特許第6196007号(P6196007)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6196007
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】丁張用固定具
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/18 20060101AFI20170904BHJP
   G01C 15/00 20060101ALI20170904BHJP
【FI】
   E04G21/18 B
   G01C15/00 105R
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-86125(P2017-86125)
(22)【出願日】2017年4月25日
【審査請求日】2017年4月25日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517146747
【氏名又は名称】株式会社想庵
(74)【代理人】
【識別番号】100142217
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 宜紀
(74)【代理人】
【識別番号】100119367
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 理
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 敏
【審査官】 坪内 優佳
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3121906(JP,U)
【文献】 実開昭50−101301(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3116105(JP,U)
【文献】 特開2009−210479(JP,A)
【文献】 米国特許第5419055(US,A)
【文献】 韓国公開特許第2003−0070806(KR,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0006935(US,A1)
【文献】 米国特許第1987826(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/14−21/22
G01C 15/00−15/14
E04G 17/00−17/18
E02D 17/00−17/20
E02D 5/00− 5/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭に丁張板を固定するための丁張用固定具であって、
丁張板の一側面を支持する背面部、丁張板の下端部を支持する底面部、及び、丁張板の上端部をネジ先で押圧することによって丁張板を固定するための板固定ネジが端部付近に設けられた天面部を有し、断面視コの字状をなす丁張板保持部と、
固定ネジ、及び、該固定ネジのネジ先に対向するよう配された把持板を有し、前記丁張板保持部の背面部の中心部に回動可能に連結された杭把持部と、
前記杭把持部に溶接された連結軸、該連結軸に溶接されたストッパー、及び、前記丁張板保持部の背面部の中心部に形成され、前記連結軸を軸支する挿通孔、並びに、前記丁張板保持部の背面部の丁張板が取り付けられる側面に形成され、前記ストッパーの厚み以上の深さを有する凹部であるストッパー収容部が設けられ、前記杭把持部と前記丁張板保持部とを回動可能に連結する連結部と、
を備える丁張用固定具。
【請求項2】
請求項1に記載の丁張用固定具であって、さらに、
前記丁張板保持部の底面部が、長さ方向の中心部において、前記背面部が接続されている側と反対向きに一部突出して形成されたスタッフ支持部を備える丁張用固定具。
【請求項3】
丁張板に丁張板を固定するための丁張用固定具であって、
丁張板の一側面を支持する背面部、丁張板の下端部を支持する底面部、及び、丁張板の上端部をネジ先で押圧することによって丁張板を固定するための板固定ネジが端部付近に設けられた天面部を有し、断面視コの字状をなす第一丁張板保持部と、
前記第一丁張板保持部と略同一構成の第二丁張板保持部と、
