特許第6196433号(P6196433)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6196433
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/10 20060101AFI20170904BHJP
   B29D 30/60 20060101ALI20170904BHJP
【FI】
   B29D30/10
   B29D30/60
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-214850(P2012-214850)
(22)【出願日】2012年9月27日
(65)【公開番号】特開2014-69334(P2014-69334A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2015年6月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】坂本 雅之
【審査官】 田々井 正吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−300257(JP,A)
【文献】 特開2002−347135(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/077372(WO,A1)
【文献】 特開2007−181931(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0230697(US,A1)
【文献】 国際公開第2005/120813(WO,A1)
【文献】 特開2006−219045(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0090836(US,A1)
【文献】 特開2006−231533(JP,A)
【文献】 特開2006−159945(JP,A)
【文献】 特開平11−254906(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/10
B29D 30/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイドウォール部が、ビード部よりもタイヤ軸方向外側に張り出した空気入りタイヤを中子成形にて製造するための方法であって、
複数個のセグメントをタイヤ周方向に連ねることにより、前記空気入りタイヤの内腔面を成形する外面を形成し、かつ、前記各セグメントをタイヤ半径方向内方に順番に移動させることにより前記空気入りタイヤから前記各セグメントを取り出し可能な組立式の剛性中子の外面にタイヤ部材を貼り付けて生タイヤを形成する生タイヤ形成工程と、
前記生タイヤの外面を形成するためのキャビティを具えた加硫金型内に、前記生タイヤを前記剛性中子とともに投入して、前記生タイヤを加硫することで加硫されたタイヤを得る加硫工程と、
前記加硫されたタイヤから前記各セグメントをタイヤ半径方向内側に移動させて、前記加硫されたタイヤから前記剛性中子を取り出す剛性中子取り外し工程とを含み、
前記生タイヤ形成工程は、前記剛性中子の前記外面のうち、少なくとも前記ビード部を成形する一対のビード成形面それぞれに、テープ状のゴムストリップを、その側縁を互いに重ねながら、タイヤ半径方向外側からタイヤ半径方向内側に渦巻き状に貼り付けてインナーライナーのビード部側領域を形成するインナーライナー形成工程を含むことを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。
【請求項2】
前記ゴムストリップは、前記剛性中子の前記外面のうち、少なくとも前記剛性中子のタイヤ軸方向の最大幅位置からタイヤ半径方向内側の領域において、その側縁を互いに重ねながら、タイヤ半径方向外側からタイヤ半径方向内側に渦巻き状に貼り付けられる請求項1に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項3】
前記ゴムストリップは、前記剛性中子の前記外面のうち、前記剛性中子の赤道からタイヤ半径方向内側の領域において、その側縁を互いに重ねながら、タイヤ半径方向外側からタイヤ半径方向内側に渦巻き状に貼り付けられる請求項1又は2に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項4】
前記ゴムストリップは、幅が5〜25mm、かつ、厚さが0.3〜1.5mmである請求項1乃至3のいずれかに記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項5】
