特許第6195846号(P6195846)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ノボ・ノルデイスク・エー/エスの特許一覧

<>
  • 特許6195846-スライド目盛りを備える注射装置 図000002
  • 特許6195846-スライド目盛りを備える注射装置 図000003
  • 特許6195846-スライド目盛りを備える注射装置 図000004
  • 特許6195846-スライド目盛りを備える注射装置 図000005
  • 特許6195846-スライド目盛りを備える注射装置 図000006
  • 特許6195846-スライド目盛りを備える注射装置 図000007
  • 特許6195846-スライド目盛りを備える注射装置 図000008
  • 特許6195846-スライド目盛りを備える注射装置 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6195846
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】スライド目盛りを備える注射装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/31 20060101AFI20170904BHJP
   A61M 5/20 20060101ALI20170904BHJP
【FI】
   A61M5/31 520
   A61M5/20 510
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-553671(P2014-553671)
(86)(22)【出願日】2013年1月17日
(65)【公表番号】特表2015-504746(P2015-504746A)
(43)【公表日】2015年2月16日
(86)【国際出願番号】EP2013050806
(87)【国際公開番号】WO2013110538
(87)【国際公開日】20130801
【審査請求日】2016年1月7日
(31)【優先権主張番号】12152847.5
(32)【優先日】2012年1月27日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/593,956
(32)【優先日】2012年2月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596113096
【氏名又は名称】ノボ・ノルデイスク・エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】ペダルセン, シモン ムンク
【審査官】 鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−500067(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/060785(WO,A1)
【文献】 特表2011−510775(JP,A)
【文献】 特表2010−527665(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/084164(WO,A1)
【文献】 特表2007−509662(JP,A)
【文献】 特表2002−501790(JP,A)
【文献】 特開平5−337179(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/31
A61M 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状の薬物のばね駆動による自動注射のための注射装置であって、
別個の量の用量をユーザによって設定可能にする用量設定機構と、
前記設定された用量の前記量を表示するための機械式の用量表示装置と
を備え、
該注射装置はさらに、
内部空間を画定しており、縦長の窓(3)を有しているハウジング(2)と、
前記ハウジング(2)に対して軸方向に保持され、前記用量設定機構へと連結された回転式の用量ダイアルボタン(10)と、
前記設定された用量の前記量を知らせるためのしるし(22)を保持している回転式の目盛りドラム(20)を備え、該目盛りドラム(20)は、前記用量ダイアルボタン(10)が用量を設定すべく回転させられるときに回転するように前記用量ダイアルボタン(10)へと機能的に連結されており、
