(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電力供給手段により前記高電圧発生部に所定の電位を付与するように制御するフィードバック回路を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の高電圧発生装置。
前記磁束遮蔽手段は、前記巻線部材の、前記一対のコア間に延在する引き出し部が互いに捻じられることにより構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の高電圧発生装置。
前記一方の電力供給手段を構成する絶縁トランスと、前記他方の電力供給手段を構成する絶縁トランスとには、互いに逆位相の電流が供給されることを特徴とする請求項5に記載の高電圧発生装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されるような従来の高電圧発生装置では、例えば、パワー伝送回路等の電力供給回路の近くに配置される電気回路等に、電力供給回路を構成する絶縁トランスの巻線部材に生じる磁束が影響を及ぼす恐れや、電力供給回路を複数備え、電力供給回路を互いに近い距離に配置すると、電力供給回路を構成する絶縁トランスの巻線同士間に生じる磁束により起電力が発生し、電力供給回路で所定の電位を得られない恐れがある。従って、電力供給回路が、その他の電気回路や別の電力供給回路へ磁束の影響を及ぼさないように、その他の電気回路や電力供給回路を互いに離間させる必要が生じ、小型化及び軽量化が難しい。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものである。すなわち、電力供給回路以外の電気回路に影響を及ぼさず、電力供給回路において所望の電位が確実に得られ、小型化や軽量化できる高電圧発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の高電圧発生装置の第1の態様は、電子を放出する電子放出部材に高電圧を供給するための高電圧発生装置であって、前記電子放出部材に電流を供給できる電力供給手段と、前記電力供給手段に所定の電位を付与するための高電圧発生部と、を備え、前記電力供給手段は、一対のコアと前記一対のコア間に巻回される巻線部材とを有し、前記巻線部材の前記一対のコア間に延在する引き出し部により囲まれる引き出し領域には前記領域内を貫通する磁束を遮断するための磁束遮蔽手段が設けられている。
【0008】
また、本発明の高電圧発生装置の第2の態様によれば、前記高電圧発生装置の第1の態様であって、前記一対のコアが容器の内部空間を規定する内壁面に装着されている。
【0009】
また、本発明の高電圧発生装置の第3の態様によれば、前記高電圧発生装置の第1又は第2の態様であって、前記電力供給手段により前記高電圧発生部に所定の電位を付与するように制御するフィードバック回路を備えている。
【0010】
本発明の高電圧発生装置の第4の態様によれば、高電圧発生装置の第1乃至第3の態様のいずれかであって、前記磁束遮蔽手段は、前記巻線部材の、前記一対のコア間に延在する引き出し部が互いに捻じられることにより構成されている。
【0011】
本発明の高電圧発生装置の第5の態様によれば、高電圧発生装置の第1乃至第4の態様のいずれかであって、前記電力供給手段を複数備え、一方の前記電力供給手段が有する一対のコア間に延在する引き出し部と、他方の前記電力供給手段が有する一対のコア間に延在する引き出し部とは、捻じられる方向が互いに異なる。
【0012】
本発明の高電圧発生装置の第6の態様によれば、前記高電圧発生装置の第5の態様であって、前記一方の電力供給手段を構成する絶縁トランスと、前記他方の電力供給手段を構成する絶縁トランスとには、互いに逆位相の電流が供給されることを特徴とする請求項5に記載の高電圧発生装置。
【0013】
なお、本明細書において巻線部材の「引き出し部」とは、コアの穴を通りコアの外面上及びその近傍に延在する巻線部材の屈曲部を除く部位であって、コアの外面から離れる部位である。また、「引き出し部により囲まれる引き出し領域」とは、2つの対向する引き出し部により画成される領域を意味する。なお、「狭める」とは、2つの引き出し部間を互いに近づける状態のみならず、2つの引き出し部同士が当接させる状態をも意味する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る高電圧発生装置によれば、電力供給回路を構成する絶縁トランスの一対のコアを巻回する巻線部材により囲まれる領域を狭めることにより、巻線部材の磁束の影響を抑えることができる。従って、電力供給回路同士を互いに近くに配置する場合であっても、所定の電位を得られるとともに、他の電気回路への影響を抑えることができ、電力供給回路の配置の自由度を高くすることができる。結果として、高電圧発生装置の小型化及び軽量化を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る高電圧発生装置を適用した実施形態に係るX線装置について図面を参照しつつ説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0017】
