(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
姿勢が不良であると、仙骨が後方に傾斜して、背骨が後方に凸状に曲がった状態となる。いわゆる背骨が前屈みになった状態である。仙骨を前方に傾斜した状態とすると、背骨がS字状に湾曲して正常な状態に矯正することができる。
このような従来の矯正具として、特許文献1,2に記載されたものが知られている。
【0003】
特許文献1に記載の腰用ベルトは、ベルト本体の裏面側で、腸骨の上・下後腸骨棘部に当接する部位に、カップ状をした一対のカップ状腸骨当て具と、カップ状腸骨当て具の凹面内底に設けられ、硬度の高い素材により形成された突起体とが配置されたものである。
【0004】
また、特許文献2に記載の医療用コルセットは、仙腸関節部分の外周を包囲する弾性材製の下帯部と、横腹から身体正面側の上腹部を包囲する弾性材製の上帯部と、上帯部の裏面側には、身体に装着した時に、横腹部分に位置して内外腹斜筋を押圧する指圧具とを備えたものである。この指圧具は、柔軟な布状のベースシートの内面に、衝撃吸収ゴムで形成された網目状隆起部が貼着されたものにより形成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の腰用ベルトは、突起体が硬度の高い素材により形成されたているため、ピンポイントに上・下後腸骨棘部を押圧する。従って、特許文献1に記載の腰用ベルトは、突起体により、上・下後腸骨棘部を押さえ込み、矯正すると言うより、指先で押圧したときのような、部分的な痛みが伴うものと思われる。
【0007】
また、特許文献2に記載の医療用コルセットは、腰痛を緩和させるためのものであるため、上帯体により締め付けることで、パッド状の指圧具が横腹部分に位置する内外腹斜筋を押圧したり、下側に位置する下帯体の指圧具が仙骨および仙腸関節を含む範囲を押圧したりするが、指圧具の面積が広いため、矯正には至らない。
【0008】
矯正の治療は、治療の専門家に施術を依頼するのが望ましいが、患者が自宅で手軽に施術でき、症状を改善させて、痛みを緩和させることができれば、生活への支障を軽減させることができる。
【0009】
そこで本発明は、適正な範囲を適正な押圧力で押圧することで、患者が、手軽に、仙骨を正しい位置に矯正することができる関節包内矯正具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の関節包内矯正具は、仙骨および腸骨の周囲を包囲する装着体と、前記装着体に設けられ、仙腸関節を押圧して弾性変形する中空の球面体により形成された圧迫体を収納するための袋部とを備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明の関節包内矯正具によれば、袋部が仙骨と腸骨とを繋ぐ仙腸関節に対応する位置に形成されているため、圧迫体が、仙骨のそれぞれの外側部(がいそくぶ)を押圧して、仙骨を前方へ押し上げ、傾斜させることで、背骨がS字状に湾曲させることができる。また、圧迫体は、仙骨を押圧して弾性変形する中空の球状体により形成されているため、仙骨への押圧に応じて、圧迫体が弾性変形して窪み、押圧する範囲が仙骨の外側部から中央部分を含む範囲に拡がることで、適度な圧迫力を維持しつつ、適正な範囲を押圧することができるので、仙腸関節の関節包の内部を、圧迫体が押圧して矯正することで、姿勢不良などにより固定化された仙腸関節の可動域を正常に戻すことができる。
ここで、球面体とは、球体または半球体などの凸曲面を有する立体を示す。
【0012】
前記袋部が、前記圧迫体を横並びに収納するように形成されていると、右側と左側の双方の仙腸関節に押圧力を掛けることができる。
【0013】
前記袋部は、前記圧迫体が仙腸関節を押圧するときに、前記圧迫体が仙骨と上後腸骨棘とによりできる凹部に支持される位置に形成されていると、圧迫体が仙骨と腸骨の上後腸骨棘とにそれぞれ支持されるので、仙骨と上後腸骨棘との間で圧迫体を安定させることができる。
【0014】
前記袋部は、前記圧迫体が仙腸関節を押圧するときに、前記圧迫体の曲面により、正中仙骨稜との間に隙間ができる位置に形成されていると、圧迫体による押圧力が正中仙骨稜に掛からないため、装着者は、正中仙骨稜への押圧力による痛みを伴うことなく、治療することができる。
