(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0017】
図1はハイブリッド車両のシステム構成例を示す概略図を、
図2は
図1のメカポンプ周辺を示す拡大図を、
図3はCANで接続された他の車載コントロールユニットの一例を示す概略図をそれぞれ示している。
【0018】
図1に示すように、車両としてのハイブリッド車両10は、駆動系を形成する車両駆動装置20と、制御系を形成する車両制御装置70とを備えている。車両駆動装置20は、駆動源としてのエンジン21および電動モータ22を有している。また、車両駆動装置20には無段変速機23が設けられており、無段変速機23にはプライマリプーリ24およびセカンダリプーリ25が設けられている。
【0019】
プライマリプーリ24の一方側(図中左側)には、トルクコンバータ26を介してエンジン21が連結され、プライマリプーリ24の他方側(図中右側)には、電動モータ22が連結されている。また、セカンダリプーリ25には、ヒューズクラッチ27を介して駆動輪出力軸28が連結されている。この駆動輪出力軸28には、ディファレンシャル機構29および一対のアクスル軸30を介して一対の駆動輪31が連結されている。
【0020】
また、エンジン21のクランク軸32には、駆動ベルト33を介してモータジェネレータ34が連結されている。モータジェネレータ34は、発電機および電動機として機能する所謂ISG(Integrated Starter Generator)であり、モータジェネレータ34を用いてクランク軸32を始動回転させることが可能となっている。
【0021】
トルクコンバータ26とプライマリプーリ24との間には、解放状態と締結状態とに切り換えられる入力クラッチ35が設けられている。入力クラッチ35を解放状態に切り換えることにより、プライマリプーリ24とエンジン21とを切り離すことが可能となる。これにより、走行モードを「モータ走行モード」に設定することができ、エンジン21を停止させて電動モータ22の動力のみを各駆動輪31に伝達することが可能となる。
【0022】
一方、入力クラッチ35を締結状態に切り換えることにより、プライマリプーリ24とエンジン21とを接続することが可能となる。これにより、走行モードを「パラレル走行モード」に設定することができ、電動モータ22およびエンジン21の動力を各駆動輪31に伝達することが可能となる。
【0023】
電動モータ22と各駆動輪31との間に設けられる無段変速機23は、電動モータ22のロータ軸36に連結されるプライマリ軸37と、これに平行となるセカンダリ軸38とを有している。プライマリ軸37にはプライマリプーリ24が設けられており、プライマリプーリ24の背面側にはプライマリ室39が区画されている。また、セカンダリ軸38にはセカンダリプーリ25が設けられており、セカンダリプーリ25の背面側にはセカンダリ室40が区画されている。さらに、プライマリプーリ24およびセカンダリプーリ25には駆動チェーン41が巻き掛けられている。
【0024】
そして、プライマリ室39に供給されるプライマリ圧とセカンダリ室40に供給されるセカンダリ圧とを調整することにより、プーリ溝幅を変化させて駆動チェーン41の巻き付け径を変化させることが可能となる。これにより、プライマリ軸37からセカンダリ軸38に対する無段変速が可能となる。なお、無段変速機23と各駆動輪31との間に設けたヒューズクラッチ27は、設定トルクを超えるとスリップ状態となる摩擦クラッチであり、無段変速機23を保護するためのトルクリミッタとして機能している。
【0025】
無段変速機23,トルクコンバータ26,ヒューズクラッチ27,入力クラッチ35等の油圧系に対して作動油(油液)を給排するために、車両駆動装置20には、トロコイドポンプ等よりなるメカポンプ42が設けられている。また、車両駆動装置20には、作動油の供給先や圧力を制御するために、複数の電磁バルブや油路(何れも図示せず)によって形成されるバルブユニット43が設けられている。そして、メカポンプ42から吐出された作動油は、バルブユニット43を経て、無段変速機23,トルクコンバータ26,ヒューズクラッチ27,入力クラッチ35等に供給される。ここで、無段変速機23およびヒューズクラッチ27は、電動モータ22と各駆動輪31との間に配置され、本発明における動力伝達機構を構成している。
【0026】
図2に示すように、メカポンプ42は、アウタロータ44とこれに組み込まれるインナロータ45とを備えている。インナロータ45の一端には、ロータ軸46および従動スプロケット47が取り付けられている。ロータ軸46に平行となるプライマリ軸37には、一方向クラッチ48を介して駆動スプロケット49が取り付けられている。駆動スプロケット49および従動スプロケット47にはチェーン50が巻き掛けられており、プライマリ軸37とインナロータ45とはチェーン50を介して連結されている。
