特許第6196124号(P6196124)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6196124
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】光ファイバ伝送路モニタシステム
(51)【国際特許分類】
   G01M 11/00 20060101AFI20170904BHJP
   H04B 10/077 20130101ALI20170904BHJP
【FI】
   G01M11/00 R
   H04B10/077 150
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-222219(P2013-222219)
(22)【出願日】2013年10月25日
(65)【公開番号】特開2015-83936(P2015-83936A)
(43)【公開日】2015年4月30日
【審査請求日】2016年7月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】399040405
【氏名又は名称】東日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】田中 郁昭
(72)【発明者】
【氏名】榎本 圭高
【審査官】 横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−042063(JP,A)
【文献】 特開2007−071573(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/101001(WO,A1)
【文献】 特開2008−304289(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0271321(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 11/00−11/08
H04B 10/00−10/90
H04J 14/00−14/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1本の光ファイバが光スプリッタにより複数の光ファイバに分岐された光ファイバ伝送路で接続される伝送装置間の光ファイバ伝送路の状態を測定する光ファイバ伝送路モニタシステムであって、
前記光ファイバ伝送路の分岐後の光ファイバに接続される第1の光ファイバ伝送路モニタ装置と前記光ファイバ伝送路の分岐前の光ファイバに接続される第2の光ファイバ伝送路モニタ装置とを有し、
前記第1の光ファイバ伝送路モニタ装置は、
前記光ファイバ伝送路の分岐後の光ファイバに配置された第1の光カプラと、
前記光ファイバ伝送路で発生したエラーを検出する第1のエラー検出手段と、
前記第1のエラー検出手段がエラーを検出したときに、前記第1の光カプラを介して前記光ファイバ伝送路に試験光を入射して前記光ファイバ伝送路の状態を測定して記録する第1の光パルス試験器と、を有し、
前記第2の光ファイバ伝送路モニタ装置は、
前記光ファイバ伝送路の分岐前の光ファイバに配置された第2の光カプラと、
前記光ファイバ伝送路で発生したエラーを検出する第2のエラー検出手段と、
前記第2のエラー検出手段がエラーを検出したときに、前記第2の光カプラを介して前記光ファイバ伝送路に試験光を入射して前記光ファイバ伝送路の状態を測定して記録する第2の光パルス試験器と、を有し、
前記第1の光パルス試験器の試験光の波長λ1と前記第2の光パルス試験器の試験光の波長λ2を異なる波長とし、
前記第1の光パルス試験器に波長λ2の試験光を遮断する光フィルタを備え、
前記第2の光パルス試験器に波長λ1の試験光を遮断する光フィルタを備え、
前記第1の光パルス試験器によって前記分岐後の光ファイバの状態を測定し、前記第2の光パルス試験器によって前記分岐前の光ファイバの状態を測定することを特徴とする光ファイバ伝送路モニタシステム。
【請求項2】
前記第1のエラー検出手段は、前記分岐後の光ファイバに接続された伝送装置からエラー情報を取得することを特徴とする請求項1記載の光ファイバ伝送路モニタシステム
【請求項3】