前記第一丁張板保持部の背面部の中心部に溶接された連結軸、前記連結軸に溶接されたストッパー、及び、前記第二丁張板保持部の背面部の中心部に形成され、前記連結軸を軸支する挿通孔、並びに、前記第二丁張板保持部の背面部の丁張板が取り付けられる側面に形成され、前記ストッパーの厚み以上の深さを有する凹部であるストッパー収容部が設けられ、前記第一丁張板保持部及び第二丁張板保持部の背面部同士を回動可能に連結する連結部と、
を備える丁張用固定具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木工事の現場における丁張掛け作業の省力化、省資源化及び作業効率の向上に寄与し得る丁張用固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
土木工事の現場においては、施工図面に基づいて、着工前あるいは工事の途中に、地盤の成形や構造物を施工する際に基準となる位置や高さ、法面の角度等を出すための丁張掛け作業が行われる。従来の丁張は、木製の杭に、丁張板(貫板)と呼ばれる長方形の木製板材が、釘を用いて打ちつけられることにより設置されていた。
【0003】
しかしながら、釘によって打ちつけられた丁張の場合、解体が容易ではなく、杭や丁張板を再利用することは難しかった。また、固定に釘が用いられることから、杭が木製でないといけないという制約があり、凍結した地表面や岩盤等に杭を打ち込むことは容易ではなかった。さらにまた、施工が進むに従って丁張板が邪魔になってくる場合もあり、このような際に、一時的に丁張板を取り外したり、再び取り付けたりする作業は、煩雑なものであった。
【0004】
そこで、図12に示すような丁張用具4が考案されている(特許文献1を参照)。この丁張用具4は、金属製の杭部材41と、丁張板の代わりとなる金属製の長尺部材42と、釘の代わりとなる保持具43とからなり、これらの部材を組み合わせて用いることで、丁張掛けを行うことができる。保持具43は、杭部材41を内部に挿通できる杭把持部431と、断面がコの字状で内部に長尺部材42を保持できる長尺部材保持部432とを主要部として有し、杭把持部431と長尺部材保持部432とは、連結ボルト433を介して回動可能に連結されている。また、杭把持部431は、杭部材41に保持具43を固定するための締付ボルト434を有し、長尺部材保持部432は、長尺部材42を保持具43に固定するための締付ボルト435を有している。さらに、長尺部材42は、保持具43の連結ボルト433を避けるために、断面がコの字状であるという特徴を有する。
【0005】
この丁張用具4を用いれば、杭部材41及び長尺部材42を、保持具43の締付ボルト434及び435の緩締により着脱させることができるので、各部材の再利用が容易となる。また、杭部材41が金属製であることにより、木製の杭を用いる場合に比べて、固い地盤に杭を打ち込む際の労力が軽減される。さらにまた、保持具43の長尺部材保持部432の締付ボルト435のみを緩締することで、杭部材41に対する保持具43の固定位置を維持したままで、長尺部材42のみを取り外し、再取り付け可能となる。
【0006】
しかしながら、この丁張用具4を使用する場合には、一般的な木製の丁張板の代わりに、保持具43の形状に合わせた専用の長尺部材42を準備する必要がある。さらに、長尺部材42が金属製であるため、現場に合わせて長さを調整するには、予め複数種類の長さの長尺部材42を準備する必要がある。これらの準備段階における制約への対応は、非効率的かつ非経済的である。また、丁張の角度を調整する際には、保持具43の連結ボルト433を緩める必要があり、固定状態の安定性の面で問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実用新案登録第3121906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来のこのような問題点に鑑み、特許文献1に開示された丁張用具4を使用する利点を有しながら、釘により固定される木製の丁張の安定性及び準備容易性を兼ね備えた丁張掛けを実現すべくなされたものである。本発明の目的の一は、丁張掛け作業の省力化、省資源化及び作業効率の向上に寄与し得る丁張用固定具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の側面に係る丁張用固定具は、杭に丁張板を固定するための丁張用固定具であって、丁張板の一側面を支持する背面部、丁張板の下端部を支持する底面部、及び、丁張板の上端部をネジ先で押圧することによって丁張板を固定するための板固定ネジが端部付近に設けられた天面部を有し、断面視コの字状をなす丁張板保持部と、固定ネジ、及び、該固定ネジのネジ先に対向するよう配された把持板を有し、前記丁張板保持部の背面部の中心部に回動可能に連結された杭把持部と、前記杭把持部に溶接された連結軸、該連結軸に溶接されたストッパー、及び、前記丁張板保持部の背面部の中心部に形成され、前記連結軸を軸支する挿通孔、並びに、前記丁張板保持部の背面部の丁張板が取り付けられる側面に形成され、前記ストッパーの厚み以上の深さを有する凹部であるストッパー収容部が設けられ、前記杭把持部と前記丁張板保持部とを回動可能に連結する連結部とを備えることを特徴としている。
