(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1〜11のいずれか一項に記載の少なくとも1つの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物と、1つまたは複数の薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む、薬学的組成物。
請求項14〜20のいずれか一項に記載の少なくとも1つの18F化合物またはその薬学的に許容される塩と、1つまたは複数の薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む、薬学的組成物。
対象においてKCNQ2/3カリウムチャネルの機能状態を、陽電子放射断層撮影を使用してイメージングするための、またはそれを必要とする対象において神経伝達障害、CNS障害、認知障害、または神経変性疾患を、陽電子放射断層撮影を使用してイメージングするための薬学的組成物であって、請求項14〜20のいずれか一項に記載の18F化合物またはその薬学的に許容される塩の有効量を含む、薬学的組成物。
【発明を実施するための形態】
【0009】
発明の詳細な説明
本発明においては以下の定義を使用する(別途明示されない限り)。
【0010】
「本発明の化合物(a compound)」または「本発明の化合物(compounds)」という用語は、本明細書に開示される化合物を意味し、例えば、本発明の化合物は、式A、I、II、III、もしくはIVを含む本明細書に記載のいずれかの式の化合物、および/または本明細書に明確に開示される化合物を含む。その用語が本発明の文脈で使用される場合はいつでも、遊離塩基、重水素標識化合物、および対応するその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を、状況下でそれらが可能および/または適切であるという条件で意味するものと理解すべきである。本発明の化合物中の1つまたは複数のフッ素原子は非放射性である。
【0011】
「本発明の18F化合物(an 18F compound)」または「本発明の18F化合物(18F compounds)」という用語は、本明細書に開示される化合物を意味し、例えば、本発明の18F化合物は、式V、VI、VII、VIII、もしくはIXを含む本明細書に記載のいずれかの式の18F化合物、および/または本明細書に明確に開示される18F化合物を含む。その用語が本発明の文脈で使用される場合はいつでも、遊離塩基および対応するその薬学的に許容される塩を、状況下でそれらが可能および/または適切であるという条件で意味するものと理解すべきである。やはり非放射性フッ素を含む本発明の18F化合物では、非放射性フッ素を19Fと呼ぶ。
【0012】
本明細書において形容詞として使用する場合の「薬学的」または「薬学的に許容される」という用語は、レシピエントに対して実質的に無毒かつ実質的に無害であることを意味する。
【0013】
さらに「薬学的製剤」とは、担体、溶媒、賦形剤、および塩が製剤の有効成分(例えば本発明の化合物)と適合しければならないことを意味する。当業者は、「薬学的製剤」および「薬学的組成物」という用語が一般に互換的であり、本出願においてそのように使用されるということを理解する。
【0014】
本発明のいくつかの化合物は非溶媒和形および溶媒和形、例えば水和物として存在しうる。
【0015】
「溶媒和物」とは、化学量論的量または非化学量論的量の溶媒を含有する溶媒付加体を意味する。いくつかの化合物は、固定されたモル比の溶媒分子を結晶性固体中に捕捉することで溶媒和物を形成する傾向を有する。溶媒が水である場合、形成される溶媒和物は水和物であり、溶媒がアルコールである場合、形成される溶媒和物はアルコール和物である。水和物は、1つもしくは複数の水分子と、水がその分子状態をH
2Oとしてその中で保持する1つの物質との組み合わせによって形成され、そのような組み合わせは1つもしくは複数の水和物を形成可能である。水和物において、水分子は分子間力による副原子価結合、特に水素橋状結合を通じて結合する。固体水和物は水をいわゆる結晶水として化学量論比で含有し、ここで水分子はそれらの結合状態と同等である必要はない。水和物の例としてはセスキ水和物、一水和物、二水和物または三水和物がある。本発明の化合物の塩の水和物も同等に好適である。
【0016】
本発明はまた、本明細書に記載の化合物の代謝産物を含む。
【0017】
生理学的に許容される、すなわち薬学的に適合性のある塩は、本発明の化合物と無機酸または有機酸との塩でありうる。例えば塩酸、臭化水素酸、リン酸または硫酸などの無機酸との塩、あるいは例えば酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、安息香酸、またはメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸もしくはナフタレンジスルホン酸などの有機カルボン酸またはスルホン酸との塩が好ましい。
【0018】
言及されうる他の薬学的に適合性のある塩は、例えばアルカリ金属塩(例えばナトリウム塩もしくはカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えばカルシウム塩もしくはマグネシウム塩)、あるいはアンモニアまたは例えばジエチルアミン、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、プロカイン、ジベンジルアミン、N-メチルモルホリン、デヒドロアビエチルアミンもしくはメチルピペリジンなどの有機アミンに由来するアンモニウム塩などの、通常の塩基との塩である。
【0019】
本明細書において使用される「処置する」、「処置すること」、または「処置」という用語は、疾患、障害、または状態の症状、マーカーおよび/または任意の負の作用を、現在その状態を有する患者において任意の認識可能な程度で減少させることを意味する。「処置する」、「処置すること」、または「処置」という用語は、疾患、障害、または状態の症状を軽減すること、例えばてんかんの症状を軽減することを含む。いくつかの態様では、疾患、障害、および/または状態を発生させる危険性を減少させるために、状態の初期徴候のみを示す対象に対して処置を実施することができる。
【0020】
本明細書において使用される「予防する」、「予防」、または「予防すること」という用語は、疾患、障害、および/または状態の1つもしくは複数の症状または特徴の発症を部分的もしくは完全に予防するかまたは遅延させる任意の方法を意味する。疾患、障害および/または状態の徴候を示さない対象に対して予防を実施することができる。
【0021】
本明細書において使用される「対象」とは、ヒトまたは動物(動物の場合、より典型的には哺乳動物)を意味する。一局面では、対象はヒトである。一局面では、対象は雄である。一局面では、対象は雌である。
【0022】
本明細書において使用される「フッ素化誘導体」という用語は、少なくとも1個の原子がフッ素原子、または少なくとも1個のフッ素原子を含有する原子群で置き換えられている以外は当初の化合物と同一の化学構造を有する誘導体化合物のことである。
【0023】
本発明によって解決される課題は、KCNQ2/3カリウムチャネル開口によって寛解するてんかんおよび/または他の状態の処置および/または予防用の新規化合物の同定である。てんかんおよび関連障害用の薬物が利用可能であるが、これらの薬物は多くの場合、多様な理由で多くの患者に好適ではない。多くのてんかん薬は有害作用に関連している。例えば、利用可能なてんかん薬の多くは、妊娠初期の間に服用される場合、先天性欠損の危険性を著しく増大させると考えられる。他の有害な副作用としては尿閉、幻覚、および精神病を含む精神神経症状、眩暈および傾眠、QT延長作用、ならびに自殺行動および観念化の危険性の増大が挙げられる。いくつかのてんかん薬は、不活性の代謝産物または作用の弱い代謝産物に大きく代謝されることから、高用量の投与を必要とする。本発明は、KCNQ2/3カリウムチャネル開口によって寛解するてんかんおよび他の状態を処置するための新規フッ素化2-アミノ-4-(ベンジルアミノ)フェニルカルバメート化合物という解決策を提供する。本明細書に記載のフッ素化化合物は、有効性、選択性、組織浸透、半減期および/または代謝安定性の改善を示すという利点を有する。
【0024】
本発明はまた、疾患過程の存在、程度、または治療応答を診断するために対象をイメージングする方法において有用な18F化合物を提供する。本発明の化合物はニューロンカリウムチャネルKCNQ2/3の正のアロステリックモジュレーターとして高い親和性で結合する。本発明のF-19化合物の分布のイメージングは、そのF-18同類物の作製、または置換実験もしくはブロッキング実験によって行うことができ、KCNQ2/3チャネル開口薬を投与する効果は、F-18 KCNQ2/3チャネル開口薬の画像の結果的な変化によって確認される。正のアロステリック部位に結合するKCNQ2/3チャネル開口薬の能力、またはKCNQ2/3チャネルの空間分布と、てんかんなどの特定の疾患過程、または患者においてその疾患が発生する傾向との相関は現在不明であるが、非侵襲的イメージング手段を有することは任意の相関を決定する上で役立ちうる。F-18標識KCNQ2/3チャネル開口薬は現在公知ではない。
【0025】
本発明の化合物
本発明は、新規フッ素化2-アミノ-4-(ベンジルアミノ)フェニルカルバメート誘導体およびそれらの使用に関する。本発明はまた、新規18F含有2-アミノ-4-(ベンジルアミノ)フェニルカルバメート誘導体、エチル {2-アミノ-6-[(ベンジル)アミノ]ピリジン-3-イル}カルバメート誘導体、およびそれらの使用に関する。本発明は、フッ素化2-アミノ-4-(ベンジルアミノ)フェニルカルバメート誘導体の合成に関する。本発明はまた、18F含有2-アミノ-4-(ベンジルアミノ)フェニルカルバメート誘導体およびエチル {2-アミノ-6-[(ベンジル)アミノ]ピリジン-3-イル}カルバメート誘導体の合成に関する。
【0026】
本発明は、式Aの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を提供する。
式中、X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、X
7、およびX
8はそれぞれ独立して水素、重水素、およびFより選択され;
X
9およびX
10はそれぞれ独立して水素および重水素より選択され;
nは1、2、または3であるが、但し、X
6がFである場合、X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
7、およびX
8はすべて水素であるわけではない。一局面では、本発明は、少なくとも1個のフッ素原子を有する式Aの化合物を提供する。
【0027】
本発明のすべての化合物が有用であるが、特定のクラスが好ましい。以下の項目では式Aの化合物の特定の好ましいクラスを記載し、式中、
(a-a) X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、X
7、およびX
8のうち少なくとも1つはFであり;
(b-a) X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
7、およびX
8のうち1つはFであり;
(c-a) X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、X
7、およびX
8のうち2つはFであり;
(d-a) X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、X
7、およびX
8のうち3つはFであり;
