(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ナノ構造層が、高インデックスマトリックスを含み、該高インデックスマトリックスが、前記有機層と同じまたはそれより高い屈折率を有する、請求項1に記載の光学スタック。
転写フィルムを前記複数のナノ構造体上に塗布する工程;および該転写フィルムに圧力を印加して、該ナノ構造体を該再流動化マトリックスに圧入する工程をさらに含む、請求項8に記載のプロセス。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書に開示するように、相互接続している導電性ナノ構造体(例えば、銀ナノワイヤ)の薄膜を光/電気デバイス、例えばOLEDまたはPVセル、中に1つ以上の透明電極として形成する。加工に費用がかかり得るITOとは異なり、ナノ構造ベースの電極は、溶液ベースのアプローチでまたはドナー層からの固体状態転写プロセスによって有利に作製することができ、このことがそれらを大フォーマットまたは高スループット製造に特に適したものにする。
【0024】
ナノ構造ベースの下部電極
光がOLEDなどの多層デバイススタック中を進む場合、その光の光学挙動は、そのデバイススタック中の少なくとも1層、またはそれ以上、典型的にはすべての層による影響を受け得る。例えば、光が高屈折率の媒体からより低い屈折率のものへと進むとき、その入射光の角度に依存してある程度の反射がそれら2媒体間の界面で起こるだろう。ボトムエミッション型OLEDの場合、内部で発生した光は、出射するために有機層から進み、そして透明下部電極、その後、基板を通って進まなければならない。従来、一体化ITO/有機層は、ガラス基板の屈折率(n
2≒1.5)よりはるかに高い屈折率(n
1≒1.8)を有するので、相当な量の光がそのITO/有機層内で導波され得る。同様に、基板(n
2≒1.5)から空気(n
3≒1)に進む光もまたその基板および有機/ITO層内で導波されるだろう(
図2参照)。
【0025】
様々な実施形態は、ナノ構造ベースの透明導電体を従来のITO層の代わりに使用するOLEDに関する。ITOなどの高インデックス材料を単に削除することにより、導波モードの分布を修飾することができる。しかし、ガラスの屈折率と有機層の屈折率の間の大きな差は、この界面での全内部反射のため、やはり損失の原因になる。それ故、光取り出しをさらに増進させるおよび内部反射を低減させるために、基板とナノ構造層によって形成された下部電極との間に反射防止層を介在させる。このナノ構造層は、連続層ではなく相互接続しているナノ構造体(例えば、金属ナノワイヤ)の網であるので、有機層と反射防止層間の光学相互作用を完全には阻害しない。
【0026】
図3Aは、本開示の実施形態によるOLED(50)を示す。OLED(50)は、透明基板(54)、その透明基板(54)とナノ構造層(62)の間に介在する反射防止層(58)を含む。前記ナノ構造層は、複数の金属ナノ構造体(66)を含み、アノード(すなわち、下部電極)として動作する。有機スタック(70)は、そのアノードとカソード(76)の間に位置する。
【0027】
場合により、中間導電性層(80)が有機スタック(70)とナノ構造層(62)の間に介在することがある。前記中間導電性層は、十分に導電性であるので、電流を横方向に分配して有機スタック(例えば、発光層)への均一なキャリヤ注入を果たし、それによって均一なエレクトロルミネセンスをもたらす。前記中間導電性層は、例えば、薄いITO層、または導電性ポリマー層、または均等に分布しているナノ粒子もしくはナノワイヤの層であり得る。ナノ構造層(62)と中間導電性層(80)のかかる複合構造のより詳細な説明は、例えば、本開示の譲渡人であるCambrios Technologies名義の米国特許出願公開第2008/02592号明細書の中で見つけることができる。
【0028】
様々な実施形態において、反射防止層の屈折率(n
4)は、基板のもの(n
2)と有機スタックのもの(n
5)の間の値であるべきである。より具体的には、前記反射防止層の屈折率は、1.5〜1.8の範囲、または1.55〜1.6の範囲、または1.6〜1.65の範囲、または1.65〜1.7、もしくは1.7〜1.75、もしくは1.75〜1.8の範囲であり得る。内部反射の最も効率的な低減のための屈折率(n
4)を次の式に従って突き止めることができる:
【0029】
【数1】
したがって、ガラスの屈折率(n
2≒1.5)および有機スタックの屈折率(n
5≒1.8)をそれぞれ仮定すれば、反射防止層(58)の屈折率(n
4)は、この特定の構成については1.6となるはずである。好ましい実施形態において、前記反射防止層は、ポリイミド層である。
【0030】
反射防止層は、基板上への直接堆積によって形成することができる。下部電極を形成する際、導電性ナノ構造体を(下でさらに詳細に説明する)インク組成物に配合し、反射防止層上に直接堆積させることができる。かかる溶液ベースのアプローチは、大フォーマットおよび/または高スループット作製を可能にする。その後、有機スタックを当該技術分野の公知方法によって形成することができる。前記有機スタックは、典型的に感水性であるので、該有機スタックの形成前に、前記ナノ構造層にナノ構造インク組成物中の一般的溶媒である水が確実に無いように注意すべきである。
【0031】
反射防止層(58)内でも、透明基板(54)とのその界面(84)での反射のため、一定の導波が起こるだろう。それ故、もう1つの実施形態では、
図3Bに示すように、反射防止層(58)が複数の光散乱ナノ粒子(88)をさらに含むことができる。光散乱ナノ粒子の存在により、反射防止層中の導波光または捕捉光を強制排出すること(「取り出し」とも呼ばれる)ができる。これらの光散乱ナノ粒子は、「散乱中心」とも呼ばれる。
【0032】
さらにもう1つの実施形態では、粒子ベースの散乱中心をナノ構造ベースの電極とともにPVセルにおいて使用することもできる。PVセルは、光を吸収してそれを電流に変換する光活性層を含む。一定の実施形態において、前記光活性層は、有機性であり、前記PVセルは、有機起電力(OPV)セルとも呼ばれる。別段の指定が無い限り、本明細書に記載する実施形態は、PVおよびOPVセルに同様に適用可能である。
【0033】
図4Aは、ある実施形態によるOPVセル(90)を示す。OPVセル(90)は、透明基板(94)および上に位置するナノ構造層(102)を含む。前記ナノ構造層は、複数の金属ナノ構造体(104)を含み、電極(例えば、アノード)として動作する。そのナノ構造層(102)とカソード(108)の間に光活性層(106)が位置する。光活性層(106)およびナノ構造層(102)は匹敵する高い屈折率値を有するので、それらは、光伝搬路(110)の中で一体化光学スタック(107)を形成する。
【0034】
OPVデバイスが効率的に働くために、吸収光子の入力光子に対する比を最大にする必要がある。光吸収を最大にするために、光活性層内での光(110)の移動長または移動時間は、できる限り長くすべきである。言い換えると、光(110)が一体化光学スタック(107)内で導波されることが望ましい。しかし、この一体化光学スタック内で内部反射を生じさせることは不可能であるので、該スタックに散乱中心を組み込むことによってしか導波を生じさせることができない。
【0035】
図4Bは、OPVデバイス内で導波を効率的に生じさせるための実施形態を示す。詳細には、複数のナノ粒子を一体化光学スタック(107)と基板(94)の界面(109)に組み込む。前記ナノ粒子は、散乱中心として、光(111)の導波を助長する。
図4Aの光(110)とは対照的に、
図4Bの光(111)は、光活性層内で導波され、その結果、その全移動長が延長され、光吸収が最大化される。
【0036】