〔X線装置〕
図1(a)は、実施形態に係るX線装置1を模式的に示す一部破断斜視図であり、
図1(b)は、
図1(a)の線I−Iに沿った断面図であり、
図1(c)は、
図1(b)の線II−IIに沿った断面図であり、
図2は、実施形態に係る高電圧発生装置2の電力供給回路11とX線管37とを模式的に示す模式図である、
図3は、実施形態に係る高電圧発生装置2のCWC(コッククロフト・ウォルトン回路)13及び分圧回路151を示す図である。
【0018】
なお、
図1(a)には、図面の明瞭化のためトロイダルコア15、17、19のみが記載され、トロイダルコア15、17、19以外のトロイダルコア、巻線部材23、CWC27、分圧回路151等は、割愛されている、
図1(b)には、図面の明瞭化のため、巻線部材を取り除いたトロイダルコア15(15a、15b、15c、15d)が示されている。
図1(c)中には、図面の明瞭化のため、トロイダルコア15(15a、15b、15c、15d)と、トロイダルコア15間に巻回される巻線部材23(23a、23b、23c)のみが示され、その他のトロイダルコア16〜22及びその間の巻線部材は割愛されている。
【0019】
X線装置1は、電子を放出できる電子放出部材であるX線管37と、X線管37に高電圧を付与できる高電圧発生装置2とを備え、X線管37は、電子放出部材である一対の陰極7及び陽極9(
図3参照。)を有する。高電圧発生装置2は、主として、内部空間3を有する容器5と、内部空間3内に収容され、陰極7から熱電子を放出するための電流を供給する電力供給手段である電力供給回路11(
図2参照。)と、電力供給回路11に所定の電位を付与するための高電圧発生部であるCWC13(
図3参照。)と、を備える。
【0020】
さらに、電力供給回路11の絶縁トランス121、123、125、127は、少なくとも一対のコア(本実施形態では4組のトロイダルコア15、17、19、21)とトロイダルコア15、17、19、21に巻回される巻線部材23と、を有し、トロイダルコア15、17、19、21を通る巻線部材23の、一対のトロイダルコア間(例えば、15aと15bの間、15bと15cの間)に延在する引き出し部26により囲まれる引き出し領域10には前記領域内を貫通する磁束を遮断するための磁束遮蔽手段が設けられている。本実施形態では、当該磁束遮蔽手段は、前記巻線部材の、一対のトロイダルコア15間に延在する引き出し部26が互いに捻じられることにより構成されている。このように、引き出し領域10を狭くすることにより、互いに隣り合う絶縁トランス間121、123,125、127及び後述のフィードバック絶縁トランス129、131、133、135で、一方の絶縁トランスの磁束が、他方の絶縁トランスの磁束に影響をすることを防止している。
【0021】
以下にX線装置1の各構成要素について詳細に説明する。X線装置1の外側ケース25は、金属製、例えば、アルミニウム等から作製され、有底で、頂部が略半球状の円筒部材である。外側ケース25の内部には、高電圧発生部13を構成する容器5が配置されている。容器5は、内部空間3を有する円錐台形状であり、
図1(b)に示すように、容器5の水平方向断面が円形である。
【0022】
容器5の内壁面5aには、絶縁トランス121、123、125、127を構成するトロイダルコア15、17、19、21が装着されている。また、容器5の内部空間3の平面視において(
図1(b)の)左側には、CWC13が形成されている基盤27が配置されている。また、内部空間3の平面視において(
図1(b)の)右側には、トロイダルコア15〜22が交互に周方向に等間隔で配置されている。なお、フィードバック用トロイダルコア16、18、20、22については後述する。
【0023】
図1(c)に示すように、トロイダルコア15a、15b、15c、15dが、容器5の末広がりに延びる内壁面5aに上方から下方に等間隔に配置されている。なお、本実施形態では、従来から知られている円環状のトロイダルコア15〜21を複数備える多段式コアトランスを構成する。
