特許第6195810号(P6195810)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6195810
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】シートの折畳み方法、及び鳩目引掛け具
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/24 20060101AFI20170904BHJP
   E04G 21/30 20060101ALI20170904BHJP
【FI】
   E04G21/24 A
   E04G21/30 A
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-147340(P2014-147340)
(22)【出願日】2014年7月18日
(65)【公開番号】特開2016-23447(P2016-23447A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2016年7月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】514184441
【氏名又は名称】芦田 安弘
(73)【特許権者】
【識別番号】506160455
【氏名又は名称】株式会社名古屋マルヤマ
(74)【代理人】
【識別番号】100083655
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 哲寛
(72)【発明者】
【氏名】芦田 安弘
(72)【発明者】
【氏名】大嶽 郁夫
【審査官】 津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−332028(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3198773(JP,U)
【文献】 特開2005−102673(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3139316(JP,U)
【文献】 実開昭59−054653(JP,U)
【文献】 特開2002−127810(JP,A)
【文献】 特開2007−277985(JP,A)
【文献】 特開2005−336975(JP,A)
【文献】 実開平04−095939(JP,U)
【文献】 特開2010−159546(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/24
E04G 21/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周縁部に鳩目が設けられた鳩目付のシートを作業者一人で折り畳む方法であって、
前記シートの特定の一辺の側において折畳み方向と直交する方向に沿って所定長だけ部分的に重ね合せることで、前記特定の一辺の側においてほぼ重ね合せられた複数の鳩目を挿入して引っ掛けるための鳩目引掛け部を備えた鳩目引掛け具を使用し、
前記シートの特定の一辺の側のみを折畳み方向と直交する方向に沿って所定長に亘って部分的に折り畳んで、ほぼ同一位置に重ね合せられた複数の鳩目を、作業現場の適所に固定された前記鳩目引掛け具の鳩目引掛け部に挿入して引っ掛けることで、シートの部分的な折畳み状態を保持しておいて、
前記シートの前記特定の一辺と対向する対向辺の側において、当該シートを折畳み方向と直交する方向に引っ張りながら、前記特定の一辺の側と同一の状態に折り畳むことを特徴とするシートの折畳み方法。
【請求項2】
鳩目なしシートを作業者一人で折り畳む方法であって、
前記シートの特定の一辺の側において折畳み方向と直交する方向に沿って所定長だけ部分的に重ね合せて折り畳んだ部分に突刺させて、部分的な当該折畳み状態を保持するシート突刺部を備えた折畳み状態保持具を使用し、
前記シートの特定の一辺の側のみを折畳み方向と直交する方向に沿って所定長に亘って部分的に折り畳んで、シートにおける部分的な当該折畳み部に前記折畳み状態保持具の突刺部を突刺させて、シートの部分的な折畳み状態を保持しておいて、