【0027】
一方、メカポンプ42のインナロータ45の他端には、ロータ軸51および従動スプロケット52が取り付けられている。トルクコンバータ26のポンプシェル53に固定されるとともにロータ軸51に平行となる中空軸54には、一方向クラッチ55を介して駆動スプロケット56が取り付けられている。駆動スプロケット56および従動スプロケット52にはチェーン57が巻き掛けられており、中空軸54とインナロータ45とはチェーン57を介して連結されている。
【0028】
電動モータ22側の一方向クラッチ48は、正転方向に回転するプライマリ軸37からインナロータ45に動力を伝達する一方、これとは逆向きの動力伝達を遮断している。また、エンジン21側の一方向クラッチ55は、正転方向に回転する中空軸54からインナロータ45に動力を伝達する一方、これとは逆向きの動力伝達を遮断している。
【0029】
つまり、プライマリ軸37が中空軸54よりも速く回転する場合には、電動モータ22側のプライマリ軸37によってメカポンプ42が駆動され、中空軸54がプライマリ軸37よりも速く回転する場合には、エンジン21側の中空軸54によってメカポンプ42が駆動される。ここで、プライマリ軸37の正転方向とは、前進走行時におけるプライマリ軸37の回転方向である。また、中空軸54の正転方向とは、エンジン21の作動時におけるクランク軸32の回転方向である。
【0030】
メカポンプ42のインナロータ45には、プライマリ軸37と中空軸54とが連結されているため、エンジン21が駆動される「パラレル走行モード」においては、エンジン21によって常にメカポンプ42を駆動することができ、メカポンプ42からの作動油によって無段変速機23等を油圧制御することが可能となる。また、エンジン21が停止される「モータ走行モード」においても、プライマリ軸37が回転する車両走行時には、プライマリ軸37によってメカポンプ42を駆動することが可能となる。
【0031】
ところで、「モータ走行モード」における車両停止時には、プライマリ軸37とともにメカポンプ42が停止することになるが、この車両停止時においても、無段変速機23等の油圧系に対する作動油の供給を継続する必要がある。そのため、車両駆動装置20は、「モータ走行モード」での車両停止時に油圧系の基本油圧であるライン圧を確保するために、電動ポンプ58を備えている。この電動ポンプ58は、駆動モータ59と当該駆動モータ59により駆動されるポンプ60とを備えている。
【0032】
例えば、エンジン21が停止される「モータ走行モード」において、車速が緩やかに低下しながら所定値を下回った場合には、車速に連動してメカポンプ42の吐出圧力が低下することから、このメカポンプ42の吐出圧力の低下を補うように電動ポンプ58が駆動される。これにより、メカポンプ42と電動ポンプ58との双方からバルブユニット43に作動油が供給され、油圧系のライン圧を確保することが可能となる。
【0033】
図1に示すように、車両制御装置70は、無段変速機23,トルクコンバータ26,ヒューズクラッチ27,入力クラッチ35等の油圧系への作動油の給排を制御するもので、トランスミッションコントロールユニット(TMCU)71および電動ポンプコントロールユニット(EOPCU)72を備えている。トランスミッションコントロールユニット71および電動ポンプコントロールユニット72は、通信線90によって電気的に接続されており、CAN通信(Controller Area Network)によって互いに種々の信号の送受信が可能となっている。また、車両制御装置70自体の動作電力は図示しない低圧バッテリより供給されている。
【0034】
なお、通信線90には、他の車載コントロールユニット(
図3参照)も電気的に接続されている。ここで、他の車載コントロールユニットとしては、
図3に示すように、電動モータ22を制御するモータコントロールユニット(MCU)73,電動モータ22を駆動する高電圧バッテリ22a(
図1参照)を制御するバッテリコントロールユニット(BTCU)74,エンジン21を制御するエンジンコントロールユニット(EGCU)75,ハイブリッド車両10の車内のエアコン装置(図示せず)を制御するエアコンコントロールユニット(A/CCU)76等が挙げられる。なお、以下の説明においては、各コントロールユニット71〜76を、TMCU71,EOPCU72,MCU73などと表記する。
【0035】
図1に示すように、TMCU71には、イグニッションスイッチ77,アクセルセンサ78,車速センサ79およびトランスミッション油温センサ80が電気的に接続されている。ここで、TMCU71は、無段変速機23,トルクコンバータ26,ヒューズクラッチ27,入力クラッチ35等よりなるトランスミッション(動力伝達機構)への油液の給排を制御するようになっている。