前記OPVデバイスを本明細書に開示するOLEDと同様の順序で作製することができる。電極を形成する際、導電性ナノ粒子を(下でさらに詳細に説明する)インク組成物に組み込み、基板に直接堆積させることができる。散乱中心(例えば、ナノ粒子)は、ナノ構造体と同時に基板上に直接堆積させることによって形成することができる。あるいは、ナノ構造体の堆積前または後にナノ粒子を堆積させてもよい。その後、光活性層を当該技術分野の公知方法によって形成することができ、続いて、上部電極を形成することができ、該上部電極は、金属プレートであり得る。
【0037】
ナノ構造ベースの上部電極
ナノ構造層は、従来のトップエミッション型OLEDにおけるITO層の代用にも適している。
【0038】
図5は、本開示のある実施形態によるトップエミッション型OLEDを概略的に示す。トップエミッション型OLED(112)は、基板(116)と、基板(116)上に配置されたカソード(120)と、カソード(120)上に配置された有機スタック(124)と、複数のナノ構造体(128)を含むナノ構造層(126)とを含む。前記ナノ構造層は、このOLEDの透明アノードおよび上部電極になる。前記基板および前記カソードは、透明である必要はない。一定の実施形態では、前記カソードを薄膜トランジスタ(thin film transistor:TFT)に接続することができる。前記アノードと前記カソードを交換するまたは逆にすることができることは分かるはずである。
【0039】
ナノ構造層を上部電極として形成することは、1つには下に位置する有機スタックの溶媒感受性のため、困難を伴うだろう。詳細には、ナノ構造インク組成物を有機スタック上に直接堆積することは、水を典型的に含有する溶媒が該有機スタックを有意に不安定にするまたは劣化させ得るので、実行不可能である。
【0040】
それ故、溶液ベースのアプローチの代案として、1つの実施形態は、ドナーフィルムを使用する固体状態転写プロセスにより有機スタック上にナノ構造層を形成する方法を提供する。より具体的には、溶液相堆積によりナノ構造層 転写フィルムを予備形成する工程および放置して溶媒を完全に蒸発させる工程によって、ドナーフィルムを形成する。その後、前記ナノ構造層を前記有機スタックに転写し、それによって前記有機スタックとの直接溶媒接触を避ける。
【0041】
図6に図示するように、1つの実施形態は、基板(116)と、基板(116)上に配置されたカソード(120)と、カソード(120)上に配置された有機スタック(124)とを含む部分光学スタック(130)を設ける工程(該部分光学スタックは上面(134)を有する);
ナノ構造層(126)を含むドナーフィルム(136)を転写フィルム(140)上に設ける工程(該ナノ構造層は、マトリックス(144)中に場合によっては分散されている複数のナノ構造体(128)を含む);および
前記ドナーフィルム(136)のナノ構造層(126)を前記部分光学スタック(130)の上面(134)に接触させる工程
を含む方法を提供する。
【0042】
さらなる実施形態において、前記方法は、転写フィルム(140)を除去する工程をさらに含む。
【0043】
ドナーフィルムを形成する際、スロット・ダイ・コーティング、スプレーコーティング、反転オフセット印刷およびこれらに類するものをはじめとする当該技術分野において公知の方法によって、ナノ構造体のインク組成物を転写フィルム上に直接堆積させることができる。そのインク組成物の揮発性成分を除去するとナノ構造層が形成する。
【0044】
もう1つの実施形態において、前記インク組成物は、マトリックス材料(例えば、バインダ)をさらに含むことができる。このアプローチでは、ナノ構造体とバインダを転写フィルム上に共堆積させる。堆積およびマトリックス硬化後、ナノ構造体は、マトリックス内に実質的に均一に分散されている、すなわち、ナノ構造体は、マトリックスの厚み全体にわたって分布している。前記マトリックスは導電性(例えば、導電性ポリマー)であってもよいし、または非導電性(例えば、誘電性ポリマー)であってもよいが、前記ナノ構造層は、接触しているナノ構造体間のパーコレーション導電性のため、導電性である。
【0045】
もう1つの実施形態は、ナノ構造体とマトリックスを別々に堆積させることにより前記固体状態転写アプローチをわずかに変更し、それによって、ナノ構造体と有機スタック間の電気的接触を維持しながら、マトリックスの量および厚みのより大きな自由度を可能にする。加えて、剥離ライナを利用して、有機スタックを接触させるための平滑な導電性層表面をもたらす。より具体的には、および
図7に図示するように、この方法は、
(i)複数のナノ構造体(128)を剥離ライナ(144)上に堆積させる工程;
(ii)マトリックス(148)を複数のナノ構造体(128)上に形成する工程(該マトリックスは、上面(150)を有する);
(iii)転写フィルム(152)をマトリックス(148)の上面(150)に接触させる工程;および
(iv)剥離ライナ(144)を除去して、ナノ構造体表面(156)を露出させる工程
によってドナーフィルム(160)を設ける工程;
基板(116)と、基板(116)上に配置されたカソード(120)と、カソード(120)上に配置された有機スタック(124)とを含む部分光学スタック(130)を設ける工程(該部分光学スタックは上面(134)を有する);
ナノ構造体表面(156)によりドナーフィルム(160)を前記部分光学スタックの上面(134)に接触させる工程
を含む。
【0046】
さらなる実施形態において、前記方法は、転写フィルム(152)を除去する工程をさらに含む。
【0047】
さらにもう1つの実施形態において、前記方法は、ドナーフィルムを有機スタックに接触させる前に、先ずその有機スタック上に中間導電性層を形成する工程をさらに含む。前記中間導電性層は、好ましくは連続膜、例えば、ITOまたは導電性ポリマーの薄層である。かかる中間導電性膜は、ナノ構造体と有機スタック間の接触が確実に均一であるようにすることに役立つことができる。
【0048】
堆積のための準備をした後、前記マトリックスを適切な溶媒と併せて流動性を補助することができ、または前記マトリックスが流動性材料である場合にはそれをニートのまま堆積させることができる。堆積後、前記マトリックスは、溶媒(単数もしくは複数)の除去および/または架橋のいずれかにより、固体層に硬化するまたは固まる。一定の実施形態において、前記マトリックスは、硬化後でさえ加熱または溶媒浸透により再流動性になることおよび冷却または溶媒蒸発により再び固まることができる熱可塑性ポリマーである。一般的に言うと、架橋マトリックスは、光開始または熱開始プロセスによって形成することができ、一旦固まると、さらに加熱しても再流動化することはできない。
【0049】
有利には、マトリックスを形成し(硬化させおよび固まらせ)たら、剥離ライナを除去して、ナノ構造層の表面(156)を平滑におよび有機スタックと接触させられるようにしておく。さらに、ナノ構造体は、必ずしもマトリックスの高さ全体にわたって分布していないが、ナノ構造体表面(156)によりナノ構造層は有機スタックと、該ナノ構造体と該有機スタック間の最大のかつ均一な接触を確実にするように接触する。
【0050】
さらにもう1つの実施形態は、前記ナノ構造層における平滑接触面を実現するための代替アプローチを提供する。この方法は、先ず剥離ライナ上にマトリックスを堆積させる工程、続いてナノ構造体を堆積させる工程を含む。ナノ構造体をマトリックスに嵌入させず、マトリックスの上面に堆積させる。前記マトリックスは、依然として流動性(完全硬化状態の前)であることがあり、または前記マトリックスを再流動状態に加熱することができる。再流動化されたマトリクスは、半固体状態であり、容易に変型し得るので、ナノ構造体をそのマトリックスに圧入することができる。より具体的には、および
