(54)【発明の名称】マスクブランク用基板の製造方法、多層反射膜付き基板の製造方法、反射型マスクブランクの製造方法、反射型マスクの製造方法、透過型マスクブランクの製造方法、透過型マスクの製造方法、及び半導体装置の製造方法
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0037】
・全般的説明
上記目的を達成するために、本発明は、以下の構成となっている。
【0038】
(構成1)
本発明の構成1は、リソグラフィーに使用されるマスクブランク用基板であって、前記基板の転写パターンが形成される側の主表面は、1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定して得られる二乗平均平方根粗さ(Rms)が0.15nm以下であり、且つ、空間周波数1μm
−1以上のパワースペクトル密度が10nm
4以下である、マスクブランク用基板である。
【0039】
上記構成1によれば、マスクブランク用基板の主表面が1μm×1μmの領域で検出されうる空間周波数1μm
−1以上の粗さ成分全ての振幅強度であるパワースペクトル密度を10nm
4以下にすることにより、高感度欠陥検査装置を使用しての欠陥検査における疑似欠陥の検出を抑制することができ、さらに致命欠陥の顕在化を図ることができる。
【0040】
(構成2)
本発明の構成2は、前記主表面は、1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定して得られる空間周波数1μm
−1以上10μm
−1以下のパワースペクトル密度が10nm
4以下である、構成1に記載のマスクブランク用基板である。
【0041】
上記構成2によれば、150nm〜365nmの波長領域の検査光を用いる高感度欠陥検査装置、例えば、検査光源波長として266nmのUVレーザー又は193nmのArFエキシマレーザーを用いる高感度欠陥検査装置を使用しての欠陥検査における疑似欠陥の検出を大幅に抑制することができ、さらに致命欠陥の顕在化を図ることができる。
【0042】
(構成3)
本発明の構成3は、前記主表面は、1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定して得られる空間周波数1μm
−1以上10μm
−1以下のパワースペクトル密度が1nm
4以上10nm
4以下である、構成2に記載のマスクブランク用基板である。
【0043】
上記構成3によれば、パワースペクトル密度を1nm
4まで低くすれば、150nm〜365nmの波長領域の検査光を用いる高感度欠陥検査装置、例えば、検査光源波長として266nmのUVレーザー又は193nmのArFエキシマレーザーを用いる高感度欠陥検査装置を使用しての欠陥検査における疑似欠陥の検出を十分に抑制することができ、さらに致命欠陥の顕在化を図ることができる。従って、前記主表面の表面形態を過剰に高平滑、高精度に形成する必要がないので、マスクブランク用基板の製造過程の負荷を低減させることができる。
【0044】
(構成4)
本発明の構成4は、前記主表面は、触媒基準エッチングにより表面加工された表面である、構成1〜3のいずれか1項に記載のマスクブランク用基板である。
【0045】
上記構成4によれば、触媒基準エッチングにより、基準面である触媒表面に接触する凸部から選択的に表面加工されるため、主表面を構成する凹凸(表面粗さ)が、非常に高い平滑性を維持しつつ、非常に揃った表面形態となり、しかも、基準面に対して凸部よりも凹部を構成する割合が多い表面形態となる。従って、前記主表面上に複数の薄膜を積層する場合においては、主表面の欠陥サイズが小さくなる傾向となるので欠陥品質上好ましい。特に、前記主表面上に、後述する多層反射膜を形成する場合に特に効果が発揮される。また、上述のように主表面を触媒基準エッチングによる表面処理することにより、上記構成1〜3で規定している範囲の表面粗さ、パワースペクトル密度の表面を比較的容易に形成することができる。
【0046】
(構成5)
本発明の構成5は、前記基板が、EUVリソグラフィーに使用されるマスクブランク用基板である、構成1〜4のいずれか1つに記載のマスクブランク用基板である。
【0047】
上記構成5によれば、EUVリソグラフィーに使用されるマスクブランク用基板とすることにより、前記主表面上に形成される多層反射膜表面の表面形態も高平滑となるので、EUV光に対する反射率特性も良好となる。
【0048】
(構成6)
本発明の構成6は、前記基板が、多成分系のガラスからなる基板の前記主表面上に、金属、合金又はこれらのいずれかに酸素、窒素、炭素の少なくとも一つを含有した材料からなる薄膜を有する、構成5に記載のマスクブランク用基板である。
【0049】
一般に、EUVリソグラフィーに使用されるマスクブランク用基板においては、低熱膨張の特性が要求されるため、後述するような多成分系のガラス材料を使用することが好ましい。多成分系のガラス材料は、合成石英ガラスと比較して高い平滑性を得られにくいという性質がある。このため、多成分系のガラス材料からなる基板の前記主表面上に、金属、合金又はこれらの何れかに酸素、窒素、炭素の少なくとも一つを含有した材料からなる薄膜が形成された基板とする。そして、このような薄膜の表面を表面加工することにより、上記構成1〜5に規定した表面形態を有する基板を容易に得られる。
【0050】
(構成7)
本発明の構成7は、構成1〜6のいずれか1つに記載したマスクブランク用基板の主表面上に、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層した多層反射膜を有する、多層反射膜付き基板である。
【0051】
上記構成7によれば、前記主表面上に形成される多層反射膜表面の表面形態も高平滑となるので、EUV光に対する反射率特性も良好となる。また、多層反射膜付き基板において、高感度欠陥検査装置を使用しての多層反射膜表面の欠陥検査における疑似欠陥の検出を抑制することができ、さらに致命欠陥の顕在化を図ることができる。また、150nm〜365nmの波長領域の検査光を用いる高感度欠陥検査装置、例えば、検査光源波長として266nmのUVレーザー、193nmのArFエキシマレーザーを用いる高感度欠陥検査装置や、0.2nm〜100nmの波長領域の検査光(EUV光)を用いる高感度欠陥検査装置、例えば、検査光源波長として13.5nmのEUV光を用いる高感度欠陥検査装置を使用しての欠陥検査における疑似欠陥の検出を大幅に抑制することができる。
【0052】
(構成8)
本発明の構成8は、前記多層反射膜付き基板は、前記多層反射膜上に保護膜を有する、構成7に記載の多層反射膜付き基板である。
【0053】
上記構成8によれば、前記多層反射膜付き基板は、前記多層反射膜上に保護膜を有することにより、転写用マスク(EUVマスク)を製造する際の多層反射膜表面へのダメージを抑制することができるので、EUV光に対する反射率特性が更に良好となる。また、多層反射膜付き基板において、高感度欠陥検査装置を使用しての保護膜表面の欠陥検査における疑似欠陥の検出を抑制することができ、さらに致命欠陥の顕在化を図ることができる。また、150nm〜365nmの波長領域の検査光を用いる高感度欠陥検査装置、例えば、検査光源波長として266nmのUVレーザー、193nmのArFエキシマレーザーを用いる高感度欠陥検査装置や、0.2nm〜100nmの波長領域の検査光(EUV光)を用いる高感度欠陥検査装置、例えば、検査光源波長として13.5nmのEUV光を用いる高感度欠陥検査装置を使用しての欠陥検査における疑似欠陥の検出を大幅に抑制することができる。
【0054】
(構成9)
本発明の構成9は、構成7又は8に記載の多層反射膜付き基板の前記多層反射膜又は前記保護膜の表面は、1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定して得られる空間周波数1μm
−1以上のパワースペクトル密度が20nm
4以下である、多層反射膜付き基板である。
【0055】
上記構成9によれば、多層反射膜又は保護膜の表面が、1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定して得られる空間周波数1μm
−1以上のパワースペクトル密度が20nm
4以下にすることにより、高感度欠陥検査装置を使用しての多層反射膜表面の欠陥検査における疑似欠陥の検出を抑制することができ、さらに致命欠陥の顕在化を図ることができる。また、150nm〜365nmの波長領域の検査光を用いる高感度欠陥検査装置、例えば、検査光源波長として266nmのUVレーザー、193nmのArFエキシマレーザーを用いる高感度欠陥検査装置や、0.2nm〜100nmの波長領域の検査光(EUV光)を用いる高感度欠陥検査装置、例えば、検査光源波長として13.5nmのEUV光を用いる高感度欠陥検査装置を使用しての欠陥検査における疑似欠陥の検出を大幅に抑制することができる。
【0056】
(構成10)
本発明の構成10は、構成9に記載の多層反射膜付き基板の前記多層反射膜又は前記保護膜の表面は、1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定して得られる空間周波数1μm
−1以上10μm
−1以下のパワースペクトル密度が20nm
4以下である、多層反射膜付き基板である。
【0057】
上記構成10によれば、150nm〜365nmの波長領域の検査光を用いる高感度欠陥検査装置、例えば、検査光源波長として266nmのUVレーザー又は193nmのArFエキシマレーザーを用いる高感度欠陥検査装置を使用しての多層反射膜付き基板の欠陥検査における疑似欠陥の検出を大幅に抑制することができ、さらに致命欠陥の顕在化を図ることができる。
【0058】
(構成11)
本発明の構成11は、構成9に記載の多層反射膜付き基板の前記多層反射膜又は前記保護膜の表面は、1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定して得られる空間周波数10μm
−1以上100μm
−1以下のパワースペクトル密度が9nm
4以下である、多層反射膜付き基板である。
【0059】
上記構成11によれば、0.2nm〜100nmの波長領域の検査光(EUV光)を用いる高感度欠陥検査装置、例えば、検査光源波長として13.5nmのEUV光を用いる高感度欠陥検査装置を使用しての欠陥検査における疑似欠陥の検出を大幅に抑制することができる。
【0060】
(構成12)
本発明の構成12は、構成9〜11のいずれか1つに記載の多層反射膜付き基板の前記多層反射膜又は前記保護膜の表面は、1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定して得られる二乗平均平方根粗さ(Rms)が0.15nm以下である、多層反射膜付き基板である。
【0061】
上記構成12によれば、上記構成9〜11の高感度欠陥検査装置を使用しての欠陥検査における疑似欠陥の検出を大幅に抑制することができる効果に加え、多層反射膜付き基板として必要な反射特性を良好にするこができる。
【0062】
(構成13)
リソグラフィーに使用されるマスクブランク用基板の主表面上に、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層した多層反射膜を有する多層反射膜付き基板であって、
前記多層反射膜付き基板の表面は、1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定して得られる二乗平均平方根粗さ(Rms)が0.15nm以下であり、且つ、空間周波数1μm
−1以上のパワースペクトル密度が20nm
4以下である、多層反射膜付き基板である。
【0063】
上記構成13によれば、多層反射膜付き基板の表面が、1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定して得られる二乗平均平方根粗さ(Rms)が0.15nm以下であり、且つ、空間周波数1μm
−1以上のパワースペクトル密度が20nm
4以下にすることにより、多層反射膜付き基板として必要な反射特性を良好にするとともに、高感度欠陥検査装置を使用しての多層反射膜表面の欠陥検査における疑似欠陥の検出を抑制することができ、さらに致命欠陥の顕在化を図ることができる。また、150nm〜365nmの波長領域の検査光を用いる高感度欠陥検査装置、例えば、検査光源波長として266nmのUVレーザー、193nmのArFエキシマレーザーを用いる高感度欠陥検査装置や、0.2nm〜100nmの波長領域の検査光(EUV光)を用いる高感度欠陥検査装置、例えば、13.5nmのEUV光を用いる高感度欠陥検査装置を使用しての欠陥検査における疑似欠陥の検出を大幅に抑制することができる。
【0064】
(構成14)
本発明の構成14は、前記多層反射膜上に保護膜を有する、構成13に記載の多層反射膜付き基板である。
【0065】
上記構成14によれば、前記多層反射膜上に保護膜を有することにより、転写用マスク(EUVマスク)を製造する際の多層反射膜表面へのダメージを抑制することができるので、EUV光に対する反射率特性が更に良好となる。また、多層反射膜付き基板において、高感度欠陥検査装置を使用しての保護膜表面の欠陥検査における疑似欠陥の検出を抑制することができ、さらに致命欠陥の顕在化を図ることができる。また、150nm〜365nmの波長領域の検査光を用いる高感度欠陥検査装置、例えば、検査光源波長として266nmのUVレーザー、193nmのArFエキシマレーザーを用いる高感度欠陥検査装置や、0.2nm〜100nmの波長領域の検査光(EUV光)を用いる高感度欠陥検査装置、例えば、13.5nmのEUV光を用いる高感度欠陥検査装置を使用しての欠陥検査における疑似欠陥の検出を大幅に抑制することができる。
【0066】
(構成15)
本発明の構成15は、構成13又は14に記載の多層反射膜付き基板の前記多層反射膜又は前記保護膜の表面は、1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定して得られる空間周波数1μm
−1以上10μm
−1以下のパワースペクトル密度が20nm