スライド窓(35)が設けられたスライド要素(30)を備え、該スライド要素(30)は、用量設定の際に前記ハウジング(2)に対して軸方向に摺動するように適合され、かつ、前記縦長の窓(3)および前記スライド窓(35)が前記しるし(22)との組み合わせにおいて前記用量表示装置を形成するように、該スライド窓(35)を通して前記目盛りドラム(20)によって保持された前記しるし(22)を視認可能にし、
前記回転式の目盛りドラム(20)が、用量設定の際に前記ハウジング(2)によって画定される前記内部空間において回転し、前記スライド要素(30)は、前記スライド要素(30)が前記目盛りドラム(20)の回転時に前記ハウジング(2)の境界の範囲内で軸方向に移動するように、前記目盛りドラム(20)へと連結されている、注射装置。
【請求項2】
前記スライド要素(30)に、前記目盛りドラム(20)に設けられた雄ねじ(21)と係合する雌ねじ(31)が設けられ、該スライド要素(30)がさらに、前記目盛りドラム(20)の回転時に軸方向に移動するように前記ハウジング(2)において軸方向に案内される、請求項1に記載の注射装置。
【請求項3】
前記スライド要素(30)の前記軸方向の案内が、前記ハウジング(2)の内側に設けられた隆起したバー(7)と、前記スライド要素(30)の表面に設けられた軸方向の溝(34)とを備えている、請求項2に記載の注射装置。
【請求項4】
前記目盛りドラム(20)が、らせん状の開口(41)を有している回転式のスリーブ(40)によって囲まれている、請求項2または3に記載の注射装置。
【請求項5】
前記スライド要素(30)が、前記スリーブ(40)の前記らせん状の開口(41)に係合する、請求項4に記載の注射装置。
【請求項6】
前記スライド要素(30)に、前記スリーブ(40)の前記らせん状の開口(41)の側壁に当接する案内面(36)が設けられている、請求項5に記載の注射装置。
【請求項7】
前記用量ダイアルボタン(10)が、前記目盛りドラム(20)へと解除可能に連結される、請求項1から6のいずれか一項に記載の注射装置。
【請求項8】
ねじりばねが提供されており、ユーザが前記用量を設定すべく前記用量ダイアルボタン(10)を回転させるときに、該ねじりばねがねじられることで前記ねじりばねにトルクが蓄えられ、該トルクを解放することで前記設定された用量を排出させることができる、請求項1から7のいずれか一項に記載の注射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型の表示装置を備える注射装置に関し、特には用量の設定量を大型のアラビア数字(cipher)にて表示することができる純粋に機械式の注射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの既知の注射装置、とりわけペン型の注射装置においては、ユーザによって設定された用量を表示するアラビア数字のための空間が限られている。
【0003】
ハウジングから遠ざかるように外へとらせん状に回転および移動する目盛りドラムを有している注射装置が、米国特許第6,004,297号明細書に開示されている。図15図17に示されている注射装置が、Novo Nordisk A/SによってFlexPen(登録商標)という商品名で成功裏に販売されている。この注射装置は、ユーザが用量の設定時にハウジングから外へと目盛りドラムを回転させ、注射の際に目盛りドラムをハウジング内へと手動で押し戻すことを必要とする。したがって、ユーザが目盛りドラムを押し戻すために親指を目盛りドラムの端部へと届かせる必要があるがゆえに、目盛りドラムについての可能な長さが制限される。
【0004】
回転式の目盛りドラムを有するさらなる注射装置が、米国特許出願公開第2010/0168677号明細書に開示されている。この注射装置においては、目盛りドラム(66)が、用量の設定時に軸方向には移動せず、ハウジングの境界の範囲内で回転のみを行う。縦長の窓(54)が、ハウジングに設けられ、該縦長の窓(54)を介して、目盛りドラム(66)上に印刷されたしるしを眺めることができる。一度に1つのしるしだけが眺められるように、スライド窓(130)が、縦長の窓(54)において軸方向に摺動する。スライド窓(130)は、用量の設定時にハウジングから外へと軸方向に移動する注射スリーブ(116)の一体の一部分であり、すなわち注射装置が、用量の設定の際に一部分(注射スリーブ(116))が注射装置から突き出し、該部分が投薬の際に手動でハウジングへと押し戻される形式である。しかしながら、スライド窓(130)が注射スリーブ(116)の一体の一部分であるため、スライド窓(130)を備える注射スリーブ(116)が、ユーザが親指を注射ボタン(40)上に置くことができないほどに大きく注射装置から突き出すことがあってはならないがゆえに、スライド窓(130)の可能な軸方向の移動量の限度を規定し、したがって目盛りドラム(66)上に印刷されるしるしのサイズの限度を規定する。さらに、注射スリーブ(116)のうちのスライド窓(130)に対して遠位側の部分が、スライド窓(130)が最も近位側の位置にあるときにも目盛りドラム(66)を覆うように充分な長さを有さなければならない。注射スリーブ(116)のこの長さは、スライド窓(130)が遠位側の位置にあるときにハウジングによって隠されることをさらに必要とする。この結果として、目盛りドラム(66)のかなりの部分を、ハウジングの不可視部分に常に隠されるがゆえに、しるしの保持に使用することができない。
