(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6196216
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】多重資金口座決済手段分析
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/02 20120101AFI20170904BHJP
G06Q 20/02 20120101ALI20170904BHJP
G06Q 20/22 20120101ALI20170904BHJP
【FI】
G06Q40/02
G06Q20/02
G06Q20/22 310
【請求項の数】20
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-524090(P2014-524090)
(86)(22)【出願日】2012年8月2日
(65)【公表番号】特表2014-522055(P2014-522055A)
(43)【公表日】2014年8月28日
(86)【国際出願番号】US2012049399
(87)【国際公開番号】WO2013019995
(87)【国際公開日】20130207
【審査請求日】2015年7月28日
(31)【優先権主張番号】13/198,310
(32)【優先日】2011年8月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514028237
【氏名又は名称】フェア・アイザック・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Fair Isaac Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125874
【弁理士】
【氏名又は名称】川端 純市
(72)【発明者】
【氏名】スコット・エム・ゾルディ
【審査官】
大野 朋也
(56)【参考文献】
【文献】
特表2006−518895(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0094767(US,A1)
【文献】
特表2009−541818(JP,A)
【文献】
米国特許第06658393(US,B1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0036770(US,A1)
【文献】
国際公開第2010/046659(WO,A2)
【文献】
特表2001−516107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ又は複数のプロセッサが、決済手段に対する過去のトランザクション行為及び前記決済手段と関連付けられる1つ又は複数の資金口座にまたがる過去のトランザクション行為を特徴づける決済手段プロファイルをセグメント化により生成するステップであって、当該決済手段プロファイルは、決済手段ID変数、資金口座横断的変数、及び資金口座サブプロファイルを格納する、決済手段プロファイルをセグメント化により生成するステップと、
前記1つ又は複数のプロセッサが、前記決済手段に対する現在のトランザクション行為及び前記決済手段と関連付けられる1つ又は複数の資金口座にまたがる現在のトランザクション行為を監視して、前記決済手段プロファイルに反する異常性を検出するステップと、
前記1つ又は複数のプロセッサが、前記決済手段に対する前記現在のトランザクション行為及び前記決済手段と関連付けられる1つ又は複数の資金口座にまたがる現在のトランザクション行為に対する不正スコアを生成して、前記不正スコアは前記異常性の定量化された程度に基づくステップと、
を備えるコンピュータ実装された方法。
【請求項2】
前記1つ又は複数のプロセッサが監視するステップは、前記決済手段と関連付けられる前記1つ又は複数の資金口座のうちの選択された資金口座が、前記決済手段に対する前記現在のトランザクション行為内及び前記決済手段と関連付けられる1つ又は複数の資金口座にまたがる現在のトランザクション行為内の金融トランザクションのために使用される1つ又は複数の確率分布を計算するステップ
を含む、請求項1記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項3】
前記1つ又は複数のプロセッサが監視するステップは、前記決済手段と関連付けられる前記1つ又は複数の資金口座のうちの選択された資金口座が金融トランザクションのために使用される確率分布に反する前記決済手段に対する前記現在のトランザクション行為及び前記決済手段と関連付けられる1つ又は複数の資金口座にまたがる前記現在のトランザクション行為を分析して、前記決済手段プロファイルにおける変数の外れ値を検出するステップを含む、
請求項1記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項4】
前記1つ又は複数のプロセッサが監視するステップは、前記決済手段プロファイル及び前記決済手段と関連付けられる1つ又は複数の資金口座に基づいて行為のお気に入りリストを計算して、前記行為のお気に入りリストは前記決済手段のユーザの行動の正常性を表すステップを含む、
請求項1記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項5】
前記1つ又は複数のプロセッサが監視するステップは、前記1つ又は複数の資金口座にまたがる前記決済手段のユーザの複数の行動における1つ又はそれ以上の類似性又は1つ又はそれ以上の差異を決定するステップを含む、
請求項1記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項6】
1つ又は複数のプロセッサが、決済手段に対する過去のトランザクション行為及び前記決済手段と関連付けられる1つ又は複数の資金口座にまたがる過去のトランザクション行為を監視するステップと、
