特許第6195826号(P6195826)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ケーシーアイ ライセンシング インコーポレイテッドの特許一覧

特許6195826創傷治療ドレッシングに流体を供給するシステムおよび方法
<>
  • 特許6195826-創傷治療ドレッシングに流体を供給するシステムおよび方法 図000002
  • 特許6195826-創傷治療ドレッシングに流体を供給するシステムおよび方法 図000003
  • 特許6195826-創傷治療ドレッシングに流体を供給するシステムおよび方法 図000004
  • 特許6195826-創傷治療ドレッシングに流体を供給するシステムおよび方法 図000005
  • 特許6195826-創傷治療ドレッシングに流体を供給するシステムおよび方法 図000006
  • 特許6195826-創傷治療ドレッシングに流体を供給するシステムおよび方法 図000007
  • 特許6195826-創傷治療ドレッシングに流体を供給するシステムおよび方法 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6195826
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】創傷治療ドレッシングに流体を供給するシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 27/00 20060101AFI20170904BHJP
【FI】
   A61M27/00
【請求項の数】17
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-512943(P2014-512943)
(86)(22)【出願日】2012年5月22日
(65)【公表番号】特表2014-516713(P2014-516713A)
(43)【公表日】2014年7月17日
(86)【国際出願番号】US2012038945
(87)【国際公開番号】WO2012166428
(87)【国際公開日】20121206
【審査請求日】2015年5月21日
(31)【優先権主張番号】61/490,880
(32)【優先日】2011年5月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508268713
【氏名又は名称】ケーシーアイ ライセンシング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ロック,クリストファー,ビー.
(72)【発明者】
【氏名】ベンデル,ケヴィン
(72)【発明者】
【氏名】ラックメイヤー,ジェイムズ
【審査官】 和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0118096(US,A1)
【文献】 特表2010−517682(JP,A)
【文献】 特表2009−502301(JP,A)
【文献】 特表2009−520516(JP,A)
【文献】 特表2008−538959(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0275884(US,A1)
【文献】 特表2002−524109(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0015587(US,A1)
【文献】 特開2010−137084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰圧創傷ドレッシングに液体を供給するためのシステムにおいて、
創傷ドレッシングに負圧を与えるように構成された負圧源と;
導管を介して前記創傷ドレッシングに液体を供給するように構成された流体流動装置と;
前記創傷ドレッシングと前記負圧源との間を流体連通するように構成された溜め部と;
前記負圧源の動作が停止するときに前記溜め部を大気に開放するように構成された通気口と;
前記負圧源から前記創傷ドレッシングへの流体の流れを制限するように構成された逆止弁と;
前記創傷ドレッシングにおいて予め定められた圧力を検出すると、制御信号を送信するように構成されており、前記予め定められた圧力が前記創傷ドレッシング内の所望の容量の液体を示す、圧力センサーと;
前記圧力センサーから前記制御信号を受信するように構成された制御装置であって、前記圧力センサーが前記制御信号を送信するまで前記創傷ドレッシングに前記流体流動装置から液体を供給させるように構成された制御装置と;
を含むことを特徴とする、システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記圧力センサーが前記創傷ドレッシングにおいて前記予め定められた圧力を検出するときの、視覚的または可聴式インジケータをさらに含むことを特徴とする、システム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記流体流動装置がポンプであることを特徴とする、システム。