図8に図示するように、この方法は、
(i)マトリックス(148)を剥離ライナ(144)上に形成する工程(該マトリックスは上面(150)を有する);
(ii)複数のナノ構造体(128)をマトリックス(148)の上面(150)上に堆積させる工程;
(iii)転写フィルム(152)を複数のナノ構造体(128)上に塗布する工程;
(iv)マトリックス(148)を再流動化させて再流動化マトリックスを形成する工程;
(v)転写フィルム(152)に圧力を印加して、転写フィルム(152)の下に位置するナノ構造体(128)を前記再流動化マトリックスに、該転写フィルムが該マトリックス(148)の上面(150)と接触するように圧入する工程;および
(vi)転写フィルム(152)を除去して上面(150)を露出させる工程
によってドナーフィルム(160)を設ける工程;
基板(116)と、基板(116)上に配置されたカソード(120)と、カソード(120)上に配置された有機スタック(124)とを含む部分光学スタック(130)を設ける工程(該部分光学スタックは上面(134)を有する);
ドナーフィルム(160)の上面(150)を部分光学スタック(130)の上面(134)と接触させる工程
を含む。
【0051】
さらなる実施形態において、前記方法は、剥離ライナ(144)を除去する工程をさらに含む。
【0052】
代替実施形態において、前記方法は、転写フィルム(152)を積層する工程を省略することができる。その代りに、ナノ構造体128をカレンダロールで直接再流動化マトリックスに圧延することができる。
【0053】
さらにもう1つの実施形態において、前記方法は、ドナーフィルムを有機スタックと接触させる前に、先ず中間導電性層を有機スタック上に形成する工程をさらに含む。前記中間導電性層は、好ましくは連続膜、例えば、ITOまたは導電性ポリマーの薄層である。かかる中間導電性膜は、ナノ構造体と有機スタック間の接触が確実に均一であるようにすることに役立つことができる。
【0054】
上で説明したプロセスでは、非導電性汚染物質が堆積中に偶然導入され得る可能性がある。ナノ構造体表面(
図7中の156または
図8中の150)上のそれらの存在は、キャリヤ注入/取り出しを阻害することがある。したがって、前記方法は、有機スタックと接触させる前に、ドナーフィルムのナノ構造体表面を表面処理して一切の非導電性汚染物質を最少にするまたは排除する工程をさらに含むことができる。前記表面処理は、短期間、アルゴン−プラズマ(または窒素−プラズマ)を伴うことがある。この表面処理は、ナノ構造体表面の汚染物質の薄い堆積を有効に除去し、それによってキャリヤ注入/取り出しを増進させる。加えて、前記表面処理は、マトリックスの軽度のバックエッチングを実現し、これは、有機スタックまたは中間導電性層とのより良好な電気的接触をもたらす。
【0055】
マトリックスの選択は、多数の因子によって左右される。一方の側面で、マトリックスは、有機スタックに対する多少の機械的接着力を提供しなければならない(例えば、感圧性接着材)。他方の側面で、マトリックスはまた、屈折率などの光学特性、散乱中心の組み込み、ダウンコンバータ色素(down−converter dyes)の組み込みなどを調整する能力をもたらす。したがって、マトリックスを使用して、光学スタックを光取り出し、発光均一性および発光色に関して最適化することができる。それ故、さらに詳細に本明細書に開示するように、様々な実施形態において、マトリックスは、架橋性ポリマーである場合があり、または再流動性ポリマーである場合もある。前記マトリックスはまた、光学的明澄接着材であることもある。加えて、前記マトリックスは、注文どおりの光学特性(屈折率、吸収性、色など)を保有するもでき、および光学的性能に影響を及ぼすような粒子(例えば、散乱粒子など)を含有することもできる。
【0056】
転写前に、例えばUV照射により、マトリックスにパターン形成することもできる。この場合、マトリックスの選択領域内のUV照射への曝露は、その選択領域内のみで架橋を生じさせ、これに対して曝露されていない領域は除去され得る。したがって、結果として生じたパターンを有機スタック上に転写することができる。UV照射の代案として、LITI(Laser Induced Thermal Imaging:レーザー誘起サーマルイメージング)を用いて、前記材料を有機スタック上に局所的に転写することもできる。
【0057】
固相転写プロセスは上部電極の形成に特に適しているが、それが上部電極に限定されないことは、理解されるはずである。このプロセスは、底部電極の形成にも同様に適用される。OLEDを図示するが、本明細書に開示するプロセスがPVデバイス(例えば、OPV)にも同様に適用されることは、さらに理解されるはずである。その固相転写プロセスは、ナノ構造体の導電性網の一方の表面(
図7中の156または
図8中の150)を確実に露出させ、その表面が有機スタック(例えば、OLED内の発光層またはPVセル内の光活性層)と接触し、かくてOLEDおよびPVデバイスにおいてキャリヤ注入/取り出しを生じさせる。
【0058】
表面プラズモンポラリトン抑制
従来のボトムエミッション型デバイスでは、固体金属カソードが典型的に上部電極として使用される(
図1参照)。その金属と有機スタックの界面では、表面プラズモンポラリトン(SPP)または双極子相互作用のためにエネルギー損失が起こり得る。かかるエネルギー損失は、そのデバイスの効率を低下させる。より高い金属表面粗度がこの界面でのエネルギー損失を低減させることは証明されている、例えば、Kooら、Nature Photonics 4、222(2010)またはAnら、Optics Express 8(5)、4041頁(2010)を参照されたし。
【0059】
様々な実施形態は、ナノ構造体が金属電極の片側または両側に配置されているデバイスを提供する。前記ナノ構造体の存在は、表面粗度を増加させ、それによってSPPを低減させる。ナノ構造体の導電性網を有する必要はないことに留意すべきである。むしろ、表面粗度は、非パーコレートナノ構造体(例えば、ナノワイヤまたは単にナノ粒子)を供給することによって十分実現することができる。
【0060】
1つの実施形態は、金属カソードと有機スタックの界面へのナノ構造体の配置を提供する。
図9(A)に図示するように、OLED(200a)は、基板(204a)と、その透明基板上に配置された下部電極(208a)と、その透明下部電極上に配置された有機スタック(212a)と、その有機スタック(212a)上に配置された金属膜/カソード(216a)とを含み、前記金属膜(216a)は、金属/有機界面(220a)によって前記有機スタック(212a)と接触しており、および複数のナノ構造体(224a)が前記金属/有機界面(220a)上に配置されている。
【0061】
OLED中の金属カソードは非常に薄い(数百ナノメートル以下)ので、SPPは、金属/有機界面のその極近接のため、該金属カソードの外面でも結合される。その金属膜の外面へのナノ構造体の配置は、SPPの伝搬を乱し、OLEDデバイスにおけるSPP損失を低下させることができる。それ故、
図9(B)に図示するように、OLED(200b)は、基板(204b)と、その透明基板上に配置された下部電極(208b)と、その透明下部電極上に配置された有機スタック(212b)と、その有機スタック(212b)上に配置された金属膜/カソード(216b)とを含み、前記金属膜(216b)は、金属/有機界面(220b)によって前記有機スタック(212b)と接触しており、および外面(222b)を有し、ならびに複数のナノ構造体(228b)が前記外面(222b)上に配置されている。
【0062】