4以下である、多層反射膜付き基板である。
【0067】
上記構成15によれば、150nm〜365nmの波長領域の検査光を用いる高感度欠陥検査装置、例えば、検査光源波長として266nmのUVレーザー又は193nmのArFエキシマレーザーを用いる高感度欠陥検査装置を使用しての多層反射膜付き基板の欠陥検査における疑似欠陥の検出を大幅に抑制することができ、さらに致命欠陥の顕在化を図ることができる。
【0068】
(構成16)
本発明の構成16は、構成13又は14に記載の多層反射膜付き基板の前記多層反射膜又は前記保護膜の表面は、1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定して得られる空間周波数10μm
−1以上100μm
−1以下のパワースペクトル密度が9nm
4以下である、多層反射膜付き基板である。
【0069】
上記構成16によれば、0.2nm〜100nmの波長領域の検査光(EUV光)を用いる高感度欠陥検査装置、例えば、検査光源波長として13.5nmのEUV光を用いる高感度欠陥検査装置を使用しての欠陥検査における疑似欠陥の検出を大幅に抑制することができる。
【0070】
(構成17)
本発明の構成17は、構成1〜4のいずれか1つに記載のマスクブランク用基板の前記主表面上に、転写パターンとなる遮光性膜を有する、透過型マスクブランクである。
【0071】
上記構成17によれば、透過型マスクブランクにおいて、1μm×1μmの領域で検出されうる空間周波数1μm
−1以上の粗さ成分全ての振幅強度であるパワースペクトル密度を10nm
4以下にすることにより、高感度欠陥検査装置を使用しての欠陥検査における疑似欠陥の検出を抑制することができ、さらに致命欠陥の顕在化を図ることができる。また、例えば、検査光源波長として193nmのArFエキシマレーザーを用いる高感度欠陥検査装置を使用しての欠陥検査における疑似欠陥の検出を大幅に抑制することができる。
【0072】
(構成18)
本発明の構成18は、構成8〜16のいずれか1つに記載の多層反射膜付き基板の前記多層反射膜上又は前記保護膜上に、転写パターンとなる吸収体膜を有する、反射型マスクブランクである。
【0073】
上記構成18によれば、反射型マスクブランクにおいて、高感度欠陥検査装置を使用しての欠陥検査における疑似欠陥の検出を抑制することができ、さらに致命欠陥の顕在化を図ることができる。また、150nm〜365nmの波長領域の検査光を用いる高感度欠陥検査装置、例えば、検査光源波長として266nmのUVレーザー、193nmのArFエキシマレーザーを用いる高感度欠陥検査装置や、0.2nm〜100nmの波長領域の検査光(EUV光)を用いる高感度欠陥検査装置、例えば、13.5nmのEUV光を用いる高感度欠陥検査装置を使用しての欠陥検査における疑似欠陥の検出を大幅に抑制することができる。
【0074】
(構成19)
本発明の構成19は、構成17に記載の透過型マスクブランクにおける前記遮光性膜をパターニングして、前記主表面上に遮光性膜パターンを有する、透過型マスクである。
【0075】
(構成20)
本発明の構成20は、構成18に記載した反射型マスクブランクにおける前記吸収体膜をパターニングして、前記多層反射膜上に吸収体パターンを有する、反射型マスクである。
【0076】
上記構成19、20によれば、透過型マスクや反射型マスクにおいて、高感度欠陥検査装置を使用しての欠陥検査における疑似欠陥の検出を抑制することができ、さらに致命欠陥の顕在化を図ることができる。
【0077】
(構成21)
本発明の構成21は、構成19に記載した透過型マスクを用いて、露光装置を使用したリソグラフィープロセスを行い、被転写体上に転写パターンを形成する工程を有する、半導体装置の製造方法である。
【0078】
(構成22)
本発明の構成22は、構成20に記載した反射型マスクを用いて、露光装置を使用したリソグラフィープロセスを用い、被転写体上に転写パターンを形成する工程を有する、半導体装置の製造方法である。
【0079】
上記構成21、22によれば、高感度の欠陥検査装置を用いた欠陥検査において、異物や傷などの致命欠陥を排除した透過型マスクや反射型マスクを使用できるので、半導体基板等の被転写体上に形成されたレジスト膜に転写する回路パターン等の転写パターンに欠陥がなく、微細でかつ高精度の転写パターンを有する半導体装置を製造することができる。
【0080】
・図示された実施形態の説明
[マスクブランク用基板]
まず、本発明の一実施形態に係るマスクブランク用基板について以下に説明する。
【0081】
図1(a)は、本実施形態のマスクブランク用基板10を示す斜視図である。
図1(b)は、本実施形態のマスクブランク用基板10を示す断面模式図である。
【0082】
マスクブランク用基板10(または、単に基板10と称す。)は、矩形状の板状体であり、2つの対向主表面2と、端面1とを有する。2つの対向主表面2は、この板状体の上面及び下面であり、互いに対向するように形成されている。また、2つの対向主表面2の少なくとも一方は、転写パターンが形成されるべき主表面である。
【0083】
端面1は、この板状体の側面であり、対向主表面2の外縁に隣接する。端面1は、平面状の端面部分1d、及び曲面状の端面部分1fを有する。平面状の端面部分1dは、一方の対向主表面2の辺と、他方の対向主表面2の辺とを接続する面であり、側面部1a、及び面取斜面部1bを含む。側面部1aは、平面状の端面部分1dにおける、対向主表面2とほぼ垂直な部分(T面)である。面取斜面部1bは、側面部1aと対向主表面2との間における面取りされた部分(C面)であり、側面部1aと対向主表面2との間に形成される。
【0084】
曲面状の端面部分1fは、基板10を平面視したときに、基板10の角部10a近傍に隣接する部分(R部)であり、側面部1c及び面取斜面部1eを含む。ここで、基板10を平面視するとは、例えば、対向主表面2と垂直な方向から、基板10を見ることである。また、基板10の角部10aとは、例えば、対向主表面2の外縁における、2辺の交点近傍である。2辺の交点とは、2辺のそれぞれの延長線の交点であってよい。本例において、曲面状の端面部分1fは、基板10の角部10aを丸めることにより、曲面状に形成されている。
【0085】
本実施形態において、上記目的を達成するために、少なくとも転写パターンが形成される側の主表面、即ち、後述するように透過型マスクブランク50においては、遮光性膜51が形成される側の主表面、反射型マスクブランク30においては、多層反射膜21、保護膜22、吸収体膜24が形成される側の主表面が、ある一定の表面粗さと、パワースペクトル密度(Power Spectrum Density : PSD)を有していることを特徴とする。
【0086】
以下、本実施形態のマスクブランク用基板10の主表面の表面形態を示すパラメーターである表面粗さ(Rmax、Rms)及び、パワースペクトル密度(Power Spectrum Density : PSD)について以下に説明する。
【0087】
まず、代表的な表面粗さの指標であるRms(Root means square)は、二乗平均平方根粗さであり、平均線から測定曲線までの偏差の二乗を平均した値の平方根である。Rmsは下式(1)で表される。
【0088】
【数1】
式(1)において、lは基準長さであり、Zは平均線から測定曲線までの高さである。
【0089】
同じく、代表的な表面粗さの指標であるRmaxは、表面粗さの最大高さであり、粗さ曲線の山の高さの最大値と谷の深さの最大値との絶対値の差である。
【0090】
Rms及びRmaxは、従来からマスクブランク用基板10の表面粗さの管理に用いられており、表面粗さを数値で把握できる点で優れている。しかし、これらRms及びRmaxは、いずれも高さの情報であり、微細な表面形状の変化に関する情報を含まない。
【0091】
これに対して、得られた表面の凹凸を空間周波数領域へ変換することにより、空間周波数での振幅強度で表すパワースペクトル解析は、微細な表面形状を数値化することができる。Z(x,y)をx座標、y座標における高さのデータとすると、そのフーリエ変換は下式(2)で与えられる。
【0093】
ここで、Nx,Nyは、x方向とy方向のデータの数である。u=0、1、2・・・Nx−1、v=0、1、2・・・Ny−1であり、このとき空間周波数fは、下式(3)で与えられる。
【0094】
【数3】
ここで、式(3)において、dxはx方向の最小分解能であり、dyはy方向の最小分解能である。
【0095】
このときのパワースペクトル密度PSDは下式(4)で与えられる。
【数4】
【0096】
このパワースペクトル解析は、基板10の主表面2や、後述するような膜の表面状態の変化を単純な高さの変化としてだけでなく、その空間周波数での変化として把握することができる点で優れており、原子レベルでの微視的な反応などが表面に与える影響を解析する手法である。
【0097】
そして、本実施形態のマスクブランク用基板10は、上記目的を達成するために、転写パターンが形成される側の主表面を、上述の表面粗さ(Rms)、パワースペクトル密度を用い、1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定して得られる二乗平均平方根粗さ(Rms)が0.15nm以下であり、且つ、空間周波数1μm
−1以上のパワースペクトル密度が10nm
4以下とする。
【0098】
本発明において、前記1μm×1μmの領域は、転写パターン形成領域の任意の箇所でよい。転写パターン形成領域は、基板10が6025サイズ(152.4mm×152.4mm×6.35mm)の場合、例えば、基板10の主表面の周縁領域を除外した142mm×142mmの領域や、132mm×132mmの領域、132mm×104mmの領域とすることができる、また、前記任意の箇所については、例えば、基板10の主表面の中心の領域とすることができる。
【0099】
また、上述で説明した1μm×1μmの領域、転写パターン形成領域、任意の箇所については、後述する多層反射膜付き基板20の多層反射膜21や保護膜22、反射型マスクブランク30の吸収体膜24、透過型マスクブランク50における遮光性膜51においても適用することができる。
【0100】
また、150nm〜365nmの波長領域の検査光を用いる高感度欠陥検査装置、例えば、検査光源波長として266nmのUVレーザー又は193nmのArFエキシマレーザーを用いる高感度欠陥検査装置を使用して、上記マスクブランク用基板10の主表面の欠陥検査を行う場合には、上記主表面が、1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定して得られる空間周波数1μm
−1以上10μm
−1以下のパワースペクトル密度が10nm
4以下とすることが好ましく、更に好ましくは、空間周波数1μm
−1以上10μm
−1以下のパワースペクトル密度が1nm
4以上10nm
4以下、更に好ましくは、空間周波数1μm
−1以上10μm
−1以下のパワースペクトル密度が1nm
4以上8nm
4以下、更に好ましくは、空間周波数1μm
−1以上10μm
−1以下のパワースペクトル密度が1nm
4以上6nm
4以下とするのが望ましい。
【0101】
また、上述の二乗平均平方根粗さ(Rms)は、好ましくは、0.12nm以下、更に好ましくは、0.10nm以下、更に好ましくは、0.08nm以下、更に好ましくは、0.06nm以下が望ましい。また、最大高さ(Rmax)は、好ましくは1.2nm以下、更に好ましくは、1.0nm以下、更に好ましくは、0.8nm以下、更に好ましくは、0.6nm以下が望ましい。マスクブランク用基板10上に形成される多層反射膜21、保護膜22、吸収体膜24、遮光性膜51の反射率等の光学特性向上の観点からは、二乗平均平方根粗さ(Rms)と最大高さ(Rmax)の両方のパラメーターを管理することが好ましい。例えば、マスクブランク用基板10の表面の好ましい表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(Rms)が0.12nm以下でかつ、最大高さ(Rmax)が1.2nm以下が好ましく、更に好ましくは、二乗平均平方根粗さ(Rms)が0.10nm以下でかつ、最大高さ(Rmax)が1.0nm以下、更に好ましくは、二乗平均平方根粗さ(Rms)が0.08nm以下でかつ、最大高さ(Rmax)が0.8nm以下、更に好ましくは、二乗平均平方根粗さ(Rms)が0.06nm以下でかつ、最大高さ(Rmax)が0.6nm以下であることが望ましい。
【0102】
また、基板10の主表面は、触媒基準エッチングにより表面加工された表面とすることが好ましい。触媒基準エッチング(Catalyst Referred Etching:以下、CAREともいう)とは、基板10の主表面と触媒との間に、常態では溶解性を示さない処理流体を介在させた状態で、両者を接近又は接触させることにより、触媒に吸着している処理液中の分子から生成された活性種によって、主表面に存在する微小な凸部を選択的に除去して平滑化させる表面加工方法である。
【0103】
基板10の主表面が、触媒基準エッチングにより、基準面である触媒表面に接触する凸部から選択的に表面加工されるため、主表面を構成する凹凸(表面粗さ)が、非常に高い平滑性を維持しつつ、非常に揃った表面形態となり、しかも、基準面に対して凸部よりも凹部を構成する割合が多い表面形態となる。従って、前記主表面上に複数の薄膜を積層する場合においては、主表面の欠陥サイズが小さくなる傾向となるので欠陥品質上好ましい。特に、前記主表面上に、後述する多層反射膜を形成する場合に特に効果が発揮される。また、上述のように主表面を触媒基準エッチングによる表面処理することにより、上記構成1又は2で規定している範囲の表面粗さ、ベアリングカーブ特性の表面を比較的容易に形成することができる。
【0104】
尚、基板10の材料がガラス材料の場合、触媒としては、白金、金、遷移金属及びこれらのうち少なくとも一つを含む合金からなる群より選ばれる少なくとも一種の材料を使用することができる。また、処理液としては、純水、オゾン水や水素水等の機能水、低濃度のアルカリ性水溶液、低濃度の酸性水溶液からなる群より選択される少なくとも一種の所液を使用することができる。
