特許第6195947号(P6195947)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6195947
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】光学式測定システムおよび気体検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/39 20060101AFI20170904BHJP
   G01B 9/02 20060101ALI20170904BHJP
【FI】
   G01N21/39
   G01B9/02
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-19942(P2016-19942)
(22)【出願日】2016年2月4日
(65)【公開番号】特開2016-142738(P2016-142738A)
(43)【公開日】2016年8月8日
【審査請求日】2016年2月4日
(31)【優先権主張番号】15153757.8
(32)【優先日】2015年2月4日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512117214
【氏名又は名称】アクセトリス アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Axetris AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ヴィトマン
(72)【発明者】
【氏名】マーク−オリヴァー ツフェライ
(72)【発明者】
【氏名】ウアス ベーグリ
(72)【発明者】
【氏名】カイ ハスラー
【審査官】 伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−181920(JP,A)
【文献】 特開昭58−223041(JP,A)
【文献】 特開昭49−099082(JP,A)
【文献】 特開2007−298510(JP,A)
【文献】 特表2010−526315(JP,A)
【文献】 特表2012−521002(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0281221(US,A1)
【文献】 Ehlers, P. et al,Use of Etalon-Immune Distances to Reduce the Influence of Background Signals in Frequency-Modulation Spectroscopy and Noise-Immune Cavity-Enhanced Optical Heterodyne Molecular Spectroscopy,J. Opt. Soc. Am. B,米国,Optical Society of America,2014年11月 4日,Vol.31, No.12,P2938−2945
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/61
G01B 9/00−9/10
G01J 3/00−4/04
G01J 7/00−9/04
G01B 11/00−11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体検出のための光学式測定システム(1)であって、前記光学式測定システムは、
少なくとも1つのハウジング(2)内に配置されている光学部品(20)を形成する光源(4)と、
少なくとも1つのハウジング(6)内に配置されている光学部品(20)を形成する少なくとも1つの光検出器(8)と、
記ハウジング(2、6)に設けられている、光学機械部品(15)および/または他の光学機械部品(15)を形成するハウジングウィンドウ(3、7)と、
を有しており、
前記光学機械部品(15)は、光学的に作用する境界表面を含んでおり、
前記光源(4)は、変調スパンΔλと平均波長λとを有する、変調された主要光線(9)を放射し、
少なくとも1つの光学機械部品(15)の少なくとも1つの光学的に作用する境界表面で前記主要光線(9)から前記光源(4)の方向および/または前記光検出器(8)の方向に部分的に反射/散乱された少なくとも1つの散乱光線(11)が、前記主要光線(9)との干渉によって、前記光源(4)における自己混合および/または前記光検出器(8)でのエタロンを生じさせ、
前記干渉は干渉された主要光線(9)を生じさせるので、前記光検出器の測定信号は、干渉信号の部分と主要信号の部分とを含み、
前記干渉信号は、前記光検出器(8)の復調された測定信号に影響を与え、
前記光学部品(20)および/または前記光学機械部品(15)のうちの少なくとも1つは、他の光学部品(20)および/または光学機械部品(15)に対して配置されているので、前記光学部品および/または前記光学機械部品の光学的に作用する境界表面同士の空間配向および/または距離(L)によって、前記主要光線(9)と前記散乱光線(11)とに対する光路長差ΔSが生じ、
前記光路長差ΔSは、前記主要光線(9)の光路長SSMainと、前記散乱光線(11)の光路長SScatterの間の差によって決定され、前記光路長差ΔSは、前記平均波長λを有する前記主要光線(9)の選択された変調スパンΔλで、全ての位相に対して、復調された測定信号に対して、前記主要信号への前記干渉信号の作用を消去する、または、低減させ、
前記復調された測定信号の周期Λを有する自由スペクトル領域Λは、前記光路長差ΔSから結果として生じ、
前記周期Λは、前記主要信号との干渉によって、前記少なくとも1つの光学部品または光学機械部品(15)によって生じる前記干渉信号によって生じ、
前記主要光線(9)の前記変調にはあらゆる周期的な波形が与えられ、前記変調スパンΔλは、前記平均波長λの前記主要光線(9)を変調するのに使用された変調信号のピークピーク振幅である、
光学式測定システム。
【請求項2】
前記光路長差ΔSは、0.5×ΔX×(m+1)を上回り、
ここで、使用されている測定信号の次数2f、4f、6f、・・・に従って、m=2、4、6、・・・、であり、
ここで、ΔXは、復調された前記測定信号のフーリエ成分が、最も高い振幅ピークに隣接して、繰り返して最小になる距離である、
請求項1記載の光学式測定システム。
【請求項3】
前記光路長差ΔSは、n×ΔXの0.7倍を上回り、または、n×ΔXの1.3倍を下回り、
ここで、n=1、2、3、・・・、であり、かつ、n≠m/2であり、かつ、使用されている測定信号の次数2f、4f、6f、・・・に従って、m=2、4、6・・・、であり、
ここで、ΔXは、復調された前記測定信号のフーリエ成分が、最も高い振幅ピークに隣接して、繰り返して最小になる距離である、
請求項1記載の光学式測定システム。
【請求項4】
前記光路長差ΔSは、n×ΔXの0.8倍を上回る、または、n×ΔXの1.2倍を下回る、
請求項3記載の光学式測定システム。
【請求項5】
前記光路長差ΔSは、n×ΔXに等しい、
請求項3記載の光学式測定システム。
【請求項6】
前記主要光線(9)は、三角波形によって変調されている、
請求項1から5までのいずれか1項記載の光学式測定システム。
【請求項7】
ΔXは、λ/Δλである、
請求項6記載の光学式測定システム。
【請求項8】
前記光源(4)からの、前記光源(4)の、設けられているハウジングウィンドウ(3)の内側面(12)の距離(L)、および/または、前記光検出器(8)からの、前記光検出器(8)の、設けられているハウジングウィンドウ(7)の内側面(12)の距離(L)は、少なくとも8mmであり、有利には少なくとも10mmであり、さらに有利には少なくとも15mmである、
請求項1から7までのいずれか1項記載の光学式測定システム。
【請求項9】
光学式測定システム(1)を用いた気体検出のための方法であって、前記光学式測定システム(1)は、
少なくとも1つのハウジング(2)内に配置されている光学部品(20)を形成する光源(4)と、
少なくとも1つのハウジング(6)内に配置されている光学部品(20)を形成する少なくとも1つの光検出器(8)と、
記ハウジング(2、6)に設けられている、光学機械部品(15)および/または他の光学機械部品(15)を形成するハウジングウィンドウ(3、7)と、
を有しており、
前記光学機械部品(15)は、光学的に作用する境界表面を含んでおり、
前記方法は、
前記光源(4)から、変調スパンΔλと平均波長λとを有する、変調された主要光線(9)を放射するステップと、
前記主要光線(9)が気体または気体混合気(10)を通過した後に、前記少なくとも1つの光検出器(8)において、前記主要光線(9)を受光するステップと、
前記主要光線(9)との干渉によって、少なくとも1つの前記光学機械部品(15)の少なくとも1つの光学的に作用する境界表面で前記主要光線(9)から前記光源(4)の方向および/または前記光検出器(8)の方向に部分的に反射/散乱された少なくとも1つの散乱光線(11)によって、前記光源(4)における自己混合および/または前記光検出器(8)でのエタロンを生じさせるステップと、
前記干渉によって、干渉された主要光線(9)を形成し、前記光検出器(8)が、干渉信号の部分と主要信号の部分とを含む測定信号を形成するステップと、
前記干渉信号によって、前記光検出器(8)の復調された測定信号に悪影響を与えるステップと、
を有しており、