前記シートの特定の一辺と対向する対向辺の側において、当該シートを折畳み方向と直交する方向に引っ張りながら、前記特定の一辺の側と同一の状態に折り畳むことを特徴とするシートの折畳み方法。
【請求項3】
鳩目付のシートの特定の一辺の側の折畳み方向と直交する方向に沿った所定長の部分を1又は複数回だけ折り畳んで最終的な折畳み状態にしておいて、
前記シートの前記特定の一辺と対向する対向辺の側において、当該シートを折畳み方向と直交する方向に沿って引っ張りながら、前記特定の一辺の側と同一回数だけ折り畳むことで、前記鳩目引掛け具からシートの前記対向辺の側への折畳み作業者の単に1回の移動により、当該シートの折り畳みを可能にしたことを特徴とする請求項1に記載のシートの折畳み方法。
【請求項4】
作業現場の設置物に遊動係止状態で支持されて、請求項1又は3に記載の鳩目付のシートの折畳み方法に使用される鳩目引掛け具であって、
前記シートの特定の一辺の側において折畳み方向と直交する方向に沿って所定長だけ部分的に重ね合せることで、前記特定の一辺の側においてほぼ重ね合せられた複数の鳩目を挿入して引っ掛けるための鳩目引掛け部と、
作業現場の設置物に遊動係止状態で当該鳩目引掛け具の全体を支持する遊動係止部と
前記シートの特定の一辺の側の複数の鳩目を挿入させると共に、一度挿入されて引っ掛けられた当該複数の鳩目の抜け出しを防止すべく、内側の連続する部分に対して折り曲げられた挿入部とを備え、
前記鳩目引掛け部、遊動係止部及び挿入部は、各部分が1本の太い金属線を折り曲げることで一体に形成されていることを特徴とする鳩目引掛け具。
【請求項5】
一対の鳩目引掛け部、及び一対の挿入部が前記遊動係止部の両側に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の鳩目引掛け具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートの折り畳みを一人の作業者で行えるシートの折畳み方法、及び鳩目引掛け具に関するものである。
【0002】
本発明における折り畳みの対象のシートとしては、「鳩目付シート」と「鳩目なしシート」とがあるが、「鳩目付シート」とは、周縁部に固定用の鳩目が設けられていて、工事中の建物の隠蔽、発生するゴミ類の飛散防止等のために、当該建物の周囲を覆うシート、建物の塗装工事において、飛散塗料を付着させるために、建物の周囲を覆うシート等の種々の用途のシートが含まれ、或いは名称の如何を問わず「ネット」,「メッシュ」と称されるものも含まれる。
また、図12に示されるように、「鳩目P」は、一般に軽金属で製作されているが、シート本体の周縁部に狭幅の繊維編成物51が一体に縫着されて、当該繊維編成物51に一定ピッチをおいて「繊維鳩目」と称される引っ掛け用の「孔部52」が設けられているシートにおける当該「孔部52」も本発明における「鳩目」に含まれる。
【0003】
また、本明細書において、符号を付さずに使用する一般的な用語である「シート」は、「鳩目付シート」と「鳩目なしシート」の双方を含む概念であり、「シート」のうち鳩目付のシート又は鳩目なしのシートを特定する場合には、それぞれ「鳩目付シート」及び「鳩目なしシート」と表示する。
【背景技術】
【0004】
例えば、建築工事においては、特許文献1に示されるように、建物の周囲に仮設された足場に鳩目付のシートを取付けることで、当該建物を覆っており、当該シートは、その周縁部に一定ピッチをおいて設けられた鳩目を利用して、足場を構成するパイプ部材に紐類を介して連結される。
【0005】
ここで、我が国の建築工事業界においては、使用人を有することなく、請け負った作業を一人で行う「一人親方」と称される業者が多数存在する。
【0006】
上記した建物の周囲をシートで覆う作業は、シートの鳩目の部分を足場のパイプ部材に順次連結することで、一人でも行える。しかし、足場から取り外したシートを折り畳むのを一人で行おうとすると、一人の作業者が、シートの折畳み方向に対して直交する被折畳み方向に沿って何回も往復移動する必要があって、折り畳みに時間を要するのみならず、一人では鳩目付シートを被折畳み方向に引っ張ることができないので、折り畳まれたシートは、大きく膨らんだ状態になってしまい、トラックの荷台に載せて運搬する際には、嵩張ることで、荷台のスペースを大きく占有してしまう。
