【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、日本人のスタチンを服用した高脂血症患者における高純度EPA製剤の長期投与による冠動脈イベントの発症抑制効果(1次予防および2次予防)を検討した大規模無作為化比較試験(JELIS:Japan EPA Intervention Study)により得られた試験データを解析したところ、高純度EPA製剤を服用した患者では、糖尿病新規発症率が有意に上昇していないことを初めて見出し、スタチン服用患者においてイコサペント酸、その製薬学上許容される塩およびエステルからなる群から選択される少なくとも1つ(単に「EPA」という場合がある。特に断りがない場合において以下同じ。)、特にイコサペント酸エチルエステル(以下「EPA−E」という場合がある。)を投与すると、糖尿病新規発症率を低減することができることを知得した。また、本発明者らは、培養骨格筋細胞を用いたin vitroの試験によって、スタチンは骨格筋細胞の糖取込みを減少させるが、EPAはスタチンによる骨格筋細胞の糖取込みの減少を抑制することを知見し、EPAはスタチンによる血糖値上昇を抑制することができることを知得した。
【0010】
すなわち、本発明は以下の医薬組成物を提供する。
(1)イコサペント酸、その製薬学上許容しうる塩およびエステルからなる群から選択される少なくとも1つを有効成分として含有する、スタチン(HMG−CoA RI)服用による糖尿病新規発症率を低減するための医薬組成物。
(2)血清HDLコレステロール濃度40mg/dL未満の患者に投与される、上記(1)に記載の医薬組成物。
(3)低HDLコレステロール血症患者に投与される、上記(1)に記載の医薬組成物。
(4)血清トリグリセライド濃度150mg/dL以上の患者に投与される、上記(2)または(3)に記載の医薬組成物。
(5)高トリグリセライド血症患者に投与される、上記(2)または(3)に記載の医薬組成物。
(6)空腹時血糖値126mg/dL未満のHMG−CoA RI服用患者に投与される、上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の医薬組成物。
(7)空腹時血糖値110mg/dL以上126mg/dL未満のHMG−CoA RI服用患者に投与される、上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の医薬組成物。
(8)空腹時血糖値100mg/dL以上110mg/dL未満のHMG−CoA RI服用患者に投与される、上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の医薬組成物。
(9)耐糖能異常または肥満を有するHMG−CoA RI服用患者に投与される、上記(1)乃至(8)のいずれかに記載の医薬組成物。
(10)前記イコサペント酸、その製薬学上許容しうる塩およびエステルからなる群から選択される少なくとも1つがイコサペント酸エチルエステルまたはイコサペント酸(遊離酸)である、上記(1)乃至(9)のいずれかに記載の医薬組成物。
【0011】
(11)イコサペント酸、その製薬学上許容しうる塩およびエステルからなる群から選択される少なくとも1つを有効成分として含有する、スタチン(HMG−CoA RI)服用による血糖値上昇を抑制するための医薬組成物。
(12)血清HDLコレステロール濃度40mg/dL未満の患者に投与される、上記(11)に記載の医薬組成物。
(13)低HDLコレステロール血症患者に投与される、上記(11)に記載の医薬組成物。
(14)血清トリグリセライド濃度150mg/dL以上の患者に投与される、上記(12)または(13)に記載の医薬組成物。
(15)高トリグリセライド血症患者に投与される、上記(12)または(13)に記載の医薬組成物。
(16)空腹時血糖値126mg/dL未満のHMG−CoA RI服用患者に投与される、上記(11)乃至(15)のいずれかに記載の医薬組成物。
(17)空腹時血糖値110mg/dL以上126mg/dL未満のHMG−CoA RI服用患者に投与される、上記(11)乃至(16)のいずれかに記載の医薬組成物。