前記1つ又は複数のプロセッサが、セグメント化により決済手段プロファイルを生成し、当該決済手段プロファイルは、決済手段に対する前記過去のトランザクション行為及び前記決済手段と関連付けられる1つ又は複数の資金口座にまたがる前記過去のトランザクション行為を特徴づける、ステップであって、当該決済手段プロファイルは、決済手段ID変数、資金口座横断的変数、及び資金口座サブプロファイルを格納する、セグメント化により決済手段プロファイルを生成するステップと、
前記1つ又は複数のプロセッサが、前記決済手段に対する現在のトランザクション行為及び前記決済手段と関連付けられる1つ又は複数の資金口座にまたがる現在のトランザクション行為を監視して、前記決済手段プロファイルに反する異常性を検出するステップと、
を備える、コンピュータ実装された方法。
【請求項7】
前記1つ又は複数のプロセッサが、前記決済手段に対する前記現在のトランザクション行為及び前記決済手段と関連付けられる1つ又は複数の資金口座にまたがる現在のトランザクション行為に対する不正スコアを生成し、前記不正スコアは前記異常性の定量化された程度に基づくステップ
をさらに備える、請求項6記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項8】
前記決済手段プロファイルは複数の変数を備え、当該複数の変数は、前記決済手段及び前記決済手段と関連付けられる前記1つ又は複数の資金口座を特徴づける、
請求項6記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項9】
前記複数の変数は、前記決済手段と関連付けられる金融及び非金融トランザクションと関連付けられる複数の決済手段識別子変数を含む、
請求項8記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項10】
前記複数の変数は、複数の資金口座横断的変数を含み、当該複数の資金口座横断的変数は、前記決済手段と関連付けられる前記1つ又は複数の資金口座の各々の、使用の複数のパターン及び複数の相互関係を特徴づける、
請求項9記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項11】
前記複数の変数は、複数の資金口座サブプロファイルを含み、当該複数の資金口座サブプロファイルは、前記1つ又は複数の資金口座のうちの選択された1つがトランザクションにおいて使用されるときの前記決済手段の使用の複数のパターンを特徴づける、
請求項10記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項12】
前記1つ又は複数のプロセッサが前記異常性を定量化し、前記定量化は前記複数の変数に基づくステップをさらに備える、
請求項11記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項13】
前記1つ又は複数のプロセッサが、前記決済手段に対する前記現在のトランザクション行為及び前記決済手段と関連付けられる1つ又は複数の資金口座にまたがる現在のトランザクション行為に対する不正スコアを生成し、前記不正スコアは前記異常性の程度の前記定量化に基づくステップをさらに備える、
請求項12記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項14】
前記1つ又は複数のプロセッサが、前記決済手段に対する現在のトランザクション行為及び前記決済手段と関連付けられる1つ又は複数の資金口座にまたがる現在のトランザクション行為の前記監視に基づいて、前記複数の変数を更新するステップをさらに備える、
請求項8記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項15】
1つ又は複数のプロセッサと、
複数の命令を具体的に表現する、実体的に具体化された機械読み取り可能な媒体と、
を備え、
当該複数の命令は、実行時に、前記1つ又は複数のプロセッサに、
決済手段に対する過去のトランザクション行為及び前記決済手段と関連付けられる1つ又は複数の資金口座にまたがる過去のトランザクション行為を特徴づける決済手段プロファイルをセグメント化により生成させて、ここで当該決済手段プロファイルは、決済手段ID変数、資金口座横断的変数、及び資金口座サブプロファイルを格納するものであり、
前記決済手段に対する現在のトランザクション行為及び前記決済手段と関連付けられる1つ又は複数の資金口座にまたがる現在のトランザクション行為を監視させて、前記決済手段プロファイルに反する異常性を検出させて、そして
前記決済手段に対する前記現在のトランザクション行為及び前記決済手段と関連付けられる1つ又は複数の資金口座にまたがる現在のトランザクション行為に対する不正スコアを生成させて、当該不正スコアは前記異常性の定量化された程度に基づく、
多重決済口座資金分析のためのシステム。
【請求項16】
前記複数の命令は、実行時に、前記1つ又は複数のプロセッサに、前記決済手段と関連付けられる前記1つ又は複数の資金口座のうちの選択された資金口座が、前記決済手段に対する前記現在のトランザクション行為内及び前記決済手段と関連付けられる1つ又は複数の資金口座にまたがる現在のトランザクション行為内の金融トランザクションのために使用される複数の確率分布を計算させる、
請求項15記載のシステム。
【請求項17】
前記複数の命令は、実行時に、前記1つ又は複数のプロセッサに、前記決済手段と関連付けられる前記1つ又は複数の資金口座のうちの選択された資金口座が金融トランザクションのために使用される前記複数の確率分布に反する前記決済手段に対する前記現在のトランザクション行為及び前記決済手段と関連付けられる1つ又は複数の資金口座にまたがる前記現在のトランザクション行為を分析させて、前記決済手段プロファイルにおける変数の外れ値を検出させる、
請求項16記載のシステム。
【請求項18】
前記複数の命令は、実行時に、前記1つ又は複数のプロセッサに、前記決済手段プロファイル及び前記決済手段と関連付けられる1つ又は複数の資金口座に基づいて、行為のお気に入りリストを計算させ、前記行為のお気に入りリストは、前記決済手段のユーザの行動の正常性を表す、
請求項15記載のシステム。
【請求項19】
