(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記サンプルからの反射光を受光する測定ヘッドと、前記サンプルが配置されるステージとを支持する支持フレームに配置される、前記光学部品の支持機構をさらに備える、
請求項1または2に記載の形状測定装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の従来技術では、ビームスプリッタと被検面の間の光路と、ビームスプリッタと参照面の間の光路と、を一定に保つ必要があるが、これらの光路が比較的長いため、振動の影響を受けやすいという課題がある。こうした振動の影響を排除するには、大規模な除振設備が必要となってしまう。
【0005】
また、TSV(Through Silicon Via)技術の分野では、アスペクト比(穴径に対する深さの比)が比較的大きい穴が半導体チップに形成されるが、こうした穴の形状を測定する際には、振動の影響によって光が穴の底まで届きにくく、測定が困難であるという課題もある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、簡易な構成で振動の影響を抑制することが可能な形状測定装置及び形状測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の形状測定装置は、サンプルの表面に対向する参照平面を有する透光性の光学部品と、前記光学部品を通じて、前記サンプルの表面に所定の波長領域を有する光を照射する光源と、前記サンプルの表面に定義される線状領域の各位置について反射スペクトルを測定するイメージング分光器と、前記線状領域の各位置について測定された反射スペクトルに基づいて、前記線状領域の各位置と前記参照平面との距離を算出する演算部と、を備える。
【0008】
また、本発明の一態様では、前記光が照射される領域を、前記線状領域に対応する領域に絞る視野絞りをさらに備えてもよい。
【0009】
また、本発明の一態様では、前記サンプルが配置されるステージに配置される、前記光学部品の支持機構をさらに備えてもよい。
【0010】
また、本発明の一態様では、前記サンプルからの反射光を受光する測定ヘッドと、前記サンプルが配置されるステージとを支持する支持フレームに配置される、前記光学部品の支持機構をさらに備えてもよい。
【0011】
また、本発明の一態様では、前記サンプルは、前記表面の少なくとも一部に薄膜を有し、前記演算部は、前記線状領域の各位置について測定された反射スペクトルに基づいて、前記線状領域の各位置と前記参照平面との距離と、前記線状領域の各位置における前記薄膜の膜厚とを算出してもよい。
【0012】
また、本発明の一態様では、前記サンプルの表面と前記参照平面との距離を調整する調整機構をさらに備え、前記演算部は、互いに異なる距離で測定された複数の反射スペクトルに基づいて、前記サンプルの表面と前記参照平面との距離に由来する周波数成分と、前記薄膜の膜厚に由来する周波数成分とを同定してもよい。
【0013】
また、本発明の形状測定方法は、サンプルの表面に対向する参照平面を有する透光性の光学部品を通じて、前記サンプルの表面に所定の波長領域を有する光を照射し、イメージング分光器により、前記サンプルの表面に定義される線状領域の各位置について反射スペクトルを測定し、前記線状領域の各位置について測定された反射スペクトルに基づいて、前記線状領域の各位置と前記参照平面との距離を算出する。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、参照平面で反射する光と、参照平面を透過してサンプルの表面で反射する光との光路差による干渉を利用しているため、振動の影響を受けにくくすることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る形状測定装置1の光学的及び電気的な構成の一例を示す図である。以下の説明では、サンプルSに対して光学部品4が配置される方向を上方向とし、光学部品4に対してサンプルSが配置される方向を下方向とする。
【0018】
形状測定装置1は、サンプルSの表面SSに照射する光を生成する光源2と、サンプルSの表面SSに光を集光する対物レンズ3と、対物レンズ3とサンプルSの間に配置される透光性の光学部品4と、サンプルSの表面SSを観察するための観察用カメラ5と、光学部品4とサンプルSからの反射光のスペクトルを測定するイメージング分光器6と、を備えている。
【0019】
さらに、形状測定装置1は、CPU(Central Processing Unit)などを含む演算部7と、FPD(Flat Panel Display)などの表示部8と、キーボードやマウスなどの操作部9と、を備えている。演算部7、表示部8及び操作部9としては、公知のパーソナルコンピュータが用いられてよい。
【0020】