【0005】
別の種類の注射装置が、欧州特許出願公開第1,1819,382号明細書に開示されている。この注射装置は、用量の設定の際に締められるねじりばねを有しており、ばねのトルクが、注射の実行に利用される。この注射装置は、Novo Nordisk A/SによってFlexTouch(登録商標)という商品名で販売されている。この特定の注射装置においては、用量の設定の際に、目盛りドラムも、他のいかなる部分も、ハウジングから突き出すことがなく、目盛りドラムがハウジングの境界の内側をらせん状に移動する。回転式の用量設定ボタンが、軸方向についてハウジングによって保持され、注射装置が、用量の設定および注射のどちらの際にも、同じ長さのままである。しかしながら、これは、目盛りドラムがハウジングの境界の範囲内をらせん状に移動するためにハウジングの長さよりも大幅に短くなければならないので、目盛りドラムの可能な長さを制限する。
【0006】
既知の注射装置はいずれも、目盛りドラムおよび設定された用量を知らせるためのしるしのための空間が、かなり限られているという欠点を有している。さらに、より多い用量の設定をユーザによって可能にする注射装置を設計することが望まれている。しかしながら、これは、視力の弱い人々に対するさらなる障害を生み出しかねないさらに小さなしるしを目盛りドラムへと印刷することを必要とするので、かなり困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,004,297号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2010/0168677号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第1,1819,382号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、設定された用量を表示する個々のアラビア数字のサイズを、視認性を高めるために大きくすることができる注射装置を提供することにある。さらなる目的は、ばねにもとづくペン型の自動注射装置への組み込みに適した大きなアラビア数字の表示機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、請求項1に規定される。
【0010】
したがって、本発明の一態様においては、液状の薬物のばね駆動による自動注射のための注射装置が、別個の用量の量をユーザによって設定可能にする用量設定機構と、設定された用量の量を表示するための機械式の用量表示装置とを備える。注射装置はさらに、
内部空間を画定しており、縦長の窓を有しているハウジングと、
回転運動に限られるように前記ハウジングに対して軸方向に関して保持されている回転式の用量ダイアルボタンを備え、該ボタンは前記用量設定機構へと連結されており、
前記設定された用量の量を知らせるためのしるしを保持している回転式の目盛りドラムを備え、該目盛りドラムは、前記目盛りドラムが少なくとも用量の設定の際に前記用量ダイアルボタンの回転に従うように、前記用量ダイアルボタンへと連結されており、
窓(スライド窓と称される)を有しているスライド要素を備え、該スライド要素は、用量の設定の際に前記ハウジングに対して軸方向に摺動するように適合され、前記縦長の窓および前記スライド窓が前記しるしとの組み合わせにおいて前記用量表示装置を形成するように該スライド窓を通して前記目盛りドラムによって保持されたしるしを視認可能にし、
前記回転式の目盛りドラムの運動が、用量の設定の際に前記ハウジングによって画定される内部空間における回転に限定され、前記スライド要素が、前記目盛りドラムの回転時に前記ハウジングの境界の範囲内で軸方向に移動するように前記目盛りドラムへと連結される。
【0011】
用量ダイアルボタンも、目盛りドラムも、軸方向には移動せず、目盛りドラムがハウジングの境界の範囲内にとどまるので、目盛りドラムの表面全体を、用量を知らせるしるしを保持するために利用することができる。
【0012】