【請求項4】
請求項3に記載のシステムにおいて、前記制御装置が、前記ポンプの電源を入れたりまたは切ったりするように構成された制御スイッチであることを特徴とする、システム。
【請求項5】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記流体流動装置が蠕動ポンプであることを特徴とする、システム。
【請求項6】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記流体流動装置が遠心ポンプであることを特徴とする、システム。
【請求項7】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記流体流動装置が第2の弁であることを特徴とする、システム。
【請求項8】
請求項7に記載のシステムにおいて、前記制御装置が、前記第2の弁の位置を変更するように構成されたアクチュエータであることを特徴とする、システム。
【請求項9】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記流体流動装置がソレノイド駆動型ピンチ弁であることを特徴とする、システム。
【請求項10】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記制御装置は、前記圧力センサーが前記創傷ドレッシングにおいて前記予め定められた圧力を検出すると、前記流体流動装置の動作を停止させるように構成された制御スイッチを含むことを特徴とする、システム。
【請求項11】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記制御装置は、前記圧力センサーが前記創傷ドレッシングにおいて前記予め定められた圧力を検出すると、閉鎖するように構成されたソレノイド弁を含むことを特徴とする、システム。
【請求項12】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記予め定められた圧力が約0.0mm Hgであることを特徴とする、システム。
【請求項13】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記予め定められた圧力が、約−1.0mm Hg〜1.0mm Hgであることを特徴とする、システム。
【請求項14】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記流体流動装置が、前記負圧源の動作が停止すると前記創傷ドレッシングに液体を供給するために動作するように構成されており、
前記流体流動装置が、さらに、前記創傷ドレッシングが前記予め定められた圧力に達すると前記創傷ドレッシングへの液体の流れを制限するために動作を停止するように構成されていることを特徴とする、システム。
【請求項15】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記流体流動装置が、流体供給溜めと前記創傷ドレッシングとの間を流体連通することを特徴とする、システム。
【請求項16】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記制御装置が、前記圧力センサーが前記創傷ドレッシングにおける前記予め定められた圧力を検出すると前記創傷ドレッシングへの液体の流れを制限するために前記流体流動装置の動作を停止するように構成されていることを特徴とする、システム。
【請求項17】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記逆止弁が、前記創傷ドレッシングが負圧にあるときに前記創傷ドレッシングに向けた流体の流れを制限するように構成されていることを特徴とする、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2011年5月27日出願の米国仮特許出願第61/490,880号の優先権を主張し、その内容全体を本願明細書に援用する。
【背景技術】
【0002】
本発明の実施形態は、創傷治療ドレッシングへの流体(例えば液体)の供給に関し、より詳細には、陰圧閉鎖治療ドレッシングに自動流体供給するためのシステムおよび方法に関する。
【0003】
創傷治療ドレッシング用の既存の流体供給システムは、一般に注入システムに基づいている。注目すべきは、薬物供給(delivery)システムに関し、使用者が流体の投与量を決定する責任を負い、かつ一般的に、自動システムを使用して、供給される必要のある所望の液体量を決定しないことである。
【0004】
