(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
走行機体と、該走行機体の後部に位置し、苗を植付ける植付部と、予備苗用の育苗トレイを前記走行機体の前後方向に搬送すべく、搬送方向に適宜間隔を隔てて設けた複数の搬送ローラを有する搬送装置とを備えた田植機において、
前記搬送装置は、固定搬送台と、該固定搬送台の後側に位置し、前記搬送ローラの回転軸方向と平行的かつ前記固定搬送台よりも上側に配置された第1回動軸にて前記固定搬送台の上側へ折り畳み可能に連結された後搬送台と、前記固定搬送台の前側に位置し、前記搬送ローラの回転軸方向と平行的かつ前記第1回動軸よりも更に上側に配置された第2回動軸にて前記後搬送台の上側へ折り畳み可能に連結された前搬送台とを備え、
前記固定搬送台が備える搬送ローラの一部を前記搬送方向に対して順方向又は逆方向に回転駆動する駆動手段と、
前記搬送ローラの回転軸方向の端部に設けられ、前記駆動手段による回転を前記固定搬送台が備える他の搬送ローラに伝達する第1伝動機構と、
前記第2回動軸に設けられたアイドラを含み、前記固定搬送台が備える前記他の搬送ローラの回転を前記前搬送台が備える一の搬送ローラに伝達する第2伝動機構と、
前記前搬送台が備える前記一の搬送ローラの回転を前記前搬送台が備える他の搬送ローラに伝達する第3伝動機構と
を備えることを特徴とする田植機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
苗搬送装置は、予備苗を生育させた育苗トレイを田植機の機体前部から機体後部へ搬送するものである。このような苗搬送装置の中には、コンベア駆動モータの動力を利用して育苗トレイの搬送を行うものが存在する(例えば、特許文献2及び3を参照)。
【0006】
特許文献2及び3に開示された苗搬送装置は、コンベア駆動モータが回転駆動する駆動プーリ、駆動プーリに従動して回転する従動プーリ、及び駆動プーリ及び従動プーリに張吊された搬送ベルトを備えており、搬送ベルト上の育苗トレイを作業補助者の手を介すことなく搬送することが可能である。
【0007】
しかしながら、特許文献2及び3では、苗搬送装置が育苗トレイを搬送する全区間のうち一部の区間に搬送ベルトによる搬送区間を設けているに過ぎず、少なくとも搬送ベルトにより搬送される区間に到達するまでの間は、作業補助者の手により育苗トレイを搬送する必要があった。また、特許文献2及び3の苗搬送装置は、前側及び後側の搬送台を可動式とすることにより折り畳み可能に構成してあるため、駆動プーリ及び従動プーリによって張吊される搬送ベルトを苗搬送装置の前端から後端に至る全区間に配置することは困難である。
【0008】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、作業補助者の手を介すことなく育苗トレイを搬送することができる田植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る田植機は、走行機体と、該走行機体の後部に位置し、苗を植付ける植付部と、予備苗用の育苗トレイを前記走行機体の前後方向に搬送すべく、搬送方向に適宜間隔を隔てて設けた複数の搬送ローラを有する搬送装置とを備えた田植機において、前記搬送装置は、固定搬送台と、該固定搬送台の後側に位置し、前記搬送ローラの回転軸方向と平行的かつ前記固定搬送台よりも上側に配置された第1回動軸にて前記固定搬送台の上側へ折り畳み可能に連結された後搬送台と、前記固定搬送台の前側に位置し、前記搬送ローラの回転軸方向と平行的かつ前記第1回動軸よりも更に上側に配置された第2回動軸にて前記後搬送台の上側へ折り畳み可能に連結された前搬送台とを備え、前記固定搬送台が備える搬送ローラ