前記光学部品(20)および/または前記光学機械部品(15)のうちの少なくとも1つは、他の光学部品(20)および/または光学機械部品(15)に対して配置されているので、前記光学部品および/または前記光学機械部品の光学的に作用する境界表面同士の空間配向および/または距離(L)によって、前記主要光線(9)と前記散乱光線(11)とに対する光路長差ΔSが生じ、
前記光路長差ΔSは、前記主要光線(9)の光路長SSMainと、前記散乱光線(11)の光路長SScatterの間の差によって決定され、前記光路長差ΔSは、前記平均波長λを有する前記主要光線(9)の選択された変調スパンΔλで、全ての位相に対して、復調された測定信号に対して、前記主要信号への前記干渉信号の作用を消去する、または、低減させ、
前記復調された測定信号の周期Λを有する自由スペクトル領域Λは、前記光路長差ΔSから結果として生じ、
前記周期Λは、前記主要信号との干渉によって、前記少なくとも1つの光学部品または光学機械部品(15)によって生じる前記干渉信号によって生じ、
前記主要光線(9)の前記変調にはあらゆる周期的な波形が与えられ、前記変調スパンΔλは、前記平均波長λの前記主要光線(9)を変調するのに使用された変調信号のピークピーク振幅である、
方法。
【請求項10】
前記光路長差ΔSは、0.5×ΔX×(m+1)を上回り、
ここで、使用されている測定信号の次数2f、4f、6f、・・・に従って、m=2、4、6、・・・、であり、
ΔXは、復調された前記測定信号のフーリエ成分が、最も高い振幅ピークに隣接して、繰り返して最小になる距離である、
請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記光路長差ΔSは、n×ΔXの0.7倍を上回り、または、n×ΔXの1.3倍を下回り、
ここで、n=1、2、3、・・・、であり、かつ、n≠m/2であり、かつ、使用されている測定信号の次数2f、4f、6f、・・・に従って、m=2、4、6、・・・、であり、
ここで、ΔXは、復調された前記測定信号のフーリエ成分が、最も高い振幅ピークに隣接して、繰り返して最小になる距離である、
請求項9記載の方法。
【請求項12】
前記光路長差ΔSは、n×ΔXの0.8倍を上回る、または、n×ΔXの1.2倍を下回る、
請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記光路長差ΔSは、n×ΔXに等しい、
請求項11記載の方法。
【請求項14】
前記主要光線(9)は、三角波形によって変調されている、
請求項9から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
ΔXはλ/Δλである、
請求項14記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学式測定システムおよび気体検出方法に関する。この光学式測定システムは、少なくとも1つのハウジング内に配置された光学部品を形成する光源と、少なくとも1つの光検出器とを含んでいる。この少なくとも1つのハウジングは、任意に、光学機械部品および/または他の光学機械部品を構成するハウジングウィンドウ有しており、ここでこの光学機械部品は、光学的な効果を有する境界面を有しており、光源は、平均波長λと変調スパンΔλとを有する変調された主要光線を放射し、主要光線の少なくとも1つの散乱光線は、主要光線との干渉によって、光源における自己混合および/または光検出器におけるエタロンを生じさせる。ここで、主要光線は、部分的に、少なくとも1つの光学機械部品の少なくとも1つの光学的な効果を有する境界面で、主要光線から、光源および/または光検出器の方向に部分的に反射され/散乱される。上記の干渉は、干渉された主要光線を生じさせるので、光検出器の測定信号は、干渉信号の部分と主要信号の部分とを含んでおり、ここでこの干渉信号は、光検出器の変調された測定信号に影響を与える。
【背景技術】
【0002】
このタイプの光学式測定システムは、種々の測定タスクに使用されている。これは例えば、長さ測定または立体視である。このタイプの測定システムでは、典型的に、レーザーダイオードが光源として使用され、適切なフォトダイオードが光検出器として使用される。レーザ吸収分光法は、例えば気体検出のために使用される。従って、気体または気体混合気を通過した後に、光源によって放射された主要光線が光検出器によって検出され、受信された信号は、特に評価のために、信号分析器、特にロックインアンプに供給される。信号分析器は、一定の干渉パターンを、光検出器の測定信号から選り分ける。しかし、信号分析器は完全に、時間可変干渉パターンを、受信信号から除去することはできない。従って、ノイズの上昇によって、検出されるべき気体に対する検出感度が顕著に低減されてしまう。影響の中でもとりわけ温度影響が、時間可変干渉パターンを生じさせる。ここでは、温度影響が、光源から光検出器までの主要光線に対する光路の長さを変える。さらに、測定システムのハウジングの内側表面、または、ハウジング内に配置されたビーム形成および/またはビーム配向光学部品または光学機械部品(例えばレンズまたはミラー等)の境界表面、または、ハウジングウィンドウの内側表面または外側表面での主要光線の反射および/または散乱が、この種の干渉パターンを生じさせ得る。この反射または散乱は、光源および/または光検出器へと配向された散乱光線を生じさせることがある。この種の散乱光線は、光源における自己混合および/または光検出器におけるエタロンを次のように生じさせる。すなわち、これらが、干渉パターンを形成する主要光線と干渉し、かつ、光検出器によって受光される、干渉された主要光線を形成するように生じさせる。これらの干渉パターンは温度の関数でもあり、従って、時間にわたって変化する。自己混合およびエタロンは、光学部品および/または光学機械部品からの散乱光線の種々の長さの光路によって生じる。これらは、それぞれ部分的に、主要光線の光路長に関連して、主要光線を光源または光検出器まで反射させる。エタロンの場合には、反射性または散乱性光学部品および/または光学機械部品の、光検出器までの距離が重要であり、自己混合の場合には、各部品から光源のアパーチャまでの距離が重要であり、これは、アパーチャを通って共振器に入射する散乱光線のための「受光部」を形成し、かつ、これは、レーザの内側で、反射して戻された主要ビームと干渉する。
【0003】
気体検出のためのレーザ吸収分光法では、しばしば、波長変調法が使用される。従って、波長および典型的に、光源の主要光線の強度、例えば、連続的波長可変ダイオードレーザの強度も、周波数fで変調される。ここで波長は、分析されるべき試料の、考えられる吸収スペクトルにわたって変化する。光の波長が気体の共振周波数と一致するとき、または、光の波長が共振周波数にわたって変化するときに、レーザ光は気体試料によって吸収される。気体試料を通過した後の主要光線は、光検出器、例えばフォトダイオードに衝突し、光検出器の出力信号は変調周波数fで、および、スーパーインポーズ高調波周波数mfで、より高いAC電圧成分を含む。ここで、mは自然数である。高調波周波数mfでの光検出器の出力信号の復調は、測定を、より低い1/fノイズを有するより高い周波数帯域mfへと移動させる。これによって、光学的な測定システムの測定感度が向上する。
【0004】
レーザを光源として使用する場合には、コヒーレンス長が比較的長いので、特に、光源から発生する主要光線間の干渉の発生と、主要光線の不所望な反射または散乱によって形成された散乱光線の発生とが特に不利である。従って、2つの異なる現象が区別されなければならない。レーザのレーザアパーチャに戻されて結合され、かつ、自己混合として知られている、放射による発光に影響を与える現象は、測定に、特に強い影響を与える。なぜなら、戻し結合された放射は、レーザにおいて増幅されるからである。実際の使用においては、自己混合の主な理由は、しばしば、ハウジングウィンドウでの主要光線の散乱または反射に見出される。このハウジングウィンドウは、主要光線の出射のために設けられており、これは、レーザ光源を周辺影響、例えば、汚染または周囲湿度から保護する。散乱によって、この現象は、ハウジングウィンドウが傾斜している場合にも存在する。なぜなら、光の一部が、直接的にまたは間接的に、例えば、ハウジング内壁での散乱によって、レーザアパーチャ内に戻し結合され得るからである。光源のアパーチャからさらに離れている、他の表面も、自己混合を生じさせ得る。これは例えば、フォトダイオードでの反射/散乱である。しかし一般的に、その影響は低い。光学式測定システム内で発生する第2の現象は、検出器での干渉によって生じる。これは、主要ビームと散乱ビームの種々の光学的な波長によって生じ、エタロンと称される。自己混合に類似したエタロンは、測定システム内の全ての光学部品および光学機械部品での散乱光線によって生成される。これはその後、検出器で、主要光線と干渉する。自己混合および/またはエタロンによる光検出器の測定信号、ひいては、測定値の変造を最小化するために、自己混合またはエタロン自体のうちのどちらかが低減されなければならない、または、測定値へのその影響が低減されなければならない。
【0005】