光源2としては、広い波長領域において出力特性が平坦な白色光源が好適であり、重水素ランプやタングステンランプなどを採用してよい。光源2から出射された光は、視野絞りの一例としてのスリット21により線状に成形された上で、ハーフミラー23を経由して対物レンズ3に向かう。
【0021】
光学部品4は、ガラスや石英などの透光性材料からなり、サンプルSの表面SSに近接して対向する参照平面41を有している。対物レンズ3から光学部品4に入射した光の一部は参照平面41で反射し、他の一部は参照平面41を透過してサンプルSの表面SSで反射する。
【0022】
光学部品4の参照平面41で反射した光と、サンプルSの表面SSで反射した光は、光学部品4、対物レンズ3、ハーフミラー23,51を経由してイメージング分光器6に到達する。
【0023】
イメージング分光器6は、光学部品4とサンプルSからの反射光のスペクトルを測定し、それを演算部7に出力する。光学部品4とサンプルSからの光は、スリット61により線状に成形された上で、イメージング分光器6に入射する。言い換えると、イメージング分光器6は、光学部品4の参照平面41とサンプルSの表面SSとにそれぞれ定義される線状の領域で反射される光を受光する。詳しくは、
図2を用いて後述する。
【0024】
具体的には、イメージング分光器6は、不図示の分光器と2次元撮像素子とを備えており、分光器によってスリット61の幅方向に回折した光を2次元撮像素子が受光する。このため、スリット61の幅方向が波長分解方向となり、スリット61の長手方向が空間分解方向となる。
【0025】
なお、光源2から光学部品4へ光を導く光学系と、光学部品4からイメージング分光器6へ光を導く光学系とは、上述の態様に限定されず、種々の光学系が採用されてよいのはもちろんである。
【0026】
図2及び
図3は、サンプルSの一例を示す上面図及び断面図である。サンプルSには、上方に向かって開放された複数の穴SHが形成されている。
【0027】
サンプルSは、例えば、TSV(Through Silicon Via)に利用される、アスペクト比が比較的大きい穴が形成された半導体チップである。例えば、穴径が5〜10μm程度で、深さが最大100μm程度である。半導体チップの上面に形成された穴に導体を充填し、その後、半導体チップの下面を導体が表れるまで研磨することで、TSVが完成する。
【0028】
図2に示されるように、サンプルSの表面SSには、上記光源2からの光が照射される線状の照射領域2Aと、反射光が上記イメージング分光器6に受光される線状の受光領域6Aと、が互いに重なるように形成される。照射領域2Aの輪郭は、光源2に設けられたスリット21によって形成され、受光領域6Aの輪郭は、イメージング分光器6に設けられたスリット61によって形成される。スリット21,61は、照射領域2Aの長手方向と受光領域6Aの長手方向が揃うように設置される。
【0029】
例えば、受光領域6Aの幅は、サンプルSの穴SHの穴径よりも狭くなるように設定され、受光領域6Aの長さは、サンプルSの穴SHが複数含まれるように設定される。例えば、照射領域2Aは、受光領域6Aの全体を含むような長さ及び幅に設定される。このように照射領域2Aを絞ることで、受光領域6Aの周囲の光が迷光成分として含まれにくくなる。この態様に限らず、照射領域2Aの全体が受光領域6Aに含まれてもよい。
【0030】
図3に示されるように、受光領域6Aの長手方向のある位置においては、光学部品4の参照平面41を透過した光が、サンプルSの表面SSのうち、参照平面41に最も近い、穴SHの周囲で反射して、光学部品4の参照平面41で反射した光と干渉する。受光領域6Aの長手方向の他の位置においては、光学部品4の参照平面41を透過した光が、サンプルSの表面SSのうち、参照平面41から最も遠い、穴SHの底面で反射して、光学部品4の参照平面41で反射した光と干渉する。
【0031】
イメージング分光器6は、受光領域6Aを形成するスリット61の長手方向を空間分解方向とし、幅方向を波長分解方向としていることから、ワンショット撮影によって、線状の受光領域6Aの長手方向の各位置における反射光のスペクトルを測定することが可能である。また、受光領域6Aの長手方向と直交する直交方向にサンプルSを移動させ、直交方向の各位置において反射光のスペクトルを測定することで、2次元領域に亘る測定を行うことが可能である。
【0032】
図1の説明に戻り、演算部7は、イメージング分光器6から出力される反射光のスペクトルを、既知の入射光のスペクトルで除算することで、反射率のスペクトルを算出する。そして、演算部7は、算出した反射率のスペクトルに基づいて、受光領域6Aの長手方向の各位置と参照平面41との距離を算出する。
【0033】