【0010】
また、本発明の第2の側面に係る丁張用固定具は、さらに、前記丁張板保持部の底面部が、長さ方向の中心部において、前記背面部が接続されている側と反対向きに一部突出して形成されたスタッフ支持部を備えることを特徴としている。
【0011】
さらにまた、本発明の第3の側面に係る丁張用固定具は、丁張板に丁張板を固定するための丁張用固定具であって、丁張板の一側面を支持する背面部、丁張板の下端部を支持する底面部、及び、丁張板の上端部をネジ先で押圧することによって丁張板を固定するための板固定ネジが端部付近に設けられた天面部を有し、断面視コの字状をなす第一丁張板保持部と、前記第一丁張板保持部と略同一構成の第二丁張板保持部と、前記第一丁張板保持部の背面部の中心部に溶接された連結軸、前記連結軸に溶接されたストッパー、及び、前記第二丁張板保持部の背面部の中心部に形成され、前記連結軸を軸支する挿通孔、並びに、前記第二丁張板保持部の背面部の丁張板が取り付けられる側面に形成され、前記ストッパーの厚み以上の深さを有する凹部であるストッパー収容部が設けられ、前記第一丁張板保持部及び第二丁張板保持部の背面部同士を回動可能に連結する連結部とを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、丁張掛け作業の省力化、省資源化及び作業効率の向上に寄与し得る丁張用固定具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明を適用した第一実施例に係る丁張用固定具を杭把持部側から見た斜視図である。
図2】本発明を適用した第一実施例に係る丁張用固定具を丁張板保持部側から見た斜視図である。
図3】本発明を適用した第一実施例に係る丁張用固定具を丁張板保持部の長さ方向の中心部において切断した場合の断面図である。
図4】本発明を適用した第二実施例に係る丁張用固定具を丁張板保持部側から見た斜視図である。
図5】本発明を適用した第三実施例に係る丁張用固定具を第一丁張板保持部側から見た斜視図である。
図6】本発明を適用した第三実施例に係る丁張用固定具を第二丁張板保持部側から見た斜視図である。
図7】本発明を適用した第三実施例に係る丁張用固定具を第一丁張板保持部及び第二丁張板保持部の長さ方向の中心部において切断した場合の断面図である。
図8】本発明を適用した第一実施例に係る丁張用固定具の連結部の変形例を説明するための断面図である。
図9図9Aは本発明を適用した丁張用固定具を用いて掛けられた門型丁張の模式図、図9Bは本発明を適用した丁張用固定具を用いて掛けられたパターン1の法丁張の模式図、図9Cは本発明を適用した丁張用固定具を用いて掛けられたパターン2の法丁張の模式図、図9Dは本発明を適用した丁張用固定具を用いて掛けられたトンボ型丁張の模式図である。
図10】本発明を適用した丁張用固定具を用いて門型丁張を掛ける際の作業手順を示すフローチャートである。
図11】本発明を適用した丁張用固定具を用いて法丁張を掛ける際の作業手順を示すフローチャートである。
図12】特許文献1に開示された丁張用具の模式図である。
図13】従来の丁張掛け作業における高さ調整の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明はそれらを以下のものに特定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。尚、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
(第一実施例)
(丁張用固定具1の構成)
【0015】
本発明を適用した第一実施例に係る丁張用固定具1を杭把持部12側から見た斜視図を図1に、丁張板保持部11側から見た斜視図を図2に、丁張板保持部11の長さ方向の中心部において切断した場合の断面図を図3に示す。これらの図に示すように、丁張用固定具1は、丁張板保持部11と杭把持部12とが連結部13によって回動可能に連結された構成となっている。
(丁張板保持部11)
【0016】