【0105】
上記のように主表面の表面粗さ、及びパワースペクトル密度を上記範囲にすることにより、例えば、レーザーテック社製のEUV露光用のマスク・サブストレート/ブランク欠陥検査装置「MAGICS M7360」(検査光源波長:266nm)や、KLA−Tencor社製のレチクル、オプティカル・マスク/ブランク及びEUV・マスク/ブランク欠陥検査装置「Teron600シリーズ」(検査光源波長:193nm)による欠陥検査において、疑似欠陥の検出を大幅に抑制することができる。
【0106】
尚、上記検査光源波長は、266nm、193nmに限定されない。検査光源波長として、532nm、488nm、364nm、257nmを使用しても構わない。
【0107】
上記の検査光源波長を有する高感度欠陥検査装置を用いて欠陥検査するマスクブランク用基板としては、透過型マスクブランク用基板、反射型マスクブランク用基板が挙げられる。
【0108】
また、0.2nm〜100nmの波長領域の検査光(EUV光)を用いる高感度欠陥検査装置、例えば、検査光源波長として13.5nmのEUV光を用いる高感度欠陥検査装置を使用して、上記マスクブランク用基板10の主表面の欠陥検査を行う場合には、上記主表面が、1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定して得られる空間周波数10μm
−1以上100μm
−1以下のパワースペクトル密度が5nm
4以下とすることが好ましく、更に好ましくは、空間周波数10μm
−1以上100μm
−1以下のパワースペクトル密度が0.5nm
4以上5nm
4以下とするのが望ましい。但し、EUV光を用いる高感度欠陥検査装置を使用してマスクブランク用基板10の主表面の欠陥検査を行う場合には、所定以上の反射率を必要とするため、ガラス以外の材料の場合に限られる。
【0109】
上記のように主表面の表面粗さ、及びパワースペクトル密度を上記範囲にすることにより、例えば、検査光源波長として13.5nmのEUV光を用いる高感度欠陥検査装置による欠陥検査において、疑似欠陥の検出を大幅に抑制することができる。
【0110】
上記の検査光源波長を有する高感度欠陥検査装置を用いて欠陥検査するマスクブランク用基板10としては、反射型マスクブランク用基板が挙げられる。
【0111】
また、本実施形態のマスクブランク用基板10は、転写パターンが形成される側の主表面は、少なくともパターン転写精度、位置精度を得る観点から高平坦度となるように表面加工されていることが好ましい。EUVの反射型マスクブランク用基板の場合、基板10の転写パターンが形成される側の主表面の132mm×132mmの領域、または142mm×142mmの領域において、平坦度が0.1μm以下であることが好ましく、特に好ましくは0.05μm以下である。更に好ましくは、基板10の転写パターンが形成される側の主表面132mm×132mmの領域において、平坦度が0.03μm以下である。また、転写パターンが形成される側と反対側の主表面は、露光装置にセットする時の静電チャックされる面であって、142mm×142mmの領域において、平坦度が1μm以下、特に好ましくは0.5μm以下である。ArFエキシマレーザー露光用の透過型マスクブランクに使用するマスクブランク用基板10の場合、基板の転写パターンが形成される側の主表面の132mm×132mmの領域、または142mm×142mmの領域においては、平坦度が0.3μm以下であることが好ましく、特に好ましくは、0.2μm以下である。
【0112】
ArFエキシマレーザー露光用の透過型マスクブランク用基板の材料としては、露光波長に対して透光性を有するものであれば何でもよい。一般的には、合成石英ガラスが使用される。その他の材料としては、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラスであっても構わない。
【0113】
また、EUV露光用の反射型マスクブランク用基板の材料としては、低熱膨張の特性を有するものであれば何でもよい。例えば、低熱膨張の特性を有するSiO
2−TiO
2系ガラス(2元系(SiO
2−TiO
2)及び3元系(SiO
2−TiO
2−SnO
2等))、例えばSiO
2−Al
2O
3−Li
2O系の結晶化ガラスなどの所謂、多成分系ガラスを使用することができる。また、上記ガラス以外にシリコンや金属などの基板を用いることもできる。前記金属基板の例としては、インバー合金(Fe−Ni系合金)などが挙げられる。
【0114】
上述のように、EUV露光用のマスクブランク用基板の場合、基板に低熱膨張の特性が要求されるため、多成分系ガラス材料を使用するが、合成石英ガラスと比較して高い平滑性を得にくいという問題がある。この問題を解決すべく、多成分系ガラス材料からなる基板上に、金属、合金からなる又はこれらのいずれかに酸素、窒素、炭素の少なくとも一つを含有した材料からなる薄膜を形成する。そして、このような薄膜表面を鏡面研磨、表面処理することにより、上記範囲の表面粗さ、パワースペクトル密度の表面を比較的容易に形成することができる。
【0115】
上記薄膜の材料としては、例えば、Ta(タンタル)、Taを含有する合金、又はこれらのいずれかに酸素、窒素、炭素の少なくとも一つを含有したTa化合物が好ましい。Ta化合物としては、例えば、TaB、TaN、TaO、TaON、TaCON、TaBN、TaBO、TaBON、TaBCON、TaHf、TaHfO、TaHfN、TaHfON、TaHfCON、TaSi、TaSiO、TaSiN、TaSiON、TaSiCONなどを適用することができる。これらTa化合物のうち、窒素(N)を含有するTaN、TaON、TaCON、TaBN、TaBON、TaBCON、TaHfN、TaHfON、TaHfCON、TaSiN、TaSiON、TaSiCONがより好ましい。尚、上記薄膜は、薄膜表面の高平滑性の観点から、好ましくはアモルファス構造とすることが望ましい。薄膜の結晶構造は、X線回折装置(XRD)により測定することができる。
【0116】
尚、本発明では、上記に規定した表面粗さ、パワースペクトル密度を得るための加工方法は、特に限定されるものではない。本発明は、マスクブランク用基板の表面粗さ、パワースペクトル密度を管理する点に特徴があり、例えば、後述する実施例1〜3、及び実施例5に例示したような加工方法によって実現することができる。
【0117】
[多層反射膜付き基板]
次に、本発明の一実施形態に係る多層反射膜付き基板20について以下に説明する。
【0118】
図2は、本実施形態の多層反射膜付き基板20を示す模式図である。
【0119】
本実施形態の多層反射膜付き基板20は、上記説明したマスクブランク用基板10の転写パターンが形成される側の主表面上に多層反射膜21を有する構造としている。この多層反射膜21は、EUVリソグラフィー用反射型マスクにおいてEUV光を反射する機能を付与するものであり、屈折率の異なる元素が周期的に積層された多層膜の構成を取っている。
【0120】
多層反射膜21はEUV光を反射する限りその材質は特に限定されないが、その単独での反射率は通常65%以上であり、上限は通常73%である。このような多層反射膜21は、一般的には、高屈折率の材料からなる薄膜(高屈折率層)と、低屈折率の材料からなる薄膜(低屈折率層)とが、交互に40〜60周期程度積層された多層反射膜とすることができる。
【0121】
例えば、波長13〜14nmのEUV光に対する多層反射膜21としては、Mo膜とSi膜とを交互に40周期程度積層したMo/Si周期積層膜とすることが好ましい。その他、EUV光の領域で使用される多層反射膜として、Ru/Si周期多層膜、Mo/Be周期多層膜、Mo化合物/Si化合物周期多層膜、Si/Nb周期多層膜、Si/Mo/Ru周期多層膜、Si/Mo/Ru/Mo周期多層膜、Si/Ru/Mo/Ru周期多層膜などとすることが可能である。
【0122】
多層反射膜21の形成方法は当該技術分野において公知であるが、例えば、マグネトロンスパッタリング法や、イオンビームスパッタリング法などにより、各層を成膜することにより形成できる。上述したMo/Si周期多層膜の場合、例えば、イオンビームスパッタリング法により、まずSiターゲットを用いて厚さ数nm程度のSi膜を基板10上に成膜し、その後、Moターゲットを用いて厚さ数nm程度のMo膜を成膜し、これを一周期として、40〜60周期積層して、多層反射膜21を形成する。
【0123】
上記で形成された多層反射膜21の上に、EUVリソグラフィー用反射型マスクの製造工程におけるドライエッチングやウェット洗浄からの多層反射膜21の保護のため、保護膜22(
図3を参照)を形成することもできる。このように、マスクブランク用基板10上に、多層反射膜21と、保護膜22とを有する形態も本発明における多層反射膜付き基板とすることができる。
【0124】
尚、上記保護膜22の材料としては、例えば、Ru、Ru−(Nb,Zr,Y,B,Ti,La,Mo),Si−(Ru,Rh,Cr,B),Si,Zr,Nb,La,B等の材料を使用することができるが、これらのうち、ルテニウム(Ru)を含む材料を適用すると、多層反射膜の反射率特性がより良好となる。具体的には、Ru、Ru−(Nb,Zr,Y,B,Ti,La,Mo)であることが好ましい。このような保護膜は、特に、吸収体膜をTa系材料とし、Cl系ガスのドライエッチングで当該吸収体膜をパターニングする場合に有効である。
【0125】
尚、上記の多層反射膜付き基板20において、前記多層反射膜21又は前記保護膜22の表面は、1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定して得られる空間周波数1μm
−1以上10μm
−1以下のパワースペクトル密度が20nm
4以下であることが好ましい。このような構成とすることにより、高感度欠陥検査装置を使用しての多層反射膜21又は保護膜22の表面の欠陥検査における疑似欠陥の検出を抑制することができ、さらに致命欠陥の顕在化を図ることができる。更に好ましくは、前記多層反射膜21又は前記保護膜22の表面は、1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定して得られる空間周波数1μm
−1以上10μm
−1以下のパワースペクトル密度が17nm
4以下、更に好ましくは、1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定して得られる空間周波数1μm
−1以上10μm
−1以下のパワースペクトル密度が15nm
4以下、更に好ましくは、1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定して得られる空間周波数1μm
−1以上10μm
−1以下のパワースペクトル密度が10nm
4以下であることが好ましく、更に好ましくは、1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定して得られる空間周波数1μm
−1以上10μm
−1以下のパワースペクトル密度が1nm
4以上10nm
4以下であることが望ましい。このような構成とすることにより、150nm〜365nmの波長領域の検査光を用いる高感度欠陥検査装置、例えば、上述に挙げた検査光源波長として266nmのUVレーザー又は193nmのArFエキシマレーザーを用いる高感度欠陥検査装置で多層反射膜付き基板20の欠陥検査を行う場合、疑似欠陥の検出を大幅に抑制することができる。
【0126】
また、上記の多層反射膜付き基板20において、前記多層反射膜21又は前記保護膜22の表面は、1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定して得られる空間周波数10μm
−1以上100μm
−1以下のパワースペクトル密度が9nm
4以下であることが好ましい。更に好ましくは、1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定して得られる空間周波数10μm
−1以上100μm
−1以下のパワースペクトル密度が8nm
4以下、更に好ましくは、1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定して得られる空間周波数10μm
−1以上100μm
−1以下のパワースペクトル密度が7nm
4以下、更に好ましくは、1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定して得られる空間周波数10μm
−1以上100μm
−1以下のパワースペクトル密度が5nm
4以下であることが好ましく、更に好ましくは、1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定して得られる空間周波数10μm
−1以上100μm
−1以下のパワースペクトル密度が0.5nm
4以上5nm
4以下であることが望ましい。このような構成とすることにより、0.2nm〜100nmの波長領域の検査光(EUV光)を用いる高感度欠陥検査装置、例えば、検査光源波長として13.5nmのEUV光を用いる高感度欠陥検査装置で多層反射膜付き基板の欠陥検査を行う場合、疑似欠陥の検出を大幅に抑制することができる。
【0127】
また、上記の高感度欠陥検査装置を使用しての欠陥検査における疑似欠陥の検出を大幅に抑制することができる効果に加え、多層反射膜付き基板として必要な反射特性を良好にするために、上記の多層反射膜付き基板20において、前記多層反射膜21又は前記保護膜22の表面は、1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定して得られる二乗平均平方根粗さ(Rms)が0.15nm以下とすることが好ましい。更に好ましくは、二乗平均平方根粗さ(Rms)が0.13nm以下、更に好ましくは、二乗平均平方根粗さ(Rms)が0.12nm以下とするのが望ましい。
【0128】