このような干渉を低減するために、当該分野において種々の措置が知られている。特に、全てのハウジングウィンドウを非反射性にすること、ハウジングウィンドウエッジを成形加工して、傾斜させることが知られている。これは、散乱をできる限り防止するための、または、散乱を主要光線から偏向させるための、ビーム路におけるハウジングウィンドウの傾斜アレンジメントを意味する。この散乱は、主要光線との干渉、ひいては自己混合を生じさせ得る。さらに、光学式測定システムのハウジングおよび/またはビーム路に配置されたアパーチャにおける吸収コーティングは、反射と散乱を低減させる。この措置は効果的ではあるが、主要光線の全ての反射および散乱が保護されるわけではない。これは、典型的に、極めて強い負の干渉の影響を、コヒーレント放射を有する光学システムにおける光検出器の測定信号に対して有する自己混合を生じさせてしまう。動作中、ハウジングウィンドウおよびこのような光学式測定システムの表面は極めて頻繁に、例えば塵または凝結によって汚染される。この汚染は、主要光線の散乱を著しく増大させ、上述した干渉は、システムの使用可能寿命にわたって増大する。従って、不可避の汚染がシステムの測定信号に与える悪影響をできるだけ僅かにするように、システムを設定することは、この種の光学式測定システムの使用可能寿命にとって有利である。
【0006】
スペクトルを測定する場合には、上述した干渉は典型的に、当該分野において「縞」として設計されている周期的な信号として可視である。自己混合およびエタロンは、波長可変ダイオードレーザ分光システム(TDLS)の場合に、測定される気体吸収線の歪みを生じさせる。これは、単に、較正または計算的な手法によって除去することはできない。従って、測定される吸収線の幅の振幅の次数における周期との周期的な干渉は、特に不利である。
【0007】
特に、自己混合現象は、光学的な絶縁体によって格段に低減可能である。残念ながら、非電気通信波長に対する良好な質の絶縁体は極めて高価であるので、これらが工業的な用途で使用されるのは希である。さらに、光学的な絶縁体自体も光学的なインタフェースを有していることが認められている。ここで、光学的な調整を行う、光学的な絶縁体の光学的なインタフェースは、レーザの方に向けられており、反射/散乱によって自己混合も生じさせ得る。Perssonは、「Intensity referencing」方法を提案している。これは、平衡型検出を使用する間は自己混合作用を低減させる。しかし、これによっては、10分の1の干渉振幅低減しか得られない(applied physics B87,523−530(2007))。Websterは、光路の部分内へ、コプレーナ傾斜プレートを挿入してエタロンを防ぐ極めてシンプルな方法を開示している。ここでコプレーナプレートは、レーザ波長を通す。測定の間にこの傾斜プレートを、周期的に軸を中心に回転させることによって、光路長の周期的な変更による干渉信号の平均化が容易になる。この解決策は、30分の1に干渉信号を低減させるのに役立つ(Opt.Soc.Am.B2 1464(1985))。センサの使用可能寿命を長くするように機械的に動かされる部品の摩損を阻止するために、ピエゾベースのアクチュエータが使用可能である。しかしこれらは、短い経路長の差しか生じさせない。ここでこれらの部材は、気体吸収線の幅と比べて極めて小さい自由スペクトル領域との干渉の平均化に対してのみ効果的に使用可能である。SilverおよびSantonは、例えば、ピエゾ電気トランスデューサを用いる(米国特許第4934816号明細書)。これは、マルチ経路セルのミラーの長手方向の偏向を変化させ、これによって、ミラー配置に基づく干渉を平均化する。しかし、この種のピエゾ電気トランスデューサは、一般的に、かなり高価である。Reid等は、変調信号に、変調周波数よりも低い付加的な周波数を混合することによって、光路長を変えなくても、このような干渉を平均化することが可能であることを示した(Appl.Opt.19,3349−3354、1980)。しかし、この原理は、極めて小さい自由スペクトル領域との干渉に対してのみ有効である。なぜなら、平均化が、少なくとも1つの周期にわたって実行されなければならないからである。しかし、ローパスフィルタリングによってほぼ同じ結果が得られる。これは例えば、データ処理における信号平均化を用いて行われる。従って、自由スペクトル領域は、格段に、気体吸収線の幅と異なっていなければならない。そうでない場合には、吸収信号も、平均化の間に影響を受けてしまう。上記の解決策は一般的に、特定の問題に対してのみ特別に、効果的に使用可能である。例えば、レーザの前の光学的な絶縁体は、自己混合の抑制をもたらすだけであり、検出器上のエタロンの抑制はもたらさない。上述した解決策の多くは、検出器の平均化された測定信号における干渉を低減することを目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4934816号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Persson著「applied physics B87」P523−530、出版2007年
【非特許文献2】Webster著「Opt.Soc.Am.B2」P1464、出版1985年
【非特許文献3】Reid等著「Appl.Opt.19」P3349−3354、出版1980年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、上述した先行技術を改善して、変調された測定信号への、光検出器の干渉信号の影響を格段に低減する選択肢を提供することである。これによって主要信号が測定信号において明確に検出可能になり、光学式測定システムの測定感度が格段に改善される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題は、独立請求項1の特徴部分に記載された構成を有する光学式測定システム、および、独立請求項9記載の特徴部分に記載された構成によって解決される。さらなる有利な実施形態は、従属請求項から導出される。
【0012】
本発明は、光検出器の変調スパンに基づいた、測定システムにおける距離の適合化を用いて、光検出器の測定信号における干渉を適合させるために、波長変調吸収分光法(WMS)の特殊性を使用するという中心的な思想に基づいている。従って、干渉を低減させるために、光検出器の測定信号における干渉は復調信号(例えば2f信号)に変換されない。従って、基本的に、測定システムにおける距離の理性的な選択によって、復調された測定信号における全ての主要な干渉が抑制される、または、少なくとも低減される。
【0013】
本発明では、測定システムの少なくとも1つの光学部品および/または自動機械部品が別の光学部品および/または自動機械部品に対して相対的に配置され、複数の光学部品および/または光学機械部品の光学的に作用する複数の境界面相互の空間定位および/または距離Lによって、選択された測定信号の周期Λを有する自由スペクトル領域を生じさせる光路長が得られ、従って、波長λを有する変調された主要光線の提供された変調スパンΔλを用いることによって、全ての相に対する変調信号の測定信号への干渉作用が削除される、または、少なくとも低減される。この周期Λは、干渉信号による主要信号の干渉によって生成される。これは、各距離と変調スパンΔλとが相互に適合されることを意味する。変調スパンΔλは、あらゆる形状の変調を有し得る変調信号のピークピーク振幅として規定される。これは、あらゆる光学部品および/または光学機械部品に影響を与える。これらの部品では、反射または散乱が散乱光線の形成中に生じ得る。これは、光源および/または光検出器の方向に伝播し、散乱光線は光検出器へ配向される。少なくとも1つの散乱光線は、非干渉主要光線の一部または干渉主要光線の一部として捉えられる。従って、主要光線も、発生している散乱光線も、光源のアパーチャにおいて始まる。なぜなら、散乱光線は、主要光線から、主要光線の部分反射/散乱へと分割されるからである。
【0014】
本発明は有利には、光学式測定システムに関する。この光学式測定システムは、測定システムの光学部品を形成する、光源であるレーザーダイオードと、光検出器であるフォトダイオードと、光源と光検出器との間に配置されている少なくとも1つのハウジングウィンドウと、光源をコントロールし、かつ、光検出器の測定信号の信号処理を行うデバイスと、を含んでいる。光源と、光検出器と、主要光線を通す少なくとも1つのハウジングウィンドウとは、測定システムの光学部品および/または光学機械部品を形成する。ここでは、光源と光検出器とは、ハウジングウィンドウを備えた共通のハウジング内に配置されているか、または、それぞれ透光性のハウジングウィンドウを含んでいる別個のハウジング内に配置されている。測定システムは、光源、光検出器および少なくとも1つのハウジングウィンドウに加えて、付加的な光学部品または光学部材、光学機械部品または光学機械部材、および/または、機械部品または機械部材を含むことがある。ここでこれらの部品は、光学式測定システムの少なくとも1つのハウジングの内側または外側に配置されている。これらの部品は、例えば、ビーム路を折り返すためのミラーまたはウィンドウが設けられた気体セルであり、この気体セル内には検査されるべき気体物質が誘導される。従って、光源は、変調スパンがΔλである、平均波長λを有する変調された主要光線を放射する。一般に、光源は、周波数fを有する、規定された変調スパンΔλを有する、平均波長λで波長変調されており、光検出器によって受信された信号の復調が行われる。変調を、あらゆる波形で行うことができ、例えば、三角波形または余弦波形で行うことができる。実際の使用では、光源は有利には、点対称波形で変調される。ここではこの変調形状は、奇数のフーリエ成分(1f、3f、5f等)を含む。一般的に、測定信号のフーリエ成分、すなわち、2、4、および/または、m重の変調周波数に対する測定信号のフーリエ成分が定められ、m=2、4、6、・・・・、であり、これは、測定信号における振幅変調の部分を抑制するようにされている。実際の使用では、一般的に、変調周波数の2倍のフーリエ成分、または、偶数の整数の場合には変調周波数の倍数mのフーリエ成分が測定される。周波数の2倍に対するフーリエ成分が測定される場合には、いわゆる2f信号が生じ、周波数の4倍の場合には4f信号が得られる、等である。
