(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ロックレバーは、前記湾曲部、前記弾性片部、前記連結部、前記操作部を変位可能に弾性支持するように前記ハウジングに固定するハウジング固定部を有する請求項4記載のコネクタ。
前記ハウジングは、前記操作部と対向する壁の下側に、前記押圧された操作部が傾斜しつつ変位する空間を形成するガイド面を有する請求項1〜請求項5何れか1項記載のコネクタ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなロックレバーの係止部は操作部に連結しており、操作部の押圧方向と同じ方向に変位する。従って、係止部を平型導体の凹部から外すためには、操作部を押圧して、操作部を平型導体から離間する方向に大きく変位させる必要がある。よって、基板の板面に対して直交する方向でコネクタに平型導体を挿入する場合には、コネクタの周囲に操作部が変位するための広い空間が必要にある。また、基板の板面に対して平行な方向でコネクタに平型導体を挿入する場合には、コネクタの高さ方向で操作部が変位するための広い空間が必要になる。しかし、基板に実装されるコネクタの周辺に他の実装部品が密集している場合には、このような操作が困難である。
【0006】
以上のような従来技術を背景になされたのが本発明であり、その目的は、コネクタの周辺に広い空間がない場合であってもロックレバーによる平型導体の係止を容易に解除できるコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく、本発明は以下のように構成される。
【0008】
本発明は、接続対象物としての平型導体と導通接触する端子と、前記平型導体と前記端子とが導通接触する嵌合室を有するハウジングと、平型導体と係止して端子と平型導体との導通接続を維持するロックレバーとを備えるコネクタについて、前記ロックレバーは、前記嵌合室の内部で平型導体と係止する係止部と、前記平型導体の挿入方向に変位可能な操作部と、該操作部を前記平型導体の挿入方向に沿って押圧すると、前記係止部が平型導体から離間する方向に回動する支点となる湾曲部とを有することを特徴とするコネクタを提供する。
【0009】
また、本発明は、接続対象物としての平型導体と導通接触する端子と、前記平型導体の挿入口と、前記平型導体と前記端子とが導通接触する嵌合室と、該嵌合室を形成する側壁部とを有するハウジングと、前記端子と嵌合している平型導体と係止して、端子と平型導体との導通接続を維持するロックレバーとを備えるコネクタについて、前記ロックレバーは、前記嵌合室の内部で前記端子と導通接触する平型導体と係止して抜止めする係止部と、該係止部を平型導体に対して接近及び離間する方向に変位させる弾性片部と、前記側壁部に沿う平板部と、該平板部から前記離間する方向に伸長して該弾性片部に繋がる連結部とを有し、前記平板部が前記平型導体の挿入方向に沿って押圧されることで、連結部が前記離間する方向に弾性片部を押圧し、前記係止部が平型導体から離間する方向に変位して平型導体に対する係止を解除させる操作部とを有することを特徴とするコネクタを提供する。
【0010】
通常、係止部を平型導体から離間する方向に変位させるには、平型導体から離間する方向に向けて操作部を変位させる必要がある。それに対して本発明によれば、平型導体の挿入方向に沿ってロックレバーの操作部を押圧することで、平型導体から離間する方向に係止部を変位させ、平型導体に対する係止を解除させることができる。また、本発明には、係止部が平型導体から離間する方向に変位する回動支点となる湾曲部を設けることができる。よって、例えばコネクタの周辺に実装部品が密集しており、平型導体から離間する方向に操作部を押圧して変位させる空間が無い場合であっても、平型導体に対する係止を容易に解除することができる。
【0011】
本発明の操作部に繋がる基端部を有し、前記操作部とともに変位し前記側壁部に当接することで操作部の変位を停止するストッパー部を有するものとすることができる。
【0012】
操作部を平型導体から離間する方向に過度に変位させることで、操作部が塑性変形して本来の位置まで戻れなくなってしまう場合がある。こうした事態は平型導体に対して係止部を係脱できなくなる事態を生じさせるおそれがある。そこで、本発明のように操作部に繋がるストッパー部を有することで、操作部を過剰に変位させ難くすることができるため、操作部の塑性変形の発生を抑制できる。
【0013】
前記本発明の側壁部は、前記ストッパー部が平型導体の挿入方向で突き当たる当接部を有するものとすることができる。