【0024】
トロイダルコア15〜22を容器5の内壁面5aに固定する手段として、金属製のCリング29(29a〜29c)が利用されている。容器5の内壁面5a上には、水平方向に延在する溝5bが刻設され、Cリング29が溝5bに嵌合し内壁面5aに固定されている。また、トロイダルコア15〜22とCリング29とが同電位となるように、トロイダルコア15〜22は、Cリング29に対し固定用細線等で巻き付けられている。なお、トロイダルコア15〜22と、Cリング29とが同電位である限り、ねじ、接着剤等の手段を用いてトロイダルコア15〜22をCリング29に固定できる。このようにトロイダルコアを内壁面5aに固定することにより、高電圧発生装置2の寸法を小さくできるともに、トロイダルコアを固定するための構成部材が不要となるので、軽量化できる。
【0025】
また、トロイダルコア15(15a〜15d)の間には、1ターンの巻線部材23(23a〜23c)が巻回されている。具体的には、内壁面5aの最上位置にある第1のトロイダルコア15aと、第1のトロイダルコア15aより低い位置に固定され、第1のトロイダルコア15aに上下方向に関し隣り合う第2のトロイダルコア15bとに第1の巻線部材23aが巻回されている。さらに、第1の巻線部材23aの、第1及び第2のトロイダルコア15a、15bの穴内及び外周面を通る屈曲部から延び、第1及び第2のトロイダルコア15a、15bとの間に延在する2つの引き出し部は、互いに捻じり合わされている。
【0026】
同様に、第2の巻線部材23bは、第2及び第3のトロイダルコア15b、15cとの間に巻回され、第2と第3のトロイダルコア15b、15c間に延在する2つの引き出し部が互いに捻り合わされている。さらに、第3の巻線部材23cは、第3及び第4のトロイダルコア15c、15dとの間に巻回され、第3と第4のトロイダルコア15c、15d間に延在する2つの引き出し部が互いに捻り合わされている。なお、上記巻線部材としては、絶縁材料で被覆され、銅等の導電性の芯材からなる絶縁コード、例えば、シリコン材が被覆されている導電性の芯材であるシリコンケーブル等を適宜利用できる。引き出し部が捻り合わせることができるかぎり、種々の絶縁ケーブルを利用できる。
【0027】
また、容器5の内壁面5aには、中間電位を取るために、上述した絶縁コード31a、31b、31c、例えばシリコンケーブルが、周方向に延在している。絶縁コード31aは、Cリング29aとCリング29bとの間の内壁面5aに沿った中点(両Cリング29a、29bから等距離で内壁面5a上の位置)に配置される。同様に、絶縁コード31bは、Cリング29bとCリング29cとの間の内壁面5aに沿った中点(両Cリング29b、29cから等距離で内壁面5a上の位置)に配置され、絶縁コード31cは、Cリング29cとCリング29dとの間の内壁面5aに沿った中点(両Cリング29c、29dから等距離で内壁面5a上の位置)に配置される。
【0028】
絶縁コード31a、31b、31cの芯材それぞれは、巻線部材23a、23b、23cの芯材に導通するように接続されている。従って、絶縁コード31a、31b、31cの電位は、巻線部材23a、23b、23cと絶縁コード31a、31b、31cとが接続されている、巻線部材23a、23b、23cの部位の電位と同じになる。
【0029】
図2に示すように、トロイダルコア15及び巻線部材23により構成される絶縁トランスは、電力供給手段であるヒータ電力回路50を構成する。ヒータ電力回路50は、フィラメント7に所定の電流を供給する機能を有する。
【0030】
また、
図2に示すように、電力供給手段である第1のアノード電力供給回路52、第2のアノード電力供給回路54、及び第3のアノード電力供給回路56のそれぞれは、ヒータ電力回路50と同様に絶縁トランスを有している。図示はしないが、第1のアノード電力供給回路52は、4つのトロイダルコア17及び3組の1ターンの巻線部材を有し、第2のアノード電力供給回路54は、4つのトロイダルコア19及び3組の1ターンの巻線部材を有し、第3のアノード電力供給回路56は、4つのトロイダルコア21及び3組の1ターンの巻線部材を有している。ヒータ電力供給回路50、第1〜第3のアノード電力供給回路52、54、56のその他の構成については、後述する。
【0031】
さらに、