(e-a) 残りのX
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、X
7、および/またはX
8はそれぞれ水素であり;
(f-a) 残りのX
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、X
7、および/またはX
8のうち1つもしくは複数は重水素であり;
(g-a) X
10およびX
9は重水素であり;
(h-a) nは1であり;
(i-a) nは2であり;かつ
(j-a) X
10およびX
9は水素である。
【0028】
本発明は、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を提供する。
式中、X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、X
7、およびX
8はそれぞれ独立して水素、重水素、およびFより選択されるが、但し、X
6がFである場合、X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
7、およびX
8はすべて水素であるわけではない。一局面では、本発明は、少なくとも1個のフッ素原子を有する式Iの化合物を提供する。
【0029】
本発明のすべての化合物が有用であるが、特定のクラスが好ましい。以下の項目では式Iの化合物の特定の好ましいクラスを記載し、式中、
(a) X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、X
7、およびX
8のうち少なくとも1つはFであり;
(b) X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
7、およびX
8のうち1つはFであり;
(c) X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、X
7、およびX
8のうち2つはFであり;
(d) X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、X
7、およびX
8のうち3つはFであり;
(e) 残りのX
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、X
7、および/またはX
8はそれぞれ水素であり;かつ
(f) 残りのX
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、X
7、および/またはX
8のうち1つもしくは複数は重水素である。
【0030】
一局面では、本発明は、式IIの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を提供する。
式中、X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
7、およびX
8はそれぞれ独立して水素、重水素、およびFより選択されるが、但し、X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
7、およびX
8はすべて水素であるわけではない。
【0031】
以下の項目では式IIの化合物の特定の好ましいクラスを記載し、式中、
(a-1) X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
7、およびX
8のうち少なくとも1つはフッ素であり;
(b-1) X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
7、およびX
8のうち1つはフッ素であり;
(c-1) X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
7、およびX
8のうち2つはフッ素であり;
(d-1) 残りのX
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
7、および/またはX
8はそれぞれ水素であり;かつ
(e-1) 残りのX
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
7、および/またはX
8のうち1つもしくは複数は重水素である。
【0032】
一局面では、本発明は、式IIIの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を提供する。
式中、X
4、X
5、X
6、X
7、およびX
8はそれぞれ独立して水素、重水素、およびFより選択されるが、但し、X
6がFである場合、X
4、X
5、X
7、およびX
8はすべて水素であるわけではない。
【0033】
以下の項目では式IIIの化合物の特定の好ましいクラスを記載し、式中、
(a-2) X
4、X
5、X
7、およびX
8のうち少なくとも1つはフッ素であり;
(b-2) X
4、X
5、X
7、およびX
8のうち1つはフッ素であり;
(c-2) X
4、X
5、X
6、X
7、およびX
8のうち2つはフッ素であり;
(d-2) X
4はフッ素であり;
(e-2) X
5はフッ素であり;
(f-2) X
7はフッ素であり;
(g-2) X
8はフッ素であり;
(h-2) 残りのX
4、X
5、X
6、X
7、および/またはX
8はそれぞれ水素であり;かつ
(i-2) 残りのX
4、X
5、X
6、X
7、および/またはX
8のうち1つもしくは複数は重水素である。
【0034】
一局面では、本発明は、式IVの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を提供する。
式中、X
1、X
2、X
3、およびX
6はそれぞれ独立して水素、重水素、およびFより選択されるが、但し、X
6がFである場合、X
1、X
2、およびX
3はすべて水素であるわけではない。一局面では、本発明は、少なくとも1個のフッ素原子を有する式IVの化合物を提供する。
【0035】
以下の項目では式IVの化合物の特定の好ましいクラスを記載し、式中、
(a-3) X
1、X
2、およびX
3のうち1つはフッ素であり;
(b-3) X
1、X
2、およびX
3のうち1つはフッ素であり;
(c-3) X
1、X
2、およびX
3のうち2つはフッ素であり;
(d-3) X
1はフッ素であり;
(e-3) X
2はフッ素であり;
(f-3) X
3はフッ素であり;
(g-3) X
6はフッ素であり、かつX
1、X
2、およびX
3のうち1つはフッ素であり;
(h-3) X
6は水素であり、かつX
1、X
2、およびX
3のうち少なくとも1つはフッ素であり;
(i-3) X
2およびX
3はフッ素であり;
(j-3) 残りのX
1、X
2、および/またはX
3はそれぞれ水素であり;かつ
(k-3) 残りのX
1、X
2、および/またはX
3のうち1つもしくは複数は重水素である。
【0036】
上記クラスを組み合わせることでさらなるクラスを、例えば置換基2個またはそれ以上に関する選択の組み合わせとして形成することができると理解されよう。
【0037】
例えば、式Aでは、クラス(e-a)をクラス(a-a)、(b-a)、(c-a)、または(d-a)のうち1つと組み合わせることができ、
式Aでは、クラス(e-a)をクラス(a-a)、(b-a)、(c-a)、または(d-a)のうち1つと組み合わせ、クラス(j-a)およびクラスh-a)とさらに組み合わせることができ、
式Aでは、クラス(e-a)をクラス(a-a)、(b-a)、(c-a)または(d-a)のうち1つと組み合わせ、クラス(j-a)およびクラスi-a)とさらに組み合わせることができ、
式Aでは、クラス(f-a)をクラス(a-a)、(b-a)、(c-a)、または(d-a)のうち1つと組み合わせることができ、
式Aでは、クラス(f-a)をクラス(a-a)、(b-a)、(c-a)、または(d-a)のうち1つと組み合わせ、クラス(g-a)およびクラス(h-a)とさらに組み合わせることができ、
式Aでは、クラス(f-a)をクラス(a-a)、(b-a)、(c-a)、または(d-a)のうち1つと組み合わせ、クラス(g-a)およびクラス(i-a)とさらに組み合わせることができ、
式Iでは、クラス(e)をクラス(a)、(b)、(c)、または(d)のうち1つと組み合わせることができ、
式Iでは、クラス(f)をクラス(a)、(b)、(c)、または(d)のうち1つと組み合わせることができ、
式IIでは、クラス(d-1)をクラス(a-1)、(b-1)、または(c-1)のうち1つと組み合わせることができ、
式IIでは、クラス(e-1)をクラス(a-1)、(b-1)、または(c-1)のうち1つと組み合わせることができ、
式IIIでは、クラス(h-2)をクラス(a-2)、(b-2)、(c-2)、(d-2)、(e-2)、(f-2)、または(g-2)のうち1つと組み合わせることができ、
式IIIでは、クラス(i-2)をクラス(a-2)、(b-2)、(c-2)、(d-2)、(e-2)、(f-2)、または(g-2)のうち1つと組み合わせることができ、
式IVでは、クラス(j-3)をクラス(a-3)、(b-3)、(c-3)、(d-3)、(e-3)、(f-3)、(g-3)、(h-3)、またはi-3)のうち1つと組み合わせることができ、かつ
式IVでは、クラス(k-3)をクラス(a-3)、(b-3)、(c-3)、(d-3)、(e-3)、(f-3)、(g-3)、(h-3)、または(i-3)のうち1つと組み合わせることができる。
【0038】
一局面では、本発明は表1の化合物を提供する。
【0040】
一局面では、本発明の化合物は薬学的に許容される塩である。一局面では、本発明の化合物は溶媒和物である。一局面では、本発明の化合物は水和物である。
【0041】
本発明は、本発明の化合物の1つを有効成分として含む薬学的組成物に関する。一局面では、本発明は、式A、I、II、III、もしくはIVの化合物の少なくとも1つまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物と、1つまたは複数の薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む、薬学的組成物を提供する。一局面では、本発明は、表1の少なくとも1つの化合物を含む薬学的組成物を提供する。
【0042】
本発明は、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を合成する方法に関する。本発明の化合物は、当技術分野において公知の多様な方法を使用して合成することができる。以下のスキームおよび記述は、本発明の化合物の調製用の一般的経路を示す。ニトロ基還元、ベンジルアルキル化、および芳香族アミンからカルバメートへの変換を包含する本明細書に記載の工程は、異なる順序で行うことができる。例えば、スキーム1Aおよび2Aは2つのありうる調製を示す。
【0044】
スキーム1Aおよび2Aは式Aの本発明の化合物の調製を概略的に示す。本明細書に記載の式I、II、III、およびIVが式Aのサブセットであることが理解されよう。したがって、式Aの化合物について記載の調製は式I、II、III、および/またはIVの化合物の調製にも適用可能である。
【0045】
スキーム1Aおよび2Aに概略的に示す調製は化合物AまたはEで出発する。いずれの化合物も化学製造業者から市販されている。
【0046】
スキーム1Aの工程1において、化合物Aのニトロ基に隣接するフッ素原子をアミノ基に変換することで化合物Bを形成する。例えば、化合物Aをメタノール中アンモニアで処理することで化合物Bを形成することができる。工程2において、残りのフッ素原子をベンジルアミノ化合物に結合させて化合物Cを形成する。例えば、化合物Bのフッ素原子をEt
3N、I