丁張板保持部11は、丁張板を丁張用固定具1に固定するための部材であり、図1及び図2に示すように、折り曲げられた板状部材である丁張板保持板111に、補助板117及び板固定ネジ119が取り付けられることで形成される。
【0017】
丁張板保持板111は、例えば、幅103mmの長方形の金属板が、幅方向の一端から16mm、81mm、97mmのラインで同方向に直角に折り曲げられて形成された部材である。このようにして形成された丁張板保持板111は、該一端より、折辺を境界線として、16mm幅の天面部112と、65mm幅の背面部113と、16mm幅の底面部114と、6mm幅の返し部115とに区分される。尚、上記丁張板保持板111の寸法は、幅60mm、厚み15mmの丁張板の使用を想定したものである。丁張板保持板111の寸法は、これに限定されず、使用する丁張板の幅や厚みに合わせて任意の寸法とすることができる。
【0018】
これより、丁張板保持板111において、背面部113に対して天面部112及び底面部114が設けられた側を手前、その逆側を奥として説明する。
(背面部113)
【0019】
背面部113は、取り付けられる丁張板の一側面を支持する部分である。背面部113の中心部には円形穿孔116が設けられている。円形穿孔116は、後述する連結部13のストッパー収容部133を担う部分である。また、背面部113の奥側には、円形穿孔116を覆うように補助板117が溶接されている。補助板117は、任意の形状の金属板であり、後述する連結軸131を摺回動可能に嵌通する挿通孔118が設けられている。尚、挿通孔118は、その中心軸が背面部113の中心軸(軸CL1)と一致するよう設けられている。また、円形穿孔116の形状は円形に限定される必要はなく、後述するストッパー132の回転を阻害しない大きさを有していればよい。
(天面部112・板固定ネジ119)
【0020】
天面部112は、丁張板の上端部を押圧して固定するための板固定ネジ119が取り付けられる部分である。板固定ネジ119は、天面部112の端部付近(天面部112の長さ方向において、中心より端部に近い位置)に取り付けられている。板固定ネジ119が天面部112の中心部ではなく端部付近に取り付けられることにより、杭把持部12に杭が挿通されている状態においても、杭が障害となることなく板固定ネジ119を回すことができる。
【0021】
板固定ネジ119には、例えば、金属製のボルトの頭部に、適当な長さの金属棒の一端を、ネジの軸に直角に溶接し、把手付ネジとしたものを用いることができる。天面部112の板固定ネジ119が取り付けられる位置には、板固定ネジ119の雄ネジ部を挿通できる大きさの穿孔が設けられ、この穿孔の上に、板固定ネジ119の雄ネジ部に螺合できるナットが溶接されている。板固定ネジ119を回すことにより、板固定ネジ119のネジ先と、取り付けられる丁張板の上端部との間隔が調整でき、丁張板を押圧して固定したり、ネジ先を遠ざけて丁張板を取り外し可能な状態にしたりすることができる。
(底面部114・返し部115)
【0022】
底面部114は、丁張板の下端部を支持する部分である。底面部114の手前端には、丁張板の脱落を防止する役割を担う、返し部115が接続されている。
(杭把持部12)
【0023】
杭把持部12は、丁張用固定具1を杭に固定するための部材であり、例えば、図1に示すように、中空円筒状の把持板121と固定ネジ122とで構成される。尚、把持板121の形状は、中空円筒状に限定されず、把持板121と固定ネジ122のネジ先が杭を挟んで対峙するように構成されていればよい。また、固定ネジ122には、例えば、手で容易に回すことができる蝶ボルトを用いることができる。固定ネジ122を回すことにより、固定ネジ122のネジ先と杭の側面との間隔が調整でき、把持板121と固定ネジ122のネジ先との間に杭を把持・押圧して、杭に対して丁張用固定具1を固定したり、ネジ先を遠ざけて杭に対して丁張用固定具1をスライド可能な状態にしたりすることができる。
(連結部13)
【0024】
連結部13は、丁張板保持部11と杭把持部12とを回動可能に連結する部材である。連結部13は、丁張板保持部11の一部である円形穿孔116、補助板117及び挿通孔118と、溶接により杭把持部12と一体化された部材である連結軸131及びストッパー132とから構成される。
【0025】
円形穿孔116及び補助板117により形成される空間は、丁張板保持部11と杭把持部12とを連結する際に、丁張板保持部11の背面部113手前側に突起を生じさせないために設けられたストッパー収容部133である。