前記ゴムストリップの前記側縁が重なる重複部は、前記ゴムストリップの前記幅の50%以下である請求項1乃至4のいずれかに記載の空気入りタイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剛性中子の取り外し性を向上しうる空気入りタイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タイヤのユニフォミティを向上させるために、タイヤの内腔面を成形する外面を具えた剛性中子を用いて、空気入りタイヤを製造する方法が提案されている(下記特許文献1参照)。剛性中子は、例えば、複数個のセグメントを、タイヤ周方向に連ねて組み立てられる。このような剛性中子は、各セグメントをタイヤ半径方向内方に順番に移動させることにより、空気入りタイヤから各セグメントを取り出すことができる。
【0003】
剛性中子を用いた空気入りタイヤの製造方法では、先ず、剛性中子の外面に、タイヤ部材を貼り付けて生タイヤを形成する生タイヤ形成工程が行われる。次に、生タイヤを剛性中子とともに加硫する加硫工程が行われる。そして、加硫されたタイヤから各セグメントを取り出す剛性中子取り外し工程が行われる。
【0004】
また、生タイヤ形成工程は、中間在庫を無くして生産性を高めるべく、図11(a)に示されるように、剛性中子aの外面bに、例えば、テープ状のゴムストリップgを渦巻き状に貼り付けて、インナーライナーdを形成するインナーライナー形成工程が含まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−254906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、空気入りタイヤは、サイドウォール部が、ビード部よりもタイヤ軸方向外側に張り出している。このため、剛性中子aの外面bも、サイドウォール部を形成するサイドウォール成形面b1が、ビード部を形成するビード成形面b2よりもタイヤ軸方向外側に張り出して形成される。
【0007】
このため、図11(b)に示されるように、剛性中子取り外し工程では、剛性中子aの半径方向の移動により、タイヤeのビード部fがタイヤ軸方向外側に押し拡げられる。これにより、ビード部fの内腔面hと、剛性中子aのサイドウォール成形面b1との間で、大きな摩擦が生じやすい。このような大きな摩擦は、内腔面hを形成するインナーライナーdのゴムストリップgの剥離を招きやすく、剛性中子aの取り外し性を低下させやすいという問題があった。
【0008】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、剛性中子の一対のビード成形面それぞれに、テープ状のゴムストリップを、その側縁を互いに重ねながら、タイヤ半径方向外側からタイヤ半径方向内側に渦巻き状に貼り付けてインナーライナーのビード部側領域を形成することを基本として、剛性中子の取り外し性を向上しうる空気入りタイヤの製造方法を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のうち請求項1記載の発明は、サイドウォール部が、ビード部よりもタイヤ軸方向外側に張り出した空気入りタイヤを中子成形にて製造するための方法であって、複数個のセグメントをタイヤ周方向に連ねることにより、前記空気入りタイヤの内腔面を成形する外面を形成し、かつ、前記各セグメントをタイヤ半径方向内方に順番に移動させることにより前記空気入りタイヤから前記各セグメントを取り出し可能な組立式の剛性中子の外面にタイヤ部材を貼り付けて生タイヤを形成する生タイヤ形成工程と、前記生タイヤの外面を形成するためのキャビティを具えた加硫金型内に、前記生タイヤを前記剛性中子とともに投入して、前記生タイヤを加硫することで加硫されたタイヤを得る加硫工程と、前記加硫されたタイヤから前記各セグメントをタイヤ半径方向内側に移動させて、前記加硫されたタイヤから前記剛性中子を取り出す剛性中子取り外し工程とを含み、前記生タイヤ形成工程は、前記剛性中子の前記外面のうち、少なくとも前記ビード部を成形する一対のビード成形面それぞれに、テープ状のゴムストリップを、その側縁を互いに重ねながら、タイヤ半径方向外側からタイヤ半径方向内側に渦巻き状に貼り付けてインナーライナーのビード部側領域を形成するインナーライナー形成工程を含むことを特徴とする。
【0010】
また、請求項2記載の発明は、前記ゴムストリップは、前記剛性中子の前記外面のうち、少なくとも前記剛性中子のタイヤ軸方向の最大幅位置からタイヤ半径方向内側の領域において、その側縁を互いに重ねながら、タイヤ半径方向外側からタイヤ半径方向内側に渦巻き状に貼り付けられる請求項1に記載の空気入りタイヤの製造方法である。
【0011】
また、請求項3記載の発明は、前記ゴムストリップは、前記剛性中子の前記外面のうち、前記剛性中子の赤道からタイヤ半径方向内側の領域において、その側縁を互いに重ねながら、タイヤ半径方向外側からタイヤ半径方向内側に渦巻き状に貼り付けられる請求項1又は2に記載の空気入りタイヤの製造方法である。
【0012】