さらなる実施形態では、ナノ構造体を前記金属膜の両側に配置することができる。
図9(C)に図示するように、OLED(200c)は、基板(204c)と、その透明基板上に配置された下部電極(208c)と、その透明下部電極上に配置された有機スタック(212c)と、その有機スタック(212c)上に配置された金属膜/カソード(216c)とを含み、前記金属膜(216c)は、金属/有機界面(220a)によって前記有機スタック(212c)と接触しており、および外面(222c)を有し、ならびに第一の複数のナノ構造体(224c)が前記金属/有機界面(220c)上に配置されており、および第二の複数のナノ構造体(228c)が前記外面(222c)上に配置されている。
【0063】
金属膜/カソードの外面上にナノ構造体を堆積させるための多数のアプローチがある。一定の実施形態では、金属膜が有機スタックのバリアとして動作するので、スピンコーティング、スロット・ダイ・コーティング、印刷およびこれらに類するものなどをはじめとする溶液ベースのナノ構造体堆積アプローチを利用することができる。
【0064】
あるいは、転写フィルムを(本明細書において説明するように)使用することができる。
図9(D)は、OLED(200d)を図示しており、このOLED(200d)は、基板(204d)と、その透明基板上に配置された下部電極(208d)と、その透明下部電極上に配置された有機スタック(212d)と、その有機スタック(212d)上に配置された金属膜/カソード(216d)とを含み、前記金属膜(216d)は、金属/有機界面(220d)によって前記有機スタック(212d)と接触しており、および外面(222d)を有し、ならびに複数のナノ構造体(228d)が前記外面(222d)上に配置されており、マトリックス(232d)中に埋め込まれている。前記ナノ構造体および前記マトリックスは、転写フィルム上に予め形成されており(例えば、
図7または8)、このOLEDの外面(222d)に転写される。
【0065】
前記マトリックスは、本明細書に記載するいずれのマトリックスであってもよい。これらの実施形態(例えば、
図9A〜9D)では、これらのOLEDがボトムエミッション型であるので、マトリックスの光学特性は、大した役割を果たさない。一定の実施形態において、前記マトリックスは不透明である。
【0066】
しかし、金属/有機界面へのナノ構造体の配置は、該有機スタックの溶媒感受性のため、溶液ベースのアプローチでは対応できない。したがって、金属膜を例えば物理的蒸着によって堆積させる前に、ナノ構造体を固体状態プロセスで金属/有機界面に転写することができる。
【0067】
散乱中心の位置決め
さらなる実施形態では、OLEDデバイスにおける光取り出しを、そのOLEDデバイスにおける散乱中心の効率を最大化することによってさらに増進させることができる。光は有機スタックを移動するとき、1つ以上のモードで伝搬する。伝搬光の挙動、とりわけ、別様に導波された光の挙動に干渉するように、散乱中心を戦略的に位置決めすることができる。詳細には、散乱中心を持たない光学スタック内では導波されたであろう光のエネルギー密度を、その光学スタックに散乱中心を含めることによって低減させることができる。しかし、高屈折率層(例えば、OLEDの有機層またはOPVセルの有機光活性層)を含む光学スタックについては、導波光は、散乱中心との、散乱中心を効率的に利用できないような量の相互作用を有するだろう。
【0068】
図10は、導波光がいかなる適用可能な方法でも散乱中心といかに相互作用できないかを示す。詳細には、
図10は、単純化されたデバイススタック(300)における伝搬光のエネルギー密度分布を示す。前記デバイススタックは、第一の電極(310)と、有機スタック(320)と、ガラス基板(360)とを含む。有機スタックによって発生された光は、ガラス基板を通って出射する前にこのデバイススタック内を伝搬する。本明細書中で説明するように、前記導波モードは、有機スタック(320)と基板(360)間のインデックス差のため、主として有機スタック内で維持される。導波光のエネルギー密度は、釣鐘型曲線(380)によって表されるので、この釣鐘型曲線の最大値(390)は、その有機スタック内のほぼ中心にある。有機スタック内でのかかる導波は、光に有機スタック以外のいかなる要素(すなわち、明瞭を期して示されていない、前記有機スタックの下に位置する光散乱中心)との相互作用も殆どまたは最小限にしか有させない。
【0069】
散乱中心がより効率的に働くために、それらは、有機スタック内での導波光の最大強度に近く(好ましくは、前記最大強度で)なければならない。
図11は、いかにエネルギー密度分布曲線が有機スタックの中心から引き離されるのか、それにより該有機スタックの一端により接近するかを示す。より具体的には、光学スタック(400)において、高インデックス層(420)は、有機スタック(320)と基板(360)の間に配置される。高インデックス層は、有機スタックのものと同程度に高い屈折率を有する。有機層(320)と高インデックス層(420)間の光学的連続性のため、エネルギー密度分布曲線(430)は、前記高インデックス層(420)内に延びる。結果として、曲線(430)の最大値は、高インデックス層(420)のほうにシフトし、その結果、高インデックス層とより大きく重なり合う(450)ことになる。
【0070】
それ故、1つの実施形態では、エネルギー密度分布を、その最大値が散乱粒子の位置のほうにシフトされ続けるように修飾することができる。
図12は、
図11の概念に基づくものであり、複数のナノ構造体(340)を有機スタック(320)と高インデックス層(420)の間に組み込む。これらのナノ構造体(例えば、銀ナノワイヤ)は、OLEDデバイスにおいて第二電極として機能することはもちろん、有機スタック内で発生および導波される光の取り出しを助長することができる散乱中心としても機能する。散乱中心(340)とエネルギー密度曲線(430)間の重なり(450)は、高インデックス層の無いスタック(例えば、
図10)と比較して実質的に増加し、その結果、散乱中心の光取り出し効率が増加される。この重なりを、有機スタックを越えて伸びるエネルギー密度分布曲線部分の曲線下面積であって、該曲線の全曲線下面積と比較したときの(百分率での)曲線下面積と定義する。一例は、
図11の面積450である。典型的に、重なりが大きいほど、散乱中心が導波光を取り出す効率が高くなる。様々な実施形態において、散乱中心は、所望の結果を達成するために少なくとも2%、または少なくとも3%または少なくとも5%、または少なくとも10%、または少なくとも30%または少なくとも50%である重なり面積内で位置決めされる。
【0071】
本明細書において用いる場合、「高インデックス」層は、そのモードが伝搬モードである有機層の屈折率と少なくとも同じまたはそれ以上の屈折率を有する。典型的に、高インデックス層は、1.55以上、または好ましくは1.6以上、またはさらに好ましくは、1.7以上、またはさらに好ましくは、1.8以上の屈折率を有する。
【0072】
様々な実施形態により、光散乱中心(340)の効率を助長する高インデックス層(420)を組み込むための異なるアプローチが説明される。数層の散乱粒子層およびその対応する高インデックス層を異なる導波モード位置に対応するように導入することが可能であることは、理解されるはずである。
【0073】
図13は、本開示による実施形態を示す。デバイススタック(500)は、第一の電極(310)と、有機スタック(320)と、複数の相互接続している/網を形成しているナノ構造体(340)を有する第二の電極(510)と、前記ナノ構造体(340)の下に位置する高インデックス層(520)と、基板(360)とを含む。この実施形態では、絶縁バインダおよびマトリックスがなく、第二の電極は、高インデックス層上へのナノ構造体の直接堆積によって形成される。加工上の懸念から高インデックス層へのナノ構造体のコーティング中にバインダ材が存在することが求められる場合、その後、有機スタック(320)を形成する前にそのバインダを(例えば、洗浄またはプラズマ処理によって)除去することができる。
