(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
タイヤ部品が、タイヤトレッド、タイヤサブトレッド、タイヤアンダートレッド、ボディプライ、ベルト、オーバーレイキャッププライ、ベルトウェッジ、ショルダーインサート、タイヤエイペックス、タイヤサイドウォール、及び/又はビードフィラーを含む、請求項1に記載のタイヤ部品。
充填剤が、シリカ、カーボンブラック、クレイ、アルミナ、タルク、マイカ、セルロース繊維及びガラス繊維などの不連続繊維、ケイ酸アルミニウム、アルミニウム三水和物、重晶石、長石、霞石、酸化アンチモン、炭酸カルシウム、カオリン、及びこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のタイヤ部品。
エラストマー組成物が硬化していない時点で、エラストマー組成物が、ASTM−D1646にしたがって測定して110(105、100、95、90、85、80)AU以下の100℃におけるムーニー粘度を示す、請求項1に記載のタイヤ部品。
エラストマー組成物がASTM−D624にしたがって測定して少なくとも130(140、150、155、160、165、170)重量ポンド/インチの成形溝引裂を示す、請求項1に記載のタイヤ部品。
セルロースエステルが、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルローストリアセテート、セルローストリプロピオネート、セルローストリブチレート、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載のタイヤ部品。
可塑剤が、ホスフェート可塑剤、ベンゾエート可塑剤、アジペート可塑剤、フタレート可塑剤、グリコール酸エステル、クエン酸エステル可塑剤、及びヒドロキシル官能性可塑剤からなる群から選択される1つである、請求項1に記載のタイヤ部品。
可塑剤が、次のもの:トリフェニルホスフェート、トリクレシルホスフェート、クレシルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジベンジルフタレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、トリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチル−トリ−n−ブチルシトレート、及びアセチル−トリ−n−(2−エチルヘキシル)シトレートの少なくとも1つから選択される、請求項1に記載のタイヤ部品。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[0012]本発明は、概して、エラストマー組成物の機械特性及び物理特性を向上させるためにセルロースエステルをエラストマー組成物中に分散させることに関する。セルロースエステルは、エラストマー組成物及びそれらの製造において用いると二重の機能性を与えることができることが観察された。例えば、セルロースエステルは、エラストマー加工温度において溶融及び流動させることができるので、加工助剤として作用させて、それによってより小さい粒子に分解して加工中の組成物の粘度を減少させることができる。エラストマー組成物全体に分散した後は、セルロースエステルは冷却することによって再固化させることができ、エラストマー組成物、及び最終的にはかかるエラストマー組成物を導入した任意のタイヤ又はタイヤ部品を強化する強化充填剤として作用させることができる。
【0013】
[0013]本発明の幾つかの態様においては、多量の1種類以上の充填剤を含む高充填エラストマー組成物から製造されるタイヤ及び/又はタイヤ部品が提供される。高充填エラストマー組成物は、それらの増大した弾性率、強度、及び弾力性のためにタイヤ中において用いるのに望ましい。残念なことに、多量の充填剤をエラストマー組成物に加えると、組成物の増大した粘度のために、エラストマー組成物をその後に加工することが非常に困難になることが観察された。しかしながら、セルロースエステルをエラストマー組成物に加えると、従来の高充填エラストマー組成物によって示される欠点の多くを改善することができる。而して、本発明の幾つかの態様においては、セルロースエステルは、加工中における優れた粘度、並びにタイヤにおける使用中において増大した弾性率、剛性、硬度、及び引裂特性を示す高充填エラストマー組成物を製造することを可能にすることができる。
【0014】
[0014]本発明の幾つかの態様においては、少なくとも1種類のセルロースエステル、少なくとも1種類の主エラストマー、場合によっては1種類以上の充填剤、及び場合によっては1種類以上の添加剤を含むエラストマー組成物が提供される。
【0015】
(A)セルロースエステル:
[0015]本発明のエラストマー組成物には、エラストマーの全重量を基準としてラバー100部あたり少なくとも約1、2、3、4、5、又は10部(phr)の少なくとも1種類のセルロースエステルを含ませることができる。更には又は或いは、本発明のエラストマー組成物には、エラストマーの全重量を基準として約75、50、40、30、又は20phr以下の少なくとも1種類のセルロースエステルを含ませることができる。本明細書において用いる「phr」という用語は、ラバー又はエラストマー100重量部あたりのそれぞれの材料の部数を指す。
【0016】
[0016]本発明において用いるセルロースエステルは、当該技術において公知の任意のものであってよい。本発明において有用なセルロースエステルは、当該技術において公知の技術を用いて製造することができ、或いは例えばEastman Chemical Company, Kingsport, TN,米国から商業的に入手できる。
【0017】
[0017]本発明のセルロースエステルは、一般に構造:
【0019】
(式中、R
1、R
2、及びR
3は、水素、又は2〜10個の炭素原子を有する直鎖アルカノイルからなる群から独立して選択することができる)
の繰り返し単位を含む。セルロースエステルに関しては、置換レベルは通常は置換度(DS)(これは無水グルコース単位(AGU)あたりの置換基の平均数である)を用いて表される。一般に、通常のセルロースはAGUあたり3つのヒドロキシル基(これは置換されていてもよい)を含み、したがってDSは0〜3の間の値を有していてよい。或いは、より低分子量のセルロース混合エステルは、約3.08〜約3.5の範囲の全置換度を有していてよい。一般に、セルロースは、700〜2,000の重合度及び3.0の最大DSを有する大型の多糖である。しかしながら、低分子量セルロース混合エステルの場合のように、重合度が低下するにつれて多糖骨格の末端基は相対的により有意になり、これにより約3.08〜約3.5の範囲のDSが得られる。
【0020】
[0018]DSは統計的な平均値であるので、1の値は全てのAGUがただ1つの置換基を有することを保証しない。幾つかの場合においては、非置換の幾つかのAGU、2つの置換基を有する幾つか、及び3つの置換基を有する幾つかが存在する可能性がある。「全DS」とは、AGUあたりの置換基の平均数として規定される。本発明の一態様においては、セルロースエステルは、少なくとも約0.5、0.8、1.2、1.5、又は1.7のAGUあたりの全DS(DS/AGU)を有していてよい。更には又は或いは、セルロースエステルは、約3.0、2.9、2.8、又は2.7以下の全DS/AGUを有していてよい。DS/AGUはまた、例えばヒドロキシル、アセチル、ブチリル、又はプロピオニルのような特定の置換基に関することもできる。例えば、セルロースアセテートは約2.0〜約2.5のアセチルに関する全DS/AGUを有していてよく、一方、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)及びセルロースアセテートブチレート(CAB)は約1.7〜約2.8の全DS/AGUを有していてよい。
【0021】
[0019]セルロースエステルはセルローストリエステル又は2級セルロースエステルであってよい。セルローストリエステルの例としては、セルローストリアセテート、セルローストリプロピオネート、又はセルローストリブチレートが挙げられるが、これらに限定されない。2級セルロースエステルの例としては、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、及びセルロースアセテートブチレートが挙げられる。これらのセルロースエステルは、米国特許1,698,049;1,683,347;1,880,808;1,880,560;1,984,147;2,129,052;及び3,617,201(これらは、本明細書中の記述と相反しない範囲でその全部を参照として本明細書中に包含する)に記載されている。
【0022】
[0020]本発明の一態様においては、セルロースエステルは、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルローストリアセテート、セルローストリプロピオネート、セルローストリブチレート、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0023】
[0021]本明細書において用いる重合度(DP)とは、セルロースエステルの分子あたりのAGUの数を指す。本発明の一態様においては、セルロースエステルは、少なくとも約2、10、50、又は100のDPを有していてよい。更には又は或いは、セルロースエステルは、約10,000、8,000、6,000、又は5,000以下のDPを有していてよい。
【0024】
[0022]幾つかの態様においては、セルロースエステルは、100mLのフェノール/テトラクロロエタンの60/40(重量基準)の溶液中の0.25gの試料に関して25℃の温度において測定して、少なくとも約0.2、0.4、0.6、0.8、又は1.0dL/gの固有粘度(IV)を有していてよい。更には又は或いは、セルロースエステルは、100mLのフェノール/テトラクロロエタンの60/40(重量基準)の溶液中の0.25gの試料に関して25℃の温度において測定して、約3.0、2.5、2.0、又は1.5dL/g以下のIVを有していてよい。
【0025】
[0023]幾つかの態様においては、セルロースエステルは、少なくとも約0.005、0.01、0.05、0.1、0.5、1、又は5パスカル・秒(Pa・秒)の落球粘度を有していてよい。更には又は或いは、セルロースエステルは、約50、45、40、35、30、25、20、又は10Pa・秒以下の落球粘度を有していてよい。
【0026】
[0024]幾つかの態様においては、セルロースエステルは、少なくとも約1.2、1.4、1.6、1.8、又は2.0重量%のヒドロキシル含量を有していてよい。
【0027】
[0025]幾つかの態様においては、本発明において有用なセルロースエステルは、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって測定して、少なくとも約5,000、10,000、15,000、又は20,000の重量平均分子量(M
w)を有していてよい。更には又は或いは、本発明において有用なセルロースエステルは、GPCによって測定して、約400,000、300,000、250,000、100,000、又は80,000以下の重量平均分子量(M
w)を有していてよい。他の態様においては、本発明において有用なセルロースエステルは、GPCによって測定して、少なくとも約2,000、4,000、6,000、又は8,000の数平均分子量(M
n)を有していてよい。更には又は或いは、本発明において有用なセルロースエステルは、GPCによって測定して、約100,000、80,000、60,000、又は40,000以下の数平均分子量(M
n)を有していてよい。
【0028】
[0026]幾つかの態様においては、セルロースエステルは、少なくとも約50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、又は80℃のガラス転移温度(Tg)を有していてよい。更には又は或いは、セルロースエステルは、約200℃、190℃、180℃、170℃、160℃、150℃、140℃、又は130℃以下のTgを有していてよい。
【0029】
[0027]本発明の一態様においては、エラストマー組成物中において用いるセルロースエステルは、フィブリル化又は任意の他の繊維生成プロセスに従前にかけられていないものである。かかる態様においては、セルロースエステルはフィブリルの形態ではなく、「非フィブリル」と呼ぶことができる。
【0030】
[0028]セルロースエステルは、当該技術において公知の任意の方法によって製造することができる。セルロースエステルを製造するためのプロセスの例は、Kirk-Othmer, Encyclopedia of Chemical Technology, 5版, vol.5, Wiley-Interscience, New York (2004), pp.394-444において教示されている。セルロースエステルを製造するための出発材料であるセルロースは、異なるグレードで、例えば木綿リント布、軟材パルプ、硬材パルプ、トウモロコシ繊維、及び他の農業供給源、並びにバクテリアセルロースのような供給源から得ることができる。
【0031】
[0029]セルロースエステルを製造する1つの方法はエステル化によるものである。かかる方法においては、セルロースを、適当な有機酸、酸無水物、及び触媒と混合し、次にセルローストリエステルに転化させる。次に、セルローストリエステルに水−酸混合物を加えることによってエステルの加水分解を行い、これを濾過してゲル粒子又は繊維を除去することができる。混合物に水を加えてセルロースエステルを沈殿させる。セルロースエステルは、水で洗浄して反応副生成物を除去し、次に脱水及び乾燥することができる。