の一部を前記搬送方向に対して順方向又は逆方向に回転駆動する駆動手段と、前記搬送ローラの回転軸方向の端部に設けられ、前記駆動手段による回転を前記固定搬送台が備える他の搬送ローラに伝達する第1伝動機構と、前記第2回動軸に設けられたアイドラを含み、前記固定搬送台が備える前記他の搬送ローラの回転を前記前搬送台が備える一の搬送ローラに伝達する第2伝動機構と、前記前搬送台が備える前記一の搬送ローラの回転を前記前搬送台が備える他の搬送ローラに伝達する第3伝動機構とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明では、搬送ローラの軸端部に設けた伝動機構により、駆動手段による回転を搬送ロータに伝達する構成としているので、伝動機構の配置が容易であると共に、メンテナンスの実施が容易となる。
また、本発明では、一の搬送部を他の搬送部に対して回動させた場合であっても、伝動機構による回転の伝達経路における経路長は変化しないので、伝動系クラッチなどの追加部品を用いることなく回転を伝達させることができる。
【0011】
本発明に係る田植機は、前記
第1伝動機構は、前記駆動手段が回転駆動する搬送ローラの回転軸端部に取り付けられた駆動プーリと、前記
固定搬送台が備える前記他の搬送ローラの回転軸端部に取り付けられた従動プーリと、前記駆動プーリ及び前記従動プーリに張吊されたベルトとを備えることを特徴とする。
【0012】
本発明では、駆動プーリ及び従動プーリの配置の自由度が高まり、効率的な駆動方法の選択が可能となる。
【0013】
本発明に係る田植機は、前記
第1伝動機構は、前記駆動手段が回転駆動する搬送ローラの回転軸端部に取り付けられた駆動スプロケットと、
前記固定搬送台が備える前記他の搬送ローラの回転軸端部に取り付けられた従動スプロケットと、前記駆動スプロケット及び前記従動スプロケットに張吊されたチェーンとを備えることを特徴とする。
【0014】
本発明では、駆動スプロケット及び従動スプロケットの配置の自由度が高まり、効率的な駆動方法の選択が可能となる。
【0015】
本発明に係る田植機は、前記
第1伝動機構は、前記駆動手段が回転駆動する搬送ローラの回転軸端部に取り付けられた駆動ギヤ、及び
前記固定搬送台が備える前記他の搬送ローラの回転軸端部に取り付けられた従動ギヤを含むギヤトレインであることを特徴とする。
【0016】
本発明では、駆動ギヤ及び従動ギヤの配置の自由度が高まり、効率的な駆動方法の選択が可能となる。
【0017】
本発明に係る田植機は、回転駆動すべき搬送ローラの内部又は回転軸端部に前記駆動手段を設けてあることを特徴とする。
【0018】
本発明では、駆動手段を搬送ローラの内部に設けることで省スペース化を実現できる。また、駆動手段を搬送ローラの回転軸端部に設けることで、駆動手段の配置位置にバリエーションが広がり、スペース上の制約を考慮した配置が可能となる。
【0021】
本発明に係る田植機は、前記搬送ローラの回転軸方向と平行的に配置された回動軸にて前記搬送装置を前記走行機体の前後方向に傾斜可能に支持する支持体を備え、前記搬送装置の回動支点に駆動用アイドラを設けてあることを特徴とする。
【0022】
本発明では、搬送装置全体を前後方向に傾斜させた場合であっても、伝動機構による回転の伝達経路における経路長は変化しないので、伝動系クラッチなどの追加部品を用いることなく回転を伝達させることができる。
【0023】
本発明に係る田植機は、搬送すべき育苗トレイが前記搬送ローラ上に載置されたことを検知する検知手段と、前記育苗トレイが載置されたことを前記検知手段により検知した場合、前記駆動手段による搬送ローラの回転駆動を開始させる制御手段とを備えることを特徴とする。
【0024】
本発明では、育苗トレイが搬送ローラ上に載置された場合、自動的に搬送が開始される。
【0025】
本発明に係る田植機は、前記搬送装置は、各搬送ローラの両端を回転自在に支持する支持フレームを有し、該支持フレームの内側の側面に前記検知手段を設けてあることを特徴とする。
【0026】
本発明では、支持フレームの内側の側面に検出手段を設けているので、育苗トレイなどの搬送物体の重量や汚れの影響を受けにくい。
【発明の効果】
【0027】
本発明による場合、搬送ローラの軸端部に設けた伝動機構により、駆動手段による回転を搬送ロータに伝達する構成としているので、伝動機構の配置が容易であると共に、メンテナンスを容易に実施することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
実施の形態1.