【0026】
連結軸131は、金属製の円柱形部材であり、挿通孔118に摺回動可能に嵌通される。連結軸131の一端は杭把持部12の把持板121に溶接されており、他端はストッパー132に溶接されている。連結軸131の長さは、補助板117の厚みと等しい。
【0027】
ストッパー132は、丁張板保持部11と杭把持部12との軸CL1方向の位置関係を保つための部材である。これにより、連結軸131が挿通孔118から抜けないようにできる。ストッパー132は、例えば、金属製の円形の板状部材であり、その中心部において、連結軸131の一端に溶接されている。尚、ストッパー132は、ストッパー収容部133内に収容され、さらに軸CL1を中心に自在に回動できる形状でなければならないため、厚みは丁張板保持板111の厚み以下であり、半径は円形穿孔116の半径より小さくなければならない。また、ストッパー132の形状は円形に限られず、その周縁部と軸CL1との最長距離が、円形穿孔26の周縁部と軸CL1との最短距離より短ければよい。
(第二実施例)
(丁張用固定具2の構成)
【0028】
本発明を適用した第二実施例に係る丁張用固定具2を丁張板保持部21側から見た斜視図を図4に示す。この図に示すように、丁張用固定具2は、丁張用固定具1の返し部115の長さ方向の中心部を一部、折り曲げずに手前側に突出させた構成となっている。第二実施例では、返し部22は、長さ方向の中心部に設けられた2本のスリットの外側にのみ形成され、内側は底面部23と同一平面をなすスタッフ支持部24となる。スタッフ支持部24の上面は、取り付けられる丁張板の下端面と同じ高さであるため、ここにスタッフを立てて高さを測定することにより、丁張板の下端面の高さを求めることができる。
【0029】
尚、スタッフ支持部24以外の構成は第一実施例と共通であるため説明は省略する。
(第三実施例)
(丁張用固定具3の構成)
【0030】
本発明を適用した第三実施例に係る丁張用固定具3を第一丁張板保持部31側から見た斜視図を図5に、第二丁張板保持部32側から見た斜視図を図6に、第一丁張板保持部31及び第二丁張板保持部32の長さ方向の中心部において切断した場合の断面図を図7に示す。これらの図に示すように、丁張用固定具3は、第一丁張板保持部31及び第二丁張板保持部32が連結部33によって回動可能に連結された構成となっている。第一丁張板保持部31は、第一実施例における丁張板保持部11と略同一構成であるが、連結部13に関係する部分である円形穿孔116、補助板117及び挿通孔118を備えない点において異なっている。第二丁張板保持部32は、第一実施例における丁張板保持部11と同一構成である。連結部33は、溶接により第一丁張板保持部31と一体化された部材である連結軸331及びストッパー332と、第二丁張板保持部32の一部である円形穿孔321、補助板322及び挿通孔323とから構成される。連結軸331が挿通孔323に摺回動可能に嵌通され、補助板322が第一丁張板保持部31とストッパー332との間に介在することにより、第一丁張板保持部31と第二丁張板保持部32とが、互いの回転軸(軸CL2)方向の位置を保ちながら、回動可能に連結される。さらに、円形穿孔321及び補助板322により形成される空間であるストッパー収容部333内にストッパー332が収容されることにより、第二丁張板保持部32の背面部324において丁張板が取り付けられる側面に突起が生じないよう構成される。
(連結部13の変形例)
【0031】
本発明を適用した第一実施例に係る丁張用固定具1の連結部13の変形例について説明する。図8は、本発明を適用した第一実施例に係る丁張用固定具1の連結部13の変形例である連結部13aを説明するための図であり、連結部13aを有する丁張用固定具1aを丁張板保持部11aの長さ方向の中心部において切断した場合の断面図である。
【0032】
第一実施例における連結部13では、ストッパー収容部133や挿通孔118を形成するために、背面部113に補助板117が溶接されていたのに対し、連結部13aでは、背面部113aを形成する金属板のみによりストッパー収容部133a及び挿通孔118aが形成されている。
【0033】
ストッパー収容部133aは、背面部113aを形成する金属板の中心部手前側が円盤状にくり抜かれることにより形成された空間であり、内部にストッパー132を回動可能に収容する。
【0034】