前記複数の命令は、実行時に、前記1つ又は複数のプロセッサに、前記1つ又は複数の資金口座にまたがる前記決済手段のユーザの複数の行動における1つ又はそれ以上の類似性又は1つ又はそれ以上の差異を決定させる、
請求項15記載のシステム。
【請求項20】
前記決済手段に対する前記現在のトランザクション行為及び前記決済手段と関連付けられる1つ又は複数の資金口座にまたがる前記現在のトランザクション行為を表現するデータを受信する通信インタフェースをさらに備える、
請求項15記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に説明される主題は不正検出に関し、より具体的には、多重資金口座決済手段によるトランザクションに関連する不正を検出する分析システム及び分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金融決済の分野において、決済方法の統合は増加している。歴史的には、クレジットカード又はデビットカードは単一の資金口座に関連づけられる。複数の分析モデルは典型的には、暗示的又は明示的に、この「1枚のカード、1つのアカウント」の配列を用いて開発されている。今日、銀行などの金融機関は、クレジット、デビット、貯蓄、ポイント/マイレージ口座などの1つ又は複数の金融口座に関連付けられることが可能な、プラスチックカード又は電子的且つ無線の通信モバイル装置の形式の新しい決済装置を導入している。しかしながら、不正検出などの従来的な分析システムは未だに、単一口座カード用に設計及び最適化されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
資金口座はそのような装置を用いて個別の決済のために動的に選択されることが可能である。例えば、モバイル装置上で動作するアプリケーションは、当該装置が1つ又は複数の資金口座を通じて決済を開始することを可能にする。この、「1カード1口座」から「1カード複数口座」への変更は、現在の分析アプローチに対する考慮すべき課題をもたらすとともに、これらの決済手段及びそれに続く1つまたは複数の関連づけられる資金口座の、不正な行為からの保護を向上させるための興味深い新しい分析的な機会を提供する。カードの例において、多重資金決済手段は、異なる複数の口座に関連付けられた財布におけるいくつかのカードとして効果的に見られることが可能である。従来的な決済不正検出方法は、当該決済不正検出方法が単一の関連付けられた口座を仮定するため、不正を監視することによく適していないかもしれず、また一般的に、資金口座の選択及び複数の資金口座にまたがる複数のパターンを反映していない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書は、カード又はモバイル通信装置(以後、簡単に「モバイル装置」という。)などの金融トランザクション装置に適用される不正分析システム及び不正分析方法を提示し、当該金融トランザクション装置は1つ又は複数の資金口座へのアクセス手段として使用されて金融トランザクションを実行する。複数の使用パターンが他の複数の資金口座と関連付けられる通常の複数の分散内にあり、且つ、特定の資金口座の選択がこの特定の種類のトランザクションに対して通常である場合に、不正検出は、特定のシナリオ内において、すなわち特定の資金口座の使用において利益を得ることが可能である。例えば、カード所有者が常に、ある種類の複数のトランザクションを、デビット口座、クレジット口座、又はマイレージ/ポイント口座に分配し、そしてそのような行動において他の不正な行為パターンと連結される変化がある場合、この情報は、多重資金口座にまたがる複数のトランザクションのそのような分配をよく知らない詐欺師を示す場合がある。
【0005】
第三者不正(漏洩/奪取)のイベントに加えて、多重資金決済手段分析はまた、第一者不正を監視及び検出することが可能であり、顧客管理を可能にする。従って、多重資金決済手段のためのシステムは、一枚のカードの監視を介して、顧客の一連の資金口座に対して著しくより広い視点を提供する。本システム及び方法は、貯金口座からの複数の要求支払い預金口座(Demand Deposit Account、DDA)/現在のアカウントの資金供給の可視性を可能にし、その後の多額のデビットトランザクションを見ることを可能にし、このことはDDA口座への任意の新たに転送されるお金の意味の理解を助ける。本システム及び方法はまた、突然の変化を含む、複数の資金口座にまたがる利用の増加を提供することが可能であり、ここで、当該突然の変化は、より大きなトランザクションクレジットリスク、又はいくつかの場合においては1つ又は複数の口座にまたがる第一者不正と関連付けられるいかさま行為に対する早期の警戒を示し得る。これらの特徴は新規な決済手段プロファイルを通して可能となり、当該新規な決済手段プロファイルは以下に詳細に説明される。
【0006】
一態様において、コンピュータ実装された方法は、1つ又は複数のプロセッサを使用して、決済手段に対する過去の行為及び決済手段と関連付けられる1つ又は複数の資金口座にまたがる過去の行為を特徴づける決済手段プロファイルを生成するステップと、決済手段に対する現在の行為及び決済手段と関連付けられる1つ又は複数の資金口座にまたがる現在の行為を監視して、決済手段プロファイルに反する異常性を検出するステップと、の複数のステップを含む。本方法はさらに、決済手段に対する現在の行為及び決済手段と関連付けられる1つ又は複数の資金口座にまたがる現在の行為に対する不正スコアを生成して、当該不正スコアは異常性の定量化された程度に基づくステップを含む。
【0007】
もう1つの態様において、コンピュータ実装された方法は、1つ又は複数のプロセッサを使用して、決済手段に対する過去の行為及び決済手段と関連付けられる1つ又は複数の資金口座にまたがる過去の行為を監視するステップと、決済手段プロファイルを生成し、当該決済手段プロファイルは、決済手段に対する過去の行為及び決済手段と関連付けられる1つ又は複数の資金口座にまたがる過去の行為を特徴づけるステップと、決済手段に対する現在の行為及び決済手段と関連付けられる1つ又は複数の資金口座にまたがる現在の行為を監視して、決済手段プロファイルに反する異常性を検出するステップと、の複数のステップを含む。当該決済手段プロファイルは複数の変数を備え、当該複数の変数は、決済手段及び当該決済手段と関連付けられる1つ又は複数の資金口座を特徴づける。