【0074】
図14は、本開示によるさらなる実施形態を示す。デバイススタック(700)は、デバイススタック(500)および(600)の特徴を併せ持つ。示されているように、デバイススタック(700)は、第一の電極(310)と、有機スタック(320)と、第一の高インデックス層またはマトリックス(720)に埋め込まれた複数の相互接続している/網を形成しているナノ構造体(340)を有する第二の電極(710)と、第二の下に位置する高インデックス層(730)と、基板(360)とを含む。
【0075】
図15は、本開示によるさらにもう1つの実施形態を示す。示されているように、デバイススタック(800)は、第一の電極(310)と、有機スタック(320)と、低インデックスマトリックスまたはバインダ350中に埋め込まれた複数の相互接続している/網を形成しているナノ構造体(340)を有する第二の電極(810)と、前記第二の電極の下に位置する高インデックス層(820)と、基板(360)とを含む。この実施形態では、バインダを高インデックス層(820)上にナノ構造体とともに堆積させて電極(810)を形成する。したがって、前記低インデックスバインダは、電極内に残存し、および有機スタックまたは高インデックス層より低い屈折率を有さなければならない。
【0076】
本明細書に記載する実施形態のいずれにおいても、前記高インデックス層は、追加の散乱中心、すなわち、本明細書中で定義するとおりの光散乱粒子をさらに含むことがある。
【0077】
加えて、導波モード修飾に関連して記載した実施形態は、トップエミッション型デバイスにも適用することができ、その場合、そのデバイスの完全スタック(ナノワイヤ層および高インデックス層を含む)を反転させればよい。
【0078】
様々な成分を下でより詳細に説明する。
【0079】
導電性ナノ構造体
一般的に言うと、本明細書に記載する透明導電体は、導電性ナノ構造体の薄い導電性膜である。前記透明導電体内で、1つ以上の電気伝導路が前記ナノ構造体間の連続的物理的接触によって確立される。電気的パーコレーション閾値に達するために十分なナノ構造体が存在すると、ナノ構造体の導電性網が形成される。したがって、電気的パーコレーション閾値は重要な値であり、この値より上で長期接続性を実現することができる。
【0080】
本明細書において用いる場合、「導電性ナノ構造体」または「ナノ構造体」は、一般に、ナノサイズの電気伝導性構造体であって、その寸法の少なくとも1つが500nm未満、さらに好ましくは、250nm、100nm、50nmまたは25nm未満である構造体を指す。
【0081】
ナノ構造体は、任意の形状または幾何学的形状のものであってよい。一定の実施形態において、ナノ構造体は、等方性形状である(すなわち、アスペクト比=1)。典型的な等方性ナノ構造体としてはナノ粒子が挙げられる。好ましい実施形態において、ナノ構造体は、異方性形状である(すなわち、アスペクト比≠1)。本明細書において用いる場合、「アスペクト比」は、ナノ構造体の長さと幅(または直径)の間の比を指す。異方性ナノ構造体は、典型的に、その長さに沿った縦軸を有する。例示的異方性ナノ構造体としては、本明細書中で定義するとおりのナノワイヤおよびナノチューブが挙げられる。
【0082】
ナノ構造体は、中実であってもよく、または中空であってもよい。中実ナノ構造体としては、例えばナノ粒子およびナノワイヤが挙げられる。したがって、「ナノワイヤ」は、中実異方性ナノ構造体を指す。典型的に、各々のナノワイヤは、10より大きい、好ましくは50より大きい、およびさらに好ましくは100より大きいアスペクト比(長さ:直径)を有する。典型的に、ナノワイヤは、500nmより長い、1μmより長い、または10μmより長い。
【0083】
中空ナノ構造体としては、例えばナノチューブが挙げられる。典型的に、ナノチューブは、10より大きい、好ましくは50より大きい、およびさらに好ましくは100より大きいアスペクト比(長さ:直径)を有する。典型的に、ナノチューブは、長さが500nmより長い、1μmより長い、または10μmより長い。
【0084】
ナノ構造体を任意の電気伝導性材料から形成することができる。最も典型的には、前記導電性材料は、金属のものである。前記金属材料は、元素金属(例えば、遷移金属)であってもよく、または金属化合物(例えば、金属酸化物)であってもよい。前記金属材料はまた、2タイプ以上の金属を含むバイメタル材料または金属合金であってもよい。適する金属としては、銀、金、銅、ニッケル、金めっきされた銀、白金およびパラジウムが挙げられるが、これらに限定されない。前記導電性材料はまた、非金属のもの、例えば炭素またはグラファイト(炭素の同素体)であってもよい。
【0085】
ナノ構造層
一般に、ナノ構造層またはコーティングは、本明細書に記載する光/電気デバイスにおいて透明電極として動作する。ナノ構造層(透明導電体層とも呼ばれる)は、液体担体と複数の導電性ナノ構造体とを含む分散液(またはコーティング組成物)を堆積する工程、および前記液体担体を乾燥させる工程によって形成される。ナノ構造層を先ず転写フィルム上に形成し、その後、その光/電気デバイス内の下に位置する層に転写してもよい。
【0086】
ナノ構造層は、ランダムに分布しておりかつ互いに相互接続しているナノ構造体を含む。ナノ構造体の数がパーコレーション閾値に達すると、その薄膜は電気伝導性になる。例えば1つ以上のバインダ、界面活性剤および粘度調整剤をはじめとする、インク組成物中の他の不揮発性成分が、導電性膜の一部を形成することもある。したがって、別段の指定が無い限り、本明細書において用いる場合、「導電性膜」は、インク組成物の任意の不揮発性成分を兼備する網形成パーコレーションナノ構造体から成るナノ構造層を指し、例えば、次のうちの1つ以上を含むことができる:バインダ(例えば、粘度調整剤)、界面活性剤および腐食防止剤。
【0087】
前記分散液のための液体担体は、水、アルコール、ケトンまたはそれらの組み合わせであってよい。例示的アルコールとしては、イソプロパノール(IPA)、エタノール、ジアセトンアルコール(DAA)、またはIPAとDAAの組み合わせを挙げることができる。例示的ケトンとしては、メチルエチルケトン(MEK)およびメチルプロピルケトン(MPK)を挙げることができる。
【0088】
前記界面活性剤は、ナノ構造体および/または光散乱材料の凝集を低減させるのに役立つ。適する界面活性剤の代表例としては、フッ素系界面活性剤、例えば、ZONYL(登録商標)FSN、ZONYL(登録商標)FSO、ZONYL(登録商標)FSA、ZONYL(登録商標)FSH(DuPont Chemicals、デラウェア州ウィルミントン)をはじめとするZONYL(登録商標)界面活性剤、およびNOVEC(商標)(3M、ミネソタ州セントポール)が挙げられる。他の例示的界面活性剤としては、アルキルフェノールエトキシレートに基づく非イオン性界面活性剤が挙げられる。好ましい界面活性剤としては、例えば、オクチルフェノールエトキシレート、例えばTRITON(商標)(x100、x114、x45)、およびノニルフェノールエトキシレート、例えばTERGITOL(商標)(Dow Chemical Company、ミシガン州ミッドランド)が挙げられる。さらなる例示的非イオン性界面活性剤としては、アセチレン系界面活性剤、例えば、DYNOL(登録商標)(604、607)(Air Products and Chemicals、ペンシルバニア州アレンタウン)、およびn−ドデシルβ−D−マルトシドが挙げられる。