【0007】
また、工事現場で使用されるシートの枚数は多いので、多数枚のシートを限定された時間内に一人で折り畳む作業は、多大の労力と時間を要し、しかも嵩張らずに偏平に折り畳むことができないため、「一人親方」にとっては、厄介な作業であった。
【0008】
また、使用人を有する業者にとっても、仕事の配分の関係等からして、シートの折り畳みを一人で行わざるを得ない事態が発生し得る。
【0009】
現実の建築工事業界におけるシートの折畳み作業の実情は、上記した通りであって、一切の改善がなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実用新案登録第3140281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、建築作業現場等で使用された多数枚のシートの折り畳みを作業者一人で迅速、かつ整然と行えるようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための請求項1の発明は、周縁部に鳩目が設けられた鳩目付のシートを作業者一人で折り畳む方法であって、前記シートの特定の一辺の側において折畳み方向と直交する方向に沿って所定長だけ部分的に重ね合せることで、前記特定の一辺の側においてほぼ重ね合せられた複数の鳩目を挿入して引っ掛けるための鳩目引掛け部を備えた鳩目引掛け具を使用し、前記シートの特定の一辺の側のみを折畳み方向と直交する方向に沿って所定長に亘って部分的に折り畳んで、ほぼ同一位置に重ね合せられた複数の鳩目を、作業現場の適所に固定された前記鳩目引掛け具の鳩目引掛け部に挿入して引っ掛けることで、シートの部分的な折畳み状態を保持しておいて、前記シートの前記特定の一辺と対向する対向辺の側において、当該シートを折畳み方向と直交する方向に引っ張りながら、前記特定の一辺の側と同一の状態に折り畳むことを特徴としている。
【0013】
請求項1の発明によれば、作業者は、作業現場の適所に鳩目引掛け具を固定し、シートの特定の一辺の側のみを折畳み方向と直交する方向に沿って所定長に亘って部分的に折り畳むことで、複数の鳩目がほぼ同一位置に重ね合せられ、重ね合せられた複数の鳩目を前記鳩目引掛け具の鳩目引掛け部に挿入して引っ掛けることで、シートにおける前記特定の一辺の側において、当該シートは、被折畳み方向に沿って部分的に重ね合せられて、部分的な折畳み状態が保持される。この状態で、作業者は、前記特定の一辺の側と対向する対向辺の側において、当該シートを被折畳み方向に引っ張ることで、シートを順次折り畳むことができる。
【0014】
ここで、シートを部分的に折り畳むことで、重ね合せられた複数の鳩目は、その全てを鳩目引掛け具の鳩目引掛け部に挿入して引っ掛ける必要はなく、シートの部分的な折畳み状態で保持できれば、重ね合せられた複数の鳩目の一部のみを鳩目引掛け具の鳩目引掛け部に挿入して引っ掛けてもよく、更に、シートの鳩目と、鳩目引掛け部に対する鳩目引掛け具の部分のシートの突刺との併用によって、シートの部分的な折り畳み状態を保持させてもよい。
【0015】
このように、シートの特定の一辺の側においては、シートを引っ張ると、当該シートは、恰も、鳩目引掛け具の側において別の作業者が引っ張っている状態を実現できるので、作業者一人でシートを迅速に、しかも整然と折り畳むことが可能となる。また、シートの鳩目の部分を鳩目引掛け具の鳩目引掛け部に引っ掛けているので、シートを引っ張っても、当該シートは損傷されない。
【0016】
請求項2の発明は、鳩目なしシートを作業者一人で折り畳む方法であって、前記シートの特定の一辺の側において折畳み方向と直交する方向に沿って所定長だけ部分的に重ね合せて折り畳んだ部分に突刺させて、部分的な当該折畳み状態を保持するシート突刺部を備えた折畳み状態保持具を使用し、前記シートの特定の一辺の側のみを折畳み方向と直交する方向に沿って所定長に亘って部分的に折り畳んで、シートにおける部分的な当該折畳み部に前記折畳み状態保持具の突刺部を突刺させて、シートの部分的な折畳み状態を保持しておいて、前記シートの前記特定の一辺と対向する対向辺の側において、当該シートを折畳み方向と直交する方向に引っ張りながら、前記特定の一辺の側と同一の状態に折り畳むことを特徴としている。