前記第1のエラー検出手段は、前記第1の光カプラに接続されて、前記分岐後の光ファイバに接続された伝送装置が出力する通信光を受信し、当該通信光の強度の検出あるいは当該通信光で送受信される通信アラーム情報を取得することを特徴とする請求項1記載の光ファイバ伝送路モニタシステム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ伝送路の状態をモニタする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
図8に、ポイント・ツー・マルチポイント通信を行うPON(Passive Optical Network)システムを示す。PONシステムは、複数の通信端末35それぞれを接続する複数の光加入者線終端装置(ONU:Optical Network Unit)31と、バックボーンネットワークに接続される光ネットワーク終端装置(OLT:Optical Line Terminal)41が、光ファイバおよび光スプリッタ52で構成された光ファイバ伝送路を介してポイント・ツー・マルチポイントで接続される構成である。
【0003】
光ファイバ伝送路の通信状態を判別するために、光ファイバ伝送路の光信号をモニタする通信モニタ装置6が光ファイバ伝送路のOLT41と光スプリッタ52の間の光カプラ64に接続される。通信モニタ装置6は、光信号受信部61、信号処理部62、表示制御部63を備える。信号処理部62は、光信号から制御フレームとデータフレームを検出して信号処理を行い、ONU31のリンク確立とサービス利用を判別する(非特許文献1)。
【0004】
ONU31のリンク確立の判別では、検出した制御フレームをLLID(Logical Link ID)ごとにカウントし、カウントした値が事前に設定したリンク確立判別閾値以上になった場合は、そのLLIDを持つONU31がOLT41との間でリンク確立していると判定し、リンク確立判別閾値未満の場合はリンク確立していないと判定する。信号処理部62は、検出した制御フレームから各ONU31のMACアドレスとLLIDを読み出してMACアドレスとLLIDの対応テーブルを作成し、表示制御部63がリンク確立していると判定されたONU31をMACアドレスで表示する。
【0005】
サービス利用の判別では、各ONU31から送信されたデータフレームからLLIDとサービスごと(インターネット接続、VoIP等)に設定された優先度(MACフレームのVLAN(Virtual Local Area Network)タグ内のユーザプライオリティビット)を読み出し、データフレームのLLIDと、制御フレームを検出して作成した対応テーブルのLLIDを照合する。信号処理部62は、データフレームのLLIDが対応テーブルにあり、かつ同じ優先度のデータフレームを事前に設定した通信中判別閾値以上検出した場合は、該当するLLIDのユーザはサービスを利用していると判定し、通信中判別閾値未満の場合はサービスを利用していないと判定する。サービス利用の判別においても、リンク確立の場合と同様に、表示制御部63ではONU31をMACアドレスで表示する。
【0006】
光ファイバ伝送路で故障が発生した場合、故障箇所を探索するために、光パルス試験器(OTDR)がよく使われている。OTDRでは、光ファイバ伝送路に発生した故障点の位置や、接続点の接続損失、反射量などの情報を得ることができる(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−154294号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】磯村、他3名、「支援移転等の切替工事で通話中確認を実現するFTTH区間通信モニタ技術」、NTT技術ジャーナル、日本電信電話株式会社、2009年5月、第21巻、第5号、pp.40-42
【非特許文献2】「光ファイバ故障時における探索方法」、NTT技術ジャーナル、日本電信電話株式会社、2006年10月、第18巻、第10号、pp.53-54
【非特許文献3】鎌、他5名、「光サービスの経済化・即応化に貢献するR&D」、NTT技術ジャーナル、日本電信電話株式会社、2006年12月、第18巻、第12号、pp.53-57
【非特許文献4】「PON方式におけるトラブル事例と対策」、NTT技術ジャーナル、日本電信電話株式会社、2011年10月、第22巻、第10号、pp.62-65
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