しかしながら、創傷ドレッシングへの流体供給に関わる分野を考慮する場合、そのような手法は適切ではないとし得る。例えば、創傷ドレッシング流体供給システムは、静注薬物を供給していない。さらに、創傷は均一ではなく、実際に、治療が進むにつれて容積が変化する。それゆえ、用量を処方するために他の領域で用いられた技術を使用することにより、流体の供給不足または供給過剰を生じ、それ相応の問題を伴い得る。既存の供給システムでは、流圧が監視されてラインの閉塞がないかどうか判断され得るが、一般に供給部位における流体の圧力を判断するためには監視されない。
【0005】
それに関連する欠点は、網羅的なものではないが、なかでも、創傷ドレッシングへの流体供給における既知の技術の有効性を損なう傾向があることである;しかしながら、ここで述べるものは、当業界でみられる方法論は満足がいくものではなかったこと、および本開示で説明されかつ特許請求される技術に対するニーズがかなり存在することを実証するのに十分である。陰圧閉鎖療法(NPWT)の補助としての流体の点滴は、現在、使用者に、点滴時間(重力送りシステム)または点滴量(能動的なポンプ動作システム)を規定するように求めることによって、成し遂げられている。
【0006】
ドレッシングを施された創傷の容積を判断することは困難であるため、いずれの手法にも問題があり、かつ所望の充填量に達するまで時間がかかるものとなり得る。「充填支援」手法も使用されており、この手法は、使用者が、メーター計量される流量を、創傷充填の目視観測に基づいて停止する必要がある;その後、自動システムが、次の点滴サイクルにおいて同じ量を計量分配する。
【0007】
しかしながら、この単純化された手法でも、使用者は流れの停止に気を配る必要があり、および創傷への過剰充填、NPWT収集キャニスター容量の無駄、およびドレッシングにおける点滴液の漏出の可能性を容易に引き起こし得る。それゆえ、使用者が、創傷ドレッシングが点滴用の液体を適切な量受け取った時点を判断できるような自動システムおよび方法を開発することが望ましい。
【発明の概要】
【0008】
上述の説明から、創傷治療ドレッシングへの流体の供給が改善されたシステムおよび方法に対するニーズが存在することが明白である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
開示の実施形態における方法は、実質的に、説明のシステムの動作に関して、上述の機能を果たすために必要なステップを含む。
【0010】
本開示の例示的な実施形態は、創傷治療ドレッシングへの流体の自動供給を提供できる。そのような自動化は、介護者が、患者ではなくて装置に気を配る必要をなくすだけでなく、介護者が、ドレッシングが適切に満たされる時点の判断を行うことが困難であるかもしれないという、認識されている問題にも対処する。
【0011】
例示的な実施形態は、介護者の時間と、点滴液の無駄を低減させることとの双方において、効率を高めることができる。例えば、例示的な実施形態は、注意散漫なまたは注意深くない使用者や介護者によって引き起こされる、ドレッシングの予想外の過剰充填の可能性を低くすることができる。そのような過剰充填は、流体供給機能を繰り返したり、あるいは他の動作問題を生じさせたりするために、システムの時間浪費循環動作を必要とし得る。さらに、介護者は、創傷の容積を推定する、または自動充填システムへ他の入力を行う必要がない。
【0012】
本開示の例示的な実施形態は自動流体供給システムを提供し、正しい充填レベルを判断することに関する介護者の能力を高め、これは同様に、過剰充填条件によって空気式の性能が落とされないことを保証する。
【0013】
本開示の例示的な実施形態は、(設置前に)公知の圧力状態に排出されておりかつ漏出がないことが検証されている体積空間に流体を供給するように構成されている。例示的な実施形態は、流体がドレッシングの容積を満たすと発生する圧力の均一化を使用して、正しい充填レベルの指標をもたらすという利点を有する。
【0014】
いくつかの実施形態は、陰圧閉鎖治療ドレッシングに流体を供給するためのシステムを含む。具体的な実施形態では、システムは、創傷ドレッシングと、創傷ドレッシングに結合された負圧源と、創傷ドレッシングと流体連通している流体流動装置と、流体流動装置からの流体の流れを制御するように構成された制御装置と、創傷ドレッシングおよび制御装置に結合された圧力センサーとを含む。特定の実施形態では、圧力センサーを、制御装置に制御信号を送信し、かつ、圧力センサーが創傷ドレッシングにおいて予め定められた圧力を検出すると、流体流動装置からの流体の流れを制御するように、構成する。いくつかの実施形態は、圧力センサーが創傷ドレッシングにおいて予め定められた圧力を検出するときの、視覚的または可聴式インジケータを含む。特定の実施形態では、流体流動装置は、例えば、蠕動ポンプまたは遠心ポンプを含む、ポンプとし得る。いくつかの実施形態では流体流動装置は弁とし得る。
【0015】
具体的な実施形態では、制御装置は、ポンプの電源を入れたりまたは切ったりするように構成された制御スイッチを含む。特定の実施形態では、制御装置は、弁の位置を変更するように構成されたアクチュエータである。いくつかの実施形態では、流体流動装置は、ソレノイド駆動型ピンチ弁である。特定の実施形態は、さらに、負圧源に結合されかつ流体流動装置と流体連通している溜め部を含み得る。具体的な実施形態では、重力送りシステムを介して溜め部から創傷ドレッシングへ流体が流れることができる。