【0032】
[0030]加水分解したセルローストリエステルは、2〜10個の炭素原子を有するアルカノイルから独立して選択される3つの置換基を有していてよい。セルローストリエステルの例としては、セルローストリアセテート、セルローストリプロピオネート、及びセルローストリブチレート、或いはセルロースアセテートプロピオネート及びセルロースアセテートブチレートのようなセルロースの混合トリエステルが挙げられる。これらのセルローストリエステルは、当業者に公知の数多くの方法によって製造することができる。例えば、セルローストリエステルは、カルボン酸及び無水物の混合物中において、H
2SO
4のような触媒の存在下でセルロースを不均一アシル化することによって製造することができる。セルローストリエステルはまた、LiCl/DMAc又はLiCl/NMPのような適当な溶媒中に溶解したセルロースの均一アシル化によって製造することもできる。
【0033】
[0031]当業者であれば、セルローストリエステルの商業的用語はまた、アシル基で完全には置換されていないセルロースエステルも包含することを理解するであろう。例えば、Eastman Chemical Company, Inc., Kingsport, TN,米国から商業的に入手できるセルローストリアセテートは、通常は約2.85〜約2.95のDSを有する。
【0034】
[0032]セルロースをトリエステルにエステル化した後に、アシル置換基の一部を加水分解又はアルコール分解によって除去して2級セルロースエステルを与えることができる。2級セルロースエステルはまた、限定量のアシル化試薬を用いることによって加水分解しないで直接製造することもできる。このプロセスは、セルロースを溶解する溶媒中で反応を行う場合に特に有用である。
【0035】
[0033]本発明の他の態様においては、米国特許7,585,905(本明細書中の記述と相反しない範囲で参照として本明細書中に包含する)において開示されているもののような低分子量混合セルロースエステルを用いることができる。
【0036】
[0034]本発明の一態様においては、以下の特性:(A)次の置換:約0.70以下のヒドロキシルのDS/AGU、約0.80〜約1.40のC
3/C
4エステルのDS/AGU、及び約1.20〜約2.34のアセチルのDS/AGUを有する約3.08〜約3.50の全DS/AGU;25℃においてフェノール/テトラクロロエタンの60/40(wt/wt)溶液中で測定して約0.05〜約0.15dL/gのIV;約1,000〜約5,600の数平均分子量;約1,500〜約10,000の重量平均分子量;及び約1.2〜約3.5の多分散度;を有する低分子量混合セルロースエステルを用いる。
【0037】
[0035]本発明の他の態様においては、以下の特性:次の置換:約0.70以下のヒドロキシルのDS/AGU、約1.40〜約2.45のC
3/C
4エステルのDS/AGU、及び約0.20〜約0.80のアセチルのDS/AGUを有する約3.08〜約3.50の全DS/AGU;25℃においてフェノール/テトラクロロエタンの60/40(wt/wt)溶液中で測定して約0.05〜約0.15dL/gのIV;約1,000〜約5,600の数平均分子量;約1,500〜約10,000の重量平均分子量;及び約1.2〜約3.5の多分散度;を有する低分子量混合セルロースエステルを用いる。
【0038】
[0036]本発明の更に他の態様においては、以下の特性:次の置換:約0.70以下のヒドロキシルのDS/AGU、約2.11〜約2.91のC
3/C
4エステルのDS/AGU、及び約0.10〜約0.50のアセチルのDS/AGUを有する約3.08〜約3.50の全DS/AGU;25℃においてフェノール/テトラクロロエタンの60/40(wt/wt)溶液中で測定して約0.05〜約0.15dL/gのIV;約1,000〜約5,600の数平均分子量;約1,500〜約10,000の重量平均分子量;及び約1.2〜約3.5の多分散度;を有する低分子量混合セルロースエステルを用いる。
【0039】
[0037]幾つかの態様においては、本発明において用いるセルロースエステルは化学官能基も含んでいてよい。かかる態様においては、セルロースエステルは、本発明においては「誘導」、「変性」、又は「官能化」セルロースエステルとして記載する。
【0040】
[0038]官能化セルロースエステルは、セルロースエステルの遊離ヒドロキシル基を、セルロースエステルにグラフトするための1つの連結基、及びセルロースエステルに新しい化学基を与えるための1つの官能基を有する二官能性反応物質と反応させることによって製造される。かかる二官能性反応物質の例としては、エステル結合を介して結合し、酸官能基を与える無水コハク酸;アルコキシシラン結合を介して結合し、メルカプト官能基を与えるメルカプトシラン;及びウレタン結合を介して結合し、メタクリレート官能基を与えるイソシアナトエチルメタクリレート;が挙げられる。
【0041】
[0039]本発明の一態様においては、官能化セルロースエステルは、不飽和(二重結合)、カルボン酸、アセトアセテート、アセトアセテートイミド、メルカプト、メラミン、及び長鎖アルキル鎖からなる群から選択される少なくとも1つの官能基を含む。
【0042】
[0040]不飽和(二重結合)官能基を含むセルロースエステルを製造するための二官能性反応物質は、米国特許4,839,230、5,741,901、5,871,573、5,981,738、4,147,603、4,758,645、及び4,861,629(これらの全部を本明細書中の記述と相反しない範囲で参照として本明細書中に包含する)に記載されている。一態様においては、不飽和を含むセルロースエステルは、残留ヒドロキシル基を含むセルロースエステルを、アクリル酸ベースの化合物及びm−イソプロピエニル−α,α’−ジメチルベンジルイソシアネートと反応させることによって製造される。グラフトセルロースエステルは、懸垂(メタ)アクリレート及びα−メチルスチレン基を有するウレタン含有生成物である。他の態様においては、不飽和を含むセルロースエステルは、無水マレイン酸及びセルロースエステルを、低級アルキルモノカルボン酸アルカリ土類金属又はアンモニウム塩触媒、及び2〜4個の炭素原子を有する少なくとも1種類の飽和モノカルボン酸の存在下において反応させることによって製造される。他の態様においては、不飽和を含むセルロースエステルは、(a)イソシアネート反応性ヒドロキシル官能基を有する少なくとも1種類のセルロースポリマー、及び(b)少なくとも1種類のヒドロキシル反応性ポリ(α,β−エチレン性不飽和)イソシアネートの反応生成物から製造される。
【0043】
[0041]カルボン酸官能基を含むセルロースエステルを製造するための二官能性反応物質は、米国特許5,384,163、5,723,151、及び4,758,645(これらは全て本明細書中の記述と相反しない範囲で参照として本明細書中に包含する)に記載されている。一態様においては、カルボン酸官能基を含むセルロースエステルは、セルロースエステル及びマレイン酸又はフマル酸のモノ又はジエステルを反応させて、それによって二重結合官能基を有するセルロース誘導体を得ることによって製造される。他の態様においては、カルボン酸官能基を含むセルロースエステルは第1及び第2の残基を有し、第1の残基は環式ジカルボン酸無水物の残基であり、第2の残基は親油性モノカルボン酸の残基及び/又は親水性モノカルボン酸の残基である。更に他の態様においては、カルボン酸官能基を含むセルロースエステルはセルロースアセテートフタレートであり、これはセルロースアセテートを無水フタル酸と反応させることによって製造することができる。
【0044】
[0042]アセトアセテート官能基を含むセルロースエステルを製造するための二官能性反応物質は、米国特許5,292,877(本明細書中の記述と相反しない範囲で参照として本明細書中に包含する)に記載されている。一態様においては、アセトアセテート官能基を含むセルロースエステルは、(i)セルロース;(ii)ジケテン、アルキルアセトアセテート、2,2,6−トリメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オン、又はこれらの混合物、並びに(iii)塩化リチウムと、1−メチル−2−ピロリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、又はこれらの混合物からなる群から選択されるカルボキサミドを含む可溶化量の溶媒系;を接触させることによって製造される。
【0045】
[0043]アセトアセテートイミド官能基を含むセルロースエステルを製造するための二官能性反応物質は、米国特許6,369,214(本明細書中の記述と相反しない範囲で参照として本明細書中に包含する)に記載されている。アセトアセテートイミド官能基を含むセルロースエステルは、セルロースエステルと、少なくとも1つのアセトアセチル基、及び少なくとも1つの第1級アミンを含むアミン官能性化合物の反応生成物である。
【0046】
[0044]メルカプト官能基を含むセルロースエステルを製造するための二官能性反応物質は、米国特許5,082,914(本明細書中の記述と相反しない範囲で参照として本明細書中に包含する)に記載されている。本発明の一態様においては、セルロースエステルに、商業的に入手できるか又は当該技術において公知の手順によって製造することができるケイ素含有チオール成分をグラフトする。ケイ素含有チオール化合物の例としては、(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、(3−メルカプトプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3−メルカプトプロピル)ジメトキシメチルシラン、(3−メルカプトプロピル)ジメチルクロロシラン、(3−メルカプトプロピル)ジメチルエトキシシラン、(3−メルカプトプロピル)ジエトキシメチルシラン、及び(3−メルカプトプロピル)トリエトキシシランが挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
[0045]メラミン官能基を含むセルロースエステルを製造するための二官能性反応物質は、米国特許5,182,379(本明細書中の記述と相反しない範囲で参照として本明細書中に包含する)に記載されている。一態様においては、メラミン官能基を含むセルロースエステルは、セルロースエステルをメラミン化合物と反応させて、セルロースエステルの無水グルコース環の骨格にメラミン基がグラフトしているグラフトセルロースエステルを形成することによって製造される。一態様においては、メラミン化合物は、メラミンのメチロールエーテル、及びアミノプラストキャリアエラストマーからなる群から選択される。
【0048】
[0046]長鎖アルキル鎖官能基を含むセルロースエステルを製造するための二官能性反応物質は、米国特許5,750,677(本明細書中の記述と相反しない範囲で参照として本明細書中に包含する)に記載されている。一態様においては、長鎖アルキル鎖官能基を含むセルロースエステルは、チタン含有種を用いてカルボキサミド希釈剤又は尿素ベースの希釈剤中のセルロースをアシル化試薬と反応させることによって製造される。長鎖アルキル鎖官能基を含むセルロースエステルは、セルロースアセテートヘキサノエート、セルロースアセテートノナノエート、セルロースアセテートラウレート、セルロースパルミテート、セルロースアセテートステアレート、セルロースノナノエート、セルロースヘキサノエート、セルロースヘキサノエートプロピオネート、及びセルロースノナノエートプロピオネートからなる群から選択することができる。
【0049】
[0047]本発明の幾つかの態様においては、セルロースエステルは1種類以上の可塑剤を用いて変性することができる。可塑剤は、セルロースエステル組成物の少なくとも約1、2、5、又は10重量%を形成することができる。更には又は或いは、可塑剤は、セルロースエステル組成物の約60、50、40、又は35重量%以下を構成することができる。一態様においては、セルロースエステルは、当初のセルロースエステルを可塑剤で変性することによって形成された変性セルロースエステルである。
【0050】
[0048]変性のために用いる可塑剤は、セルロースエステルの溶融温度及び/又は溶融粘度を低下させることができる当該技術において公知の任意のものであってよい。可塑剤は、モノマー構造又はポリマー構造のいずれかであってよい。一態様においては、可塑剤は、ホスフェート可塑剤、ベンゾエート可塑剤、アジペート可塑剤、フタレート可塑剤、グリコール酸エステル、クエン酸エステル可塑剤、及びヒドロキシル官能性可塑剤からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0051】
[0049]本発明の一態様においては、可塑剤は、以下のもの:トリフェニルホスフェート、トリクレシルホスフェート、クレシルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジベンジルフタレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、トリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチル−トリ−n−ブチルシトレート、及びアセチル−トリ−n−(2−エチルヘキシル)シトレートの少なくとも1つから選択することができる。
【0052】
[0050]本発明の他の態様においては、可塑剤は、(i)フタル酸、アジピン酸、トリメリット酸、コハク酸、安息香酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、酪酸、グルタル酸、クエン酸、及び/又はリン酸の残基などの少なくとも1つの酸残基;及び(ii)約20個以下の炭素原子を含む脂肪族、脂環式、又は芳香族アルコールの1以上の残基を含むアルコール残基;を含む1種類以上のエステルであってよい。