【0036】
イグニッションスイッチ77からは、運転者によるキー操作やスタートスイッチの押圧操作等に伴い、ハイブリッド車両10の始動信号ONや停止信号OFFが出力されるようになっている。アクセルセンサ78からは、運転者によるアクセルペダル(図示せず)の踏み込み状態を示すアクセル信号Aが出力されるようになっている。車速センサ79からは、各駆動輪31の回転速度信号、つまり車速信号Vが出力されるようになっている。トランスミッション油温センサ80からは、無段変速機23やトルクコンバータ26等の油温信号ATFTEMPが出力されるようになっている。また、TMCU71には、通信線90を介して、EOPCU72からの基板温度信号(温度信号)BOARDTEMPが入力されるようになっている。
【0037】
ここで、アクセル信号A,車速信号Vは、本発明における車両状態信号を構成している。TMCU71は、これらの入力された車両状態信号に基づいて所定の演算処理を実行するCPU,制御プログラムやマップデータ等を格納するROM,一時的に演算データ等を格納するRAM等によって構成されている。これにより、TMCU71は、無段変速機23等への油液の給排量を調整して、ハイブリッド車両10の走行状況に見合った変速比制御等を実行するようになっている。
【0038】
また、TMCU71は異常判定部(比較部)81を備えている。この異常判定部81は、上述した種々の車両状態信号のうちの、特に始動信号ON,停止信号OFF,油温信号ATFTEMP,基板温度信号BOARDTEMPに基づいて、EOPCU72の基板82に実装された基板温度センサ83の異常判定を実行するようになっている。なお、異常判定部81は、油温信号ATFTEMPの比較対象となる温度閾値としての第1閾値TH1(
図5参照)、および基板温度信号BOARDTEMPの比較対象となる温度閾値としての第2閾値TH2(
図5参照)をROMから呼び出し、その後、温度比較処理を実行することにより、基板温度センサ83の異常判定を行うようになっている。
【0039】
ここで、第1閾値TH1の具体的な数値は+20℃に設定され、第2閾値TH2の具体的な数値は−35℃に設定されている。なお、第1閾値TH1(+20℃)は、ハイブリッド車両10の「モータ走行モード」への移行許可を判定するための閾値となっている。
【0040】
EOPCU72は、本発明におけるコントローラを構成しており、ハイブリッド車両10の車内のグローブボックスの奥等にあるスペース(図示せず)に設置されている。EOPCU72には、イグニッションスイッチ77が電気的に接続され、当該イグニッションスイッチ77からの始動信号ONの入力に基づいて、図示しない低圧バッテリ(12Vバッテリ)から供給される電力により電源が入るようになっている。また、EOPCU72には、通信線90を介して、TMCU71から車両状態信号が入力されるようになっている。これにより、EOPCU72は車両状態信号に基づいて電動ポンプ58を制御し、ひいては「モータ走行モード」での車両停止時に油圧系の基本油圧であるライン圧が確保されるようになっている。
【0041】
EOPCU72のハウジング(図示せず)の内部には、基板82が設けられており、当該基板82には、基板82の基板温度を検出する1つの基板温度センサ83が実装されている。基板温度センサ83は、例えば、サーミスタ等の温度検出素子によって形成されており、基板温度センサ83が正常状態のもとで、極低温を検出した場合には出力電圧は小さくなり、高温を検出した場合には出力電圧は大きくなる。また、基板温度センサ83が断線失陥の異常状態となった場合には出力電圧は小さくなり、短絡失陥(ショート)の異常状態となった場合には出力電圧は大きくなる。
【0042】
他の車載コントロールユニットについては、
図3に示すように、MCU73には、電動モータ22の温度を監視するモータ温度監視部84が設けられ、BTCU74には、高電圧バッテリ22aの温度を監視する高圧バッテリ温度監視部85が設けられている。また、EGCU75には、外気温度監視部86,冷却水温度監視部87,低圧バッテリ温度監視部89が設けられ、A/CCU76には、車内温度監視部88が設けられている。そして、これらの各温度監視部84〜89からの各温度信号、つまりモータ温度信号MT,高圧バッテリ温度信号BTT,外気温度信号OUTDOORTEMP,冷却水温度信号WT,低圧バッテリ温度信号LBTT,車内温度信号ROOMTEMPは、それぞれ通信線90を介して他の車載コントローラとCAN通信が可能となっている。
【0043】
次に、以上のように形成された車両制御装置70の動作、特にTMCU71の異常判定部81の制御内容、つまり基板温度センサ83の異常判定処理について、図面を用いて詳細に説明する。なお、ハイブリッド車両10が極低温に曝されている場合(寒冷地にある場合)を例に挙げて説明する。