【0015】
本発明の中心的な思想は、不所望な反射または散乱が発生し得るビーム路における光学部品および/または光学機械部品の相対的なポジショニングまたは配向を最適化することである。ここでは、光学式測定システムにおける光源および光検出器の位置に関連してこの最適化が実行される。従って、発生した干渉が、測定信号に与える影響は極めて小さい。従って、特に、光源から、および有利には光検出器からのハウジングウィンドウの距離は、上述した作用が最小になるように選択される。付加的に、付加的な光学部品および/または光学機械部品の相互の距離、または、光源および/または光検出器からの距離も次のように選択される。すなわち、これらによって生じる干渉が、出力され、かつ光検出器によって復調される測定信号に与える影響が最小になるように選択される。
【0016】
基本的に、ビーム路における光学部材および/または光学機械部材の位置を最適化することによって、上記の干渉を低減する、相互に独立した2つの選択肢がある。一方では、光学式測定システムの光学部品および/または機械部品と光源のアパーチャとの間の、可能な限り長い距離を適切に選択することによって、散乱光線が伝播する光路長を増長させ、これによって、光源のアパーチャ内に戻って結合されるパワー(自己混合)を低減させる。これは特に、反射または散乱が、拡散特性を有する場合である。従って、特に、光路長の増大が、測定信号の干渉信号部分を低減させる。散乱光線の反射の理由が点状の散乱部材(塵、傷)である場合には、一般的に、散乱光の拡散特性が生成され、この場合には、出力は一般的に(1/l)に比例して低減する(l=距離)。従って、例えば、光源のアパーチャと、離れた光学部品または光学機械部品、例えばウィンドウ、レンズ、ミラー等との距離の増大は、測定信号における主要信号の部分に関して、干渉信号の大きさを低減させ得る。同様のことが、アパーチャ、内部ハウジング、主要光線が接触するまたは入射する部品等である機械部品および/または光学機械部品にも当てはまる。
【0017】
他方では拡散散乱の他に、非拡散特性の散乱も、適切に選択された、本発明に即した、光学式測定システムの光学部品および/または光学機械部品および/または機械部品の間の特別に規定された距離によって実現される。従って、自己混合またはエタロンによって干渉する、光検出器によって出力された測定信号への干渉信号の影響は、これが光検出器に入射する場合に、低減される。測定信号の干渉信号は一般的に、干渉信号成分の数を上昇させる。これらは、光学式測定システムの種々の光学部品および/または光学機械部品および/または機械部品での反射または散乱によって生じる。ここでは、各散乱光線が、散乱光線束を形成する。これは光源または光検出器の方向において延在する。各部品の距離を相互に調整することによって、散乱光線束の各干渉信号の考慮される各フーリエ成分を低減させることができる。これは、選択された変調スパンΔλに対する、選択された復調周波数のフーリエ成分が消滅する、または、少なくとも格段に低減されることを意味する。
【0018】
極めて多くの場合に、光源および/または光検出器が配置されている光学式測定システムの少なくとも1つのハウジングのハウジングウィンドウが、主要光線と干渉する主要光線の散乱光線に対する主な理由である。これは、干渉された主要光線を形成し、ひいては、干渉信号の部分と主要信号の部分とを含む測定信号を生じさせる。ここでは、干渉信号が、主要信号と結合されている。これは、光源から、および、別個のハウジングに配置されている、または、共通のハウジングのハウジング部分に配置されている光検出器から独立して使用される。これらは、光源に対して、および、光検出器に対しても相互にオフセットされている。結果的に、本発明では、光源、少なくとも1つのハウジングウィンドウおよび/または光検出器との間の距離、または、光検出器、少なくとも1つのハウジングウィンドウおよび光源との間の距離、従って、主要光線および/または少なくとも1つの散乱光線に対する光路長が選択され、これによって、測定信号におけるこれらの成分によって生じる干渉信号の周期Λが、上述した条件を満たす。
【0019】
上述したように、本発明に即した、気体検出用の光学式測定システムは、光源、光検出器および少なくとも1つのハウジングウィンドウを含んでいる。光学式測定システムの、これらの光学部品および/または光学機械部品のうちの2つの部品の間の最適な距離、有利には、光源と少なくとも1つのハウジングウィンドウおよび/または光検出器との間の距離は経験に基づいて定められる、または、主要光線を変調する、選択された各波形に対して計算される。
【0020】
有利な距離を経験に基づいて定める間に、光学式測定システムの2つの相対的な光学部品または光学機械部品の間の距離は、僅かに増大して変化し、光検出器によって出力される測定信号が復調される。ここでは例えば、変調周波数の2倍に対する測定信号のフーリエ成分が測定される。従って、選択された復調周波数のフーリエ成分が消滅するまたは少なくとも格段に低減される距離が決定される。このようなロケーションでは、主要信号への干渉信号の入射が格段に低減されるので、復調された測定信号は本質的に、主要信号を含んでいる。
【0021】
光学式測定システムの2つの各光学部品または光学機械部品、例えば光源とハウジングウィンドウまたは光検出器とハウジングウィンドウの間の有利な距離Lを計算する場合には、次のことが推定される。すなわち、これらの部品が一緒に、精巧ではない「ファブリ・ペローエタロン」を形成することが推定される。光路長の差ΔSを計算する場合には、現象、自己混合とエタロンとが区別されなければならない。これに続いて、計算S1では、光源から反射器までの光路長と、反射器から光検出器までの光路長とを示す。これは、対称的な配置に関し、ここでは、光源から光検出器までの光路長は、2×S1であり、本願はこれに基づいて説明される。異なる光路長が、非対称配置になることが明らかである。すなわち、反射器からの光源までの距離と反射器から光検出器までの距離とが異なる。以降では、本発明を説明するために、非干渉主要光線、干渉主要光線および散乱光線が使用される。ここでは構造に依存する主要光線は経路長S1を移動し、散乱光線は部分的な経路長S1‘、S1‘‘、S1‘‘‘等を移動する。
【0022】
後続の説明では、現象「自己混合」および「エタロン」は、分かり易くするために相互に別個に説明されるが、これらが同時に発生することもある。後続の式はそれぞれ、1つの現象または他の現象だけを説明している。
【0023】
エタロンの場合には、主要光線および散乱光線は、光源のアパーチャから始まる、種々の光路を移動する。これは、検出器で干渉し、干渉主要光線を形成する。従って少なくとも1つの干渉散乱光線に対して相対する主要光線の光路長差は、ΔS=|SScatter−SMain|として計算される。主要光線の一部が光検出器のフォトダイオード表面で反射され、距離Lにある光検出器のハウジングウィンドウから再び検出器に達する場合には、光路長差ΔS=|SScatter−SMain|は、フォトダイオードと光検出器のハウジングウィンドウとの間の距離の二倍に等しい。これによって、経路長差として、ΔS=|SScatter−SMain|=|(2×S1+2×S1‘)−2×S1|=2×S1‘=2Lが得られる。ここでは、2×S1は、光源のアパーチャと検出器表面との間の距離を表し、S1‘は光検出器から光検出器のハウジングウィンドウの距離Lに一致する。
【0024】
自己混合の場合には、干渉は、光源のアパーチャに結合して戻される散乱光線と、光源、例えばレーザ内の非干渉主要光線との間に生じる。従って、各干渉主要光線は、光源のアパーチャから出射する。自己混合の場合には、非干渉主要光線は完全に、光源内に配置されているので、自己混合に対してSMain=0が推定されなければならず、これによって、光路長差ΔS=|SScatter−SMain|=|SScatter−0|=SScatterが得られる。これは単に、光源のアパーチャの外側の散乱光線の経路によって定められる。光が直接的に、光源のハウジングウィンドウによって散乱して戻される場合には、散乱光線の伝播した光路SScatter=2Lである。従って、光源のアパーチャと、ハウジングウィンドウでの主要光線の入射点との間の距離の二倍、従って、ΔS=SScatter=2Lである。例えば、ハウジングの壁を通って、間接的に光が光源のアパーチャに反射して戻される場合には、散乱光線の経路はこれに従って延在する。
【0025】
このタイプの配置の透過スペクトルは、共振基準を満たす波長に対する「縞」で、狭い透過極大値を有している。これに対して、透過の間に、他のスペクトル範囲は完全に削除される。これは、共振器または検出器内で走行する光線の強め合う干渉または弱め合う干渉によって行われる。このコンテキストでは、実際の「ファブリ・ペローエタロン」が、本発明に即した光学式測定システム内に存在していないことが明らかである。なぜなら、この構造は平行な表面が存在していないことを提示しているからである。しかし、縞が、散乱光線によって生じることもある。平行な共振表面に対して用いられ、ファブリ・ペローエタロンから知られている法則は、傾斜した共振器表面にも転用されるので、本発明の光学式測定システムに対しても使用可能である。
【0026】
透過極大値相互間の距離は、(FSR)の自由スペクトル領域とされ、Λとされる。この自由スペクトル領域Λは、光検出器における、主要光線と少なくとも1つの散乱光線との間の光路長差ΔSの関数である。自由スペクトル領域Λが、