【0089】
前記粘度調整剤は、ナノ構造体を基板上に固定するバインダとして役立つ。適する粘度調整剤の例としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース、キサンタンガム、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、およびヒドロキシエチルセルロースが挙げられる。
【0090】
特定の実施形態において、コーティング溶液中の界面活性剤の粘度調整剤に対する重量比は、好ましくは約80:1から約0.01:1の範囲であり;粘度調整剤の導電性ナノ構造体に対する重量比は、好ましくは約5:1から約0.000625:1の範囲であり;および導電性ナノ構造体の界面活性剤に対する重量比は、約560:1から約5:1の範囲である。前記コーティング溶液の成分比は、使用する基板および塗布方法に依存して変更することができる。コーティング溶液についての好ましい粘度範囲は、約1cPと100cPの間である。
【0091】
1つの実施形態において、コーティング溶液は、成膜を助長するために最初はバインダ(例えば、HPMC)を含有することがある。しかし、その後、ナノ構造体が不連続層を形成するためにおよび反射防止層と有機スタック間の光学的相互作用に干渉しないようにバインダを除去すべきである。
【0092】
導電性膜の電気伝導性は、オーム/スクエア(または「オーム/sq」)によって表される「シート抵抗」によって、多くの場合、測定される。シート抵抗は、少なくとも表面充填密度、ナノ構造体のサイズ/形状、およびナノ構造成分の固有電気特性の関数である。本明細書において用いる場合、薄膜は、10
8オーム/sq以下のシート抵抗を有する場合、導電性とみなされる。好ましくは、前記シート抵抗は、10
4オーム/sq、3,000オーム/sq、1,000オーム/sqもしくは350オーム/sq以下、または100オーム/sqである。典型的に、金属ナノ構造体によって形成された導電性網のシート抵抗は、10オーム/sqから1000オーム/sq、100オーム/sqから750オーム/sq、50オーム/sqから200オーム/sq、100オーム/sqから500オーム/sq、または100オーム/sqから250オーム/sq、または10オーム/sqから200オーム/sq、10オーム/sqから50オーム/sq、または1オーム/sqから10オーム/sqの範囲である。本明細書に記載する光/電気デバイスについてのシート抵抗は、典型的に、20オーム/スクエア未満、または15オーム/スクエア未満、または10オーム/スクエア未満である。
【0093】
光学的には、前記ナノ構造ベースの透明導電体は、可視領域(400nm〜700nm)において高い光透過率を有する。典型的に、前記透明導電体は、可視領域において光透過率が70%より高い、またはより典型的には85%より高いとき、光学的に明澄とみなされる。さらに好ましくは、前記光透過率は、90%より高く、93%より高く、または95%より高い。本明細書において用いる場合、別段の指定が無い限り、導電性膜は、光学的に透明である(例えば、透過率が70%より高い)。したがって、透明導電体、透明導電性膜、層またはコーティング、導電性膜、層またはコーティング、および透明電極を交換可能に用いている。
【0094】
ヘイズは、光学的明澄度の指数である。ヘイズは、バルク効果と表面粗度効果の両方に起因する光散乱および反射/屈折の結果として生ずる。一定の光/電気デバイス、例えば、PVセルおよびOLED照明用途には、高ヘイズ透明導電体が好ましいだろう。これらの透明導電体は、典型的には10%より大きい、さらに典型的には15%より大きい、またはさらに典型的には20%〜50%の範囲のヘイズ値を有する。米国特許出願公開第2011/0163403号明細書を参照されたし。他のデバイス、例えば、表示装置用途用のOLEDには、低ヘイズのほうが好ましい。ヘイズの調整または低減についてのさらなる詳細は、例えば、米国特許出願公開第2009/0321113号明細書にて見つけることができる。これらの公開米国特許出願は、本開示の譲渡人であるCambrios Technologies Inc.に譲渡された同時係属出願である。
【0095】
別段の指定が無い限り、ここに記載し特許請求する所与の透明導電体のヘイズ値は、ASTM D 1003−07、「透明プラスチックのヘイズおよび視感透過率についての標準試験法(Standard Test Method for Haze and Luminous Transmittance of Transparent Plastics)」に従って写真・光学的に測定する。
【0096】
マトリックス
「マトリックス」は、金属ナノワイヤが分散されるまたは埋め込まれる固体状態材料を指す。ナノワイヤの光子がマトリックスから飛び出して導電性網への表面アクセスを可能にすることができる。マトリックスは、金属ナノワイヤのホストであり、および導電性層の1つの物理的形態を提供するものである。マトリックスは、金属ナノワイヤを有害環境因子、例えば、腐食および摩耗から保護する。詳細には、マトリックスは、その環境内の腐食要素、例えば水分、微量の酸、酸素、硫黄およびこれらに類するもの、の浸透性を有意に低下させる。
【0097】
加えて、マトリックスは、好適な物理的および機械的特性を導電性層にもたらす。例えば、マトリックスは、基板に対する接着力を与えることができる。さらに、脆い金属酸化物膜とは異なり、金属ナノワイヤが埋め込まれたポリマーマトリックスまたは有機マトリックスは、頑丈かつ可撓性であり得る。本明細書中でさらに詳細に論ずることになるが、可撓性マトリックスは、低コスト、高スループットプロセスでの透明導電体の作製を可能にする。
【0098】
さらに、適切なマトリックス材料を選択することにより導電性層の光学特性を調整することができる。例えば、望ましい屈折率、組成および厚みのマトリクスを使用することにより反射損失および望ましくない眩光を有効に低減させることができる。
【0099】
典型的に、マトリックスは、光学的に明澄な材料である。材料は、その材料の光透過率が可視領域(400nm〜700nm)において少なくとも80%である場合、光学的に明澄とみなされる。別段の指示が無い限り、本明細書に記載する透明導電体中のすべての層(基板を含む)は、好ましくは、光学的に明澄である。マトリックスの光学的明澄度は、典型的に、多数の因子によって決定され、それらとしては、限定ではないが次のものが挙げられる:屈折率(refractive index:RI)、厚み、厚み全体にわたってのRIの一致性、表面(界面を含む)反射、およびヘイズ(表面粗度および/または埋め込まれた粒子によって引き起こされる散乱損失)。
【0100】
一定の実施形態において、マトリックスは、バインダである、すなわち、マトリックスは、最初はナノ構造体とともにインク組成物に分散されている。これらの実施形態において、用語「マトリックス」および「バインダ」は、交換可能である。基板上への堆積後、インク組成物の揮発成分を除去または蒸発させるとマトリックスは硬化する。
【0101】
他の実施形態では、インク組成物を基板上に堆積させた後、マトリックスを形成する。これに関しては、ナノ構造体を懸濁させるための媒体を提供することに加えて、マトリックスは、それらのナノ構造体の上に位置する保護層またはオーバーコートになることもできる。米国特許第8,049,333号明細書(これは、その全体が参照により本明細書に援用されている)は、マトリックス形成についての詳細な説明を提供している。
【0102】
一定の実施形態において、マトリックスは、約10nmから5μm厚、約20nmから1μm厚、または約50nmから200nm厚である。他の実施形態において、マトリックスは、約1.3から2.5、または約1.35から1.8の屈折率を有する。
