【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、コイルスプリングを制御
セッチング(controlled setting)するための装置を提供する。当該装置は、前記スプリングを圧縮できるように、また圧縮中にスプリング形状を制御できるように、構成されている。当該装置は、当該スプリングの第1端を保持する第1サポート、および当該スプリングの第2端を保持する第2サポートを有し、当該第1および第2サポートは、互いに対して移動するように構成されている。当該装置は、さらに、スプリングの圧縮中に、スプリングのある特定のターンの間に挿入可能となるように構成されている挿入レストを、少なくとも1つ含む。
【0008】
コイルスプリングの製造段階において、制御
セッチング操作、言い換えると予備
セッチング操作、を受けることによって、コイルスプリングは可塑的に変形され、その結果、当該スプリングの物理的特性が修正される。
【0009】
スプリングのターンの中には、スプリングの圧縮中に挿入レストと接触するターンがあり、当該挿入レストによって当該ターンが支えられる。当該挿入レストは、圧縮および固定の間、スプリングの形状を制御し、その結果、座屈の発生や他の望ましくない変形が防がれる。
【0010】
具体的には、サポートは、ターンが接触するまで、すなわち、隣のターンに接触するか挿入レストに接触するかのいずれかとなるまで、スプリングを圧縮できる。スプリングの圧縮長さの調節を可能とする厚みのある挿入要素を用いながらも、ターンが接触する公知方法に類似した状況を得るためである。その結果、第1に、スプリングの固定長さを調整することが可能となり、これによってストレスレベル、すなわち必要とされる可塑性レベルを調整することが可能となる。第2に、「ターンが接触した」状態に類似した状態を利用することが可能となり、当該状態では、当該ターンは相互に又はレストに対して固定される。従って、当該ターンには、加圧に順応することを除いて、変形可能な余地がない。こうして、望ましくない変形、特に側部の変形、が確実に低減し、さらには排除される。
【0011】
さらに、ターン間の距離が、一層制御可能となり、不規則に変動しなくなる。特に、挿入レストの厚みを調整することによって、また予想される可塑化量を考慮することによって、最終のスプリングのターン間の距離を調整することが可能となる。
【0012】
ある実施形態では、少なくとも1つの挿入レストは、切断されたリング(truncated ring)または切断された円板(truncated disk)の形状を有するパドルであり、この切断部分によって、スプリングのターンがパドルを通り抜けることが可能となるように構成されている。固定している間、当該形状を有していることによってターンに追従することが可能となり、従って長い距離にわたる突き押し動作の前およびその間において、ターンを通す間隙を残しているにも関わらず、ターンを支持することが可能となっている。
【0013】
ある実施形態では、切断部分は、90°である4等分角に相当する。
【0014】
ある実施形態では、パドルは、実質的に螺旋形状(substantially helical)にあり、その形状がスプリングのターンの形状に実質的に追従し、圧縮中にはパドルがターンと接触することになる。このように固定の間ターンとより緊密に接触するため、より確実にターンが支持される。さらに、ターン自体の有する特質に逆らわないことによって、望ましくないターンの変形が確実に防止される。
【0015】
ある実施形態では、スプリングのターンと同様の形状にパドルの形状を適合させるために、パドルが面取りされている。
【0016】
ある実施形態では、2つの隣接した挿入パドルは同じ向きではなく、好ましくは±90°ずれている。切断部分は、一方の側とその反対の側との間で、交互になっていることが好ましい。このようにすると、ターンの間の間隔が一層均等になる。
【0017】
ある実施形態では、少なくとも1つの挿入レストは、少なくとも3つの枝を有する星型の形状を有し、少なくとも3点においてスプリングと協働(co−operate)する。好ましくは、当該枝は、規則的な角度をもって配置される。複数の枝を有するこのような構成は、パドルを用いた構成よりも特殊でなく、従って装置の大きな改造を必要とせずに、様々な型のスプリングに適応可能である。