光ファイバ伝送路内の光ファイバ接続では、メカニカルスプライスを用いた光接続部品が使われている。光ファイバ伝送路で用いられる光接続部品において、光ファイバの端面間の大きな隙間は性能劣化の要因の一つである。メカニカルスプライスなどの光接続部品において、光ファイバの端面は厳密には平坦でないので、光ファイバのコアと同等の屈折率を有する整合材が光ファイバの端面間の1μm以下の僅かな隙間に充填されて、接続損失は波長1.31μmで通常0.3dB以下になる(特許文献1)。光ファイバの端面間に、例えば100μm程度の大きな隙間がある場合、光ファイバを接続した当初は、大きな隙間を整合材が満たすことで、光接続部品での接続損失は1.5dB程度となる。
【0010】
通常、光アクセスシステムにおける伝送装置間(OLTとONU間)の許容損失(ロス・バジェット)は、伝送装置間の光線路損失に対してある程度のマージンをもって設計されているため、上記のように光ファイバの端面間に大きな隙間が存在したとしても、直ちに伝送装置間の光線路損失が許容損失を超えて通信断状態に至ることはなく、伝送装置間で正常に通信できる場合が大半である。
【0011】
しかしながら、接続部で用いられる整合材は油(オイル)状の材質であるため、時間経過に伴う温度変化により流動してしまう。これにより、光ファイバの端面間の大きな隙間内では空気層と整合材の混在した状態になりうる。この現象が発生すると、接続部の特性(接続損失、反射減衰量)が著しく劣化し、接続損失は30dB以上に達する場合がある。このような著しく大きな接続損失が発生すると、伝送装置間の光線路損失が許容損失を大きく超過し、断線状態に至る。
【0012】
光ファイバの端面間の大きな隙間内で、空気層と整合材の混在した状態は、温度変化とともに接続損失を大きく変動させる。このため伝送装置間で、通信が可能となる状態と通信断となる状態を交互に繰り返す「時々断」となるケースがある。
【0013】
このような「時々断」では、OTDRを用いても、接続損失が低い状態では故障箇所を検出することができず、結果として故障発生から故障回復までに要する時間が長くなるという問題があった。
【0014】
OLT41側の光カプラ64にOTDRを取り付け、伝送装置のアラーム情報を元に、エラー発生時に自動的に試験を行うこともできるが、光スプリッタ52下部区間にある光ファイバ区間で故障があった場合は、光スプリッタ52下部側の各光ファイバ区間から反射光が重畳してしまい、正しい故障箇所を見つけることは容易でない。しかも、光スプリッタ52下部区間の光ファイバ同士の接続には、「FAコネクタ」及び「FASコネクタ」と呼ばれる現場組立コネクタが多く使われている(非特許文献3)。現場組立コネクタは前述のメカニカルスプライスと同等の機構を備えており、工場で組み立てたコネクタに比べて、作業者により品質が大きく異なり、故障原因となりやすい。
【0015】
また、「時々断」となるケースは、光接続部品が原因とは限らず、例えば、伝送装置付近の冷蔵庫、電子レンジ等の家電製品から発生した電磁妨害波(ノイズ)による影響や、同一PON配下にある他のユーザ機器の異常な信号の影響も考えられる(非特許文献4)。
【0016】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、通信が可能な状態と通信断の状態を交互に繰り返す場合であっても、より速やかに故障箇所を特定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
発明に係る光ファイバ伝送路モニタシステムは、1本の光ファイバが光スプリッタにより複数の光ファイバに分岐された光ファイバ伝送路で接続される伝送装置間の光ファイバ伝送路の状態を測定する光ファイバ伝送路モニタシステムであって、前記光ファイバ伝送路の分岐後の光ファイバに接続される第1の光ファイバ伝送路モニタ装置と前記光ファイバ伝送路の分岐前の光ファイバに接続される第2の光ファイバ伝送路モニタ装置とを有し、前記第1の光ファイバ伝送路モニタ装置は、前記光ファイバ伝送路の分岐後の光ファイバに配置された第1の光カプラと、前記光ファイバ伝送路で発生したエラーを検出する第1のエラー検出手段と、前記第1のエラー検出手段がエラーを検出したときに、前記第1の光カプラを介して前記光ファイバ伝送路に試験光を入射して前記光ファイバ伝送路の状態を測定して記録する第1の光パルス試験器と、を有し、前記第2の光ファイバ伝送路モニタ装置は、前記光ファイバ伝送路の分岐前の光ファイバに配置された第2の光カプラと、前記光ファイバ伝送路で発生したエラーを検出する第2のエラー検出手段と、前記第2のエラー検出手段がエラーを検出したときに、前記第2の光カプラを介して前記光ファイバ伝送路に試験光を入射して前記光ファイバ伝送路の状態を測定して記録する第2の光パルス試験器と、を有し、前記第1の光パルス試験器の試験光の波長λ1と前記第2の光パルス試験器の試験光の波長λ2を異なる波長とし、前記第1の光パルス試験器に波長λ2の試験光を遮断する光フィルタを備え、前記第2の光パルス試験器に波長λ1の試験光を遮断する光フィルタを備え、前記第1の光パルス試験器によって前記分岐後の光ファイバの状態を測定し、前記第2の光パルス試験器によって前記分岐前の光ファイバの状態を測定することを特徴とする。