【0044】
図4はTMCUによる異常判定処理の内容を説明するフローチャートを、
図5はTMCUによる異常判定処理の流れを示すタイミングチャートをそれぞれ示している。
【0045】
図4に示すように、ステップS1では、運転者がイグニッションスイッチ77を操作することにより、イグニッションスイッチ77から始動信号ONが出力される。これにより、TMCU71およびEOPCU72のそれぞれに始動信号ONが入力され、エンジン21が始動されるとともに、TMCU71およびEOPCU72に電源が入り、異常判定処理がスタートする(
図5の時間t0)。ここで、ハイブリッド車両10の始動時においては、
図5に示すように、外気温度は略−40℃となっており、このときの油温信号ATFTEMP,車内温度,基板温度信号BOARDTEMPは、それぞれ第2閾値TH2(−35℃)を下回る略−37℃となっている。
【0046】
次いで、ステップS2では、異常判定部81が、トランスミッション油温センサ80からの油温信号ATFTEMPを読み込み、読み込んだ油温信号ATFTEMPをRAMに一時的に格納する。続くステップS3では、異常判定部81が、CAN通信によりEOPCU72からの基板温度信号BOARDTEMPを読み込み、読み込んだ基板温度信号BOARDTEMPをRAMに一時的に格納する。
【0047】
ステップS4では、異常判定部81は、RAMに格納された油温信号ATFTEMPとROMに格納された第1閾値TH1(+20℃)とを比較する比較処理を実行する。ステップS4では、油温信号ATFTEMPが第1閾値TH1に到達したか否かを判定し、油温信号ATFTEMPが第1閾値TH1未満である場合(no判定)にはステップS5に進み、油温信号ATFTEMPが第1閾値TH1以上である場合(yes判定)にはステップS7に進む。
【0048】
ステップS5では、基板温度センサ異常フラグBOARDTEMPNGを生成して前置保持しておく(BOARDTEMPNG=BOARDTEMPNGn-1)。なお、ステップS5で前置保持された基板温度センサ異常フラグBOARDTEMPNGは、イグニッションスイッチ77からの停止信号OFFの入力、つまりシステムのシャットダウンに伴ってクリアされるようになっている。そして、ステップS5での処理後はステップS6に進んでリターン処理が施される。
【0049】
ここで、ハイブリッド車両10がエンジン21により走行等をして、無段変速機23,トルクコンバータ26等よりなるトランスミッションが暖機され、油温信号ATFTEMPが第1閾値TH1に到達する迄の時間(
図5の時間t0〜t1)においては、基板温度センサ83の異常判定処理(ステップS7〜ステップS9)が実行されないようにしている。これは、車内に配置されるEOPCU72の温度変化と、トランスミッションの油温(油温信号ATFTEMP)の変化とが相関する関係にあることに基づいている。
【0050】
すなわち、トランスミッションの暖機が進むことにより、車内温度も運転者の暖房操作(エアコン操作)等により上昇するため、「油温信号ATFTEMPの上昇=車内温度の上昇」と言うことができる。したがって、本実施の形態では、基板82以外の部分から得られる比較温度信号として、異常判定部81が常に読み込んでいる車内温度と相関する関係にある油温信号ATFTEMPを利用している。したがって、異常判定部81は、新たに温度情報(比較温度信号)を読み込むこと無く、簡単な制御ロジックで基板温度センサ83の異常判定処理を実行可能となっている。
【0051】
ここで、油温信号ATFTEMPは、本発明における比較温度信号を構成しており、この油温信号ATFTEMPの上昇をトリガとして、基板温度センサ83の異常判定処理を実行することにより、上述のような基板温度センサ83の誤判定、つまり極低温なのか断線失陥なのかの見分けがつかなくなることを確実に無くせるようにしている。例えば、イグニッションスイッチ77からの始動信号ONの入力と同時に基板温度センサ83の異常判定処理を行うと、基板温度センサ83が正常であっても、
図5の二点鎖線で示すように基板温度センサ異常フラグが立ち上がり、ひいては異常判定部81の誤判定を招くことになる。
【0052】
ステップS4でyes判定された後、つまり、油温信号ATFTEMPが第1閾値TH1以上になったと判定された後は、ステップS7において、異常判定部81が、RAMに格納された基板温度信号BOARDTEMPとROMに格納された第2閾値TH2(−35℃)とを比較する比較処理を実行する。ステップS7では、基板温度信号BOARDTEMPが第2閾値TH2に到達したか否かを判定し、基板温度信号BOARDTEMPが第2閾値TH2以上であると判定(no判定)した場合にはステップS8に進み、基板温度信号BOARDTEMPが第2閾値TH2未満であると判定(yes判定)した場合にはステップS9に進む。