【0016】
特定の実施形態はまた、創傷ドレッシングと溜め部との間に逆止弁を含んでもよく、逆止弁は、溜め部に負圧がないときに、溜め部への流体の流れを制限するように構成されている。いくつかの実施形態では、制御装置は、圧力センサーが創傷ドレッシングにおいて予め定められた圧力を検出すると、流体流動装置の動作を停止させるように構成された制御スイッチを含む。具体的な実施形態では、制御装置は、圧力センサーが創傷ドレッシングにおいて予め定められた圧力を検出すると、閉鎖するように構成されたソレノイド弁を含む。特定の実施形態では、予め定められた圧力は、約−1.0mm Hg〜1.0mm Hgであり、具体的な実施形態では約0.0mm Hgである。
【0017】
いくつかの実施形態は、創傷治療ドレッシングに流体を供給する方法を含む。特定の実施形態では、この方法は、創傷治療ドレッシングに負圧を発生させるステップと、創傷治療ドレッシングに流体を供給するステップと、圧力センサーを介して創傷治療ドレッシングにおける圧力を監視するステップと、圧力が予め定められた値に達すると、流体供給を制限するステップとを含む。具体的な実施形態では、流体供給を制限するステップは、制御スイッチを作動させて、ポンプへのエネルギーの供給を中断することを含む。特定の実施形態では、流体供給を制限するステップは、流体流動装置と創傷治療ドレッシングとの間の弁を閉鎖することを含む。いくつかの実施形態では、弁はソレノイド弁とし得る。
【0018】
具体的な実施形態は、さらに、創傷治療ドレッシングに流体を供給するステップの前に、負圧源の動作を停止させることを含む。いくつかの実施形態は、さらに、重力送りシステムを介して創傷治療ドレッシングに流体の流れをもたらすことを含む。特定の実施形態は、さらに、負圧源と創傷治療ドレッシングとの間に溜め部を設けることを含む。いくつかの実施形態はまた、負圧源と創傷治療ドレッシングとの間に逆止弁を設けることを含み、逆止弁は、負圧源から創傷治療ドレッシングへの流れを制限するように構成されている。具体的な実施形態はまた、負圧源の動作停止後、および創傷治療ドレッシングに流体を供給するためのポンプの作動前に、溜め部を大気に通気させることを含み得る。特定の実施形態では、予め定められた圧力は、約−1.0mm Hg〜1.0mm Hgであり、具体的な実施形態では約0.0mm Hgである。
【0019】
他の特徴および関連の利点は、添付の図面と併せて、以下の具体的な実施形態の詳細な説明を参照することにより、明らかとなる。
【0020】
用語「結合された」は、必ずしも直接ではなく、必ずしも機械的にではないが、接続されたと定義される。
【0021】
用語「a」および「an」は、本開示においてそうではないと明白に求めない限り、1つ以上と定義される。
【0022】
用語「実質的に」およびその変形は、大部分であると定義されるが、必ずしも、当業者が理解するように、特定されるものの全体ではなく、非限定的な一実施形態では、「実質的に」は、特定されるものの10%以内、好ましくは5%以内、一層好ましくは1%以内、および最も好ましくは0.5%以内の範囲を指す。
【0023】
用語「含む(comprise)」(および含むの任意の形態、例えば「含む(comprises)」および「含む(comprising)」)、「有する(have)」(および有するの任意の形態、例えば「有する(has)」および「有する(having)」)、「含む(include)」(および含むの任意の形態、例えば「含む(includes)」および「含む(including)」)、および「含む(contain)」(および含むの任意の形態、例えば「含む(contains)」および「含む(containing)」)は、オープンエンドの連結動詞である。その結果、1つ以上のステップまたは要素を「含む(comprises)」、「有する」、「含む(includes)」、または「含む(contains)」方法または装置は、それら1つ以上のステップまたは要素を保有するが、それら1つ以上の要素のみを保有することに限定されない。同様に、1つ以上の特徴を「含む(comprises)」、「有する」、「含む(includes)」、または「含む(contains)」方法のステップ、または装置の要素は、それら1つ以上の特徴を保有するが、それら1つ以上の特徴のみを保有することに限定されない。さらに、特定の方法で構成されている装置または構造は、少なくともその方法で構成されているが、同様に、記載されていない方法で構成されてもよい。
【0024】
用語「負圧」は、装置を使用する場所の絶対気圧を下回る絶対圧を指す。それゆえ、ある領域において述べられたレベルの負圧は、その領域における絶対気圧と絶対圧との相対的測定値である。負圧が上昇しているとの記述は、その領域にある圧力が、気圧の方に動いていることを意味する(すなわち絶対圧が上昇している)。数値を使用する場合、圧力の数値の前にマイナス符号が置かれて、値が気圧に対して負圧であることを示す。