【0017】
請求項1の発明は、鳩目引掛け具の鳩目引掛け部に鳩目付シートの鳩目を挿入して引っ掛けることで、当該鳩目付シートの折畳み状態を保持しているのに対して、請求項2の発明は、部分的に折り畳まれた鳩目なしシートを直接に折畳み状態保持具の突刺部に突刺させることで、当該鳩目なしシートの部分的な折り畳み状態を保持している点に特徴を有する。このように、請求項1と同2の各発明の差異は、部分的に折り畳まれた鳩目付又は鳩目なしのシートの折畳み状態を保持する手段が異なるのみであって、部分的な折り畳み状態を保持した状態において、特定の一辺の側(部分的な折畳み状態となっている側)と対向する側において、当該鳩目付又は鳩目なしのシートを引っ張って、前記特定の一辺の側と同一の状態に折り畳むことは共通している。
【0018】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、鳩目付のシートの特定の一辺の側の折畳み方向と直交する方向に沿った所定長の部分を1又は複数回だけ折り畳んで最終的な折畳み状態にしておいて、
前記シートの前記特定の一辺と対向する対向辺の側において、当該シートを折畳み方向と直交する方向に沿って引っ張りながら、前記特定の一辺の側と同一回数だけ折り畳むことで、前記鳩目引掛け具からシートの前記対向辺の側への折畳み作業者の単に1回の移動により、当該シートの折り畳みを可能にしたことを特徴としている。
【0019】
請求項3の発明によれば、鳩目引掛け具の部分において、シートの一方の辺の側を1又は複数回だけ折り畳んで、最終的な折り畳み状態にしておくことで、作業者は、当該鳩目引掛け具の部分から当該シートの一方の辺と対向する対向辺の側に1回だけ移動するのみで、一人の作業者により、シートを折り畳むことが可能となる。その結果、シートの折畳みの能率が高まる。
【0020】
請求項4の発明は、作業現場の設置物に遊動係止状態で支持されて、請求項1又は3に記載の鳩目付のシートの折畳み方法に使用される鳩目引掛け具であって、
前記シートの特定の一辺の側において折畳み方向と直交する方向に沿って所定長だけ部分的に重ね合せることで、前記特定の一辺の側においてほぼ重ね合せられた複数の鳩目を挿入して引っ掛けるための鳩目引掛け部と、
作業現場の設置物に遊動係止状態で当該鳩目引掛け具の全体を支持する遊動係止部と
前記シートの特定の一辺の側の複数の鳩目を挿入させると共に、一度挿入されて引っ掛けられた当該複数の鳩目の抜け出しを防止すべく、内側の連続する部分に対して折り曲げられた挿入部とを備え、
前記鳩目引掛け部、遊動係止部及び挿入部は、各部分が1本の太い金属線を折り曲げることで一体に形成されていることを特徴としている。
【0021】
請求項4の発明によれば、1本の太い金属線を折り曲げることで、鳩目引掛け部、遊動係止部及び挿入部の機能の異なる3つの各部分が一体に形成された極めて簡単な構成の鳩目引掛け具の使用により、一度挿入された鳩目引掛け部に引っ掛けられた複数の鳩目が抜け出るのを防止して、請求項1又は3の発明を実施できて、一人の作業者により、シートを迅速、かつ整然と折り畳むことが可能となる。
【0022】
請求項5の発明は、請求項4の発明において、一対の鳩目引掛け部及び一対の挿入部が前記遊動係止部の両側に配置されていることを特徴としている。
【0023】
【0024】
請求項5の発明によれば、一対の鳩目引掛け部、及び一対の挿入部を備えているために、2枚のシートの特定の一辺の側において、当該2枚のシートにおける特定の一辺の部分を折り畳んで、まとめて鳩目引掛け具に固定できるため、鳩目引掛け具の側から、シートの対向辺の側への作業者の移動は、計2枚のシートに対して1回で済む。よって、シートの折畳みの能率が一層に高められる。
