【実施例1】
【0034】
最初に実施例1の鳩目引掛け具E
1 及び当該鳩目引掛け具E
1 を使用したシートの折畳み方法について説明する。鳩目引掛け具E
1 は、
図1に示されるように、作業現場の適所に引っ掛けて固定される引掛け固定体1と、当該引掛け固定体1に遊動可能に連結された鳩目引掛け体2とから成る。引掛け固定体1は、金属板の一端部がコの字形に折り曲げられて引掛け固定部3が形成されていると共に、その他端部のL字形に折り曲げられた部分に、線材挿通孔4が形成された構成である。
【0035】
鳩目引掛け体2は、番線と称される太い金属線を折り曲げることで、長さ方向の中央部に、前記引掛け固定体1の線材挿通孔4に遊動状態で挿通されて係止される側面視でほぼリング形状の遊動係止部5が設けられていると共に、当該遊動係止部5の両側には、正面視において当該遊動係止部5に対してほぼ対称な形状となる一対の鳩目引掛け部6がそれぞれ設けられている。鳩目引掛け部6は、太い金属線の長手方向の中央部の遊動係止部5の両側の部分が、鳩目付きのシートS
1 (S
2 )の特定の一辺の側を折り畳むことで重ね合せられた複数の鳩目Pの挿入及び抜出し防止の双方を行える形状に、ほぼ同一面内において折り曲げられたものである。鳩目引掛け部6における金属線の端部は、他の部分の折り曲げ方向とは逆の方向に折り曲げられて鳩目Pの挿入部6aとなっていて、当該挿入部6aに接続する直線部は、挿入された鳩目Pを奥側の引掛け係止部6c,6dに案内する案内部6bとなっている。連続した短直線状の引掛け係止部6c,6dは、鈍角を形成していて、当該引掛け係止部6c,6dに引っ掛けられた複数の鳩目Pは、鳩目引掛け部6を形成する金属線の折り曲げによる複雑な形状、及びシートS
1 (S
2 )に作用する引張り力により、当該鳩目引掛け部6から抜け出ない構造になっている。また、鳩目引掛け部6を構成する各部分のうち、挿入部6aのみが他の複数の部分と反対側に折り曲げられることで、一度挿入されて引っ掛けられたシートS
1 (S
2 )の鳩目Pが抜け出るのが難しい形状にしてある。
【0036】
図2に示される長方形状シートS
1 は、計4辺の各周縁部がそれぞれ補強され、シートS
1 の各コーナー部に鳩目Pが設けられていると共に、計4辺の各周縁部には、複数の鳩目Pが一定ピッチをおいて設けられている。シートS
1 の短辺の部分には、両端の各コーナー部の鳩目Pを除いて計3つの鳩目Pが一定ピッチをおいて設けられている。ここで、シートS
1 の折り畳みの説明との関係において、シートS
1 の短辺部(両コーナー部を含む)に設けられた複数の鳩目Pを特定する場合には、鳩目の符号「P」に添字を付して、P
1 ,P
2 ,P
3 のように表示する。
図2(b)は、シートS
1 を短辺方向に沿って4つ折りに折り畳んだ状態において、短辺部の両端(コーナー部)の2つの鳩目P
1 と中央部の1つの鳩目P
2 とが重ね合せられて、この計3つの各鳩目P
1 ,P
3 が、鳩目引掛け具E
1 の鳩目引掛け体2を構成する鳩目引掛け部6に引っ掛けられる。
【0037】
次に、
図3〜
図6を参照して、上記した鳩目引掛け具E
1 を使用して、シートS
1 を作業者一人で折り畳む方法について説明する。まず、
図4に示されるように、作業現場の近くにおいて、鳩目引掛け具E
1 を引っ掛けられる部分を探し出し、当該鳩目引掛け具E
1 の引掛け固定体1の引掛け固定部3を引っ掛けて固定する。図示例では、作業現場の近辺の金網フェンス41を使用し、当該金網フェンス41の水平方向の金属線42aに引掛け固定部3を引っ掛けることで、引掛け固定体1の両側の垂直方向の金属線42bによって、水平方向への大きな移動が防止された状態で、前記した水平方向の金属線42aに固定される。
【0038】
まず、
図3(a),(b)及び
図4に示されるように、一人の作業者Mは、長方形状のシートS
1 の一方の短辺部を二つに折り畳んで、当該短辺部の両端(コーナー部)の2つの鳩目P
1 を、鳩目引掛け体2の鳩目引掛け部6を構成する挿入部6aに挿入した後に、案内部6bを通過させて、引掛け係止部6c,6dの部分に係止させる。その後に、
図3(c)に示されるように、二つ折りに折り畳まれたシートS
1 を更に二つ折りに折り畳んで、前記短辺部の中央の鳩目P