2、およびDMSOを使用して4-フルオロベンジルアミンに結合させることで化合物Cを形成することができる。工程3において、化合物Cのニトロ基を還元し、カルバメートを形成することで式Iの化合物を得る。例えば、化合物Cのニトロ基を亜鉛末、およびメタノール中塩化アンモニウムを使用して還元することができる。カルバメートの形成はクロロギ酸エチルを使用して行うことができる。いくつかの場合では、化合物Bは市販されており、この場合、合成スキームは工程2で開始する。
【0048】
スキーム2Aの工程1において、化合物Eのアミノ基をN,N-ビス-アルコキシカルボニル基に変換することで化合物Fを形成する。例えば、化合物Eをクロロギ酸エチルで処理することで化合物Fを形成することができる。工程2において、化合物Fの臭素原子をベンジルアミノ化合物に結合させ、N,N-ビス-アルコキシカルボニル基をカルバメートに変換して化合物Gを形成する。例えば、化合物Fの臭素原子を4-フルオロベンジルアミンに結合させ、N,N-ビス-アルコキシカルボニル基を、Cs
2CO
3、Pd
2(dba)
3、およびキサントホスを試薬として使用してエチルカルバメートに変換することで化合物Gを形成することができる。工程3において、ニトロ基をアミノ基に還元することで式Aの化合物を得る。例えば、化合物Gのニトロ基を亜鉛末、およびメタノール中塩化アンモニウムを使用して還元することができる。
【0049】
本発明はまた、1個もしくは複数の水素原子が重水素原子で置き換えられ、その位置において、0.015%である重水素の天然存在比を実質的に超える重水素存在比を有する、重水素標識化合物を包含する。本発明は、エチルカルバメートが重水素化された重水素標識化合物、例えば本明細書に記載の化合物10Aを包含する。
【0050】
本明細書において使用される「重水素濃縮係数」という用語は、重水素存在比と重水素の天然存在比との間の比を意味する。一局面では、本発明の化合物は各重水素原子について少なくとも3500(各重水素原子において52.5重水素取り込み%)、少なくとも4000(60重水素取り込み%)、少なくとも4500(67.5重水素取り込み%)、少なくとも5000(75重水素%)、少なくとも5500(82.5重水素取り込み%)、少なくとも6000(90重水素取り込み%)、少なくとも6333.3(95重水素取り込み%)、少なくとも6466.7(97重水素取り込み%)、少なくとも6600(99重水素取り込み%)または少なくとも6633.3(99.5重水素取り込み%)の重水素濃縮係数を有する。
【0051】
重水素標識化合物は、当技術分野において認識されている多様な技術のいずれかを使用して調製することができる。例えば、式A、I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、またはIXの重水素標識化合物、ならびに本発明の表1および表3に列挙される化合物である。
【0052】
上記重水素原子を含有する、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、本発明の範囲内にある。さらに、より重い重水素、すなわち
2Hによる置換は、代謝安定性の増大により得られる特定の治療上の利点、例えばインビボ半減期の増大または投薬量要件の減少を与えることができる。
【0053】
一局面では、本発明は、表3より選択される重水素標識化合物を提供する。
【0055】
一局面では、本発明の重水素標識化合物は薬学的に許容される塩である。一局面では、本発明の重水素標識化合物は溶媒和物である。一局面では、本発明の重水素標識化合物は水和物である。
【0056】
本発明は、本発明の重水素標識化合物の1つを有効成分として含む薬学的組成物に関する。一局面では、本発明は、式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、もしくはIXの重水素標識化合物の少なくとも1つまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物と、1つまたは複数の薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む、薬学的組成物を提供する。一局面では、本発明は、表2の少なくとも1つの化合物を含む薬学的組成物を提供する。
【0057】
本発明は、本発明の重水素標識化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を合成する方法に関する。
【0058】
本発明の重水素標識化合物は、当技術分野において認識されている多様な技術のいずれかを使用して調製することができる。一般に、重水素標識化合物は、本明細書に示されるスキームおよび記述に開示される手順を行うことで調製することができる。例えば、重水素標識化合物は、重水素標識化合物AもしくはEで出発すること、および/または容易に入手可能な重水素標識試薬で非重水素標識試薬を代用することで調製することができる。
【0059】
以下のスキームおよび記述は、本発明の重水素標識化合物を生成するための重水素標識の取り込み用の一般的経路を示す。
【0061】
スキーム3Aは、構造Iを有する本発明の重水素標識化合物の調製を概略的に示す。調製は化合物C(本明細書に記載のスキーム1Aの)で出発する。工程1において、化合物Cのニトロ基を還元した後、重水素標識をカルバメートの形成を経由して導入する。例えば、化合物Cのニトロ基を亜鉛末、およびメタノール中塩化アンモニウムを使用して還元し、カルバメートをクロロギ酸エチル-d5を使用して形成することで化合物Iを得ることができる。
【0062】
本発明はまた、対象における、本発明の化合物の18F同位体類似体の分布のイメージングによる該化合物の分布の陽電子放射断層撮影(PET)イメージング、またはKCNQ2/3電位開口型カリウムチャネルの機能状態のPETイメージングに有用な18F化合物に関する。KCNQ2/3電位開口型カリウムチャネルのイメージングは、該チャネルの機能の欠損に関連する疾患、例えばてんかんを診断するための情報、KCNQ2/3開口を生じさせる本発明の化合物または他の化合物による治療をモニタリングするための情報を与える。
【0063】
本発明は、式Vの18F化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
式中、AはNまたはC-X
3であり;X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、X
7、およびX
8はそれぞれ独立して水素、19F、および18Fより選択され; nは2または3であるが、但し、X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、X
7、およびX
8のうち1つは18Fである。
【0064】
本発明のすべての18F化合物が有用であるが、特定のクラスが好ましい。以下の項目では式Vの化合物の特定の好ましいクラスを記載し、式中、
(a-4) X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、X
7、およびX
8のうち少なくとも1つは19Fであり;
(b-4) X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、X
7、およびX
8のうち1つは19Fであり;
(c-4) X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、X
7、およびX
8のうち2つは19Fであり;
(d-4) AはNであり;
(e-4) AはC-X
3であり、X
3は水素であり;
(f-4) AはC-X
3であり、X
3は19Fであり;
(g-4) X
6は18Fであり;
(h-4) X
1は18Fであり;
(i-4) X
6は19Fであり;かつ
(j-4) 残りのX
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
7、および/またはX
8はそれぞれ水素である。
【0065】
一局面では、本発明は、式VIの18F化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
式中、X
4、X
5、X
6、X
7、およびX
8はそれぞれ独立して水素、19F、および18Fより選択されるが、但し、X
4、X
5、X
6、X
7、およびX
8のうち1つは18Fである。
【0066】
以下の項目では式VIの化合物の特定の好ましいクラスを記載し、式中、
(a-5) X
4、X
5、X
6、X
7、およびX
8のうち少なくとも1つは19Fであり;
(b-5) X
4、X
5、X
6、X
7、およびX
8のうち1つは19Fであり;
(c-5) X
4、X
5、X
6、X
7、およびX
8のうち1つは18Fであり;
(d-5) X
4は18Fであり;
(e-5) X
5は18Fであり;
(f-5) X
6は18Fであり;
(g-5) X
7は18Fであり;
(h-5) X
8は18Fであり;
(i-5) X
6は18Fまたは19Fであり;
(j-5) X
6は19Fであり;かつ
(k-5) 残りのX
4、X
5、X
6、X
7、および/またはX
8はそれぞれ水素である。
【0067】
一局面では、本発明は、式VIIの18F化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
式中、X
1、X
2、X
3、およびX
6はそれぞれ独立して水素、18F、および19Fより選択されるが、但し、X
1、X
2、X
3、およびX
6のうち1つは18Fである。
【0068】
以下の項目では式VIIの化合物の特定の好ましいクラスを記載し、式中、
(a-6) X
1、X
2、X
3、およびX
6のうち少なくとも1つは19Fであり;
(b-6) X
1、X
2、X
3、およびX
6のうち1つは19Fであり;
(c-6) X
1、X
2、X
3、およびX
6のうち2つは19Fであり;
(d-6) X
6は18Fであり、かつX
1、X
2、およびX
3はそれぞれ独立して水素および19Fより選択されるが、但し、X
1、X
2、X
3のうち少なくとも1つは19Fであり;
(e-6) X
6は18Fであり、かつX
1は19Fであり;
(f-6) X
6は18Fであり、かつX
2は19Fであり;
(g-6) X
6は18Fであり、かつX
3は19Fであり;
(h-6) X
6はHであり、かつX
1、X
2、およびX
3のうち1つは18Fであり;
(i-6) X
6はHであり、かつX
1は18Fであり;
(j-6) X
6はHであり、かつX
2は18Fであり;
(k-6) X
6はHであり、かつX
3は18Fであり;
(l-6) X
1は18Fまたは19Fであり;
(m-6) X
2は18Fまたは19Fであり;
(n-6) X
3は18Fまたは19Fであり;
(o-6) X
6は18Fまたは19Fであり;
(p-6) X
6は19Fであり、かつX
1は18Fであり;
(q-6) X
6は19Fであり、かつX
2は18Fであり;
(r-6) X
6は19Fであり、かつX
3は18Fであり;
(s-6) X
1、X
2、およびX
3のうち少なくとも1つは19Fであり;かつ
(t-6) 残りのX
1、X
2、X
3、および/またはX
6はそれぞれ水素である。
【0069】
一局面では、本発明は、式(VIII)の18F化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
式中、nは2または3であり、AはNまたはC-X
3であり、かつX
3は水素または19Fより選択される。
【0070】
以下の項目では式VIIIの化合物の特定の好ましいクラスを記載し、式中、
(a-7) AはNであり;
(b-7) AはC-X
3であり、X