【0014】
仮に平型導体から離間する方向でストッパー部が側壁部に突き当たる場合には、ストッパー部が変位するための広い空間が必要になる。しかしストッパー部を、平板部の押圧方向と同じ方向で当接部に突き当てることで、そうした広い空間を設ける必要がない。
【0015】
また、例えば側壁部の板縁を当接部とし、この板縁にストッパー部が突き当たることで、側壁部の板面を当接部とする場合よりも、その突き当て方向で当接部が厚くなり、当接部の剛性がより高くなる。従って、当接部に変形や破損が生じ難くすることができるため、ストッパー部から掛かる力を当接部が確実に受け止めて、操作部の変位を停止させることができる。
【0016】
前記本発明のストッパー部が、前記操作部から片持ち梁状に伸長する伸長部を有するものとすることができる。
【0017】
これにより、操作部と伸長部とを互いに独立して弾性変位させることができる。よって、例えば操作部を側壁部に対して傾斜する方向に変位させつつ、伸長部は側壁部に沿って変位し、ストッパー部が側壁部に対して確実に当接することができる。
【0018】
前記本発明のストッパー部が、前記側壁部に当接する板縁部を有するものとすることができる。
【0019】
ストッパー部が板面で側壁部に当接する場合には、ストッパー部の板圧方向で側壁部から反力を受ける。これに対してストッパー部が板縁部で側壁部に当接する場合には、板縁部はストッパー部の板面方向で反力を受ける。この場合、ストッパー部の板面が側壁部に対して当接する場合と比較して、ストッパー部が反力によって破損や変形し難くなる。よって、ストッパー部を確実に側壁部に当接させ、操作部の変位を停止させることができる。
【0020】
前記本発明の側壁部が、前記側壁部の板厚方向に突出し、前記ストッパー部が当接する厚肉部を有するものとすることができる。
【0021】
こうすることで、ストッパー部から掛かる力に対する側壁部の剛性を高めることができるため、ストッパー部が当接することによる破損や変形を生じ難くすることができる。
【0022】
前記本発明のハウジングが、前記厚肉部を複数有しており、前記厚肉部の間には前記操作部が配置されており、厚肉部同士の間隔が平型導体の板幅よりも狭いものとすることができる。
【0023】
厚肉部の間に操作部を設けることで、操作部の変位を厚肉部でガイドすることができる。また、厚肉部同士の間隔を平型導体の板幅よりも狭くすることで、作業者が誤って嵌合室ではなく厚肉部の間に挿入するという事態を生じ難くすることができる。
【0024】
前記本発明の平板部が押圧されて、前記連結部が前記弾性片部に近づくように変位し、前記側壁部は、前記平板部の前記連結部に近づく方向への変位を誘い込むガイド面部を有するものとすることができる。
【0025】
こうすることで、操作部の連結部側が側壁部に近づくように、操作部が全体として変位する場合であっても、操作部が側壁部に接触して変位を阻害されるといった事態を生じ難くすることができる。
【0026】
前記本発明の操作部が、前記平板部に繋がって前記押圧を受ける押圧部を有しており、該押圧部が前記ハウジングにおける天面側に設けられるものとすることができる。
【0027】
こうすることで、作業者が、押圧部に接触しやすくなり、押圧作業も容易に行うことができる。
【0028】
前記本発明のロックレバーが、前記ハウジングに固定されるハウジング固定部と、前記側壁部に対向する側壁部から露出して基板に対して固定される基板固定部とを有するものとすることができる。
【0029】
こうすることで、ハウジングの一方側の側面の側でロックレバーの平板部を平型導体の挿入方向に沿って押圧しても、ハウジングの反対側の側面の側で基板固定部が基板に対して強固に固定されるため、ハウジングの前記一方側の側面が基板に向けて倒れ込まないようにすることができる。
【0030】
前記本発明の側壁部が、基板に接触してハウジングを支持する脚部を有するものとすることができる。
【0031】
こうすることで、ロックレバーの平板部を平型導体の挿入方向に沿って押圧しても、脚部がハウジングが基板に接触して突っ張るように支持するため、ハウジングが倒れ込まないようにすることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、平型導体に対するロックレバーの係止を容易に解除できるコネクタを提供することができる。これにより、例えば実装部品が密集している位置にコネクタが実装されていても容易に平型導体に対する解除を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明のコネクタの好適な実施形態を図面を参照しつつ説明する。以下の実施形態で示すコネクタ1は、基板2に実装されて、FPCや、FFC等の平型導体3を基板回路に導通接続する。