【0018】
上記光ファイバ伝送路モニタシステムにおいて、前記第1のエラー検出手段は、前記分岐後の光ファイバに接続された伝送装置からエラー情報を取得することを特徴とする。
【0019】
上記光ファイバ伝送路モニタシステムにおいて、前記第1のエラー検出手段は、前記第1の光カプラに接続されて、前記分岐後の光ファイバに接続された伝送装置が出力する通信光を受信し、当該通信光の強度の検出あるいは当該通信光で送受信される通信アラーム情報を取得することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、通信が可能な状態と通信断の状態を交互に繰り返す場合であっても、より速やかに故障箇所を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1の実施の形態における光ファイバ伝送路モニタ装置を含む全体構成図である。
図2】第1の実施の形態における光ファイバ伝送路モニタ装置の構成を示す機能ブロック図である。
図3】第2の実施の形態における光ファイバ伝送路モニタ装置の構成を示す機能ブロック図である。
図4】第3の実施の形態における光ファイバ伝送路モニタ装置の構成を示す機能ブロック図である。
図5】第4の実施の形態における光ファイバ伝送路モニタ装置を含む全体構成図である。
図6】第4の実施の形態における光ファイバ伝送路モニタ装置の構成を示す機能ブロック図である。
図7】第5の実施の形態における光ファイバ伝送路モニタ装置の構成を示す機能ブロック図である。
図8】ポイント・ツー・マルチポイント通信を行うPONシステムの全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0025】
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態における光ファイバ伝送路モニタ装置を含む全体構成図である。同図では、ユーザ宅、通信設備ビル、および保守拠点を図示した。
【0026】
通信設備ビル内には、OLT41、IDM(Integrated distribution module)とよばれる成端架42が設置される。成端架42内には、光スプリッタ44、光カプラ(図示せず)が設置される。OLT41と光スプリッタ44の間には、試験光を遮断する光フィルタ43が備えられる。
【0027】
通信設備ビルから延びた光ファイバは、所外の光クロージャ51内に設置された光スプリッタ52で分岐されて、ユーザ宅の光ローゼット32まで光ドロップケーブルで接続される。
【0028】
ユーザ宅内には、光ファイバ伝送路モニタ装置1、ONU31が設置される。光ドロップケーブルで光ローゼット32まで引き込まれた光ファイバは、光ファイバ伝送路モニタ装置1を介してONU31に接続される。光ローゼット32内にも試験光を遮光する光フィルタ33が備えられる。
【0029】
通信設備ビルから延びた光ケーブルと所外の光スプリッタ52を接続する箇所、および光スプリッタ52とユーザ宅の光ローゼット32間を接続する光ドロップケーブルの両端は、コネクタ34A,34B,53A,53B,54A,54Bで接続されている。このうち、通信設備ビルから光スプリッタ52に接続するコネクタ53A、光ドロップケーブルの両端のコネクタ54A,34Aは、現場組立コネクタを用いて接続する。図示していないが、支障移転工事や故障修理時に、光クロージャ51から光ローゼット32間の光ドロップケーブル同士でメカニカルスプライスや融着接続することもある。
【0030】
保守拠点では、OLT41とONU31間の通信アラーム情報から図1に示した通信システムの通信状況を知ることができる。OLT41とONU31間の通信が正常でない場合、通信設備ビル内に設置した光カプラにOTDRを接続して通信設備ビルから光スプリッタ52までの光ファイバにおける故障位置を探索するとともに、ユーザ宅にOTDRを設置してONU31から光スプリッタ52までの光ファイバにおける故障位置を探索する。