【0025】
以下の図面は本明細書の一部をなし、かつ、本発明の例示的な実施形態の特定の態様をさらに実証するために含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、第1の動作モードにおける、創傷治療ドレッシングに流体を供給するためのシステムの一実施形態を示す概略的なブロック図である。
図2図2は、第2の動作モードにおける、図1の実施形態の概略的なブロック図である。
図3図3は、第3の動作モードにおける、図1の実施形態の概略的なブロック図である。
図4図4は、第1の動作モードにおける、創傷治療ドレッシングに流体を供給するための図1の実施形態を示す平面図である。
図5図5は、第2の動作モードにおける図4の実施形態を示す平面図である。
図6図6は、第2の動作モードにおける図4の実施形態を示す平面図である。
図7図7は、創傷治療ドレッシングに流体を供給する方法の一実施形態において実施できる一連のステップを示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
様々な特徴および利点の詳細を、添付の図面に示されかつ以下の説明で詳述される非限定的な実施形態を参照してより十分に説明する。周知の出発原料、処理技術、構成要素、および設備の説明は、不必要に本発明の詳細を曖昧にすることがないように、省略する。しかしながら、詳細な説明および具体例は、本発明の実施形態を示すものの、限定ではなく説明のために与えられるにすぎないことを理解されたい。根本的な発明の概念の趣旨および/または範囲内の様々な代替、修正、追加、および/または再構成が、本開示から当業者に明らかとなる。
【0028】
以下の説明では、材料選択、寸法などの例など、多数の具体的な詳細が提供され、本実施形態の十分な理解をもたらす。しかしながら、当業者は、本発明を、具体的な詳細の1つ以上がなくても、または他の方法、構成要素、材料などを用いても実施し得ることを認識するであろう。他の例では、本発明の態様を曖昧にするのを避けるために、周知の構造、材料、または動作については図示されないまたは詳細には説明されない。
【0029】
図1〜3は、陰圧閉鎖療法システムに流体供給をもたらすシステム100の一実施形態を示す。図示の例示的な実施形態では、システム100は、溜め部110と、創傷ドレッシング120と、溜め部110および創傷ドレッシング120に結合された負圧源130とを含む。この実施形態では、システム100は、流体供給溜め140および創傷ドレッシング120と流体連通する流体流動装置150(例えば、以下説明するようなポンプまたは弁)をさらに含む。
【0030】
いくつかの実施形態は、流体流動装置150用のポンプ装置を用いずに、流体供給溜め140から創傷ドレッシング120まで、重力による流体の流れを用い得る。そのような実施形態では、流体流動装置150は、流体供給溜め140と創傷ドレッシング120との間の流体の流れを制御するように構成された弁(例えば、ソレノイド駆動型ピンチ弁)とし得る。さらに他の実施形態では、負圧源130は、重力送りや流体流動装置150からのポンプ作用の支援がなくても、流体を流体供給溜め140から創傷ドレッシング120へ引き込み得る。
【0031】
特に例示的な実施形態では、負圧源130は、ダイヤフラム真空ポンプを含み得る。いくつかの実施形態では、システム100はまた、負圧源130に結合されたフィルターまたはマフラー137を含み、負圧源130の作動音を低減させ得るおよび/または負圧源130から出る空気を濾過し得る。
【0032】
いくつかの例示的な実施形態では、流体流動装置150は、ポンプ、例えば、蠕動ポンプ、遠心ポンプ、または他の好適なポンプを含み得る。他の例示的な実施形態では、流体流動装置は、ポンプの代わりに(またはそれと併せて)重力送りシステムを含み、創傷ドレッシング120に流体を供給し得る。そのような実施形態では、以下十分に説明するように、予め定められた圧力に達すると、重力送りシステムと創傷ドレッシング120との間の弁を使用して、創傷ドレッシング120への流体の流れを制限できる。
【0033】
開示の実施形態では、システム100はまた、溜め部110に通気口190と、創傷ドレッシング120から負圧源130に向かう方向の流れを可能にしかつ逆方向の流体の流れを制限するように構成された逆止弁180とを含む。図1〜3に示す例示的な実施形態はまた、創傷ドレッシング120に結合された圧力センサー160と、負圧源130および創傷ドレッシング120に結合された圧力センサー170とを含む。
【0034】
図1〜3は、システム100の3つの動作モードを示す。図1では、負圧源130は、創傷ドレッシング120に負圧を発生させるように作動されるが、流体流動装置150は作動されない。図2では、負圧源130は作動されないが、流体流動装置150が作動されて、創傷ドレッシング120への流体の流れをもたらす。図3では、負圧源130および流体流動装置150の双方とも作動されない。