図1は実施の形態1に係る田植機を示す側面図である。本実施の形態に係る田植機は、例えば、乗用田植機であり、走行機体10、走行機体10の後部に位置し、苗を植え付ける植付部30、及び予備苗を生育させた育苗トレイ4(
図5を参照)を走行機体10の前部から後部へ搬送する搬送装置60を備える。
【0030】
走行機体10は、車体フレーム11を備え、車体フレーム11の前部上側にエンジン14が搭載されている。車体フレーム11の前部下側には、エンジン14の駆動力を伝達する伝動機構及びサスペンションなどを収容したフロントアクスルケース(不図示)が設けられており、このフロントアクスルケースにより前輪12が支持されている。また、走行機体10の後部下側には、エンジン14の駆動力を伝達する伝動機構及びクラッチなどを収容したリアアクスルケース(不図示)が設けられており、このリアアクスルケースに後輪13が支持されている。田植機は、エンジン14の駆動力を伝動機構を介して後輪13に伝達させることにより、走行機体10を走行させるように構成されている。
【0031】
エンジン14はボンネット15により覆われている。ボンネット15の左右両側には、植付部30に供給する予備苗を生育させた育苗トレイ4を載置しておくための予備苗載台50,50が上下方向に並設されている。ボンネット15の後部には、ダッシュボード21を設けてあり、ダッシュボード21の上側に田植機を操舵するための操向ハンドル22を配している。また、操向ハンドル22の後側に運転席23を設けてあり、運転席23の更に後側に施肥機を配設している。
【0032】
植付部30は、走行機体10の後部に昇降リンク機構39を介して連結されている。植付部30は、左右方向に並んだ上下に細長い8個の苗載台31、苗載台31の下端部付近に配置してあり、苗の植付けを行う植付爪34を有するロータリーケース35、及び苗載台31の下端部の左右に植付部30の沈下を防ぐフロート36を備える。苗載台31はマット状の苗を載置するための載置台であり、走行機体10に対して前高後低に配設され、図に示していない横送り機構によって左右方向に摺動自在に支持されている。なお、苗載台31は8個に限定されず、例えば6個又は4個であってもよい。
【0033】
このような構成の田植機では、エンジン14の動力による前進走行とともに苗載台31を左右方向に摺動させ、それぞれの条において、ロータリーケース35を回転駆動させることにより植付爪34で一株分の苗を苗載台31から掻き取りながら、植付作業を連続的に行えるようにしている。
【0034】
苗の植付作業が進むにつれて、苗載台31上の苗は圃場へと植付けられ減少するため、続けて植付作業を行うためには、苗を適宜補充する必要がある。例えば、苗載台31上の苗が残り少なくなった場合(苗が所定量以上減少した場合)、又は田植機が畦際に到達したタイミングにて、苗載台31に苗を補充する苗継ぎ作業を行う。
【0035】
本実施の形態に係る田植機は、走行機体10の前部に2段の予備苗載台50,50を備える。予備苗載台50,50は、前後方向に間隔を隔てて車体フレーム11に立設した2本の支柱51,51により、機体外側へ突出するように、また機体内側を支点にして上方へ回動可能に片持ち支持されている。このため、田植機の収納時には、予備苗載台50,50をそれぞれ上方に回動させることにより、コンパクトに収納できるように構成されている。なお、
図1に示した例では、予備苗載台50の段数を2段としたが、2段に限定されるものではなく、予備苗載台50の段数を3段以上としてもよい。また、搬送装置60の設置側(
図1に示す例では、田植機の左側)では予備苗載台50の段数を2段とし、不設置側では予備苗載台50の段数を3段としてもよい。
【0036】
また、本実施の形態に係る田植機は、予備苗を生育させた育苗トレイ4を走行機体10の前部から後部へ搬送する搬送装置60を備える。育苗トレイ4は、例えば、合成樹脂により形成されており、580mm×280mm程度の長方形の底板40の周縁に高さ30mm程度の周壁41を設けた浅底のトレイである(
図5を参照)。育苗トレイ4には培土を入れて培地層を形成し、吸水させた後に種籾を播いて、その上に覆土を施す。種籾は覆土にて発芽し、苗として成長する。
【0037】
搬送装置60は、予備苗載台50に載置された育苗トレイ4、又は畦際の作業補助者から渡された育苗トレイ4を、走行機体10の前部から後部へ搬送する。作業者は、搬送装置60によって走行機体10の後部に搬送されてきた育苗トレイ4から苗を取り出し、苗載台31に補充することで苗継ぎ作業を実施する。