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、鳩目付シートの特定の一辺の側を部分的に折り畳むことで、重ね合せられた複数の鳩目を、鳩目引掛け具の鳩目引掛け部に挿入して引っ掛けておいて、又は、鳩目なしシートの特定の一辺の側を部分的に折り畳むことで、重ね合せられた部分に対して折畳み状態保持具の突刺部を突刺させることで、折畳み状態を保持しておいて、鳩目付又は鳩目なしのシートにおける前記特定の一辺の対向する対向辺の側を引っ張った状態で、シートの未折畳み部を折り畳むことで、恰も二人の作業者によりシートを折り畳む状態を実現できるため、シートの折り畳みを一人の作業者により、迅速で、しかも整然と行える。また、鳩目引掛け具を用いてシートを折り畳んだ場合には、シートの損傷が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】(a),(b),(c)は、それぞれ鳩目引掛け具E1 の斜視図、異なる方向から見た斜視図、及び平面図である。
図2】(a),(b)は、それぞれ展開状の鳩目付のシートS1 の斜視図、及び四つ折りに折り畳まれたシートS1bの鳩目P1 〜P3 の配置位置を主体に示す部分斜視図である。
図3】(a)〜(e)は、鳩目引掛け具E1 を使用して、一人の作業者MによりシートS1 が四つ折りに折り畳まれる順序を示す模式図である。
図4図3の(c)の状態を示す斜視図である。
図5図3の(d)の状態を示す斜視図である。
図6】(a)は、四つ折りに折り畳まれたシートS1bの斜視図であり、(b)は、シートS1bを巻回状態に折り畳んだシートS1cの側面図である。
図7】鳩目引掛け具E1 の一対の鳩目引掛け部6に2枚のシートS1bの鳩目P1 〜P3 をそれぞれ引っ掛けた状態の斜視図である。
図8】(a),(b)は、それぞれ鳩目付のシートS2 の斜視図、及び当該シートS2 を八つ折りに折り畳んだ状態を鳩目P1 〜P4 の配置との関係で示した部分斜視図である。
図9】(a),(b)は、いずれも実施例1の鳩目引掛け具E1 を構成する一対の鳩目引掛け部6を備えた鳩目引掛け体2のみで使用する状態を示す斜視図である。
図10】(a),(b),(c)は、それぞれ実施例2の鳩目引掛け具E2 の使用状態の斜視図、異なる方向から見た斜視図、及び側面図である。
図11】(a)は、折畳み状態保持具E3 を使用して鳩目なしシートS3 の折畳み状態を保持している斜視図であり、(b)及び(c)は、折畳み状態保持具E3 を異なる方向から見た斜視図、及び側面図である。
図12】(a),(b)は、それぞれ本来の鳩目Pを有するシートS1 (S2 )及び繊維鳩目と称される孔部52を有するシートS’の部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、複数の実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。
【実施例1】
【0034】
最初に実施例1の鳩目引掛け具E1 及び当該鳩目引掛け具E1 を使用したシートの折畳み方法について説明する。鳩目引掛け具E1 は、図1に示されるように、作業現場の適所に引っ掛けて固定される引掛け固定体1と、当該引掛け固定体1に遊動可能に連結された鳩目引掛け体2とから成る。引掛け固定体1は、金属板の一端部がコの字形に折り曲げられて引掛け固定部3が形成されていると共に、その他端部のL字形に折り曲げられた部分に、線材挿通孔4が形成された構成である。
【0035】
鳩目引掛け体2は、番線と称される太い金属線を折り曲げることで、長さ方向の中央部に、前記引掛け固定体1の線材挿通孔4に遊動状態で挿通されて係止される側面視でほぼリング形状の遊動係止部5が設けられていると共に、当該遊動係止部5の両側には、正面視において当該遊動係止部5に対してほぼ対称な形状となる一対の鳩目引掛け部6がそれぞれ設けられている。鳩目引掛け部6は、太い金属線の長手方向の中央部の遊動係止部5の両側の部分が、鳩目付きのシートS1 (S2 )の特定の一辺の側を折り畳むことで重ね合せられた複数の鳩目Pの挿入及び抜出し防止の双方を行える形状に、ほぼ同一面内において折り曲げられたものである。鳩目引掛け部6における金属線の端部は、他の部分の折り曲げ方向とは逆の方向に折り曲げられて鳩目Pの挿入部6aとなっていて、当該挿入部6aに接続する直線部は、挿入された鳩目Pを奥側の引掛け係止部6c,6dに案内する案内部6bとなっている。連続した短直線状の引掛け係止部6c,6dは、鈍角を形成していて、当該引掛け係止部6c,6dに引っ掛けられた複数の鳩目Pは、鳩目引掛け部6を形成する金属線の折り曲げによる複雑な形状、及びシートS1 (S2 )に作用する引張り力により、当該鳩目引掛け部6から抜け出ない構造になっている。また、鳩目引掛け部6を構成する各部分のうち、挿入部6aのみが他の複数の部分と反対側に折り曲げられることで、一度挿入されて引っ掛けられたシートS1 (S2 )の鳩目Pが抜け出るのが難しい形状にしてある。