上記範囲の基板10の表面形態を保って、多層反射膜21又は保護膜22の表面が、上記範囲のパワースペクトル密度にするには、多層反射膜21を、基板10の主表面の法線に対して斜めに高屈折率層と低屈折率層とが堆積するように、スパッタリング法により成膜することにより得られる。より具体的には、基板10の主表面の法線に対して、多層反射膜21を構成する高屈折率層の成膜のためのスパッタ粒子の入射角度が、低屈折率層の成膜のためのスパッタ粒子の入射角度より大きくなるように、イオンビームスパッタリング法に形成する。さらに詳細には、Mo等の低屈折率層の成膜のためのスパッタ粒子の入射角度は、40度以上90度未満とし、Si等の高屈折率層の成膜のためのスパッタ粒子の入射角度は、0度以上60度以下にして成膜すると良い。さらには、多層反射膜21上に形成する保護膜22も多層反射膜21の成膜後、連続して、基板10の主表面の法線に対して斜めに保護膜22が堆積するようにイオンビームスパッタリング法により形成することが好ましい。
【0129】
また、上記範囲以外の表面形態を有する基板10の場合や、多層反射膜21又は保護膜22の高感度欠陥検査において、さらに疑似欠陥の検出を抑制するため、Mo等の低屈折率層の成膜のためのスパッタ粒子の入射角度、及びSi等の高屈折率層の成膜のためのスパッタ粒子の角度を、基板10の主表面の法線に対して小さな角度、例えば0度以上30度以下の角度として多層反射膜21を成膜するとよい。
【0130】
また、多層反射膜付き基板20において、基板10の多層反射膜21と接する面と反対側の面には、静電チャックの目的のために裏面導電膜23(
図3を参照)を形成することもできる。このように、マスクブランク用基板10上の転写パターンが形成される側に多層反射膜21と、保護膜22とを有し、多層反射膜21と接する面と反対側の面に裏面導電膜23を有する形態も本発明における多層反射膜付き基板とすることができる。尚、裏面導電膜23に求められる電気的特性(シート抵抗)は、通常100Ω/□以下である。裏面導電膜23の形成方法は公知であり、例えば、マグネトロンスパッタリング法やイオンビームスパッタリング法により、Cr、Ta等の金属や合金のターゲットを使用して形成することができる。
【0131】
また、本実施形態の多層反射膜付き基板20としては、基板10と多層反射膜21との間に下地層を形成しても良い。下地層は、基板10の主表面の平滑性向上の目的、欠陥低減の目的、多層反射膜21の反射率増強効果の目的、並びに多層反射膜21の応力補正の目的で形成することができる。
【0132】
[反射型マスクブランク]
次に、本発明の一実施形態に係る反射型マスクブランク30について以下に説明する。
【0133】
図3は、本実施形態の反射型マスクブランク30を示す模式図である。
【0134】
本実施形態の反射型マスクブランク30は、上記説明した多層反射膜付き基板20の保護膜22上に、転写パターンとなる吸収体膜24を形成した構成としてある。
【0135】
上記吸収体膜24の材料は、特に限定されるものではない。例えば、EUV光を吸収する機能を有するもので、Ta(タンタル)単体、又はTaを主成分とする材料を用いることが好ましい。Taを主成分とする材料は、通常、Taの合金である。このような吸収体膜の結晶状態は、平滑性、平坦性の点から、アモルファス状又は微結晶の構造を有しているものが好ましい。Taを主成分とする材料としては、例えば、TaとBを含む材料、TaとNを含む材料、TaとBを含み、更にOとNの少なくともいずれかを含む材料、TaとSiを含む材料、TaとSiとNを含む材料、TaとGeを含む材料、TaとGeとNを含む材料などを用いることができる。また例えば、TaにB、Si、Ge等を加えることにより、アモルファス構造が容易に得られ、平滑性を向上させることができる。さらに、TaにN、Oを加えれば、酸化に対する耐性が向上するため、経時的な安定性を向上させることができる。上記範囲の基板10や、多層反射膜付き基板20の表面形態を保って、吸収体膜24の表面が、上記範囲のパワースペクトル密度にするには、吸収体膜24をアモルファス構造にすることが好ましい。結晶構造については、X線回折装置(XRD)により確認することができる。
【0136】
尚、上記吸収体膜24の表面は、1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定して得られる空間周波数1μm
−1以上10μm
−1以下のパワースペクトル密度が10nm
4以下であることが好ましく、更に好ましくは、1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定して得られる空間周波数1μm
−1以上10μm
−1以下のパワースペクトル密度が1nm
4以上10nm
4以下であることが望ましい。このような構成とすることにより、150nm〜365nmの波長領域の検査光を用いる高感度欠陥検査装置、例えば、上述に挙げた検査光源波長として266nmのUVレーザー又は193nmのArFエキシマレーザーを用いる高感度欠陥検査装置で反射型マスクブランク30の欠陥検査を行う場合、疑似欠陥の検出を大幅に抑制することができる。
【0137】
また、上記吸収体膜24の表面は、1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定して得られる空間周波数10μm
−1以上100μm
−1以下のパワースペクトル密度が5nm
4以下であることが好ましく、更に好ましくは、1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定して得られる空間周波数10μm
−1以上100μm
−1以下のパワースペクトル密度が0.5nm
4以上5nm
4以下であることが望ましい。このような構成とすることにより、0.2nm〜100nmの波長領域の検査光(EUV光)を用いる高感度欠陥検査装置、例えば、検査光源波長として13.5nmのEUV光を用いる高感度欠陥検査装置で反射型マスクブランク30の欠陥検査を行う場合、疑似欠陥の検出を大幅に抑制することができる。
【0138】
尚、本発明の反射型マスクブランクは、
図3に示す構成に限定されるものではない。例えば、上記吸収体膜24の上に、吸収体膜24をパターニングするためのマスクとなるレジスト膜を形成することもでき、レジスト膜付き反射型マスクブランクも、本発明の反射型マスクブランクとすることができる。尚、吸収体膜24の上に形成するレジスト膜は、ポジ型でもネガ型でも構わない。また、電子線描画用でもレーザー描画用でも構わない。さらに、吸収体膜24と前記レジスト膜との間に、いわゆるハードマスク(エッチングマスク)膜を形成することもでき、この態様も本発明における反射型マスクブランクとすることができる。
【0139】
[反射型マスク]
次に、本発明の一実施形態に係る反射型マスク40について以下に説明する。
【0140】
図4は、本実施形態の反射型マスク40を示す模式図である。
【0141】
本実施形態の反射型マスク40は、上記の反射型マスクブランク30における吸収体膜24をパターニングして、上記保護膜22上に吸収体パターン27を形成した構成である。本実施形態の反射型マスク40は、EUV光等の露光光で露光すると、マスク表面で吸収体膜24のある部分では露光光が吸収され、それ以外の吸収体膜24を除去した部分では露出した保護膜22及び多層反射膜21で露光光が反射されることにより、リソグラフィー用の反射型マスク40として使用することができる。
【0142】
[透過型マスクブランク]
次に、本発明の一実施形態に係る透過型マスクブランク50について以下に説明する。
【0143】
図5は、本実施形態の透過型マスクブランク50を示す模式図である。
【0144】
本実施形態の透過型マスクブランク50は、上記説明したマスクブランク用基板10の転写パターンが形成される側の主表面上に、転写パターンとなる遮光性膜51を形成した構成としてある。
【0145】
透過型マスクブランク50としては、バイナリー型マスクブランク、位相シフト型マスクブランクが挙げられる。上記遮光性膜51には、露光光を遮断する機能を有する遮光膜の他、露光光を減衰させ、かつ位相シフトさせる所謂ハーフトーン膜などが含まれる。
【0146】
バイナリー型マスクブランクは、マスクブランク用基板10上に、露光光を遮断する遮光膜を成膜したものである。この遮光膜をパターニングして所望の転写パターンを形成する。遮光膜としては、例えば、Cr膜、Crに酸素、窒素、炭素、弗素を選択的に含むCr合金膜、これらの積層膜、MoSi膜、MoSiに酸素、窒素、炭素を選択的に含むMoSi合金膜、これらの積層膜などが挙げられる。尚、遮光膜の表面には、反射防止機能を有する反射防止層が含まれても良い。
【0147】
また、位相シフト型マスクブランクは、マスクブランク用基板10上に、露光光の位相差を変化させる位相シフト膜を成膜したものである。この位相シフト膜をパターニングして所望の転写パターンを形成する。位相シフト膜としては、位相シフト機能のみを有するSiO2膜のほかに、位相シフト機能及び遮光機能を有する金属シリサイド酸化物膜、金属シリサイド窒化物膜、金属シリサイド酸化窒化物膜、金属シリサイド酸化炭化物膜、金属シリサイド酸化窒化炭化物膜(金属:Mo、Ti、W、Taなどの遷移金属)、CrO膜、CrF膜、SiON膜などのハーフトーン膜が挙げられる。この位相シフト型マスクブランクにおいて、位相シフト膜上に、上記の遮光膜を形成した態様も含まれる。
【0148】
尚、本発明の透過型マスクブランクは、
図5に示す構成に限定されるものではない。例えば、上記遮光性膜51の上に、遮光性膜51をパターニングするためのマスクとなるレジスト膜を形成することもでき、レジスト膜付き透過型マスクブランクも、本発明の透過型マスクブランクとすることができる。尚、上述と同様に、遮光性膜51の上に形成するレジスト膜は、ポジ型でもネガ型でも構わない。また、電子線描画用でもレーザー描画用でも構わない。さらに、遮光性膜51と前記レジスト膜との間に、いわゆるハードマスク(エッチングマスク)膜を形成することもでき、この態様も本発明における透過型マスクブランクとすることができる。
【0149】
尚、上記の透過型マスクブランク50において、前記遮光性膜51の表面は、1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定して得られる空間周波数1μm
−1以上10μm
−1以下のパワースペクトル密度が10nm
4以下であることが好ましく、更に好ましくは、1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定して得られる空間周波数1μm
−1以上10μm
−1以下のパワースペクトル密度が1nm
4以上10nm
4以下であることが望ましい。このような構成とすることにより、150nm〜365nmの波長領域の検査光を用いる高感度欠陥検査装置、例えば、上述に挙げた検査光源波長として193nmのArFエキシマレーザーを用いる高感度欠陥検査装置で透過型マスクブランク50の欠陥検査を行う場合、疑似欠陥の検出を大幅に抑制することができる。
【0150】
尚、上記範囲の基板10の表面形態を保って、遮光性膜51の表面が、上記範囲のパワースペクトル密度にするには、遮光性膜51をアモルファス構造にすることが好ましい。結晶構造については、X線回折装置(XRD)により確認することができる。
【0151】
[透過型マスク]
次に、本発明の一実施形態に係る透過型マスク60について以下に説明する。
【0152】
図6は、本実施形態の透過型マスク60を示す模式図である。
【0153】
本実施形態の透過型マスク60は、上記の透過型マスクブランク50における遮光性膜51をパターニングして、上記マスクブランク用基板10上に遮光性膜パターン61を形成した構成である。本実施形態の透過型マスク60は、バイナリー型マスクにおいては、ArFエキシマレーザー光等の露光光で露光すると、マスク表面で遮光性膜51のある部分では露光光が遮断され、それ以外の遮光性膜51を除去した部分では露出したマスクブランク用基板10を露光光が透過することにより、リソグラフィー用の透過型マスク60として使用することできる。また、位相シフト型マスクの一つであるハーフトーン型位相シフトマスクにおいては、ArFエキシマレーザー光等の露光光で露光すると、マスク表面で遮光性膜51が除去した部分では、露出したマスクブランク用基板10を露光光が透過し、遮光性膜51のある部分では、露光光が減衰した状態でかつ、所定の位相シフト量を有して透過されることにより、リソグラフィー用の透過型マスク60として使用することができる。また、位相シフト型マスクとしては、上述のハーフトーン型位相シフトマスクに限らず、レベンソン型位相シフトマスク等の各種位相シフト効果を利用した位相シフトマスクでも良い。
【0154】
[半導体装置の製造方法]
以上説明した反射型マスク40や透過型マスク60と、露光装置を使用したリソグラフィープロセスにより、半導体基板等の被転写体上に形成されたレジスト膜に、前記反射型マスク40の吸収体パターン27や、前記透過型マスク60の遮光性膜パターン61に基づく回路パターン等の転写パターンを転写し、その他種々の工程を経ることで、半導体基板上に種々のパターン等が形成された半導体装置を製造することができる。
【0155】
尚、上述のマスクブランク用基板10、多層反射膜付き基板20、反射型マスクブランク30、透過型マスクブランク50に、基準マークを形成し、この基準マークと、上述の高感度欠陥検査装置で検出された致命欠陥の位置を座標管理することができる。得られた致命欠陥の位置情報(欠陥データ)に基づいて、反射型マスク40や透過型マスク60を作製するときに、上述の欠陥データと被転写パターン(回路パターン)データとを元に、致命欠陥が存在している箇所に吸収体パターン27や、遮光性膜パターン61が形成されるように描画データを補正して、欠陥を低減させることができる。
【0156】
・実施例
以下、本発明のEUV露光用のマスクブランク用基板、多層反射膜付き基板、反射型マスクブランク、反射型マスクの実施形態を含む実施例1〜3及び5〜7、これらに対する比較例1及び2、本発明のArFエキシマレーザー露光用のマスクブランク用基板、透過型マスクブランク、透過型マスクの実施形態を含む実施例4について、以下に説明する。
【0157】
[実施例1]
まず、本発明に係るEUV露光用のマスクブランク用基板、多層反射膜付き基板、EUV露光用反射型マスクブランク、反射型マスクに関する実施例1について説明する。
