(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
合成床版の施工においては、上述の通り養生期間が必要であり、工程に占める割合が大きいという課題があるが、交通量の多い高速道路等において、合成床版への取り替え工事が実施される場合には、通行止め等の規制による交通状況への悪影響をできるだけ小さくできるように、工期の短縮化の要請がある。また、合成床版は、鋼桁等で支持されて負担を軽減できることが望ましいため、できるだけ軽量であることが求められている。
【0005】
そこで、軽量で、かつ、短い養生期間で十分な強度が得られる早強性軽量コンクリートを簡単に製造することができれば、これを合成床版の製造に適用することにより、上記のような要請に応えることが可能となるが、従来方法による場合、高価な材料が必要となったり、また、特殊な方法を実施する必要があるなどの問題がある。
【0006】
本発明は、このような従来技術における問題を解決しようとするものであって、高価な材料を用いることなく、また、特殊な方法を採用することなく、軽量で、自己収縮が小さく、かつ、短い養生期間で十分な圧縮強度を得ることができる早強性軽量コンクリートの製造方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る早強性軽量コンクリートの製造方法は、水、セメント、普通細骨材、及び、軽量粗骨材を混合し、練り混ぜ、打設し、養生してコンクリートを製造する方法において、セメントとして、早強ポルトランドセメント(JIS R5210に規定される早強ポルトランドセメント)を使用し、軽量粗骨材として、絶乾密度が1.0g/cm
3以上1.5g/cm
3未満の人工軽量粗骨材を使用し、単位セメント量を350〜500kg/m
3とし、水/セメント比を35〜45重量%とし、普通細骨材量を600〜920kg/m
3とし、軽量粗骨材量を400〜800kg/m
3とすることを特徴としている。
【0008】
尚、この方法において、軽量粗骨材については、骨材工場で事前吸水された高含水状態のものを用い、更に、プレウェッティングを行って吸水させた状態で他の材料と混合することが好ましい。
【0009】
また、原料として、更に軽量細骨材を混合してもよく、この場合、軽量細骨材として、絶乾密度が1.3g/cm
3以上1.8g/cm
3未満の人工軽量細骨材を使用し、普通細骨材量を150〜700kg/m
3とし、軽量細骨材量を120〜520kg/m
3(普通細骨材容積:軽量細骨材容積=25:75〜75:25)とすることが好ましい。この場合も、軽量骨材(軽量細骨材及び軽量粗骨材)については、骨材工場で事前吸水された高含水状態のものを用い、更に、プレウェッティングを行って吸水させた状態で他の材料と混合することが好ましい。
【0010】
また、原料を混合する際には、更に化学混和剤を適量混合することもできる。
【0011】
また、本発明に係る床版の製造方法は、上記方法を実施することによって、底鋼板又は型枠の上に早強性軽量コンクリートの層を形成することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る早強性軽量コンクリートの製造方法によれば、材齢2日で、即ち、打設後2日という短い養生期間で、圧縮強度が30N/mm
2以上、単位重量が18〜20kN/m
3の早強性軽量コンクリートを製造することができる。
【0013】
尚、材齢2日経過時点で養生を打ち切っても、軽量骨材に含まれる水による「自己養生効果」により、長期強度の増進が得られる。更に、材齢28日では、通常の重量のコンクリートと同程度以上の引張強度、及び、せん断強度が得られるという効果も期待することができる。また、コンクリートの打設後、特に湿潤養生を行わない場合においても、自己収縮が生じることはない。
【0014】