3は水素であり;
(c-7) AはC-X
3であり、X
3は19Fであり;
(d-7) nは2であり;かつ
(e-7) nは3である。
【0071】
一局面では、本発明は、式(IX)の18F化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
式中、X
1、X
2、X
4、X
5、X
6、X
7、およびX
8はそれぞれ独立して水素、19F、および18Fより選択され;nは2または3であるが、但し、X
1、X
2、X
4、X
5、X
6、X
7、およびX
8のうち1つは18Fである。
【0072】
以下の段落では式IXの化合物の特定の好ましいクラスを記載し、式中、
(a-8) X
1、X
2、X
4、X
5、X
6、X
7、およびX
8のうち少なくとも1つは19Fであり;
(b-8) X
1、X
2、X
4、X
5、X
6、X
7、およびX
8のうち1つは19Fであり;
(c-8) X
1、X
2、X
4、X
5、X
6、X
7、およびX
8のうち2つは19Fであり;
(d-8) X
1は18Fまたは19Fであり;
(e-8) X
2は18Fまたは19Fであり;
(f-8) X
6は18Fまたは19Fであり;
(g-8) X
6は18Fであり、X
1は19Fであり;
(h-8) X
6は19Fであり、X
1は18Fであり;
(i-8) X
6は18Fであり、X
2は19Fであり;
(j-8) X
6は19Fであり、X
2は18Fであり;かつ
(k-8) 残りのX
1、X
2、X
4、X
5、X
6、X
7、およびX
8はそれぞれ水素である。
【0073】
上記クラスを組み合わせることでさらなるクラスを、例えば置換基2個またはそれ以上に関する選択の組み合わせとして形成することができると理解されよう。例えば、
式Vでは、クラス(j-4)をクラス(a-4)、(b-4)、(c-4)、(g-4)、h-4、または(i-4)のうち1つと組み合わせることができ、
式Vでは、クラス(j-4)をクラス(a-4)、(b-4)、(c-4)、(g-4)、h-4、または(i-4)のうち1つと組み合わせることができ、これをクラス(d-4)、(e-4)、または(f-4)とさらに組み合わせることができ、
式VIでは、クラス(k-5)をクラス(a-5)、(b-5)、(c-5)、(d-5)、(e-5)、(f-5)、(g-5)、(h-5)、(i-5)、および(j-5)のうち1つと組み合わせることができ、
式VIIでは、クラス(t-6)をクラス(a-6)、(b-6)、(c-6)、(e-6)、(f-6)、(g-6)、(h-6)、(i-6)、(j-6)、(k-6)、(l-6)、(n-6)、(o-6)、(p-6)、(q-6)、(r-6)、および(s-6)のうち1つと組み合わせることができ、
式VIIIでは、クラス(a-7)、(b-7)、または(c-7)のうち1つをクラス(d-7)または(e-7)のうち1つと組み合わせることができ、
式IXでは、クラス(k-8)をクラス(a-8)、(b-8)、(c-8)、(d-8)、(e-8)、(f-8)、(g-8)、(h-8)、(i-8)、および(j-8)のうち1つと組み合わせることができる。
【0074】
一局面では、本発明は、表3より選択される18F化合物を提供する。
【0076】
一局面では、本発明の18F化合物は薬学的に許容される塩である。
【0077】
本発明は、非経口注射に好適な本発明の18F化合物の1つを含む薬学的組成物に関する。一局面では、本発明は、式V、VI、VII、VIII、もしくはIXの18F化合物の少なくとも1つまたはその薬学的に許容される塩と、1つまたは複数の薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む、薬学的組成物を提供する。一局面では、本発明は、表2の少なくとも1つの18F化合物を含む薬学的組成物を提供する。
【0078】
18F化合物を合成する方法
本発明の18F化合物は、前駆体化合物とF-18フッ化物とを、前駆体化合物上の適切な脱離基のS
n2置換を経由して反応させることで合成することができる。そのような脱離基の例としてはトルエンスルホネート(トシレート)、メタンスルホネート(メシレート)またはトリフルオロメタンスルホネート(トリフレート)などのスルホン酸エステルが挙げられる。脱離基はハロゲン化物、ニトロ基、トリメチルアンモニウム基、ホスフィンオキシド(光延反応経由)、または内部脱離基(エポキシドもしくは環状スルフェートなどの)であってもよい。いくつかの態様では、本発明の18F化合物は高活性化乾燥K18Fから合成することができ、このK18Fは18-クラウン-6またはクリプトフィックス[2.2.2]などのカリウム封鎖クリプタンドの付加によって反応性がより高くなる。
【0079】
活性化フッ化物によって求核置換できない芳香環構造または複素環構造を含有するいくつかの化合物では、求電子フッ素化法を使用することができる。これらの方法としてはF-18フッ素ガス(F2)またはF-18 N-クロロメチル-N-フルオロトリエチレンジアンモニウムビス(テトラフルオロボレート)(F-18-TEDA)との反応が挙げられる。他の求電子フッ素化法としてはScience, 2011, 334, pp. 639-642に記載のパラジウム(IV)錯体の使用; またはOrganic & Biomolecular Chemistry, 2011, 9, pp. 8346-8355に記載のジアリールヨードニウム塩の使用が挙げられる。
【0080】
上述の化学変換は、当業者には容易に明らかであろう技術と本明細書に記載の教示との組み合わせを使用して行うことができる。いくつかの場合、本発明のF-18化合物を合成する方法は1つもしくは複数の反応溶媒の使用を含みうる。代表的反応溶媒としては例えばアセトニトリル、アセトン、DMF、DMSO、THF、酢酸エチル、トルエン、ジクロロメタンおよびクロロホルムが挙げられる。反応溶液の酸性度または塩基性度は1つもしくは複数の有機酸または有機塩基、例えばトリエチルアミンもしくはジイソプロピルエチルアミン、またはトリフルオロ酢酸の使用によって制御することができる。いくつかの場合、化学変換は周囲温度でまたは高温下で行うことができ、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気またはヘリウム雰囲気によって酸素および水から保護することができる。
【0081】
いくつかの態様では、アミン、チオール、アルコール、フェノールおよびカルボン酸などの他の反応性官能基がフッ素化反応に関与または干渉することを防ぐために、一時的保護基を使用することができる。代表的アミン保護基としては例えばtert-ブトキシカルボニルおよびトリチル(酸性条件下で除去)、Fmoc(ピペリジンなどの第二級アミンの使用によって除去)、ならびにベンジルオキシカルボニル(強酸または接触水素化分解によって除去)が挙げられる。チオール、フェノールおよびアルコールの保護にトリチル基を使用してもよい。特定の態様では、カルボン酸保護基として例えばtert-ブチルエステル(緩酸によって除去)、ベンジルエステル(通常は接触水素化分解によって除去)、およびメチルまたはエチルなどのアルキルエステル(通常は緩塩基によって除去)が挙げられる。すべての保護基は、合成の終わりに個々の保護基について先に記載の条件を使用して除去することができ、最終生成物は、当業者には容易に明らかであろう技術と本明細書に記載の教示との組み合わせによって精製することができる。
【0082】
本発明は、本発明の18F化合物またはその薬学的に許容される塩を合成する方法に関する。芳香族環上にF-18置換基を含む本発明のF-18化合物を合成するためのいくつかの方法が存在する: 強求核性F-18フッ化物イオンによるブロモ、ニトロまたはトリメチルアミノなどの脱離基の求核置換(スキーム3A); パラジウム補助芳香族求電子置換(スキーム4A、4B、および4C); ならびにニッケル補助芳香族フッ素化(スキーム5A)。これらの各反応スキームにおいて、置換基-Rを有する、F-18で置換されるべき芳香環が示され、ここでRは本発明の所望の分子の残りを表す。
【0084】
上記スキーム3Aに記載の方法は、いくつかの商業的ラジオファーマシー(radiopharmacy)から入手可能な水溶液としての18F-フッ化物を取得し、炭酸カリウムおよびクリプトフィックス[2.2.2]を加え、水を蒸発させて乾燥残渣を得る工程を包含する。アセトニトリルに溶解した化合物1の溶液を加え、混合物を窒素下高温で、反応を完了させるために必要な時間加熱する。より高い加熱温度、例えば最大130Cを可能にするために、アセトニトリルの代替溶媒、例えばジメチルスルホキシドを使用してもよい。
【0085】
スキーム4A、4B、および4C: パラジウム補助芳香族求電子置換
本方法は、所望の18Fによる置換点においてパラジウム原子にアリール基が結合したパラジウム(II)-アリール錯体を、標準的有機金属化学反応条件を使用して作製する工程を包含する。アルキルボロネート置換アリール基を作製し、それとスキーム4Aに示す酢酸パラジウム(II)錯体とを有機溶媒中で反応させることが特に有効である。
【0087】
次にスキーム4Bに示すように18F-パラジウム(IV)-フッ化物錯体を作製する。
【0089】
いくつかの商業的ラジオファーマシーから入手可能な水溶液としての18F-フッ化物と、炭酸カリウムと、18-クラウン-6とを一緒にし、水を蒸発させて乾燥残渣を得る。アセトンに溶解した化合物4の溶液を加えて化合物5、すなわち18F-パラジウム(IV)-フッ化物錯体を形成する。
【0090】
次に18F-パラジウム(IV)-フッ化物錯体とスキーム4Aにおいて作製したパラジウム(II)-アリール錯体とをアセトン中にて高温で、反応を完了させるために必要な時間反応させる。この反応をスキーム4Cに示す。
【0092】
スキーム5A、5B、および5C: ニッケル補助芳香族フッ素化
本方法は、所望の18Fによる置換点においてニッケル原子にアリール基が結合したニッケル(II)アリール錯体を、標準的有機金属化学反応条件を使用して合成する工程を包含する。臭化アリールとニッケル(0)シクロオクタジエン)錯体Ni(COD)
2とを反応させた後、スキーム5Aに示す2-(2-ピリジニル)アニリノスルホンアミド銀塩と反応させることが特に有効である。
【0094】
次にニッケル(II)-アリール錯体と市販の超原子価ヨウ素酸化剤、および希水溶液としての18F-フッ化物とを、18-クラウン-6を含有するアセトニトリル中で同時に一緒にする。この方法工程をスキーム5Bに示す。所望の18F-アリール化合物は室温でほぼ即時に作製される。
【0096】
使用方法
本発明は、本発明の化合物の使用のための方法に関する。本発明の化合物は有用な薬理活性スペクトルを有し、したがって疾患または障害の予防および/または処置に特に好適である。
【0097】
本発明は、障害の処置または予防において使用するための対象への投与用の医薬の調製のための、本発明の化合物の使用を提供する。
【0098】
一局面では、本発明は、KCNQ2/3カリウムチャネル開口によって寛解する状態の処置または予防において使用するための対象への投与用の医薬の調製における、本発明の化合物の使用を提供する。一局面では、本発明は、KCNQ2/3カリウムチャネル開口によって寛解する状態に罹患しているかまたは罹患しやすい対象を処置する方法であって、それを必要とする該対象に本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物の有効量を投与する段階を含む、方法を提供する。
【0099】
一局面では、本発明は、それを必要とする対象においててんかんを処置または予防する方法であって、該対象に本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物の有効量を投与する段階を含む、方法を提供する。