【0158】
<マスクブランク用基板の作製>
マスクブランク用基板10として、大きさが152.4mm×152.4mm、厚さが6.35mmのSiO
2−TiO
2系のガラス基板を準備し、両面研磨装置を用いて、当該ガラス基板の表裏面を、酸化セリウム砥粒やコロイダルシリカ砥粒により段階的に研磨した後、低濃度のケイフッ酸で表面処理した。これにより得られたガラス基板表面の表面粗さを原子間力顕微鏡で測定したところ、二乗平均平方根粗さ(Rms)は0.15nmであった。
【0159】
当該ガラス基板の表裏面における148mm×148mmの領域の表面形状(表面形態、平坦度)、TTV(板厚ばらつき)を、波長変調レーザーを用いた波長シフト干渉計で測定した。その結果、ガラス基板の表裏面の平坦度は290nm(凸形状)であった。ガラス基板表面の表面形状(平坦度)の測定結果は、測定点ごとにある基準面に対する高さの情報としてコンピュータに保存するとともに、ガラス基板に必要な表面平坦度の基準値50nm(凸形状)、裏面平坦度の基準値50nmと比較し、その差分(必要除去量)をコンピュータで計算した。
【0160】
次いで、ガラス基板面内を加工スポット形状領域ごとに、必要除去量に応じた局所表面加工の加工条件を設定した。事前にダミー基板を用いて、実際の加工と同じようにダミー基板を、一定時間基板を移動させずにスポットで加工し、その形状を上記表裏面の表面形状を測定する装置と同じ測定機にて測定し、単位時間当たりにおけるスポットの加工体積を算出する。そして、スポットの情報とガラス基板の表面形状の情報より得られた必要除去量に従い、ガラス基板をラスタ走査する際の走査スピードを決定した。
【0161】
設定した加工条件に従い、磁気流体による基板仕上げ装置を用いて、磁気粘弾性流体研磨(Magneto Rheological Finishing : MRF)加工法により、ガラス基板の表裏面平坦度が上記の基準値以下となるように局所的表面加工処理をして表面形状を調整した。尚、このとき使用した磁性粘弾性流体は、鉄成分を含んでおり、研磨スラリーは、アルカリ水溶液+研磨剤(約2wt%)、研磨剤:酸化セリウムとした。その後、ガラス基板を濃度約10%の塩酸水溶液(温度約25℃)が入った洗浄槽に約10分間浸漬した後、純水によるリンス、イソプロピルアルコール(IPA)乾燥を行った。
【0162】
得られたガラス基板表面の表面形状(表面形態、平坦度)を測定したところ、表裏面の平坦度は約40〜50nmであった。また、ガラス基板表面の表面粗さを、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の任意の箇所の1μm×1μmの領域において、原子間力顕微鏡を用いて測定したところ、二乗平均平方根粗さ(Rms)は0.37nmとなっており、MRFによる局所表面加工前の表面粗さより荒れた状態になっていた。
【0163】
そのため、ガラス基板の表裏面について、ガラス基板表面の表面形状が維持又は改善する研磨条件で両面研磨装置を用いて両面研磨を行った。この仕上げ研磨は、以下の研磨条件で行った。
加工液:アルカリ水溶液(NaOH)+研磨剤(濃度:約2wt%)
研磨剤:コロイダルシリカ、平均粒径:約70nm
研磨定盤回転数:約1〜50rpm
加工圧力:約0.1〜10kPa
研磨時間:約1〜10分
【0164】
その後、ガラス基板をアルカリ水溶液(NaOH)で洗浄し、EUV露光用のマスクブランク用基板10を得た。
【0165】
得られたマスクブランク用基板10の表裏面の平坦度、表面粗さを測定したところ、表裏面平坦度は約40nmと両面研磨装置による加工前の状態を維持又は改善しており良好であった。また、得られたマスクブランク用基板10について、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の任意の箇所の1μm×1μmの領域を、原子間力顕微鏡で測定したところ、その表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(Rms)は0.13nm、最大高さ(Rmax)は1.2nmであった。
【0166】
尚、本発明におけるマスクブランク用基板10の局所加工方法は、上述した磁気粘弾性流体研磨加工法に限定されるものではない。ガスクラスターイオンビーム(Gas Cluster Ion Beams : GCIB)や局所プラズマを使用した加工方法であってもよい。
【0167】
次に、上述したマスクブランク用基板10の主表面上に、DCマグネトロンスパッタリング法により、TaBN膜を成膜した。TaBターゲットをマスクブランク用基板の主表面に対向させ、Ar+N
2ガス雰囲気中で反応性スパッタリングを行った。ラザフォード後方散乱分析法によりTaBN膜の元素組成を測定したところ、Ta:80原子%、B:10原子%、N:10原子%であった。また、TaBN膜の膜厚は150nmであった。尚、上記TaBN膜の結晶構造をX線回折装置(XRD)により測定したところ、アモルファス構造であった。
【0168】
次に、片面研磨装置を用いて、TaBN膜の表面を超精密研磨した。この超精密研磨は、以下の研磨条件で行った。
加工液:アルカリ水溶液(NaOH)+研磨剤(コロイダルシリカの平均砥粒50nm、濃度:5wt%)
加工圧力:50g/cm
2
研磨時間:約1〜10分。
【0169】
その後、TaBN膜の表面をフッ酸水溶液(HF:濃度0.2wt%)で、428秒間洗浄し、EUV露光用のマスクブランク用基板を得た。
【0170】
本実施例1により得られたEUV露光用のマスクブランク用基板10のTaBN膜表面について、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の任意の箇所の1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定したところ、その表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(Rms)は0.085nm、最大高さ(Rmax)は1.1nmであった。また、得られたEUV露光用のマスクブランク用基板10のTaBN膜表面をパワースペクトル解析した結果を、
図7、
図8のグラフ中「+」で示す。
【0171】
図7、
図8に示すように、本実施例1のTaBN膜表面における1μm×1μmの領域を、原子間力顕微鏡で測定して得られる空間周波数1μm
−1以上10μm
−1以下のパワースペクトル密度は、最大値7.73nm
4、最小値2.94nm
4であった。また、空間周波数10μm
−1以上100μm
−1以下のパワースペクトル密度は、最大値3.47nm
4、最小値1.86nm
4であった。これらの図が示すとおり、本実施例1のTaBN膜表面の空間周波数1μm
−1以上、及び空間周波数1μm
−1以上10μm
−1以下におけるパワースペクトル密度は、10nm
4以下であった。
【0172】
検査光源波長193nmの高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件で、本実施例1のTaBN膜表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した。この結果、疑似欠陥を含む欠陥検出個数は、合計18,789個であり、従来の欠陥検出個数100,000個超と比較して疑似欠陥が大幅に抑制された。合計18,789個程度の欠陥検出個数であれば、異物や傷などの致命欠陥の有無を容易に検査することができる。尚、球相当直径SEVDは、欠陥の面積を(S)、欠陥の高さを(h)としたときに、SEVD=2(3S/4πh)
1/3の式により算出することができる。(以下の実施例、比較例も同様。)欠陥の面積(S)、欠陥の高さ(h)は原子間力顕微鏡(AFM)により測定することができる。
【0173】
また、検査光源波長266nmの高感度欠陥検査装置(レーザーテック社製「MAGICS M7360」を使用して、最高の検査感度条件で、本実施例1のTaBN膜表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した結果、欠陥検出個数の合計は、いずれも100,000個を下回り、致命欠陥の検査が可能であった。
【0174】
<多層反射膜付き基板の作製>
上述したEUV露光用のマスクブランク用基板10のTaBN膜の表面に、イオンビームスパッタリング法により、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層した多層反射膜21と、保護膜22を形成して多層反射膜付き基板20を作製した。
【0175】
多層反射膜21は、膜厚4.2nmのSi膜と、膜厚2.8nmのMo膜とを1ぺアとし、40ペア成膜した(膜厚の合計280nm)。さらに、当該多層反射膜21の表面に、膜厚2.5nmのRuからなる保護膜22を成膜した。尚、多層反射膜21は、基板主表面の法線に対して、Si膜のスパッタ粒子の入射角度は5度、Mo膜のスパッタ粒子の入射角度は65度なるようにイオンビームスパッタリング法により成膜した。
【0176】
得られた多層反射膜付き基板20の保護膜22の表面について、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の任意の箇所の1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定したところ、その表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(Rms)は0.141nm、最大高さ(Rmax)は1.49nmであった。また、空間周波数1μm
−1以上10μm
−1以下のパワースペクトル密度は20nm
4以下で、最大値は14.4nm
4、最小値は0.13nm
4であった。また、空間周波数10μm
−1以上100μm
−1以下のパワースペクトル密度は9nm
4以下で、最大値7.64nm
4、最小値0.09nm
4であった。
【0177】
検査光源波長193nmの高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件で、本実施例1の多層反射膜付き基板20の保護膜表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した。この結果、疑似欠陥を含む欠陥検出個数は、合計19,132個であり、従来の欠陥検出個数100,000個超と比較して疑似欠陥が大幅に抑制された。また、EUV光に対する反射率を測定したところ、65%と良好な結果が得られた。
【0178】
また、検査光源波長266nmの高感度欠陥検査装置(レーザーテック社製「MAGICS M7360」)、及び検査光源波長13.5nmの高感度欠陥検査装置を使用して、本実施例1の多層反射膜表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した結果、欠陥検出個数の合計は、いずれも100,000個を下回り、致命欠陥の検査が可能であった。尚、検査光源波長266nmの高感度欠陥検査装置(レーザーテック社製「MAGICS M7360」)では最高の検査感度条件で、検査光源波長13.5nmの高感度欠陥検査装置では、球相当直径20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件にて欠陥検査を行った。
【0179】
尚、本実施例1の多層反射膜付き基板20の保護膜22及び多層反射膜21に対して、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の外側4箇所に、上記欠陥の位置を座標管理するための基準マークを集束イオンビームにより形成した。
【0180】
<EUV露光用反射型マスクブランクの作製>
上述した多層反射膜付き基板20の多層反射膜21を形成していない裏面に、DCマグネトロンスパッタリング法により、裏面導電膜23を形成した。当該裏面導電膜23は、Crターゲットを多層反射膜付き基板20の裏面に対向させ、Ar+N
2ガス(Ar:N2=90%:10%)雰囲気中で反応性スパッタリングを行った。ラザフォード後方散乱分析法により裏面導電膜23の元素組成を測定したところ、Cr:90原子%、N:10原子%であった。また、裏面導電膜23の膜厚は20nmであった。
【0181】
さらに、上述した多層反射膜付き基板20の保護膜22の表面に、DCマグネトロンスパッタリング法により、TaBN膜からなる吸収体膜24を成膜し、反射型マスクブランク30を作製した。当該吸収体膜24は、TaBターゲット(Ta:B=80:20)に多層反射膜付き基板20の吸収体膜24を対向させ、Xe+N
2ガス(Xe:N
2=90%:10%)雰囲気中で反応性スパッタリングを行った。ラザフォード後方散乱分析法により吸収体膜24の元素組成を測定したところ、Ta:80原子%、B:10原子%、N:10原子%であった。また、吸収体膜24の膜厚は65nmであった。尚、吸収体膜24の結晶構造をX線回折装置(XRD)により測定したところ、アモルファス構造であった。
【0182】
<反射型マスクの作製>
上述した吸収体膜24の表面に、スピンコート法によりレジストを塗布し、加熱及び冷却工程を経て、膜厚150nmのレジスト膜25を成膜した。次いで、所望のパターンの描画及び現像工程を経て、レジストパターン形成した。当該レジストパターンをマスクにして、Cl
2+Heガスのドライエッチングにより、吸収体膜24であるTaBN膜のパターニングを行い、保護膜22上に吸収体パターン27を形成した。その後、レジスト膜25を除去し、上記と同様の薬液洗浄を行い、反射型マスク40を作製した。尚、上述の描画工程においては、上記基準マークを元に作成された欠陥データに基づいて、欠陥データと被転写パターン(回路パターン)データとを元に、致命欠陥が存在している箇所に吸収体パターン27が配置されるように描画データを補正して、反射型マスク40を作製した。得られた反射型マスク40について、高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して欠陥検査を行ったところ、欠陥は確認されなかった。
【0183】
[実施例2]