【0103】
一定の実施形態において、マトリックスはポリマーであり、これはポリマーマトリックスとも呼ばれる。光学的に明澄なポリマーは、当該技術分野において公知である。好ましくは、前記ポリマーは、架橋性であり、または再流動性(例えば、加熱による硬化後に流動可能)である。適するポリマーマトリックスの例としては、ポリアクリル樹脂、例えばポリメタクリレート(好ましくは、ポリ(メチルメタクリレート))、ポリアクリレートおよびポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエステルナフタレート、およびポリカーボネート)、高い芳香族度を有するポリマー、例えばフェノール樹脂またはクレゾール−ホルムアルデヒド(Novolacs(登録商標))、ポリスチレン、ポリビニルトルエン、ポリビニルキシレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルフィド、ポリスルホン、ポリフェニレンおよびポリフェニレンエーテル、ポリウレタン(PU)、エポキシ、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、および環式オレフィン)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー(ABS)、セルロース樹脂、シリコーンおよび他のケイ素含有ポリマー(例えば、ポリシルセスキオキサンおよびポリシラン)、ポリビニルクロリド(PVC)、ポリアセテート、ポリノルボルネン、合成ゴム(例えば、EPR、SBR、EPDM)、ならびにフルオロポリマー(例えば、ポリビニリデンフルオリド、ポリテトラフルオロエチレン(TFE)またはポリヘキサフルオロプロピレン)、フルオロオレフィンと炭化水素オレフィンのコポリマー(例えば、Lumiflon(登録商標))、および非晶質フルオロカーボンポリマーまたはコポリマー(例えば、旭硝子株式会社(Asahi Glass Co.)によるCYTOP(登録商標)、またはDu PontによるTeflon(登録商標)AF)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0104】
他の実施形態において、マトリックスは、無機材料である。例えば、シリカ、ムライト、アルミナ、SiC、MgO−Al
2O
3−SiO
2、Al2O
3−SiO
2、MgO−Al
2O
3−SiO
2−Li
2Oまたはそれらの混合物のゾル・ゲルマトリックスを使用することができる。
【0105】
一定の実施形態では、マトリックス自体が導電性である。例えば、マトリックスは、導電性ポリマーである場合がある。導電性ポリマーは、当該技術分野において周知であり、それらとしては、限定ではないが、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、ポリアニリン、ポリチオフェン、およびポリジアセチレンが挙げられる。
【0106】
反射防止層
反射防止層は、屈折率整合原理に基づくレイリー膜(Rayleigh’s film)の形をとる場合もあり、または弱め合う干渉に基づく干渉膜である場合もある。
【0107】
レイリー膜は、異なる屈折率を有する2つの層、例えば(OLEDの)基板と有機層、の間に介在する薄膜である。この反射防止層の屈折率は、基板のものと有機層のものの間から選択される(すなわち、「屈折率整合」)値である。この反射防止層の存在は、基板の屈折率と有機層の屈折率の大きな差を緩和し、かくてそれらのそれぞれの界面での内部反射を低減させる。
【0108】
様々な実施形態において、反射防止層は、1.5〜1.8の範囲、または1.55〜1.6の範囲、または1.6〜1.65の範囲、または1.65〜1.7、もしくは1.7〜1.75、もしくは1.75〜1.8の範囲の屈折率を有することができる。
【0109】
反射防止層は、典型的には光学的に透明であり、200nmから2マイクロメートルの間の厚みを有する。
【0110】
好ましい実施形態において、反射防止層は、ポリイミド層である。典型的に、ポリイミドは(それらの特異的化学部分に関して)、約1.6の屈折率を有し、この値は、典型的な基板(例えば、ガラス)のものと、該基板のものよりはるかに高い屈折率を有する傾向がある有機スタックのものとの間である。
【0111】
典型的には、スピンコーティング、スロット・ダイ・コーティングまたはグラビアコーティングなどを含む当該技術分野において公知の方法に従って反射防止層を基板上に堆積することができる。
【0112】
屈折率整合レイリー膜の代替として、多層干渉膜を使用することもできる。かかる干渉膜は、典型的に、低屈折率材料と高屈折率材料の交互層を含み、その膜厚を透過される波長に依存して選択および最適化することができる。
【0113】
発光層
発光層は、1つの実施形態によると、OLED内の有機スタックの一成分である。発光層は、電流をアノード(30)とカソードの間に流したときに光を放射することができる有機材料であり得る。好ましくは、発光層は、リン光放射性材料を含有するが、蛍光放射性材料を使用することもできる。リン光材料は、かかる材料と関連づけられるより高い発光効率のため好ましい。発光層はまた、電子、正孔および/または励起子を捕捉することができる放射性材料がドープされた、電子および/または正孔を輸送することができるので、励起子は、該放射性材料から光電子放射メカニズムによって緩和する。発光層は、単一の材料、すなわち輸送特性と放射特性を併せ持つ材料を含むことができる。
【0114】
光活性層
光活性層は、光を電気に直接変換するPVセルの光吸収成分である、有機スタックの1タイプでもある。
【0115】
光活性層は、次の半導体材料のうちの1つ以上であり得る:単結晶シリコン、多結晶シリコン、非晶質シリコン、テルル化カドミウム、およびセレン化/硫化インジウム銅。他の適する材料としては、有機色素の薄膜層、および/または有機ポリマーが挙げられる。あるいは、ナノ結晶または量子ドット(電子が閉じ込められたナノ粒子)を光吸収材料として使用することができる。
【0116】
光活性層は、単層である場合もあり、またはより典型的には、異なる光吸収および電荷分離メカニズムを利用するために多数の物理的構成のものである場合もある。
【0117】
散乱中心
本明細書において用いる場合、散乱中心は、光散乱を生じさせる不活性材料である光散乱材料によって形成される。前記光散乱材料としては、例えば、微粒子状散乱媒体または散乱促進剤(例えば、前駆体)が挙げられる。
【0118】
一定の実施形態において、前記光散乱材料は微粒子の形態であり、該微粒子は「光散乱粒子」とも呼ばれ、該粒子をポリイミドのコーティング溶液に直接組み込むことができる。そのポリイミド溶液を基板上にコーティングした後、光散乱粒子は、ポリイミド膜にランダムに分布している。
【0119】
前記光散乱粒子は、好ましくはマイクロメートルサイズの粒子であり、またはさらに好ましくはナノサイズの粒子である。典型的に、前記粒径は、1nmから数マイクロメートルの範囲であり、好ましくは、10nm〜800nm、10nm〜600nm、10nm〜400nm、または10nm〜200nmの範囲である。さらに典型的には、前記粒径は、1nm〜100nmの範囲である。
【0120】
前記光散乱粒子は、無機材料であってもよく、この無機材料は、導電性であることもあり、半導電性であることもあり、または非導電性であることもある。典型的に、前記光散乱材料の屈折率は、高い(例えば、1.6より高い、またはさらに典型的には、1.7より高い、またはさらに典型的には、約1.8である)べきである。適する光散乱粒子の例としては、限定ではないが、SiO
x、AlO