【0100】
一局面では、本発明は、それを必要とする対象において抗てんかん作用、筋弛緩作用、解熱作用、末梢鎮痛作用、または抗痙攣作用をもたらす方法であって、該対象に本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物の有効量を投与する段階を含む、方法を提供する。
【0101】
一局面では、本発明は、抗痙攣薬として有用な化合物を提供する。したがってそれらはてんかんを処置する上で有用である。一局面では、本発明は、てんかんに罹患しているかまたは罹患しやすい対象を処置する方法であって、それを必要とする該対象に本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物の有効量を投与する段階を含む、方法を提供する。本発明の化合物は、てんかんに罹患している宿主、通常はヒトの状態を改善するために使用することができる。それらは宿主中のてんかんの症状を軽減するために使用することができる。「てんかん」は以下の発作を含むように意図されている: 単純部分発作、複雑部分発作、続発性全般発作、欠神発作を含む全般発作、ミオクローヌス発作、間代発作、強直発作、強直間代発作、および脱力発作。
【0102】
部分発作起始(partial-onset seizure)は、成人患者における最も一般的な種類の発作である。部分発作では、焦点性てんかん領域(発作起始の部位)が存在し、発作活動は当初は一方の半球に限定される。部分発作は単純部分発作(意識障害を伴わない)、複雑部分発作(単純部分起始と同時のまたは単純部分起始後の意識障害を伴う)および続発性全般発作(すなわち、全般強直間代発作に進展する単純部分発作または複雑部分発作)にさらに細分されうる。単純部分発作は、発作の解剖学的な起源部位に応じて、運動、体性感覚もしくは特殊感覚に関する自律神経的もしくは精神的な徴候または症状を示しうる。一局面では、本発明は、部分発作起始を有する成人の補助的処置のための方法であって、対象に本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩の有効量を投与する段階を含む、方法を提供する。
【0103】
一局面では、本発明は、てんかんに罹患しているかまたは罹患しやすい対象を処置するための方法であって、それを必要とする該対象に本発明の化合物と1つまたは複数の抗てんかん薬(AED)との組み合わせの有効量を投与する段階を含む、方法を提供する。異なる種類のAEDが存在する。例えば、狭域AEDとして例えばフェニトイン(ディランチン)、フェノバルビタール、カルバマゼピン(テグレトール)、オクスカルバゼピン(トリレプタル)、ガバペンチン(ノイロンチン(Neurontin))、プレガバリン(リリカ)、ラコサミド(ビンパット)およびビガバトリン(サブリル)が挙げられる。広域AEDとしては例えばバルプロ酸(デパコテ(Depakote))、ラモトリギン(ラミクタール)、トピラマート(トパマックス)、ゾニサミド(ゾネグラン)、レベチラセタム(ケプラ)、クロナゼパム(クロノピン)、およびルフィナミド(バンゼル(Banzel))が挙げられる。一局面では、AEDは任意のAEDである。一局面では、AEDは狭域AEDである。一局面では、AEDは広域AEDである。
【0104】
一局面では、本発明は、それを必要とする対象において神経伝達障害、CNS障害、腸機能障害、神経変性疾患、または耳鳴を処置または予防する方法であって、該対象に本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物の有効量を投与する段階を含む、方法を提供する。
【0105】
一局面では、本発明は、それを必要とする対象において認知障害または片頭痛を処置または予防する方法であって、該対象に本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物の有効量を投与する段階を含む、方法を提供する。
【0106】
一局面では、本発明は、それを必要とする対象において片頭痛、双極性障害、単極性うつ病、腸機能障害、または耳鳴を処置または予防する方法であって、該対象に本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物の有効量を投与する段階を含む、方法を提供する。
【0107】
一局面では、本発明は、躁うつ病としても知られる双極性障害などのCNS障害の処置において有用な化合物を提供する。I型またはII型双極性障害が処置可能である。したがって本化合物は、双極性障害に罹患しているヒト患者の状態を改善するために使用することができる。それらは宿主中の双極性障害の症状を軽減するために使用することができる。また、本化合物は単極性うつ病、運動失調、ミオキミア、および不安の処置において使用することができる。
【0108】
一局面では、本発明は、非潰瘍性消化不良、非心臓性胸痛、および特に過敏性腸症候群を含む腸機能障害の処置において有用な化合物を提供する。過敏性腸症候群は、器質的疾患の証拠を伴わない腹痛および排便習慣改変の存在を特徴とする胃腸障害である。したがって本化合物は、過敏性腸症候群に関連する疼痛を軽減するために使用することができる。したがって、過敏性腸症候群に罹患しているヒト患者の状態を改善することができる。
【0109】
一局面では、本発明は、鎮痛薬として有用な化合物を提供する。したがってそれらは疼痛を処置または予防する上で有用である。それらは、疼痛に罹患している宿主、通常はヒトの状態を改善するために使用することができる。それらは宿主中の疼痛を軽減するために使用することができる。したがって本化合物は、筋骨格痛、術後疼痛、および手術に起因する疼痛などの急性疼痛、慢性炎症痛(例えば関節リウマチおよび変形性関節症)、神経障害性疼痛(例えば帯状疱疹後神経痛、三叉神経痛および交感神経性維持依存性疼痛)、ならびにがんおよび線維筋痛症に関連する疼痛などの慢性疼痛を処置するための先制鎮痛薬として使用することができる。本化合物はまた、片頭痛に関連する疼痛の処置または予防において使用することができる。本化合物はまた、リウマチ熱などの状態による疼痛(慢性と急性との両方)、発熱および炎症; インフルエンザまたは他のウイルス感染症に関連する症状、例えば感冒; 腰痛および頸部痛; 頭痛; 歯痛; 捻挫および筋挫傷; 筋炎; 神経痛; 滑膜炎; 関節リウマチを含む関節炎; 変形性関節症を含む変性関節疾患; 痛風および強直性脊椎炎; 腱炎; 滑液包炎; 乾癬、湿疹、熱傷、および皮膚炎などの皮膚関連状態; スポーツ損傷、ならびに外科手技および歯科手技により生じる損傷などの損傷の処置において使用することができる。
【0110】
一局面では、本発明は、それを必要とする対象において鎮痛作用をもたらす方法であって、該対象に本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物の有効量を投与する段階を含む、方法を提供する。一局面では、鎮痛作用は神経保護作用である。一局面では、鎮痛作用は中枢性鎮痛作用である。
【0111】
一局面では、本発明は、アルツハイマー病、ALS、運動ニューロン疾患、パーキンソン病、黄斑変性、および緑内障などの神経変性疾患の処置において有用な化合物を提供する。本発明の化合物はまた、脳卒中、心停止、肺バイパス、外傷性脳損傷、脊髄損傷などの後の神経保護および神経変性処置において有用でありうる。一局面では、本発明の化合物は耳鳴の処置においてさらに有用である。
【0112】
一局面では、本発明は、片頭痛の処置において有用な化合物を提供する。
【0113】
一局面では、本発明は、それを必要とする対象において依存性誘発物質に対する依存を予防するもしくは減少させるかまたは該依存性誘発物質に対する耐性もしくは逆耐性を予防するもしくは減少させる方法であって、該対象に本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物の有効量を投与する段階を含む、方法を提供する。依存性誘発物質の例としてはオピオイド(例えばモルヒネ)、CNS抑制薬(例えばエタノール)、覚醒剤(例えばコカイン)およびニコチンが挙げられる。
【0114】
一局面では、本発明は、それを必要とする対象においてがん、炎症性疾患、または眼疾患を処置または予防する方法であって、該対象に本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物の有効量を投与する段階を含む、方法を提供する。
【0115】
一局面では、本発明は、細胞形質転換および悪性形質転換ならびに転移性腫瘍増殖を阻害し、したがって結腸がんなどの特定のがん疾患の処置において有用である、化合物を提供する。
【0116】
一局面では、本発明は、炎症過程を阻害し、したがって喘息、アレルギー性鼻炎、および呼吸促迫症候群; 炎症性腸疾患、クローン病、胃炎、過敏性腸症候群、および潰瘍性大腸炎などの胃腸状態; ならびに血管病、片頭痛、結節性動脈周囲炎、甲状腺炎、再生不良性貧血、ホジキン病、強皮症、I型糖尿病、重症筋無力症、多発性硬化症、サルコイドーシス、ネフローゼ症候群、ベーチェット症候群、多発性筋炎、歯肉炎、結膜炎、および心筋虚血などの疾患における炎症の処置において使用される、化合物を提供する。
【0117】
一局面では、本発明は、網膜炎、網膜症、ぶどう膜炎などの眼疾患、および眼組織の急性損傷の処置において有用な化合物を提供する。
【0118】
一局面では、本発明は、認知障害、例えば認知症、特に変性認知症(老人性認知症、アルツハイマー病、ピック病、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、およびクロイツフェルト・ヤコブ病を含む)ならびに血管性認知症(多発脳梗塞性認知症を含む)、ならびに頭蓋内占拠性病変、外傷、感染症および関連状態(HIV感染症を含む)、代謝、毒素、無酸素症、ならびにビタミン欠乏症に関連する認知症; ならびに加齢に関連する軽度認知障害、特に年齢関連の記憶喪失; ならびに学習障害(learning deficiency)の処置に有用な化合物を提供する。
【0119】
一局面では、本発明は、それを必要とする対象において抗不安作用をもたらす方法であって、該対象に本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物の有効量を投与する段階を含む、方法を提供する。一局面では、本発明は、不安ならびにその関連する心理症状および身体症状の処置のための方法を提供する。抗不安薬が不安障害の処置において有用であることがわかった。
【0120】
一局面では、本発明は処置用の化合物を提供する。一局面では、本発明は予防用の化合物を提供する。一局面では、本発明は既存の症状の軽減用の化合物を提供する。
【0121】
一局面では、本発明は、本発明の有効成分約10〜約100mg、約30〜約60mgを含有する薬学的製剤を提供する。
【0122】
投与は例えば錠剤、カプセル剤、丸剤、被覆錠剤、坐薬、軟膏剤、ゲル剤、クリーム剤、散剤、粉剤、エアロゾル剤の形態、または液体形態でありうる。考慮されうる液体適用形態は例えば油剤またはアルコール溶液剤もしくは水溶液剤、ならびに懸濁液剤および乳剤である。一局面では、本発明は、活性物質30〜60mgを含有する錠剤または活性物質0.1〜5重量パーセントを含有する溶液剤である、適用形態を提供する。
【0123】
一局面では、本発明の有効成分の単一用量は、例えば(a) 医薬形態の場合、約20〜約80mg、約30〜約60mg; (b) 非経口医薬形態(例えば静脈内、筋肉内)の場合、約5〜約20mg、約8〜約16mgでありうる(これらの用量はいずれの場合でも遊離塩基に関連する)。
【0124】