【0053】
[0051]本発明の他の態様においては、可塑剤は、以下のもの:ステアリルアルコール、ラウリルアルコール、フェノール、ベンジルアルコール、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシノール、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、及びジエチレングリコールから選択される残基を含むアルコール残基を含んでいてよい。
【0054】
[0052]本発明の他の態様においては、可塑剤は、以下のもの:ベンゾエート、フタレート、ホスフェート、アリーレン−ビス(ジアリールホスフェート)、及びイソフタレートの少なくとも1つから選択することができる。他の態様においては、可塑剤は、ジエチレングリコールジベンゾエート(本明細書においては「DEGDB」と略称する)を含む。
【0055】
[0053]本発明の他の態様においては、可塑剤は、例えばマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、及びセバシン酸のようなC
2〜10二酸の残基;並びにC
2〜10ジオールの残基を含む脂肪族ポリエステルを含んでいてよい。
【0056】
[0054]他の態様においては、可塑剤は、次のC
2〜C
10ジオール:エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ペンチレングリコール、トリエチレングリコール、及びテトラエチレングリコールの少なくとも1つの残基であってよいジオール残基を含んでいてよい。
【0057】
[0055]本発明の他の態様においては、可塑剤としては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリブチレングリコールのようなポリグリコールを挙げることができる。これらは、低分子量の二量体及び三量体から高分子量のオリゴマー及びポリマーまでの範囲であってよい。一態様においては、ポリグリコールの分子量は約200〜約2,000の範囲であってよい。
【0058】
[0056]本発明の他の態様においては、可塑剤は、以下のもの:Resoflex R296可塑剤、Resoflex 804可塑剤、SHP(ソルビトールヘキサプロピオネート)、XPP(キシリトールペンタプロピオネート)、XPA(キシリトールペンタアセテート)、GPP(グルコースペンタアセテート)、GPA(グルコースペンタプロピオネート)、及びAPP(アラビトールペンタプロピオネート)の少なくとも1つを含む。
【0059】
[0057]本発明の他の態様においては、可塑剤は、(A)約5〜約95重量%のC
2〜C
12炭水化物有機エステル(ここで、炭水化物は約1〜約3個の単糖単位を含む);及び(B)約5〜約95重量%のC
2〜C
12ポリオールエステル(ここで、ポリオールはC
5又はC
6炭水化物から誘導される)の1以上を含む。一態様においては、ポリオールエステルは1種類又は複数のポリオールアセテートを含まず、又は含有しない。
【0060】
[0058]他の態様においては、可塑剤は少なくとも1種類の炭水化物エステルを含み、炭水化物エステルの炭水化物部分は、グルコース、ガラクトース、マンノース、キシロース、アラビノース、ラクトース、フルクトース、ソルボース、スクロース、セロビオース、セロトリオース、及びラフィノースからなる群から選択される1種類以上の化合物から誘導される。
【0061】
[0059]本発明の他の態様においては、可塑剤は少なくとも1種類の炭水化物エステルを含み、炭水化物エステルの炭水化物部分は、α−グルコースペンタアセテート、β−グルコースペンタアセテート、α−グルコースペンタプロピオネート、β−グルコースペンタプロピオネート、α−グルコースペンタブチレート、及びβ−グルコースペンタブチレートの1以上を含む。
【0062】
[0060]他の態様においては、可塑剤は少なくとも1種類の炭水化物エステルを含み、炭水化物エステルの炭水化物部分は、α−アノマー、β−アノマー、又はこれらの混合物を含む。
【0063】
[0061]本発明の他の態様においては、可塑剤は固体の非結晶質キャリアエラストマーであってよい。これらのキャリアエラストマーは、多少量の芳香族又は極性官能基を含んでいてよく、セルロースエステルの溶融粘度を低下させることができる。本発明の一態様においては、可塑剤は、例えばロジン;水素化ロジン;安定化ロジン、及びこれらの単官能性アルコールエステル又はポリオールエステル;マレイン酸及びフェノール変性ロジン、及びこれらのエステルなど(しかしながらこれらに限定されない)の変性ロジン;テルペンエラストマー;フェノール変性テルペンエラストマー;クマリン−インデンエラストマー;フェノールエラストマー;アルキルフェノール−アセチレンエラストマー;及びフェノール−ホルムアルデヒドエラストマーのような固体の非結晶質化合物であってよい。
【0064】
[0062]本発明の他の態様においては、可塑剤は粘着性付与樹脂であってよい。当業者に公知の任意の粘着性付与剤を、本セルロースエステル/エラストマー組成物中において用いることができる。本発明において開示する組成物のために好適な粘着性付与剤は、室温において固体、半固体、又は液体であってよい。粘着性付与剤の非限定的な例としては、(1)天然及び変性ロジン(例えば、ガムロジン、木材ロジン、トール油ロジン、蒸留ロジン、水素化ロジン、二量体化ロジン、及び重合ロジン);(2)天然及び変性ロジンのグリセロール及びペンタエリトリトールエステル(例えば、淡色木材ロジンのグリセロールエステル、水素化ロジンのグリセロールエステル、重合ロジンのグリセロールエステル、水素化ロジンのペンタエリトリトールエステル、及びロジンのフェノール変性ペンタエリトリトールエステル);(3)天然テルペンのコポリマー及びターポリマー(例えば、スチレン/テルペン、及びα−メチルスチレン/テルペン);(4)ポリテルペン樹脂及び水素化ポリテルペン樹脂;(5)フェノール変性テルペン樹脂及びその水素化誘導体(例えば、酸性媒体中における二環式テルペン及びフェノールの縮合から得られる樹脂生成物);(6)脂肪族又は脂環式炭化水素樹脂及びその水素化誘導体(例えば、主としてオレフィン及びジオレフィンから構成されるモノマーの重合から得られる樹脂);(7)芳香族炭化水素樹脂及びその水素化誘導体;並びに(8)芳香族変性脂肪族又は脂環式炭化水素樹脂及びその水素化誘導体;並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0065】
[0063]本発明の他の態様においては、粘着性付与樹脂としては、ロジンベースの粘着性付与剤(例えば、Arizona Chemical, Jacksonville, FLからのAQUATAC 9027、AQUATAC 4188、SYLVALITE、SYLVATAC、及びSYLVAGUMロジンエステル)が挙げられる。他の態様においては、粘着性付与剤としては、ポリテルペン又はテルペン樹脂(例えば、Arizona Chemical, Jacksonville, FLからのSYLVARES 15テルペン樹脂)が挙げられる。他の態様においては、粘着性付与剤としては、オレフィン及びジオレフィンから構成されるモノマーの重合から得られる樹脂のような脂肪族炭化水素樹脂(例えば、ExxonMobil Chemical Company, Houston, Tex.からのESCOREZ 1310LC、ESCOREZ 2596、或いはEastman Chemical Company, Kingsport, Tenn.からのPICCOTAC 1095)、並びにその水素化誘導体20;脂環式石油炭化水素樹脂及びその水素化誘導体(例えば、ExxonMobil Chemical CompanyからのESCOREZ 5300及び5400シリーズ;Eastman Chemical CompanyからのEASTOTAC樹脂)が挙げられる。幾つかの態様においては、粘着性付与剤としては、水素化環式炭化水素樹脂(例えば、Eastman Chemical CompanyからのREGALREZ及びREGALITE樹脂)が挙げられる。更なる態様においては、粘着性付与剤は、芳香族化合物などの粘着性付与剤変性剤によって変性されているもの(例えば、ExxonMobil Chemical CompanyからのESCOREZ 2596、又はEastman Chemical CompanyからのPICCOTAC 7590)、並びに低軟化点樹脂によって変性されているもの(例えば、Arizona Chemical, Jacksonville, FLからのAQUATAC 5527)である。幾つかの態様においては、粘着性付与剤は少なくとも5個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素樹脂である。
【0066】
[0064]本発明の幾つかの態様においては、セルロースエステルは1種類以上の相溶化剤を用いて変性することができる。相溶化剤は、セルロースエステル組成物の少なくとも約1、2、3、又は5重量%を構成することができる。更には又は或いは、相溶化剤は、セルロースエステル組成物の約40、30、25、又は20重量%以下を構成することができる。
【0067】
[0065]相溶化剤は、非反応性相溶化剤又は反応性相溶化剤のいずれかであってよい。相溶化剤は、セルロースエステルが所望の小さい粒径に達して、それによってセルロースエステルのエラストマー中への分散を向上させる能力を増大させることができる。用いる相溶化剤はまた、セルロースエステルとエラストマーとの間の界面相互作用/結合を向上させることによってエラストマー組成物の機械特性及び物理特性を向上させることもできる。
【0068】
[0066]非反応性相溶化剤を用いる場合には、相溶化剤は、セルロースエステルと相溶性の第1のセグメント、及びエラストマーと相溶性の第2のセグメントを含んでいてよい。この場合には、第1のセグメントは、エーテル、エステル、アミド、アルコール、アミン、ケトン、及びアセタールのような極性官能基など(しかしながらこれらに限定されない)のセルロースエステルとの相溶性を与える極性官能基を含む。第1のセグメントは、以下:セルロースエステル;セルロースエーテル;ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、及びポリオキシブチレンのようなポリオキシアルキレン;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリブチレングリコールのようなポリグリコール;ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、脂肪族ポリエステル、及び脂肪族−芳香族コポリエステルのようなポリエステル;ポリアクリレート及びポリメタクリレート;ポリアセタール;ポリビニルピロリドン;ポリビニルアセテート;及びポリビニルアルコール;のオリゴマー又はポリマーを含んでいてよい。一態様においては、第1のセグメントはポリオキシエチレン又はポリビニルアルコールである。
【0069】
[0067]第2のセグメントはエラストマーと相溶性であってよく、非極性基を含んでいてよい。第2のセグメントは、飽和及び/又は不飽和炭化水素基を含んでいてよい。一態様においては、第2のセグメントはオリゴマー又はポリマーであってよい。他の態様においては、非反応性相溶化剤の第2のセグメントは、ポリオレフィン、ポリジエン、ポリ芳香族化合物、及びコポリマーからなる群から選択される。
【0070】
[0068]一態様においては、非反応性相溶化剤の第1及び第2のセグメントは、ジブロック、トリブロック、分岐、又は櫛状構造であってよい。この態様においては、非反応性相溶化剤の分子量は、約300〜約20,000、500〜約10,000、又は1,000〜約5,000の範囲であってよい。非反応性相溶化剤のセグメント比は、約15〜約85%の極性の第1のセグメント/約15〜約85%の非極性の第2のセグメントの範囲であってよい。
【0071】
[0069]非反応性相溶化剤の例としては、エトキシ化アルコール、エトキシ化アルキルフェノール、エトキシ化脂肪酸、プロピレンオキシド及びエチレンオキシドのブロックポリマー、ポリグリセロールエステル、多糖エステル、及びソルビタンエステルが挙げられるが、これらに限定されない。エトキシ化アルコールの例はC
11〜C
15第2級アルコールエトキシレート、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、及びエチレンオキシドでエトキシ化されているC
12〜C
14天然線状アルコールである。C
11〜C
15第2級エトキシレートは、Dow Chemical CompanyからDow Tergitol 15Sとして入手することができる。ポリオキシエチレンセチルエーテル及びポリオキシエチレンステアリルエーテルは、ICI SurfactantsからBrijシリーズの製品名で入手することができる。エチレンオキシドでエトキシ化されているC
12〜C