【0008】
さらにもう1つの態様において、多重決済口座資金分析のためのシステムは、1つ又は複数のプロセッサと、当該1つ又は複数のプロセッサによって実行可能な複数の命令を具体的に表現する、実体的に具体化された機械読み取り可能な媒体とを含む。当該複数の命令は、1つ又は複数のプロセッサに、決済手段に対する過去の行為及び決済手段と関連付けられる1つ又は複数の資金口座にまたがる過去の行為を特徴づける決済手段プロファイルを生成させて、決済手段に対する現在の行為及び決済手段と関連付けられる1つ又は複数の資金口座にまたがる現在の行為を監視させて、決済手段プロファイルに反する異常性を検出させて、決済手段に対する現在の行為及び決済手段と関連付けられる1つ又は複数の資金口座にまたがる現在の行為に対する不正スコアを生成させて、当該不正スコアは異常性の定量化された程度に基づく。
【0009】
コンピュータ読み込み可能な媒体上に永久的に格納されるコンピュータ実行可能な複数の命令であって、コンピュータによる実行時にコンピュータに複数の動作を実行させる複数の命令を備えた複数の製造品はまた、本明細書において記載される。同様に、プロセッサ及び当該プロセッサに接続されたメモリを含んでもよい複数のコンピュータシステムはまた記載される。プロセッサに1つ又は複数の動作を実行させる1つ又は複数のプログラムを一時的に又は永久的に格納してもよいメモリは本明細書において記載される。
【0010】
本明細書は、複数の決済カードに対する多重資金決済手段分析に焦点を合わせることとなるが、同一の複数の概念は、1つ又はそれ以上の無線通信チャンネルを介して通信する複数のモバイル装置などの、他の複数の多重資金決済手段に等しく適用可能である。
【0011】
本明細書に説明される主題の1つ又は複数の変形例の詳細は、添付の図面において説明され、また以下に説明される。本明細書において説明される主題の他の複数の特徴及び複数の利点は、明細書、図面及び特許請求の範囲から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】DDA口座によって資金供給される複数のトランザクションのみを見た場合の「境界を越える高額のトランザクションの比率」vs資金口座に関わらず全てにわたるトランザクション、の変数分布の表示である。
【
図3】行動のソートされたリストの表示であり、ここで、頻繁に訪問される複数の商人は、お気に入りの決定における効率性を可能にする再帰的近似法を用いてトランザクションプロファイル内で決定される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
種々の図面における類似の参照符号は、類似の構成要素を示す。
【0014】
本明細書は、カード、モバイル装置、その他の金融トランザクション装置などの決済手段に対するコンピュータ実装された不正分析システム及び不正分析方法を説明する。当該決済手段は、多重資金口座にアクセスして金融トランザクションを実行するために使用される。
【0016】
多重口座と関連付けられる決済手段を効率的に監視するために、決済手段のトランザクション行動は、決済手段に対して開始されるトランザクション量全体と、異なる複数の資金口座に関連付けられるそのような複数のトランザクションとの間でセグメント化される。
【0017】
図1は、多重資金決済手段(PID)プロファイル(multi−funding payment instrument (PID) profile)の例を示し、当該プロファイルは、決済手段の使用全体に関連する複数のPID変数と、異なる複数の資金口座内の決済手段によって開始されるトランザクション行為を追跡する個別の複数のプロファイルセグメントとを含む。プロファイル内に含まれる複数の変数は、複数の資金口座にまたがる決済手段全体と、孤立した資金口座に特有の複数の行動変数と関連付けられる。これは、決済手段によって行われる行為の全体像を見ることを可能にして、また、異なる複数のトランザクションのための複数の資金口座及び複数の行動パターンの選択を包含する。
【0018】
PIDプロファイルは、通貨構造内の決済手段に対する行為の追跡を可能にし、また、決済手段に関する1つ又は複数の資金口座にまたがる行為を特徴づけることも可能にする。顧客は典型的には、例えば、クレジットによる電子機器、デビットによる食品雑貨類、DDAによるデイケア料金、及びポイントによる飲食店というように、異なる複数の種類のトランザクションのために異なる複数の資金口座を使用する。不正の特徴づけは、トランザクションの種類、曜日、給与の周期等と関連付けられる、異なる複数の資金口座の選択と関連付けられる顧客の行動を正確に要約する能力を要求し、このことは決済手段の合法的な所有者以外の何者かの人物によるカードの使用の迅速な検出に役立つことが可能である。PIDプロファイルは、複数のPID変数、複数の資金口座横断的変数、及び複数の資金口座サブプロファイルを使用するアーキテクチャの作成を可能にし、これらの各々についてはさらに詳細後述される。
【0019】
複数のPID変数:これらは決済装置と関連付けられる複数の金融及び非金融トランザクションと関連付けられる種々の変数であることが可能である。これらの変数は、選択される資金口座から独立した決済手段(すなわち、決済カード空間におけるカード)と関連付けられる全てのトランザクション行為の全体的な視点を与える。これらの変数は、決済手段と関連付けられる典型的な行動を追跡して、不正を示す行動の複数の変化を検出する。
【0020】
資金口座横断的変数:これらの変数は、決済手段によってアクセス可能な複数の資金口座にまたがる使用の複数のパターンに対する可視性を提供する。一例として、複数の変数は、後のデビットカードトランザクションに続いてATMにおいてDDA口座に預金された資金などの論理的に関連付けられる複数のトランザクションを追跡することができる。これらの変数はまた、最近の複数のトランザクションの履歴に対する資金選択の履歴に基づいて特定の種類のトランザクションのために資金口座が使用される尤度の決定を含む。
【0021】