【0031】
しかしながら、コネクタ34A,53A,54などの現場組立コネクタ内のメカニカルスプライスで、光ファイバの端面間の大きな隙間内において空気層と接合材が混在した場合、温度変化とともに接続損失が大きく変動することがあり、上記のようにOTDRで測定した時点で接続損失が大きいとは限らない。そこで、本実施の形態では、ユーザ宅内に光ファイバ伝送路モニタ装置1を設置し、通信エラーが検出されたときにOTDRで故障位置を探索する。
【0032】
図2は、第1の実施の形態における光ファイバ伝送路モニタ装置1の構成を示す機能ブロック図である。同図に示す光ファイバ伝送路モニタ装置1は、光カプラ11、OTDR12、およびエラー検出部13を備える。
【0033】
光カプラ11は、Aポート、Bポート、Cポートの3つのポートを備え、AポートにOLT41につながる光ファイバ、BポートにONU31、CポートにOTDR12がそれぞれ接続される。AポートとBポート間は、OLT41とONU31間の通信光が透過する波長特性を有しており、CポートとAポート間は、OTDR12からの試験光が透過する波長特性を有している。
【0034】
OTDR12は、光カプラ11を介して光ファイバ伝送路に光パルスを入射し、光ファイバ伝送路の各点で反射されて入射端に戻ってくる光パワーを測定し、測定して得られたOTDR波形データをOTDR12の記憶手段に保存する。
【0035】
エラー検出部13は、OLT41とONU31間の通信エラーの通知をONU31から受信し、OTDR12へ光ファイバ伝送路の測定の指示を出す。
【0036】
続いて、第1の実施の形態における光ファイバ伝送路モニタ装置1の動作について説明する。
【0037】
エラー検出部13は、ONU31からOLT41とONU31間の通信エラーの通知を受信すると(ステップS11)、OTDR12に光ファイバ伝送路の測定指示を出す(ステップS12)。
【0038】
OTDR12は、光パルスを光カプラ11を介して光ファイバ伝送路へ入射して光ファイバ伝送路の状態を測定する(ステップS13)。
【0039】
保守拠点では、OLT41とONU31間の通信状態をモニタしている。OLT41とONU31間で通信エラーが発生した場合、ユーザ宅にある光ファイバ伝送路モニタ装置1を回収し、エラー発生時のOTDR波形データから故障位置を見つける。OTDR波形データから、光接続部材の接続損失の増加や反射減衰量の減少を確認できれば、光ファイバ伝送路が原因で通信エラーが発生していると特定できる。
【0040】
なお、通信システムがGE−PONの場合、ONU31からOLT41への通信光は1310nm帯、OLT41からONU31への通信光は1490nm帯が使われるため、OTDR12が出力する光パルスの波長は、例えば1550nmもしくは1650nm帯が好ましい。また、OTDR12にOLT41やONU31の通信光が入り込まないように、1310nmや1490nm帯を遮蔽する光フィルタが必要となる。
【0041】
以上説明したように、本実施の形態によれば、ユーザ宅に、光ファイバ伝送路で発生したエラーを検出するエラー検出部13と、エラー検出部13がエラーを検出したときに、光ファイバ伝送路に試験光を入射して光ファイバ伝送路の状態を測定するOTDR12とを備えた光ファイバ伝送路モニタ装置1を配置することで、通信が可能な状態と通信断の状態を交互に繰り返す場合であっても、通信断のときにユーザ宅側から光ファイバ伝送路の状態を測定して記録することができ、より速やかに故障箇所を特定することが可能となる。
【0042】
[第2の実施の形態]
図1で示した通信システムにおいて、ONU31は、OLT41からの通信光を正しく受光できなくなると、ONU31の通信光の発光を停止することがある。そこで、第2の実施の形態の光ファイバ伝送路モニタ装置1は、第1の実施の形態の光ファイバ伝送路モニタ装置1のエラー検出部13の代わりに、光パワーメータ14を備えて、ONU31の通信光の受光レベルを確認することで、OLT41とONU31間の通信エラーの発生を検出する。通信システムの全体構成図は第1の実施の形態と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0043】
図3は、第2の実施の形態における光ファイバ伝送路モニタ装置1の構成を示す機能ブロック図である。同図に示す光ファイバ伝送路モニタ装置1は、光カプラ11、OTDR12、および光パワーメータ14を備える。
【0044】