また、請求項4記載の発明は、前記ゴムストリップは、幅が5〜25mm、かつ、厚さが0.3〜1.5mmである請求項1乃至3のいずれかに記載の空気入りタイヤの製造方法である。
【0013】
また、請求項5記載の発明は、前記ゴムストリップの前記側縁が重なる重複部は、前記ゴムストリップの前記幅の50%以下である請求項1乃至4のいずれかに記載の空気入りタイヤの製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の空気入りタイヤの製造方法は、剛性中子の外面にタイヤ部材を貼り付けて生タイヤを形成する生タイヤ形成工程と、生タイヤを剛性中子とともに加硫する加硫工程と、加硫されたタイヤから剛性中子を取り出す剛性中子取り外し工程とを含む。
【0015】
剛性中子は、複数個のセグメントをタイヤ周方向に連ねることにより、空気入りタイヤの内腔面を成形する外面が形成される。また、剛性中子は、各セグメントをタイヤ半径方向内方に順番に移動させることにより、空気入りタイヤから取り出される。
【0016】
生タイヤ形成工程は、剛性中子の外面のうち、少なくともビード部を成形する一対のビード成形面それぞれに、テープ状のゴムストリップを、その側縁を互いに重ねながら、タイヤ半径方向外側からタイヤ半径方向内側に渦巻き状に貼り付けてインナーライナーのビード部側領域を形成するインナーライナー形成工程を含む。
【0017】
インナーライナーのビード部側領域では、空気入りタイヤの内腔面において、ゴムストリップのタイヤ半径方向外側の側縁が、半径方向外側で隣り合うゴムストリップに覆われる。これにより、ビード部側領域は、各セグメントのタイヤ半径方向内側への移動により、ゴムストリップが逆撫でされることを防ぐことができる。従って、本発明の製造方法では、ゴムストリップの剥離を効果的に防ぐことができ、剛性中子の取り外し性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態の製造方法で製造される空気入りタイヤの一例を示す断面図である。
図2】剛性中子の一例を示す分解斜視図である。
図3】生タイヤが形成された剛性中子の断面図である。
図4】中子本体を軸心方向から見た側面図である。
図5】剛性中子の外面に形成された生タイヤの断面図である。
図6】加硫工程を説明する断面図である。
図7】剛性中子取り外し工程を説明する分解断面図である。
図8】インナーライナー形成工程の一例を説明する断面図である。
図9】ゴムストリップを示す斜視図である。
図10】(a)は、図8の部分拡大図、(b)は、セグメントにタイヤ軸方向外側に押し拡げられたビード部を示す部分断面図である。
図11】(a)は、従来のインナーライナー形成工程を説明する断面図、(b)は、剛性中子取り外し工程を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
本実施形態の空気入りタイヤの製造方法(以下、単に「製造方法」ということがある)は、空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」ということがある)を、剛性中子を用いて、中子成形にて製造する方法である。
【0020】
図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、乗用車用のラジアルタイヤとして構成されている。このタイヤ1は、トレッド部2からサイドウォール部3を経て、ビード部4のビードコア5に至るカーカス6と、このカーカス6のタイヤ半径方向外側かつトレッド部2の内部に配されたベルト層7と、カーカス6の内側に配されたインナーライナー9とが設けられている。また、タイヤ1は、例えば、5%内圧充填時において、サイドウォール部3が、ビード部4よりもタイヤ軸方向外側に張り出して形成されている。
【0021】
「5%内圧充填時」とは、タイヤ1が正規リムにリム組みされ、かつ、正規内圧が充填された無負荷の正規状態から、内正規内圧の5%の内圧まで減圧した状態とする。
【0022】
「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRAであれば "Design Rim" 、或いはETRTOであれば "Measuring Rim" とする。
【0023】
「正規内圧」とは、規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" とするが、タイヤ1が乗用車用である場合には一律に180kPaとする。
【0024】
カーカス6は、カーカスコードを、タイヤ赤道Cに対して例えば75〜90゜の角度で配列したラジアル構造の1枚以上、本実施形態では、1枚のカーカスプライ6Aにより構成されている。また、カーカスコードには、例えば、ポリエステル等の有機繊維コードや、スチールコードが採用されている。
【0025】
カーカスプライ6Aは、トレッド部2から一対のサイドウォール部3、3を経てビード部4、4間をトロイド状に跨ってのびている。本実施形態のカーカスプライ6Aは、タイヤ半径方向内の内端6eが、ビード部4で巻き上げられることなく終端している。