また、本発明による場合、汎用的な材料を用いて(高価な材料を用いることなく)、一般的な方法で早強性軽量コンクリートを製造することができるため、従来の軽量コンクリートと同程度のコストで実施することができる。更に、本発明による場合、硬化前のコンクリート(生コンクリート)を施工現場まで運搬し、ポンプ圧送により供給することができ、打設作業を円滑に、かつ、効率的に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の第一実施形態に係る「早強性軽量コンクリートの製造方法」は、水、セメント、普通細骨材、及び、軽量粗骨材を混合し、練り混ぜ、打設し、養生してコンクリートを製造する方法において、セメントとして、早強ポルトランドセメント(JIS R5210)を使用し、軽量粗骨材として、絶乾密度が1.0g/cm
3以上1.5g/cm
3未満の人工軽量粗骨材(JIS A5002 構造用コンクリート骨材M品(粗骨材))を使用し、単位セメント量を350〜500kg/m
3とし、水/セメント比を35〜45重量%とし、普通細骨材量を600〜920kg/m
3とし、軽量粗骨材量を400〜800kg/m
3とすることを特徴とするものである。
【0016】
尚、普通細骨材としては、山砂、石灰砕砂、或いは、その他の一般的な細骨材を使用することができる。また、軽量骨材(軽量粗骨材)としては、骨材工場で事前吸水された高含水状態のものを用い、更に、材料を混合する際には、軽量骨材(軽量粗骨材)に対してプレウェッティングを行い、軽量粗骨材を予め十分に吸水させた状態で他の材料と混合する。これにより、自己収縮を低減することができるほか、ポンプ圧送性を確保することができる。また、原料の混合に際しては、耐久性や施工性に応じて、化学混和剤を適宜混合することもできる。
【0017】
上記方法を実施することにより、材齢2日で、即ち、打設後2日(48時間)という短い養生期間で、圧縮強度が30N/mm
2以上、単位重量が18〜20kN/m
3の早強性軽量コンクリートを製造することができる。
【0018】
尚、軽量粗骨材として、絶乾密度が1.0g/cm
3未満のもの(JIS A5002 構造用コンクリート骨材L品(粗骨材))を使用した場合、早強性を十分に得られないという問題があり、また、絶乾密度が1.5g/cm
3以上のもの(JIS A5002 構造用コンクリート骨材H品(粗骨材))を使用した場合、軽量性を十分に得られないという問題があるため、上述の通り本実施形態においては、絶乾密度が1.0g/cm
3以上1.5g/cm
3未満の軽量粗骨材(JIS A5002 構造用コンクリート骨材M品(粗骨材))を使用している。更に、天然軽量粗骨材を使用する場合には、早強性を十分に得られないという問題があるため、本実施形態においては、人工軽量粗骨材を使用している。
【0019】
また、単位セメント量を350kg/m
3未満とすると、早強性を十分に得られないという問題があり、また、500kg/m
3を超えると、自己収縮が生じるという問題があるため、上述の通り本実施形態においては、単位セメント量を350〜500kg/m
3としている。
【0020】
水/セメント比については、35重量%未満とすると、自己収縮が生じるという問題があり、また、45重量%を超えると、早強性を十分に得られないという問題があるため、上述の通り本実施形態においては、35〜45重量%としている。
【0021】
普通細骨材量については、600kg/m
3未満とすると、早強性を十分に得られないという問題があり、また、920kg/m
3を超えると、軽量性を十分に得られないという問題があるため、上述の通り本実施形態においては、600〜920kg/m
3としている。
【0022】
軽量粗骨材量については、400kg/m
3未満とすると、軽量性を十分に得られないという問題があり、また、800kg/m
3を超えると、早強性を十分に得られないという問題があるため、上述の通り本実施形態においては、400〜800kg/m
3としている。
【0023】
本発明の第二実施形態に係る「早強性軽量コンクリートの製造方法」は、水、セメント、普通細骨材、軽量粗骨材、及び、軽量粗骨材を混合し、練り混ぜ、打設し、養生してコンクリートを製造する方法において、セメントとして、早強ポルトランドセメント(JIS R5210)を使用し、軽量細骨材として、絶乾密度が1.3g/cm