光カプラ11は、Aポート、Bポート、Cポート、Dポートの4つのポートを備え、AポートにOLT41につながる光ファイバ、BポートにONU31、CポートにOTDR12、Dポートに光パワーメータ14がそれぞれ接続される。AポートとBポート間は、OLT41とONU31間の通信光が透過する波長特性を有しており、CポートとAポート間は、OTDR12からの試験光が透過する波長特性を有している。また、BポートとDポート間はONU31が出力する通信光のみが透過する波長特性を有している。
【0045】
光パワーメータ14は、ONU31が出力する通信光の受光レベルを確認し、ONU31からの通信光の受光レベルが大幅に低下もしくは検知できない場合、OTDR12へ光ファイバ伝送路の測定の指示を出す。
【0046】
第2の実施の形態における光ファイバ伝送路モニタ装置1は、ONU31が出力する通信光の受光レベルを確認することで通信エラーを検出するので、ONU31から通信エラーの通知を受けるための結線が不要である。
【0047】
続いて、第2の実施の形態における光ファイバ伝送路モニタ装置1の動作について説明する。
【0048】
光パワーメータ14は、光カプラ11を介してONU31からの通信光を入力して受光レベルを検知し(ステップS21)、検知した受光レベルが所定の値以下の場合、OTDR12に光ファイバ伝送路の測定指示を出す(ステップS22)。
【0049】
OTDR12は、光パルスを光カプラ11を介して光ファイバ伝送路へ入射して光ファイバ伝送路の状態を測定する(ステップS23)。
【0050】
第1の実施の形態と同様に、保守拠点でOLT41とONU31間の通信エラーの発生を検知した場合、ユーザ宅にある光ファイバ伝送路モニタ装置1を回収し、エラー発生時のOTDR波形データから故障位置を見つける。
【0051】
第1の実施の形態と同様に、OTDR12が出力する光パルスの波長は、通信光の波長と異なるように、例えば1550nmもしくは1650nm帯を用い、OTDR12にOLT41やONU31の通信光が入り込まないように、1310nmや1490nm帯を遮蔽する光フィルタが必要となる。
【0052】
以上説明したように、本実施の形態によれば、ユーザ宅に設置した光ファイバ伝送路モニタ装置1が、ONU31が出力する通信光の受光レベルを確認し、ONU31からの通信光の受光レベルが大幅に低下もしくは検知できない場合、OTDR12へ光ファイバ伝送路の測定の指示を出す光パワーメータ14を備えることで、OLT41からの通信光を正しく受光できなくなったONU31が通信光の発光を止めたことを検知し、光ファイバ伝送路のエラー発生時に光ファイバ伝送路の状態を測定し記録することができる。
【0053】
[第3の実施の形態]
第3の実施の形態の光ファイバ伝送路モニタ装置1は、第1の実施の形態の光ファイバ伝送路モニタ装置1のONU31から通信エラーの通知を受けるエラー検出部13の代わりに、通信モニタ部15を備えて、ONU31からの通信光からOLT41とONU31間の通信アラーム情報を取得する。通信システムの全体構成図は第1の実施の形態と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0054】
図4は、第3の実施の形態における光ファイバ伝送路モニタ装置1の構成を示す機能ブロック図である。同図に示す光ファイバ伝送路モニタ装置1は、光カプラ11、OTDR12、および通信モニタ部15を備える。
【0055】
光カプラ11は、Aポート、Bポート、Cポート、Dポートの4つのポートを備え、AポートにOLT41につながる光ファイバ、BポートにONU31、CポートにOTDR12、Dポートに通信モニタ部15がそれぞれ接続される。AポートとBポート間は、OLT41とONU31間の通信光が透過する波長特性を有しており、CポートとAポート間は、OTDR12からの試験光が透過する波長特性を有している。また、BポートとDポート間はONU31が出力する通信光のみが透過する波長特性を有している。
【0056】
通信モニタ部15は、ONU31が出力する通信光からOLT41とONU31間の通信アラーム情報を取得して通信状況を確認し、通信エラーを検出ときにOTDR12へ光ファイバ伝送路の測定の指示を出す。
【0057】
第3の実施の形態における光ファイバ伝送路モニタ装置1は、ONU31が出力する通信光から通信アラーム情報を取得することで通信エラーを検出するので、ONU31から通信エラーの通知を受けるための結線が不要である。
【0058】
続いて、第3の実施の形態における光ファイバ伝送路モニタ装置1の動作について説明する。