ストッパー収容部133aが形成されることにより、背面部113aを形成する金属板が一段階薄くなっている部分を軸支部134と称する。軸支部134には、連結軸131を摺回動可能に嵌通する挿通孔118aが設けられており、連結軸131を軸支することができる。尚、挿通孔118aは、その中心軸が背面部113aの中心軸(軸CL3)と一致するよう設けられている。また、軸支部134が杭把持部12とストッパー132との間に介在することにより、丁張板保持部11aと杭把持部12との軸CL3方向の位置関係を一定に保つことができる。
【0035】
ストッパー収容部133aの深さ及び軸支部134の厚みは、ストッパー132と軸支部134の双方に十分な強度が求められるため、背面部113aを形成する金属板の厚みの2分の1程度であることが好ましい。
【0036】
尚、連結部13aの構成は、第二実施例に係る丁張用固定具2及び第三実施例に係る丁張用固定具3にも適用可能である。
(本発明に係る丁張用固定具を用いた丁張掛けの作業手順)
【0037】
本発明に係る丁張用固定具を用いた丁張の形として代表的なものを図9に例示する。図9Aは丁張用固定具1及び丁張用固定具2を併用して掛けられた門型丁張、図9Bは丁張用固定具1及び丁張用固定具2を併用して掛けられた法丁張、図9Cは丁張用固定具1〜3を併用して掛けられた法丁張、図9Dは丁張用固定具2を用いて掛けられたトンボ型丁張の模式図である。
(1.門型丁張)
【0038】
丁張用固定具1及び2の基本的な使用方法として、高さと位置を出すための門型丁張を掛ける際の作業手順を、図9Aに示す模式図、及び、図10に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0039】
まず、ステップST101において、測量等により定められた位置に杭MSを2本打設する。次に、ステップST102において、一方の杭MSに丁張用固定具1を、もう一方の杭MSに丁張用固定具2を、それぞれの杭把持部12,26が杭MSを外嵌するように嵌める。次に、ステップST103において、丁張用固定具2のスタッフ支持部24にスタッフを立て、丁張用固定具2とスタッフとを一体として上下させながら、レベルでスタッフの目盛を読み取り、スタッフの基点が目標の高さになるよう調整する。次に、ステップST104において、丁張用固定具2の固定ネジ27を締めて、丁張用固定具2を杭MSに固定する。次に、ステップST105において、丁張板を各丁張用固定具に嵌める。丁張用固定具1の丁張板保持部11及び丁張用固定具2の丁張板保持部21に丁張板TB1を嵌め、丁張用固定具2のみ、板固定ネジ25を締めて丁張板TB1を固定する。次に、ステップST106において、丁張板TB1の上端に水平器を当てて、丁張板TB1が水平になるよう調整する。最後に、ステップST107において、丁張用固定具1の固定ネジ122及び板固定ネジ119を締めて、丁張板TB1を杭MSに固定する。
(2.法丁張)
(パターン1:丁張用固定具1及び2の併用)
【0040】
切土や盛土を行う際に必要な法丁張を、丁張用固定具1及び2を併用して掛ける際の作業手順を、図9Bに示す丁張用固定具1及び2を併用して掛けられた法丁張の模式図、及び、図11に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0041】
まず、ステップST201において、図10に示す門型丁張掛けと同様の工程を経て、水平丁張板TB2を掛ける。次に、ステップST202において、出したい法面と水平丁張板TB2の下端との交点である基準点P1を求め、印を付ける。次に、ステップST203において、各杭MSに丁張用固定具1を1個ずつ嵌める。次に、ステップST204において、各丁張用固定具1の丁張板保持部11に法丁張板TB3を嵌める。次に、ステップST205において、法丁張板TB3の下端部を基準点P1に合わせながら、丁張用固定具1を上下にスライドさせて法丁張板TB3を目標の角度になるよう調整する。最後に、ステップST206において、丁張用固定具1の固定ネジ122及び板固定ネジ119を締めて法丁張板TB3を固定する。
(パターン2:丁張用固定具1〜3の併用)
【0042】
例えば、急勾配の法丁張を掛ける際等に、丁張板を一方の杭には固定できても、もう一方の杭の高さが足りず所望の勾配を出せない場合がある。このような際には、丁張用固定具3を用いて、図9Cに示すような法丁張とすることで、所望の勾配を出すことが可能となる。このように丁張用固定具1〜3を併用して法丁張を掛ける際の作業手順を図9C及び図11に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0043】