【0026】
ビードコア5は、カーカスプライ6Aの内端6e側において、タイヤ軸方向の内側面に配される内側コア5Aと、タイヤ軸方向の外側面に配される外側コア5Bとから構成されている。これらの内側コア5A及び外側コア5Bは、1本のビードワイヤ5cをタイヤ周方向に渦巻状に巻き重ねて形成されている。
【0027】
また、内側コア5Aのタイヤ軸方向の内側面には、内のエーペックスゴム8iが配されている。さらに、外側コア5Bのタイヤ軸方向の外側面には、外のエーペックスゴム8oが配されている。これらのエーペックスゴム8i、8oは、硬質ゴムから形成されている。
【0028】
ベルト層7は、ベルトコードを、タイヤ赤道Cに対して例えば10〜40°の小角度で傾けて配列した少なくとも2枚、本実施形態では、タイヤ半径方向の内、外2枚のベルトプライ7A、7Bから構成されている。これらのベルトプライ7A、7Bは、ベルトコードが互いに交差する向きに重ね合わされている。また、ベルトコードには、例えば、スチールコードや、アラミド等の有機繊維コードが採用されている。
【0029】
インナーライナー9は、一対のビードコア5、5間をトロイド状に跨って、内腔面17のほぼ全域に配置されている。このインナーライナー9は、例えば、その厚さtが0.5〜2.0mm程度の空気非透過性のゴム材からなる。また、空気不透過性ゴムとしては、例えば、ゴム成分100質量部中に、ブチルゴム(又はその誘導体)を60質量部以上、好ましくは80質量部以上、さらに好ましくは100質量部配合させたブチル系ゴムが好適に使用できる。
【0030】
図2及び図3に示されるように、剛性中子10は、環状の中子本体11と、この中子本体11の中心孔11hに内挿されるコア12と、中子本体11の軸心方向の両側に配される一対の側壁体13L、13Uとが設けられている。
【0031】
中子本体11は、タイヤ周方向に分割された大きさの異なる複数個のセグメント14から構成されている。本実施形態のセグメント14は、図4に示されるように、周方向長さL1がタイヤ半径方向内方に向かって漸減する第1セグメント14Aと、周方向長さL2がタイヤ半径方向内方に向かって漸増する第2セグメント14Bとが含まれている。第1セグメント14A、及び、第2セグメント14Bは、タイヤ周方向に交互に配置されている。
【0032】
このような中子本体11は、第2セグメント14B、及び、第1セグメント14Aを、タイヤ半径方向内側に順番に移動させることにより、分解することができる。また、中子本体11は、各セグメント14A、14Bをタイヤ周方向に連ねて組み立てられることにより、図3に示されるように、タイヤ1の内腔面17を成形する外面18が形成される。本実施形態の外面18は、例えば、5%内圧充填時のタイヤ1の内面形状に近似している。
【0033】
図5に示されるように、外面18には、タイヤ1のトレッド部2の内腔面17を成形するトレッド成形面18a、サイドウォール部3の内腔面17を成形するサイドウォール成形面18b、及び、ビード部4の内腔面17を成形するビード成形面18cが含まれている。また、本実施形態では、サイドウォール成形面18bが、ビード成形面18cよりも、タイヤ軸方向外側に張り出して形成されている。さらに、サイドウォール成形面18bには、タイヤ軸方向外側に最も突出する最大幅位置20が設けられている。
【0034】
図2に示されるように、コア12は、円筒状に形成されている。このコア12は、図3に示されるように、中子本体11の中心孔11hに内挿される。これにより、コア12は、第1セグメント14A、及び、第2セグメント14Bの半径方向内側への移動を阻止することができる。
【0035】
また、図2に示されるように、コア12の外周面、及び、セグメント14A、14Bの内周面には、剛性中子10の軸心方向にのび、かつ、互いに係合する蟻溝19a、又は、蟻ほぞ19bがそれぞれ形成されている。これにより、コア12、及び、セグメント14A、14Bは、軸心方向にのみ相対移動可能に連結されている。
【0036】
一方の側壁体13Lは、コア12の軸心方向の一方側に固着されている。また、他方の側壁体13Uは、コア12の軸心方向の他方側に固着されている。さらに、他方の側壁体13Uは、コア12の中心孔12hに設けられる内ネジ部15を介して、着脱自在に螺合されている。このような一対の側壁体13L、13Uは、図3に示されるように、コア12の軸心方向への移動を阻止して、中子本体11と、コア12とを一体に保持することができる。
【0037】
また、各側壁体13L、13Uには、それらの外側面に、軸心方向の外側に突出する支持軸部16が設けられている。この支持軸部16は、例えば、剛性中子10を加硫金型等へ搬送する搬送装置(図示省略)等のチャック部23に、着脱自在に連結される。
【0038】
次に、本発明の製造方法について説明する。