【0018】
ある実施形態では、少なくとも1つの挿入レストはY字型の形状であり、3つの枝が相互に120°の角度で配置されている。
【0019】
ある実施形態では、少なくとも3つのレストの枝が、共通する横断面上に存在しない。螺旋状パドルを有している場合と同様に、当該形状によって、スプリングの形状に追従することが可能になる。
【0020】
別の実施形態では、少なくとも3つのレストの枝が同一面上にある。当該構成は、さらに特殊性がなく、よって様々な型のスプリングに容易に適用されることが可能である。
【0021】
ある実施形態では、レストの少なくとも3つの枝が、同一面上にない。
【0022】
ある実施形態では、少なくとも1つのレストは、実質的にフレキシブルである。当該形状を有することによって、圧縮中に、スプリングの形状に一層近接することが可能になる。
【0023】
ある実施形態では、制御
セッチング装置は、複数の挿入レストを有している。ターンの間隔を制御することが望ましい間隔に、少なくとも1つの挿入レストが配置されることが好ましい。特に、すべてのターンの間に挿入レストが存在すると、スプリングの全有効長さ(working length)に沿って、形状を制御することが可能となる。しかしながら、別の実施形態では、必ずしもすべてのターンにおいて、レストやその他のターンと接触することは必要でない。特に、スプリング端部に位置する特定のターンは、束縛されない状況にあってもよい。
【0024】
ある実施形態では、複数の挿入レストの中に、ピッチを変えるため、すなわちスプリング内でターン間距離を変えるために、その他のレストの厚みとは異なった厚みを有している挿入レストがある。
【0025】
ある実施形態では、少なくとも1つの挿入レストが、スプリング軸の湾曲に沿うようにレストの厚みの変化が調整された、くさび型形状を有している。この方法によると、軸が湾曲したスプリングを形成することが可能となる。
【0026】
ある実施形態では、各挿入レストは同一のくさび型形状を有している。例えば、同一のくさび型形状を有するレストを複数挿入することによって、C字型の軸を有するスプリングを形成することが可能となる。
【0027】
ある実施形態では、挿入レストが、それぞれ異なったくさび型形状プロフィールを有している。これにより、スプリングの軸を部分的に湾曲するように調整することが可能となる。たとえば、最初にある方向に、次いで逆方向に、くさび型形状の複数のレストを挿入すると、S字型の軸を有するスプリングを形成することが可能となる。
【0028】
ある実施形態では、挿入レストは、それぞれ1つのキャリッジ上に固定され、当該キャリッジは、スプリングの圧縮中に、挿入レストがスプリングのターンの移動に追従できるように構成されている。キャリッジは、レストの初期位置から圧縮中の固定位置まで、スプリングの移動に追従して、例えばレール上を、移動することができる。
【0029】
ある実施形態では、キャリッジは、それぞれ当該キャリッジの初期位置を定めるように構成されている1つのストップと協働し、当該ストップは、当該キャリッジの初期位置を調整するために可変式であることが好ましい。このようにして、新しいスプリングを固定するための装置を準備するために、各キャリッジを容易にかつ非常に素早く初期位置に戻すことが可能となる。
【0030】
ある実施形態では、各キャリッジは、当該キャリッジを初期位置に戻すように構成されているリターンスプリングと協働する。
【0031】
ある実施形態では、圧縮装置は、キャリッジそれぞれに1本のバーを備えたフレームをさらに備えている。各キャリッジは、貫通孔および隣接部(abutment)を有しており、貫通孔は各々のバーに沿ってスライドし、隣接部は各々のストップと協働するように構成されている。各リターンスプリングはそれぞれのバーの周囲に設置されており、第1端はフレームの内面に向かい、第2端はキャリッジの側面に向かっている。
【0032】
ある実施形態では、キャリッジは移動自在であって、サポートによってターンが移動するときに、レストが移動するようにレストを押し付けるのはスプリングのターンである。
【0033】
別の実施形態では、各キャリッジは、駆動手段を用いて動かされる。例として、当該手段はウォームスクリュー機構を備えていてもよく、当該機構は、それぞれのバーについてねじと駆動機構を備えていて、各キャリッジの貫通孔の1つがねじに適合するように雌ねじを切られていてもよい。駆動手段は、ピストン駆動機構を備えていてもよく、各キャリッジのストップがピストンを用いて駆動することとしてもよい。