【0036】
図2に示される長方形状シートS1 は、計4辺の各周縁部がそれぞれ補強され、シートS1 の各コーナー部に鳩目Pが設けられていると共に、計4辺の各周縁部には、複数の鳩目Pが一定ピッチをおいて設けられている。シートS1 の短辺の部分には、両端の各コーナー部の鳩目Pを除いて計3つの鳩目Pが一定ピッチをおいて設けられている。ここで、シートS1 の折り畳みの説明との関係において、シートS1 の短辺部(両コーナー部を含む)に設けられた複数の鳩目Pを特定する場合には、鳩目の符号「P」に添字を付して、P1 ,P2 ,P3 のように表示する。図2(b)は、シートS1 を短辺方向に沿って4つ折りに折り畳んだ状態において、短辺部の両端(コーナー部)の2つの鳩目P1 と中央部の1つの鳩目P2 とが重ね合せられて、この計3つの各鳩目P1 ,P3 が、鳩目引掛け具E1 の鳩目引掛け体2を構成する鳩目引掛け部6に引っ掛けられる。
【0037】
次に、図3図6を参照して、上記した鳩目引掛け具E1 を使用して、シートS1 を作業者一人で折り畳む方法について説明する。まず、図4に示されるように、作業現場の近くにおいて、鳩目引掛け具E1 を引っ掛けられる部分を探し出し、当該鳩目引掛け具E1 の引掛け固定体1の引掛け固定部3を引っ掛けて固定する。図示例では、作業現場の近辺の金網フェンス41を使用し、当該金網フェンス41の水平方向の金属線42aに引掛け固定部3を引っ掛けることで、引掛け固定体1の両側の垂直方向の金属線42bによって、水平方向への大きな移動が防止された状態で、前記した水平方向の金属線42aに固定される。
【0038】
まず、図3(a),(b)及び図4に示されるように、一人の作業者Mは、長方形状のシートS1 の一方の短辺部を二つに折り畳んで、当該短辺部の両端(コーナー部)の2つの鳩目P1 を、鳩目引掛け体2の鳩目引掛け部6を構成する挿入部6aに挿入した後に、案内部6bを通過させて、引掛け係止部6c,6dの部分に係止させる。その後に、図3(c)に示されるように、二つ折りに折り畳まれたシートS1 を更に二つ折りに折り畳んで、前記短辺部の中央の鳩目P2 を鳩目引掛け体2の引掛け係止部6c,6dに係止させる。この係止状態が、図4に拡大して示されており、シートS1 の特定の一辺の側である一方の短辺部の側は、折畳み方向と直交するシートS1 の長手方向に沿った途中まで、不完全な状態で四つ折りされていて、前記特定の一辺と対向する対向辺である他方の短辺部の側においては、シートS1 は、1枚状に拡げられたままで、全く折り畳まれていない。
【0039】
次に、作業者Mは、シートS1 の他方の短辺部の側に移動して、図3(c)及び図4に示されるように、当該他方の短辺部において、シートS1 に長辺方向に沿った張力Tを加えることで引っ張りながら、両端部である各コーナー部の鳩目P1 の部分を掴んで二つ折りに折り畳んだ後に、図3(d)及び図5に示されるように、二つ折りにされたシートS1aの両端部を掴んで、更に二つ折りに折り畳むと、シートS1aは、図6(a)に示されるように、四つ折りに折り畳まれたシートS1bとなる。このように、鳩目引掛け具E1 の使用によって、シートS1 の一方の短辺部の鳩目P1 ,P2 を鳩目引掛け部6に引っ掛けて、シートS1 の他方の短辺部を引っ張りながら折り畳むことができ、この状態は、恰も、二人の作業者がシートS1 を引っ張りながら折り畳んでいる状態と同一である。このため、一人の作業者により、シートS1 を迅速に、しかも皺類が発生することなく、整然と折り畳むことができる。なお、図3(b)〜(d)において、S1a, S1bは、それぞれシートS1 を完全に四つ折りする途中において、部分的に二つ折り又は四つ折りされた部分を示す。
【0040】