図5に示されるように、本実施形態の製造方法では、先ず、剛性中子10の外面18に、未加硫のタイヤ部材等を貼り付けて生タイヤ1Lを形成する生タイヤ形成工程S1が行われる。ここで、「未加硫」とは、完全な加硫に至っていない全ての態様が含まれる。従って、いわゆる半加硫の状態は、この「未加硫」に含まれる。
【0039】
本実施形態の生タイヤ形成工程S1では、剛性中子10の外面18に、インナーライナー9を形成するインナーライナー形成工程S11と、インナーライナー9の外側に、カーカスプライ6A等のタイヤ部材を貼り付ける貼付工程S12とが行われる。
【0040】
インナーライナー形成工程S11では、インナーライナー9が、剛性中子10の外面18に、一対のビード成形面18c、18cに跨って貼り付けられる。また、貼付工程S12では、例えば、インナーライナー9が貼り付けられた剛性中子10の外面18に、カーカスプライ6A、各コア5A、5B、各エーペックスゴム8i、8o、サイドウォールゴム3G、ベルト層7、及び、トレッドゴム2G等が順番に貼り付けられる。これにより、剛性中子10の外面18には、生タイヤ1Lが形成される。
【0041】
次に、生タイヤ1Lを剛性中子10とともに加硫する加硫工程S2が行われる。図6に示されるように、加硫工程S2では、生タイヤ1Lの外面を形成するキャビティ22sを具えた加硫金型22が用いられる。この加硫金型22内には、剛性中子10とともに生タイヤ1Lが投入され、該生タイヤ1Lが加硫される。そして、加硫終了後には、加硫金型22から、加硫されたタイヤ1が、剛性中子10とともに取り出される。
【0042】
次に、加硫されたタイヤ1から剛性中子10を取り外す剛性中子取り外し工程S3が行われる。この剛性中子取り外し工程S3では、図7に示されるように、先ず、剛性中子10の各側壁体13L、13U、及び、コア12を分解して、剛性中子10から取り外す。次に、第2セグメント14B、及び、第1セグメント14Aを、タイヤ半径方向内側に順番に移動させて、加硫されたタイヤ1から取り外す。これにより、図1に示したタイヤ1を製造することができる。
【0043】
そして、本発明のインナーライナー形成工程S11では、図8に示されるように、剛性中子10の外面18に、図9に示されるテープ状に形成されたゴムストリップ24を、その側縁24tを互いに重ねながら渦巻き状に貼り付けている。これにより、図10(a)に示されるように、ゴムストリップ24の側縁24tが重なる複数の重複部25が形成されたインナーライナー9が形成される。このようなインナーライナー形成工程S11は、中間在庫を無くして、生産性を高めるのに役立つ。
【0044】
また、図8に示されるように、剛性中子10の外面18に貼り付けられたインナーライナー9は、剛性中子10のトレッド成形面18aに貼り付けられたトレッド部側領域9aと、サイドウォール成形面18bに貼り付けられたサイドウォール部側領域9bと、ビード成形面18cに貼り付けられたビード部側領域9cとが含まれる。このサイドウォール部側領域9bは、ビード部側領域9cよりも、タイヤ軸方向外側に張り出して形成されている。
【0045】
上述のように、剛性中子10のサイドウォール成形面18bは、ビード成形面18cよりもタイヤ軸方向外側に張り出している。このため、図7及び図10(b)に示されるように、剛性中子取り外し工程S3では、各セグメント14A、14Bのタイヤ半径方向内側への移動により、タイヤ1のビード部4が、サイドウォール成形面18bによって、タイヤ軸方向外側に押し拡げられる。これにより、インナーライナー9のビード部側領域9cは、剛性中子10のサイドウォール成形面18bとの間で、大きな摩擦が生じやすい。このような大きな摩擦は、インナーライナー9のゴムストリップ24の剥離を招きやすく、剛性中子10の取り外し性を低下させやすい。
【0046】
そこで、本実施形態のインナーライナー形成工程S11では、図8及び図10(a)に示されるように、剛性中子10の外面18のうち、少なくとも一対のビード成形面18c、18cそれぞれにおいて、ゴムストリップ24を、タイヤ半径方向外側から内側に渦巻き状に貼り付けている。図10(b)に示されるように、インナーライナー9のビード部側領域9cでは、内腔面17において、ゴムストリップ24のタイヤ半径方向外側の側縁24tが、タイヤ半径方向外側で隣り合うゴムストリップ24に覆われる。
【0047】
これにより、インナーライナー9のビード部側領域9cでは、各セグメント14A、14Bのタイヤ半径方向内側への移動により、ゴムストリップ24のタイヤ半径方向外側の側縁24tが、剛性中子10の外面18に逆撫でされるのを防ぐことができる。従って、本発明の製造方法では、ゴムストリップ24の剥離を効果的に防ぐことができ、剛性中子10の取り外し性を向上することができる。しかも、本実施形態では、例えば、剛性中子10の外面18に離型剤を塗布する必要がないため、離型剤に起因するゴムストリップ24の粘着不良等の不具合を防ぐことができる。
【0048】