資金口座サブプロファイル:PIDプロファイルのこれらのセグメントは、特定の資金口座がトランザクションにおいて使用されるときの決済手段と関連付けられる複数の使用パターンに完全に焦点を合わせられている。これは、商人、ATM、国等の「お気に入りリスト」などの技術を使用する、選択された資金口座に対する複数のトランザクションの正常性の監視を含む。それはまた、資金口座プロファイルセグメント内のトランザクション行為における複数の外れ値を検出するための複数の変数分布の変位値の追跡を含む。
【0022】
このアーキテクチャは、1つのプロファイルにおいて、資金口座から独立した決済手段に対するトランザクション行為の要約を可能にし、1つ又は複数の資金口座のみに関連する行為を要約し、また、複数の資金口座にまたがる使用の複数のパターンを要約する。これは、1つ又は複数の資金口座と関連付けられる情報に接続する、接続された決定アプローチを提供する。1つより多くの資金口座へのそのようなアクセスを有することは、不正検出のために顧客の財布をプロファイルする能力を有することに似ている。これは、複数の資金口座の選択と関連付けられる、リアルタイムでの行動データ及びトランザクションデータの一緒の非常に改善された使用を提供し、決済手段に対する不正検出決定を改善する。それはまた、複数の資金口座のうちの1つのみに対して可能性がある不正が検出された場合に、全ての資金口座に対する不正を停止させる機会を許す。次に、複数の資金口座プロファイルセグメントの管理について考察する。
【0023】
資金口座プロファイルセグメントの管理
【0024】
図1に示すように、最大N個の資金口座プロファイルセグメントがある。PIDプロファイルと関連付けられた有限のメモリ空間が与えられると、能動的に監視される資金口座の数を管理する方法は必要とされる。1つの実施例において、プロファイルはそれが資金口座のおよそ最大数の要求を満たすようなサイズにすることが可能である。しかしながらこれは実施困難であり、また、顧客がN個を超える資金口座を有する場合に複数のプロファイルセグメントを管理する方法を必要とする。
【0025】
好ましい例示の実施例において、プロファイルセグメント管理は再利用アルゴリズムによって取り扱い可能である。頻度の基準値は資金口座が使用される頻度を示す。低い頻度の複数の資金口座(休眠又は閉じられたものを含む)は、新しい複数の資金口座のために再利用可能である。各資金口座の頻度は、次式のような等式に従って、決済手段に対するトランザクション毎に再計算可能である。
【0027】
ここで、f
j及びf
j−1は、j番目及び(j−1)番目のトランザクションの後の特定の資金口座に対する減衰した頻度の値であり、αはゼロと1との間の値であり現在の頻度を減らすために使用される。また、β
jは、j番目のトランザクションが特定の資金口座を含んでいなかったときにゼロであり、又は、j番目のトランザクションが特定の資金口座を含んでいたときに1である。
【0028】
各資金口座に対する頻度の基準に基づくと、新しい資金口座が現れる場合、頻度の値は、資金口座プロファイルセグメントが非使用の特定のしきい値ε、ここでf<ε、に一致するかを決定するために使用される。再利用しきい値が一致するとき、そのような特定の資金口座プロファイルセグメントは初期化され、また、新しい資金口座はPIDプロファイルにおけるそのようなプロファイルセグメントを取得する。これは、全ての資金口座プロファイルセグメントを含むとともに資金口座がもはや決済手段に関連付けられていない場合に複数の資金口座プロファイルセグメントを再利用する、限られた能力に取り組む。
【0029】
トランザクションが開始するとき、第1の確認は、資金口座がN個の管理された資金口座プロファイルセグメントに存在するかを決定することである。もしそうであるならば、分析は、複数のPID変数、複数の資金口座横断的変数、及び特定の資金口座の複数の変数を更新する。資金口座が存在せず、N個のスロットの全ては使用されてはいない場合、スロットは初期化されて更新される。資金口座が存在せず、N個のスロットの全てが使用され、且つ、いずれのスロットもしきい値f<εに対して再利用が可能でない場合、複数のPIDプロファイル変数のみは更新され、異なるモデルスコア計算はこの動作使用事例のために使用されることとなる。
【0031】
決済手段スコアの計算における第1のステップは、資金口座から独立した決済手段と関連付けられる特定の複数の変数を生成することである。以下の複数の章において、複数の資金口座と、関連づけられる分析との間の複数のトランザクションのセグメントについて説明される。しかしながら、任意の決済手段スコアにおいて、決済に資金供給するために使用される資金口座から独立した決済手段の使用を監視している複数の変数を有することはまた重要である。一例として、トランザクションがATMにおいて行われてデビット資金口座を使用してお金を受け取る場合、5分後に、購入がクレジット資金口座を使用して行われ、このことは、複数の資金口座にまたがるトランザクション行動を理解するために、また各トランザクションと関連付けられるこの特定の例の地理的な位置情報において、大きな価値がある。
【0032】
決済カード(又はモバイル装置)が1つ又は複数の資金口座へのアクセス装置となる場合、不正の決定において利用される複数のパターンは、複数の資金口座にまたがるパターンを外れる複数のアクセスを含み、また、特定の資金口座と関連付けられるパターンを外れて且つリスクを伴う行動を含む。決済手段トランザクションプロファイル内の提案された複数の資金口座プロファイルセグメントを使用する場合に適用可能な幅広い種類の分析手法があるが、4つの好ましい分析手法について以下に説明する。
【0034】
不正な行動を示す可能性がある決済手段の使用における複数のパターンにおける複数のシフトを決定することは、決済手段の現在のトランザクション及びトランザクション履歴の詳細に基づいて使用されている資金口座の確率を決定することを必要とする。決済に資金を供給するために選択されている特定の資金口座の確率を推定する自然な方法は、ベイズの定理による。
【数2】
【0035】