【数1】
として計算されることが知られている。
【0027】
ここでλは、変調された主要光線の平均波長である。
【0028】
以下の一般的な関係は、本発明の光学式測定システムの光検出器の干渉信号の振幅Aに対して適用される。これは、光路長差の関数である。
【数2】
【0029】
これは、最大振幅Afringeと位相Ψfringeとに基づいている。
【0030】
光源の変調を次の式によって表すことができる。
【0031】
【数3】
【0032】
ここでは波形は変調の形であり、fは主要光線に対する変調周波数である。従って、光検出器のその時点の復調された測定信号のAC部分の振幅Aは、次の式によって規定される。
【数4】
【0033】
ここで以下の式が位相に対して当てはまる。
【数5】
【0034】
その時点の2f信号の例示的なロックイン基準信号の振幅Aは、次の式に従って計算される。
【数6】
【0035】
一般的に、すなわち全てのmf信号に対して、すなわち2f、4f、6f信号等に対して、式は以下のようになる。
【数7】
【0036】
使用されているロックイン増幅器は、光検出器信号Adetector(t、λ、Δλ)を、基準信号Alockin、2m(t)と乗算し、次にN個の周期の数を積分する。ここでは1周期あたりの測定時間は、変調周波数fに対して反比例する。これによって、振幅Aの場合に、mf信号に対して以下の関係が成り立つ。
【数8】
【0037】
光路長差ΔSは、ここでは次のように選択されている。すなわち、所与の波形および変調スパンΔλを有する変調信号に対して、上述した式が、全ての、考えられる位相Ψ′fringemfに対して最小化される、または、Amf=0になるように選択されている。
【0038】
解析的にはこの計算は非常に複雑に波形に依存しているが、数値的にはこの計算は極めて容易に実行される。上述の式は、全ての位相に当てはまるので、位相の設定、すなわち、主要光線と少なくとも1つの散乱光線との間の位相関係には無関係である。
【0039】
この結果、2f、4f、6f等の次数の復調された測定信号のフーリエ成分は、各光学部品または光学機械部品の距離Lの関数である曲線を有する。ここでは、主要光線と少なくとも1つの散乱光線の、正確に規定された光路長差ΔSによって生じる、特定の距離での、復調された測定信号における干渉信号の振幅は0になる。主要光線および少なくとも1つの散乱光線の光路長差ΔSが最適でない場合には、これは、位相の関数である、復調された測定信号を生じさせる。
【0040】
距離Lが最適化されている場合には、光検出器の復調された測定信号は、位相の関数ではない。従って、例えば、温度によって誘発された位相の変化は、復調された測定信号に影響しない、または、極めて僅かにしか影響しない。
【0041】
距離の関数である強度曲線は、隣接したコブ状の強度部分を有している。これらの部分は、極めて高い振幅ピークを備えた主要極大値と、低減された振幅ピークをそれぞれ有する、複数の中間極大値とを含んでいる。中間極大値に対して相対的な主要極大値の位置は、使用されている復調されたmf測定信号の次数の関数である。2f信号の場合には、主要極大値は、第1の部分として、座標系の零点で始まる。ここで、中間極大値は、この主要極大値の右側に隣接する。4f信号の場合には、付加的な中間極大値が、零点と主要極大値との間に位置し、6f信号の場合には、2つの中間極大値が主要極大値の左側に位置している、等である。主要極大値の位置は、使用されている復調された測定信号の次数m/2に従って決められる。2f信号の場合には、主要極大値は、強度曲線の第1のコブを形成し、4f信号の場合には、これは強度曲線の第2のコブを形成し、6f信号の場合には、これは強度曲線の第3のコブを形成する、等である。中間極大値の幅ΔXは、平均波長λと変調スパンΔλとによって規定される。これによって、2×ΔXでの主要極大値の幅が得られる。ここで、距離Lは、少なくとも1つの散乱光線に対する主要光線の光路長差ΔSが、幅ΔXに比例するように選択されている。つまり、これは幅の倍数である。このタイプの強度曲線の複数の極小値、すなわち零点(主要極大値を規定する2つの零点では考慮にいれていない)は、相互に距離ΔXを有している。
【0042】
有利には、光路長差ΔSが、光学部品および/または光学機械部品間の距離Lの適切な選択によって、0.5×ΔX×(m+1)を上回る場合には、既に、測定信号における主要信号への干渉信号の影響が格段に低減される。ここで、使用されている測定信号の次数2f、4f、6f、・・・に従って、m=2、4、6、・・・、である。
【0043】
一般的に、後続の説明は、光学部品および/または光学機械部品相互の最適な光学距離Lに対して当てはまる。この距離では、光路長差ΔSに対して、使用されている復調測定信号の次数mでの干渉信号が削除される。関係ΔS=n×ΔXは維持される。ここではn=1、2、3・・・であり、かつn≠m/2である。ここでは、nは0よりも大きい正の整数であり、ここでは、使用されている測定信号の次数2f、4f、6f、・・・に従って、m=2、4、6、・・・、である。n≠m/2への制限は、2f信号に関してはnが1であり得ないこと、4f信号に関してはnが2であり得ないこと、6f信号に関してはnが3であり得ないこと等を排除している。従って、最も高い振幅ピークを有する強度部分が排除される。つまり、隣接する中間極大値に対して2倍の幅を有する主要極大値が除外される。従って、ΔXは、強度曲線の複数の極小値の最短距離として規定される。n=m/2が許される場合には最悪のケースが生じる、ということが理由である。つまり、このケースでは、干渉信号が最大である。2f信号を処理する場合には、このケースはn=1(m=2)、従ってΔS=ΔXの場合に生じる。このために、ΔS>ΔXが選択されるべきである。なぜなら、干渉信号は、ΔS=ΔXとΔS=2×ΔXとの間で格段に低減するからである。
【0044】
上述の記載は、干渉信号を消すための、距離Lの最適な調整に関している。実際の使用では、これは、零点付近での帯域を許可することによって干渉信号を低減させるのに十分であり得る。つまり、ΔS=n×ΔXの場合に、nは整数ではない。条件n=1、2、3は、干渉信号が最低である、または、零である場所を見つけるためだけに使用される。
【0045】
主要光線のあらゆる変調形態を有する本発明の有利な実施形態では、複数の光学部品および/または光学機械部品は相互に相対的に、および/または、光源に対して相対的に、ΔSがn×ΔXの0.8倍を上回る、または、1.2倍を下回るように配置される。ここでは、n≠m/2であり、かつ、使用されている測定信号の次数2f、4f、6f、・・・に従って、m=2、4、6、・・・、である。光学部品および/または光学機械部品の距離が、ΔSがn×ΔXの0.7倍を上回る、または、1.3倍を下回るように選択されている場合には、既に、自己混合の十分な低減およびエタロンの十分な低減を使用することができる。ここでは、n≠m/2であり、かつ、使用されている測定信号の次数2f、4f、6f、・・・に従って、m=2、4、6、・・・、である。
【0046】
本発明の1つの実施形態では、主要光線は三角波形で変調される。従って、測定信号における主要信号への干渉信号の作用の低減または消去に対して、光学部品および/または光学機械部品相互の適切な距離Lは、ΔS=n×ΔXの場合に得られる。ここではΔX=λ/Δλであり、ここで使用される制限はn≠m/2である。
【0047】
検討された各フーリエ成分は、例えば三角変調の場合には、常に、光路長差ΔS=n×ΔX=n×λ/Δλの場合に低減する。ここでn=1、2、3、は0よりも大きい正の整数である。従って、さらに、n≠m/2が選択され、使用されている測定信号の次数2f、4f、6f・・・に従って、m=2、4、6、・・・、であることが認められる。
【0048】
三角変調形状および2fによる復調の場合には、距離Lは有利には、復調測定信号の周期Λが、主要光線の変調スパンΔλの半分に一致するように選択される。従って、式ΔS=n×λ/ΔΛにおいて、n=2が選択される。光学部品または光学機械部品がさらに離れている場合には、周期Λは、周期Λの倍数nΛが変調スパンΔλに一致するように選択される。
【0049】
主要光線の三角形状変調を伴う本発明の実施形態では、光学部品および/または光学機械部品同士が相互に、および/または、光源に対して相対的に、次のように配置され得る。すなわち、選択された距離によって、周期Λが主要光線の変調スパンΔλの0.8倍を下回るか、または、周期Λの倍数nΛが主要光線の変調スパンΔλの0.8倍を上回るか、または、主要光線の変調スパンΔλの1.2倍を下回るように配置され得る。ここではn≠m/2であり、m=2、4、6等である。光学部品および/または光学機械部品の距離Lが、周期Λの倍数nΛが変調スパンΔλの0.7倍を上回る、または、1.3倍を下回るように選択される場合に、既に自己混合およびエタロンの十分な低減が得られる。ここでもn≠m/2であり、m=2、4、6・・・等である。
【0050】
本発明の1つの実施形態では、ΔSは、光源とハウジングウィンドウとの間の距離の2倍に相当する(ΔS=2L)。なぜなら、主要な散乱放射が散乱して直接的に、光源への経路に戻され、ハウジング壁部を介した散乱を無視することができるからである(ハウジングの黒い内壁)。
【0051】