【0038】
搬送装置60は、搬送台61を複数連結することにより構成され、固定搬送台61b、固定搬送台61bの前方に位置する前搬送台61a、及び固定搬送台61bの後方に位置する後搬送台61cを備える。前搬送台61a及び後搬送台61cは、それぞれ固定搬送台61bに対して回動可能に連結されており、田植機の収納時には、前搬送台61a及び後搬送台61cを上方へ回動させることによって、搬送装置60をコンパクトに折り畳むことができるように構成されている。
【0039】
搬送装置60は、例えば、2本の支柱51,51と補助支柱52とにより支持される。補助支柱52は、前側の支柱51近傍の車体フレーム11より機体外側へ突出するように固設された取付ブラケット53に、下端が固設されている。2本の支柱51,51の上側は、固定搬送台61bの下部に固設された機体側のブラケット67に固設され、補助支柱52の上側は、固定搬送台61bの下部に固設された外側のブラケット67に固設される。ブラケット67は、例えば、前高後低の側面視略三角形状に形成されており、搬送装置60全体が前高後低に傾斜するように構成されている。
【0040】
図2は搬送装置60を示す斜視図、
図3は前搬送台61aを回動させた状態の搬送装置60を示す図、
図4は前搬送台61a及び後搬送台61cを折り畳んだ状態の搬送装置60を示す図である。搬送装置60は、搬送台61を複数連結することにより構成されている。各搬送台61は、左右一対の左右フレーム62,62、前後一対の前後フレーム63,63、及び育苗トレイ4の搬送方向に適宜間隔を隔てて設けた複数の搬送ローラ64,64,…,64を備える。
【0041】
前後方向に長く形成された左右一対の左右フレーム62,62のそれぞれの両端に、水平部63aと鉛直部63bとからなる前後フレーム63,63が横設されている。予備苗の育苗トレイ4の底面が接触する棒状の搬送ローラ64は、前後方向に適宜間隔を有し、左右フレーム62,62の対向内側面に回転自在に横設される。搬送ローラ64は、左右の転動部64a,64aと、転動部64aよりも小径に形成され、左右の略中央に設けられたくびれ部64bとを備える。
【0042】
なお、搬送ローラ64はくびれ部64bを設ける代わりに左右に分離して、中央部には空間またはローラ支持軸のみ存在する構成とすることもできる。また、転動部64aの表面をゴム製とするか、又は転動部64aをスターホイールとすることにより、育苗トレイ4の底面と転動部64aとの間の滑りをなくし、より確実な搬送動作を行わせる構成としてもよい。
【0043】
左右フレーム62,62の略中央の搬送ローラ64,64間には、棒状の補強フレーム66が配設されている。補強フレーム66の上面は、搬送ローラ64のくびれ部64bの上面と略同じ高さの位置、もしくはくびれ部64bの上面より低い位置に配設されている。
【0044】
前搬送台61aが備える2つの左右フレーム62,62の略中央には搬送ガイド65を設けてあり、予備苗を補給(搬入)する際、搬送ローラ64,64間に育苗トレイ4が入り込まないようにしている。搬送ガイド65は、例えば直線状の棒材により形成されており、その上面が転動部64aの上面より低い位置に配設され、両端が前後フレーム63,63の水平部63a,63aに固設されている。
なお、本実施の形態では、搬送ガイド65は棒材で形成されているが、板材や角材等の形状であってもよい。
【0045】
また、前搬送台61aの左右フレーム62,62の後端内側には、それぞれ板状のブラケット71が上方に突出するように固設されている。前搬送台61aと連結される固定搬送台61bは、その左右フレーム62,62の前端内側に、それぞれ板状のブラケット72が上方に突出するように固設されている。ブラケット71の上部後端と、ブラケット72の上部前端とは、機体の左右方向に重なるように形成されており、その重なり部分の双方に開口部が設けられ、開口部に回動軸75が挿入されている。前搬送台61aは、回動軸75を回動中心として、固定搬送台61bに対し回動自在に連結されている。
【0046】
