し、次いで実施例4と同様にして、包装袋4を作成した。この包装袋4を用いて、上記(3)〜(8)の評価を行った。結果は表1に示した。像鮮明性が著しく低下した。
【0109】
【表1(1)】
【表1(2)】
【表1(3)】