さらに、スライド要素がハウジングのパラメータの範囲内での軸方向の移動に限られ、いかなる部品もハウジングから突き出ることがないので、スライド要素が目盛りドラムの全体に沿って移動することができ、したがって目盛りドラムのより多くの部分を、しるしを保持するために利用することができる。
【0013】
スライド要素は、目盛りドラムが回転するときに常にハウジングに対して軸方向に移動するように、好ましくは目盛りドラムにねじを切られ、ハウジングにおいて軸方向に案内される。
【0014】
スライド要素とハウジングとの間の軸方向の案内は、好ましくは、キーと溝との接続として構成され、ハウジングが、隆起したバーの形態のキーを保持し、スライド要素が軸方向の凹所の形態の溝を保持する。しかしながら、任意の種類のキーおよび溝が、スライド要素がハウジングに対して軸方向に摺動する限りにおいて、充分であると考えられる。
【0015】
さらなる実施形態においては、目盛りドラムを覆うスリーブを設けることができる。そのようなスリーブは、スライド要素のスライド窓と協働してユーザが目盛りドラムの該当のしるしだけを視認できるようにするらせん状の開口を有するべきである。
【0016】
このスリーブのらせん状の開口におけるスライド要素の軸方向の移動は、スリーブの回転をもたらす。スリーブのらせん状の開口のピッチは、好ましくは、目盛りドラムがスリーブよりも高い回転速度で回転するように、目盛りドラムのねじ山のピッチよりも大きい。
【0017】
目盛りドラムは、用量ダイアルボタンへと、両者が一緒に回転するように連結される。しかしながら、一実施形態においては、この連結を、両者が用量の設定の際にのみ一緒に回転し、その後に目盛りドラムが初期の位置へと回転して戻るときに用量ダイアルボタンは自身の位置を保つように、行うことができる。そのような連結は、目盛りドラムが用量ダイアルボタンとは別個独立に一方向に回転することを許容する任意の種類のワンウェイラチェット機構であってよい。
【0018】
注射装置は、好ましくは、用量の設定の際にねじりばねがねじられ、これによりねじりばねにトルクが蓄えられるような形式であってよい。そのような注射装置は、ねじりばねのトルクを放出するユーザ操作可能の放出機構を備える。ねじりばねを、あらかじめねじっておくことができ、その場合には、放出機構の操作時にトルクのうちの一部だけが放出される。放出されるトルクが、設定された用量を注射装置に収容されたカートリッジから押し出すために使用される。
定義
【0019】
「注射ペン」は、典型的には、筆記用の万年筆にある程度似た長方形の形状または細長い形状を有する注射装置である。そのようなペンは、通常は管状の断面を有するが、三角形、矩形、または正方形、あるいはおおむねこれらの形状の任意の変種などの様々な断面を有することも容易に可能である。
【0020】
本明細書において使用されるとき、用語「薬物」は、液体、溶液、ゲル、または微細懸濁液など、制御された様相で中空針などの送出手段を通過することができるあらゆる薬物含有流動性薬剤を包含するように意図される。代表的な薬物として、ペプチド、たんぱく質(例えば、インスリン、インスリン類似体、およびC−ペプチド)、およびホルモンなどの薬剤、生物学的に誘導された物質または生物学的に活性な物質、ホルモンおよび遺伝子由来の物質、栄養調合物、ならびに固体(分配される)または液体の両方の形態の他の物質が挙げられる。
【0021】
「目盛りドラム」は、好ましくは、選択された用量の大きさを注射ペンのユーザへと知らせるしるしを保持している円筒形の要素を意味する。「しるし」は、任意の種類の印刷または他のやり方で設けられた符号(例えば、彫り込みによる記号または貼り付けられた記号など)を備えることを意味する。これらの符号は、好ましくは、これらに限られるわけではないが、「0」〜「9」までのアラビア数字である。
【0022】
「カートリッジ」は、薬物を収容している容器を指すのに使用される用語である。カートリッジは、通常はガラスで作られるが、任意の適切なポリマーから成型されてもよい。カートリッジまたはアンプルは、好ましくは、一端において、例えば注射針によって刺し通すことができる穿刺可能な膜によって封じられる。反対側の端部は、ゴムまたは適切なポリマーで作られるプランジャまたはピストンによって閉じられる。プランジャまたはピストンは、カートリッジの内側を摺動によって移動することができる。穿刺可能な膜と可動のプランジャとの間の空間が薬物を保持し、プランジャが薬物を保持している空間の体積を減少させるにつれて、薬剤が押し出される。
【0023】
さらに、用語「注射針」は、液体の送り出しまたは取り出しの目的で被験者の皮膚を貫くように適合された穿刺部材を定める。
【0024】