一方、固定搬送台61bの左右フレーム62,62の後端内側に、それぞれ板状のブラケット73が上方に突出するように固設されている。前記固定搬送台61bと連結される後搬送台61cは、その左右フレーム62,62の前端内側に、それぞれ板状のブラケット74が上方に突出するように固設されている。ブラケット73の上部後端と、ブラケット74の上部前端とは、機体の左右方向に重なるように形成されており、その重なり部分の双方に開口部が設けられ、開口部に回動軸76が挿入されている。後搬送台61cは、回動軸76を回動中心として、固定搬送台61bに対し回動自在に連結されている。
【0047】
前方のブラケット71,72は、後方のブラケット73,74よりも、上方に高く突出するように構成され、搬送装置60の前搬送台61a及び後搬送台61cを折り畳んだときに、各搬送台61が接触しないように構成されている。つまり、搬送装置60の折り畳み時には、固定搬送台61bの上方に後搬送台61c、さらにその上方に前搬送台61aが上下方向に間隔を有すように収容される。
【0048】
本実施の形態では、前搬送台61a及び後搬送台61cの双方を上方へ回動させ、
図4に示す如く、下から固定搬送台61b、後搬送台61c、前搬送台61aの順序となるように収納する構成としたが、前搬送台61aを上方に回動させると共に、後搬送台61cを下方に回動させる構成とし、収納時には、下から後搬送台61c、固定搬送台61b、前搬送台61aの順序となるように収納する構成してもよい。
【0049】
本実施の形態に係る田植機は、搬送装置60が備える搬送ローラ64,64,…の少なくとも一部を育苗トレイ4の搬送方向に対して順方向に回転駆動する搬送モータ80と、この搬送モータ80の回転を他の搬送ローラ64,64,…に伝達する伝動機構とを備える。
図2に示す例では、固定搬送台61bが備える5つの搬送ローラ64,64,…のうち、最も後寄りの搬送ローラ64を搬送モータ80により回転駆動する構成としている。
【0050】
搬送モータ80は、例えば電動モータであり、固定搬送台61bの下方に設置される。搬送モータ80は、搬送ローラ64の回転軸と平行をなす出力軸80aを備え、この出力軸80aには、駆動プーリ81が嵌着固定されている。搬送モータ80が回転駆動する前記搬送ローラ64の回転軸における軸端部には従動プーリ82が嵌着固定されており、この従動プーリ82と前記駆動プーリ81とは、両者間に張架された伝動ベルト83により連結されている。
【0051】
搬送モータ80の回転は、駆動プーリ81、伝動ベルト83及び従動プーリ82を介して前記搬送ローラ64に伝達され、当該搬送ローラ64を回転させる。なお、駆動プーリ81及び従動プーリ82は、外周に歯を備える歯付きプーリとし、伝動ベルト83は、内面に歯を備える歯付きベルトとすることにより、搬送モータ80の回転を滑りを伴わずに前記搬送ローラ64に伝え、より確実な搬送動作を行わせることができる。
【0052】
また、搬送装置60は、固定搬送台61bの最も後寄りの搬送ローラ64に伝達した搬送モータ80の回転を、他の搬送ローラ64,64,…に伝達する伝動機構を備える。伝動機構は、搬送モータ80の回転を固定搬送台61bの各搬送ローラ64に伝達する第1伝動機構810と、第1伝動機構810から前搬送台61aの搬送ローラ64へ伝達する第2伝動機構820と、前搬送台61aの各搬送ローラ64に伝達する第3伝動機構830とにより構成される。
【0053】
第1伝動機構810は、固定搬送台61bの最も後寄りの搬送ローラ64の回転軸に従動プーリ82と同軸に嵌着固定された連動プーリ811、固定搬送台61bの最も前寄りの搬送ローラ64の回転軸における軸端部に嵌着固定された従動プーリ812、及び連動プーリ811と従動プーリ812との間に張架された伝動ベルト813を備える。従動プーリ82に伝達される搬送モータ80の回転は、連動プーリ811、伝動ベルト813及び従動プーリ812を介して、固定搬送台61bの最も前寄りの搬送ローラ64及び最も後寄りの搬送ローラ64に伝達され、これらの搬送ローラ64,64を回転させる。また、固定搬送台61bの中間部に配置された搬送ローラ64,64,64の回転軸端部にそれぞれ連動プーリ814,814,814を設けてあり、これらの搬送ローラ64,64,64を伝動ベルト813を介して回転させる構成としている。
【0054】