(18)空腹時血糖値100mg/dL以上110mg/dL未満のHMG−CoA RI服用患者に投与される、上記(11)乃至(16)のいずれかに記載の医薬組成物。
(19)耐糖能異常または肥満を有するHMG−CoA RI服用患者に投与される、上記(11)乃至(18)のいずれかに記載の医薬組成物。
(20)前記イコサペント酸、その製薬学上許容しうる塩およびエステルからなる群から選択される少なくとも1つがイコサペント酸エチルエステルまたはイコサペント酸(遊離酸)である、上記(11)乃至(19)のいずれかに記載の医薬組成物。
【0012】
(21)全脂肪酸およびその誘導体中のEPA含量比が96.5質量%以上である、上記(1)乃至(20)のいずれかに記載の医薬組成物。
(22)EPA0.9g/日〜2.7g/日で経口投与することを特徴とする、上記(1)乃至(21)のいずれかに記載の医薬組成物。
(23)EPAを2年以上投与する、上記(1)乃至(22)のいずれかに記載の医薬組成物。
(24)HMG−CoA RIと併用する、上記(1)乃至(23)のいずれかに記載の医薬組成物。
(25)EPAとHMG−CoA RIとを含有する、上記(1)乃至(24)のいずれかに記載の医薬組成物。
(26)食事療法と併用する、上記(1)乃至(25)のいずれかに記載の医薬組成物。
(27)さらに、スタチン(HMG−CoA RI)服用患者において、心血管イベントの発症率、特にHMG−CoA RI単独投与では予防できない心血管イベントの発症率を低減させる、あるいは血清T−Cho濃度および/または血清TG濃度を低下させることを特徴とする、上記(1)乃至(26)のいずれかに記載の医薬組成物。
【0013】
また、本発明は以下の方法を提供する。
(28)スタチン(HMG−CoA RI)服用患者にイコサペント酸、その製薬学上許容しうる塩およびエステルからなる群から選択される少なくとも1つを有効成分として含有する医薬組成物を投与する工程を備える、HMG−CoA RI服用による糖尿病新規発症率を低減する方法。
(29)前記患者は血清HDLコレステロール濃度が40mg/dL未満である、上記(28)に記載の方法。
(30)前記患者は低HDLコレステロール血症を併発している、上記(28)に記載の方法。
(31)前記患者は血清トリグリセライド濃度が150mg/dL以上である、上記(29)または(30)に記載の方法。
(32)前記患者は高トリグリセライド血症を併発している、上記(29)または(30)に記載の方法。
(33)前記患者は空腹時血糖値が126mg/dL未満である、上記(28)乃至(32)のいずれかに記載の方法。
(34)前記患者は空腹時血糖値が110mg/dL以上126mg/dL未満である、上記(28)乃至(33)のいずれかに記載の方法。
(35)前記患者は空腹時血糖値が100mg/dL以上110mg/dL未満である、上記(28)乃至(33)のいずれかに記載の方法。
(36)前記患者は耐糖能異常または肥満を有する、上記(28)乃至(35)のいずれかに記載の方法。
(37)前記イコサペント酸、その製薬学上許容しうる塩およびエステルからなる群から選択される少なくとも1つがイコサペント酸エチルエステルまたはイコサペント酸(遊離酸)である、上記(28)乃至(36)のいずれかに記載の方法。
【0014】
(38)スタチン(HMG−CoA RI)服用患者にイコサペント酸、その製薬学上許容しうる塩およびエステルからなる群から選択される少なくとも1つを有効成分として含有する医薬組成物を投与する工程を備える、HMG−CoA RI服用による血糖値上昇を抑制する方法。
(39)前記患者は血清HDLコレステロール濃度が40mg/dL未満である、上記(38)に記載の方法。
(40)前記患者は低HDLコレステロール血症を併発している、上記(38)に記載の方法。
(41)前記患者は血清トリグリセライド濃度が150mg/dL以上である、上記(39)または(40)に記載の方法。
(42)前記患者は高トリグリセライド血症を併発している、上記(39)または(40)のいずれかに記載の方法。