【0015】
前記袋部が、前記袋部は、伸縮性を有し、前記圧迫体を挟持する部材により形成されていると、圧迫体の位置を微調整することができるため、装着者の体のサイズに応じて圧迫体を適切な位置に配置することができる。
【0016】
前記装着体として、装着者の下腹部に巻き付けられる第1コルセットと、前記装着者の腹部に巻き付けられる第2コルセット20と、前記第2コルセットを上段に、前記第1コルセットを下段にして装着者の背中側で連結する連結部と、前記第1コルセットの前側にから、前記装着者の臀部に向けて巻き付けられる第3コルセットとを備えることが望ましい。装着者が身長方向に前後しても、第1コルセットは、背中側が第2コルセットにより連結され、腹部側が第3コルセットにより連結されているためずれ難い。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、適度な圧迫力を維持しつつ、適正な範囲を押圧することができるので、仙腸関節の関節包の内部を、圧迫体が押圧して矯正することで、姿勢不良などにより固定化された仙腸関節の可動域を正常に戻すことができる。従って、患者が、手軽に、仙骨を正しい位置に矯正することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態に係る関節包内矯正具を図面に基づいて説明する。
図1および
図2に示すように、本発明の実施の形態に係る関節包内矯正具100は、圧迫体により、仙骨と腸骨とを繋ぐ仙腸関節の関節包の内部に押圧力を付与することで、仙骨を正しい位置に矯正するものである。
関節包内矯正具100は、下腹部に巻き付ける第1コルセット10と、腹部に巻き付ける第2コルセット20と、臀部に巻き付ける第3コルセット30と、第1コルセット10および第2コルセット20とを繋ぐ連結部40と、圧迫体Pを収納するための袋部50とを備えている。
【0020】
第1コルセット10は、装着体として、仙骨および腸骨を包囲することで、下腹部に巻き付けられる。第1コルセット10は、長さ方向に伸縮性を有する帯状の第1コルセット本体11と、第1コルセット本体11の両端部に設けられ、第1コルセット本体11の端部同士を接着する接着部材である面ファスナー12とを備えている。
【0021】
第1コルセット本体11は、長さ方向に伸縮する複数本のベルトを幅方向に並べて繋いだものである。従って、第1コルセット本体11は、長さ方向に伸びたり、元の長さに戻ったりするが、幅方向には伸びない構造である。第1コルセット本体11は、背中の位置から下腹部を周回するため、第2コルセット20より長く形成されている。第1コルセット本体11は、第3コルセット30と連結するために、第1コルセット本体11の表面が面ファスナーと接着する接着面に形成されている。
面ファスナー12は、フック面とループ面との接着面から形成され、第1コルセット本体11の一端部に、フック面またはループ面のいずれか一方の接着面が設けられ、他端部に他方の接着面が設けられていることで、第1コルセット本体11を腹部に巻き付ける際の長さを調整するものである。
【0022】
第2コルセット20は、肋骨の下部辺りと骨盤の上部辺りとの間を包囲することで腹部に巻き付けられる。第2コルセット20は、第1コルセット10と同様に、長さ方向に伸縮性を有する帯状の第2コルセット本体21と、第2コルセット本体21の両端部に設けられ、第2コルセット本体21の端部同士を接着する接着部材である面ファスナー22とを備えている。
【0023】
第3コルセット30は、下腹部からそれぞれの腸骨の上前腸骨棘を包囲することで、臀部に巻き付けられる。第3コルセット30は、第2コルセット20と同様に、長さ方向に伸縮性を有する帯状の第3コルセット本体31と、第3コルセット本体31の両端部に設けられ、第2コルセット本体21の前側と接着する接着部材である面ファスナー32とを備えている。
【0024】
連結部40は、第2コルセット20を上段に、第1コルセット10を下段することで、第1コルセット10と第2コルセット20との帯幅方向を上下に揃えて、装着者の背中側で連結するものである。
連結部40は、第1コルセット10および第2コルセット20のそれぞれの背中部分に設けられたフック面またはループ面のいずれか一方の接着面と、第1コルセット10と第2コルセット20とに渡る長さに形成された他方の接着面とにより形成された面ファスナーである。