第2伝動機構820は、回動軸75に対して回動可能に連結された後部伝動機構820a及び前部伝動機構820bからなる。後部伝動機構820aは、固定搬送台61bの最も前寄りの搬送ローラ64の回転軸に従動プーリ812と同軸に嵌着固定された連動プーリ821と、回動軸75に嵌着固定された従動プーリ822と、連動プーリ821と従動プーリ822との間に張架された伝動ベルト823とを備える。また、前部伝動機構820bは、回動軸75に従動プーリ822と同軸に嵌着固定された連動プーリ824と、前搬送台61aの最も後寄りの搬送ローラ64における回転軸の軸端部に嵌着固定された従動プーリ825と、連動プーリ824と従動プーリ825との間に張架された伝動ベルト826とを備える。後部伝動機構820a及び前部伝動機構820bは、第1伝動機構810より伝達される搬送モータ80の回転を、伝動ベルト823,826等を介して前搬送台61aの搬送ローラ64に伝達する。
【0055】
第3伝動機構830は、前搬送台61aの最も後寄りの搬送ローラ64の回転軸に従動プーリ825と同軸に嵌着固定された連動プーリ831、前搬送台61aの最も前寄りの搬送ローラ64の回転軸における軸端部に嵌着固定された従動プーリ832、及び連動プーリ831と従動プーリ832との間に張架された伝動ベルト833を備える。第2伝動機構820を介して伝達される搬送モータ80の回転は、連動プーリ831、伝動ベルト833及び従動プーリ832を介して、前搬送台61aの最も前寄りの搬送ローラ64及び最も後寄りの搬送ローラ64に伝達され、これらの搬送ローラ64,64を回転させる。また、前搬送台61aの中間部に配置された搬送ローラ64,64,64の回転軸端部にそれぞれ連動プーリ834,834,834を設けてあり、これらの搬送ローラ64,64,64を伝動ベルト833を介して回転させる構成としている。
【0056】
前搬送台61aの回動支点(回動軸75)に設けてある2つのプーリは、アイドラとして機能するように構成されている。すなわち、前搬送台61aを固定搬送台61bに対して回動させた場合であっても、第1伝動機構810から第3伝動機構830に至る第2伝動機構820の伝達経路における経路長は変化しないため、伝動系クラッチなどの追加の部品を用いることなく、固定搬送台61bの搬送ローラ64を回転させる第1伝動機構810より、前搬送台61aの搬送ローラ64を回転させる第3伝動機構830へ搬送モータ80の回転を伝達させることができる。
【0057】
なお、本実施の形態では、搬送モータ80の回転を搬送ローラ64に伝える伝動機構として、プーリ及びベルトを備えたベルト伝動機構を採用したが、スプロケット及びチェーンを備えたチェーン伝動機構であってもよい。例えば、搬送モータ80の出力軸80aに嵌着固定された駆動プーリ81に代えて駆動スプロケット、固定搬送台61bの最も後寄りの搬送ローラ64の回転軸に嵌着固定された従動プーリ82に代えて従動スプロケット、伝動ベルト83に代えて前記駆動スプロケット及び従動スプロケットに張架されるチェーンを備えたチェーン伝動機構であってもよい。第1伝動機構810〜第3伝動機構830についても同様であり、それぞれプーリをスプロケットに置き換え、伝動ベルトをチェーンに置き換えたチェーン伝動機構であってもよい。
また、搬送モータ80の回転を搬送ローラ64に伝える伝動機構は、前述のベルト伝動機構及びチェーン伝動機構に限らず、ギヤトレインなどの歯車伝動機構等の他の伝動機構を採用してもよいことは勿論のことである。
【0058】
本実施の形態では、前搬送台61a及び固定搬送台61bが備える全ての搬送ローラ64,64,…に搬送モータ80の回転を伝達させる構成としたが、これらの搬送ローラ64,64,…のうち、一部の搬送ローラ64,64,…にのみ搬送モータ80の回転を伝達させる構成としてもよい。更に、後搬送台61cが備える搬送ローラ64,64に搬送モータ80の回転を伝達させる構成としてもよい。
【0059】
また、本実施の形態では、固定搬送台61bの下方に設置された搬送モータ80により、搬送ローラ64,64,…を回転させる構成としたが、搬送モータ80の設置場所は、固定搬送台61bの下方に限定されるものではなく、例えば、固定搬送台61bの最も後寄りの搬送ローラ64の軸端部付近に搬送モータ80を設ける構成としてもよい。また、各搬送台61が備える搬送ローラ64,64,…の少なくとも一部の回転軸にホイールインモータを設ける構成としてもよい。
【0060】
更に、搬送装置60は、搬送モータ80の駆動を開始させる始動スイッチ101、及び搬送モータ80の駆動を停止させる停止スイッチ102を備える。
図2に示すように、始動スイッチ101は、前搬送台61aの左右フレーム62における内側側面の前寄りの位置に設けられており、停止スイッチ102は、後搬送台61cの左右フレーム62における内側側面の後寄りの位置に設けられている。