2 を鳩目引掛け体2の引掛け係止部6c,6dに係止させる。この係止状態が、
図4に拡大して示されており、シートS
1 の特定の一辺の側である一方の短辺部の側は、折畳み方向と直交するシートS
1 の長手方向に沿った途中まで、不完全な状態で四つ折りされていて、前記特定の一辺と対向する対向辺である他方の短辺部の側においては、シートS
1 は、1枚状に拡げられたままで、全く折り畳まれていない。
【0039】
次に、作業者Mは、シートS
1 の他方の短辺部の側に移動して、
図3(c)及び
図4に示されるように、当該他方の短辺部において、シートS
1 に長辺方向に沿った張力Tを加えることで引っ張りながら、両端部である各コーナー部の鳩目P
1 の部分を掴んで二つ折りに折り畳んだ後に、
図3(d)及び
図5に示されるように、二つ折りにされたシートS
1aの両端部を掴んで、更に二つ折りに折り畳むと、シートS
1aは、
図6(a)に示されるように、四つ折りに折り畳まれたシートS
1bとなる。このように、鳩目引掛け具E
1 の使用によって、シートS
1 の一方の短辺部の鳩目P
1 ,P
2 を鳩目引掛け部6に引っ掛けて、シートS
1 の他方の短辺部を引っ張りながら折り畳むことができ、この状態は、恰も、二人の作業者がシートS
1 を引っ張りながら折り畳んでいる状態と同一である。このため、一人の作業者により、シートS
1 を迅速に、しかも皺類が発生することなく、整然と折り畳むことができる。なお、
図3(b)〜(d)において、S
1a, S
1bは、それぞれシートS
1 を完全に四つ折りする途中において、部分的に二つ折り又は四つ折りされた部分を示す。
【0040】
また、シートS
1 (S
1a) を引っ張りながら折り畳む際には、鳩目引掛け具E
1 の鳩目引掛け体2の部分に張力が作用するが、当該鳩目引掛け体2は、引掛け固定体1の線材挿通孔4に対して遊動状態で挿通されて係止されているため、張力の作用方向に応じて、自在に向きが変えられるため、シートS
1 (S
1a) が捩じられた状態で折り畳まれることがなくなって、シートを損傷させることなく、常に整然と折り畳むことが可能となる。なお、
図3において、6は、二つ折り又は四つ折りとなったシートS
1a(S
1b) の鳩目P
1 ,P
2 に挿通された鳩目引掛け具E
1 の鳩目引掛け体2を構成する鳩目引掛け部6を直線的に模式表示したものである。
【0041】
なお、四つ折りに折り畳まれたシートS
1bは、
図6に示されるように、長手方向に沿って巻回状態で折り畳むことで、直交する2方向に折り畳まれたシートS
1cとなる。
【0042】
鳩目引掛け具E
1 は、
図7に示されるように、一対の鳩目引掛け部6に、部分的に四つ折りされた2枚のシートS
1bの鳩目P
1 ,P
2 をそれぞれ引っ掛けることができるので、2枚のシートS
1 の一方の短辺部の側を部分的に四つ折りにして、各鳩目P
1 ,P
2 を一対の鳩目引掛け部6にそれぞれ引っ掛けた後に、2枚のシートS
1 の他方の短辺部の側に移動して、当該2枚のシートS
1 をそれぞれ四つ折りに折り畳むことができるので、折畳みの能率が一層に高められる。また、鳩目引掛け具E
1 を構成する一対の鳩目引掛け部6に、それぞれ2枚のシートS
1 の各鳩目P
1 ,P
2 が引っ掛けられて、当該一対の鳩目引掛け部6は、力的に左右にバランスして、大きく遊動しなくなる結果、シートS
1 の折畳み時において、鳩目引掛け部6に引っ掛けた側の捩じれも少なくなって、シートS
1 の折畳み作業も容易となる。
【0043】
図8に示されるシートS
2 は、短辺部に計9個の鳩目P
1 〜P
4 が一定ピッチで設けられていて、当該シートS
2 を八つ折りして折り畳む場合において、折畳み状態においてほぼ重ね合せられて、鳩目引掛け具E
1 の鳩目引掛け部6に挿通して引っ掛けられる鳩目P
1 〜P
3 と、引っ掛けられない鳩目P
4 とを示している。本発明に係る鳩目引掛け具E
1 を使用すれば、シートS
2 を八つ折りで折り畳む場合においても、一人の作業者により行える。
【0044】
また、シートS
2 を八つ折りする場合には、折り畳み数が多いので、鳩目引掛け具と対向辺の部分を作業者が一往復半することで、一旦、完全に四つ折りした後に、更に、折り畳んで八つ折りにすることも可能である。