【0035】
また、本明細書中では、コネクタ1の幅方向(長手方向)をX方向、前後方向(短手方向)をY方向、コネクタ1の高さ方向(上下方向)をZ方向として説明する。そしてコネクタ1の前後方向Yにおいてロックレバー8が設けられる側を「前側」とし、反対側を「後側」として説明する。また、高さ方向Zにおける基板2の側を「下側」とし、コネクタ1側を「上側」として説明する。しかし、これらによってコネクタ1の基板2への実装方法や使用方法を限定するものではない。
【0036】
なお、左側面図は右側面図とは左右対称に表されるため、記載を省略する。また、コネクタ1が備える2つの補強部材6は互いに左右対称に形成されるため、一方の外観斜視図については記載を省略する。
【0037】
実施形態〔図1〜図12〕:
本実施形態におけるコネクタ1は、基板2に対して縦置きして固定した状態で平型導体3を挿入し、基板2と平型導体3とを導通接続させるコネクタである。コネクタ1は高さ方向Zの長さに対して前後方向Yの長さが短く形成されており、平型導体3はコネクタ1の上側に設けられる挿入口4aから嵌合室4b内に高さ方向Zに沿う方向で挿入する。
【0038】
コネクタ1は基板2に実装されて、平型導体3と基板2とを導通接続させる。また、コネクタ1は
図1〜
図6で示すように、ハウジング4と、端子5と、補強部材6と、グランド端子7と、ロックレバー8とを備える。
【0039】
まず、本実施形態におけるコネクタ1の接続対象物である平型導体3の構成について説明する。
【0040】
〔平型導体〕
平型導体3は、導電線3aと、絶縁層3bと、係止凹部3cと、グランド接続部3dとを有する。
【0041】
導電線3aは、
図12で示すように、絶縁層3bによって表裏両面を覆われており、ハウジング4への挿入端側(先端側)では絶縁層3bから外部に露出する。導電線3aは、この露出部分でコネクタ1の端子5と導通接触する。
【0042】
絶縁層3bは、絶縁被覆でなり、上述のように導電線3aの表裏両面に積層されて形成される。
【0043】
係止凹部3cは、
図9で示すように、平型導体3の挿入方向に沿う両側の側縁部3e,3eにおいて先端部3A側に1つずつ設けられている。係止凹部3cは、平型導体3の側縁部3eを凹状に切り欠いた切欠部として形成したものである。また、係止凹部3cは平型導体3の幅方向Xに沿う板縁でなる縁部3c1を有する。この縁部3c1には、後述するロックレバー8の係止部8aが係止する。
【0044】
以下、本実施形態のコネクタ1の構成について説明する。
【0045】
〔ハウジング〕
ハウジング4は、絶縁性の樹脂でなり、
図1〜6で示すように略直方体状に形成されており、高さ方向Zの長さよりも前後方向Yの長さの方が短い。また、ハウジング4は、平型導体3の挿入口4aと、嵌合室4bと、端子収容部4cと、脚部4fと、「側壁部」としての正面壁4hとを有する。
【0046】
挿入口4aは、ハウジング4の上側に設けられる天面壁4d1に形成され、嵌合室4bと連通する。
【0047】
嵌合室4bは、ハウジング4の内部に設けられ、高さ方向Zに沿って設けられる内壁4b1に囲まれて形成される。
【0048】
端子収容部4cは、嵌合室4bと連通して、嵌合室4bの後側にハウジング4の幅方向Xに沿って複数並列に配置される。端子5は端子収容部4cに1つずつ収容される。
【0049】
正面壁4hは、嵌合状態にある平型導体3の前側で嵌合室4bの内壁4b1を形成する。また、正面壁4hには、厚肉部4iと、脚部4fが設けられる。
【0050】
厚肉部4iは、正面壁4hにおける上側であって幅方向Xにおける両端側に1つずつ設けられ、前側に向けて突出する略直方体状に形成される。また、厚肉部4iは、高さ方向Zに沿う貫通孔4i2を有する。この貫通孔4i2の開口部4i3には、「当接部」としての開口縁4i3が設けられる。2つの厚肉部4iの間には、後述の押圧部8f2が配置される。
【0051】
脚部4fは、正面壁4hにおける下端側であって幅方向Xにおける両端側に1つずつ設けられ、前側に向けて突出して形成される。脚部4fの下端は、コネクタ1を基板2に実装した状態で基板面に対して接触する。
【0052】
このように脚部4fが正面壁4hから前側に突出することで、高さ方向Zの長さに対して前後方向Yの長さが短いために前後に倒れ込みやすい縦置きタイプのコネクタ1を、前側に向けて倒れ難くし、確実に基板2に固定することができる。