一局面では、例えば、1日3回の活性物質約30〜約60mgを含有する錠剤各1〜3個、または例えば静脈内注射の場合、1日1〜3回の物質約8〜約16mgを有する約3〜約5ml含有量のアンプル各1本を推奨することが可能である。経口投与の場合、最小一日量は例えば約90mgであり、経口投与における最大一日量は約270mgを超えないはずである。
【0125】
イヌおよびネコに関する処置では、個々の経口量は一般に約2〜約20mg/kg体重であり、非経口量は約1〜約5mg/kg体重である。
【0126】
一局面では、本発明の化合物をヒト医学において使用する。一局面では、本発明の化合物を獣医学において使用する。一局面では、本発明の化合物を農学において使用する。一局面では、本発明の化合物を単独で使用するかまたは他の薬理活性物質と混合する。
【0127】
一局面では、本発明は、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を備える、医療機器を提供する。
【0128】
イメージング方法
本発明の18F化合物は、疾患過程の存在、程度、または治療応答を診断するために対象をイメージングする方法において使用することができる。例えば、イメージング方法は、対象に本発明の18F化合物を、ボーラスもしくは輸液としての静脈内注射、または対象をイメージングするために適切であることが知られる任意の他の方法によって投与する段階、および、イメージング対象となる過程が位置する対象の区域をイメージングする段階を含みうる。
【0129】
有用な投与線量、および特定の投与様式は、年齢、体重、およびイメージングされる身体の特定の領域、ならびに想定される診断用途などの要因に応じて変動する。通常、線量は比較的低いレベルで投与され、所望の診断効果(例えば画像の生成)が得られるまで増大される。いくつかの態様では、18F化合物を通常は生理食塩水での静脈内注射によって、体重70kg当たり線量約0.1〜約100mCi(ならびに該範囲内の線量範囲および特定の線量のすべての組み合わせおよび部分組み合わせ)で、またはいくつかの態様では対象当たり線量約0.5mCi〜約50mCiで投与することができる。イメージングは当業者に周知の技術を使用して行われる。
【0130】
本発明の18F化合物は非経口投与用に製剤化することができる。これらの製剤は滅菌かつ非発熱性でなければならず、1つもしくは複数の薬学的に適合性のある溶媒、緩衝液、中和助剤、安定助剤、および可溶化助剤を含んでもよい。
【0131】
18F化合物との組み合わせで有用な緩衝液のいくつかの非限定的な例としてはリン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、スルホサリチル酸緩衝液、および酢酸緩衝液が挙げられる。より完全なリストは米国薬局方に見ることができる。
【0132】
安定助剤のいくつかの非限定的な例としてはエタノール、アスコルビン酸、システイン、モノチオグリセロール、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、ゲンチジン酸、およびイノシトールが挙げられる。
【0133】
可溶化助剤のいくつかの非限定的な例としてはエタノール、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノオレエート、ポリソルベート、ポリ(オキシエチレン)-ポリ(オキシプロピレン)-ポリ(オキシエチレン)ブロック共重合体、およびレシチンが挙げられる。
【0134】
一局面では、本発明はPETイメージング用の18F化合物を提供する。
【0135】
一局面では、本発明は、本発明の18F化合物の体内分布をイメージングする方法であって、対象に該化合物またはその薬学的に許容される塩の有効量を投与する段階、および、陽電子放射断層撮影を使用して該対象をイメージングする段階を含む、方法を提供する。
【0136】
一局面では、本発明は、KCNQ2/3カリウムチャネルの機能状態を対象においてイメージングする方法であって、それを必要とする対象に本発明の18F化合物またはその薬学的に許容される塩の有効量を投与する段階、および、陽電子放射断層撮影を使用して該対象をイメージングする段階を含む、方法を提供する。
【0137】
一局面では、本発明は、それを必要とする対象において神経伝達障害、CNS障害、認知障害、または神経変性疾患をイメージングする方法であって、該対象に本発明の18F化合物またはその薬学的に許容される塩の有効量を投与する段階、および、陽電子放射断層撮影を使用して該対象をイメージングする段階を含む、方法を提供する。
【0138】
一局面では、本発明の18F化合物をヒト対象に投与する。
【0139】
以下の実施例は、例示的なものであり、決して本発明の範囲を限定するように解釈されるべきではない。
【実施例】
【0140】
実施例1. 実験手順および化合物特性決定
実施例1A: エチル (2-アミノ-3-フルオロ-4-((4-フルオロベンジル)アミノ)フェニル)カルバメート(表1の化合物1A)の合成
2,3-ジフルオロ-6-ニトロアニリン(2)
1,2,3-トリフルオロ-4-ニトロベンゼン(1)(1.00g、5.64mmol、1.00当量)のメタノール中アンモニア(1.5mL)溶液をマイクロ波バイアルに入れ、マイクロ波中で70℃に90分間加熱した。溶媒を減圧蒸発させて粗生成物を得て、これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン1:49)で精製して化合物2(0.350g、35.6%)を黄色固体として得た。TLC: 10% EtOAc/ヘキサン(R
f: 0.10);
【0141】
2-フルオロ-N1-(4-フルオロベンジル)-4-ニトロベンゼン-1,3-ジアミン(3)
化合物2(0.100g、0.570mmol、1.00当量)の乾燥DMSO(4.6mL)中攪拌懸濁液に4-フルオロベンジルアミン(0.210g、1.72mmol、3.00当量)、続いてEt
3N(69.6mg、0.690mmol、1.20当量)およびI
2(触媒、1.00mg)を加えた。反応混合物を120℃に加熱し、120℃で24時間攪拌した。出発原料の消費(TLCによる)後、反応混合物を室温に冷却し、水(25mL)で希釈し、EtOAc(2×25mL)で抽出した。分離された有機層を無水Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、減圧濃縮して粗生成物を得て、これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン2:23)で精製して化合物3(0.100g、62.5%)を黄色固体として得た。TLC: 20% EtOAc/ヘキサン(R
f: 0.20);
【0142】
エチル (2-アミノ-3-フルオロ-4-((4-フルオロベンジル)アミノ)フェニル)カルバメート(1A)
化合物3(0.800g、2.86mmol、1.00当量)のメタノール(7.2mL)中攪拌溶液に亜鉛末(0.930g、14.3mmol、5.00当量)、続いて塩化アンモニウム溶液(0.760g、14.3mmol、5.00当量)を滴下した。室温で5時間攪拌後、DIPEA(0.460g、3.58mmol、1.25当量)およびクロロギ酸エチル(0.310g、2.87mmol、1.00当量)を反応混合物に10℃で加え、攪拌を室温でさらに3時間続けた。出発原料の消費(TLCによる)後、反応混合物を水(24mL)で希釈し、1時間攪拌して固体を得た。得られた固体を濾過し、EtOAc(15mL)に溶解させ、未溶解固体を再度濾過した。濾液を蒸発させ、n-ヘキサンを使用して再結晶して化合物1A(0.250g、27.0%)を褐色固体として得た。TLC: 50% EtOAc/ヘキサン(R
f: 0.20)
【0143】
実施例1B: エチル (2-アミノ-6-フルオロ-4-((4-フルオロベンジル)アミノ)フェニル)カルバメート(表1の化合物2A)の合成
N,N-ビス-エトキシカルボニル-(4-ブロモ-2-フルオロ-6-ニトロアニリン)(2)
4-ブロモ-2-フルオロ-6-ニトロアニリン(1)(0.500g、2.12mmol、1.00当量)のTHF(20mL)中攪拌溶液にNaH(0.250g、6.40mmol、3.00当量)を0℃で数回に分けて加えた。室温で1時間攪拌後、クロロギ酸エチル(1.00mL、10.6mmol、5.00当量)を反応混合物に0℃で滴下した。反応混合物を還流温度下で36時間加熱した。出発原料の消費(TLCによる)後、反応液を飽和NH
4Cl溶液で反応停止させ、EtOAc(2×100mL)で抽出した。一緒にした有機抽出物を無水Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、減圧濃縮して粗生成物を得て、これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン1:4)で精製して化合物2(0.350g、43.0%)を黄色固体として得た。
TLC: 30% EtOAc/ヘキサン(R
f: 0.40);
【0144】
エチル (2-フルオロ-4-((4-フルオロベンジル)アミノ)-6-ニトロフェニル)カルバメート(3)
化合物2(0.300g、0.790mmol、1.00当量)の1,4-ジオキサン(10mL)中攪拌溶液に4-フルオロベンジルアミン(0.200g、1.58mmol、2.00当量)、Cs
2CO
3(0.500g、1.50mmol、2.00当量)、続いてPd
2(dba)
3(0.072g、0.079mmol、10mol%)およびキサントホス(0.045g、0.079mmol、10mol%)を室温で加えた。反応混合物を90℃で加熱し、同温度で8時間攪拌した。出発原料の消費(TLCによる)後、反応混合物を減圧濃縮した。得られた残渣を水(50mL)で希釈し、EtOAc(2×50mL)で抽出した。一緒にした有機抽出物を無水Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、減圧濃縮した。粗材料をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン2:23)で精製して化合物3(0.140g、50.3%)を黄色固体として得た。TLC: 40% EtOAc/ヘキサン(R
f: 0.25);
【0145】
エチル (2-アミノ-6-フルオロ-4-((4-フルオロベンジル)アミノ)フェニル)カルバメート(2A)
化合物3(0.075g、0.24mmol、1.0当量)のメタノール(3mL)中攪拌溶液に亜鉛末(0.0800g、1.22mmol、5.00当量)、続いて水(1mL)中塩化アンモニウム溶液(0.065g、1.2mmol、5.0当量)を加えた。反応混合物を室温で4時間攪拌した。出発原料の消費(TLCによる)後、反応混合物をDCM(10mL)、水(10mL)で希釈し、セライトパッドを通じて濾過した。有機層を濾液から分離し、水層をDCM(2×10mL)で抽出した。一緒にした有機抽出物を無水Na
2SO
4で乾燥させ、減圧濃縮して粗生成物を得て、これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン、1:4)で精製して化合物2A(0.050g、71%)をオフホワイト色固体として得た。TLC: 40% EtOAc/ヘキサン(R
f: 0.20);
【0146】
実施例1C: エチル (2-アミノ-5-フルオロ-4-((4-フルオロベンジル)アミノ)フェニル)カルバメート(表1の化合物3A)の合成
4,5-ジフルオロ-2-ニトロアニリン(2)