上記等式は、トランザクション額又は1週間等の時間枠にわたるトランザクションの平均頻度等のトランザクションの特定の属性又は関連付けられた複数の変数に基づき、トランザクションのために特定の資金口座が選択される確率を表す。資金口座が選択される確率は、以下の3つの数量によって表現される:
【数3】
【0036】
上記数量は、特定の資金口座のトランザクション履歴内の変数量、例えば7ドルのトランザクション額を見る確率である。
【数4】
【0037】
上記数量は、特定の資金口座がトランザクションの詳細から独立して選択される決済手段を使用して行われる、全てのトランザクションにわたる確率である。
【数5】
【0038】
上記数量は、資金口座から独立した決済手段に対する全ての最近のトランザクションにわたるトランザクション額、例えば7ドル、を見る確率である。
【0039】
これらの3つの数量は、上記3つの確率が直接的に計算可能であるように決済手段プロファイルにおける複数のトランザクションの小さな履歴を保持し続けることで近似されるか、再帰的な近似方法を用いて計算可能である。ベイズ手法の価値は、異なる複数の種類のトランザクションに対する特定の資金口座の使用の確率が推定可能であることである。次いで、高かろうと低かろうと、確率は、トランザクションが不正に基づいていることが尤もらしいか、顧客が現行のトランザクションのためにこの特定の資金口座を選択していたことが尤もらしいかを、それらの過去のトランザクション履歴に基づいて決定するためのモデルにおける他の変数とともに使用可能である。
【0040】
上記の複数の等式において使用可能である複数の例示の変数は、以下を含む:
【0041】
トランザクション額商人カテゴリコード(Merchant category codes、MCC)又はMCCグルーピング
【0046】
その他の変数はまた使用可能である。この手法は、選択された資金口座が低い確率であるかを最近の複数のトランザクションに基づいて決定するための複数の予測のセットを生成する。低い確率は異常のある使用を示す。
【0048】
ひとたび選択されている特定の資金口座の確率が推定されると、資金口座及びさらに決済手段分布全体に従って、トランザクション及び関連付けられる複数のプロファイル変数が資金口座に対する複数のトランザクションのセット内の複数の外れ値であるか否かが理解されることが必要である。
【0049】
実時間における資金口座に対する複数のトランザクションと関連付けられる複数のプロファイル変数の複数の外れ値の決定は、トランザクションがそのような選択された資金口座に対する複数のトランザクションの履歴に基づいて外れ値であると決定されることが可能であるか否かと組み合わされて、選択された資金口座における変化の組み合わされたリスクが決定されることを可能にする。
【0050】
図2は、DDA口座によって資金供給される複数のトランザクションのみを見た場合の「境界を越える高額のトランザクションの比率」vs資金口座に関わらず全てにわたるトランザクション、の変数分布の表示である。この分析は、何が複数のDDA口座における外れ値であろうがしかし複数の資金口座にまたがる全体の外れ値でないであろうことの表示を可能にし、また、典型的な資金口座選択の変化と組み合わされると、それは正常性の確立を助ける可能性がある。
【0051】
複数の外れ値を決定するために、複数の変数の複数の値の分布における外れ値点は定量化される必要があり、ここで、変数がそのような点を超えるとき当該変数は外れ値はずれ値であると考えられるであろう。いくつかの実施例において、分布の95%分位値は、値が外れ値であると考えられるしきい値を決定するために使用される。以下の公式
は、全ての独立変数にわたる簡単な無条件の再スケーリングとして使用される。
【数6】
【0052】
ここで、
【数7】
はそれぞれ、独立プロファイル変数x
iの計算された分布の位値及びスケールパラメータである。スケール値は、分析を複数の極端な外れ値から保護するための、0とある定数Cとの間で有界である。
【0053】
これらの分布が実時間で計算され、決済手段全体及び特定の資金口座内の両方の各トランザクションと調整することが重要である。開示された方法は、顧客自身のデータを使用したスケーリングパラメータ
【数8】
の複数の実時間推定の結果である。複数の変数のオンライン百分位値推定量を計算するために、いくつかの手法が以下の通り使用可能である。
【0054】
所与の変数xに対して、r番目の百分位値
【数9】
は入ってくるxの観測のときにオンザフライで計算される。形式的には、オンライン推定手法は以下のように反復的に働く。反復は、M個の連続的なイベントを観測することを含み、ここで、M≧1は自由パラメータである。n番目の反復において、
【数10】
の推定値は更新される;当該推定値はn番目の反復において
【数11】
で記される。n番目の反復におけるi番目の観測は
【数12】
として記され、ここでiは[1,M]内にある。n番目の反復において、密度推定値f
nは以下の等式を用いてr番目の百分位値における変数xに対して計算される。
【数13】
【0055】
ここで、1{・}は指示関数であり、当該指示関数は波括弧内の条件が満たされるときは1の値をとり、それ以外のときは0の値をとる。級数w
n及びc
nは、ある複数の収束基準を満た必要がある。他の多くの中で、1つの選択はw
n=1/n及びc
n=1/√nである。
【0056】
f
nが計算された後、
【数14】
は以下のように得られる。
【数15】
【0057】
ここで、
【数16】
及びf
0はf
nの初期値である。
【0058】
いくつかの実施例において、w
nは、イベント遅延とは対照的に時間遅延されてもよい。w
nの時間遅延されたバージョンは、いくつかの不正アプリケーションに対して、より適切である場合がある。また、上記の複数の推定値は、新しい資金口座プロファイルセグメントが付加される場合に再初期化されるであろう。これは、新しい複数の資金口座が決済手段と関連付けられる場合に、複数の推定値が適切に更新されて計算されることを可能にする。
【0059】
自己較正分析手法の利用は従って、複数のx
iプロファイル変数の各々と関連付けられるθ
i,1及びθ
i,2(ここで複数の変数のスケーリングをするために2つのパラメータが仮定される)の複数の値の再帰的な推定値を必要とする。これらのθ