【0053】
〔端子〕
端子5は導電性の金属板を曲げ加工することで形成されており、端子収容部4cに1つずつ収容されることで、ハウジング4の幅方向Xに沿って複数並列に配置される。また、端子5は
図12で示すように基板接続部5aと、固定部5bと、弾性片部5cと、接触部5dとを有する。
【0054】
基板接続部5aは、端子5の一端側に設けられており、ハウジング4の後側に向けて突出する。また、端子5はこの基板接続部5aで基板2に対して半田付けされる。これにより、高さ方向Zに対して前後方向Yが短いために固定状態が不安定になりやすいコネクタ1を後側に向けて倒れ難くして、確実に基板2に固定することができる。
【0055】
固定部5bは基板接続部5aに繋がり、ハウジング4に設けられる固定孔(図示略)に圧入されることで、ハウジング4に対して固定される。固定部5bは高さ方向Zに沿って伸長し、下端で基板接続部5aに連結する。また、固定部5bはハウジング4の下側に設けられる奥壁4b2を貫通しており、ここで端子5がハウジング4に対して固定されている。なお、本実施形態において、端子5とハウジング4はインサート一体成形によって形成される。
【0056】
弾性片部5cは、固定部5bの上端から上側に向けて、高さ方向Zに沿って片持ち梁状に伸長する。また、弾性片部5cの先端側には接触部5dが弾性支持されている。弾性片部5cは、嵌合室4b内部で、固定部5bとの連結部を支点として、コネクタ1の前後方向Yに沿って弾性変形する。
【0057】
接触部5dは、平型導体3との接触方向に向けて山型状に屈曲し、平型導体3と導通接続する接点部5d1が形成される。接点部5d1は、嵌合室4bの内部で平型導体3と導通接触する。
【0058】
〔補強部材〕
補強部材6は導電性の金属板で形成され、ハウジング4の幅方向Xにおける両端側に1つずつ設けられる。また、補強部材6は、
図1〜
図5,
図7で示すようにハウジング4の幅方向Xにおける両端側に対して固定される。一対の補強部材6,6は、互いに左右対称に形成され、嵌合室4bを形成するハウジング4の壁体4gを補強する。
【0059】
補強部材6はハウジング4に対する固定部6aと、接地接続部6bと、補強本体6cとを有する。
【0060】
固定部6aは、高さ方向Zに沿う板面を有しており、横側側壁4fの壁体4gにおける下側に設けられる圧入溝(図示略)に圧入される。この固定部6aによって、補強部材6はハウジング4に対して固定されている。
【0061】
接地接続部6bは固定部6aの下側に繋がり、コネクタ1を基板2に実装した状態で、基板面と接触する板面を有する。また、接地接続部6bはハウジング4の下側で幅方向Xに沿って突出し、基板2が備える接地接続用のパッド(図示略)に半田付けされる。
【0062】
補強本体6cは固定部6aの上側に繋がり、第一の補強板6c1と、第二の補強板6c2と、第三の補強板6c3とを有する。
【0063】
第一の補強板6c1は、ハウジング4の幅方向Xにおける端側で、横側側壁4fに沿って設けられる。また、第一の補強板6c1の前端側が屈曲して、正面壁4hの板面に沿う第三の補強板6c3が形成される。
【0064】
第二の補強板6c2は、第一の補強板6c1の後端部に繋がり、正面壁4hに対向する後側側壁4e2に沿って設けられる。また、第二の補強板6c2は第三の補強板6c3との間でハウジング4の幅方向Xにおける端部側を挟持する。第二の補強板6c2は、幅方向Xにおける略中央に段部4fを有する。そして、段部4fよりも第一の補強板6c1の側はハウジング4から外部に露出し、反対側はハウジング4の後側側壁4e2の内部に収容される。
【0065】
〔グランド端子〕
グランド端子7は、導電性の金属片にて形成されており、
図7で示すように補強部材6と一体として設けられる。
【0066】
グランド端子7は、補強部材6の第二の補強板6c2から上側に向けて片持ち梁状に伸長し、前後方向Yにおける前側に向けて屈曲してから下側に向けて折り返す、略U字状に形成される。グランド端子7の先端側は嵌合室4b内に入り込んでおり、その先端側には嵌合状態における平型導体3との接触方向に向けて山形状に屈曲し、平型導体3のグランド接続部3dと接触する屈曲部7aが形成されている。
【0067】
こうしてグランド端子7を補強部材6と一体として形成することで、一つの操作でグランド端子7と補強部材6とをハウジング4に取り付けることが可能になる。よって、組立ての作業効率を高めることができ、別部材とするよりも部品点数も減らすことができる。