3以上1.8g/cm
3未満の人工軽量細骨材(JIS A5002 構造用コンクリート骨材M品(細骨材))を使用し、軽量粗骨材として、絶乾密度が1.0g/cm
3以上1.5g/cm
3未満の人工軽量粗骨材(JIS A5002 構造用コンクリート骨材M品(粗骨材))を使用し、単位セメント量を350〜500kg/m
3とし、水/セメント比を35〜45重量%とし、普通細骨材量を150〜700kg/m
3とし、軽量細骨材量を120〜520kg/m
3(普通細骨材容積:軽量細骨材容積=25:75〜75:25)とし、軽量粗骨材量を400〜800kg/m
3とし、これらの材料を練り混ぜ、打設し、養生することを特徴とするものである。
【0024】
尚、普通細骨材としては、山砂、石灰砕砂、或いは、その他の一般的な細骨材を使用することができる。また、軽量骨材(軽量細骨材及び軽量粗骨材)としては、骨材工場で事前吸水された高含水状態のものを用い、更に、材料を混合する際には、軽量骨材(軽量細骨材及び軽量粗骨材)に対してプレウェッティングを行い、軽量細骨材及び軽量粗骨材を予め十分に吸水させた状態で他の材料と混合する。これにより、自己収縮を低減することができるほか、ポンプ圧送性を確保することができる。また、原料の混合に際しては、耐久性や施工性に応じて、化学混和剤を適宜混合することもできる。
【0025】
上記方法を実施することにより、材齢2日で、即ち、打設後2日という短い養生期間で、圧縮強度が30N/mm
2以上、単位重量が18〜20kN/m
3の早強性軽量コンクリートを製造することができる。
【0026】
尚、軽量細骨材として、絶乾密度が1.3g/cm
3未満のもの(JIS A5002 構造用コンクリート骨材L品(細骨材))を使用した場合、早強性を十分に得られないという問題があり、また、絶乾密度が1.8g/cm
3以上のもの(JIS A5002 構造用コンクリート骨材H品(細骨材))を使用した場合、第一実施形態に比べ更なる軽量性を十分に得られないという問題があるため、上述の通り本実施形態においては、絶乾密度が1.3g/cm
3以上1.8g/cm
3未満の軽量細骨材(JIS A5002 構造用コンクリート骨材M品(細骨材))を使用している。更に、天然軽量細骨材を使用する場合には、早強性を十分に得られないという問題があるため、本実施形態においては、人工軽量細骨材を使用している。
【0027】
また、軽量粗骨材として、絶乾密度が1.0g/cm
3未満のもの(JIS A5002 構造用コンクリート骨材L品(粗骨材))を使用した場合、早強性を十分に得られないという問題があり、また、絶乾密度が1.5g/cm
3以上のもの(JIS A5002 構造用コンクリート骨材H品(粗骨材))を使用した場合、軽量性を十分に得られないという問題があるため、上述の通り本実施形態においては、絶乾密度が1.0g/cm
3以上1.5g/cm
3未満の軽量粗骨材(JIS A5002 構造用コンクリート骨材M品(粗骨材))を使用している。更に、天然軽量粗骨材を使用する場合には、早強性を十分に得られないという問題があるため、本実施形態においては、人工軽量粗骨材を使用している。
【0028】
また、単位セメント量を350kg/m
3未満とすると、早強性を十分に得られないという問題があり、また、500kg/m
3を超えると、自己収縮が生じるという問題があるため、上述の通り本実施形態においては、単位セメント量を350〜500kg/m
3としている。
【0029】
水/セメント比については、35重量%未満とすると、自己収縮が生じるという問題があり、また、45重量%を超えると、早強性を十分に得られないという問題があるため、上述の通り本実施形態においては、35〜45重量%としている。
【0030】
普通細骨材量については、150kg/m
3未満とすると、早強性を十分に得られないという問題があり、また、700kg/m
3を超えると、第一実施形態に比べ更なる軽量性を十分に得られないという問題があるため、上述の通り本実施形態においては、150〜700kg/m