14天然線状アルコールは、Hoechst CelaneseからGenapolシリーズの製品名で入手することができる。エトキシ化アルキルフェノールの例としては、オクチルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノール、及びノニルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノールが挙げられる。オクチルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノールはRhodiaからIgepal CAシリーズの製品として入手することができ、ノニルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノールはRhodiaからIgepal COシリーズの製品としてか又はDow Chemical CompanyからTergitol NPとして入手することができる。エトキシ化脂肪酸としては、HenkelからNopalcolシリーズの製品名で入手することができるポリエチレングリコールモノステアレート又はモノラウレートが挙げられる。プロピレンオキシド及びエチレンオキシドのブロックポリマーは、BASFからPluronicシリーズの製品名で入手することができる。ポリグリセロールエステルは、StepanからDrewpolシリーズの製品名で入手することができる。多糖エステルは、HenkelからGlucoponシリーズの製品名(これはアルキルポリグルコシドである)で入手することができる。ソルビタンエステルは、ICIからTweenシリーズの製品名で入手することができる。
【0072】
[0070]本発明の他の態様においては、非反応性相溶化剤は、セルロースエステル相溶性化合物をエラストマー相溶性化合物と反応させることによって、セルロースエステル組成物又はセルロースエステル/主エラストマー組成物中でin situで合成することができる。これらの化合物は、例えばそれらの反応性末端基を介して更なる重合又は他の反応を開始することができるプレポリマーとして定義されるテレケリックオリゴマーであってよい。本発明の一態様においては、これらのin situの相溶化剤は約10,000〜約1,000,000のより高い分子量を有していてよい。
【0073】
[0071]本発明の他の態様においては、相溶化剤は反応性であってよい。反応性相溶化剤は、組成物の1つの成分と相溶性で、組成物の他の成分と反応することができる官能基を有するポリマー又はオリゴマーを含む。2つのタイプの反応性相溶化剤が存在する。第1の反応性相溶化剤は、非極性エラストマーと相溶性であり、またセルロースエステルと反応することができる官能基も有する炭化水素鎖を有する。かかる官能基としては、カルボン酸、無水物、酸塩化物、エポキシド、及びイソシアネートが挙げられるが、これらに限定されない。このタイプの反応性相溶化剤の具体例としては、ステアリン酸(オクタデカン酸)のような長鎖脂肪酸;ステアロイルクロリド(オクタデカノイルクロリド)のような長鎖脂肪酸塩化物;無水ステアリン酸(無水オクタデカン酸)のような長鎖脂肪酸無水物;エポキシ化油及び脂肪エステル;スチレン無水マレイン酸コポリマー;無水マレイン酸グラフトポリプロピレン;エチレン、アクリル酸エステル、及び無水マレイン酸のターポリマーのような無水マレイン酸とオレフィン及び/又はアクリル酸エステルのコポリマー;並びにエチレン、アクリル酸エステル、及びグリシジルメタクリレートのターポリマーのようなグリシジルメタクリレートとオレフィン及び/又はアクリル酸エステルのコポリマー;が挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
[0072]反応性相溶化剤は、Sartomer/Cray ValleyからSMA 3000スチレン無水マレイン酸コポリマーとして、Eastman Chemical CompanyからEastman G-3015無水マレイン酸グラフトポリプロピレンとして、Westlake Chemicalから得られるEpolene E-43無水マレイン酸グラフトポリプロピレンとして、Arkemaから得られるLotader MAH 8200(エチレン、アクリル酸エステル、及び無水マレイン酸のランダムターポリマー)として、Lotader GMA AX 8900(エチレン、アクリル酸エステル、及びグリシジルメタクリレートのランダムターポリマー)として、及びLotardar GMA AX 8840(エチレン、アクリル酸エステル、及びグリシジルメタクリレートのランダムターポリマー)として入手することができる。
【0075】
[0073]反応性相溶化剤の第2のタイプは、セルロースエステルと相溶性であり、また非極性エラストマーと反応することができる官能基も有する極性鎖を有する。これらのタイプの反応性相溶化剤の例としては、オレフィン又はチオール官能基を有するセルロースエステル又はポリエチレングリコールが挙げられる。オレフィン官能基を有する反応性ポリエチレングリコール相溶化剤としては、ポリエチレングリコールアリルエーテル及びポリエチレングリコールアクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。チオール官能基を有する反応性ポリエチレングリコール相溶化剤の例としてはポリエチレングリコールチオールが挙げられる。反応性セルロースエステル相溶化剤の例としてはメルカプトアセテートセルロースエステルが挙げられる。
【0076】
(B)主エラストマー:
[0074]本発明のエラストマー組成物は少なくとも1種類の主エラストマーを含む。本明細書において用いる「エラストマー」という用語は、「ラバー」という用語と互換的に用いることができる。本明細書において記載するプロセスの広い適用性のために、セルロースエステルは、実質的に任意のタイプの主エラストマーと共に用いることができる。例えば、本発明において用いる主エラストマーは、天然ラバー、改質天然ラバー、合成ラバー、及びこれらの混合物を含んでいてよい。
【0077】
[0075]本発明の幾つかの態様においては、主エラストマーの少なくとも1つは非極性エラストマーである。例えば、非極性主エラストマーは、少なくとも約90、95、98、99、又は99.9重量%の非極性モノマーを含んでいてよい。一態様においては、非極性主エラストマーは主として炭化水素をベースとする。非極性主エラストマーの例としては、天然ラバー、ポリブタジエンラバー、ポリイソプレンラバー、スチレン−ブタジエンラバー、ポリオレフィン、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ラバー、及びポリノルボルネンラバーが挙げられるが、これらに限定されない。ポリオレフィンの例としては、ポリブチレン、ポリイソブチレン、及びエチレンプロピレンラバーが挙げられるが、これらに限定されない。他の態様においては、主エラストマーは、天然ラバー、スチレン−ブタジエンラバー、及び/又はポリブタジエンラバーを含む。
【0078】
[0076]幾つかの態様においては、主エラストマーはニトリル基を少しか含まないか又は全く含まない。本発明において用いる主エラストマーは、ニトリルモノマーが主エラストマーの10重量%未満を構成する場合には「非ニトリル」主エラストマーとみなす。一態様においては、主エラストマーはニトリル基を含まない。
【0079】
(C)充填剤:
[0077]幾つかの態様においては、本発明のエラストマー組成物には1種類以上の充填剤を含ませることができる。
【0080】
[0078]充填剤には、エラストマー組成物の熱物理特性(例えば、弾性率、強度、及び膨張係数)を向上させることができる任意の充填剤を含めることができる。例えば、充填剤には、シリカ、カーボンブラック、クレイ、アルミナ、タルク、マイカ、セルロース繊維及びガラス繊維などの不連続繊維、ケイ酸アルミニウム、アルミニウム三水和物、重晶石、長石、霞石、酸化アンチモン、炭酸カルシウム、カオリン、及びこれらの組み合わせを含ませることができる。一態様においては、充填剤は無機及び非ポリマー材料を含む。他の態様においては、充填剤はシリカ及び/又はカーボンブラックを含む。更に他の態様においては、充填剤はシリカを含む。
【0081】
[0079]幾つかの態様においては、エラストマー組成物には、エラストマーの全重量を基準として少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、又は50phrの1種類以上の充填剤を含ませることができる。更には又は或いは、エラストマー組成物には、エラストマーの全重量を基準として約150、140、130、120、110、100、90、80、70、又は60phr以下の1種類以上の充填剤を含ませることができる。
【0082】
[0080]幾つかの態様においては、エラストマー組成物は高充填エラストマー組成物である。本明細書において用いる「高充填」エラストマー組成物は、エラストマーの全重量を基準として少なくとも約60phrの1種類以上の充填剤を含む。一態様においては、高充填エラストマー組成物は、エラストマーの全重量を基準として少なくとも約65、70、75、80、85、90、又は95phrの1種類以上の充填剤を含む。更には又は或いは、高充填エラストマー組成物には、エラストマーの全重量を基準として約150、140、130、120、110、又は100phr以下の1種類以上の充填剤を含ませることができる。
【0083】
[0081]幾つかの態様においては、エラストマー組成物は高充填ではなく、少量の充填剤を含む。かかる態様においては、エラストマー組成物には、エラストマーの全重量を基準として少なくとも約5、10、又は15phr、及び/又は約60、50、又は40phr以下の1種類以上の充填剤を含ませることができる。
【0084】
(D)場合によって用いる添加剤:
[0082]本発明のエラストマー組成物には1種類以上の添加剤を含ませることができる。
【0085】
[0083]幾つかの態様においては、エラストマー組成物には、エラストマーの全重量を基準として少なくとも約1、2、5、10、又は15phrの1種類以上の添加剤を含ませることができる。更には又は或いは、エラストマー組成物には、エラストマーの全重量を基準として約70、50、40、30、又は20phr以下の1種類以上の添加剤を含ませることができる。
【0086】
[0084]添加剤には、例えば、加工助剤、キャリアエラストマー、粘着性付与剤、潤滑剤、オイル、ワックス、界面活性剤、安定剤、UV吸収剤/抑制剤、顔料、酸化防止剤、増量剤、反応性カップリング剤、及び/又は分岐剤を含めることができる。一態様においては、添加剤は、1種類以上のセルロースエーテル、スターチ、及び/又はその誘導体を含む。かかる態様においては、セルロースエーテル、スターチ、及び/又はその誘導体としては、例えば、アミロース、アセトキシプロピルセルロース、アミローストリアセテート、アミローストリブチレート、アミローストリカルバニレート、アミローストリプロピオネート、カルボキシメチルアミロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、及びナトリウムセルロースキサンタネートを挙げることができる。
【0087】
[0085]一態様においては、添加剤は非セルロースエステル加工助剤を含む。非セルロースエステル加工助剤には、例えば、加工油、スターチ、スターチ誘導体、及び/又は水を含めることができる。かかる態様においては、エラストマー組成物には、エラストマーの全重量を基準として約10、5、3、又は1phr未満の非セルロースエステル加工助剤を含ませることができる。更には又は或いは、エラストマー組成物は、少なくとも約0.5:1、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、8:1、又は10:1のセルロースエステルと非セルロースエステル加工助剤との重量比を示すことができる。
【0088】
[0086]他の態様においては、エラストマー組成物にはスターチ及び/又はその誘導体を含ませることができる。かかる態様においては、エラストマー組成物には、エラストマーの全重量を基準として10、5、3、又は1phr未満のスターチ及びその誘導体を含ませることができる。更には又は或いは、エラストマー組成物は、少なくとも約3:1、4:1、5:1、8:1、又は10:1のセルロースエステルとスターチとの重量比を示すことができる。
【0089】
(E)エラストマー組成物の製造方法:
[0087]本発明のエラストマー組成物は、2つの異なるタイプのプロセスによって製造することができる。第1のプロセスは、セルロースエステルを主エラストマー中に直接溶融分散させることを含む。第2のプロセスは、セルロースエステルをキャリアエラストマーと混合してセルロースエステル濃縮物を生成させ、次にセルロースエステル濃縮物を主エラストマーとブレンドすることを含む。
【0090】
[0088]第1のプロセスにおいては、セルロースエステルを主エラストマーと直接ブレンドしてエラストマー組成物を生成させる。幾つかの態様においては、第1のプロセスは、(a)少なくとも1種類の主エラストマー、少なくとも1種類のセルロースエステル、及び場合によっては1種類以上の充填剤を、セルロースエステルを主エラストマー全体に分散させてエラストマー組成物が生成するようにするのに十分な時間及び温度でブレンドすることを含む。セルロースエステル及び主エラストマーをブレンドために十分な温度は、セルロースエステルの流動温度(これはセルロースエステルのTgよりも少なくとも約10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、又は約50℃高い)であってよい。ブレンドの温度は、主エラストマーのより高い加工温度範囲、及びセルロースエステルのより低い加工温度範囲によって限定することができる。
【0091】
[0089]主エラストマー、セルロースエステル、充填剤、及び添加剤は、プロセス中に任意の順番で添加又は混合することができる。一態様においては、セルロースエステルは、主エラストマーとブレンドする前に可塑剤及び/又は相溶化剤で変性することができる。
【0092】