【0035】
図1に示すシステム100の初期動作の最中、負圧源130が作動されて、溜め部110および創傷ドレッシング120に負圧を発生させる。負圧源130における圧力、および溜め部110および創傷ドレッシング120が、圧力センサー170と、圧力センサー160とを介して監視され得る(構成要素を結合する導管に閉塞のない通常動作と仮定すれば)。所望のレベルの負圧(例えば、−125mm Hg)に達すると、負圧源130の動作は停止され、かつ通気口190を開放して溜め部110を大気に通気できる。いくつかの実施形態では、逆止弁180は創傷ドレッシング120に負圧を維持し、それを、圧力センサー160を介して監視できる。特定の実施形態では、逆止弁180は、ダックビル型の弁としても、またはボール逆止型の弁としても、またはフラップ型の弁としてもよい。
【0036】
その後、流体流動装置150を作動させ、創傷ドレッシング120への流体供給を開始できる。特定の実施形態では、流体流動装置150を、約100ml/分で流れるように構成し得る。流体流動装置150から創傷ドレッシング120へ流体がポンプで送られるにつれ、創傷ドレッシング120における圧力(圧力センサー160を介して監視できる)は高くなる。創傷ドレッシング120が予め定められた圧力に達すると、圧力センサー160(正圧および負圧の双方を感知するために使用し得る)は、制御信号を制御装置165(例えば制御スイッチまたはアクチュエータ)に送信して、流体流動装置150から創傷ドレッシング120への流体の流れを制限できる。創傷ドレッシング120の圧力の上昇は、流体流動装置150からの流体が創傷ドレッシング120を十分に満たしたことの指標として使用できる。圧力センサー160を用いて創傷ドレッシング120の圧力を監視することによって、システム100は、創傷ドレッシング120が過剰充填される可能性を低くすることができる。これは、過剰充填に関連した流体の浪費および創傷ドレッシングの漏出を低下させ得る。インターフェース回路(図示せず)を利用して、十分に強力な制御信号を生成しかつ制御論理を実施し得ることが理解される。
【0037】
前述したように、いくつかの実施形態では、流体流動装置150は、流体供給溜め140からの流体の流れを制限する弁(例えば、ソレノイド駆動型ピンチ弁)、または流体の流れをもたらすように作動されるポンプとし得る。流体流動装置150の動作(例えば、弁の位置またはポンプの作動/動作停止)は、創傷ドレッシング120において予め定められた圧力が達せられると、自動的に変更され得る。例示的な実施形態では、流体流動装置150の動作が変更される創傷ドレッシング120の予め定められた圧力は、約1.0mm Hg(圧力計160によって測定されるようなゲージ圧)とし得る。具体的な実施形態では、予め定められた圧力は、−10、−9、−8、−7、−6、−5、−4、−3、−2、−1、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10mm Hg、またはそれらの間の任意の値を含む、−10〜10mm Hgとし得る。
【0038】
他の実施形態では、使用者は圧力センサー160を監視し、かつ、創傷ドレッシング120が予め定められた圧力に達すると、流体流動装置150の動作を手動で制御し得る。例えば、使用者は、制御スイッチを操作することによって流体流動装置150の動作を停止させ得るか、または弁を閉鎖することによって流体流動装置150からの流体の流れを制限し得る。
【0039】
創傷ドレッシング120が十分に流体で満たされると、使用者は、所望の流体の点滴および真空療法による治療を継続し得る。例示的な実施形態を各点滴サイクルに使用でき、これは、創傷またはドレッシングの容積が患者の体の位置による影響を受け得る関節部(例えば膝)の創傷ドレッシングにとって利点とし得る。発泡体ドレッシングを利用するいくつかの実施形態では、ドレッシングの容積は、発泡体の圧縮永久歪みに起因して、時間が経つにつれてある程度変化し得る。例えば、発泡体の容積は、発泡体が圧力を受けるために時間が経つにつれて小さくなり得る。発泡体によって占められるこの容積の変化は、創傷ドレッシング120を満たすのに必要な流体の量に影響を及ぼし得る。例示的な実施形態はそのような容積の変化に適応でき、この実施形態は、圧力示度数を用いて、創傷ドレッシングが十分な量の液体を受け取った時点を示す。
【0040】
図1〜3に示しかつ図面の添付の説明で述べる特徴は、本開示の例示的な一実施形態にすぎないことが理解される。他の実施形態は、例えば、溜め部の代わりにまたはそれに加えて、創傷ドレッシングに吸収層を使用し得る。
【0041】
ここで図4〜6を参照すると、前述のシステム100の平面図が、図1〜3の3つの動作モードで示されている。図4では、負圧源130が作動されて、溜め部110および創傷ドレッシング120に負圧を発生させる(導管135を介して)。この動作段階では、創傷ドレッシング120に流体はない。