3としている。
【0031】
軽量細骨材量については、120kg/m
3未満とすると、第一実施形態に比べ更なる軽量性を十分に得られないという問題があり、また、520kg/m
3を超えると、早強性を十分に得られないという問題があるため、上述の通り本実施形態においては、120〜520kg/m
3としている。
【0032】
軽量粗骨材量については、400kg/m
3未満とすると、軽量性を十分に得られないという問題があり、また、800kg/m
3を超えると、早強性を十分に得られないという問題があるため、上述の通り本実施形態においては、400〜800kg/m
3としている。
【0033】
本発明の第三実施形態に係る「合成床版の製造方法」は、上記第一実施形態又は第二実施形態に係る早強性軽量コンクリートの製造方法を実施することにより、底鋼板の上に早強性軽量コンクリートの層を形成することを特徴とするものである。
【実施例】
【0034】
以下、本発明の発明者らが行った各種試験の結果を、本発明の実施例として説明する。
【0035】
まず、水、早強ポルトランドセメント、普通細骨材(山砂)、及び、人工軽量粗骨材(絶乾密度:1.0g/cm
3以上1.5g/cm
3未満、骨材工場で事前吸水された高含水状態のもの、プレウェッティング実施)を、表1に示す3通りの配合比率(実施例1〜3)で混合し、練り混ぜ、試験型枠内に打設した。尚、実施例1〜3の配合比率は、いずれも上記第一実施形態において説明した配合比率の範囲内となっている。
【0036】
【表1】
【0037】
打設後、養生期間として2日(48時間)が経過した時点で、それぞれの圧縮強度を計測したところ、実施例1〜3のいずれについても、設計強度である30N/mm
2を超えていることが確認された。
【0038】
また、5日経過時点まで、1日毎に収縮量の計測を行ったところ、実施例1〜3のいずれについても、収縮は認められなかった。人工軽量粗骨材として骨材工場で事前吸水された高含水状態のものを用い、更に、材料の混合に際して、人工軽量粗骨材に対してプレウェッティングを実施したことにより、収縮を回避できたものと考えられる。尚、表1からも明らかなように、実施例1〜3においては、膨張材は一切配合されていない。そして上記結果より、本発明に係る方法においては、収縮を回避するために膨張材を配合する必要はない、つまり、膨張材の配合を省略することができる、という効果を期待できることが確認された。
【0039】
次に、水、早強ポルトランドセメント、普通細骨材(山砂)、人工軽量細骨材(絶乾密度:1.3g/cm
3以上1.8g/cm
3未満、骨材工場で事前吸水された高含水状態のもの、プレウェッティング実施)、及び、人工軽量粗骨材(絶乾密度:1.0g/cm
3以上1.5g/cm
3未満、骨材工場で事前吸水された高含水状態のもの、プレウェッティング実施)を、表2に示す3通りの配合比率(実施例4〜6)で混合し、練り混ぜ、試験型枠内に打設した。尚、実施例4〜6の配合比率は、いずれも上記第二実施形態において説明した配合比率の範囲内となっている。
【0040】
【表2】
【0041】
打設後、養生期間として2日(48時間)が経過した時点で、それぞれの圧縮強度を計測したところ、実施例4〜6のいずれについても、設計強度である30N/mm
2を超えていることが確認された。
【0042】
また、5日経過時点まで、1日毎に収縮量の計測を行ったところ、実施例4〜6のいずれについても、収縮は認められなかった。人工軽量細骨材及び人工軽量粗骨材として骨材工場で事前吸水された高含水状態のものを用い、更に、材料の混合に際して、人工軽量細骨材、及び、人工軽量粗骨材に対してプレウェッティングを実施したことにより、収縮を回避できたものと考えられる。尚、表2からも明らかなように、実施例4〜6においても、膨張材は一切配合されていない。そして上記結果より、本発明に係る方法においては、収縮を回避するために膨張材を配合する必要はない、つまり、膨張材の配合を省略することができる、という効果を期待できることが確認された。