【0045】
なお、上記した鳩目引掛け具E
1 の使用に関しては、
図9に示されるように、引掛け固定体1の使用を止めて、左右一対の鳩目引掛け部6を備えた鳩目引掛け体2のみを使用して、シートS
1 (S
2 )を折り畳むことで、重ね合せられた複数の鳩目Pを引っ掛けることも可能である。即ち、
図9(a)は、工事現場の近辺の電柱43に番線(金属線)44を巻き付けた状態で固定し、前記鳩目引掛け体2の遊動係止部5を前記番線44に、ほぼ全方向に遊動状態で引っ掛けることが可能である。また、
図9(b)は、金網フェンス41の金属線42aに直接に鳩目引掛け体2を遊動状態で引っ掛けたものである。
【0046】
なお、シートS
1 (S
2 )の特定の一辺の側において、鳩目引掛け具E
1 の引掛け係止部6c,6dにシートS
1 (S
2 )の各鳩目P
1 〜P
3 (P
4 )を挿入し引っ掛ける場合においても、互いに重ね合せられた全ての鳩目P
1 ,P
2 (P
1 〜P
3 )を引っ掛ける必要はなく、その一部の引っ掛けを欠落させたり、或いはシートS
1 (S
2 )自体に突刺させてもよい。
【実施例3】
【0049】
上記各実施例1,2は、鳩目引掛け具E
1 ,E
2 を使用して、その引掛け係止部6c,6d(16b)に、鳩目付のシートS
1 (S
2 )の鳩目P
1 ,P
2 (P
1 〜P
3 )を挿入して引っ掛けることで、シートS
1 (S
2 )の特定の一辺の側の部分的な折畳み状態を保持するものである。しかし、本発明(請求項2の発明)においては、折畳み状態保持具E
3 の使用により、鳩目なしシートS
3 の特定の一辺の側の折り畳み状態の保持が可能となる。
【0050】
上記した折畳み状態保持具E
3 は、
図11に示されており、1本の番線を折り曲げて形成されたものであって、番線を逆U字状に折り曲げた
遊動係止部23と、当該
遊動係止部23の逆U字部の一方の端部からわん曲されてほぼ水平方向に延設された固定補助部24と、突刺引掛け部26とで構成される。突刺引掛け部26は、前記
遊動係止部23の逆U字部の他方の端部が前方に向けて直角に折り曲げられ、所定長だけ水平方向に伸びることで形成された係止空間確保部26aと、当該係止空間確保部26aの端部が上方にほぼ直角に折り曲げられることで形成された引掛け係止部26bと、当該引掛け係止部26bの上端部が僅かに折り曲げられることで形成された突刺部26cとから成る。突刺部26cは、鳩目なしシートS
3 の挿入部を兼用していて、その先端部は、鳩目なしシートS
3 に対して突刺可能なように、先細りとなっている。
【0051】
図11(a)に示されるように、折畳み状態保持具E
3 の
遊動係止部23及び固定補助部24を、それぞれを金網フェンス41の水平方向及び垂直方向の金属線42a,42bに引っ掛けることで、折畳み状態保持具E
3 は、金網フェンス41を構成する水平方向及び垂直方向の金属線42a,42bに固定される。この状態では、引掛け係止部26bは、係止空間確保部26aの存在によって、金網フェンス41に対して所定長だけ離れて配置される。鳩目なしシートS
3 の特定の一辺の側を折り畳むことで、その折畳み状態を保持できるように、部分的な折畳み部に対して前記折畳み状態保持具E
3 の突刺部26cを突刺させる。
【0052】
なお、鳩目なしシートS
3 としては、ロール状に巻回されたシートを現場で巻き戻して、建築中の建物の床面の養生シートとして利用するものが典型例であって、この養生用シートを折り畳んで、再使用する場合に、本発明が実施される。
【0053】
また、本発明の鳩目付シートの折畳み方法の実施に使用される鳩目引掛け具として、実施例1,2の各鳩目引掛け具E
1 ,E
2 を例示したが、本発明に係る鳩目引掛け具としては、シートS
1 (S
2 )を折り畳むことで、互いに重ね合せられた複数の鳩目Pを抜け出ることなく引っ掛けられる形状の「鳩目引掛け部」を備えておれば、上記した鳩目引掛け具E
1 ,E
2 に限定されず、如何なる形状であってもよい。
【0054】
鳩目引掛け具を引っ掛けて固定する対象物としては、上記したもの以外に、トラックの荷台部分に番線を縛り付けて形成した引掛け具も考えられる。