図4は、測定手順の一例を示すフローチャートである。まず、リファレンスのスペクトルデータを取得する(S11)。具体的には、光源2がリファレンスに白色光を照射し、イメージング分光器6が反射スペクトルを測定することで、演算部7は、リファレンスのスペクトルデータを取得する。リファレンスとしては、例えばアルミニウム等からなる平面ミラーが好適である。
【0034】
次に、測定位置にステージを移動させる(S12)。具体的には、演算部7は、サンプルSが所定の測定位置に位置決めされるように。サンプルSを配置した後述のXYステージ13(
図7及び
図8を参照)を移動させる。
【0035】
次に、サンプルSのスペクトルデータを取得する(S13)。具体的には、光源2がサンプルSに白色光を照射し、イメージング分光器6が反射スペクトルを測定することで、演算部7は、サンプルSのスペクトルデータを取得する。
【0036】
次に、サンプルSの相対反射率を算出する(S14)。具体的には、演算部7は、サンプルSの反射光のスペクトルをリファレンスの反射光のスペクトルで除算することで、反射率のスペクトルを算出する。
図5は、反射率のスペクトルの一例を示す図である。
【0037】
その後、FFT解析により光学距離を算出する(S15)。具体的には、演算部7は、反射率のスペクトルからFFTパワー値のカーブを算出し、そのピークから光学距離を算出する。
図6は、FFTによる解析結果の一例を示す図である。
【0038】
このようにして、光学部品4の参照平面41とサンプルSの表面SSの光学距離が得られ、さらに、光学距離を空気の屈折率で除算することで、実際の距離が得られる。ここでは、サンプルSの表面SSに形成された受光領域6Aの長手方向の各位置について距離が得られるので、サンプルSの穴SHの底面と参照平面41との距離から、穴SHの周囲と参照平面41との距離を減算することで、穴SHの深さが得られる。
【0039】
なお、以上の説明では、反射スペクトルから光学距離を算出するのにFFT法を用いたが、他の計算方法を用いてもよい。例えば、カーブフィッティング法やピークバレー法が用いられてもよい。
【0040】
図7は、形状測定装置1の機械的な構成の一例を示す図である。形状測定装置1は、支持フレーム11を備えており、支持フレーム11の下部には、サンプルSが配置されるXYステージ13が設けられており、支持フレーム11の上部には、対物レンズ3を有する測定ヘッド15が設けられている。
【0041】
XYステージ13は、上記演算部7からの指令に応じて水平方向に移動する。測定ヘッド15には、イメージファイバ19が取り付けられており、上記光源2からの光がイメージファイバ19を介して対物レンズ3まで導かれると共に、対物レンズ3が受光した光がイメージファイバ19を介してイメージング分光器6まで導かれる。
【0042】
さらに、本例では、XYステージ13に配置された、光学部品4を支持するための支持機構17が備えられている。支持機構17は、XYステージ13上のサンプルSの周囲で上方に突出するように配置されており、光学部品4は、サンプルSの上方を覆うように支持機構17上に配置される。
【0043】
図8は、形状測定装置1の機械的な構成の他の例を示す図である。
図7の例と共通する構成については、同番号を付すことで詳細な説明を省略する。
【0044】
本例では、支持フレーム11に配置された、光学部品4を支持するための支持機構18が備えられている。支持機構18は、サンプルSとXYステージ13の上方に架け渡されるようにアーチ状に設けられており、光学部品4は、サンプルSの上方で支持機構18に支持されている。
【0045】
図7及び
図8の例では、光学部品4の参照平面41がサンプルSの表面SSと近接して対向するように、光学部品4をサンプルSの上方に支持しているため、光源2からイメージング分光器6までの光路の大半が共通し、光学部品4の参照平面41とサンプルSの表面SSの隙間で光路差が生じることになる。このため、従来技術のような2つの比較的長い光路が存在する場合と比較して、振動の影響を抑制することが可能である。
【0046】
また、
図7に示されるように、XYステージ13に光学部品4の支持機構17が配置されると、支持フレーム11等に振動が加わっても、サンプルSと光学部品4が同様に振動するので、サンプルSの表面SSと光学部品4の参照平面41との距離が変動しにくく、振動の影響を抑制するのに好ましい。
【0047】
また、
図8に示されるように、支持フレーム11に光学部品4の支持機構18が配置されると、光学部品4が面内方向に移動しないことから、光学部品4は測定ヘッド15の下方にあればよく、光学部品4の小型化の観点から好ましい。
【0048】
なお、
図7及び
図8に示される支持機構17,18は、光学部品4の高さを調整可能であり、光学部品4の参照平面41とサンプルSの表面SSとの距離を変えられるようになっている。この機能は、後述する例において利用される。
【0049】
以下、表面の少なくとも一部に薄膜を有するサンプルを測定対象とする例について説明する。