図8に示されるように、ゴムストリップ24は、剛性中子10の外面18のうち、剛性中子10の最大幅位置20からタイヤ半径方向内側の領域において、タイヤ半径方向外側からタイヤ半径方向内側に渦巻き状に貼り付けられるのが望ましい。これにより、図10(b)に示されるように、剛性中子10の最大幅位置20と接触する部分のインナーライナー9において、ゴムストリップ24の剥離をより効果的に防ぐことができる。しかも、図8に示されるように、この実施形態では、最大幅位置20からビード成形面18cにかけて、ゴムストリップ24を連続して貼り付けることができるため、インナーライナー9の耐久性をさらに向上することができる。
【0049】
さらに、ゴムストリップ24は、剛性中子10の外面18のうち、剛性中子10の赤道10cからタイヤ半径方向内側の領域において、タイヤ半径方向外側からタイヤ半径方向内側に渦巻き状に貼り付けられるのが望ましい。これにより、インナーライナー9は、タイヤ半径方向の広範囲において、ゴムストリップ24の剥離を確実に防ぐことができる。しかも、この実施形態では、剛性中子10の赤道10cからビード成形面18cにかけて、ゴムストリップ24を連続して貼り付けることができるため、インナーライナー9の耐久性をさらに向上することができる。
【0050】
図9に示されるように、ゴムストリップ24の幅W1は、5〜25mmが望ましい。なお、ゴムストリップ24の幅W1が5mm未満であると、ゴムストリップ24の巻回数が増大し、インナーライナー9の生産性が低下するおそれがある。逆に、ゴムストリップ24の幅W1が25mmを超えても、ゴムストリップ24の貼り付け精度が低下し、インナーライナー9の生産性が低下するおそれがある。このような観点より、ゴムストリップ24の幅W1は、より好ましくは10mm以上が望ましく、また、より好ましくは20mm以下が望ましい。
【0051】
同様の観点より、ゴムストリップ24の厚さT1は、好ましくは1.5mm以下が望ましく、また、好ましくは0.3mm以上が望ましい。
【0052】
さらに、図10(a)に示されるように、ゴムストリップ24の側縁24tが重なる重複部25の幅W2は、ゴムストリップ24の幅W1(図9に示す)の50%以下が望ましい。なお、重複部25の幅W2がゴムストリップ24の幅W1の50%を超えると、タイヤ半径方向で隣り合う重複部25、25同士が重なる。このような重複部25、25の重なりは、インナーライナー9のゴム厚さを局部的に大きくするため、インナーライナー9の損傷の起点になりやすい。これにより、剛性中子10の取り外し性を十分に向上させることができないおそれがある。逆に、重複部25の幅W2が、ゴムストリップ24の幅W1の10%未満であっても、ゴムストリップ24のタイヤ半径方向外側の側縁24tを十分に覆うことができなくなるおそれがある。このような観点より、重複部25の幅W2は、好ましくは、ゴムストリップ24の幅W1の35%以下が望ましく、また、好ましくは15%以上が望ましい。
【0053】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例】
【0054】
本発明の製造方法に基づいて、表1に示すゴムストリップが用いられたタイヤが製造され、それらの剛性中子の取り外し性、及び、インナーライナーの生産性が評価された。また、比較のために、図11(a)に示されるように、ゴムストリップをタイヤ半径方向内側から外側に渦巻き状に貼り付けて、インナーライナーが形成されたタイヤについても同様に評価された。なお、共通仕様は次のとおりである。
タイヤサイズ:235/40 R19
剛性中子のセグメントの個数:8個
テスト方法は、次の通りである。
【0055】
<剛性中子の取り外し性>
各供試タイヤを複数本加硫し、剛性中子取り外し工程において、剛性中子のセグメントを、タイヤ半径方向内側に夫々異なる速度で移動させ、剛性中子を取り外すのに要した時間(サイクルタイム)が測定された。さらに、剛性中子を取り出した後に、インナーライナーに、ゴムストリップの剥離が発生したか否かが目視にて確認された。そして、各供試タイヤにおいて、ゴムストリップの剥離が発生しなかった複数のサイクルタイムのうち、最短のサイクルタイムがそれぞれ求められた。数値が小さいほど、剛性中子の取り外し性が良好である。
【0056】
<インナーライナーの生産性>
表1に示されるゴムストリップを、剛性中子の外面に渦巻き状に貼り付けて、各供試タイヤのインナーライナーを形成するのに要した平均時間が測定された。結果は、比較例を100とする指数で表示した。数値が小さいほど良好である。
テストの結果を表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
テストの結果、実施例の製造方法では、剛性中子の取り外し性を向上しうることが確認できた。
【符号の説明】
【0059】
1 空気入りタイヤ
1L 生タイヤ
10 剛性中子
24 ゴムストリップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11