(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に提案するワーク回転装置を有する工作機械においては、ワーク回転装置より長いワークを把持して回転させた場合に、ワークの自重や遠心力によりワークの芯振れが発生し、穴加工精度が低下するという問題があった。
【0006】
以上の問題点に鑑み、本発明の課題は、長尺のワークの芯振れを抑えると共に、把持装置の幅(把持する長さやスパン)を変更できる工作機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明の請求項1に係る発明は、ワークの一端を把持する状態と開放する状態とに切り替える第1把持装置と、この第1把持装置と同軸に配設され前記ワークの他端を把持する状態と開放する状態とに切り替える第2把持装置と、前記ワークを回転させる回転装置と、を有し、前記ワークを回転させながら加工する工作機械であって、前記第1把持装置と前記第2把持装置とを脱着可能に固定する連結手段を備え、前記第1把持装置および前記第2把持装置で前記ワークを把持した状態において前記回転装置により回転させて加工可能とし、前記第2把持装置を分離し前記第1把持装置で前記ワークを把持した状態において前記回転装置により回転させて加工可能とし
ており、前記第1把持装置および前記第2把持装置は、コレットチャックであり、前記第1把持装置は、前記回転装置で回転され第1テーパ面を有する筒状のワーク回転軸と、このワーク回転軸内を軸方向に摺動し前記第1テーパ面と平行な第2テーパ面を外面に有する筒状の第1コレットと、この第1コレットを軸方向に摺動する第1コレット移動装置と、を備え、前記第2把持装置は、第1テーパ面を有する筒状のハウジングと、ハウジング内を軸方向に摺動し前記ハウジングの第1テーパ面と平行な第2テーパ面を外面に有する筒状の第2コレットと、この第2コレットを軸方向に摺動する第2コレット移動装置と、を備え、前記連結手段により前記第1コレットと前記ハウジングを脱着可能に連結しており、前記第2コレット移動装置は、前記ハウジングに形成された第1テーパ面と前記第2コレットに形成された第2テーパ面が密接する方向へ付勢するバネと、前記バネの付勢力に抗して前記第2コレットを前記ハウジングに形成された第1テーパ面と前記第2コレットに形成された第2テーパ面が離隔する方向へ移動する第2コレット解放装置と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明は、ワークの一端を把持する第1把持装置と他端を把持する第2把持装置を備えたことで、ワークの一端と、この一端から離隔した位置でワークの他端と、を別個独立して把持することができる。つまり、ワークの一端および他端を把持、ワークの一端を開放し他端を把持、またはワークの一端を把持し他端を開放することができる。
このため、種々の形状のワークに対してワークの形状や長さ、加工形態に応じてワークの把持の仕方を適宜変更することができる。
【0009】
また、本発明は、前記第1把持装置と前記第2把持装置とを脱着可能に固定する連結手段を備えたことで、把持装置の幅(把持する長さやスパン)を変更することができる。つまり、前記第1把持装置と前記第2把持装置とを連結した場合には、分離して一方の把持装置で把持する状態よりも把持装置の幅を拡大することができる。
【0010】
具体的には、前記第1把持装置と前記第2把持装置とを連結した場合には、ワークの一端を前記第1把持装置で把持し、離隔した位置で他端を前記第2把持装置で把持し、前記第1把持装置と前記第2把持装置とを連結して確実に把持した状態でワーク回転させることができる。
このため、長尺のワークを回転させた場合であっても、ワークの芯振れを効果的に抑えることができる。
【0011】
一方、前記連結手段により、前記第1把持装置と前記第2把持装置とを分離した場合には、前記第1把持装置のみでワークを把持することができる。
【0012】
このようにして、本発明は、ワークの形状や長さ、加工形態に応じて把持装置の幅(把持部の長さやスパン)を変更することができる。
例えば、前記第1把持装置および前記第2把持装置で前記ワークを把持した状態でワークの一端から加工し、前記第2把持装置を分離して前記第1把持装置のみで把持した状態でワークの他端から加工することができる。
【0013】
このため、本発明は、工作機械の工具の送り長さを過大に確保することなく、一部分に大径部又は突起部がある長尺のワークであってもワークの両端からそれぞれ孔加工して、加工精度を向上させることができる。
【0015】
また、前記第1コレット移動装置により第1コレットを軸方向に移動してワーク回転軸に形成された第1テーパ面と第2コレットに形成された第2テーパ面を密着させることで、第1コレットでワークの一端を把持した状態で回転させることができる。また、前記第2コレット移動装置により第2コレットを軸方向に移動してハウジングに形成された第1テーパ面と第2コレットに形成された第2テーパ面を密着させることで、第2コレットでワークの他端を把持することができる。
【0016】
そして、前記連結手段により前記第1コレットと前記ハウジングを脱着可能に連結したことで、ワークを第1コレットおよび第2コレットで把持した状態で、前記回転装置により前記ワーク回転軸を回転させることにより、ワークを安定して円滑に回転させることができる。