【0068】
〔ロックレバー〕
ロックレバー8は、金属板を折り曲げ加工することで設けられる。そして、
図8,
図11で示すように、基板固定部8hと、ハウジング固定部8eと、湾曲部8dと、弾性片部8cと、連結部8bと、係止部8aと、操作部8fと、ストッパー部8gとを有する。ハウジング固定部8eと、湾曲部8dと、弾性片部8cと、係止部8aと、ストッパー部8gは2つずつ設けられるが、操作部8fは1つだけ設けられる。
【0069】
基板固定部8hは、ロックレバー8の幅方向Xにおける両端側に1つずつ設けられ、Y―Z平面に沿う板面を有する板状片でなる。また基板固定部8hは基板2に平行な板縁を有しており、基板固定部8hが基板2に半田付けされることで、ロックレバー8は基板2に対して固定される。
【0070】
ハウジング固定部8eは基端固定部8hに繋がり、高さ方向Zに沿って上側に向けて伸長し、Y―Z平面に沿う板面を有する板状片でなる。またハウジング固定部8eの上側には突部が設けられており、ハウジング4の横側側壁4e1の壁体4g内部に設けられる固定溝(図示略)に圧入されて固定される。
【0071】
基板固定部8hとハウジング固定部8eとは、本実施形態において端子5の幅方向Xにおける両端側に1つずつ配置されるが、それらを上記のようにY―Z平面に沿う板面を有する板状片として形成することで幅方向Xで大型化することを防止することができる。
【0072】
湾曲部8dは、ハウジング固定部8e,8eの上側に繋がって1つずつ設けられ、高さ方向Zにおける上側に突き出す略U字状に形成される。また、湾曲部8dは、幅方向Xにおいてハウジング固定部8eよりも一段中央側に設けられている。これによりハウジング固定部8eがハウジング4の横側側壁4e1の壁体4g内部に固定されているのに対して、湾曲部8dは壁体4gの内側に設けられて嵌合室4bと連通する変位空間4kに収容されており、弾性変形可能となっている。
【0073】
弾性片部8cは、板状片でなり、湾曲部8d,8dに繋がって1つずつ設けられ、高さ方向Zに沿って下側に向けて伸長する。また、弾性片部8cは壁体4gに設けられる変位空間4kに収容され、この変位空間4kの内部で弾性変位することができる。
【0074】
連結部8bは、弾性片部8cの下側に繋がり、後述する平板部8f1との間で前後方向Yに沿う板状片として設けられる。また、嵌合状態にある平型導体3の先端部3Aよりも下側に配置される。
【0075】
係止部8aは、嵌合室4bの内壁4b1から嵌合室4bの内部に突出して設けられ、弾性片部8cの高さ方向Zにおける略中央に、前側に突出する山型状に形成される。また、係止部8aは、高さ方向Zに沿う係止縁8a1を有する。
【0076】
操作部8fは、幅方向Xにおける両端側でそれぞれ1つの連結部8bに繋がり、2つの弾性片部8cの間に設けられる。また、操作部8fは、ハウジング4の外部に設けられ、平板部8f1と、押圧部8f2とを有する。
【0077】
平板部8f1は、連結部8bに繋がり、上側に向けて伸長する略平板状に形成される。平板部8f1の上端側には、前側に折り曲げられて、基板2に対して平行な板面を有する押圧部8f2が形成される。また、平板部8f1は、高さ方向Zにおける略中央に、幅方向Xに沿う突出部8f3を2つ有する。これにより、押圧部8f2を押圧する際に掛かる力に対する平板部8f1の剛性を高めることができる。
【0078】
押圧部8f2はハウジング4の厚肉部4iの前端よりも前側に突出して設けられる。また、押圧部8f2は、ハウジング4の高さ方向Zにおける中央よりも上側であって、天面壁4d1の側に配置される。そして、押圧部8f2の前端部は下側かつ後側に向けてさらに折り曲げられている。
【0079】
ストッパー部8gは、操作部8fにおいて幅方向Xにおける両端側に1つずつ設けられる。操作部8fから上側に向けて片持ち梁状に伸長する伸長部8g1と、弾性片部8f1の先端側に設けられる当接部8g2とを有する。当接部8g2は、前記金属片の先端側を下側に折り返した略U字状に形成され、その先端に設けられる下向きの板縁には当接縁部8g3が設けられる。
【0080】
伸長部8g1は、正面壁4hの厚肉部4iに設けられる貫通孔4i2に挿通されており、基端部8g4が貫通孔4i2の外部に配置される。また、当接部8g2と当接縁部8g3は、貫通孔4i2の開口部4i3から外部に露出する。
【0081】