[0090]第1のプロセスの幾つかの態様においては、ブレンドの少なくとも一部は、少なくとも約80℃、100℃、120℃、130℃、又は140℃の温度で行うことができる。更には又は或いは、ブレンドの少なくとも一部は、約220℃、200℃、190℃、170℃、又は160℃以下の温度で行うことができる。
【0093】
[0091]この第1のプロセス中において、セルロースエステルを有効に軟化及び/又は溶融させて、それによりセルロースエステルを特定のブレンド条件下において十分に小さい粒径に形成することを可能にすることができる。かかる態様においては、小さい粒径のために、プロセス中においてセルロースエステルを主エラストマー全体に十分に分散させることができる。一態様においては、エラストマー組成物中のセルロースエステルの粒子は球状又はほぼ球状の形状を有する。本明細書において用いる「ほぼ球状」の形状とは、2:1未満の断面アスペクト比を有する粒子を包含すると理解される。より特定の態様においては、球状及びほぼ球状の粒子は、1.5:1、1.2:1、又は1.1:1未満の断面アスペクト比を有する。本明細書において用いる「断面アスペクト比」とは、粒子の断面の最も長い寸法とその最も短い寸法との比である。更なる態様においては、エラストマー組成物中のセルロースエステルの粒子の少なくとも約75、80、85、90、95、又は99.9%は、約10:1、8:1、6:1、又は4:1以下の断面アスペクト比を有する。
【0094】
[0092]幾つかの態様においては、セルロースエステル粒子の少なくとも約75、80、85、90、95、又は99.9%は、セルロースエステルを主エラストマーとブレンドした後において約10、8、5、4、3、2、又は1μm以下の直径を有する。
【0095】
[0093]幾つかの態様においては、プロセスの開始時において加えるセルロースエステルは、200〜400μmの範囲の粒径を有する粉末の形態である。かかる態様においては、セルロースエステルを主エラストマー中にブレンドした後に、セルロースエステルの粒径を、ブレンド前のそれらの粒径に比べて少なくとも約50、75、90、95、又は99%減少させることができる。
【0096】
[0094]幾つかの態様においては、充填剤はセルロースエステル粒子の寸法よりも相当に小さい粒径を有していてよい。例えば、充填剤は、エラストマー組成物中のセルロースエステル粒子の平均粒径の約50、40、30、20、又は10%以下の平均粒径を有していてよい。
【0097】
[0095]第2のプロセスにおいては、セルロースエステルをまずキャリアエラストマーと混合してセルロースエステル濃縮物(即ちセルロースエステルマスターバッチ)を生成させ、これを次に主エラストマーとブレンドしてエラストマー組成物を生成させることができる。この第2のプロセスはまた、「マスターバッチプロセス」と呼ぶこともできる。このマスターバッチプロセスの1つの有利性は、より高いTgを有するセルロースエステルを主エラストマー全体により容易に分散させることができることである。一態様においては、マスターバッチプロセスは、高Tgセルロースエステルを相溶性のキャリアエラストマーと混合してセルロースエステル濃縮物を生成させ、次にセルロースエステル濃縮物を少なくとも1種類の主エラストマーとブレンドしてエラストマー組成物を生成させることを含む。
【0098】
[0096]幾つかの態様においては、マスターバッチプロセスは、(a)少なくとも1種類のセルロースエステルを少なくとも1種類のキャリアエラストマーと、セルロースエステル及びキャリアエラストマーを混合するのに十分な時間及び温度で混合して、それによってセルロースエステル濃縮物を生成させ;そして(b)セルロースエステル濃縮物及び少なくとも1種類の主エラストマーをブレンドしてエラストマー組成物を生成させる;工程を含む。セルロースエステル及びキャリアエラストマーを混合するのに十分な温度は、セルロースエステルの流動温度(これはセルロースエステルのTgよりも少なくとも約10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、又は約50℃高い)であってよい。マスターバッチプロセスの一態様においては、セルロースエステルは、少なくとも約90℃、95℃、100℃、105℃、又は110℃のTgを有する。更には又は或いは、セルロースエステルは、約200℃、180℃、170℃、160℃、又は150℃以下のTgを有していてよい。更なる態様においては、工程(a)の混合の少なくとも一部は、工程(b)のブレンドの温度よりも少なくとも10℃、15℃、20℃、30℃、40℃、又は50℃高い温度で行う。
【0099】
[0097]幾つかの態様においては、セルロースエステルとキャリアエラストマーの混合の少なくとも一部は、少なくとも約170℃、180℃、190℃、200℃、又は210℃の温度で行う。更には又は或いは、セルロースエステルとキャリアエラストマーの混合の少なくとも一部は、260℃、250℃、240℃、230℃、又は220℃より低い温度で行う。
【0100】
[0098]幾つかの態様においては、セルロースエステル濃縮物と主エラストマーのブレンドの少なくとも一部は、主エラストマーを分解しない温度で行う。例えば、ブレンドの少なくとも一部は、約180℃、170℃、160℃、又は150℃以下の温度で行うことができる。
【0101】
[0099]充填剤及び/又は添加剤は、マスターバッチプロセスの任意の工程中に加えることができる。一態様においては、セルロースエステルは、マスターバッチプロセスの前に可塑剤又は相溶化剤で変性することができる。
【0102】
[00100]幾つかの態様においては、セルロースエステル濃縮物の少なくとも一部は、主エラストマーとブレンドする前にフィブリル化にかけることができる。かかる態様においては、得られるセルロースエステル濃縮物のフィブリルは、少なくとも約2:1、4:1、6:1、又は8:1のアスペクト比を有することができる。別の態様においては、セルロースエステル濃縮物の少なくとも一部は、主エラストマーとブレンドする前にペレット化又は粒状化することができる。
【0103】
[00101]幾つかの態様においては、セルロースエステル濃縮物には、少なくとも約10、15、20、25、30、35、又は40重量%の少なくとも1種類のセルロースエステルを含ませることができる。更には又は或いは、セルロースエステル濃縮物には、約90、85、80、75、70、65、60、55、又は50重量%以下の少なくとも1種類のセルロースエステルを含ませることができる。一態様においては、セルロースエステル濃縮物には、少なくとも約10、15、20、25、30、35、又は40重量%の少なくとも1種類のキャリアエラストマーを含ませることができる。更には又は或いは、セルロースエステル濃縮物には、約90、85、80、75、70、65、60、55、又は50重量%以下の少なくとも1種類のキャリアエラストマーを含ませることができる。
【0104】
[00102]第1のプロセスと同様に、マスターバッチプロセス中においてセルロースエステルを有効に軟化及び/又は溶融させて、それによりセルロースエステルを特定のブレンド条件下において十分に小さい粒径に形成することを可能にすることができる。かかる態様においては、小さい粒径のために、プロセスの後にセルロースエステルをエラストマー組成物全体に十分に分散させることができる。一態様においては、エラストマー組成物中のセルロースエステルの粒子は球状又はほぼ球状の形状を有する。一態様においては、セルロースエステル濃縮物を主エラストマーとブレンドした後において、セルロースエステルは、2:1、1.5:1、1.2:1、又は1.1:1未満の断面アスペクト比を有する球状又はほぼ球状の粒子の形態である。更なる態様においては、セルロースエステル濃縮物を主エラストマーとブレンドした後において、セルロースエステルの粒子の少なくとも約75、80、85、90、95、又は99.9%は、約2:1、1.5:1、1.2:1、又は1.1:1以下の断面アスペクト比を有する。
【0105】
[00103]幾つかの態様においては、セルロースエステル粒子の少なくとも約75、80、85、90、95、又は99.9%は、セルロースエステル濃縮物を主エラストマーとブレンドした後に約10、8、5、4、3、2、又は1μm以下の直径を有する。
【0106】
[00104]幾つかの態様においては、マスターバッチプロセスの開始時において加えるセルロースエステルは、200〜400μmの範囲の粒径を有する粉末の形態である。かかる態様においては、セルロースエステル濃縮物を主エラストマーとブレンドした後において、セルロースエステルの粒径は、マスターバッチプロセス前のそれらの粒径に比べて少なくとも約90、95、98、99、又は99.5%減少させることができる。
【0107】
[00105]キャリアエラストマーは、主エラストマーと相溶性であり、160℃より高い温度において加工することができる実質的に任意の未硬化のエラストマーであってよい。キャリアエラストマーには、例えば、スチレンブロックコポリマー、ポリブタジエン、天然ラバー、合成ラバー、アクリル樹脂、無水マレイン酸変性スチレン樹脂、再生ラバー、クラムラバー、粉末ラバー、イソプレンラバー、ニトリルラバー、及びこれらの組み合わせを含ませることができる。スチレンブロックコポリマーとしては、例えば、少なくとも約5、10、又は15重量%、及び/又は約40、35、又は30重量%以下のスチレン含量を有する、スチレン−ブタジエンブロックコポリマー、及びスチレンエチレン−ブチレンブロックコポリマーを挙げることができる。一態様においては、キャリアエラストマーはセルロースエステルのTgよりも低いTgを有する。
【0108】
[00106]幾つかの態様においては、キャリアエラストマーは、スチレンブロックコポリマー、ポリブタジエン、天然ラバー、合成ラバー、アクリル樹脂、無水マレイン酸変性スチレン樹脂、及びこれらの組み合わせを含む。一態様においては、キャリアエラストマーは1,2−ポリブタジエンを含む。他の態様においては、キャリアエラストマーはスチレンブロックコポリマーを含む。更に他の態様においては、キャリアエラストマーは無水マレイン酸変性スチレンエチレン−ブチレンエラストマーを含む。
【0109】
[00107]幾つかの態様においては、キャリアエラストマーに対するセルロースエステルの溶融粘度比は、170℃及び400秒
−1の剪断速度において測定して少なくとも約0.1、0.2、0.3、0.5、0.8、又は1.0である。更には又は或いは、キャリアエラストマーに対するセルロースエステルの溶融粘度比は、170℃及び400秒
−1の剪断速度において測定して約2、1.8、1.6、1.4、又は1.2以下である。
【0110】
[00108]幾つかの態様においては、主エラストマーに対するセルロースエステル濃縮物の溶融粘度比は、160℃及び200秒
−1の剪断速度において測定して少なくとも約0.1、0.2、0.3、0.5、0.8、又は1.0である。更には又は或いは、主エラストマーに対するセルロースエステル濃縮物の溶融粘度比は、160℃及び200秒
−1の剪断速度において測定して約2、1.8、1.6、1.4、又は1.2以下である。
【0111】
[00109]幾つかの態様においては、セルロースエステルは、170℃及び1rad/秒の剪断速度において測定して少なくとも約75,000、100,000、又は125,000ポイズの溶融粘度を示す。更には又は或いは、セルロースエステルは、170℃及び1rad/秒の剪断速度において測定して約1,000,000、900,000、又は800,000ポイズ以下の溶融粘度を示してよい。他の態様においては、キャリアエラストマーは、170℃及び1rad/秒の剪断速度において測定して少なくとも約75,000、100,000、又は125,000ポイズの溶融粘度を示す。更には又は或いは、キャリアエラストマーは、170℃及び1rad/秒の剪断速度において測定して約2,000,000、1,750,000、又は1,600,000ポイズ以下の溶融粘度を示してよい。
【0112】
[00110]幾つかの態様においては、セルロースエステルは、170℃及び10rad/秒の剪断速度において測定して少なくとも約25,000、40,000、又は65,000ポイズの溶融粘度を示す。更には又は或いは、セルロースエステルは、170℃及び10rad/秒の剪断速度において測定して約400,000、300,000、又は200,000ポイズ以下の溶融粘度を示してよい。他の態様においては、キャリアエラストマーは、170℃及び10rad/秒の剪断速度において測定して少なくとも約20,000、30,000、又は40,000ポイズの溶融粘度を示す。更には又は或いは、キャリアエラストマーは、170℃及び10rad/秒の剪断速度において測定して約500,000、400,000、又は300,000ポイズ以下の溶融粘度を示してよい。
【0113】
[00111]幾つかの態様においては、セルロースエステルは、170℃及び100rad/秒の剪断速度において測定して少なくとも約10,000、15,000、又は20,000ポイズの溶融粘度を示す。更には又は或いは、セルロースエステルは、170℃及び100rad/秒の剪断速度において測定して約100,000、75,000、又は50,000ポイズ以下の溶融粘度を示してよい。他の態様においては、キャリアエラストマーは、170℃及び100rad/秒の剪断速度において測定して少なくとも約10,000、15,000、又は20,000ポイズの溶融粘度を示す。更には又は或いは、キャリアエラストマーは、170℃及び100rad/秒の剪断速度において測定して約100,000、75,000、又は50,000ポイズ以下の溶融粘度を示してよい。
【0114】