まず、ステップST201において、図10に示す門型丁張掛けと同様の工程を経て、水平丁張板TB4を掛ける。次に、ステップST202において、出したい法面と水平丁張板TB4の下端との交点である基準点P2を求め、印を付ける。次に、ステップST203を行う前に、補助丁張板TB5を掛ける。各杭MSに丁張用固定具1を1個ずつ嵌め、それぞれ適当な高さで固定し、それぞれの丁張板保持部11に補助丁張板TB5を固定する。あるいは、先に補助丁張板TB5を丁張板保持部11に嵌め、後で適当な高さに合わせてもよい。また、補助丁張板TB5は水平に掛けられる必要はない。次に、ステップST203において、丁張用固定具3の第一丁張板保持部31(又は第二丁張板保持部32)を用いて、丁張用固定具3を、水平丁張板TB4及び補助丁張板TB5のそれぞれに1個ずつ、底面部312(又は底面部325)が上になるように取り付ける。次に、ステップST204において、各丁張用固定具3の第二丁張板保持部32(又は第一丁張板保持部31)の底面部325(又は底面部312)が下になるようにして、各丁張用固定具3に法丁張板TB6を嵌める。次に、ステップST205において、丁張用固定具3をスライドさせて法丁張板TB6を目標の角度になるよう調整しながら、法丁張板TB6の下端部を基準点P2に合わせる。最後に、ステップST206において、丁張用固定具3の全ての板固定ネジ313,327を締めて法丁張板TB6を固定する。
(3.トンボ型丁張)
【0044】
図9Dに示すような、高さを示すためのトンボ型丁張を掛ける際の作業手順は、門型丁張を掛ける際の丁張用固定具2を取り付ける工程と略同様であるため、図10に示すフローチャートに基づいて説明する。まず、ステップST101において、測量等により定められた位置に杭MSを1本打設する。次に、ステップST102において、杭MSに丁張用固定具2を嵌める。次に、ステップST103において、丁張用固定具2のスタッフ支持部24にスタッフを立て、丁張用固定具2とスタッフとを一体として上下させながら、レベルでスタッフの目盛を読み取り、スタッフの基点が目標の高さになるよう調整する。次に、ステップST104において、丁張用固定具2の固定ネジ27を締めて、丁張用固定具2を杭MSに固定する。次に、ステップST105において、丁張用固定具2の丁張板保持部21に丁張板TB7を嵌め、板固定ネジ25を締めて固定する。次に、ステップST106において、丁張板TB7の上端に水平器を当てて、丁張板TB7が水平になるよう調整する。最後に、ステップST107において、杭MSと丁張用固定具2の丁張板保持部21の背面部28との間に木片などを楔KBとして噛ませて丁張板TB7の角度を固定する。
(4.施工途中での丁張板の着脱)
【0045】
施工途中において、丁張板を一時的に取り外す際には、丁張板を固定している板固定ネジ119,25,313,327を緩め、丁張板を丁張板保持部11,21,31,32から取り外せばよい。また、丁張板を再び取り付ける際には、丁張板を丁張板保持部11,21,31,32に嵌め、板固定ネジ119,25,313,327を締めて固定すれば、元の位置に丁張板を戻すことができる。さらに、2点で丁張板を固定している場合は、どちらか1点のみ丁張板を取り外し、もう一方の点における固定を維持しておくことで、固定された点を支点として丁張板を回動させることができ、元に戻す際に丁張板の長さ方向の位置がずれることもない。
(作用効果)
【0046】
上記構成により、従来の丁張用具4を使用する利点を有しながら、釘により固定される木製の丁張の安定性及び準備容易性を兼ね備えた丁張掛けを実現することができる。具体的には、丁張掛け作業に、本発明を適用した第一実施例に係る丁張用固定具1を用いることで、以下に記す利益を全て享受することができる。
(1)杭と丁張板との固定が丁張用固定具1によって行われるため、丁張を解体する際に丁張用固定具1の固定ネジ122及び板固定ネジ119を緩めるだけで取り外しが可能となり、杭や丁張板を再利用できる状態に容易に戻すことができる。
(2)固定に釘を用いないため、丁張に用いる杭として、釘を打ち込むことのできない金属製のものを使用することができ、木製の杭を用いる場合に比べて、固い地盤に杭を打ち込む際の労力が軽減される。
(3)丁張用固定具1と杭との間の固定と、丁張用固定具1と丁張板との間の固定とが独立しているため、杭に対する丁張用固定具1の位置を変えることなく、丁張板だけを必要に応じて着脱することができる。
(4)丁張板保持部11の内側に突起がないため、専用の丁張板を用意する必要がなく、一般的に用いられる丁張板で丁張掛けを行うことができる。