上記のように、本実施形態において、ハウジング固定部8eに対して一方側に基板固定部8hが設けられ、他方側に湾曲部8d、弾性片部5c、操作部8f等が設けられる。従って、押圧部8f2が押圧されて操作部8fが変位し、それによって弾性片部5cや湾曲部8dに力が掛かっても、その力がハウジング固定部8eで受け止められることにより、基板固定部8hに力が掛かり難い構成となっている。そのため、押圧部8f2が押圧されても基板固定部8hが基板2から外れ難くなっている。
【0082】
〔平型導体の嵌合方法の説明〕
次に、コネクタ1の使用方法について説明する。
【0083】
まず、
図7で示すように、平型導体3を挿入口4aから嵌合室4bに挿入する。平型導体3の先端部3Aは、ロックレバー8の係止部8aに接触して、湾曲部8dを、係止部8aが後側に変位するように弾性変形させて係止部8aを乗り越える。その際、係止部8aは後側に弾性変位するが、この間、弾性片部8cには係止部8aが前側に戻るように復元力が働いている。そのため、平型導体3は係止部8aによって前側に押圧されており、この状態で平型導体3は嵌合室4bにおける前側の内壁4b1に沿わせながら、コネクタ1の嵌合室4bに挿入される。
【0084】
この際、ハウジング4は係止部8aに押圧された平型導体3から押圧される。しかし、ハウジング4には補強部材6が固定されているため、嵌合室4bの内側から外側に向かって掛かる力に対する剛性が高められている。よって、嵌合室4bに挿入される平型導体3から壁体4gが力を受けても、壁体4gは変形し難くなっている。
【0085】
その後、ロックレバー8の係止部8aを弾性変位させた状態で、さらに平型導体3を嵌合室4bの奥側に向けて挿入すると、平型導体3の先端部3Aは端子5の接触部5dに上側から接触し、接触部5dを後側に弾性変位させて接点部5d1を乗り越える。この状態で平型導体3は、接点部5d1と嵌合室4bにおける前側の内壁4b1とによって挟持されて平型導体3と端子5とが導通接触する。
【0086】
〔平型導体の抜け止め構造〕
上記のように、平型導体3を嵌合室4bの奥まで挿入すると、やがて平型導体3の係止凹部3cは後側に弾性変位しているロックレバー8の係止部8aに到達する。そして、係止部8aは、復元力によって前側に変位して、係止凹部3cに後側から入り込む。この際、ロックレバー8の係止部8aに設けられる係止縁8a1は、前後方向Yに沿う状態、即ち、平型導体3の挿入方向に対して直交する方向に沿う状態となる。そして、係止縁8a1が係止凹部3cの縁部3c1に当接係止することで、コネクタ1を抜け止めする(
図11)。
【0087】
このように平型導体3がコネクタ1に抜け止めされた状態で平型導体3に抜去方向への力が加わると、平型導体3の係止凹部3cの縁部3c1にロックレバー8の係止部8aが当接して抜け止めされる。これによりコネクタ1と平型導体3の接続状態を維持することができる。
【0088】
ロックレバー8は、基板固定部8hが基板2に対して半田付けされることで、基板2に固定される。ロックレバー8の操作部8fは正面壁4hの側に設けられるのに対して、基板固定部8hは後側側壁4e2の側でハウジング4から外部に露出して基板2に対して固定される。よって、操作部8fを下側に向けて押圧した際に、コネクタ1が前側に向けて倒れ込むといった事態を生じ難くすることができる。
【0089】
端子5はロックレバー8の操作部8fが設けられる側とは反対側の後側側壁4e2の下側で基板2に対して半田付けされている。端子5はハウジング固定部8eによってハウジング4に対しても固定されているため、上記と同様にロックレバー8の操作部8fを下側に向けて押圧した際に、コネクタ1全体が前側に向けて倒れ込むといった事態を生じ難くすることができる。
【0090】
このように本実施形態のコネクタ1によれば、アクチュエータやスライダなどの別部材を設けることなく平型導体3を抜け止めできるため、コネクタ1を小型化することができる。
【0091】
また、平型導体3を嵌合室4bに挿入させる際には、アクチュエータやスライダ等のガタが生じる可能性のある可動構造の部材に沿わせるのではなく、ハウジング4自体の嵌合室4bの内壁4b1の面に沿わせて嵌合させるので、ガタの発生等の不安定要素の無い信頼性のある嵌合状態を維持することができる。さらに、平型導体3をコネクタ1に挿入するという一つの動作だけで上記の抜け止めが可能となるため、嵌合作業が容易である。
【0092】
〔平型導体の抜去方法〕