(43)前記患者は空腹時血糖値が126mg/dL未満である、上記(38)乃至(42)のいずれかに記載の方法。
(44)前記患者は空腹時血糖値が110mg/dL以上126mg/dL未満である、上記(38)乃至(43)のいずれかに記載の方法。
(45)前記患者は空腹時血糖値が100mg/dL以上110mg/dL未満である、上記(38)乃至(43)のいずれかに記載の方法。
(46)前記患者は耐糖能異常または肥満を有する、上記(38)乃至(45)のいずれかに記載の方法。
(47)前記イコサペント酸、その製薬学上許容しうる塩およびエステルからなる群から選択される少なくとも1つがイコサペント酸エチルエステルまたはイコサペント酸(遊離酸)である、上記(38)乃至(46)のいずれかに記載の方法。
【0015】
(48)耐糖能異常または肥満を有するスタチン(HMG−CoA RI)服用患者にイコサペント酸、その製薬学上許容しうる塩およびエステルからなる群から選択される少なくとも1つを有効成分として含有する医薬組成物を投与する工程を備える、耐糖能異常または肥満を有するHMG−CoA RI服用患者における耐糖能異常または肥満を改善する方法。
(49)前記患者は血清HDLコレステロール濃度が40mg/dL未満である、上記(48)に記載の方法。
(50)前記患者は低HDLコレステロール血症を併発している、上記(48)に記載の方法。
(51)前記患者は血清トリグリセライド濃度が150mg/dL以上である、上記(49)または(50)に記載の方法。
(52)前記患者は高トリグリセライド血症を併発している、上記(49)または(50)に記載の方法。
(53)前記患者は空腹時血糖値が126mg/dL未満である、上記(48)乃至(52)のいずれかに記載の方法。
(54)前記患者は空腹時血糖値が110mg/dL以上126mg/dL未満である、上記(48)乃至(53)のいずれかに記載の方法。
(55)前記患者は空腹時血糖値が100mg/dL以上110mg/dL未満である、上記(48)乃至(53)のいずれかに記載の方法。
(56)前記イコサペント酸、その製薬学上許容しうる塩およびエステルからなる群から選択される少なくとも1つがイコサペント酸エチルエステルまたはイコサペント酸(遊離酸)である、上記(48)乃至(55)のいずれかに記載の方法。
【0016】
(57)全脂肪酸およびその誘導体中のEPA含量比が96.5質量%以上である、上記(28)乃至(56)のいずれかに記載の方法。
(58)EPA0.9g/日〜2.7g/日で経口投与することを特徴とする、上記(28)乃至(57)のいずれかに記載の方法。
(59)EPAを2年以上投与する、上記(28)乃至(58)のいずれかに記載の方法。
(60)前記医薬組成物をHMG−CoA RIと併用する、上記(28)乃至(59)のいずれかに記載の方法。
(61)前記医薬組成物がEPAとHMG−CoA RIとを含有する、上記(28)乃至(60)のいずれかに記載の方法。
(62)食事療法と併用する、上記(28)乃至(61)のいずれかに記載の方法。
(63)さらに、スタチン(HMG−CoA RI)服用患者において、心血管イベントの発症率、特にHMG−CoA RI単独投与では予防できない心血管イベントの発症率を低減させる、あるいは血清T−Cho濃度および/または血清TG濃度を低下させることを特徴とする、上記(28)乃至(62)のいずれかに記載の方法。
【0017】
(64)スタチン(HMG−CoA RI)服用患者にイコサペント酸、その製薬学上許容しうる塩およびエステルからなる群から選択される少なくとも1つを有効成分として含有する医薬組成物を投与する工程を備える、
1) HMG−CoA RI服用による糖尿病新規発症率を低減する方法、
2) HMG−CoA RI服用による血糖値上昇を抑制する方法、
3) 耐糖能異常または肥満を有するHMG−CoA RI服用患者における耐糖能異常または肥満を改善する方法
のいずれかの方法に用いられる該医薬組成物を宣伝する方法。
医師や被験者に対して、本願発明の上記方法に関する情報を提供する。具体的には、該情報を、例えば、パンフレットの配布、電子媒体の頒布、インターネットを通じた情報提供などで提供する。