また、シートS1 (S1a) を引っ張りながら折り畳む際には、鳩目引掛け具E1 の鳩目引掛け体2の部分に張力が作用するが、当該鳩目引掛け体2は、引掛け固定体1の線材挿通孔4に対して遊動状態で挿通されて係止されているため、張力の作用方向に応じて、自在に向きが変えられるため、シートS1 (S1a) が捩じられた状態で折り畳まれることがなくなって、シートを損傷させることなく、常に整然と折り畳むことが可能となる。なお、図3において、6は、二つ折り又は四つ折りとなったシートS1a(S1b) の鳩目P1 ,P2 に挿通された鳩目引掛け具E1 の鳩目引掛け体2を構成する鳩目引掛け部6を直線的に模式表示したものである。
【0041】
なお、四つ折りに折り畳まれたシートS1bは、図6に示されるように、長手方向に沿って巻回状態で折り畳むことで、直交する2方向に折り畳まれたシートS1cとなる。
【0042】
鳩目引掛け具E1 は、図7に示されるように、一対の鳩目引掛け部6に、部分的に四つ折りされた2枚のシートS1bの鳩目P1 ,P2 をそれぞれ引っ掛けることができるので、2枚のシートS1 の一方の短辺部の側を部分的に四つ折りにして、各鳩目P1 ,P2 を一対の鳩目引掛け部6にそれぞれ引っ掛けた後に、2枚のシートS1 の他方の短辺部の側に移動して、当該2枚のシートS1 をそれぞれ四つ折りに折り畳むことができるので、折畳みの能率が一層に高められる。また、鳩目引掛け具E1 を構成する一対の鳩目引掛け部6に、それぞれ2枚のシートS1 の各鳩目P1 ,P2 が引っ掛けられて、当該一対の鳩目引掛け部6は、力的に左右にバランスして、大きく遊動しなくなる結果、シートS1 の折畳み時において、鳩目引掛け部6に引っ掛けた側の捩じれも少なくなって、シートS1 の折畳み作業も容易となる。
【0043】
図8に示されるシートS2 は、短辺部に計9個の鳩目P1 〜P4 が一定ピッチで設けられていて、当該シートS2 を八つ折りして折り畳む場合において、折畳み状態においてほぼ重ね合せられて、鳩目引掛け具E1 の鳩目引掛け部6に挿通して引っ掛けられる鳩目P1 〜P3 と、引っ掛けられない鳩目P4 とを示している。本発明に係る鳩目引掛け具E1 を使用すれば、シートS2 を八つ折りで折り畳む場合においても、一人の作業者により行える。
【0044】
また、シートS2 を八つ折りする場合には、折り畳み数が多いので、鳩目引掛け具と対向辺の部分を作業者が一往復半することで、一旦、完全に四つ折りした後に、更に、折り畳んで八つ折りにすることも可能である。
【0045】
なお、上記した鳩目引掛け具E1 の使用に関しては、図9に示されるように、引掛け固定体1の使用を止めて、左右一対の鳩目引掛け部6を備えた鳩目引掛け体2のみを使用して、シートS1 (S2 )を折り畳むことで、重ね合せられた複数の鳩目Pを引っ掛けることも可能である。即ち、図9(a)は、工事現場の近辺の電柱43に番線(金属線)44を巻き付けた状態で固定し、前記鳩目引掛け体2の遊動係止部5を前記番線44に、ほぼ全方向に遊動状態で引っ掛けることが可能である。また、図9(b)は、金網フェンス41の金属線42aに直接に鳩目引掛け体2を遊動状態で引っ掛けたものである。
【0046】
なお、シートS1 (S2 )の特定の一辺の側において、鳩目引掛け具E1 の引掛け係止部6c,6dにシートS1 (S2 )の各鳩目P1 〜P3 (P4 )を挿入し引っ掛ける場合においても、互いに重ね合せられた全ての鳩目P1 ,P2 (P1 〜P3 )を引っ掛ける必要はなく、その一部の引っ掛けを欠落させたり、或いはシートS1 (S2 )自体に突刺させてもよい。
【実施例2】
【0047】
図10に示される鳩目引掛け具E2 は、1本の番線(金属線)を折り曲げて形成され、当該番線を正面視でU字状に折り曲げて、U字部の両端部をそれぞれ逆U字状に折り曲げることで形成された遊動係止部13と、当該遊動係止部13の両側に接続された一対の鳩目引掛け部16とから成る。鳩目引掛け部16は、遊動係止部13の逆U字状部の下端部から前方に向けてほぼ直角に折り曲げられた係止空間確保部16aと、当該係止空間確保部16aから外方であって僅かに前方に向けて折り曲げられた引掛け係止部16bと、当該引掛け係止部16bの外側の端部を上方に向けて鋭角状に折り曲げることで形成された挿入部16cとで構成される。