<マスクブランク用基板の作製>
実施例1と同様に、EUV露光用のマスクブランク用基板10として、大きさが152.4mm×152.4mm、厚さが6.35mmのSiO
2−TiO
2系のガラス基板を準備し、実施例1と同様に、ガラス基板の表裏面について、両面研磨装置による研磨から磁気粘弾性流体研磨加工法による局所表面加工処理までの工程を行った。
【0184】
その後、局所表面加工処理の仕上げ研磨として、ガラス基板の表裏面に非接触研磨を実施した。本実施例2では、非接触研磨としてEEM(Elastic Emission Machining)を行った。このEEMは、以下の加工条件で行った。
加工液(1段階目):アルカリ水溶液(NaOH)+微細分粒子(濃度:5wt%)
加工液(2段階目):純水
微細粉末粒子:コロイダルシリカ、平均粒径:約100nm
回転体:ポリウレタンロール
回転体回転数:10〜300rpm
ワークホルダ回転数:10〜100rpm
研磨時間:5〜30分
【0185】
本実施例2により得られたEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面において、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の任意の箇所の1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定したところ、二乗平均平方根粗さ(Rms)は0.10nm、最大高さ(Rmax)は1.0nmであった。また、得られたEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面をパワースペクトル解析した結果を、
図7、
図8のグラフ中「▲」で示す。
【0186】
図7、
図8に示すように、本実施例2のEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面における1μm×1μmの領域を、原子間力顕微鏡で測定して得られる空間周波数1μm
−1以上10μm
−1以下のパワースペクトル密度は、最大値7.40nm
4、最小値2.16nm
4であった。また、空間周波数10μm
−1以上100μm
−1以下のパワースペクトル密度は、最大値3.32nm
4、最小値2.13nm
4であった。これらの図が示すとおり、本実施例2のマスクブランク用基板の主表面の空間周波数1μm
−1以上、及び空間周波数1μm
−1以上10μm
−1以下におけるパワースペクトル密度は、10nm
4以下であった。
【0187】
検査光源波長193nmの高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件で、本実施例2のEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した。この結果、疑似欠陥を含む欠陥検出個数は、合計29,129個であり、従来の欠陥検出個数100,000個超と比較して疑似欠陥が大幅に抑制された。合計29,129個程度の欠陥検出個数であれば、異物や傷などの致命欠陥の有無を容易に検査することができる。
【0188】
また、検査光源波長266nmの高感度欠陥検査装置(レーザーテック社製「MAGICS M7360」)を使用して、最高の検査感度条件で、本実施例2のEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した結果、欠陥検出個数の合計は、いずれも100,000個を下回り、致命欠陥の検査が可能であった。
【0189】
上述したEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面に、実施例1と同様のSi膜とMo膜とを交互に積層した膜厚280nmの多層反射膜21を形成し、その表面に膜厚2.5nmのRuからなる保護膜22を成膜した。尚、多層反射膜21のイオンビームスパッタリング条件は、実施例1と同様とした。
【0190】
得られた多層反射膜付き基板20の保護膜22の表面について、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の任意の箇所の1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定したところ、その表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(Rms)は0.143nm、最大高さ(Rmax)は1.50nmであった。また、空間周波数1μm
−1以上10μm
−1以下のパワースペクトル密度は20nm
4以下で、最大値17.4nm
4、最小値0.14nm
4であった。また、空間周波数10μm
−1以上100μm
−1以下のパワースペクトル密度は9nm
4以下で、最大値8.62nm
4、最小値0.11nm
4であった。
【0191】
検査光源波長193nmの高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件で、本実施例2の多層反射膜付き基板20の保護表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した。この結果、疑似欠陥を含む欠陥検出個数は、合計30,011個であり、従来の欠陥検出個数100,000個超と比較して疑似欠陥が大幅に抑制された。
【0192】
また、検査光源波長266nmの高感度欠陥検査装置(レーザーテック社製「MAGICS M7360」)、及び検査波長13.5nmの高感度欠陥検査を使用して、本実施例2の多層反射膜表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した結果、欠陥検出個数の合計は、いずれも100,000個を下回り、致命欠陥の検査が可能であった。
【0193】
上述の実施例1と同様にして反射型マスクブランク30及び反射型マスク40を作製した。得られた反射型マスク40について、高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して欠陥検査を行ったところ、欠陥は確認されなかった。尚、検査光源波長266nmの高感度欠陥検査装置(レーザーテック社製「MAGICS M7360」)では最高の検査感度条件で、検査光源波長13.5nmの高感度欠陥検査装置では、球相当直径20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件にて欠陥検査を行った。
【0194】
[実施例3]
<マスクブランク用基板の作製>
本実施例3では、実施例1及び2と同様に、EUV露光用のマスクブランク用基板10として、大きさが152.4mm×152.4mm、厚さが6.35mmのSiO
2−TiO
2系のガラス基板を準備し、実施例2とほぼ同様の工程を経て、EUV露光用のマスクブランク用基板10を作製した。但し、本実施例3では、実施例2の局所表面加工処理の仕上げ研磨において、加工液に純水を用いた2段階目のEEM加工を省略した。
【0195】
本実施例3により得られたEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面において、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の任意の箇所の1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定したところ、二乗平均平方根粗さ(Rms)は0.11nm、最大高さ(Rmax)は1.2nmであった。また、得られたEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面をパワースペクトル解析した結果を、
図7、
図8のグラフ中「◆」で示す。
【0196】
図7、
図8に示すように、本実施例3のEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面における1μm×1μmの領域を、原子間力顕微鏡で測定して得られる空間周波数1μm
−1以上10μm
−1以下のパワースペクトル密度は、最大値10.00nm
4、最小値3.47nm
4であった。また、空間周波数10μm
−1以上100μm
−1以下のパワースペクトル密度は、最大値3.96nm
4、最小値2.56nm
4であった。これらの図が示すとおり、本実施例3のマスクブランク用基板の主表面の空間周波数1μm
−1以上、及び空間周波数1μm
−1以上10μm
−1以下におけるパワースペクトル密度は、10nm
4以下であった。
【0197】
検査光源波長193nmの高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件で、本実施例3のEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した。この結果、疑似欠陥を含む欠陥検出個数は、合計36,469個であり、従来の欠陥検出個数100,000個超と比較して疑似欠陥が大幅に抑制された。合計36,469個程度の欠陥検出個数であれば、異物や傷などの致命欠陥の有無を容易に検査することができる。
【0198】
また、検査光源波長266nmの高感度欠陥検査装置(レーザーテック社製「MAGICS M7360」)を使用して、最高の検査感度条件で、本実施例3のEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した結果、欠陥検出個数の合計は、いずれも100,000個を下回り、致命欠陥の検査が可能であった。
【0199】
<多層反射膜付き基板の作製>
上述したEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面に、実施例1と同様のSi膜とMo膜とを交互に積層した膜厚280nmの多層反射膜21を形成し、その表面に膜厚2.5nmのRuからなる保護膜22を成膜した。尚、多層反射膜21のイオンビームスパッタリング条件は、実施例1と同様とした。
【0200】
得られた多層反射膜付き基板20の保護膜22の表面について、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の任意の箇所の1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定したところ、その表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(Rms)は0.146nm、最大高さ(Rmax)は1.50nmであった。また、空間周波数1μm
−1以上10μm
−1以下のパワースペクトル密度は20nm
4以下で、最大値17.9nm
4、最小値0.16nm
4であった。また、空間周波数10μm
−1以上100μm
−1以下のパワースペクトル密度は9nm
4以下で、最大値8.76nm
4、最小値0.11nm
4であった。
【0201】
検査光源波長193nmの高感度欠陥検査装置(KLA−TencCor社製「Teron600シリーズ」)を使用して、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件で、本実施例3の多層反射膜付き基板20の保護膜表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した。この結果、疑似欠陥を含む欠陥検出個数は、合計38,856個であり、従来の欠陥検出個数100,000個超と比較して疑似欠陥が大幅に抑制された。
【0202】
また、検査光源波長266nmの高感度欠陥検査装置(レーザーテック社製「MAGICS M7360」)、及び検査光源波長13.5nmの高感度検査装置を使用して、本実施例3の多層反射膜表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した結果、欠陥検出個数の合計は、いずれも100,000個を下回り、致命欠陥の検査が可能であった。尚、検査光源波長266nmの高感度欠陥検査装置(レーザーテック社製「MAGICS M7360」)では最高の検査感度条件で、検査光源波長13.5nmの高感度欠陥検査装置では、球相当直径20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件にて欠陥検査を行った。
【0203】
上述の実施例1と同様にして反射型マスクブランク30及び反射型マスク40を作製した。得られた反射型マスク40について、高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して欠陥検査を行ったところ、欠陥は確認されなかった。
【0204】
尚、実施例2、3における局所表面加工処理の仕上げ研磨としての非接触研磨は、上述したEEMに限定されるものではない。例えば、フロートポリッシュ又は触媒基準エッチング法(Catalyst Referred Etching)を適用することができる。いずれにしても、ガラス基板の主表面の仕上げ研磨は、水ないし純水を使用した非接触研磨が好ましい。
【0205】
[比較例1]
<マスクブランク用基板の作製>
比較例1では、実施例2と同様に、EUV露光用のマスクブランク用基板10として、大きさが152.4mm×152.4mm、厚さが6.35mmのSiO
2−TiO
2系のガラス基板を準備した。
【0206】
そして、比較例1では、実施例2と異なり、局所表面加工処理の仕上げ研磨として、pH:0.5〜4の酸性に調整したコロイダルシリカ(平均粒径50nm、濃度5wt%)を含む研磨スラリーを使用した片面研磨装置による超精密研磨を行った後、濃度0.1wt%の水酸化ナトリウム(NaOH)を用いた洗浄を、洗浄時間300秒間行った。
【0207】
比較例1により得られたEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面において、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の任意の箇所の1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定したところ、二乗平均平方根粗さ(Rms)は0.11nm、最大高さ(Rmax)は1.0nmであった。また、得られたEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面をパワースペクトル解析した結果を、