本明細書において言及される刊行物、特許出願、および特許を含むあらゆる引例は、あたかも各々の引例が個別かつ具体的に援用されると明示され、かつその全体が本明細書に記載された場合と同じ程度まで、それらの全体が本明細書に援用される。
【0025】
すべての見出しおよび小見出しは、本明細書においてあくまでも便利のために使用され、決して本発明を限定するものとして解釈されてはならない。
【0026】
本明細書に提示されるあらゆるすべての例または例示の表現(例えば、・・・など)の使用は、あくまでも本発明をよりよく明らかにすることを意図しているにすぎず、特に特許請求の範囲に記載されない限り、本発明の範囲を限定しようとするものではない。本明細書におけるいかなる表現も、請求項に記載されていない要素を本発明の実施に不可欠であると示していると、解釈されてはならない。本明細書における特許文献の引用および援用は、あくまでも便利のために行われているにすぎず、そのような特許文献の有効性、特許性、および/または権利行使可能性についてのいかなる見解も反映するものではない。
【0027】
本発明は、添付の特許請求の範囲に記載される主題について、適用される法律によって許されるあらゆる変更および均等物を包含する。
【0028】
本発明を、好ましい実施形態に関連して、図面を参照しつつ以下でさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】用量設定機構の断面図を示している。
図2】用量設定機構の分解図を示している。
図3図1および2の用量設定機構の側面図を示している。
図4】ハウジングの断面図を示している。
図5】スライダの斜視図を示している。
図6】内側から見たスライダの図を示している。
図7】スリーブの斜視図を示している。
図8】スリーブの側面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図面は概略図であり、明瞭さの目的で簡単化されており、本発明の理解に不可欠な細部だけを示しており、その他の細部は省略されている。全体を通して、同一または対応する部分については、同じ参照番号が使用されている。
【0031】
以下で、「上」および「下」、「右」および「左」、「水平」および「鉛直」、「時計方向」および「反時計方向」、あるいは同様の相対的な表現が使用されるとき、それらは添付の図面に言及しているにすぎず、実際の使用の状況に言及しているわけではない。図示の図は、概略的な表現であるため、種々の構造物の構成およびそれらの相対寸法は、あくまでも説明の目的を果たすためのものにすぎない。
【0032】
その文脈において、添付の図面における用語「遠位端」が、注射装置のうちの注射針を通常保持する端部を指す一方で、用語「近位端」が、注射針から遠ざかる方を向いており、図1に示されるように用量ダイアルボタンを保持する他端を指すと定義することが、好都合かもしれない。
【0033】
図1および図2が、薬物を含有するカートリッジ(図示されていない)に対して近位側となる注射ペン1の端部を、異なる視点から開示している。ハウジング2の最も近位側の端部に、ユーザが可変の用量の大きさを選択するために回転させることができるダイアルボタン10が設けられている。ハウジング2は、縦長の窓3をさらに備えており、該縦長の窓3を通して、ユーザが目盛りドラム20を目視することができる。ハウジング2は、目盛りドラム20を支持する内部突起4をさらに備えている。
【0034】
目盛りドラム20は、ダイアルボタン10の回転に従うようにダイアルボタン10へと直接連結され、したがってユーザが用量を選択するためにダイアルボタン10を回転させるとき、目盛りドラム20がダイアルボタン10と一緒に回転する。ダイアルボタン10および目盛りドラム20のどちらも、軸方向の変位を伴うことなく回転するように配置される。ダイアルボタン10と目盛りドラム20との間の接続を、設定された用量が注射されたときに、ダイアルボタン10が必ずしも目盛りドラム20と一緒に戻りの回転を行わなくてもよいように、解除可能な連結によって行うことができる。
【0035】
縦長の窓3は、図3に開示されるように矩形であり、中心線Xに平行に延びている2つの長手方向の縁5と、中心線Xに垂直である2つの径方向の縁6とを有している。窓3は、好ましくは透明であるが、代案として、ハウジング2の開口であってもよい。長手方向の縁5は、縦長の窓3に沿って長手方向に延びている内側へと隆起したバー7を備えることができる。これを、ハウジング2の断面図を示している図4においても見て取ることができる。この実施形態において、隆起したバー7は、ハウジング2の全長にわたって成形されており、したがって隆起したバー7は、縦長の窓3の長手方向の縁5よりも長くなっている。