【0018】
また、前記バネによりハウジングに形成された第1テーパ面と第2コレットに形成された第2テーパ面を密着させることで、第2コレットでワークの他端を把持することができる。
また、前記第2コレット解放装置を備えたことで、前記バネの付勢力に抗して前記第2コレットを前記第1テーパ面と前記第2テーパ面が離隔する方向へ移動することで、第2コレットからワークを解放することができる。
【0019】
請求項
2に係る発明は、請求項
1に記載の工作機械であって、前記第2コレット解放装置は、前記第2コレットを移動して前記第2把持装置に装着されたワークを開放する押込み棒と、この
押込み棒に配設され前記ワークに当接させて所定位置まで当該ワークを押し込むワーク位置決め手段と、を備えたことを特徴とする。
【0020】
かかる構成によれば、前記第2コレット解放装置に
押込み棒とワーク位置決め手段を備えたことで、
押込み棒によりワークを解放した状態でワーク位置決め手段によりワークの位置決めをすることができるため、作業性を向上させ加工工数を低減することができる。
【0021】
請求項
3に係る発明は、請求項
2に記載の工作機械であって、前記ワーク位置決め手段は、前記ワークの回転中心に当接して当該ワークを支持するセンタリング軸と、このセンタリング軸を回転自在に支持する軸受けと、を備えたことを特徴とする。
【0022】
かかる構成によれば、前記ワークの回転中心に当接して当該ワークを支持するセンタリング軸を備えたことで、第2把持装置を取り外した場合にも、ワークの回転中心を支持して、長尺のワークの芯振れをより効果的に抑制して、加工精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、長尺のワークの芯振れを抑えると共に、把持装置の幅(把持部の長さやスパン)を変更できる工作機械を提供することができる。このため、本発明に係る工作機械は、長尺のワークを回転させた場合であっても、ワークの芯振れを効果的に抑えることができる。また、工作機械の工具の送り長さを過大に確保することなく、一部分に大径部又は突起部がある長尺のワークであっても、ワークを反転してワークの両側から精度よく加工することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施形態に係る工作機械である深孔明加工機20について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
<深孔明加工機>
図1の(b)に示すように、本発明の深孔明加工機20は、ベッド21上の左側には、ガイドレール21bが配設され、そのガイドレール21b上にはZ2軸(
図1(a)参照)方向に摺動自在にスライド21aが配設されている。
そして、このスライド21a上にワークWを把持して回転させるワーク回転把持装置1(
図2参照)が戴置されている。
【0026】
図1の(a)に示すように、深孔明加工機20は、ベッド21上の右側にガイドレール22bが配設され、そのガイドレール22b上にはZ1軸方向に摺動自在にテーブル22cが配設されている。そのテーブル22c上に主軸台23が戴置され、その主軸台23の主軸にはガンドリル24が装着されている。
深孔明加工機20の後方には、クーラントユニット29(
図1の(b)参照)が配置されている。クーラントユニット29には、ワークWの近傍に配設されたチップボックス26から排出されたチップを回収する大きな回収用チップボックス26bと、高圧クーラントポンプが設置される。
【0027】
クーラントは、クーラントユニット29により主軸台23に圧送され、ガンドリル24内部を通ってガンドリル24先端まで送られ、孔加工によって生じた切りくずと共に、
図1の(a)のベッド中央上のチップボックス26から回収される。このクーラント及び切りくずは、チップボックス26を通って、クーラントユニット29の大きな回収用チップボックス26bで回収され、クーラントから切りくずが分離される。
【0028】
図1を参照して、深孔明加工機20における深穴明加工方法を説明する。ここで、Z2軸においてはチップボックス26へ向かう方向を、Z1軸においてもチップボックス26へ向かう方向への移動を、それぞれ前進と表記する。前進方向の反対方向への移動を後退と表記する。
【0029】
ワークWを後記するワーク回転把持装置1に把持させた後、ワークWを回転し、回転したワークWがチップボックス26に取付けた図示しないガイドリングに突き当たるまで、ワーク回転把持装置1をZ2軸方向に沿って前進させる。主軸を回転させ、クーラントをガンドリル24内に導入し、ガンドリル24先端から切削部へ吐出させる。主軸台23をZ1軸方向に沿って前進させる。ガンドリル24が振れ止め25を通過して、ワークWに突き当たり、加工を開始する。加工端までガンドリル24を前進させた後、Z1軸方向に沿って、主軸台23を原位置まで後退させ、主軸の回転を停止する。
次いで、ワーク回転把持装置1をZ2軸方向に沿って後退させ、ワークWの回転を停止させ、ワークWを開放して加工が完了する。
【0030】
[実施例1]
<ワーク回転把持装置>