【0025】
第1コルセット10の背中部分の内側には、圧迫体Pを収納するための袋部50が設けられている。袋部50は、伸縮性を有する部材により形成されている。袋部50は、ゴム引布や幅広のゴムバンドなどで形成することができる。本実施の形態では、
図2および
図3に示すように、袋部50を、上部が開口し、底部が閉塞された平面視U字状の部材を、第1コルセット本体11に接着または縫い付けることで、第1コルセット本体11と一体化している。
【0026】
従って、袋部50と共に、第1コルセット本体11の背中部分を、圧迫体Pを収納する収納面としている。袋部50は、水平断面の輪郭が圧迫体Pより小さくなるように形成されている。
袋部50は、第1コルセット10の背中部分に横に2つ配置されている。袋部50は、圧迫体Pを収納したときに、圧迫体P同士が押圧し合う程度の間隔に形成されている。なお、袋部50は、第1コルセット10の背中部分の内側に設けることの他、第1コルセット10の背中部分の外側に設けることもできる。
【0027】
圧迫体Pは、袋部50に収納されて、仙腸関節に対応する位置に形成されている。圧迫体Pは、仙腸関節の関節包を押圧することで弾性変形する中空の球面体により形成されている。
圧迫体Pは、例えば、球体である硬式のテニスボールが使用できる。圧迫体Pを、硬式のテニスボールとしたときには、圧迫体Pは、直径が6.54cm以上、6.86cm以下であり、254cm±0.3cmの高さから強固な平面に落下させたときの跳ね返りが135cm以上、147cm以下となる弾性力を有している。
【0028】
以上のように構成される本発明の実施の形態に係る関節包内矯正具100の使用状態について、図面に基づいて説明する。
【0029】
まず、患者である装着者は、
図1から
図3に示すように、袋部50に圧迫体Pを収納する。圧迫体Pを袋部50に収納するときには、袋部50の開口を、圧迫体Pが入る程度に拡げ、圧迫体Pを押し込む。袋部50は、圧迫体Pが押し込まれることで、奥深く入る。
【0030】
次に、装着者は、第1コルセット10を、背中側から下腹部に引き伸ばしながら巻き付け、面ファスナー12により留める。また、装着者は、第2コルセット20を、背中側から腹部に引き伸ばしながら巻き付け、面ファスナー22により留める。第1コルセット10と第2コルセット20との装着の順序は逆でもよい。
次に、装着者は、第3コルセット30を、第2コルセット20の前側部分である下腹部から臀部にまわして、面ファスナー32により留める。このようにして、装着者に関節包内矯正具100が装着される。
【0031】
次に、装着者は、関節包内矯正具100を装着した状態で、例えば、床面に仰向けになる。装着者が仰向けの状態となると、圧迫体Pが装着者と床面との間に挟まれることで、装着者の自重により圧迫体Pを床面に押し付ける。
図4および
図5に示すように、袋部50が仙骨M1と腸骨M2とを繋ぐ仙腸関節M3に対応する位置に形成されており、装着者の背骨M4の胸椎M41部分が床面Fに接した状態で、仙腸関節M3の背面側である仙骨M1と床面Fとの間に圧迫体Pが挟まれているため、圧迫体Pが、仙骨M1のそれぞれの外側部M11(がいそくぶ)(
図6参照)を押圧して、仙骨M1を前方へ押し上げ、傾斜させることで、背骨M4がS字状に湾曲する。
また、仙腸関節M3の関節包の内部を、圧迫体Pが押圧して矯正することで、姿勢不良などにより固定化された仙腸関節M3の可動域を正常に戻すことができる。
【0032】
また、圧迫体Pは、仙骨M1を押圧して弾性変形する中空の球状体により形成されているため、仙骨M1への押圧に応じて、圧迫体Pが弾性変形して窪み、押圧する範囲が仙骨M1の外側部M11から中央部分を含む範囲に拡がることで、適度な圧迫力を維持しつつ、適正な範囲を押圧することができる。
従って、装着者が、手軽に、仙骨を正しい位置に矯正することができるので、関節包内矯正具100は、患者が自宅で手軽に施術でき、症状を改善させて、痛みを緩和させることができる。よって、関節包内矯正具100は、生活への支障を軽減させることができる。
【0033】