【0050】
例えば、TSVが形成される半導体チップには、製造過程において穴の周囲にレジスト膜が形成されることがあるが、この際、穴の内側にもレジスト膜が意図せず形成され、さらに除去しきれずに残留することがある。このため、穴の内側にレジスト膜が残留しているか否かを判定する技術も求められている。
【0051】
そこで、以下に説明する例では、
図9に示されるように、表面SSに透光性の薄膜TFを有するサンプルSを測定対象として、測定された反射スペクトルから表面SSの形状と薄膜TFの膜厚とを算出している。
【0052】
光学部品4の参照平面41を透過した光の一部は薄膜TFの表面で反射し、他の一部は薄膜TFの表面を透過してサンプルSの表面SS(すなわち、穴SHの周囲や底面)で反射する。従って、光学部品4の参照平面41で反射した光と、薄膜TFの表面で反射した光と、サンプルSの表面SSで反射した光とが干渉する。
【0053】
演算部7は、算出した反射率のスペクトルに基づいて、光学部品4の参照平面41とサンプルSの表面SSとの距離と、サンプルSの表面SSに形成された薄膜TFの膜厚と、を算出する。
【0054】
より具体的には、演算部7は、算出した反射率のスペクトルに基づいて、サンプルSの表面SSに形成された線状の受光領域6A(
図2を参照)の長手方向の各位置と参照平面41との距離と、受光領域6Aの長手方向の各位置に形成された薄膜TFの膜厚と、を算出する。
【0055】
図10は、表面SSに薄膜TFを有するサンプルSを測定対象とする場合の、測定手順を示すフローチャートである。
【0056】
まず、参照平面41を第1の高さで一度目の測定を行う(S21)。具体的には、光学部品4を支持する支持機構17,18(
図7及び
図8を参照)を調整して、参照平面41を第1の高さとし、その状態で上述したようにサンプルSのスペクトルデータを取得し、反射率のスペクトルを算出し、FFT解析を実行する。
【0057】
次に、参照平面41を第2の高さで二度目の測定を行う(S22)。具体的には、光学部品4を支持する支持機構17,18を調整して、参照平面41を第1の高さよりも大きい第2の高さとし、その状態で上述したようにサンプルSのスペクトルデータを取得し、反射率のスペクトルを算出し、FFT解析を実行する。
【0058】
これにより、互いに異なる距離で測定された2つの反射率のスペクトルが得られる。
図11は、2つの反射率のスペクトルの例を示す図である。光学部品4の参照平面41とサンプルSの表面SSとの距離が変化することで、2つの反射率のスペクトルの周期性が変化する。
【0059】
次に、パワースペクトルを比較する(S23)。
図12は、2つの反射率のスペクトルをFFT解析したときの、解析結果の例を示す図である。一方のパワースペクトルを実線で示し、他方のパワースペクトルを破線で示している。2つのパワースペクトルを比較すると、ピーク位置が変動するピークHPと、ピーク位置が変動しないピークFPと、が存在する。
【0060】
ピーク位置が変動するピークHPは、光学部品4の参照平面41とサンプルSの表面SSとの距離に由来する周波数成分のピークである。すなわち、光学部品4の参照平面41とサンプルSの表面SSとの距離を異ならせて測定を行ったことによって、ピーク位置が変動している。
【0061】
他方、ピーク位置が変動しないピークFPは、サンプルSの表面SSに形成された薄膜TFの膜厚に由来する周波数成分のピークである。すなわち、光学部品4の参照平面41とサンプルSの表面SSとの距離を変化させても、薄膜TFの膜厚自体は変化しないので、ピーク位置は変動しない。
【0062】
そこで、FFTによる解析結果に含まれる各ピークが、ピーク位置が変動するピークHPである場合には(S24:YES)、光学部品4の参照平面41とサンプルSの表面SSとの距離に由来する周波数成分のピークとして同定し(S25)、ピーク位置が変動しないピークFPである場合には(S24:NO)、サンプルSの表面SSに形成された薄膜TFの膜厚に由来する周波数成分のピークとして同定する(S26)。
【0063】
その後、ピークの同定結果を識別表示する(S27)。例えば、各種のピークを色等を分けて表示部8に表示してよい。
【0064】
なお、以上の実施形態では、互いに異なる距離で測定された2つの反射率のスペクトルを利用してピークの種別を同定したが、同定の方法はこれに限られない。例えば、光学部品4の参照平面41とサンプルSの表面SSとの距離に由来する周波数成分のピークが現れる範囲と、サンプルSの表面SSに形成された薄膜TFの膜厚に由来する周波数成分のピークが現れる範囲と、が既知であり、かつ重複しないのであれば、1つの反射率のスペクトルだけでピークの種別を同定することが可能である。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形実施が当業者にとって可能であるのはもちろんである。