図1(a)に示されるように、容器5の上部に装着されているのは、円筒状部材であるコロナシールド33である。コロナシールド33は、2層構造であり、内側層は、放電を防止するためにアルミニウムから作製され、外側層は、透明の塩化ビニールから形成される。コロナシールド33内には、フィラメント7,第1〜第3のアノード39、41、43を制御するフィラメント制御回路111、第1〜第3のアノード制御回路113、115、117(
図2参照。)が配置されている。
【0032】
図1(a)に示されるように、コロナシールド33の上部に装着されるのは、X線管37である。本実施形態では、従来から知られる構成のX線管37を利用する。電流を付与されることで加熱されるフィラメント(陰極)7と、フィラメント7に対向配置され接地される陽極を構成するターゲット9と、フィラメント7から放出される熱電子線が広がりすぎないように集束させるサプレッサとして機能する金属製の環状部材である第1のアノード39と、フィラメント7から熱電子を引き出す機能を有し金属製の環状部材である第2のアノード41と、電子線を所定の径に絞るための機能を有し金属製の環状部材である第3のアノード43と、が真空状態のガラス管内に配置される。上記のフィラメント7、ターゲット9、第1のアノード39、第2のアノード41、第3のアノード43が、電子放出部材を構成する。
【0033】
このように、CWC11の出力側である高電圧側には、コロナシールド33内のフィラメント制御回路111、第1〜第3のアノード制御回路113、115、117、X線管37のみが配置される構成なので、X線装置1の外側ケース25内で局所的に温度が上昇することを防止できる。
【0034】
また、X線管37からのX線漏れを防止する目的で、X線管37の半径方向の周囲には、例えば透明の塩化ビニールから形成されるノーズカバー35が装着されている。また、X線管37の頂部に形成されている放射窓38が、ノーズカバー35及び外壁25から装置1の外部へ突出するように設けられている。
【0035】
なお、CWC11の出力側が高電圧のためにノーズカバー35のみでは、X線漏れを十分に遮蔽できない場合には、ノーズカバー35の代わりに又はノーズカバー35に加えて、鉛から構成される遮蔽部材をX線管37とコロナシールド33の間に配置すること又は当該遮蔽部材によりX線管のコロナシールド33側の端部を囲むことも好ましい。さらに、フィラメント制御回路111のように、半導体素子を利用する整流回路を有する場合には、熱伝導性の良いアルミニウム又は真鍮製等の部材により当該制御回路を囲むことにより、当該制御回路の冷却を期待できる。
【0036】
また、容器5の内壁面5aの上部には、雌ねじが刻設され、コロナシールド33の外周面の下部には、雄ねじが刻設され、容器5とコロナシールド33は、互いに螺合し両部材が互いに固定される構成である。また、コロナシールド33の外周面上部には、雄ねじが刻設され、ノーズカバー35の内周面の下端部には、雌ねじが刻設され、コロナシールド33に対してノーズカバー35が螺合し、両部材が互いに固定される構成である。
【0037】
〔電力供給回路〕
次に、
図2を参照しつつ、電力供給手段であるヒータ電力供給回路50及び第1〜第3のアノード電力供給回路52、54、56について説明する。
【0038】
商用電源(
図3の符号70参照。)から供給される交流電流は、AC/DCコンバータ77により直流電流に変換される。直流電流は、ヒータ電力供給回路50、第1〜第3のアノード電力供給回路52、54、56に供給される。第1〜第3のアノード電力供給回路52、54、56は、ヒータ電力供給回路50と構成がほぼ同じであるので、第1〜第3のアノード電力供給回路52、54、56については、ヒータ電力供給回路50と異なる部分を主として説明する。
【0039】
ヒータ電力供給回路50は、PWM(パルス幅変調)信号発生部51aとプッシュプル駆動回路53aとを有する。PWM信号発生部51aにより生成されたPWM信号は、スイッチング素子を有するプッシュプル駆動回路53aにより第1の絶縁トランス121へ入力される。第1の絶縁トランス121は、前述するように、1ターントランスを3段に縦続し構成される。また、1段目の絶縁トランスを構成するトロイダルコア15dは、ポテンシャルリング29dを介して接地されている。3段目の絶縁トランスを構成するコア15aの2次側から、フィラメント制御回路111へ所定の電流が供給される。フィラメント制御回路111から所定の電流がフィラメント7へ供給されフィラメント7が加熱される。フィラメント7に対向配置されるターゲット9は、接地されている。
【0040】
〔フィードバック回路〕