(5)杭把持部12と連結軸131の接続部及び連結軸131とストッパー132の接続部が溶接によって接合されているため、杭把持部12と丁張板保持部11との連結が緩むことなく、固定状態が安定である。
【0047】
また、本発明を適用した第二実施例に係る丁張用固定具2によれば、丁張掛けの作業手順を簡略化することができる。例えば、門型丁張掛け作業におけるステップST103の工程は、従来の丁張掛け作業においては、図13のフローチャートに示されるような複数の工程に相当する。まず、ST301において、杭の頭等のスタッフを立てることのできる一点を基準点として定め、釘を打つ等して印を付ける。次に、ST302において、ST301で定めた基準点にスタッフを立て、レベルでスタッフの目盛を読み、基準点の高さを測定する。次に、ST303において、目標の高さと基準点の高さとの差を計算により求める。最後に、ST304において、基準点を基点として、杭にメジャーを合わせ、ST303において求めた高さの差分を測り取ることで、目標の高さを得る。このように、従来技術による丁張掛けでは、目標の高さを得るまでに、基準点の測定という工程を経る必要があった。一方、本発明を適用した第二実施例に係る丁張用固定具2にはスタッフ支持部24が設けられているため、ST103の説明に記したように、基準点の測定を経ずに、より単純な手順で目標の高さを得ることができる。これは、法丁張及びトンボ型丁張を掛ける作業においても同様である。このように、作業手順が簡略化されることで、作業効率の向上が期待できる。
【0048】
さらにまた、本発明を適用した第三実施例に係る丁張用固定具3によれば、丁張板に丁張板を固定することが可能となる。これにより、丁張板の取り付け可能範囲が広がり、現場の状況に柔軟に対応した丁張掛けを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係る丁張用固定具は、土木工事の現場における丁張掛けに好適に使用できる。
【符号の説明】
【0050】
1、1a…丁張用固定具
11、11a…丁張板保持部、111…丁張板保持板、112…天面部、113、113a…背面部、114…底面部、115…返し部、116…円形穿孔、117…補助板、118、118a…挿通孔、119…板固定ネジ
12…杭把持部、121…把持板、122…固定ネジ
13、13a…連結部、131…連結軸、132…ストッパー、133、133a…ストッパー収容部、134…軸支部
2…丁張用固定具、21…丁張板保持部、22…返し部、23…底部、24…スタッフ支持部、25…板固定ネジ、26…杭把持部、27…固定ネジ
3…丁張用固定具
31…第一丁張板保持部、311…背面部、312…底面部、313…板固定ネジ
32…第二丁張板保持部、321…円形穿孔、322…補助板、323…挿通孔、324…背面部、325…底面部
33…連結部、331…連結軸、332…ストッパー、333…ストッパー収容部
4…丁張用具、41…杭部材、42…長尺部材、43…保持具、431…杭把持部、432…長尺部材保持部、433…連結ボルト、434、435…締付ボルト
CL1、CL2、CL3…軸
TB1、TB7…丁張板、TB2、TB4…水平丁張板、TB3、TB6…法丁張板、TB5…補助丁張板
P1、P2…基準点
MS…杭
KB…楔
【要約】
【課題】丁張掛け作業の省力化、省資源化及び作業効率の向上に寄与し得る丁張用固定具を提供する。
【解決手段】丁張用固定具1に、丁張板の一側面を支持する背面部113、丁張板の下端部を支持する底面部114、及び、丁張板の上端部をネジ先で押圧することによって丁張板を固定するための板固定ネジ119が端部付近に設けられた天面部112を有する丁張板保持部11と、固定ネジ122、及び、そのネジ先に対向するよう配された把持板121を有する杭把持部12と、杭把持部12に溶接された連結軸131、連結軸131に溶接されたストッパー132、及び、背面部113の中心部に形成され、連結軸131を軸支する挿通孔118、並びに、背面部113の丁張板が取り付けられる側面に形成されたストッパー収容部133が設けられ、杭把持部12と丁張板保持部11とを回動可能に連結する連結部13とを備える。
【選択図】図1
図1
図2
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図5
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図10
図11
図12
図13