本発明の最も有利な実施形態では、ハウジングウィンドウの内側から光源までの距離、および/または、光検出器のハウジングウィンドウの内側から光検出器までの距離は典型的に8mm、有利には10mmであり、さらに有利には少なくとも15mmである。この最小距離によって、測定信号内の主要信号への干渉信号の作用が著しく低減される。なぜなら、0.5×ΔX×(m+1)を著しく超える光路長差ΔSが得られるからである。得られた距離は、ハウジングウィンドウから光源(レーザダイオード)のアパーチャまで、または、光検出器(フォトダイオード)のチップ表面までの距離に関する。
【0052】
光源での主要光線の散乱は、ハウジングウィンドウの厚さとは無関係に、常に、光源のハウジングウィンドウの2つの境界表面、従って内側面および外側面で生じる。ここでは2つの干渉信号が生成され、これらは、光源(レーザ空洞)において、主要信号と干渉する。これによって、放射出力の変調が生じる。同様のことが、検出器のハウジングウィンドウでの散乱光線に当てはまる。ここでは、散乱光線は、検出器表面に入射する主要光線と干渉する。従って、光源、光検出器およびハウジングウィンドウの内側面を相互に、この内側面によって生成された干渉信号のフーリエ成分が消滅するように位置付けるのは有用である。従って、ハウジングウィンドウの外側面によって生成された干渉信号のみが、依然として、主要信号と干渉し得る。ハウジングウィンドウの外側面によって生成された、その時点でのフーリエ成分も干渉信号を失うようにするためには、ハウジングウィンドウの外側面から光源/光検出器までの距離も、測定信号の干渉信号の周期Λに関する上述した条件を満たすこと必要である。これは、ハウジングウィンドウの厚さを適切に選択することによって実現される。従って、厚さによって決まる、ハウジングウィンドウの内側面から外側面までのこの距離も、測定信号の干渉信号の周期Λに関する要求に従う。ハウジングウィンドウの内側面の汚染を排除することが可能である場合には、択一的に、この設計は、ハウジングウィンドウの外側面に対してのみ適用可能である。
【0053】
上述した全ての測定は、主要光線をどんな波形で変調したときにも効果を有する。三角波形での主要光線の変調の他に、余弦形状波形での主要光線の変調も、証明された利点を有する。遠くにある光学部品または光学機械部品の散乱光が抑制されるべき場合には、三角波形での変調がより効果的であり、従って余弦形状波形での変調よりも有利である。
【0054】
当該分野において既知である措置も、スペクトルを測定するために、本発明の光学式測定システムにおける散乱光線を回避するために、または、散乱光線の強度を低減するために用いることができることが明らかである。これは、例えば、ビーム路に対して傾斜した角度で配置されているハウジングウィンドウ、ハウジングウィンドウ上の反射防止コーティング、くさび形のウィンドウ、ハウジング内側面を黒くすること、ビーム路内の光学絶縁体および光源用の能動的なヒートシンク、および、任意選択的に、ハウジング用の受動的なヒートシンクである。これによって、主要光線、および任意選択的に、発生している散乱光線に対して、光路長はできるだけ温度に依存しなくなる。
【0055】
次に本発明を、図面に示された実施形態に基づいてより詳細に説明する。本発明の付加的な特徴を、添付の図面と組み合わせて、本発明の実施形態の後続の説明から導出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1】光源であるレーザーダイオードが内部に設けられており、かつ、ハウジングウィンドウが傾斜している第1のハウジングと、光検出器であるフォトダイオードが内部に設けられており、かつ、ハウジングウィンドウが傾斜している第2のハウジングとを有する本発明の光学式測定システム
図2】三角波形によって主要光線が変調されている場合の、光源とハウジングウィンドウとの間の3つの異なる距離(図2a〜図2c)に対する、主要光線と散乱光線の干渉(自己混合)による測定信号の重ね合わせ
図3】検出器の測定信号から導出された2f信号(図3a〜図3c)への、図2に示された光源とハウジングウィンドウとの間の距離の変化の影響
図4】三角波形によって主要光線が変調されている場合の、光路長差を定める距離に関連する、2f信号における干渉信号の振幅
図5】一定の変調スパンを伴う、光源とハウジングウィンドウとの間の距離の関数である、三角波形(A)の場合と余弦形状波形(B)の場合の測定信号の零通過の比較
図6】三角波形(A)による場合と、余弦形状波形(B)による場合との、光学部品または光学機械部品と光源との間の距離からの2f信号の振幅依存度の比較
図7a】光源のハウジングウィンドウからレーザアパーチャ内への直接的な後方散乱/後方反射(自己混合作用)の場合の散乱光線の経路の概略図
図7b】ハウジング壁部を通じたハウジングウィンドウからレーザ空洞内への間接的な後方散乱/後方反射の場合の散乱光線の経路の概略図
図7c】気体セル入口ウィンドウで散乱が生じている場合および光検出器で2つの光線の干渉が生じている場合の主要光線および散乱光線の経路の概略図
図7d】フォトダイオードのアパーチャから光検出器のハウジングウィンドウへの後方散乱と、フォトダイオードへの直接的な後方散乱と、検出器上に、結果として生じるエタロンとの概略図
図8】三角波形によって主要光線が変調されている場合の、2f信号(図8a)、4f信号(図8b)および6f信号(図8c)それぞれに対する干渉信号の距離依存振幅
【発明を実施するための形態】
【0057】
図1は、気体検出の間のスペクトル測定のための、本発明に即した光学式測定システム1を示している。この光学式測定システムは、透光性の、傾斜した第1のハウジングウィンドウ3を有する第1のハウジング2を含んでおり、この第1のハウジング2内には、能動的なヒートシンク5上に、光源4であるレーザーダイオードが配置されている。この光学式測定システム1はさらに第2のハウジング6を含んでいる。この第2のハウジング6は、第1のハウジング2とは別個のものであり、傾斜したハウジングウィンドウ7を含んでいる。この第2のハウジング6内には、光検出器8が配置されている。第1のハウジング2とおよび第2のハウジング6は、相互に離間され、相互に対向し、かつ相互にアライメントされて配置されている。光源4と光検出器8とは、図示された測定システム1の光学部品20を形成している。主要光線9が光源4によって放射される。ここで、この主要光線9は、ハウジングウィンドウ3に向かって中央に配向される。主要光線9は、ハウジング2を出て、光源4を備えたハウジング2と、光検出器8を備えたハウジング6と、の間に配置されている気体または気体混合気10を通過する。その後、主要光線9は、ハウジングウィンドウ7を通って、光検出器8を備えたハウジング6に入る。ハウジング2とハウジング6とは、放射された主要光線9が気体または気体混合気10を通過した後に、光検出器8に入射するように相対的に配置されている。図1に示された実施形態では、主な干渉は、ハウジングウィンドウ3での主要光線9の反射または散乱によって生じている。光源4は有利には、レーザーダイオードとして構成されており、これは、ハウジングウィンドウ3に向かう方向に配置されているレーザアパーチャを有している。主要光線9は、例えば部分的に、ハウジングウィンドウ3のウィンドウ内側面12で反射される。ここでは、発生した散乱光線11が光源4に結合され、これによってこの場所で自己混合が生じる。しかし原則的には、この後方結合散乱光線11が光源4の活性領域内に戻る場合には、これは全ての反射表面または散乱表面にも、複数回の反射または散乱を伴うビーム経路にも当てはまる。
【0058】
図7a〜図7dは、概略的に、主要光線9の光路長SMainと散乱光線11の光路長SScatterとを示している。主要光線9との干渉によって、主要光線9の一部として、少なくとも1つの散乱光線11が部分的に、反射されて、光源4および/または光検出器8の方向に戻される場合には、光源4における自己混合および/または光検出器8でのエタロンが生じる。すなわち、これによって、干渉された主要光線9が生じる。従って散乱光線11は、直接的にまたは間接的に、すなわち少なくとも一度偏向されて、光源4または光検出器へ配向される。光線9と11は、実際には一致しているが、明瞭にするために、相互に隣接して示されている。図7a〜図7dは、光検出器8がハウジング6内に、ハウジング2内に収容されている光源4に隣接して配置されている実施形態を示している。これらに対向して反射器16が配置されている。図7aおよび図bは、主要光線と干渉する、光源4とハウジング2のハウジングウィンドウ3との間の、ハウジング2内の散乱光線の種々の光路長SScatterを示している。主要光線は示されておらず、光源(レーザダイオード)の内側に配置されている。択一的に、ハウジング6が反射器16の場所に配置されている場合には、反射器16を省くことができる。ハウジングウィンドウ3を有するハウジング2と、ハウジングウィンドウ7を有するハウジング6と、の間に気体セル17が配置されている。この気体セル17は、2つのセルウィンドウ18、18‘を有している。これらのセルウィンドウ18、18‘は、相互に対向して配置されており、ここでは、気体セル17はハウジング2、6から、距離を開けて配置されており、検出されるべき気体または気体混合気10を含んでいる。図7cおよび図7dは、ハウジング6内に収容されている光検出器8までの種々の主要光線の光路長SMainと散乱光線11の光路長SScatterとを示している。
【0059】