【0053】
ステップS8では、車内温度の上昇に伴って基板温度信号BOARDTEMPも上昇して第2閾値TH2に到達しているため(
図5の実線参照)、異常判定部81は、基板温度センサ異常フラグBOARDTEMPNGを正常である「0」とする(
図5の実線参照)。また、ステップS8での基板温度センサ83が正常であるとの判定後、つまりステップS8での正常判定以降(
図5の時間t1以降)は、電動モータ22による「モータ走行モード」が許可される。これにより、電動ポンプ58を正常動作させることができるため、ハイブリッド車両10を安定走行させることができる。そして、ステップS8での処理後はステップS6に進んでリターン処理が施される。
【0054】
一方、ステップS9では、車内温度は上昇したが基板温度信号BOARDTEMPは上昇せず第2閾値TH2に到達しないため(
図5の破線参照)、異常判定部81は、基板温度センサ異常フラグBOARDTEMPNGを異常である「1」とする(
図5の破線参照)。また、ステップS9での基板温度センサ83が異常であるとの判定後、つまりステップS9での異常判定以降(
図5の時間t1以降)は、電動モータ22による「モータ走行モード」が禁止される。これにより、電動ポンプ58の非作動等に伴うハイブリッド車両10の不安定走行を回避することができる。ここで、基板温度センサ83の異常判定後は、車内のインストルメントパネルの警告灯(ワーニングランプ)を点灯あるいは点滅させ、基板温度センサ83の失陥を運転者に知らせるようにするのが望ましい。そして、ステップS9での処理後はステップS6に進んでリターン処理が施される。
【0055】
以上詳述したように、本実施の形態に係る車両制御装置70によれば、基板温度センサ83からの基板温度信号BOARDTEMPと、基板82以外の部分から得られる基板82の温度変化に相関する油温信号ATFTEMPとを比較する異常判定部81を備え、当該異常判定部81は、油温信号ATFTEMPが第1閾値TH1に到達したら基板温度センサ83からの基板温度信号BOARDTEMPが第2閾値TH2に到達しているか否かを判定し、基板温度センサ83の異常判定処理を実行する。
【0056】
これにより、基板82に設けた1つの基板温度センサ83からの基板温度信号BOARDTEMPが、正常に変化しているか否かを監視することができ、ひいては基板温度センサ83の異常判定を確実に行うことが可能となる。
【0057】
ここで、基板82の温度変化に相関する比較温度信号としては、上述のようなトランスミッション油温センサ80からの油温信号ATFTEMPに限らず、
図3に示すような高圧バッテリ温度信号BTTや冷却水温度信号WTや低圧バッテリ温度信号LBTTを利用することもできる。ただし、高圧バッテリ温度信号BTTを用いる場合には、「モータ走行モード」への移行許可を判定するための第1閾値TH1に相当する温度は、+8℃〜+10℃に設定するのが望ましい。一方、冷却水温度信号WTを用いる場合には、「モータ走行モード」への移行許可を判定するための第1閾値TH1に相当する温度は、約+70℃に設定するのが望ましい。さらには、エンジン21が停止状態で暖房操作が行われるような場合、つまり消費電力が大きく高電圧バッテリ22aに負担が掛かっており「モータ走行モード」への移行が禁止されている場合に、基板82の温度変化に相関する比較温度信号として、A/CCU76の車内温度監視部88からの車内温度信号ROOMTEMPを直接的に利用することもできる。
【0058】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。上記実施の形態においては、ハイブリッド車両10が極低温に曝されている場合に、基板温度センサ83が低温側で固着するような故障(断線失陥)を検出できるようにしたものを示したが、本発明はこれに限らない。つまり、ハイブリッド車両10が高温に曝されるような炎天下にある場合に、基板温度センサ83が高温側で固着するような故障(短絡失陥)を検出することもできる。この場合、基板82の温度変化に相関する比較温度信号としては、冷房操作が行われた場合において、A/CCU76の車内温度監視部88からの車内温度信号ROOMTEMP、つまり冷房動作により低下される温度信号を利用すれば良い。
【0059】
また、上記実施の形態では、チェーンドライブ式の無段変速機23を採用したものを示したが、本発明はこれに限らず、ベルトドライブ式やトラクションドライブ式の無段変速機や、遊星歯車式や平行軸式の自動変速機にも適用することができる。さらには、メカポンプ42や電動ポンプ58としては、内接式のギヤポンプであっても良く、外接式のギヤポンプであっても良い。