[00112]幾つかの態様においては、セルロースエステルは、170℃及び400rad/秒の剪断速度において測定して少なくとも約2,000、5,000、又は8,000ポイズの溶融粘度を示す。更には又は或いは、セルロースエステルは、170℃及び400rad/秒の剪断速度において測定して約30,000、25,000、又は20,000ポイズ以下の溶融粘度を示してよい。他の態様においては、キャリアエラストマーは、170℃及び400rad/秒の剪断速度において測定して少なくとも約1,000、4,000、又は7,000ポイズの溶融粘度を示す。更には又は或いは、キャリアエラストマーは、170℃及び400rad/秒の剪断速度において測定して約30,000、25,000、又は20,000ポイズ以下の溶融粘度を示してよい。
【0115】
[00113]幾つかの態様においては、キャリアエラストマーはニトリル基を少しか含まないか又は全く含まない。本発明において用いるキャリアエラストマーは、ニトリルモノマーがキャリアエラストマーの10重量%未満を構成する場合には「非ニトリル」キャリアエラストマーとみなす。一態様においては、キャリアエラストマーはニトリル基を含まない。
【0116】
[00114]一態様においては、キャリアエラストマーは主エラストマーと同一である。他の態様においては、キャリアエラストマーは主エラストマーとは異なる。
【0117】
[00115]上記のプロセスのいずれかを用いて製造されたエラストマー組成物は、硬化にかけて、それによって硬化エラストマー組成物を生成させることができる。硬化は、昇温及び昇圧の条件下で好適な時間硬化させることのような任意の通常の方法を用いて行うことができる。例えば、硬化プロセスには、エラストマー組成物を少なくとも160℃の温度に少なくとも15分間曝露することを含ませることができる。用いることができる硬化系の例としては、イオウベースの系、樹脂硬化系、石鹸/イオウ硬化系、ウレタン架橋剤、ビスフェノール硬化剤、シラン架橋、イソシアネート、多官能性アミン、高エネルギー放射線、金属酸化物架橋、及び/又はペルオキシド架橋が挙げられるが、これらに限定されない。
【0118】
[00116]上述のプロセスの混合及びブレンドは、セルロースエステル及びエラストマーを混合するのに十分である当該技術において公知の任意の方法によって行うことができる。混合装置の例としては、バンバリーミキサー、ブラベンダーミキサー、ロールミル、遊星ミキサー、一軸押出機、及び二軸押出機が挙げられるが、これらに限定されない。混合中の剪断エネルギーは、装置、ブレードのデザイン、回転速度(rpm)、及び混合時間の組み合わせによって定まる。剪断エネルギーは、軟化/溶融したセルロースエステルを、セルロースエステルを主エラストマー全体に分散させるのに十分に小さい寸法に分解するのに十分なものでなければならない。例えば、バンバリーミキサーを用いる場合には、剪断エネルギー及び混合時間は、100rpmにおいて約5〜約15分間の範囲にすることができる。本発明の幾つかの態様においては、上記で議論したブレンド及び/又は混合段階の少なくとも一部は、少なくとも約50、75、100、125、又は150秒
−1の剪断速度において行うことができる。更には又は或いは、上記で議論したブレンド及び/又は混合段階の少なくとも一部は、約1,000、900、800、600、又は550秒
−1以下の剪断速度において行うことができる。
【0119】
[00117]2種類以上の粘弾性材料を混合する効率は、粘弾性材料の粘度の比によって定まる可能性があることが当該技術において公知である。所定の混合装置及び剪断速度範囲に関しては、分散相(セルロースエステル、充填剤、及び添加剤)と連続相(主エラストマー)との粘度比は、適当な粒径を得るための規定の限界内でなければならない。バンバリーミキサー及びブラベンダーミキサーのような低剪断回転剪断装置を用いる本発明の一態様においては、連続相(例えば主エラストマー)に対する分散相(例えばセルロースエステル、充填剤、及び添加剤)の粘度比は、約0.001〜約5、約0.01〜約5、及び約0.1〜約3の範囲であってよい。二軸押出機のような高剪断回転/伸張剪断装置を用いる本発明の更に他の態様においては、連続相(例えば主エラストマー)に対する分散相(例えばセルロースエステル、充填剤、及び添加剤)の粘度比は、約0.001〜約500、及び約0.01〜約100の範囲であってよい。
【0120】
[0118]2種類以上の粘弾性材料を混合する際は、2種類の粘弾性材料の界面エネルギーの間の差が混合効率に影響を与える可能性があることも、当該技術において公知である。混合は、材料の間の界面エネルギーの差が最小である場合により効率的である可能性がある。本発明の一態様においては、分散相(例えばセルロースエステル、充填剤、及び添加剤)と連続相(例えば主エラストマー)との間の表面張力の差は、約100ダイン/cm未満、50ダイン/cm未満、又は20ダイン/cm未満である。
【0121】
(F)エラストマー組成物:
[00119]本発明のエラストマー組成物は、加工性、強度、弾性率、及び弾力性に関連する数多くの向上を示すことができる。
【0122】
[00120]幾つかの態様においては、未硬化のエラストマー組成物は、100℃においてASTM−D1646にしたがって測定して約110、105、100、95、90、又は85AU以下のムーニー粘度を示す。ムーニー粘度がより低いと、未硬化のエラストマー組成物はより加工しやすい。他の態様においては、未硬化のエラストマー組成物は少なくとも6のPhillips分散等級を示す。
【0123】
[00121]幾つかの態様においては、未硬化のエラストマー組成物は、少なくとも約1.8、1.9、2.0、2.1、又は2.2(Ts2)分のスコーチ時間を示す。スコーチ時間がより長いと、硬化を開始する前にエラストマー組成物を取り扱うためにより長い時間が与えられるという点で加工性が向上する。試料のスコーチ時間は、硬化流量計(振動ディスク流量計(ODR))を用いて試験し、ASTM−D2084にしたがって行った。本明細書において用いる「ts2」は、流量計のトルクを最小値より2単位大きい値に増加させるのにかかる時間であり、「tc90」は、最小トルクと最大トルクとの間の差の90重量%に到達するのにかかる時間である。他の態様においては、未硬化のエラストマー組成物は、約15、14、13、12、11、又は10(tc90)分以下の硬化時間を示す。より短い硬化時間は、エラストマー組成物をより速い速度で硬化させ、したがって製造を増加させることができるので、向上した加工性を示す。
【0124】
[00122]幾つかの態様においては、硬化したエラストマー組成物は、5%歪み及び30℃において測定して少なくとも約1,400,000、1,450,000、1,500,000、1,600,000、1,700,000、又は1,800,000Paの動的機械分析(DMA)歪みスイープ弾性率を示す。より高いDMA歪みスイープ弾性率はより高い弾性率/硬度を示す。DMA歪みスイープは、Metravib DMA150動的機械分析器を用いて、30℃及び10Hzにおいて均一に離隔したログステップにおける13点において0.001〜0.5の動的歪み下で試験する。
【0125】
[00123]幾つかの態様においては、硬化したエラストマー組成物は、ASTM−D624にしたがって測定して少なくとも約120、125、130、140、150、155、160、165、又は170重量ポンド/インチの成形溝引裂を示す。
【0126】
[00124]幾つかの態様においては、硬化したエラストマー組成物は、ASTM−D1876−01にしたがって測定して少なくとも約80、85、90、95、100、110、120、又は130重量ポンド/インチの剥離引裂を示す。
【0127】
[00125]幾つかの態様においては、硬化したエラストマー組成物は、ASTM−D412にしたがって測定して少なくとも約360、380、400、420、425、又は430%の破断歪みを示す。他の態様においては、硬化したエラストマー組成物は、ASTM−D412にしたがって測定して少なくとも2,600、2,800、2,900、又は3,000psiの破断応力を示す。破断歪み及び破断応力は、両方ともエラストマー組成物の靱性及び剛性の指標である。
【0128】
[00126]幾つかの態様においては、硬化したエラストマー組成物は、約0.100、0.105、0.110、又は0.115以下の0℃及び5%の引張歪みにおけるtanδを示す。他の態様においては、硬化したエラストマー組成物は、約0.25、0.24、0.23、0.22、又は0.21以下の30℃及び5%の剪断歪みにおけるtanδを示す。tanδは、TA Instruments動的機械分析器を用いて、引張形状を用いる温度スイープを完了させて測定した。10Hzの振動数、5%の静的歪み、及び0.2%の動的歪みを用いて、tanδ(=E”/E’)(貯蔵弾性率(E’)、及び損失弾性率(E”))を−80℃〜120℃の温度の関数として測定した。
【0129】
[00127]幾つかの態様においては、硬化したエラストマー組成物は、少なくとも約30、35、40、又は45重量ポンド/インチの100℃における接着強度を示す。100℃における接着強度は、180°のT剥離形状を用いて測定される。
【0130】
[00128]幾つかの態様においては、硬化したエラストマー組成物は、少なくとも約51、53、55、又は57のショアA硬度を示す。ショアA硬度は、ASTM−D2240にしたがって測定される。
【0131】
(G)エラストマー組成物を含ませたタイヤ:
[00129]本発明のエラストマー組成物を用いて、タイヤを製造することができ、及び/又はこれをタイヤ中に含ませることができる。
【0132】
[00130]幾つかの態様においては、エラストマー組成物をタイヤ及び/又はタイヤ部品に成形する。タイヤとしては、例えば乗用車用タイヤ、軽量トラック用タイヤ、重量トラック用タイヤ、オフロード用タイヤ、RV車用タイヤ、及び農業用タイヤを挙げることができる。タイヤ部品には、例えばタイヤトレッド、サブトレッド、アンダートレッド、ボディプライ、ベルト、オーバーレイキャッププライ、ベルトウェッジ、ショルダーインサート、タイヤエイペックス、タイヤサイドウォール、ビードフィラー、及びエラストマーを含む任意の他のタイヤ部品を含めることができる。一態様においては、エラストマー組成物は、タイヤトレッド、タイヤサイドウォール、及び/又はビードフィラーに成形する。
【0133】
[00131]一態様においては、本発明のエラストマー組成物は空気タイヤの製造において用いることができる。
図1は、本発明の空気タイヤ10の一例を示す断面図である。空気タイヤ10は、トレッド部分12、トレッド部分12の両端からタイヤの半径方向に内側へ伸びる一対のサイドウォール部分14、及びそれぞれのサイドウォール部分14の内側端に配置されているビードフィラー16を有する。ビード部分16の間に伸びるボディプライ18が与えられていて、トレッド12及びサイドウォール14を強化している。第1のスチールベルト20及び第2のスチールベルト22がタイヤ中に組み込まれていて、部品の間の強度及び接着を与えている。ベルトウェッジ24をスチールベルトの間に組み込んで、スチールベルトの間の接着を与えて引裂抵抗を向上させることができる。空気タイヤ10はまた、タイヤの内部部分を強化し且つ空気不透過性を向上させるインナーライナー26も含む。更に、ショルダーインサート28、サブトレッド30、及びアンダートレッド32が与えられていて、トレッド12及びボディプライ18を更に支持している。最後に、タイヤ10は、キャッププライ(オーバーレイ)34を有していて、使用中においてボディプライ18を更に強化している。
【0134】
[00132]空気タイヤは、任意の従来公知の方法を用いて本発明のエラストマー組成物から製造することができる。特に、未硬化のエラストマー組成物を、所望のタイヤ部品の形状に適合させて押出及び加工し、次に有効に硬化させてタイヤ部品を形成することができる。
【0135】
[00133]本発明はその好ましい態様の以下の実施例によって更に示すことができるが、これらの実施例は単に例示の目的のために含ませるものであり、他に具体的に示さない限りにおいて発明の範囲を限定することは意図しないことが理解されるであろう。
【実施例】
【0136】
実施例1:
[00134]種々の量のセルロースエステルを含むエラストマー組成物を、セルロースエステルを含まないエラストマー組成物と比較した。表1における配合及びパラメーターにしたがってエラストマー組成物を調製した。実施例1及び2は種々の量のセルロースエステルを含み、一方、比較例1及び2にはセルロースエステルは加えなかった。
【0137】
【表1】
【0138】
[00135]エラストマー組成物は、まず37.5phrのTDAEオイルで増量したスチレン−ブタジエンラバーの溶液(Lanxess, Cologne,ドイツからのBuna VSL 5025-2 HM)、ポリブタジエンラバー(Lanxess, Cologne,ドイツからのBuna C22)、シリカ、カーボンブラック、カップリング剤(Si266)、及び硬化活性化剤(即ちステアリン酸)を、バンバリーミキサー内においてブレンドして第1のマスターバッチを生成させることによって調製した。更に、比較例2を調製するのに用いた第1のマスターバッチには、芳香族加工油(Petronas Lubricants,ベルギーからのSundex 790)を加えた。第1のマスターバッチは、表1及び2の第1段階において示すパラメーターにしたがってブレンド及び調製した。
【0139】
[00136]全ての実施例に関する第1のマスターバッチを、次に硬化活性化剤、微結晶質ワックス、及び酸化防止剤とブレンドして第2のマスターバッチを調製した。更に、実施例1及び2を調製するのに用いた第1のマスターバッチには、セルロースエステル(Eastman Chemical Kingsport, TNからのCAB-551-0.01)、及びカップリング剤(Evonik Degussa, Koln,ドイツからのSI69)を加えた。第2のマスターバッチは、表1及び2の第2段階において示すパラメーターにしたがってブレンド及び調製した。