【0059】
通信モニタ部15は、光カプラ11を介してONU31からの通信光を入力して通信アラーム情報を取得し(ステップS31)、通信エラーを検出した場合、OTDR12に光ファイバ伝送路の測定指示を出す(ステップS32)。
【0060】
OTDR12は、光パルスを光カプラ11を介して光ファイバ伝送路へ入射して光ファイバ伝送路の状態を測定する(ステップS33)。
【0061】
第1の実施の形態と同様に、保守拠点でOLT41とONU31間の通信エラーの発生を検知した場合、ユーザ宅にある光ファイバ伝送路モニタ装置1を回収し、エラー発生時のOTDR波形データから故障位置を見つける。
【0062】
第1の実施の形態と同様に、OTDR12が出力する光パルスの波長は、通信光の波長と異なるように、例えば1550nmもしくは1650nm帯を用い、OTDR12にOLT41やONU31の通信光が入り込まないように、1310nmや1490nm帯を遮蔽する光フィルタが必要となる。
【0063】
以上説明したように、本実施の形態によれば、ユーザ宅に設置した光ファイバ伝送路モニタ装置1が、ONU31が出力する通信光からOLT41とONU31間の通信アラーム情報を取得して通信状況を確認し、通信エラーを検出ときにOTDR12へ光ファイバ伝送路の測定の指示を出す通信モニタ部15を備えることで、光ファイバ伝送路のエラー発生時に光ファイバ伝送路の状態を測定し記録することができる。
【0064】
[第4の実施の形態]
図5は、第4の実施の形態における光ファイバ伝送路モニタ装置を含む全体構成図である。第4の実施の形態では、通信設備ビル内にも光ファイバ伝送路モニタ装置2を配置し、通信エラーが検出されたときに、ユーザ宅側と通信設備ビル側の両方からOTDRで光ファイバ伝送路を測定する。なお、ユーザ宅内に配置する光ファイバ伝送路モニタ装置1は、第1〜3の実施の形態のいずれの構成を用いてもよい。
【0065】
図6は、第4の実施の形態における光ファイバ伝送路モニタ装置2の構成を示す機能ブロック図である。同図に示す光ファイバ伝送路モニタ装置2は、エラー検出部21とOTDR22を備える。光ファイバ伝送路モニタ装置2は、成端架42内に配置した光カプラ45とOLT41に接続される。
【0066】
光カプラ45は、Xポート、Yポート、Zポートの3つのポートを備え、XポートにOLT41につながる光ファイバ、YポートにONU31につながる光ファイバ、ZポートにOTDR22がそれぞれ接続される。XポートとYポート間は、OLT41とONU31間の通信光が透過する波長特性を有しており、YポートとZポート間は、OTDR22からの試験光が透過する波長特性を有している。
【0067】
エラー検出部21は、OLT41とONU31間の通信エラーの通知をOLT41から受信し、OTDR22へ光ファイバ伝送路の測定の指示を出す。
【0068】
OTDR22は、光カプラ45を介して光ファイバ伝送路に光パルスを入射してONU31側の光ファイバを測定し、測定して得られたOTDR波形データをOTDR22の記憶手段に保存する。
【0069】
続いて、第4の実施の形態における光ファイバ伝送路モニタ装置2の動作について説明する。
【0070】
エラー検出部21は、OLT41からOLT41とONU31間の通信エラーの通知を受信すると(ステップS41)、OTDR22に光ファイバ伝送路の測定指示を出す(ステップS42)。
【0071】
OTDR22は、光パルスを光カプラ45を介して光ファイバ伝送路へ入射して光ファイバ伝送路の状態を測定する(ステップS43)。
【0072】
なお、通信エラー時には、ユーザ宅内に配置した光ファイバ伝送路モニタ装置1でも光ファイバ伝送路を測定するので、ユーザ宅のOTDR12はONU31から所外の光スプリッタ52までの光ファイバを測定し、通信設備ビルのOTDR22はOLT41から所外の光スプリッタ52までの光ファイバを測定すればよい。したがって、ユーザ宅に設置した光ファイバ伝送路モニタ装置1のOTDR12はパルス幅を細くして、より分解能を高めて測定することが望ましい。
【0073】
光ファイバ伝送路モニタ装置2を通信設備ビル内に設置し、ユーザ宅側と通信設備ビル側の両方から光ファイバ伝送路を測定する場合、ユーザ宅のOTDR12の光源波長をλ1、通信設備ビルのOTDR22の光源波長をλ2として試験光の波長を異ならせ、OTDR12にはλ2の波長を遮断する光フィルタ、OTDR22にはλ1の波長を遮断する光フィルタを備えることが望ましい。なお、光ローゼット32内には、1650nm帯の試験光を遮断する光フィルタ33が配置されていることが多く、光源波長λ1は光フィルタ33を透過する1550nm帯や1610nm帯を用い、光源波長λ2は1650nm帯を用いることが好ましい。