i,1及びθ
i,2は、全てのトランザクションに対して且つ特定の複数の資金口座内全体にわたって両方計算される。この場面において、複数の分位値の複数の推定値に基づいて、選択された資金口座及び決済手段全体の両方に対して複数のプロファイル変数の複数の外れ値を決定してこれを不正スコアの決定において使用することができる。それらの複数の外れ値を計算するために使用可能な複数の変数の例は以下の変数を含む:
a.トランザクション額
b.1日の平均トランザクション額に対するトランザクション額の比率
c.カードを介さない(Card Not Present、CNP)トランザクション額
d.1日の平均CNPトランザクション額に対するCNPトランザクション額の比率
e.境界を越える(Cross Border、CB)トランザクション額
f.1日の平均CBトランザクション額に対するCBトランザクション額の比率
g.1週間のトランザクション額に対する1日のトランザクション額の比率
h.1週間のカードを介さないトランザクション額に対する1日のカードを介さないトランザクション額の比率
i.1週間の境界を越えるトランザクション額に対する1日の境界を越えるトランザクション額の比率
j.トランザクションの頻度
k.国際トランザクションの頻度
l.トランザクションのカードを介さない頻度
m.トランザクションの境界を越える頻度
n.その他
【0061】
トランザクション履歴内の「お気に入り」の決定は、決済手段に対する不正を検出するもう1つの手法である。複数の顧客は、どのように彼らがトランザクションに資金を供給することを決定するかに関わらず、どの給油所、ATM、食料品店、及び飲食店を彼らが頻繁に訪れるかという観点において、彼らの好みを頻繁に変更することはないであろう。通常性は、トランザクションが不正であるか非不正であるか否かの決定の重要な要素である。資金口座トランザクション履歴か、もう1つの資金口座のトランザクション履歴内においてパターンを外れて起こる、しかし頻繁に訪れる商人におけるトランザクションは、正常性を確立するために重要であることが可能である。複数の不正アプリケーション内において、特定の商人又はATMがお気に入りであるかを決定するために過去の複数の顧客トランザクションのデータベースにアクセスすることは実用的ではない。従って、複数の再帰的な方法は、複数の顧客トランザクションが稼働している分析モデルを通過するときに使用されて実時間でお気に入りを計算する。
【0062】
図示の目的ために、以下の行動のソートされたリストの例を考える。
図3は頻度商人IDリストの例を示す。頻度で順序づけられたリストは、カード所有者の頻繁に出費する行動と関連付けられる複数の商人IDにわたって管理される。
【0063】
商人IDテーブル及び頻度テーブルは共通のインデックスを介して対にされる。
図3に示す複数のテーブルから、現行のトランザクションにおける商人がテーブル及びそのランキングにあるか否かが決定可能である。お気に入りは典型的には、テーブルの最高で3番目から半分の範囲内にランク付けられるように定義される。最下位にランク付けられた複数の商人IDは、再帰的アルゴリズムの説明において以下に与えられる複数の理由により、「お気に入り」であるとは考えられない。一例として、商人Mksm01029は、位値#13にインデックスが付けられているが、2.3の発生の頻度を有し、また、2番目に最も頻度の高いお気に入り商人IDである。
【0064】
動作上、各新しいトランザクションはモデルによって処理されるとき、商人IDテーブルは、現行のトランザクションにおける商人IDがリスト内にあるか否かを決定するために問い合わせられ、そして、もしそうならば商人IDのランクがランキングテーブルから読み出される。次いで、種々の変数は、商人IDがお気に入りであると見なされるか否かに基づいて計算されて、複数のお気に入りは、正常性及びトランザクションのより低いリスクを確立し、続いて、関連付けられるトランザクションプロファイルにおけるより低いリスクを確立する。ひとたびクエリが完了すると、複数のテーブルは以下のように更新される。
【0065】
頻度テーブルにおける全ての頻度は、乗法因子β、0<β<1、によって減衰される。
【0066】
次いで、商人IDテーブル及び頻度テーブルは以下のように更新される:
a.現在の商人IDが商人IDテーブルにない場合、最も頻度の低い商人IDの頻度が(頻度テーブルに基づいて)しきい値δ、0<δ<1/(1−β)、より低いとき、最も頻度の低い商人IDは、現在の商人IDと置き換えられる(注:しきい値を決定する多数の他の実施例がある)。置き換えられた場合、現在の商人IDの頻度は、αに初期化される。
b.現在の商人IDが既に商人IDテーブルにある場合、その頻度はλだけ増加される。
【0067】
最後に、ランキングテーブルは結果的に更新されて、当該更新に基づく複数の商人IDのランキングの任意の変化を反映する。
【0068】
上述の頻度更新アルゴリズムから、テーブルのサイズはn(
図3の例では14が使用される)であり、お気に入りの定義は、典型的には(1/3)nと(1/2)nとの間の、整数分数であるため、β、δ、及びλが調節可能なパラメータであることが見られる。
【0069】
決済手段及びその複数の資金口座と関連付けられて監視可能である複数のお気に入りエンティティの種類は、商人ID、ATM端末ID、国コード、及びCNP商人IDを含む。複数のトランザクションが計算されるとき、お気に入りは、選択された資金口座、他の複数の資金口座、及び全体と関連付けられて調査される。これは、トランザクションが顧客と関連付けられる「お気に入り」の観点において未だ正常である、パターンを外れた資金口座の選択の適切な取り扱いを可能にする。
【0070】
手法4:境界を越える口座ダイナミクス
【0071】
興味のもう1つの領域は、複数の資金口座にまたがる複数の行動における類似性又は複数の差異を監視することである。一例として、トランザクション行為が全ての資金口座において増加するとき、これは、出費能力の一貫した増加を示す可能性があり、また、全ての資金口座内で行われて選択された複数の資金口座及びお気に入りに対するパターンにある場合、トランザクション行為は通常であり得る。その一方で、パターンを外れた複数のトランザクション及び全て資金口座にまたがる量的変化があるとき、これは決済手段の乗っ取り又は第一者不正に関連している可能性がある。従って、複数の資金口座にまたがる量的変化と複数のトランザクションにおける正常性とは追跡可能であり、また、出費の増加全体に対して第一次的に責任がある1つ又は複数の資金口座は決定可能である。