図7、
図9のグラフ中「●」で示す。
【0208】
図7、
図9に示すように、比較例1のEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面における1μm×1μmの領域を、原子間力顕微鏡で測定して得られる空間周波数1μm
−1以上10μm
−1以下のパワースペクトル密度は、最大値14.81nm
4、最小値3.87nm
4であった。これらの図が示すとおり、比較例1のマスクブランク用基板の主表面の空間周波数1μm
−1以上、及び空間周波数1μm
−1以上10μm
−1以下におけるパワースペクトル密度の最大値は10nm
4を超えていた。
【0209】
検査光源波長193nmの高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件で、比較例1のEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した。この結果、疑似欠陥を含む欠陥検出個数は、合計100,000個を超え、異物や傷などの致命欠陥の有無を検査することができなかった。
【0210】
<多層反射膜付き基板の作製>
上述したEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面に、実施例1と同様のSi膜とMo膜とを交互に積層した膜厚280nmの多層反射膜21を形成し、その表面に膜厚2.5nmのRuからなる保護膜22を成膜した。尚、多層反射膜21のイオンビームスパッタリング条件は、実施例1と同様とした。
【0211】
得られた多層反射膜付き基板20の保護膜22の表面について、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の任意の箇所の1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定したところ、その表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(Rms)は0.165nm、最大高さ(Rmax)は1.61nmであった。また、空間周波数1μm
−1以上10μm
−1以下のパワースペクトル密度は20nm
4を超えており、最大値22.8nm
4、最小値0.19nm
4であった。また、空間周波数10μm
−1以上100μm
−1以下のパワースペクトル密度は9nm
4を超えており、最大値9.53nm
4、最小値0.12nm
4であった。
【0212】
検査光源波長193nmの高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件で、比較例1の多層反射膜付き基板20の保護膜表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した。この結果、疑似欠陥を含む欠陥検出個数は、合計100,000個を超え、異物や傷などの致命欠陥の有無を検査することができなかった。
【0213】
また、検査光源波長13.5nmの高感度欠陥検査装置を使用して、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件で、比較例1の多層反射膜表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した結果も同様であり、欠陥検出個数の合計は、100,000個を超え、致命欠陥の有無を検査することができなかった。上述の実施例1と同様にして反射型マスクブランク30及び反射型マスク40を作製した。得られた反射型マスク40について、高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して欠陥検査を行ったところ、欠陥は数十個確認されたが、欠陥修正装置により欠陥修正を行い、反射型マスクを得た。
【0214】
[比較例2]
比較例2では、実施例2と同様に、EUV露光用のマスクブランク用基板10として、大きさが152.4mm×152.4mm、厚さが6.35mmのSiO
2−TiO
2系のガラス基板を準備した。
【0215】
そして、比較例2では、実施例2と異なり、局所表面加工処理の仕上げ研磨として、pH:10のアルカリ性に調整したコロイダルシリカ(平均粒径50nm、濃度5wt%)を含む研磨スラリーを使用した片面研磨装置による超精密研磨を行った後、濃度0.2wt%のフッ酸(HF)を用いた洗浄を、洗浄時間を428秒間行った。
【0216】
比較例2により得られたEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面において、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の任意の箇所の1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定したところ、二乗平均平方根粗さ(Rms)は0.15nm、最大高さ(Rmax)は1.2nmであった。また、得られたEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面をパワースペクトル解析した結果を、
図7、
図9のグラフ中「■」で示す。
【0217】
図7、
図9に示すように、比較例2のEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面における1μm×1μmの領域を、原子間力顕微鏡で測定して得られる空間周波数1μm
−1以上10μm
−1以下のパワースペクトル密度は、最大値11.65nm
4、最小値5.16nm
4であった。また、空間周波数10μm
−1以上100μm
−1以下のパワースペクトル密度は、最大値7.20nm
4、最小値4.08nm
4であった。これらの図が示すとおり、比較例2のマスクブランク用基板の主表面の空間周波数1μm
−1以上、及び空間周波数1μm
−1以上10μm
−1以下におけるパワースペクトル密度の最大値は10nm
4を超えていた。
【0218】
検査光源波長193nmの高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件で、比較例2のEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した。この結果、疑似欠陥を含む欠陥検出個数は、合計100,000個を超え、異物や傷などの致命欠陥の有無を検査することができなかった。
【0219】
<多層反射膜付き基板の作製>
上述したEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面に、実施例1と同様のSi膜とMo膜とを交互に積層した膜厚280nmの多層反射膜21を形成し、その表面に膜厚2.5nmのRuからなる保護膜22を成膜した。尚、多層反射膜21のイオンビームスパッタリング条件は、実施例1と同様とした。
【0220】
得られた多層反射膜付き基板20の保護膜22の表面について、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の任意の箇所の1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定したところ、その表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(Rms)は0.173nm、最大高さ(Rmax)は1.56nmであった。また、空間周波数1μm
−1以上10μm
−1以下のパワースペクトル密度は20nm
4を超えており、最大値25.2nm
4、最小値0.27nm
4であった。また、空間周波数10μm
−1以上100μm
−1以下のパワースペクトル密度は9nm
4を超えており、最大値9.60nm
4、最小値0.15nm
4であった。
【0221】
検査光源波長193nmの高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件で、比較例2の多層反射膜付き基板20の保護膜表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した。この結果、疑似欠陥を含む欠陥検出個数は、合計100,000個を超え、異物や傷などの致命欠陥の有無を検査することができなかった。
【0222】
また、検査光源波長13.5nmの高感度欠陥検査装置を使用して、比較例2の多層反射膜表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した結果も同様であり、欠陥検出個数の合計は、いずれも100,000個を超え、致命欠陥の有無を検査することができなかった。尚、検査光源波長13.5nmの高感度欠陥検査装置では、球相当直径20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件にて欠陥検査を行った。上述の実施例1と同様にして反射型マスクブランク30及び反射型マスク40を作製した。得られた反射型マスク40について、高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して欠陥検査を行ったところ、欠陥は数十個確認されたが、欠陥修正装置により欠陥修正を行い、反射型マスクを得た。
【0223】
[実施例4]
次に、本発明に係るArFエキシマレーザー露光用のマスクブランク用基板、透過型マスクブランク、透過型マスクに関する実施例4について説明する。
【0224】
<マスクブランク用基板の作製>
実施例4では、実施例1〜3と同寸法の合成石英ガラス基板を使用した。これ以外は、上述した実施例2の<マスクブランク用基板の作製>と同様の工程を経て、ArFエキシマレーザー露光用のマスクブランク用基板10を作製した。
【0225】
本実施例4により得られたArFエキシマレーザー露光用のマスクブランク用基板1の主表面において、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の任意の箇所の1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定したところ、二乗平均平方根粗さ(Rms)は0.11nm、最大高さ(Rmax)は0.93nmであった。また、得られたArFエキシマレーザー露光用のマスクブランク用基板10の主表面をパワースペクトル解析した結果を、
図7、
図8のグラフ中「*」で示す。
【0226】
図7、
図8に示すように、本実施例4のArFエキシマレーザー露光用のマスクブランク用基板10の主表面における1μm×1μmの領域を、原子間力顕微鏡で測定して得られる空間周波数1μm
−1以上10μm
−1以下のパワースペクトル密度は、最大値8.72nm
4、最小値2.03nm
4であった。これらの図が示すとおり、本実施例3のマスクブランク用基板の主表面の空間周波数1μm
−1以上、及び空間周波数1μm
−1以上10μm
−1以下におけるパワースペクトル密度は、10nm
4以下であった。
【0227】
検査光源波長193nmの高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して、本実施例4のArFエキシマレーザー露光用のマスクブランク用基板10の主表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した。この結果、疑似欠陥を含む欠陥検出個数は、合計31,056個であり、従来の欠陥検出個数100,000個超と比較して疑似欠陥が大幅に抑制された。合計31,056個程度の欠陥検出個数であれば、異物や傷などの致命欠陥の有無を容易に検査することができる。
【0228】
<透過型マスクブランクの作製>
上述したArFエキシマレーザー露光用のマスクブランク用基板10を、DCマグネトロンスパッタ装置に導入し、その主表面にTaN層を成膜した。DCマグネトロンスパッタ装置内に、Xe+N
2の混合ガスを導入し、Taターゲットを用いたスパッタリング法を行った。これにより、当該マスクブランク用基板10の主表面に、膜厚44.9nmのTaN層を成膜した。
【0229】
次いで、DCマグネトロンスパッタ装置内のガスを、Ar+O
2の混合ガスに入れ替えて、再びTaターゲットを用いたスパッタリング法を行った。これにより、TaN層の表面に、膜厚13nmのTaO層を成膜し、マスクブランク用基板10上に2層からなる遮光性膜51を形成した透過型マスクブランク(バイナリー型マスクブランク)を得た。
尚、遮光性膜51の結晶構造をX線回折装置(XRD)により測定したところ、アモルファス構造であった。
【0230】
検査光源波長193nmの高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件で、本実施例4のマスクブランク用基板10上の遮光性膜51における132mm×132mmの領域を欠陥検査した。この結果、疑似欠陥を含む欠陥検出個数は、合計33,121個であり、従来の欠陥検出個数100,000個超と比較して疑似欠陥が大幅に抑制された。合計33,121個程度の欠陥検出個数であれば、異物や傷などの致命欠陥の有無を容易に検査することができる。
【0231】
<透過型マスクの作製>
上述した遮光性膜51の表面に、スピンコート法によりレジストを塗布し、加熱及び冷却工程を経て、膜厚150nmのレジスト膜25を成膜した。次いで、所望のパターンの描画及び現像工程を経て、レジストパターン形成した。当該レジストパターンをマスクにして、フッ素系(CHF
3)ガスを用いたドライエッチングを行い、TaO層をパターニングした後、続いて、塩素系(Cl
2)ガスのドライエッチングにより、TaN層のパターニングを行い、マスクブランク用基板10上に遮光性膜パターン61を形成した。その後、レジスト膜25を除去し、上記と同様の薬液洗浄を行い、透過型マスク60を作製した。得られた透過型マスク60について、高感度欠陥検査装置((KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して欠陥検査を行ったところ、欠陥は確認されなかった。