x、InO
x、SnO
x、ZnO
x、AlドープZnO
x(AZO)、酸化インジウムスズ(ITO)、SbドープSnO
x(ATO)、TiO
x、SiC、フッ素ドープSnO
x(FTO)、およびこれらに類するものが挙げられる。より高屈折率の粒子の例としては、TiO
x、AlO
x、およびZnO
xが挙げられる。導電性粒子の例としては、ITO、AZO、ATO、およびこれらに類するものが挙げられる。異なる酸化比(化学量論比およびしたがってドーピングレベル)を、特に3つ以上の元素を含む系(例えば、AZO、ATO、ITO)に関しては、使用することができる。詳細にはおよび好ましい実施形態では、かかる材料、組成およびドーピングレベルは、散乱添加剤のために使用することができ、ならびにまた、導電性ナノ構造網と隣接半導体(例えば、PVスタック中のa−Si、um−Si層)の間の適する緩衝材および界面層として作用することができる。例えば、限定ではないが、AdNano(登録商標)ZnO 20およびAdNano(登録商標)Z805ナノ粒子ならびにAdNano(登録商標)ZnO脱イオン水ベース分散液をこのようにして使用することができる。
【0121】
光散乱材料のさらなる記載を米国特許出願公開第2001/0163403号明細書において見つけることができ、この参考文献はその全体が参照により本明細書に援用されている。
【0122】
基板
従来のOLEDに適する任意の基板が本開示の様々な実施形態にも適する。硬質基板の例としては、ガラス、ポリカーボネート、アクリル樹脂、およびこれらに類するものが挙げられる。
【0123】
可撓性基板の例としては、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエステルナフタレート、およびポリカーボネート)、ポリオレフィン(例えば、線状、分岐および環式ポリオレフィン)、ポリビニル(例えば、ポリビニルクロリド、ポリビニリデンクロリド、ポリビニルアセタール、ポリスチレン、ポリアクリレート、およびこれらに類するもの)、セルロースエステル基材(例えば、三酢酸セルロース、および酢酸セルロース)、ポリスルホン、例えばポリエーテルスルホン、ポリイミド、シリコーン、ならびに他の従来のポリマーフィルムが挙げられるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0124】
実施例1:銀ナノワイヤの合成
銀ナノワイヤを、例えばY.Sun、B.Gates、B.Mayers、およびY.Xia、「Crystalline silver nanowires by soft solution processing」、Nanoletters 2(2):165−168、2002に記載されている「ポリオール」法に従って、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)の存在下でエチレングリコールに溶解した硝酸銀を還元することにより合成した。同時係属の共有米国特許出願第11/766,552号明細書に記載されている改良ポリオール法は、従来の「ポリオール」法でより高収率でより均一な銀ナノワイヤを生成する。この出願は、その全体が参照により本明細書に援用されている。結果として得られるナノワイヤは、主として約13μmから約17μmの長さおよび約34nmから約44nmの直径を有した。
【0125】
実施例2:導電性ナノ構造体のコーティング組成物の標準的調製法
金属ナノワイヤを堆積させるための典型的なコーティング組成物は、重量で、0.0025%から0.1%界面活性剤(例えば、好ましい範囲は、ZONYL(登録商標)FSO−100については0.0025%から0.05%である)、0.02%から4%粘度調整剤(例えば、好ましい範囲は、ヒドロキシプロピルメチルセルロール(HPMC)については0.02%から0.5%である)、94.5%から99.0%溶媒、および0.05%から1.4%金属ナノワイヤを含む。
【0126】
前記コーティング組成物を所望のナノワイヤ濃度に基づいて調製することができ、この濃度は、基板上に形成される最終導電性膜の充填密度の指数である。
【0127】
前記コーティング組成物を、例えば、同時係属米国特許出願第11/504,822号明細書に記載されている方法に従って基板に堆積させることができる。
【0128】
当業者には理解されるように、他の堆積技術、例えば、狭チャネルによって計量供給される沈降流、ダイフロー、斜面流下、スリットコーティング、グラビアコーティング、マイクログラビアコーティング、ビーズコーティング、浸漬コーティング、スロット・ダイ・コーティング、およびこれらに類するものを利用することができる。印刷技術を用いて、パターンを有するまたは有さない基板上にインク組成物を直接印刷することもできる。例えば、インクジェット、フレキソ印刷およびスクリーン印刷を利用することができる。流体の粘度およびせん断挙動はもちろんナノワイヤ間の相互作用も、堆積されるナノワイヤの分布および相互接続性に影響を及ぼし得ることは、さらに理解される。
【0129】
分散されている実施例1において作製したような銀ナノワイヤと、界面活性剤(例えば、Triton)と、粘度調整剤(例えば、低分子量HPMC)と水とを含むサンプル導電性ナノ構造体分散液を調製した。最終分散液は、(重量で)約0.4%銀および0.4%HPMCを含んだ。この分散液を(ニートでまたは希釈して)光散乱材料(例えば、粒子形態のもの)と直接併用して、コーティング溶液を形成することができる。あるいは、前記分散液を光散乱材料の分散液と併用して、コーティング溶液を形成することができる。
【0130】
実施例3
ポリイミドコーティング溶液(例えば、SUNEVERポリイミド(0821型))を先ず基板上に堆積させ、1500rpmで回転させ、その後、90℃で乾燥させ、30分間、200℃で硬化させた。得られたサンプルのヘイズおよび透過率は、それぞれ0.1%および92.1%であった。1.2マイクロメートルの膜厚が測定された。
【0131】
実施例4
銀ナノワイヤを反射防止層、例えばポリイミド膜、上に堆積させて、導電性膜を形成した。標準ナノワイヤ懸濁液(0.4%AgNW、0.4%LMw HPMC、250ppm Triton X)を実施例2に従って先ず調製した。そのポリイミド膜上のコーティング溶液を1000rpmで回転させ、その後、90秒間、50℃で乾燥させ、90秒間、140℃でアニールした。得られたシート抵抗は、9オーム/sqであり、透過率は87.5%およびヘイズは3.9%である。
【0132】
ポリイミド層の無いデバイス、すなわち、ナノワイヤをガラス上に直接堆積させたデバイスと比較して、光学データはもちろん、シート抵抗も、実質的に同一であった。反射防止層は、ナノ構造層の光学的および電気的性能に影響を及ぼさない。
【0133】
上で説明した様々な実施形態を組み合わせてさらなる実施形態を提供することができる。本明細書において言及するおよび/または出願データシートに収載する米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願および非特許文献のすべては、それら全体が参照により本明細書に援用されている。前記様々な特許、出願および出版物の概念を利用するために必要に応じて前記実施形態の態様を修飾して、なおさらなる実施形態を提供することができる。
【0134】
上記「発明を実施するための形態」にかんがみて前記実施形態にこれらおよび他の変更を加えることができる。一般に、後続の請求項において用いる用語は、本明細書および本請求項に開示する特定の実施形態に本請求項を限定するものと解釈すべきではなく、かかる請求項が内含する等価物の全範囲とともにすべての可能な実施形態を含むものと解釈すべきである。したがって、本請求項は、本開示によって限定されない。