基板2に対して直交する方向で平型導体3を挿入する縦置きタイプのコネクタでは、前後方向Yの長さに対して高さ方向Zの長さが長く高背である場合がある。そうした縦置きタイプのコネクタでは、基板2からの突出量が大きいため基板2に対して傾倒しやすい。よって、前後方向Yで強い力を受けると、コネクタが反対側に向けて倒れ込む場合がある。また、基板2上において他の実装部品が近接している場合には、ロックレバー8の前後方向Yで押圧するよりも高さ方向Zで押圧する方が、基板2の板面方向で広い空間を必要としないため、押圧作業を行いやすい。そこで、本実施形態では、押圧部8f2に対する押圧を高さ方向Zで行うことで、平型導体3の係止凹部3cに対する係止部8aの係止の解除を可能としている。
【0093】
平型導体を抜去する際には、押圧部8f2を矢示Cのように上から押し下げるように押圧する。これにより、
図11(b)で示すように湾曲部8dが弾性変形し、操作部8fと、ストッパー部8gと、弾性片部8cとが、湾曲部8dを支点として回動する。これにより、操作部8fの平板部8f1と、ストッパー部8gとが、下側が嵌合状態における平型導体3に近づくように傾斜する。そして、連結部8bは操作部8fに押圧されて、嵌合状態における平型導体3の下側で後側に向けて変位する。さらに弾性片部8cは連結部8bに押圧されて、下側が嵌合状態における平型導体3から離間するように変位する。弾性片部8cは上側で湾曲部8dに繋がっており、下側だけが前記のように変位するため、弾性片部8cは全体として嵌合状態における平型導体3に対して傾斜する。係止部8aは弾性片部8cから突出しており、弾性片部8cが傾斜することで係止部8aが平型導体3から離間するように変位する。こうして係止部8aが係止凹部3cから抜け出して、係止部8aの当接縁8a1が係止凹部3cの縁部3c1から離間することで係止を解除する。
【0094】
このように、本実施形態によれば、押圧部8f2を高さ方向Zにおける下側に向けて押圧することで、操作部8fと、ストッパー部8gと、弾性片部8cとが、湾曲部8dを支点として回動し、係止部8aによる平型導体3の係止を解除できる。よって、基板2に実装されているコネクタ1の周囲に実装部品が密集しており、押圧部8f2を基板2の板面方向で変位させることが困難な場合であっても、係止部8aによる平型導体3の係止を解除することができる。
【0095】
なお、操作部8fやストッパー部8gの下側が嵌合状態における平型導体3に近づくように傾斜する際、操作部8fの下側は正面壁4hにも近づく。よって、正面壁4hの下側には、操作部8fに接触して変位を阻害しないように、操作部8fが変位するための空間を形成するガイド面4jが形成される。このガイド面4jは、下側に行くほど正面壁4hの板厚が薄くなることで設けられ、操作部8fを、係止部8aが係止凹部3cから抜け出ることができる程度まで十分に傾斜させることができる。
【0096】
押圧部8f2は上述のように厚肉部4i,4iの間に配置されるが、押圧部8f2の前端は厚肉部4i,4iよりも前側に突出しているため、作業者(図示略)にとって接触しやすくなっており、容易に押圧部8f2に押圧することができる。また、仮に押圧部8f2の上面が、基板2の側であって底面壁4d2の側に設けられる場合、作業者は押圧部8f2を視認し難くなるとともに、触れることも困難になる。そのため、押圧部8f2を押圧することが困難になる。これに対して本実施形態では、押圧部8f2の上面が、ハウジング4における基板2とは反対側であって、天面壁4d1の側に設けられるため、作業者(図示略)にとって視認しやすいとともに接触しやすくされており、押圧しやすい押圧部8f2とすることができる。さらに、厚肉部4i,4iは、押圧部8f2が下側に向けて変位する際にガイド機能を発揮するため、スムーズに押圧部8f2を押し下げることができる。
【0097】
伸長部8g1は、厚肉部4iに設けられる貫通孔4i2の内壁によって外周を覆われることで、高さ方向Z以外への変位を制限されている。また、貫通孔4i2の内壁は、ストッパー部8gの当接部8g2が高さ方向Zに沿って変位する際にガイド機能を発揮する。これらによって、当接部8g2が高さ方向Zに沿ってスムーズに変位することができる。
【0098】
また、上記のようにコネクタ1は、操作部8fと係止部8aとが1つの部材でなり、一体として設けられる。よって、係止を解除する際に、他の部材を用いて係止部8aを押圧して平型導体3の係止凹部3cから離間させて係止を解除するコネクタと比較して部品点数を減らすことができる。
【0099】
〔操作部の塑性変形防止構造〕