【0232】
[実施例5]
実施例1と同様に、EUV露光用のマスクブランク用基板10として、大きさが152.4mm×152.4mm、厚さが6.35mmのSiO
2−TiO
2系のガラス基板を準備し、実施例1と同様に、ガラス基板の表裏面について、両面研磨装置による研磨から磁気粘弾性流体研磨加工法による局所表面加工処理までの工程を行った。
【0233】
その後、局所表面加工処理の仕上げ研磨として、表面粗さ改善を目的として、コロイダルシリカ砥粒を用いた両面タッチ研磨を行った後、触媒基準エッチング法(CARE:Catalyst Referred Etching)による表面加工を行った。このCAREは、以下の加工条件で行った。
加工液:純水
触媒:白金
基板回転数:10.3回転/分
触媒定盤回転数:10回転/分
加工時間:50分
加工圧:250hPa
【0234】
その後、ガラス基板の端面をスクラブ洗浄した後、当該基板を王水(温度約65℃)が入った洗浄槽に約10分浸漬させ、その後、純水によるリンス、乾燥を行った。尚、王水による洗浄は、ガラス基板の表裏面に触媒である白金の残留物がなくなるまで、複数回行った。
【0235】
本実施例5により得られたEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面において、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の任意の箇所の1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定したところ、二乗平均平方根粗さ(Rms)は0.040nm、最大高さ(Rmax)は0.40nmであった。また得られたEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面をパワースペクトル解析した結果を、
図10のグラフ中「●」で示す。
【0236】
図10に示すように、本実施例5のEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面における1μm×1μmの領域を、原子間力顕微鏡で測定して得られる空間周波数1μm
−1以上10μm
−1以下のパワースペクトル密度は、最大値5.29nm
4、最小値1.15nmであった。また、空間周波数10μm
−1以上100μm
−1以下のパワースペクトル密度は、最大値1.18nm
4、最小値0.20nm
4であった。
図10が示すとおり、本実施例5のマスクブランク用基板の主表面の空間周波数1μm
−1以上、及び空間周波数1μm
−1以上10μm
−1以下におけるパワースペクトル密度は、10nm
4以下であった。
【0237】
検査光源波長193nmの高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件で、本実施例5のEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した。この結果、疑似欠陥を含む欠陥検出個数は、合計370個であり、従来の欠陥検出個数100,000個超と比較して疑似欠陥が大幅に抑制された。合計370個程度の欠陥検出個数であれば、異物や傷などの致命欠陥の有無を容易に検査することができる。
【0238】
また、検査光源波長266nmの高感度欠陥検査装置(レーザーテック社製「MAGICS M7360」)を使用して、最高の検査感度条件で、本実施例5のEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した結果、欠陥検出個数の合計は、いずれも100,000個を下回り、致命欠陥の検査が可能であった。
【0239】
<多層反射膜付き基板の作製>
上述したEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面に、実施例1と同様のSi膜とMo膜とを交互に積層した膜厚280nmの多層反射膜21を形成し、その表面に膜厚2.5nmのRuからなる保護膜22を成膜した。尚、多層反射膜21のイオンビームスパッタリング条件は、実施例1と同様とした。
【0240】
得られた多層反射膜付き基板20の保護膜22の表面について、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の任意の箇所の1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定したところ、その表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(Rms)は0.135nm、最大高さ(Rmax)は1.27nmであった。また、空間周波数1μm
−1以上10μm
−1以下のパワースペクトル密度は20nm
4以下で、最大値15.5nm
4、最小値0.09nm
4であった。また、空間周波数10μm
−1以上100μm
−1以下のパワースペクトル密度は9nm
4以下で、最大値7.51nm
4、最小値0.10nm
4であった。
【0241】
検査光源波長193nmの高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件で、本実施例5の多層反射膜付き基板20の保護表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した。この結果、疑似欠陥を含む欠陥検出個数は、合計13,512個であり、従来の欠陥検出個数100,000個超と比較して疑似欠陥が大幅に抑制された。
【0242】
また、検査光源波長266nmの高感度欠陥検査装置(レーザーテック社製「MAGICS M7360」)、及び検査波長13.5nmの高感度欠陥検査を使用して、本実施例2の多層反射膜表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した結果、欠陥検出個数の合計は、いずれも100,000個を下回り、致命欠陥の検査が可能であった。尚、検査光源波長266nmの高感度欠陥検査装置(レーザーテック社製「MAGICS M7360」)では最高の検査感度条件で、検査光源波長13.5nmの高感度欠陥検査装置では、球相当直径20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件にて欠陥検査を行った。
【0243】
上述の実施例1と同様にして反射型マスクブランク30及び反射型マスク40を作製した。得られた反射型マスク40について、高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して欠陥検査を行ったところ、欠陥は確認されなかった。
【0244】
[実施例6]
上述の実施例5において、多層反射膜21の成膜条件を、基板主表面の法線に対して、Si膜のスパッタ粒子の入射角度が30度、Mo膜のスパッタ粒子の入射角度が30度となるようにイオンビームスパッタリング法により成膜した以外は、実施例5と同様に、多層反射膜付き基板を作製した。
【0245】
得られた多層反射膜付き基板20の保護膜22の表面について、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の任意の箇所の1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定したところ、その表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(Rms)は0.116nm、最大高さ(Rmax)は1.15nmであった。また、空間周波数1μm
−1以上10μm
−1以下のパワースペクトル密度は20nm
4以下で、最大値9.98nm
4、最小値0.10nm
4であった。また、空間周波数10μm
−1以上100μm
−1以下のパワースペクトル密度は9nm
4以下で、最大値4.81nm
4、最小値0.12nm
4であった。
【0246】
検査光源波長193nmの高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件で、本実施例6の多層反射膜付き基板20の保護表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した。この結果、疑似欠陥を含む欠陥検出個数は、合計4,758個であり、従来の欠陥検出個数100,000個超と比較して疑似欠陥が大幅に抑制された。
【0247】
また、検査光源波長266nmの高感度欠陥検査装置(レーザーテック社製「MAGICS M7360」)、及び検査波長13.5nmの高感度欠陥検査を使用して、本実施例6の多層反射膜表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した結果、欠陥検出個数の合計は、いずれも100,000個を下回り、致命欠陥の検査が可能であった。尚、検査光源波長266nmの高感度欠陥検査装置(レーザーテック社製「MAGICS M7360」)では最高の検査感度条件で、検査光源波長13.5nmの高感度欠陥検査装置では、球相当直径20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件にて欠陥検査を行った。
【0248】
上述の実施例1と同様にして反射型マスクブランク30及び反射型マスク40を作製した。得られた反射型マスク40について、高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して欠陥検査を行ったところ、欠陥は確認されなかった。
【0249】
[実施例7]
上述の比較例1におけるEUV露光用のマスクブランク用基板に対して、上述の実施例6の成膜条件により多層反射膜21、および保護膜22を形成して多層反射膜付き基板を作製した。
【0250】
得られた多層反射膜付き基板20の保護膜22の表面について、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の任意の箇所の1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定したところ、その表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(Rms)は0.122nm、最大高さ(Rmax)は1.32nmであった。また、空間周波数1μm
−1以上10μm
−1以下のパワースペクトル密度は20nm
4以下で、最大値13.3nm
4、最小値0.07nm
4であった。また、空間周波数10μm
−1以上100μm
−1以下のパワースペクトル密度は9nm
4以下で、最大値6.74nm
4、最小値0.11nm
4であった。
【0251】
検査光源波長193nmの高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件で、本実施例7の多層反射膜付き基板20の保護膜表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した。この結果、疑似欠陥を含む欠陥検出個数は、合計10,218個であり、従来の欠陥検出個数100,000個超と比較して疑似欠陥が大幅に抑制された。また、EUV光に対する反射率を測定したところ、65%と良好な結果が得られた。
【0252】
また、検査光源波長266nmの高感度欠陥検査装置(レーザーテック社製「MAGICS M7360」)、及び検査光源波長13.5nmの高感度欠陥検査装置を使用して、本実施例6の多層反射膜付き基板20の保護膜表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した結果、欠陥検出個数の合計は、いずれも100,000個を下回り、致命欠陥の検査が可能であった。尚、検査光源波長266nmの高感度欠陥検査装置(レーザーテック社製「MAGICS M7360」)では最高の検査感度条件で、検査光源波長13.5nmの高感度欠陥検査装置では、球相当直径20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件にて欠陥検査を行った。
【0253】
さらに、上述の実施例1と同様にして反射型マスクブランク30及び反射型マスク40を作製した。得られた反射型マスク40について、高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して欠陥検査を行ったところ、欠陥は確認されなかった。
【0254】
<半導体装置の製造方法>
次に、上述の実施例1〜7、比較例1〜2の反射型マスク、透過型マスクを使用し、露光装置を使用して、半導体基板である被転写体上のレジスト膜にパターン転写を行い、その後、配線層をパターニングして、半導体装置を作製した。その結果、実施例1〜7の反射型マスク及び透過型マスクを使用した場合には、パターン欠陥はなく、半導体装置を作製することができたが、比較例1〜2の反射型マスクを使用した場合には、パターン欠陥が発生し、半導体装置の不良が発生した。これは、マスクブランク用基板、多層反射膜付き基板、反射型マスクブランク、及び反射型マスクにおける欠陥検査において、致命欠陥が疑似欠陥に埋もれて検出できなかったことにより、適正な描画補正、マスク修正が行われなかったことにより、反射型マスクに致命欠陥が存在したことによるものであった。
【0255】
尚、上述の多層反射膜付き基板20、反射型マスクブランク30の作製において、マスクブランク用基板10の転写パターンが形成される側の主表面に、多層反射膜21及び保護膜22を成膜した後、上記主表面とは反対側の裏面に裏面導電膜23を形成したがこれに限らない。マスクブランク用基板10の転写パターンが形成される側の主表面とは反対型の主表面に裏面導電膜23を形成した後、転写パターンが形成される側の主表面に、多層反射膜21や、さらに保護膜22を成膜して多層反射膜付き基板20、さらに保護膜22上に吸収体膜24を成膜して反射型マスクブランク30を作製しても構わない。