1,2,4-トリフルオロ-5-ニトロベンゼン(1)(5.00g、28.0mmol、1.00当量)のメタノール(5mL)溶液にメタノール中アンモニア(15mL)を加え、マイクロ波バイアルに入れた。反応混合物をマイクロ波中にて70℃で90分間加熱した。反応混合物を室温に冷却し、反応液から溶媒を減圧除去して粗生成物を得て、これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン1:4)で精製して化合物2(0.600g、12.0%)を黄色固体として得た。TLC: 30% EtOAc/ヘキサン(R
f: 0.35);
【0147】
6-フルオロ-N1-(4-フルオロベンジル)-4-ニトロベンゼン-1,3-ジアミン(3)
化合物2(0.600g、3.40mmol、1.00当量)の乾燥DMSO(15mL)中攪拌懸濁液に4-フルオロベンジルアミン(1.20g、10.0mmol、3.00当量)、続いてEt
3N(0.500mL、4.10mmol、1.20当量)およびI
2(触媒、1.00mg)を加えた。反応混合物を120℃に加熱し、120℃で16時間攪拌した。出発原料の消費(TLCによる)後、反応混合物を室温に冷却し、水(25mL)で希釈し、EtOAc(2×50mL)で抽出した。分離された有機層を無水Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、減圧濃縮して粗生成物を得て、これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン2:3)で精製して化合物3(0.550g、52.0%)を黄色固体として得た。
TLC: 70% EtOAc/ヘキサン(R
f: 0.20);
【0148】
エチル (2-アミノ-5-フルオロ-4-((4-フルオロベンジル)アミノ)フェニル)カルバメート(3A)
化合物3(0.400g、1.40mmol、1.00当量)のメタノール(10mL)中攪拌溶液に亜鉛末(0.470g、7.10mmol、5.00当量)、続いて塩化アンモニウム溶液(0.380g、9.10mmol、5.00当量)を滴下した。室温で5時間攪拌後、DIPEA(0.155g、1.54mmol、1.10当量)およびクロロギ酸エチル(0.151g、1.40mmol、1.00当量)を反応混合物に0℃で加え、攪拌を室温でさらに3時間続けた。出発原料の消費(TLCによる)後、反応混合物を水(25mL)で希釈し、EtOAc(2×75mL)で抽出した。分離された有機層を無水Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、減圧濃縮して粗生成物を得て、これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン1:4)で精製して化合物3A(0.100g、21.0%)を褐色固体として得た。TLC: 40% EtOAc/ヘキサン(R
f: 0.50);
【0149】
実施例1D: エチル (2-アミノ-3,5-ジフルオロ-4-((4-フルオロベンジル)アミノ)フェニル)カルバメート(表1の化合物4A)の合成
2,3,4-トリフルオロ-6-ニトロアニリン(2)
1,2,3,4-テトラフルオロ-5-ニトロベンゼン(1)(1.50g、7.69mmol、1.00当量)およびNH
3のTHF(3mL)溶液を封管に入れ、室温で16時間攪拌した。16時間後、TLCモニタリングは未反応出発原料の存在および所望の生成物の形成を示した。反応液から溶媒を減圧除去して粗生成物を得て、これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン1:19)で精製して化合物2(0.200g、14.0%)を黄色固体として得た。TLC: 20% EtOAc/ヘキサン(R
f: 0.45);
【0150】
2,6-ジフルオロ-N1-(4-フルオロベンジル)-4-ニトロベンゼン-1,3-ジアミン(3)
化合物2(0.060g、0.31mmol、1.0当量)の乾燥DMSO(0.3mL)中攪拌懸濁液に4-フルオロベンジルアミン(0.117g、0.940mmol、3.00当量)、続いてEt
3N(54.0μL、0.370mmol、1.20当量)およびI
2(触媒、1.0mg)を加えた。反応混合物を120℃に加熱し、120℃で16時間攪拌した。出発原料の消費(TLCによる)後、反応混合物を室温に冷却し、水(25mL)で希釈し、EtOAc(2×50mL)で抽出した。分離された有機層を無水Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、減圧濃縮して粗生成物を得て、これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン2:23)で精製して化合物3(0.064g、69%)を黄色固体として得た。TLC: 25% EtOAc/ヘキサン(R
f: 0.20);
【0151】
エチル (2-アミノ-3,5-ジフルオロ-4-((4-フルオロベンジル)アミノ)フェニル)カルバメート(4A)
化合物3(0.062g、0.21mmol、1.0当量)のメタノール(0.560mL)中攪拌溶液に亜鉛末(0.068g、1.04mmol、5.00当量)、続いて塩化アンモニウム溶液(55.3mg、1.04mmol、5.00当量)を滴下した。室温で4時間攪拌後、DIPEA(48.0μL、0.260mmol、1.25当量)およびクロロギ酸エチル(20.0μL、0.210mmol、1.00当量)を反応混合物に10℃で加え、攪拌を室温でさらに2時間続けた。出発原料の消費(TLCによる)後、反応混合物を水(25mL)で希釈し、EtOAc(2×75mL)で抽出した。分離された有機層を無水Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、減圧濃縮して粗生成物を得て、これを中性アルミナカラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン18:82)で精製して化合物4A(0.017g、21%)をオフホワイト色固体として得た。TLC: 50% EtOAc/ヘキサン(R
f: 0.50);
【0152】
実施例1E: エチル-d5 (2-アミノ-3-フルオロ-4-((4-フルオロベンジル)アミノ)フェニル)カルバメート(表3の化合物10A)の合成
実施例1Aと同様に調製した化合物3(1.00当量)のメタノール(7.2mL)中攪拌溶液に亜鉛末(5.00当量)、続いて塩化アンモニウム溶液(5.00当量)を滴下する。室温で5時間攪拌後、DIPEA(1.25当量)およびクロロギ酸エチル-d5(1.00当量)を反応混合物に10℃で加え、攪拌を室温でさらに3時間続ける。出発原料の消費(TLCによる)後、反応混合物を水(24mL)で希釈し、1時間攪拌して固体を得る。得られた固体を濾過し、EtOAc(15mL)に溶解させ、再度濾過して未溶解固体を除去する。濾液を蒸発させ、n-ヘキサンを使用して再結晶して化合物10Aを得る。
【0153】
実施例2. 18F化合物の実験手順
実施例2A: [
18F]-エチル (2-アミノ-4-((4-フルオロベンジル)アミノ)フェニル)カルバメート([
18F]-エゾガビン)(表2の化合物5A)の合成
3-フルオロ-6-ニトロアニリン
1,3-ジフルオロ-4-ニトロベンゼン(1)(1.59g、10.0mmol、1.00当量)のメタノール中アンモニア(1.5mL)溶液をマイクロ波バイアルに入れ、マイクロ波中で70℃に90分間加熱する。溶媒を減圧蒸発させて粗混合物を得て、これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製して所望の生成物を得る。
【0154】
N1-(4-フェニルボロン酸メチル)-4-ニトロベンゼン-1,3-ジアミン(3)
丸底フラスコに3-フルオロ-6-ニトロアニリン(2)(1.00g、6.40mmol、1.00当量)および4-フェニルボロン酸ピナコールエステル(4.47g、19.2mmol、3.00当量)を加える。次に乾燥DMF(25mL)、続いてEt
3N(0.775g、7.68mmol、1.20当量)およびI
2(触媒、1.00mg)を加える。反応混合物を120℃に加熱し、120℃で24時間攪拌する。次に反応混合物を室温に冷却し、水(75mL)で希釈し、酢酸エチル(2×60mL)で抽出する。有機層を無水Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、減圧濃縮して粗材料を得て、これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/ヘキサン)で精製して化合物3を所望の生成物として得る。
【0155】
エチル (2-アミノ-4-((4-ベンジルボロン酸ピナコールエステル)アミノ)フェニル)カルバメート(4)
化合物3(1.00g、2.71mmol、1.00当量)のメタノール(7mL)中攪拌溶液に亜鉛末(0.888g、13.5mmol、5.00当量)、続いて塩化アンモニウム溶液(0.725g、13.55mmol、5.00当量)を滴下する。5時間後、DIPEA(0.436g、3.38mmol、1.25当量)およびクロロギ酸エチル(0.292g、2.71mmol、1.00当量)を反応混合物に10℃で加え、攪拌を出発原料の消費(TLCによる)まで続ける。反応混合物を水(24mL)で希釈し、酢酸エチル(75mL)中で抽出し、ブラインおよびMgSO4で乾燥させる。濃縮後、得られた粗材料を精製して標記化合物を得る。
【0156】
エチル (2-tertブトキシカルボニルアミノ-4-((4-ベンジルボロン酸ピナコールエステル)tertブトキシカルボニルアミノ)フェニル)カルバメート(5)
丸底フラスコに4(1.00g、2.45mmol、1.00当量)を加え、この化合物をジクロロメタンに溶解させる。次にBoc無水物(1.175g、5.39mmol、2.2当量)をそこに加え、反応混合物を室温で16時間攪拌する。反応混合物を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/ヘキサン)で精製して化合物5を所望の生成物として得る。
【0157】
パラジウム錯体6
MeOH(5.0mL)およびベンゼン(5.0mL)中のRitterら(Science, 2011, 334, 639-642)に従って合成したパラジウム錯体A(550mg、0.996mmol、1.00当量)に5(527mg、1.29mmol、1.3当量)およびK
2CO
3(206mg、1.494mmol、1.5当量)を23℃で加える。反応混合物を23℃で10時間攪拌した後、CH
2Cl
2(80mL)で希釈し、セライトを通じて濾過し、さらなるCH
2Cl
2(30mL)で溶離する。次に溶液を水(3×20mL)で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、濃縮する。次に得られた残渣をCH
2Cl
2/ペンタンを使用して再結晶して所望の化合物6を得る。
【0158】
[
18F]-エゾガビン
しっかりと蓋をしたバイアル中で、アセトン1.5mL中のRitterら(Science, 2011, 334, 639-642)に従って調製したパラジウム錯体Bに6を加え、混合物を85Cに10分間加熱する。バイアルを冷却し、得られた溶液をHPLC経由で精製して所望の化合物5A(表2)を得る。
【0159】
実施例2B
1-フルオロ-2,4-ジニトロ-3-アミノベンゼン(8)
1,3-ジフルオロ-2,4-ニトロベンゼン(7)(2.04g、10.0mmol、1.00当量)のメタノール中アンモニア(3.0mL)溶液をマイクロ波バイアルに入れ、マイクロ波中で70℃に90分間加熱する。溶媒を減圧蒸発させて粗混合物を得て、これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/ヘキサン)で精製して所望の生成物8を得る。
【0160】
1,3-ジニトロ-2-アミノ-4-(4-フルオロベンジル)アミノベンゼン(9)