【0036】
目盛りドラム20は、その外面に、らせん状の行路またはねじ山21を備えている。さらに、目盛りドラムは、目盛りドラム上に直接印刷されてよく、あるいは彫り込みまたは他のやり方で設けられてよいしるし22を保持している。開示の実施形態においては、「0」から「100」までのしるしが目盛りドラム20上にらせん状に設けられるが、図2においては、10個ごとのしるし22だけしか示されていない。図3においては、しるし「60」が窓35内に示されているが、通常は、隣の数字「59」および「61」も、全体または一部分が窓35内に現れると考えられる。
【0037】
目盛りドラム20の外側のらせん状のねじ山21に、スライダ30の対応する雄ねじ31が係合する。図5に開示のスライダ30は、管状であるとともに、延長部33(その目的は、後述)によって延ばされた外周の周辺部32を有している。周辺部32は、スライダ30が軸方向にだけ移動できるようにハウジング2の2つの長手方向のバー7に係合する2つの凹所34間に設けられている。スライダ30の周辺部32は、目盛りドラム20の視認をユーザによって可能にする窓35がさらに設けられている。
【0038】
図6が、内側から見たスライダ30を示している。窓35の両側に、目盛りドラム20のらせん状ねじ山21と係合する雄ねじ31が設けられている。この係合により、凹所34とハウジング2の対応する長手方向のバー7との間の係合と相俟って、目盛りドラム20が回転するときにスライダ30が軸方向に移動する。スライダ30は、図7および8に示されるスリーブ40のらせん状の開口41と相互作用するらせん状の案内面36をさらに備えている。開口41とスライダ30の案内面36との間のこの係合ゆえに、スライダ30が軸方向に摺動するときに常に、スリーブ40を回転させる。スリーブ40は、近位端に、目盛りドラム20に当接するが目盛りドラム20へと接続されてはいないカラー42を有している。したがって、スリーブ40は、目盛りドラム20とは別個独立に回転する。さらに、らせん状の開口41は、近位端に、機構の組み立て時にスライダ30をらせん状の開口41に取り付けできるようにする延長されたアクセス開口43を有している。
【0039】
用量を設定するために、ユーザは、ダイアルボタン10を回転させ、ダイアルボタン10が目盛りドラム20を回転させる。いずれの方向への目盛りドラム20の回転も、スライダ30の軸方向の移動へと変換される。ハウジング2の縦長の窓3に対するスライダ30(したがって、スライド窓35)の軸方向の移動が、ただ1つのしるし22だけが縦長の窓3およびスライド窓35に同時に存在するように、目盛りドラム20に印刷されたしるし22のらせん状のパターンと協調させられる。
【0040】
スライダ30が軸方向に移動するとき、スライダ30がスリーブ40を回転させ、したがってらせん状の開口41を囲んでいるスリーブ40の周辺の領域44が、目盛りドラム20の一部を覆い、残りのしるし22を見えないように覆う。
【0041】
スライダ30の軸方向の長さは、ユーザがスライド窓35を通して視認するしるし22以外のしるし22を眼にすることを完全に防止するために、スリーブ40のらせん状の開口41の可視部分を覆うように充分に長くなければならない。したがって、スライダ30の周辺部32に延長部33を設けることが必要になる可能性がある。これが、延長部33の直上において見て取ることができる開口41のわずかな一部分を開示している図3に示されている。目盛りドラム20の長さを充分に利用するために、用量ダイアルボタン10に、スライダ30が最も近位側の位置にあるときにこの延長部33を受け入れるポケット11を設けることができる。同様の空間7が、スライダ30を受け入れるためにハウジングの遠位端に設けられる。当然ながら、スライダ30の遠位部も、所望であれば延長部として形成することが可能である。
【0042】
目盛りドラム20の内側は、好ましくは、例えば欧州特許出願公開第1,819,382号明細書に開示されているようなばね駆動式の投薬機構によって占められる。図示のハウジング2は、ハウジング2の遠位端に設けられるカートリッジホルダ(図示されていない)へとさらに接続される。このカートリッジホルダが、薬物を含有するカートリッジ(図示されていない)を支持する。カートリッジホルダは、交換式であってよく、あるいはハウジング2に不可逆に接続されてもよい。
【0043】
以上、いくつかの好ましい実施形態を示したが、本発明がこれらに限られず、以下の特許請求の範囲に規定される主題の範囲内において他のやり方でも具現化可能であることを強調しておかなければならない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8