さらに、フィラメント制御回路111には、フィラメント電力供給回路50の高電圧側に連結される変流器(CT)と、第1のフィードバック絶縁トランス129と、低電圧側でPWM信号発生部51に連結される全波整流器55と、を有する第1のフィードバック回路60が接続されている。また、第1〜第3のアノード制御回路113、115、117は、それぞれトランスを介して第2〜第4のフィードバック絶縁トランス131、133、135に連結されている。
【0041】
第1のフィードバック絶縁トランス129は、1ターントランスを3段に縦続し構成されている。すなわち、4つのトロイダルコア16(
図1(b)参照。)及び3組の1ターンの巻線部材を有する。
【0042】
また、第1のフィードバック絶縁トランス129は、前述の絶縁トランス121と比べ、若干径の小さいトロイダルコア16(
図1(b)参照。)を用いている。なお、第1及び後述の第2〜第4のフィードバック絶縁トランス129、131、133、135は、前述した第1〜第4の絶縁トランス121、123、125、127と同様の構成であるので詳細は割愛する。
【0043】
第2のフィードバック回路60は、第2のフィードバック絶縁トランス131を構成する4つのトロイダルコア18(
図1(b)参照。)及び3組の1ターンの巻線部材、第3のフィードバック回路64は、第3のフィードバック絶縁トランス133を構成する4つのトロイダルコア20及び3組の1ターンの巻線部材、第4のフィードバック回路66は、第4のフィードバック絶縁トランス133を構成する4つのトロイダルコア22及び3組の1ターンの巻線部材を有している。
【0044】
また、フィードバック回路60、62、64、66のトロイダルコア16、18、20、22は、第1〜第4の絶縁トランス121、123、125、127を構成するトロイダルコア15、17、19、21と同様に、トロイダルコア16、18、20、22がCリング29を介して容器5の内壁面5aに固定されている。従って、同じCリング29に装着される絶縁トランス121、123、125、127及びフィードバック絶縁トランス129、131、133、135のトロイダルコア15〜22同士は、等電位となる。
【0045】
上記フィードバック回路を設けることにより、電力供給回路50、52、54、56の絶縁トランス129、131、133、135に所定の電位を確実に付与することができる。また、電力供給回路50、52、54、56と高電圧発生部33の容器5の電位勾配とを一致させているので所望の電位を安定的に得ることができる。
【0046】
〔コッククロフト・ウォルトン回路(CWC)〕
次に、
図3に示されるCWC13について説明する。本実施形態のCWC13は、対称型であり、図中において、左右方向に接続される複数のコンデンサから構成されるコンデンサ列91〜93が3列設けられ、コンデンサ列92を中心とすると、コンデンサ列91及びコンデンサ列93が対称に配置され、ダイオードを介して互いに連結されている。商用電源70から供給される交流電流は、PFC(力率補正回路)を介してPWM直流可変電源回路73に入力され直流電流に変換される。さらに、ハーフブリッジドライバ75により交流電流が端子81、83を介しCWC13に入力され、昇圧される(本実施形態では、12段のCWCで90KVに昇圧する。)。なお、昇圧回路であるCWC13の構成は、すでに知られている構成であるので詳細な説明は割愛する。また、対称型のCWCに限らず、種々の昇圧回路を利用することができる。
【0047】
CWC13からの電流は、出力端子153を介し、
図2に示す制御回路111、113、115、117に入力され、各制御回路111、113、115、117に所定の電位が付与される。
【0048】
〔分圧回路〕
分圧回路151は、
図1(b)に示されるように容器5の内部空間5a内に配置される。また、
図3に示されるように、CWC13の高電位側には、複数の同抵抗R1〜R12から形成される分圧回路151の一端部が接続され、他端部には、端子85、87を介しPWM直流可変電源回路73が接続され、CWC13のフィードバック抵抗として機能している。さらに、本実施形態では、Cリング29a、29b、29c、29dの電位は、それぞれ90KV、60KV、30KV、接地である。また、絶縁コード31a、31b、31cの電位は、それぞれ、75KV、45KV、15KVである。このように、分圧回路151に、フィードバック機能と、電圧供給回路に電位を供給する機能を付与することで容器5の寸法を小さくできる。もちろん、CWC13のフィードバック抵抗と、電圧供給回路に電位を供給する分圧抵抗とを別々に設ける構成にすることも可能である。
【0049】