【0072】
同様に、1つの資金口座における行為の増加であって他の行為の減少と関連付けられた増加は、ポイント/報酬又は他の市場力学に基づいてクレジット、デビット、又はDDAなどの特定の資金口座を使用する動機を示し得る。従って、複数の資金口座における量(volume)又は売上高(dollar volume)の変化の状況及びお気に入りへの関係を理解することは、決済手段と関連付けられた真の不正リスクのより良い評価を助ける。
【0073】
最後に、決済手段分析解決的方法の目的は決済手段に対する単一のスコアを生成することであるが、本システム及び方法は個別の資金口座スコアの複数のセットを生成することが可能である。これらのセットは、サイロ方法(silo fashion)で資金口座をスコアリングする複数のミニモデルであることが可能である。これは、資金口座スコアが、全ての決済手段スコアと比較されて、全ての決済手段内に合併されて、そして全ての決済手段スコアを用いたルール戦略において使用されることを可能にすることができる。
【0074】
本明細書に説明した主題の種々の実施例は、デジタル電子回路、集積回路、特別に設計された複数のASIC(アプリケーション特定用途集積回路)、コンピュータハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、及び/又はそれらの組み合わせにおいて実現されてもよい。これらの種々の実施例は、少なくとも1つのプログラマブルプロセッサを含むプログラマブルシステム上で実行可能な及び/又は解釈可能な1つ又は複数のコンピュータプログラムにおける実施例を含んでも良く、ここで、当該少なくとも1つのプログラマブルプロセッサは、特定用途又は一般用途のものでもよく、ストレージシステム、少なくとも1つの入力装置、及び少なくとも出力装置からデータ及び複数の命令を受信するように接続されてもよく、また、ストレージシステム、少なくとも1つの入力装置、及び少なくとも出力装置へデータ及び複数の命令を送信するように接続されてもよい。
【0075】
(複数のプログラム、ソフトウェア、複数のソフトウェアアプリケーション、又はコードとしても知られる)これらのコンピュータプログラムは、プログラマブルプロセッサのための複数の機械語命令を含み、また、高級手続き型プログラミング言語及び/又はオブジェクト指向プログラミング言語、及び/又はアセンブリ言語/機械語で実施されてもよい。本明細書に用いられるように、用語「機械読み取り可能な媒体」は、複数の機械語命令及び/又はデータをプログラマブルプロセッサに提供するために使用される任意のコンピュータプログラム製品、機器、及び/又は装置(例えば、磁気ディスク、光ディスク、メモリ、プログラム可能論理回路(PLDs))を示し、ここで、当該プログラマブルプロセッサは複数の機械語命令を機械読み取り可能な信号として受信する機械読み取り可能な媒体を含む。用語「機械読み取り可能な信号」は、複数の機械語命令及び/又はデータをプログラマブルプロセッサに提供するために使用される任意の信号を示す。
【0076】
ユーザとのインタラクションを提供するために、本明細書に説明される主題は、情報をユーザに表示する表示装置(例えば、CRT(陰極線管)モニタ又はLCD(液晶ディスプレイ)モニタ)と、キーボード及びポインティングデバイスであってこれらによってユーザが入力をコンピュータに提供することを可能にするキーボード及びポインティングデバイス(例えばマウス又はトラックボール)とを有するコンピュータ上で実施されてもよい。他の種類の複数の装置もまた、ユーザとのインタラクションを提供するために使用されてもよい。例えば、ユーザに提供されるフィードバックは感覚フィードバック(例えば、視覚フィードバック、聴覚フィードバック、又は触覚フィードバック)の任意の形式であってもよい。また、ユーザからの入力は、音響入力、音声入力、又は触覚入力を含む任意の形式で受信されてもよい。
【0077】
本明細書に説明される主題は、バックエンド構成要素(例えばデータサーバ)を含むコンピュータシステムにおいて、又はミドルウェア構成要素(例えば、アプリケーションサーバ)を含むコンピュータシステムにおいて、又はフロントエンド構成要素(例えば、グラフィカルユーザインタフェースを有するクライアントコンピュータ、又はウェブブラウザであってユーザがそれを介して本明細書に説明された主題の実施例とインタラクトすることができるウェブブラウザ)を含むコンピュータシステムにおいて、又はそのようなバックエンド構成要素、ミドルウェア構成要素、又はフロントエンド構成要素の任意の組み合わせにおいて実施されてもよい。本システムの複数の構成要素は、決済手段に関連する行為を表現するデータ、又は決済手段に関連する1つ若しくは複数の資金口座を表現するデータを受信する、デジタルデータ通信(例えば、通信ネットワーク)の任意の形式若しくは媒体、又は通信インタフェースによって相互に接続されてもよい。複数の通信ネットワークの複数の例はローカルエリアネットワーク(「LAN」)、ワイドエリアネットワーク(「WAN」)、及びインターネットを含む。
【0078】
コンピューティングシステムは複数のクライアント及び複数のサーバを含んでもよい。クライアント及びサーバは一般的に互いに遠隔し、典型的には通信ネットワークを介し情報を交換する。クライアントとサーバとの関係は、それぞれのコンピュータ上で実行して互いにクライアント−サーバ関係を有するコンピュータプログラムの長所によって生じる。
【0079】
少数の変形例については詳細上述したが、他の複数の変更は可能である。例えば、添付の図面において図示して且つ本明細書において説明した論理の流れ(ロジックフロー)は、所望の結果を達成するために、特別な示された順序又は逐次的順序を必要としない。他の複数の実施形態は、以下の特許請求の範囲内であることができる。