【0048】
例えば、図10(a)に示されるように、鳩目引掛け具E2 遊動係止部13を、足場の支柱61に溶接されたフック62に引っ掛けられる。鳩目引掛け部16の挿入部16cから挿入された複数の鳩目Pは、引掛け係止部16bに引っ掛けられることで、容易には抜け出ない形状になっている。足場の支柱61は、必ず存在するので、そのフック62に引っ掛けるのに便利である。
【実施例3】
【0049】
上記各実施例1,2は、鳩目引掛け具E1 ,E2 を使用して、その引掛け係止部6c,6d(16b)に、鳩目付のシートS1 (S2 )の鳩目P1 ,P2 (P1 〜P3 )を挿入して引っ掛けることで、シートS1 (S2 )の特定の一辺の側の部分的な折畳み状態を保持するものである。しかし、本発明(請求項2の発明)においては、折畳み状態保持具E3 の使用により、鳩目なしシートS3 の特定の一辺の側の折り畳み状態の保持が可能となる。
【0050】
上記した折畳み状態保持具E3 は、図11に示されており、1本の番線を折り曲げて形成されたものであって、番線を逆U字状に折り曲げた遊動係止部23と、当該遊動係止部23の逆U字部の一方の端部からわん曲されてほぼ水平方向に延設された固定補助部24と、突刺引掛け部26とで構成される。突刺引掛け部26は、前記遊動係止部23の逆U字部の他方の端部が前方に向けて直角に折り曲げられ、所定長だけ水平方向に伸びることで形成された係止空間確保部26aと、当該係止空間確保部26aの端部が上方にほぼ直角に折り曲げられることで形成された引掛け係止部26bと、当該引掛け係止部26bの上端部が僅かに折り曲げられることで形成された突刺部26cとから成る。突刺部26cは、鳩目なしシートS3 の挿入部を兼用していて、その先端部は、鳩目なしシートS3 に対して突刺可能なように、先細りとなっている。
【0051】
図11(a)に示されるように、折畳み状態保持具E3 遊動係止部23及び固定補助部24を、それぞれを金網フェンス41の水平方向及び垂直方向の金属線42a,42bに引っ掛けることで、折畳み状態保持具E3 は、金網フェンス41を構成する水平方向及び垂直方向の金属線42a,42bに固定される。この状態では、引掛け係止部26bは、係止空間確保部26aの存在によって、金網フェンス41に対して所定長だけ離れて配置される。鳩目なしシートS3 の特定の一辺の側を折り畳むことで、その折畳み状態を保持できるように、部分的な折畳み部に対して前記折畳み状態保持具E3 の突刺部26cを突刺させる。
【0052】
なお、鳩目なしシートS3 としては、ロール状に巻回されたシートを現場で巻き戻して、建築中の建物の床面の養生シートとして利用するものが典型例であって、この養生用シートを折り畳んで、再使用する場合に、本発明が実施される。
【0053】
また、本発明の鳩目付シートの折畳み方法の実施に使用される鳩目引掛け具として、実施例1,2の各鳩目引掛け具E1 ,E2 を例示したが、本発明に係る鳩目引掛け具としては、シートS1 (S2 )を折り畳むことで、互いに重ね合せられた複数の鳩目Pを抜け出ることなく引っ掛けられる形状の「鳩目引掛け部」を備えておれば、上記した鳩目引掛け具E1 ,E2 に限定されず、如何なる形状であってもよい。
【0054】
鳩目引掛け具を引っ掛けて固定する対象物としては、上記したもの以外に、トラックの荷台部分に番線を縛り付けて形成した引掛け具も考えられる。
【符号の説明】
【0055】
1 ,E2 :鳩目引掛け具
3 :折畳み状態保持具
M:作業者
P,P1 〜P4 :鳩目
1 ,S2 :鳩目付シート
3 :鳩目なしシート
1a:二つ折りに折り畳まれた鳩目付シート又は鳩目付シートの二つ折りに折り畳まれた部分
1b:四つ折りに折り畳まれた鳩目付シート又は鳩目付シートの四つ折りに折り畳まれた部分
1c:直交する2方向に折り畳まれた鳩目付シート
1:引掛け固定体
2:鳩目引掛け体
3:引掛け固定部
6,16:鳩目引掛け部
6a,16c:挿入部
6c,6d,16b,26b :引掛け係止部
13,23:遊動係止部
26:突刺引掛け部
26c:突刺部(挿入部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12