【0061】
図5は始動スイッチ101の構成を説明する模式的断面図である。
図5A及び
図5Bは搬送装置60の前方から見た断面図を示している。始動スイッチ101は、例えば、縦断面及び横断面の形状が共に台形をなすスイッチであり、バネなどの付勢部材101sの作用により、その頭頂部101aが左右フレーム62の内側側面より外側へ突出するように構成されている(
図5Aを参照)。
【0062】
育苗トレイ4が前搬送台61aに載置されるとき(すなわち、搬送を開始させるとき)、育苗トレイ4の底板40は始動スイッチ101の上部斜面101bに接触し、始動スイッチ101は左右フレーム62の内部へスライド移動する。育苗トレイ4が搬送ローラ64上に載置された場合、
図5Bに示すように、始動スイッチ101の頭頂部101aは育苗トレイ4の周壁41に当接した状態となり、始動スイッチ101は左右フレーム62の内部へ退避する。この状態を図に示していない電気的接点の閉状態(又は開状態)として検出回路105(
図7を参照)により検出する。検出回路105は、前記電気的接点の閉状態(又は開状態)を検出した場合、搬送モータ80の駆動開始信号を制御部100(
図7を参照)へ送出する。
【0063】
図6は停止スイッチ102の構成を説明する模式的断面図である。
図6A及び
図6Bは搬送装置60の上方から見た断面図を示している。停止スイッチ102は、例えば、縦断面及び横断面の形状が共に台形をなすスイッチであり、バネなどの付勢部材102sの作用により、その頭頂部102aが左右フレーム62の内側側面より外側へ突出するように構成されている(
図6Aを参照)。
【0064】
育苗トレイ4が後搬送台61cに搬送されてきたとき、育苗トレイ4の周壁41は停止スイッチ102の前部斜面102cに接触し、停止スイッチ102は左右フレーム62の内部へスライド移動する。育苗トレイ4が後搬送台61cの後端まで搬送された場合、停止スイッチ102の頭頂部101aは育苗トレイ4の周壁41に当接した状態となり、停止スイッチ102は左右フレーム62の内部へ退避する。この状態を図に示していない電気的接点の閉状態(又は開状態)として検出回路105により検出する。検出回路105は、前記電気的接点の閉状態(又は開状態)を検出した場合、搬送モータ80の駆動停止信号を制御部100へ送出する。
【0065】
図7は搬送モータ80の制御系の構成を示すブロック図である。搬送装置60は、前述の始動スイッチ101及び停止スイッチ102が接続された検出回路105、及び制御部100を備える。制御部100は、例えばCPU及びメモリを備え、検出回路105より搬送モータ80の駆動開始信号が入力された場合、搬送モータ80に駆動開始信号を与えて搬送モータ80を駆動し、検出回路105より搬送モータ80の停止信号が入力された場合、搬送モータ80に駆動停止信号を与えて搬送モータ80を停止させるように構成されている。
【0066】
本実施の形態では、育苗トレイ4の搬送方向を走行機体10の前部から後部としたが、搬送モータ80の回転方向を切替える切替スイッチを制御部100に接続し、当該切替スイッチにて搬送モータ80の回転方向を切替えることにより、搬送装置60の搬送方向を変更できるようにしてもよい。走行機体10の後部にて苗継ぎ作業を行い、苗載台31への苗の補充が完了した場合、搬送装置60による搬送方向を変更することで空箱となった育苗トレイ4を走行機体10の前部へ搬送することができ、畦際の補助作業者に回収させることが可能となる。
【0067】
また、始動スイッチ101のオン状態を検出することなく、停止スイッチ102のオン状態を検出した場合、検出回路105は、搬送モータ80を逆方向に回転させる駆動開始信号を制御部100へ送出し、停止スイッチ102のオン状態を検出した後に始動スイッチ101のオン状態を検出した場合、検出回路105は、搬送モータ80の駆動を停止させる駆動停止信号を制御部100へ送出する構成としてもよい。このとき、停止スイッチ102は、育苗トレイ4を搬送装置60の後部から前部へ搬送させる際の駆動開始を制御するスイッチとして機能し、始動スイッチ101は、その駆動を停止させるスイッチとして機能することになる。
【0068】