【0074】
以上説明したように、本実施の形態によれば、通信設備ビル内にも光ファイバ伝送路モニタ装置2を備えることにより、ユーザ宅側の光ファイバ伝送路モニタ装置1は、ONU31から光スプリッタ52までを、通信設備ビル側の光ファイバ伝送路モニタ装置2は、OLT41から光スプリッタ52までを測定すれば良く、OTDR12,22に高いダイナミックレンジを求める必要がなくなるため、パルス幅を細くするなど、分解能を高めることができ、より正確な測定が可能となる。
【0075】
本実施の形態の形態によれば、OTDR12,22が、互いに異なる試験光の波長を使用することで、ユーザ宅側から、通信設備ビル側から同時に測定しても、お互いの測定結果に影響を与えるもことなく測定できる。
【0076】
[第5の実施の形態]
第5の実施の形態の光ファイバ伝送路モニタ装置2は、第4の実施の形態の光ファイバ伝送路モニタ装置2のOLT41から通信エラーの通知を受けるエラー検出部21の代わりに、通信モニタ部23を備えて、ONU31からの通信光からOLT41とONU31間の通信アラーム情報を取得する。通信システムの全体構成図は第4の実施の形態と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0077】
図7は、第5の実施の形態における光ファイバ伝送路モニタ装置2の構成を示す機能ブロック図である。同図に示す光ファイバ伝送路モニタ装置1は、OTDR22と通信モニタ部23を備える。
【0078】
光カプラ45は、Xポート、Yポート、Zポートの3つのポートを備え、XポートにOLT41につながる光ファイバ、YポートにONU31につながる光ファイバ、ZポートにOTDR22と通信モニタ部23が接続される。XポートとYポート間は、OLT41とONU31間の通信光が透過する波長特性を有しており、YポートとZポート間は、OTDR22からの試験光とONU31からの通信光が透過する波長特性を有している。
【0079】
通信モニタ部23は、ONU31が出力する通信光からOLT41とONU31間の通信アラーム情報を取得して通信状況を確認し、通信エラーを検出ときにOTDR22へ光ファイバ伝送路の測定の指示を出す。
【0080】
第5の実施の形態における光ファイバ伝送路モニタ装置2は、ONU31が出力する通信光から通信アラーム情報を取得することで通信エラーを検出するので、OLT41から通信エラーの通知を受けるための結線が不要である。
【0081】
続いて、第5の実施の形態における光ファイバ伝送路モニタ装置2の動作について説明する。
【0082】
通信モニタ部23は、光カプラ45を介してONU31からの通信光を入力して通信アラーム情報を取得し(ステップS51)、通信エラーを検出した場合、OTDR22に光ファイバ伝送路の測定指示を出す(ステップS52)。
【0083】
OTDR22は、光パルスを光カプラ45を介して光ファイバ伝送路へ入射して光ファイバ伝送路の状態を測定する(ステップS53)。
【0084】
第5の実施の形態においても、ユーザ宅のOTDR12はONU31から所外の光スプリッタ52までの光ファイバを測定し、通信設備ビルのOTDR22はOLT41から所外の光スプリッタ52までの光ファイバを測定すればよい。
【0085】
また、OTDR12,22の光源波長をλ1,λ2として異なる波長の試験光を使い、OTDR12,22それぞれには、他のOTDR12,22の試験光の波長を遮断する光フィルタを備える。
【符号の説明】
【0086】
1…光ファイバ伝送路モニタ装置
11…光カプラ
12…OTDR
13…エラー検出部
14…光パワーメータ
15…通信モニタ部
2…光ファイバ伝送路モニタ装置
21…エラー検出部
22…OTDR
23…通信モニタ部
31…ONU
32…光ローゼット
33…光フィルタ
34A,34B…コネクタ
35…通信端末
41…OLT
42…成端架
43…光フィルタ
44…光スプリッタ
45…光カプラ
51…光クロージャ
52…光スプリッタ
53A,53B,54A,54B…コネクタ
6…通信モニタ装置
61…光信号受信部
62…信号処理部
63…表示制御部
64…光カプラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8