【0042】
図5に示すように、創傷ドレッシング120へ流体を流し始めるためには、負圧源130の動作が停止され、かつ流体流動装置150が作動される。図5に示すように、流体流動装置150からの流体125は、導管155を介して創傷ドレッシング120に入り始める。流体125が創傷ドレッシング120に入るにつれて、圧力センサー160によって測定される圧力は高くなる。
【0043】
ここで図6を参照すると、圧力を予め定められた圧力まで高めるのに十分な量の流体125が創傷ドレッシング120に入っており、所望の量の流体125が創傷ドレッシング120にあることを示している。この動作段階では、圧力センサー160は、流体流動装置150からの流体125の流れを制限するための情報を制御回路に提供できる。上述の通り、圧力センサー160は、流体流動装置150の動作を制御するために制御信号を送信し得る。例えば、圧力センサー160は、流体流動装置150がポンプとして構成されている場合には、その動作を停止するように制御信号を送信し得る。圧力センサー160はまた、流体流動装置150が弁として構成されている場合には、弁を閉鎖するように制御信号を送信し得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、システム100は、ドレッシングまたは負圧経路のどこかに、予め定められた圧力に到達しかつ創傷ドレッシング120が十分な量の流体125を含むことを示す可聴式または視覚的な圧力計123を含んでもよい(例えば、Kinetic Concepts, Inc.(San Antonio、Texas U.S.A.)から入手可能なPrevena(商標)ドレッシングタイプは、ドレッシングが圧力の設定点を下回ると後退しかつドレッシングが圧力の設定点を上回ると伸びる視覚的なインジケータを有する)。この段階において、使用者は、所望の流体の点滴および真空療法による治療を開始し得る。
【0045】
次の概略的な流れ図は、一般的に論理的な流れ図として説明する。そのようなものとして、図示の順序および符号を付したステップは、提示の方法の一実施形態を示す。説明の方法の1つ以上のステップ、またはその一部分の機能、論理、または効果と同等である他のステップおよび方法が考えられ得る。さらに、使用される形式および符号は、方法の論理的なステップを説明するために提供され、かつ方法の範囲を限定するものではないと理解される。流れ図においては様々な矢印の種類および線の種類を用い得るが、対応する方法の範囲を限定するものではないと理解される。実際、一部の矢印または他の連結記号を使用して、方法の論理的な流れのみを示してもよい。例えば、矢印は、図示の方法の列挙されたステップ間の、特定されていない持続期間の待機または監視期間を示してもよい。さらに、特定の方法が発生し得る順序は、図示の対応するステップの順序を厳守してもしなくてもよい。
【0046】
ここで図7を参照すると、本開示による例示的なシステムの動作を実行し得る一連のステップを含む方法200が開示される。いくつかの実施形態は、コンピュータ可読コードを含むタンジブルコンピュータ可読媒体(tangible computer readable medium)を含んでもよく、このコンピュータ可読コードは、コンピュータによる実行時、コンピュータに、図7に開示するステップを含む動作を実行させる。
【0047】
この例示的な実施形態では、ステップ210は、負圧源を作動して、創傷ドレッシングに負圧を発生させることを含む。ステップ220は、負圧源の動作を停止すること、および創傷ドレッシングの負圧を維持することを含む。ステップ230は、この実施形態では流体流動装置を作動して、創傷ドレッシングへ流体を流し始めることを含む。ステップ240は、圧力センサーを用いて創傷ドレッシングの圧力を監視すること、および予め定められた創傷ドレッシングの圧力に達した時点を判断することを含む。この実施形態では、ステップ250は、圧力センサーから制御装置へ制御信号を送信して、流体流動装置からの流体の流れを停止することを含む。
【0048】
本明細書に開示されかつ特許請求される方法は全て、本開示を考慮すると過度の実験を行わずに、行い、かつ実行することができる。好ましい実施形態に関して本発明の装置および方法を説明したが、当業者には、本発明の概念、趣旨および範囲から逸脱せずに、本明細書で説明する方法に、および方法のステップまたは一連のステップにおいて、変形例を適用してもよいことが明白である。さらに、開示の装置に修正を行ってもよく、および同じまたは類似の結果が達成される場合には、構成要素を除去しても、または本明細書で説明した構成要素を置き換えてもよい。そのような全ての置き換えおよび修正は、当業者に、添付の特許請求の範囲に規定されるような本発明の趣旨、範囲、および概念内にあるとみなされることは明白である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7