また、本実施の形態では、前搬送台61aにおける左右フレーム62の内側側面に搬送モータ80を始動させる始動スイッチ101を設け、後搬送台61cにおける左右フレーム62の内側側面に搬送モータ80を停止させる停止スイッチ102を設ける構成としたが、これらのスイッチの設置場所は、搬送台61に限定されるものではない。例えば、運転席23の後ろ側にこれらのスイッチを備えたコントローラを備える構成であってもよい。
【0069】
また、本実施の形態では、育苗トレイ4によって押圧される始動スイッチ101及び停止スイッチ102を備える構成としたが、押圧式のスイッチに限定されるものではなく、例えば、発光部と受光部とを組み合わせた光センサを利用し、制御部100にて、搬送を開始させるタイミング、及び搬送を停止させるタイミングを検知する構成としてもよい。例えば、前搬送台61aの前寄りの位置にて発光部が発光する光を受光部が検知する構成としておき、育苗トレイ4により発光部が照射する光が遮られた場合、制御部100は、搬送を開始させるタイミングであると検知することができる。同様に、後搬送台61cの後寄りの位置にて発光部が発光する光を受光部が検知する構成としておき、搬送されてきた育苗トレイ4により発光部が照射する光が遮られた場合、制御部100は、搬送を停止させるタイミングであると検知できる。
【0070】
更に、本実施の形態では、始動スイッチ101及び停止スイッチ102を設ける構成としたが、始動スイッチ101のみを設ける構成とし、搬送モータ80を始動してから所定時間経過後に搬送モータ80を停止させる構成としてもよい。
【0071】
以上のように、本実施の形態では、搬送装置60が備える搬送ローラ64を回転駆動する搬送モータ80の回転を、搬送ローラ64の軸端部に設けた第1伝動機構810〜第3伝動機構830により伝達する構成としているので、伝動機構の配置が容易であると共に、メンテナンスを容易に実施することができるという側面を有する。
【0072】
また、本実施の形態では、前搬送台61aの回動支点(回動軸75)にアイドラを設けてあり、前搬送台61aを固定搬送台61bに対して回動させた場合であっても、第1伝動機構810から第3伝動機構830に至る第2伝動機構820の伝達経路における経路長は変化しない。このため、伝動系クラッチなどの追加の部品を用いることなく、固定搬送台61bの搬送ローラ64を回転させる第1伝動機構810より、前搬送台61aの搬送ローラ64を回転させる第3伝動機構830へ搬送モータ80の回転を伝達させることができる。
【0073】
また、本実施の形態では、左右フレーム62の内側側面に搬送モータ80の始動スイッチ101及び停止スイッチ102を設けているので、育苗トレイ4などの搬送物体の重量や汚れの影響を受けにくい。また、搬送方向の前端及び後端にて搬送モータ80のオン/オフを制御しているので、不必要な搬送を回避することができる。
【0074】
実施の形態2.
実施の形態1では、搬送装置60全体が前高後低に傾斜するようにブラケット67を介して支柱51,51に固設する構成としたが、搬送装置60を上下方向に回動可能に支持する構成としてもよい。
実施の形態2では、搬送装置60を上下方向に回動可能に支持した構成について説明を行う。なお、実施の形態2に係る田植機の構成のうち、実施の形態1と同様の構成については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略することとする。
【0075】
図8は実施の形態2に係る田植機を示す側面図である。実施の形態2に係る田植機は、例えば、乗用田植機であり、走行機体10、走行機体10の後部に位置し、苗を植え付ける植付部30、及び予備苗を生育させた育苗トレイ4を走行機体10の前部から後部へ搬送する搬送装置60を備える。
【0076】
搬送装置60は、2本の支柱51,51のうち、後側の支柱51に設けた略水平の回動軸54の回りに回動可能に支持されている。また、固定搬送台61bの最も後寄りの搬送ローラ64は、回動軸54の回りに、左右フレーム62,62により回転自在に支持されているものとする。
【0077】
上記の構成とすることにより、搬送装置60全体の上下方向の回動支点にアイドラを設けることができる。よって、搬送装置60全体を上下方向に回動させた場合であっても、搬送モータ80から第1伝動機構810に至る伝達経路上の経路長は変化せず、伝動系クラッチなどの追加の部品を用いることなく、搬送モータ80の回転を第1伝動機構810〜第3伝動機構830へ伝達させることができる。
【0078】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。