【0140】
[00137]全ての実施例に関する第2のマスターバッチを、架橋剤、及び2種類の異なる硬化促進剤(Solutia, St.Louis, MOからのSantocure CBS及びPerkacit DPG-grs)とブレンドした。第2のマスターバッチを、表1及び2の第3段階において示すパラメーターにしたがって処理した。処理の後、第2のマスターバッチを160℃において30分間硬化させた。
【0141】
【表2】
【0142】
実施例2:
[00138]実施例1において調製したエラストマー組成物の種々の性能特性を試験した。
【0143】
[00139]破断応力及び破断歪みは、試験片の調製のためにダイCを用いて、ASTM−D412によって測定した。試験片は、1インチの幅及び4.5インチの長さを有していた。試験の速度は20インチ/分であり、ゲージ長さは63.5mm(2.5インチ)であった。試料を、実験室内において50%±5%の湿度及び72°F(22℃)で40時間コンデショニングした。
【0144】
[00140]ムーニー粘度はASTM−D1646にしたがって100℃において測定した。
【0145】
[00141]Phillips分散等級は、試料を安全カミソリで切断し、次にPAXCAM ARCデジタルカメラ及びHewlett Packard 4600カラープリンターにインターフェース接続しているOlympus SZ60ズーム立体顕微鏡を用いて、30倍の倍率で写真を撮影した。次に、試料の写真を、1(劣)〜10(優)の範囲の基準を有するPhillips標準分散等級チャートと比較した。
【0146】
[00142]動的機械分析(DMA)歪みスイープは、Metravib DMA150動的機械分析器を剪断変形において用いて、10mm×2mmの単純剪断を用いて二重歪みスイープ実験を行って試験した。実験条件は、30℃及び10Hzにおいて均一に離隔したログステップにおける13点において0.001〜0.5の動的歪みであった。
【0147】
[00143]熱間成形溝トラウザー引裂は、ASTM試験法D624にしたがって100℃において測定した。
【0148】
[00144]剥離引裂(100℃における自己接着)は、180°T剥離形状を用いて、修正を加えたASTM試験法D1876−01にしたがって測定した。標準的な1インチ×6インチの剥離試験片を修正して、マイラー窓によって接着試験領域を減少させた。窓の寸法は3インチ×0.125インチであり、引張速度は2インチ/分であった。
【0149】
[00145]これらの試験の結果を、それぞれのエラストマー組成物に関して表3に示す。表3は、セルロースエステル及び芳香族加工油を加えるとエラストマー組成物のムーニー粘度を低下させることができることを示し、これはより良好な加工性を示す。いずれの成分も含んでいなかった比較例1は高いムーニー粘度を示し、而してより劣っている加工性を示した。更に、セルロースエステルを加えるとDMA歪みスイープが増加し、而してこれらのエラストマー組成物は向上した硬度及び取扱い特性を示した。これに対して、芳香族加工油を用いてそのムーニー粘度を低下させた比較例2は低いDMA歪みスイープを示した。而して、芳香族加工油はムーニー粘度の低下をもたらしたが、これはエラストマー組成物の取扱い特性及び硬度特性の望ましくない低下を与えた。更に、セルロースエステルを含むエラストマー組成物は、100℃における成形溝引裂及び剥離引裂によって示されるように、比較例と比べてより高い引裂強度を示した。更に、表3は、芳香族加工油を加えると、比較例2におけるように、引裂強度に対する影響は僅か乃至全くなかったことを示す。
【0150】
【表3】
【0151】
実施例3:
[00146]本実施例においては、マスターバッチプロセスを用いてエラストマー組成物を調製した。複数の異なるセルロースエステル濃縮物を調製し、その後エラストマーと混合してエラストマー組成物を調製した。
【0152】
[00147]マスターバッチプロセスの第1段階においては、セルロースエステルをスチレンブロックコポリマー材料と袋でブレンドし、次に簡単な定量供給機を用いてLeitstritz二軸押出機の冷却した供給口中に供給してセルロースエステル濃縮物(即ちマスターバッチ)を調製した。この第1段階において用いたセルロースエステル及びスチレンブロックコポリマー材料の種々の特性を表4及び5に示す。表4中に示されているセルロースエステルは全て、Eastman Chemical Company, Kingsport, TNからのものであった。表5におけるスチレンブロックコポリマーは全て、Kraton Polymers, Houston, TXからのものであった。Leistritz押出機は、38:1のL/Dを有する直径18mmの異方向回転押出機であった。材料は、通常はスクリュートルク値を50重量%より大きく維持した体積供給速度を用いて300〜350RPMで押出した。ストランドダイを通して試料を押出し、水浴中で急冷し、その後にペレット化した。セルロースエステル及びスチレンブロックコポリマーの相対装填レベルを変化させて、混合効率に対する影響を求めた。
【0153】
[00148]第2段階においては、これらのセルロースエステル濃縮物を、ローラータイプの高剪断ブレードを取り付けたブラベンダーバッチミキサーを用いて基ラバー配合物と混合した。基ラバーは、スチレンブタジエンラバー(Buna 5025-2、89.4pph)及びポリブタジエンラバー(Buna CB24、35pph)のブレンドであった。混合は、160℃の設定温度及び50RPMの開始ローター速度で行った。RPMは必要に応じて低下させて、過剰の剪断による過熱を最小にした。セルロースエステル濃縮物装填レベルを調節して、最終混合物中に約20重量%のセルロースエステルが存在するようにした。
【0154】
[00149]比較例に関しては、マスターバッチを形成するために、まずセルロースエステル及び可塑剤(即ちラバーなし)を、ローラー高剪断ブレードを取り付けたブラベンダーバッチミキサー内で一緒に混合した。可塑剤は、高粘度のセルロースエステルはラバーの加工温度(即ち150〜160℃)においては混合しないことが観察されているので、流動性を向上させ、粘度を低下させるために加えた。混合は、160℃及び50RPMにおいて約10〜15分間行った。完了したら、試料を取り出し、凍結粉砕して粉末を形成した。
【0155】
[00150]次の段階においては、同じブラベンダーミキサーを用いて、20重量%のセルロースエステル/可塑剤マスターバッチを160℃及び50RPMにおいてラバー配合物に加えた。マスターバッチは、ラバー化合物をミキサー中に完全に導入した30秒後に加えた。全ての成分を加えた後に混合を約10分間行った。次に、試料を取り出して試験した。
【0156】
[00151]分散液中の粒子の寸法は、複合光学顕微鏡(通常は40倍)を用いて測定した。試料は凍結研磨して画像の品質を向上させることができ、顕微鏡は微分干渉コントラストモードで操作してコントラストを増大させることができた。
【0157】
[00152]ガラス転移温度は、DSCを用いて20℃/分の走査速度で測定した。
【0158】
[00153]下記に示すように試験し調製した全ての試料に関する基本的な配合を、表6A、6B、及び6Cに示す。
【0159】
【表4】
【0160】
【表5】
【0161】
実施例3(a):
[00154]本実施例においては、40重量%のEastman CAB381-0.1、及び60重量%のKraton FG1924を含むセルロースエステル濃縮物を調製した。中剪断のスクリューデザインを用いて、200℃の最高区域温度及び1分間未満の滞留時間で材料を配合した。セルロースエステル濃縮物を50:50の重量比で基ラバー配合物と配合し、ブラベンダーミキサー内において混合した。最終的なエラストマー組成物は、50重量%の基ラバー、30重量%のKraton FG1924、及び20重量%のCAB381-0.1を含んでいた。粒子は均一に分散しており、1ミクロン未満の粒径を有していた。
【0162】
実施例3(b):
[00155]本実施例においては、60重量%のEastman CAB381-0.1、及び40重量%のKraton FG1924を含むセルロースエステル濃縮物を調製した。中剪断のスクリューデザインを用いて、200℃の最高区域温度及び1分間未満の滞留時間で材料を配合した。セルロースエステル濃縮物を33.3/66.7の重量比で基ラバー配合物と配合し、ブラベンダーミキサー内において混合した。最終的な配合物は、66.7重量%の基ラバー、13.3重量%のKraton FG1924、及び20重量%のCAB381-0.1を含んでいた。粒子は均一に分散しており、3ミクロン未満の粒径を有しており、大部分の粒子は1ミクロン未満であった。
【0163】
実施例3(c):
[00156]本実施例においては、40重量%のEastman CAB381-0.5、及び60重量%のKraton FG1924を含むセルロースエステル濃縮物を調製した。中剪断のスクリューデザインを用いて、225℃の最高区域温度及び1分間未満の滞留時間で材料を配合した。セルロースエステル濃縮物を50/50の重量比で基ラバー配合物と配合し、ブラベンダーミキサー内において混合した。最終的な配合物は、50重量%の基ラバー、30重量%のKraton FG1924、及び20重量%のCAB381-0.5を含んでいた。粒子は均一に分散しており、1ミクロン未満の粒径を有していた。
【0164】
実施例3(d):
[00157]本実施例においては、40重量%のEastman CAB381-2、及び60重量%のKraton FG1924を含むセルロースエステル濃縮物を調製した。中剪断のスクリューデザインを用いて、250℃の最高区域温度及び1分間未満の滞留時間で材料を配合した。セルロースエステル濃縮物を50/50の重量比で基ラバー配合物と配合し、ブラベンダーミキサー内において混合した。最終的な配合物は、50重量%の基ラバー、30重量%のKraton FG1924、及び20重量%のCAB381-2を含んでいた。粒子は均一に分散しており、1ミクロン未満の粒径を有していた。
【0165】
実施例3(e):
[00158]本実施例においては、40重量%のEastman CAB381-0.1、及び60重量%のKraton D1102を含むセルロースエステル濃縮物を調製した。中剪断のスクリューデザインを用いて、200℃の最高区域温度及び1分間未満の滞留時間で材料を配合した。セルロースエステル濃縮物を50/50の重量比で基ラバー配合物と配合し、ブラベンダーミキサー内において混合した。最終的な配合物は、50重量%の基ラバー、30重量%のKraton D1102、及び20重量%のCAB381-0.1を含んでいた。粒子は均一に分散しており、3ミクロン未満の粒径を有していた。
【0166】
実施例3(f):
[00159]本実施例においては、40重量%のEastman CAB381-0.1、及び60重量%のKraton D1101を含むセルロースエステル濃縮物を調製した。中剪断のスクリューデザインを用いて、200℃の最高区域温度及び1分間未満の滞留時間で材料を配合した。セルロースエステル濃縮物を50/50の重量比で基ラバー配合物と配合し、ブラベンダーミキサー内において混合した。最終的な配合物は、50重量%の基ラバー、30重量%のKraton D1101、及び20重量%のCAB381-0.1を含んでいた。粒子は均一に分散しており、5ミクロン未満の粒径を有していた。
【0167】
実施例3(g):
[00160]本実施例においては、40重量%のEastman CAB381-0.1、及び60重量%のKraton D1118を含むセルロースエステル濃縮物を調製した。中剪断のスクリューデザインを用いて、200℃の最高区域温度及び1分間未満の滞留時間で材料を配合した。セルロースエステル濃縮物を50/50の重量比で基ラバー配合物と配合し、ブラベンダーミキサー内において混合した。最終的な配合物は、50重量%の基ラバー、30重量%のKraton D1118、及び20重量%のCAB381-0.1を含んでいた。粒子は均一に分散しており、3ミクロン未満の粒径を有していた。
【0168】
実施例3(h):
[00161]本実施例においては、40重量%のEastman CAP482-0.5、及び60重量%のKraton FG1924を含むセルロースエステル濃縮物を調製した。中剪断のスクリューデザインを用いて、250℃の最高区域温度及び1分間未満の滞留時間で材料を配合した。セルロースエステル濃縮物を50/50の重量比で基ラバー配合物と配合し、ブラベンダーミキサー内において混合した。最終的な配合物は、50重量%の基ラバー、30重量%のKraton FG1924、及び20重量%のCAP482-0.5を含んでいた。粒子は均一に分散しており、1ミクロン未満の粒径を有していた。
【0169】
実施例3(i):
[00162]本実施例においては、40重量%のEastman CA398-3、及び60重量%のKraton FG1924を含むセルロースエステル濃縮物を調製した。中剪断のスクリューデザインを用いて、250℃の最高区域温度及び1分間未満の滞留時間で材料を配合した。セルロースエステル濃縮物を50/50の重量比で基ラバー配合物と配合し、ブラベンダーミキサー内において混合した。最終的な配合物は、50重量%の基ラバー、30重量%のKraton FG1924、及び20重量%のCA398-3を含んでいた。粒子は均一に分散しており、3ミクロン未満の粒径を有していた。
【0170】
実施例3(j):