袋部50は、圧迫体Pを横並びに収納しているため、右側と左側との双方の仙腸関節M3に押圧力を掛けることができる。そして、圧迫体Pが仙腸関節M3を押圧するときに、圧迫体Pが仙骨M1と腸骨M2の上後腸骨棘M21とによりできる凹部M5に収まる位置に、袋部50が形成されているため、圧迫体Pが仙骨M1と腸骨M2の上後腸骨棘M21とにそれぞれ支持されるので、仙骨M1と上後腸骨棘M21との間で安定する。また、圧迫体Pが横並びに配置され、圧迫体P同士は押圧し合う程度の間隔であるため、圧迫体Pは、仙骨M1と、上後腸骨棘M21と、隣接する圧迫体Pとにより挟まれるため、更に安定する。
従って、装着者への押圧面が球面の圧迫体Pであっても、施術中に圧迫体Pをずれにくくすることができる。
【0034】
更に、袋部50は、圧迫体Pを横並びに収納して、圧迫体Pが仙腸関節M3を押圧するときに、
図6に示すように、圧迫体P同士の曲面により、正中仙骨稜M12との間に隙間Sができる位置に形成されているため、圧迫体Pによる押圧力が正中仙骨稜M12に掛からない。従って、装着者は、正中仙骨稜M12への押圧力による痛みを伴うことなく、治療することができる。
【0035】
装着者の体のサイズにより、装着者によっては、多少、袋部50に収納した圧迫体Pの位置が所定の位置に合わないことがある。また、第1〜第3コルセット10〜30を体のサイズに合わせて数種類準備したとしても、圧迫体Pの位置が所定の位置に合わない可能性がある。
【0036】
しかし、袋部50は、伸縮性を有する部材により形成され、圧迫体Pよりサイズが小さく形成されているため、圧迫体Pを袋部50に適切な位置まで押し込んでも、その位置で圧迫体Pは袋部50により挟持された状態となり、圧迫体Pが固定される。従って、圧迫体Pの位置を微調整することができるため、装着者の体のサイズに応じて圧迫体Pを適切な位置に配置することができる。
【0037】
なお、本実施の形態では、関節包内矯正具100を装着した装着者が、床面に寝転び治療していたが、関節包内矯正具100を装着した状態においても、第1コルセット10内に配置された圧迫体Pにより装着者は圧迫を受けるので、関節包内矯正具100は、立位した状態でも使用できる。
また、袋部50が2個の圧迫体Pに合わせて、第1コルセット10に、2つ設けられているが、2個の圧迫体Pが一緒に収納できる袋部としてもよい。
【0038】
更に、袋部50が、第1コルセット10の背中部分の内側に設けられていることで、装着者が第1コルセット10を装着するだけで、袋部50に収納された圧迫体Pによる押圧が第1コルセット10の締め付けにより発生するため、装着者が立位した状態でも矯正を行うことができる。また、袋部50が第1コルセット10の背中部分の外側に設けられていれば、装着者が仰向けの状態で寝転がったり、壁面にすがれば、床面との間や壁面との間に圧迫体Pを位置させることができ、矯正を行うことができる。
【0039】
従って、本実施の形態では、第1コルセット10のみでも十分効果を得ることができるが、装着者が、第2コルセット20および第3コルセット30を第1コルセット10と共に、装着することで、装着者が身長方向に前後しても、第1コルセット10は、背中側が第2コルセット20により連結され、腹部側が第3コルセット30により連結されているためずれ難い。
【0040】
また、第2コルセット20は装着者の腹部に巻かれ、胴回りが固定されることで、腰椎を安静させることができる。また、腰痛は前屈みによる習慣性の動作姿勢が要因の一つであるため、第2コルセット20を装着することで、動作姿勢を矯正して腰痛を防止し、緩和させることができる。
【0041】
また、人間は二本脚歩行の動物であるため、自重による荷重が、背骨から下の仙骨に伝わり、そこから、左右の仙腸関節や股関節が左右の足に橋渡して伝わる。腰痛は、患っている期間が長くなると、脊柱起立筋や大殿筋、中殿筋、小殿筋、梨状筋が疲労した状態となるため、股関節の大転子から脊椎方向へのベクトルの支えが弱くなる。第3コルセット30は、装着者の下腹部から臀部へ巻かれることで、臀部を支持し、症状を緩和させることができる。また、足へ坐骨神経がある場合も、第3コルセット30は、症状緩和させることができる。
このように、第2コルセット20と第3コルセット30は、第1コルセットの装着を安定させるだけでなく、それぞれが装着者によい影響を与えることができる。
【0042】
更に、本実施の形態では、装着体として、コルセットを例に説明したが、スパッツやガードルなどでも、袋部を備えた装着体として使用できる。