押圧部8f2を押圧すると、押圧部8f2が高さ方向Zにおける下側に向けて変位する。その際、仮に押圧部8f2を前側に強く引っ張ると、操作部8fが塑性変形して元の位置に戻らなくなる場合がある。そこで、本実施形態では、操作部8fに繋がるストッパー部8gを設ける。押圧部8f2が高さ方向Zにおける下側に向けて変位すると、ストッパー部8gの当接部8g2もまた、高さ方向Zにおける下側に変位して正面壁4hが有する開口縁4i3に当接する。これにより、押圧部8f2をさらに下側に向けて押圧することができなくなるため、操作部8fの過剰な変位を生じさせにくくすることができる。よって、上記のような塑性変形の発生を抑制できる。
【0100】
しかし、上記のようにストッパー部8gを設けても、仮にストッパー部8gが正面壁4hの板面に対して、壁の板厚方向で当接しても、正面壁4hがストッパー部8gによる押圧によって掛かる力に耐えられず、変形したり、破損したりする場合がある。
【0101】
正面壁4hに力が加えられる場合、その力が加えられる方向で正面壁4hの長さが長いほど、その力に対する剛性が高まる。従って、正面壁4hの板厚方向の長さよりも、板面方向の長さの方が長ければ、同じ力が板面側から板厚方向で加えられる場合よりも、板縁側から板面方向で加えられる場合の方が変形や破損を生じ難い。そこで本実施形態では、ストッパー部8gの当接部8g2に設けられる当接縁部8g3が、正面壁4hに設けられる厚肉部4iの開口縁4i3に対して平型導体3の挿入方向で突き当たるようにしている。本実施形態においては正面壁4hにおいて、板厚方向の長さよりも、板面方向、即ち、平型導体3の挿入方向の長さの方が長い。よって正面壁4hの板面側から板厚方向の力が加えられる場合と比較して、正面壁4hに変形や破損が生じ難くすることができる。これにより、ストッパー部8gを正面壁4hが確実に受け止めて、操作部8fの塑性変形の発生を抑制できる。
【0102】
また、正面壁4hの壁体4gに貫通孔4i2や開口縁4i3を設ける場合、開口縁4i3がさらに薄くなり、剛性が低くなってしまう。この場合、ストッパー部8gの当接縁部8g3によって当接される場合に掛かる力に耐えられず、変形や破損を生じる場合がある。これに対して本実施形態では、正面壁4hに厚肉部4iを設け、厚肉部4iにストッパー部8gを挿通する貫通孔4i2やストッパー部8gの当接縁部8g3が当接する開口縁4i3を設けている。よって、開口縁4i3が薄くなることを防止できるため、剛性が高く変形や破損を生じ難い開口縁4i3とすることができる。
【0103】
ストッパー部8gの伸長部8g1は、操作部8fから片持ち梁状に伸長し、平板部8f1とは独立して弾性変形することができる。よって、例えば操作部8fを前側に引っ張りつつ下側に押圧して平板部8f1を傾けても、ストッパー部8gは高さ方向Zに沿って下側に向けて変位する、というように、それらを異なる方向に変位させることができる。そのため、当接縁部8g3を高さ方向Zに沿って変位させて、確実に開口部4i3の開口縁4i3に当接させることができる。
【0104】
〔誤挿入防止構造〕
本実施形態において、正面壁4hが有する厚肉部4i,4iの間隔L1を平型導体3の板幅L2よりも大きくしている。これにより、厚肉部4i,4iの間や、操作部8fと正面壁4hとの間に生じる間隙に、作業者が誤って平型導体3を挿入することを防ぐことができる。
【0105】
以上のように、本実施形態のコネクタ1によれば、基板2上で他の実装部品が密集している場合であっても、平型導体3に対する係止を容易に解除することができる。そのため、他の実装部品と近接させて基板2に実装することができるため、基板2上の狭い空間を有効に活用することができる。
【0106】
変形例:
前記本実施形態では、正面壁4hにストッパー部8gを挿通する貫通孔4i1や「当接部」としての開口縁4i3を有する厚肉部4iを設けるコネクタ1を示した。これに対して、ストッパー部8gを嵌合室4bの内部に収容し、挿入口4aから当接縁部8g3を外部に露出させて、天面壁4d1の板縁を「当接部」として、ストッパー部8gの当接縁部8g3を当接させることができる。これにより、外部に突出する部分を減らすことができるため、全体としてコンパクトなコネクタ1とすることができる。
【0107】
前記本実施形態では、基板2に縦置きし、基板2に対して直交する方向で平型導体3を挿入するコネクタ1を示した。これに対して、基板2に横置きし、基板2に対して平行な方向で平型導体3を挿入するコネクタ1とすることができる。こうすることで、空間上の理由などにより基板2から離間する方向、すなわちコネクタ1の上側に向けて操作部8fを上げることができない場合であっても、平型導体3の挿入方向、すなわち基板2の板面に平行な方向に押圧部8f2を押圧することで、ロックレバー8による平型導体3の係止を解除することができる。