上記実施形態のように高電圧発生装置1を構成することにより、高電圧電位が90KVの性能を有しつつ、最大外形が200mm程度、高さが230mm程度(外側ケース25の高さは450mm程度)の小型の容器5を実現できる。また、重量は10kg程度で軽量な高電圧発生装置を実現できる。
【0050】
また、放電を防止するためにX線装置1の外側ケース25内にSF
6(6フッ化硫黄)を充填し装置を使用することも可能である。
【0051】
本実施形態の磁束遮蔽手段は、コア間に延在する巻線部材の2つの引き出し部を互いに捻り合わせることにより、引き出し部により囲まれる引き出し領域を貫通する磁束を遮断する構成であるが、捻り合わせることなく2つの引き出し部を互いに当接させることにより両引き出し部間の隙間を(引き出し領域の)無い構成とすることも可能である。
【0052】
本実施形態では、耐圧が15KVの巻線部材23を利用し、90KVの電圧を供給する絶縁トランス121、123、125、127、129、131、133、135を構成する場合には、各絶縁トランスは3組の巻線部材を使用する必要があるが、本発明は、4つのトロイダルコアと、3つの巻線部材を有する絶縁トランスに限定されることはない。使用する巻線部材の耐圧と、絶縁トランスにより供給する電圧値に応じて、トロイダルコアや巻線部材の数を適宜変更できることは言うまでもない。
【0053】
さらに、本実施形態では、絶縁トランス121、123、125、127、129、131、133、135を構成する巻線部材に対して引き出し部を捻る方向を同一としたが、異ならせる構成とすることも可能である。例えば、隣り合う絶縁トランスの巻線部材の引き出し部に関し、その捻る方向を互いに異なる方向とすることにより、磁束の影響をさらに抑えることができる。なお、引き出し部を捻る回数は適宜変更できる。
【0054】
隣り合う絶縁トランス間における磁束の影響を、さらに抑制するために以下のように構成することも可能である。絶縁トランス121、123、125、127を構成し、第4のトロイダルコア(
図1(a)の参照符号15d参照。)に巻回される一次側のコイル部材(本実施形態では、複数回巻回されるエナメル線で構成される部材)は、それぞれプッシュプル駆動回路53a〜53dに連結されている。例えば、プッシュプル駆動回路53aの
図2に示す上方端子が、A相用の配線Aを介し、下方端子がB相用の配線Bを介し、当該コイル部材に連結される。
【0055】
一方、
図1(b)の平面視で周方向にヒータ電源供給回路50と隣り合う第1のアノード電力供給回路52を構成するプッシュプル駆動回路53bの
図2に示す上方端子が、B相用の配線Bを介し、下方端子がA相用の配線Aを介し、第4のトロイダルコア17d(
図1(a)参照。)に巻回される一次側のコイル部材に連結される。なお、各プッシュプル駆動回路53の
図2に示す中央端子は、共通配線用の配線Cを介し第4のトロイダルコア15d、17d、19、21に巻回される一次側のコイル部材に連結される。
【0056】
なお、本実施形態の第1のトロイダルコア(
図1(a)の参照符号15a、17a)に巻回され、フィラメント制御回路111、第1〜第3のアノード制御回路113、115、117に連結される、絶縁トランス121、123、125、127を構成する二次側のコイル部材は、複数回巻回されるエナメル線により構成されている。また、第1〜第4のフィードバック絶縁トランス129、131、133、135を構成し、フィラメント制御回路111、第1〜第3のアノード制御回路113、115、117に連結される、2次側のコイル部材と、全波整流器55に連結されるコイル部材とは、複数回巻回されるエナメル線により構成されている。
【0057】
このように、隣り合う電力供給回路50、52、54、56間で配線A、Bを互い違いに結線することにより、各回路50、52、54、56の絶縁トランス121、123、125、127に流れる電流が、互いに逆位相となる。結果として、隣り合う絶縁トランス121、123、125、127を構成する巻線部材23、59、63、69間で、一方の巻線部材で生じる磁束が、他方の巻線部材で生じる磁束に影響を及ぼすことを抑制できる。
【0058】
また、絶縁トランス121、123、125、127、129、131、133、135を構成するコア間を巻回される巻線部材は、1ターンとしたが、必要な磁気結合の強度を確保するために巻き数を変更できることは言うまでもない。
【0059】
本実施形態は、X線装置に高電圧発生装置を適用した構成としたが、本発明の高電圧発生装置は、電子顕微鏡に適用することも可能である。