図7aは、ハウジング2のハウジングウィンドウ3から、距離Lで配置されている光源4を示している。光源4から始まる干渉主要光線9は、光路長2×S1を通って光検出器8に達する。光源4によって放射された主要光線9は、有利には、部分的に、反射して、ハウジング2のハウジングウィンドウ3に、光源4の方向において戻される。従って、散乱光線11が形成される。この散乱光線11は、光源4からハウジングウィンドウ3までの光路長S1‘を通過し、さらに、ハウジングウィンドウ3から光源4まで、光路長S1‘‘を戻る。光路長S1‘、S1‘‘は、ハウジングウィンドウ3と光源4との間の距離Lに相当する。これによって、光源4からハウジングウィンドウ3まで延在し、さらに光源4まで戻る光路SScatterが生じる。ここでSScatter=S1‘+S1‘‘=2Lである。定義によっては、自己混合の間、主要光線9は、完全に、光源(レーザ)内にあるので、SMain=0およびΔS=|SScatter−SMain|=|SScatter−0|=2Lが経路長差である。
【0060】
光源4内で、自己混合が、主要光線9と散乱ビーム11との間の干渉作用として発生しており、光検出器8は、干渉主要光線9の測定信号を検出する。これは、主要信号の部分と干渉信号の部分とを含む。散乱光線11は、光源4によって放射され、ハウジングウィンドウ3によって戻された主要光線9の部分によって生じる。光源4は、スイッチオンの時点で非干渉主要光線9を放射し、その後、既に、光源4の内側において、散乱光線11によって干渉された主要光線9を放射する。干渉主要光線9は気体セル17を通過し、その後、反射器16によって光検出器8に戻される。ここでこの干渉主要光線9は、傾斜した2つのセルウィンドウ18、18‘を、二度通過する。自己混合は、光源4自体内で行われ、これによって、ハウジング2における光路長差ΔSが、ΔS=|SScatter−SMain|として定められ、ここではSMain=0であり、ΔSは|SScatter|になる。なぜなら、主要光線9は、光源4内にのみ延在するからである。
【0061】
図7bも、ハウジング2のハウジングウィンドウ3からの距離Lに配置された光源4を示している。光源4によって放射された主要光線9は、ハウジング2のハウジングウィンドウ3の内側面で、ハウジング2のハウジング内壁19の方向に部分的に反射されて、散乱光線11を形成する。この散乱光線11はその後、ハウジング内壁19で、付加的な散乱によって光源4の方向に偏向される。従って、散乱光線11は、光源4からハウジングウィンドウ3までの光路長S1‘を移動し、さらに、ハウジングウィンドウ3からハウジング内壁19までの光路長S1‘‘‘を移動し、さらに、これはハウジング内壁から光源4までの光路長S1‘‘を移動する。光路長S1‘は、光源4とハウジングウィンドウ3との間の距離Lに一致する。これは、光源4からハウジングウィンドウ3まで、および、ハウジングウィンドウ3から光源4まで戻る光路長距離ΔSを生じさせる。ここではΔS=S1‘+S1‘‘+S1‘‘‘>2Lである。この干渉の後、干渉主要光線9は、光源4から出る。ここでは、主要光線9は、自己混合によって、非干渉主要光線9と、散乱光線11とから成り、光路長2×S1を介して光検出器8に達する。
【0062】
図7cは、光源4と光検出器8との間の主要光線9の光路長SMainと、散乱光線11の光路長SScatterとを示している。光源4から発生した変調主要光線9が、部分的に、光検出器8の方向において外側に後方散乱される場合には、この後方散乱は、ハウジング2、6に向けられている気体セル17のセルウィンドウ8で行われ、散乱光線11を形成する。主要光線9は、光源4から光検出器8までの光路長SMain=2×S1を伝播する。光源4からセルウィンドウ18まで、散乱光線11は、光路長S1‘を伝播し、セルウィンドウ18から光検出器8まで、散乱光線は、光路長S1‘‘を伝播する。従ってS1‘およびS1‘‘は、同じであっても、異なるものであってもよい。従って光源4と光検出器8との間の、主要光線9の光路長SMainと、散乱光線11の異なる光路長SScatterとの間の光路長差ΔSは、ΔS=SMain−SScatter=2×S1−(S1‘+S1‘‘)によって規定される。従って、エタロンが、主要光線9と散乱光線11との間の干渉現象として、干渉主要光線9の形態で、光検出器8で発生する。ここでこの干渉主要光線9は、非干渉主要光線9と散乱光線11とから成る。従って、光検出器8は、主要信号と干渉信号とを有する測定信号を含む。
【0063】
図7dは、光源4と光検出器8との間の主要光線9の光路長SMainと、散乱光線11の光路長SScatterとを示している。ここでは光源4で発生した変調主要光線9が、ハウジング2、6の方に向けられているセルウィンドウ18で、外側で、光検出器8に向かう方向で部分的に後方散乱されない。しかし、これは、光検出器8(フォトダイオード)のアパーチャによって、光検出器8のハウジングウィンドウ7の方向に部分的にのみ、後方散乱される。ハウジングウィンドウ7は、散乱光線11をフォトダイオード8の方向に後方反射または後方散乱させる。従って、主要光線9と散乱光線11との間に干渉が生じ、これらのビームを含む干渉主要光線9が形成される。主要光線9と散乱光線11とは、光源4から光検出器8までの光路SMain=SScatter=2×S1を伝播する。主要光線9は部分的に、ハウジングウィンドウ7に向かう方向で光検出器8に反射して戻される。従って、散乱光線11は、付加的な光路長S1‘を光検出器からハウジングウィンドウ7まで伝播し、さらに、ハウジングウィンドウ7から光検出器8まで、光路長S1‘‘を伝播する。光路長S1‘およびS1‘‘は、光源8とハウジングウィンドウ7との間の距離Lに一致する。これによって、主要光線9と散乱光線11との間に、光路長差ΔSが生じる。ここで、ΔS=|(2×S1)−(2×S1+S1‘+S1‘‘)|=S1‘+S1‘‘=2Lであり、光検出器8は、主要信号と干渉信号とを含んだ測定信号を受信する。
【0064】
一般的に、この種の光学式測定システムは、図7a〜図7dの組み合わせに従って、散乱光線11、ひいては、各主要光線9との干渉とを有している。ここで、主要信号と干渉信号とは、参照現象によって重なり、光検出器の干渉測定信号が生じる。光学式測定システムの各光学部品および/または各光学機械部品の、光学的に作用する境界表面間の距離を適切に選択することによって、測定信号への、干渉信号の影響が格段に低減される。図1は、図7a〜図7dには示されていない、図7aに類似した形態を示している。図1に示された形態では、ハウジング6が反射器16の位置に配置され、反射器16の代わりをする。気体セル17も示されていない。従って、主要光線9は部分的に、光源4を有するハウジング2のハウジングウィンドウ3で部分的に反射され、散乱光線11を形成する。この散乱光線は、光源に向かう方向に延在する。光検出器8を収容するハウジング6のハウジングウィンドウ7では、図示されていない、各散乱光線が形成される。主要光線9は、ハウジングウィンドウ3の内側面12と外側面13とで反射される、または、散乱される。ハウジングウィンドウ3は、ハウジングウィンドウ3の、外側面13と内側面12との距離によって規定される厚さ14を有している。光源4、光検出器8および2つのハウジングウィンドウ3、7は、光学式測定システム1の、光学部品および/または光学機械部品15を形成する。主要光線9から外れて、光源4の方向に反射された散乱光線11は、レーザ内の主要光線との混合によって測定信号を生成する。ここでこの測定信号は、干渉信号と主要信号とを含む。従って光源4は、自身のアパーチャとともに、ハウジングウィンドウ3からの所定の距離Lで配置され、ここでは距離Lは、光路長差ΔS=2×Lを変化させ、ハウジングウィンドウ3によって測定信号内で生じた干渉信号の振幅および周期Λに影響を与える。
【0065】
次に、測定信号への干渉の影響を、例示的に、図2a〜図2cおよび図3a〜図3cに関連して、光源4のアパーチャと散乱ウィンドウ内側面12との間の3つの異なる距離Lに基づいて説明する。ここでは、図7aに示された、直接的な後方散乱のケースが考察される。第1の距離L=0.3cm(図2a、図3a)は近似的に、光源4とウィンドウ内側面12との間の距離に相当する。距離L=0.584cm(図2b、図3b)は、最悪のケースを示すために選択されたものであり、すなわち、気体吸収線の典型的な幅の振幅のオーダーにおいて周期Λを有する干渉信号を生成するために選択されたものである。L=1.17cm(図2c、図3c)によって、干渉が生じないケースが示される。すなわち、復調測定信号において干渉信号が生じない。図は、λ=1.512μmでの固定された変調幅Δλ=0.195mmを有する三角波形に基づいている。
【0066】
図2a〜図2cは、3つの距離Lまたは光路長差ΔS=2×Lに対する、光検出器8のシミュレートされた測定信号を示している。シミュレートされた測定信号は、0.9985〜1.000の範囲における、光源の標準化された出力である。図2a〜図2cは、異なる曲線形状を示している。0GHzでのピークは、測定されるべき吸収の実際の信号を表している。このケースでは、ローレンツ型プロファイルを有するNH気体ピークの信号であり、ここではこれに、周期的な干渉が重畳されている。距離Lが増すに連れて、すなわち散乱光線11に対する光路長SScatterが増すにつれて、周期Λが低減することが明らかである。干渉の振幅は、3つ全ての形態に対して同じである。なぜなら、光源4に対するハウジングウィンドウ3の距離Lが増すに連れて低減する後方結合は、各図において考慮されていないからである。
【0067】