丸底フラスコに8(2.01g、10mmol、1当量)、4-フルオロベンジルアミン(3.79g、30mmol、3当量)およびトリエチルアミン(1.21g、12mmol、1.2当量)を加える。次にDMF(40mL)を上記混合物に加えた後、ヨウ素(触媒、1mg)を加える。次に反応混合物を120℃に加熱し、120℃で16時間攪拌した後、フラスコを室温に冷却する。反応混合物を酢酸エチルで希釈し、水(5×80mL)で洗浄し、ブライン、次にMgSO
4で乾燥させる。懸濁液を濾過し、濃縮して残渣を得て、これをシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で精製して所望の生成物(9)を得る。
【0161】
エチル (2-アミノ-3-ニトロ-4-((4-フルオロベンジル)アミノ)フェニル)カルバメート(10)
化合物9(1.5g、5mmol、1.00当量)のメタノール(7mL)中攪拌溶液に亜鉛末(1.64g、25mmol、5.00当量)、続いて塩化アンモニウム溶液(1.33g、25mmol、5.00当量)を滴下する。5時間後、DIPEA(0.806g、6.25mmol、1.25当量)およびクロロギ酸エチル(0.54g、5mmol、1.00当量)を反応混合物に10℃で加え、攪拌を出発原料の消費(TLCによる)まで続ける。反応混合物を水(30mL)で希釈し、酢酸エチル(75mL)中で抽出し、ブラインおよびMgSO
4で乾燥させる。濃縮後、得られた粗材料を精製して標記化合物を得る。
【0162】
エチル (2-アミノ-3-[
18F]フルオロ-4-((4-フルオロベンジル)アミノ)フェニル)カルバメート([
18F]フルオロエゾガビン)
4mL反応バイアル中で、ORTG/QMAアニオン交換カラム上に沈着した
18FをEt
4NHCO
3溶液で溶離する。得られた溶液を窒素で乾燥させ、加熱する(110℃)。次に得られた残渣を窒素流下、95℃でアセトニトリルを使用して2回共沸乾燥させる。次に10のアセトニトリル(無水)1mL溶液を加え、バイアルにしっかりと蓋をし、加熱ブロック中で110℃に10分間加熱する。室温に冷却後、溶液を適宜再構成し、精製して所望の化合物6A(表2)を得る。
【0163】
実施例2C
[
18F]フルピルチン
1,3-ジフルオロ-4-ニトロベンゼンを2,6-ジフルオロ-3-ニトロピリジンで代用する実施例2Aに記載の手順と同一の手順を使用して18F-フルピルチン(化合物7A、表2)の調製を行う。
【0164】
実施例2D
[
18F]フルオロフルピルチン
1,3-ジフルオロ-2,4-ニトロベンゼンを2,6-ジフルオロ-3,4-ジニトロピリジンで代用する実施例2Bに記載の手順と同一の手順を使用して18F-フルオロフルピルチン(化合物8A、表2)の調製を行う。
【0165】
実施例2E: エチル (2-アミノ-3-フルオロ-4-((4-[
18F]フルオロベンジル)アミノ)フェニル)カルバメート(表2の化合物9A)の合成
2,3-ジフルオロ-6-ニトロアニリン(2)の合成
1,2,3-トリフルオロ-4-ニトロベンゼン(1)(1.0g、5.6mmol、1.00当量)の新たに調製したメタノール中アンモニア(3mL)溶液をマイクロ波バイアルに加え、マイクロ波中で70℃に90分間加熱した。溶媒を減圧蒸発させて粗混合物を得て、これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製して所望の生成物(2、0.85gm、81%)を得た。
【0166】
2-フルオロ-3-(4-ブロモベンジル)-6-ニトロアニリン(3)の合成
丸底フラスコに2,3-ジフルオロ-6-ニトロアニリン(0.50g、2.87mmol、1.00当量)および4-ブロモベンジルアミン(0.959g、5.15mmol、1.80当量)を加えた。次にジメチルスルホキシド(2.5mL)、続いてEt
3N(0.968mL、6.88mmol、2.40当量)およびI
2(触媒、10mg)を加えた。反応混合物を120℃に加熱し、3時間攪拌した。次に反応混合物を周囲温度に冷却し、水(75mL)で希釈し、酢酸エチル(2×60mL)で抽出した。有機層を無水Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、減圧濃縮して粗材料を得て、これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(10%酢酸エチル/ヘキサン)で精製して化合物3を所望の生成物(0.869g、89%)として得た。
【0167】
エチル (2-アミノ-3-フルオロ-4-((4-ブロモベンジル)アミノ)フェニル)カルバメート(4)の合成
化合物3(0.90g、2.64mmol、1.00当量)のメタノール(7.9mL)中攪拌溶液に亜鉛末(0.864g、13.2mmol、5.00当量)、続いて塩化アンモニウム溶液(0.706g、13.2mmol、5.00当量)を滴下した。5時間後、DIPEA(0.426g、3.3mmol、1.25当量)およびクロロギ酸エチル(0.286g、2.64mmol、1.00当量)を反応混合物に10℃で加え、攪拌を室温で3時間続けた。反応混合物を水(24mL)で希釈し、酢酸エチル(75mL)中で抽出し、ブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥させた。濃縮後、得られた粗材料をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して化合物4(510mg、50%)を得た。
【0168】
エチル (2-
tブトキシカルボニルアミノ-3-フルオロ-4-((4-ブロモベンジル)
tブトキシカルボニルアミノ)フェニル)カルバメート(5)の合成
4(0.50g、1.3mmol、1.00当量)を加えた厚肉ガラス管にTHF:DCM(1:1)5mLを加えた後、Boc無水物(0.85g、3.9mmol、3.0当量)を加えた。次に管を封止し、50℃に24時間加熱した。室温に冷却後、混合物を濃縮し、酢酸エチル中に取り込み、水で洗浄し、MgSO
4で乾燥させた。溶液を濃縮して残渣を得て、これをシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル)で精製して化合物5(420mg、55%)を得た。
【0169】
エチル (2-
tブトキシカルボニルアミノ-3-フルオロ-4-((4-(1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンジル)
tブトキシカルボニルアミノ)フェニル)カルバメート(6)の合成
20mLバイアルに5(380mg、0.65mmol)、ビスピナコラトジボロン(198mg、0.78mmol、1.2当量)、酢酸カリウム(192mg、1.95mmol、3当量)およびPd(dppf)Cl
2.CH
2Cl
2(23.7mg、0.032mmol、0.05当量)を加えた。次にジオキサンを加え、反応液を窒素下95℃で12時間攪拌した。次に反応混合物を濃縮し、シリカパッドを通じて濾過し、1:1ヘキサン:酢酸エチル(200mL)で溶離した。次に透明で無色の濾液を濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル)を使用して精製して化合物6(260mg、63%)を得た。
【0170】
20mlバイアルに6(240mg、0.38mmol)およびA(232mg、0.38mmol、1当量)を加えた。次に1:1ベンゼン:メタノール7.6ml、続いて炭酸カリウム(79mg、0.57mmol、1.5当量)を加えた。反応溶液を22時間攪拌した後、濃縮し、ジクロロメタンに再溶解させ、セライトパッドを通じて濾過し、ジクロロメタン(40mL)で溶離した。濾液を濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル)で精製して化合物7を黄色固体(230mg、58%)として得た。
注記: 上記に示す化合物Aは公表された手順(Lee et. al., Science, 2011, 334, 639-642)に従って合成した。
【0171】
4mg/mL KHCO
3溶液10mL、続いて水10mLで既に調節されたQMA Lightカートリッジ(マサチューセッツ州ミルフォード、Waters)上に、PETNET(マサチューセッツ州ウォーバーン)から得た
18F(
18O水としての)を最初に捕捉した。次に捕捉された
18Fを2mg/mL KHCO
3溶液0.5mlで溶離し、カートリッジをアセトニトリル中18C6溶液(26.2mg/ml)0.5mLで洗浄して5mL Wheaton Reacti-Vialに入れた。次にバイアルを窒素流下での乾燥用に110℃で加熱ブロックに挿入した。さらなるアセトニトリル1mlを乾燥に使用した後、白色残渣がバイアルの壁面に見られた。これに続いてアセトン交換工程を行い、この工程ではアセトン0.5mlを加え、加熱せずに一定の窒素流下で除去した。側面に沿ったガラス状膜、およびバイアルの底にある粘稠油状物がこの過程の終わりに得られた(合計時間約15分)。次に攪拌子を導入し、バイアルを窒素で洗い流しながら速やかに蓋をした。
【0172】
封止されて窒素が充填されたバイアル中に含まれたPd(IV)ピコリン(10mg)をアセトン(0.5〜0.6mL)に溶解させ、乾燥
18Fを含む上記バイアルに加えた。この混合物を10分間激しく攪拌した後、蓋を開け、JandaJel(商標)-ポリピリジン(20〜30mg)を含むピペットを通じて溶液を濾過した後、さらなるアセトン0.5mlですすいで化合物7(4〜5mg)を含むバイアルに入れた。次にこのバイアルを85℃に10分間加熱した後、ラジオTLCによる分析は変換率37%を示した。次にアセトンを蒸発させ、ヘキサン:酢酸エチル(1:1)0.5mlを加えた。次にこれをシリカを含むピペットに通した後、さらなるヘキサン:酢酸エチル(1:1)1〜1.5mlで溶離した。次にヘキサン:酢酸エチル溶液を蒸発乾固させ、濃HCl(0.5mL)を加えた。次にバイアルを85℃に5分間加熱した後、1:1 MeCN:水2mlに再構成し、続いて半分取HPLC(4.6×10mm Xterra MS C
18、0.1%ギ酸を有する6:4 MeCN:水; 5ml/分)上で精製して所望の生成物を得た。9Aの保持時間は対応する
19F化合物のそれに一致していた。
注記: Pd(IV)ピコリンは公表された手順(Lee et. al., Science, 2011, 334, 639-642)に従って合成した。
【0173】
実施例3. KCNQ2/3チャネル活性化活動の評価
クローンニングされたKCNQ2/3カリウムチャネル(ヒトKCNQ2/3 遺伝子によってコードされ、HEK293細胞中で発現)に対するエゾガビンおよび化合物1Aのインビトロ作用を、自動並列パッチクランプシステムであるQPatch HT(登録商標)(デンマークSophion Bioscience A/S)を使用して室温で評価した。各試験物を0.01、0.1、1、10、および100μMで評価し、各濃度を少なくとも2つのセルにおいて試験した(n≧2)。各試験物濃度に対する曝露時間は5分とした。
【0174】
各記録についてのベースラインを5〜10分のビヒクル適用(HBPS + 0.3% DMSO)を使用して確立した。単一の試験物濃度をビヒクル適用後5分間適用した後、30μMフルピルチンを3分間適用した。各記録は過最大量の30μMリノピルジンで終了した。結果の概要を表4に示す。リーク減算応答を使用して以下の式によって活性化%を算出した。
【0175】
【表4】
【0176】
本発明の化合物2A、3A、および4Aをこのアッセイ法において単一濃度(0.1μM)で試験したところ、活性がエゾガビンと同等であることがわかった。