[00163]本実施例においては、40重量%のEastman CAB381-0.1、及び60重量%のKraton FG1901を含むセルロースエステル濃縮物を調製した。中剪断のスクリューデザインを用いて、200℃の最高区域温度及び1分間未満の滞留時間で材料を配合した。セルロースエステル濃縮物を50/50の重量比で基ラバー配合物と配合し、ブラベンダーミキサー内において混合した。最終的な配合物は、50重量%の基ラバー、30重量%のKraton FG1901、及び20重量%のCAB381-0.1を含んでいた。粒子は均一に分散しており、1ミクロン未満の粒径を有していた。
【0171】
実施例3(k):
[00164]本実施例においては、40重量%のEastman CAB381-0.5、及び60重量%のKraton FG1901を含むセルロースエステル濃縮物を調製した。中剪断のスクリューデザインを用いて、225℃の最高区域温度及び1分間未満の滞留時間で材料を配合した。セルロースエステル濃縮物を50/50の重量比で基ラバー配合物と配合し、ブラベンダーミキサー内において混合した。最終的な配合物は、50重量%の基ラバー、30重量%のKraton FG1901、及び20重量%のCAB381-0.5を含んでいた。粒子は均一に分散しており、1ミクロン未満の粒径を有していた。
【0172】
実施例3(l):
[00165]本実施例においては、40重量%のEastman CAB381-2、及び60重量%のKraton FG1901を含むセルロースエステル濃縮物を調製した。中剪断のスクリューデザインを用いて、250℃の最高区域温度及び1分間未満の滞留時間で材料を配合した。セルロースエステル濃縮物を50/50の重量比で基ラバー配合物と配合し、ブラベンダーミキサー内において混合した。最終的な配合物は、50重量%の基ラバー、30重量%のKraton FG1901、及び20重量%のCAB381-2を含んでいた。粒子は均一に分散しており、1ミクロン未満の粒径を有していた。
【0173】
実施例3(m):
[00166]本実施例においては、40重量%のEastman CAP482-0.5、及び60重量%のKraton FG1901を含むセルロースエステル濃縮物を調製した。中剪断のスクリューデザインを用いて、250℃の最高区域温度及び1分間未満の滞留時間で材料を配合した。セルロースエステル濃縮物を50/50の重量比で基ラバー配合物と配合し、ブラベンダーミキサー内において混合した。最終的な配合物は、50重量%の基ラバー、30重量%のKraton FG1901、及び20重量%のCAP482-0.5を含んでいた。粒子は均一に分散しており、3ミクロン未満の粒径を有していた。
【0174】
実施例3(n):
[00167]本実施例においては、40重量%のEastman CA398-3、及び60重量%のKraton FG1901を含むセルロースエステル濃縮物を調製した。中剪断のスクリューデザインを用いて、250℃の最高区域温度及び1分間未満の滞留時間で材料を配合した。セルロースエステル濃縮物を50/50の重量比で基ラバー配合物と配合し、ブラベンダーミキサー内において混合した。最終的な配合物は、50重量%の基ラバー、30重量%のKraton FG1901、及び20重量%のCAP398-3を含んでいた。粒子は均一に分散しており、1ミクロン未満の粒径を有していた。
【0175】
実施例3(o):
[00168]本実施例においては、67重量%のEastman CAB381-20を33重量%のEastman CAB381-0.5と溶融ブレンドして、6の落球粘度を有する推定CAB381-6材料を調製した。次に、40重量%のこのセルロースエステルブレンドを60重量%のKraton FG1924と溶融ブレンドした。中剪断のスクリューデザインを用いて、200℃の最高区域温度及び1分間未満の滞留時間で材料を配合した。セルロースエステル濃縮物を50/50の重量比で基ラバー配合物と配合し、ブラベンダーミキサー内において混合した。最終的な配合物は、50重量%の基ラバー、30重量%のKraton FG1924、及び20重量%のCAB 381-6を含んでいた。粒子は均一に分散しており、3ミクロン未満の粒径を有していた。
【0176】
実施例3(p):
[00169]本実施例においては、67重量%のEastman CAP482-20を33重量%のEastman CAP482-0.5と溶融ブレンドして推定CAP482-6材料を調製した。次に、40重量%のこのセルロースエステルブレンドを60重量%のKraton FG1924と溶融ブレンドした。中剪断のスクリューデザインを用いて、200℃の最高区域温度及び1分間未満の滞留時間で材料を配合した。セルロースエステル濃縮物を50/50の重量比で基ラバー配合物と配合し、ブラベンダーミキサー内において混合した。最終的な配合物は、50重量%の基ラバー、30重量%のKraton FG1924、及び20重量%のCAP482-6を含んでいた。粒子は均一に分散しており、1ミクロン未満の粒径を有していた。
【0177】
実施例3(q):
[00170]本実施例においては、67重量%のEastman CAP482-20を33重量%のEastman CAP482-0.5と溶融ブレンドして推定CAP482-6材料を調製した。次に、40重量%のこのセルロースエステルブレンドを60重量%のKraton D1102と溶融ブレンドした。中剪断のスクリューデザインを用いて、200℃の最高区域温度及び1分間未満の滞留時間で材料を配合した。セルロースエステル濃縮物を50/50の重量比で基ラバー配合物と配合し、ブラベンダーミキサー内において混合した。最終的な配合物は、50重量%の基ラバー、30重量%のKraton D1102、及び20重量%のCAP482-6を含んでいた。粒子は均一に分散しており、5ミクロン未満の粒径を有していた。
【0178】
実施例3(r):
[00171]本実施例においては、90重量%のEastman CA398-3を10重量%のトリフェニルホスフェートと溶融ブレンドして可塑化セルロースアセテートプレブレンドを調製した。次に、40重量%のこの可塑化セルロースアセテートを60重量%のKraton D1102と溶融ブレンドした。中剪断のスクリューデザインを用いて、200℃の最高区域温度及び1分間未満の滞留時間で材料を配合した。セルロースエステル濃縮物を66.7/33.3の重量比で基ラバー配合物と配合し、ブラベンダーミキサー内において混合した。最終的な配合物は、33.3重量%の基ラバー、40重量%のKraton D1102、20重量%のCA398-3、及び6.67重量%のトリフェニルホスフェートを含んでいた。粒子は均一に分散しており、3ミクロン未満の粒径を有していた。
【0179】
実施例3(s):
[00172]本実施例においては、90重量%のEastman CA398-3を10重量%のトリフェニルホスフェートと溶融ブレンドして可塑化セルロースアセテートプレブレンドを調製した。次に、40重量%のこの可塑化セルロースアセテートを60重量%のKraton FG1924と溶融ブレンドした。中剪断のスクリューデザインを用いて、200℃の最高区域温度及び1分間未満の滞留時間で材料を配合した。セルロースエステル濃縮物を66.7/33.3の重量比で基ラバー配合物と配合し、ブラベンダーミキサー内において混合した。最終的な配合物は、33.3重量%の基ラバー、40重量%のKraton FG1924、20重量%のCA398-3、及び6.67重量%のトリフェニルホスフェートを含んでいた。粒子は均一に分散しており、1ミクロン未満の粒径を有していた。
【0180】
比較例3(a):
[00173]本実施例においては、90重量%のEastman CAB381-0.1、及び10重量%のジオクチルアジペート可塑剤を有するマスターバッチを調製した。CABは0.1の落球粘度を有しており、混合物は95℃の推算Tgを有していた。マスターバッチを20/80の重量比で基ラバー配合物と配合し、ブラベンダーミキサー内において混合した。これは、当該技術において現在実施されている「直接混合」をシミュレートするために行った。粒子の大部分は均一に分散しており、主として5〜10ミクロンの間の寸法を有していたが、少数の粒子は25ミクロンの範囲の凝集を示した。
【0181】
比較例3(b):
[00174]比較例3(a)におけるものと同じ手順にしたがって、Eastman CA398-3粉末を可塑剤なしでラバー配合物中に混合する試みを行った。CAは、3の落球粘度及び約180℃のTgを有していた。CAは160℃の混合温度において軟化しないので、混合を行うことができなかった。
【0182】
比較例3(c):
[00175]比較例3(a)におけるものと同じ手順にしたがって、Eastman CA398-3及びポリエチレングリコール可塑剤の50/50混合物からマスターバッチを調製した。CAを160℃において加工可能にするためには、高いレベルの可塑剤が必要であった。混合物のTgは100℃未満であると見積もられた。粒子は部分的には分散していたが、全体的な質は劣っており、25ミクロンより大きい粒径を有するセルロースアセテートの大きな凝集体が存在していた。
【0183】
比較例3(d):
[00176]比較例3(a)におけるものと同じ手順にしたがって、Eastman CAP482-0.5及びジオクチルアジペート可塑剤の75/25混合物からマスターバッチを調製した。CAPを160℃において加工可能にするためには、高いレベルの可塑剤が必要であった。混合物のTgは100℃未満であると見積もられた。粒子は部分的には分散していたが、全体的な質は劣っており、25ミクロンより大きい粒径を有するセルロースアセテートプロピオネートの大きな凝集体が存在していた。
【0184】
比較例3(e):
[00177]比較例3(a)におけるものと同じ手順にしたがって、Eastman CAP482-0.5及びポリエチレングリコール可塑剤の80/20混合物からマスターバッチを調製した。CAPを160℃において加工可能にするためには、高いレベルの可塑剤が必要であった。混合物のTgは100℃未満であると見積もられた。粒子はまずまず良好に分散し、大部分の粒子は主として5〜15ミクロンの間の寸法を有していた。
【0185】
【表6A】
【0186】
【表6B】
【0187】
【表6C】
【0188】
実施例4:
[00179]本実施例は、セルロースエステルのみを用いた場合と比較した、タイヤ配合物中において変性セルロースエステルを可塑剤と共に用いることの有利性を示す。表7は、調製したタイヤ配合物を示す。表8は、調製したセルロースエステル/可塑剤マスターバッチ配合物を示す。エラストマー組成物は、表7及び9に概説する手順パラメーターを用いて調製した。
【0189】
[00180]表9は3段階の混合条件を示す。成分はバンバリーミキサー内で混合した。エラストマー組成物を調製した後、組成物を160℃においてT90+5分間硬化させた。
【0190】
【表7】
【0191】
【表8】
【0192】
【表9】
【0193】
実施例5:
[00181]実施例4において調製したエラストマー組成物の種々の性能特性を試験した。性能を測定するために用いた種々の分析技術の説明を下記に与える。
【0194】
[00182]破断応力及び破断歪みは、試験片の調製のためにダイCを用いて、ASTM−D412によって測定した。試験片は、1インチの幅及び4.5インチの長さを有していた。試験の速度は20インチ/分であり、ゲージ長さは63.5mm(2.5インチ)であった。試料を、実験室内において50%±5%の湿度及び72°F(22℃)で40時間コンデショニングした。
【0195】
[00183]ムーニー粘度はASTM−D1646にしたがって測定した。
【0196】
[00184]Phillips分散等級は、試料を安全カミソリで切断し、次にPaxcam Arcデジタルカメラ及びHewlett Packard 4600カラープリンターにインターフェース接続しているOlympus SZ60ズーム立体顕微鏡を用いて、30倍の倍率で写真を撮影した。次に、試料の写真を、1(劣)〜10(優)の範囲の基準を有するPhillips標準分散等級チャートと比較した。
【0197】
[00185]機械特性:100%及び300%歪みにおける弾性率は、試験片の調製のためにダイCを用いて、ASTM−D412によって測定した。試験の速度は20インチ/分であり、ゲージ長さは63.5mm(2.5インチ)であった。試料を、実験室内において50%±5%の湿度及び72°Fで40時間コンデショニングした。試験片の幅は1インチであり、長さは4.5インチであった。
【0198】
[00186]硬度:ショアA硬度はASTM−D2240にしたがって測定した。
【0199】
[00187]温度スイープ:TA Instruments動的機械分析器を用いて、引張形状を用いる温度スイープを完了させた。10Hzの振動数、5%の静的歪み及び0.2%の動的歪みを用いて、貯蔵弾性率(E’)、損失弾性率(E”)、及びtanδ(=E”/E’)を−80℃〜120℃の温度の関数として測定した。
【0200】
[00188]反発試験:ASTM−D7121−05によって反発振り子試験を行った。
【0201】
[00189]摩耗:ASTM−222によってDin摩耗試験を行った。
【0202】
[00190]データは、可塑剤を用いないと、セルロースエステルは劣ったPhillips分散データによって示されるようにエラストマー全体によく分散しなかったことを示す。更に、セルロースエステル及び可塑剤の両方を含む組成物のムーニー粘度は、可塑剤を用いなかった場合よりも低かった。これは、可塑剤の存在下においては、セルロースエステルは加工助剤として作用してムーニー粘度を低下させたことを示す。更に、破断応力及び摩耗も可塑剤を用いない組成物よりも向上し、これは恐らくは、可塑剤の存在下においては、セルロースエステルはより微細な粒子に分散して特性を向上させることができ、これは粒径及び/又は表面積に応じて定まることを示す。
【0203】
【表10】