【0034】
ある実施形態では、第1サポートは固定されており、第2サポートは移動可能であって、圧縮中に第1サポートに向かって移動するように構成されている。
【0035】
ある実施形態では、第1および第2サポートは共通軸上で互いに向かい合っており、第2サポートは、軸方向のみにスプリングを圧縮するように第1サポートに向かって直線上を移動する。
【0036】
別の実施形態では、第2サポートは、第1サポートに湾曲した経路に沿って近づいてもよい。湾曲した軸を有するスプリングを作製するために、くさび型形状の挿入レストに関連した形態とすることが特に好ましい。
【0037】
ある実施形態では、制御
セッチング装置は、スプリングを把持し運搬するように構成されている、把持手段をさらに含む。把持手段は、好ましくはクランプである。クランプは、好ましくはすでに適切に方向づけられているスプリングをつかみ、挿入レストがスプリングのターン間に挿入されるように第1サポートおよび第2サポートの間にスプリングを設置し、圧縮が行われている間は装置から離れ、その後最終のスプリングを回収して装置から取り除くために戻ってくる。
【0038】
本開示は、コイルスプリングを
セッチングするための、制御
セッチング方法もさらに提供する。この方法は、コイルスプリングを供給する工程;当該スプリングを第1サポートおよび第2サポートの間に設置する工程;第1サポートおよび第2サポートを互いに向かって移動させて、スプリングを圧縮する工程;スプリングの圧縮を解く(decompress)工程;およびこのように処理されたスプリングを取り除く工程を含む。この方法は、スプリングのターンの間に存在する特定の間隔に対応する、特定の位置に、少なくとも1つの挿入レストを設置する工程をさらに含み、ターンのすべておよび少なくとも1つの挿入レストが互いに接触するまで、スプリングが圧縮される。
【0039】
上記のように、挿入レストを設置することによって、ターンが接触した固定状態と同様の状況を固定の間により長いスプリング長さを有していながらも、再現することが可能になる。従って、望ましくない変形が避けられるように、固定の間スプリング形状を制御できる一方で、圧力レベル、すなわち所望の可塑化レベルを調整することが可能となる。
【0040】
ある実施状態では、サポートにより生じる圧縮力は、一連のターンおよび少なくとも1つの挿入レストが接触するために必要な力を限度とする。すなわち一旦当該状況に達すれば、サポートは追加の圧力を加えない。言い換えると、スプリングは自身の有するばね定数(stiffness)に由来する圧力のみを受け、装置はスプリングに著しい力を印加しない。この方法において、挿入レストにかかる力は非常に小さい。よってレストは、このような力に耐えうるように設計されている必要はない。
【0041】
ある実施状態では、制御固定方法は、スプリングを方向付けする工程を含み、それによってスプリングは所定の方向を向いて到達する工程を含む。その結果、スプリングは装置上の適切な位置に直接設置される。
【0042】
ある実施状態では、スプリングを設置する工程の前に、少なくとも1つの挿入レストを所定の位置に設置する工程が実施される。初期位置において、装置は適所においてスプリングを受け入れる用意ができている。
セッチング操作が終了した後、装置は初期位置に戻る。
【0043】
ある実施状態では、スプリングの圧縮は、例えば150℃以上の、高温において行われる。このような熱圧縮によって、最終のスプリングが良好なクリープ抵抗を得ることができる。
【0044】
別の実施状態では、スプリングは、例えば150℃より低い、好ましくは雰囲気温度である、低温で圧縮される。当該実施状態は安価に実施できる。
【0045】
ある実施状態では、スプリングは、最低0.5秒間圧縮することによって固定される。
【0046】
ある実施状態では、当該方法は、上記実施形態のいずれかによる、制御
セッチング装置を用いる。
【0047】
上述した特徴、利点、およびその他については、提示された装置の実施形態についての、または提示された方法の実施状態についての、以下の詳細な説明を読むことによって理解できる。この詳細な説明においては、添付図面を参照する。