図3a〜図3cは、測定信号から導出された2f信号への影響を示している。すなわち、ここではm=2である。これらの図面は、散乱光線11のための3つの異なる光路長SScatterに対する、すなわち、光源4のアパーチャとハウジングウィンドウ3との間の異なる距離での、2f測定信号の各干渉の振幅を表している。L=0.3cm(図3a)から、L=0.584cm(図3b)へと干渉信号が著しく上昇し、その後、極めて迅速に低下することが見て取れる。L=0.3cmの図面は、特に、干渉が2f信号でも可視であることを示している。この干渉は、光学式測定システム1の測定精度を制限してしまう。距離LがL=0.584cmまで延びる場合には(図3b)、この作用が増幅され、NH気体信号がこの干渉と著しく異なってしまうことがある。しかし、測定誤差の顕著な低減は、ハウジングウィンドウ3と光源4との間の距離Lが、光路長差ΔSに対する条件ΔS=2×λ/Δλ=2×ΔXが満たされるように選択されている場合にのみ、実現される。距離LがL=1.17cmである場合(図3c)には、この測定信号は、NHピークの信号しか示さない。すなわち、2f信号は完全に干渉を有していない。
【0068】
図4は、図7aに示されている、直接的な後方結合の場合の、2f測定信号における距離Lの関数としての干渉信号の振幅Aを示している。復調された測定信号のフーリエ成分が示されている。示されている強度曲線は、最も高い振幅ピークを備えた1つの主要極大値と、それぞれ低減された振幅ピークを備えた複数個の中間極大値と、を含んでいるコブ状の強度部分を含んでいる。大きい第1の主要極大値と後続する零点と、より小さい中間極大値と、が明瞭に見て取れる。従って、主要極大値は、零点(L=0cm)で第1の部分として始まる。ここでは、中間極大値は、主要極大値の右側に接している。L=0cmからL=0.584cmへと干渉信号が著しく増大し、その後、迅速に低下し、L=ΔS/2=λ/Δλ=ΔXで、第1の局部的な極小値に達することが明らかである。
【0069】
図5は、三角波形(曲線A)の場合と、余弦形状波形(曲線B)の場合の、同一の変調スパンΔλでの、復調測定信号の振幅の零通過の依存性の比較を示している。三角変調は、復調測定信号の干渉信号部分を、余弦形状波形と比べて、強く減衰させる。しかし、余弦変調と比べると、必要となる、光源4と光学部品および/または光学機械部品15との間の距離は、僅かに長くなる。ここでこの部品15は、例えば、散乱光線11を生じさせるハウジングウィンドウ3である。
【0070】
図6は、主要光線が三角波形で変調されている場合(曲線A)と、余弦形状波形で変調されている場合(曲線B)との、光源4と光学機械部品15との間の距離Lに対する、2f信号の振幅依存性の比較を示している。ここでも、三角変調が、余弦変調よりも効果的であることが明らかに見て取れる。干渉信号の影響は、光源4と光学部品および/または光学機械部品15との間の距離が増すとともに、三角変調において、強度においてより迅速に低減する。ここでこの部品15は、散乱光線11を生じさせ、例えばハウジングウィンドウ3である。この図は、三角形状変調の間に、光学機械部材の除去によって、余弦形状の変調の場合と比べて光学干渉がより迅速に低減することを示している。従って、曲線AおよびB両方に対する、例えばレーザーダイオードから1.8cm離れている光源4のハウジングウィンドウ3での、光源(レーザダイオード)の近位にある干渉の影響はほぼ同一であるが、例えば5cm離れている気体セル17のセルウィンドウ18での散乱の場合には既に格段に低減されている。例えば光源4から60cm離れている光検出器8での干渉の影響の場合には、差が顕著である。
【0071】
一般的にこのタイプの複数の後方結合が可能であり、また典型的には、異なる光路長SScatterを有する光学式測定システム1で、光源4と、他の光学機械部品15のうちの1つとの間に設けられている。各個別の光路長SScatterに対して、上述の条件は、理想的なケースにおいて満たされるべきである。実際の使用では、これはしばしば可能ではない、または、制限されてのみ可能である。なぜなら、一般的に異なる光路長SScatter、SMainの間、すなわち、各部品15の異なる距離Lによって生じた複数の経路長の間に、特定の依存性が存在するからである。光源4に相対する散乱放射を生じさせる光学部品または機械部品15の位置付けのための実際の条件は、例えば、
|SScatter−SMain|=ΔS>λ/Δλである。
【0072】
ここでλは平均波長であり、Δλは、ナノメータの範囲の、変調主要光線9の変調スパンである。光路長差ΔSまたはΔS’=λ/Δλと2×λ/Δλとの間で干渉信号が大幅に低減するので、この条件を満たすのは有利である。記号ΔS’は、散乱光線11のソースがいくつかある場合、すなわち、光源4から異なる距離Lで配置されており、散乱光線11の複数の異なる光路長SScatterを生じさせる、複数の反射性または後方散乱性光学部品または光学機械部品15、および/または、この種の部品15の複数の反射性または後方散乱性表面がある場合には、最も短い光路長差ΔS’を規定する。これは、散乱光線11による主要光線9の干渉に対して、適切な寄与を提供する。さらに、経路長差ΔSが増大するとともに、干渉の局部的な極大値が一層小さくなることが明らかである。距離が増すにつれて後方結合光が低減するので、この作用はさらに増幅される(図4では考察されていない)。
【0073】
実際の工学的な使用では、光学部品および/または光学機械部品15、4、8の相対的な位置の公差が、考慮されなければならない。実際には、ハウジングウィンドウ3は、ハウジングウィンドウ3の内側面12までの距離Lと、ハウジングウィンドウ3の外側面13までの距離Lとが、結果を得る、および、結果を最適化するために、同時に最適化されなければならない、という問題を有している。このために基本的には、光路長SScatterが異なり、結果として、光路長差ΔSが生じるのにもかかわらず、要求に応じる、2つの解決策がある。ここでこの光路長差ΔSは、曲線A(L)の極小値での、光源4と内側面12までの距離Lと、光源4と外側面13までの距離Lとが等しくないことによって生じる。これは、ハウジングウィンドウ3の厚さ14を調整すること、および/または、ハウジングウィンドウ3をビーム路に対して傾斜させることによって実現される。
【0074】
図示されていない光学的な絶縁体をビーム路内に挿入することも有効である。この場合には、この絶縁体によって、後続の光学部材15からの後方散乱光が自己混合をそれ以上生じさせなくなる。光源4のビーム方向に配置されている光学的な絶縁体の第1の境界表面(例えばλ/4板)は、依然として、自己混合を生じさせ得る散乱放射の原因となる。従って、上述した、配置ルールに従って、この第1の境界表面の位置を最適化することが有利である。1つの実施形態では、λ/4板は、ハウジングウィンドウ3の内側面12で使用される。ここでこのλ/4板は、光検出器8による、外側から、例えば、ハウジング6の外側面13からまたはハウジングウィンドウ7からの反射光を90°の角度で折り返す。従って、これは、内部に光源4が配置されているハウジング2において、光源4の主要光線9または光学的な散乱光線11とは干渉しない。従って、光学的な絶縁体をあらゆるオフセットを伴わずに直接的にかつ平坦に、内側面12と接着剤で接続するのが有利である。ここでこの接着剤の屈折率は、絶縁体またはハウジングウィンドウ3の屈折率とほぼ一致している。従って、付加的な光学的な境界層が、光学的な絶縁体とハウジングウィンドウとの間に作成されない。択一的に、例えば、λ/4板をハウジングウィンドウ3として使用することができる。
【0075】
図8には、三角波形による主要光線9の変調の場合の、干渉信号の、距離に依存する振幅が、2f信号に対して(図8a)、4f信号に対して(図8b)および6f信号に対して(図8c)、それぞれ示されている。図8a〜図8cは、距離Lの関数として、または、光路長差ΔSの関数として、干渉信号A(L)を示している。大きい主要極大値と、間に配置されている零点に、左側でおよび/または右側に接している、小さい中間極大値と、が明確に見て取れる。中間極大値に対する主要極大値の位置は、使用されている復調mf測定信号の次数の関数である。2f信号(図8a)の場合には、主要極大値は零点で、第1の部分として始まる。ここで中間極大値はこの主要極大値に右側で接する。4f信号(図8b)の場合には、付加的な中間極大値は零点と主要極大値との間に配置されている。6f信号(図8c)の場合には、2つの中間極大値が主要極大値の左側に配置されている。主要極大値の位置は、使用されている復調測定信号の次数m/2によって決まる。4f信号の場合にも6f信号の場合にも、主要極大値の右側には、複数の中間極大値が配置されている。
【0076】
実際の使用では、レーザパッケージはしばしば気密性に密閉されているので、全使用可能寿命にわたって、壁の内側面が汚染されることはない。この場合には、壁の内側面は十分に光学的にクリーンであり、内側面からの散乱光線を無視することができ、ウィンドウの外側面にこの構造を適合させることができる。ウィンドウの外側面は、内側面とは異なり、汚れやすい。
【0077】
波長変調された測定システムを最適化する際に、典型的な方法は、初めに、測定されるべきスペクトルに適合される、使用される波長領域の決定を含み、その後、信号処理方法の決定、および、ノイズ、横感度等に関連して使用される変調スパンΔλの最適化を含み、さらにこれに続いて、スペクトルを測定するための、光学式測定システム1の全ての光学部品または光学機械部品15の最適な位置の計算を含む。光学部品および光学機械部品15の位置がはじめて決定された後、製造誤差を補償するために、任意選択的に、変調スパンΔλの微細な最適化を行うことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図7c
図7d
図8