図2に示すように、ワーク回転把持装置1は、ベース部材である第1ハウジング10と、ワークWの一端である前側を把持する第1把持装置5と、この第1把持装置5と同軸に配設されワークWの他端である後側を把持する第2把持装置7と、ワークWを回転させる回転装置11と、第1把持装置5と第2把持装置7とを脱着可能に固定する連結手段であるボルトBによる締結部と、を備えている。
【0031】
第1ハウジング10は、第1把持装置5を回転自在に支持する部材であり、第1ハウジング10の下部中央にベアリング53が嵌入され、このベアリング53に貫通穴を有するワーク回転軸52が回転自在に軸支される。ワーク回転軸52の前端部には前方に向かうにつれて拡径された第1テーパ面52aが設けられ、外径部には歯車52bが設けられる。
【0032】
第1把持装置5は、ワーク回転軸52の内部に前後に摺動自在に装着された第1コレット51と、第1コレット51を軸方向に摺動する第1コレット移動装置50と、を備えている。
第1コレット51は、ワーク回転軸52の第1テーパ面52aと平行な第2テーパ面51aを有する。第1コレット51の周囲には、第1コレット51が弾性変形しやすいように、複数の割り溝が設けられている。
【0033】
第1コレット移動装置50は、第1ハウジング10の下部後方に前後方向に移動自在に配設された第1シリンダ55と、第1シリンダ55の内側に嵌入されたベアリング56と、ベアリング56を介して第1シリンダ55に対して回転自在に軸支されるとともに第1コレット51に螺着された引き込みリング58と、を備えている。
【0034】
引き込みリング58は、第1コレット51に螺着されて一体として回転するとともに、ベアリング56により第1シリンダ55に対して回転自在に軸支されているため、第1シリンダ55と一体として前後方向に移動自在に配設されている。
【0035】
具体的には、第1シリンダ55は、第1ハウジング10とエンドブラケット57の間に形成された前後方向のスペースに配設され、エンドブラケット57に設けられた流路1aおよびハウジングに設けられた流路1bから流通させた作動流体の圧力により前後移動するようになっている。このため、第1シリンダ55に回転自在に軸支された引き込みリング58と第1コレット51は、第1シリンダ55と一体として前後移動するようになっている。
作動流体は、圧縮性流体である圧縮空気、又は非圧縮性流体である作動油を用いることができる。
【0036】
第2把持装置7は、筒状の第2ハウジング71と、第2ハウジング71の内部に前後に摺動可能に配設された第2コレット73と、この第2コレット73を軸方向に摺動する第2コレット移動装置90と、を備えている。
第2ハウジング71は、前端側が大径となる第1テーパ面71aを有し、第2ハウジング71の内部に前後に摺動可能に第2コレット73が設けられる。
第2コレット73は、第1テーパ面71aと平行な第2テーパ面73aが設けられ、周囲には弾性変形しやすいように図示しない複数の割り溝が設けられる。
【0037】
第2把持装置7は、連結手段であるボルトBにより、第2ハウジング71を第1把持装置5の引き込みリング58に締結することで、第1把持装置5と一体に連結されるとともに、自在に取り外しが可能である。
【0038】
なお、本実施形態においては、ボルトBにより、第2把持装置7の第2ハウジング71を第1把持装置5の引き込みリング58に締結したが、連結手段はボルトBに限定されるものではなく、着脱自在に連結固定できるものであれば、ピンやキー、雄ネジと雌ネジを螺合させるような締結手段でもよい。また、締結箇所も第2ハウジング71と引き込みリング58を締結するものに限定されるものではなく、第2ハウジング71と第1コレット51が一体として連結できるものであればよく、第2ハウジング71を直接第1コレット51に連結してもよい。
【0039】
ここで、コレット引き込みリング58の後方に設けられた穴部の内径と第2ハウジング71前方に設けられた軸部の外径は嵌合されているため、第2コレット73と第1コレット51は同軸となる。
【0040】
第2コレット移動装置90は、第2ハウジング71に形成された第1テーパ面71aと第2コレット73に形成された第2テーパ面73aが密接する方向へ付勢するバネである皿バネ72と、この皿バネ72の付勢力に抗して第2コレット73を第1テーパ面71aと第2テーパ面73aが離隔する方向へ移動する第2コレット解放装置9と、を備えている。
【0041】
皿バネ72は、第2コレット73の後方に螺着されたリング74と第2ハウジング71の間に挿入されている。皿バネ72は、第2コレット73を第2ハウジング71の後方へ、弾性力により付勢する。その付勢力により、第2テーパ面73aが第1テーパ面71aに押し付けられ、挟持部の内径が小さくなり、ワークWを把持する。
【0042】
第2コレット解放装置9は、第2把持装置7の後方に配設され、押込み棒91と、ベース95と、ベース95に配設された空気圧シリンダ93と、押込み棒91を安定にスライドさせるためのガイド94とからなる。
押込み棒91は、空気圧シリンダ93の伸縮により、ガイド94に沿って前後に移動する。空気圧シリンダ93の推力は第2把持装置7の皿バネ72の弾性力に抗して第2コレット73を押し込むことが可能に設定される。
かかる構成により、第2コレット解放装置9は、皿バネ72の付勢力に抗して第2コレット73を第1テーパ面71aと第2テーパ面73aが離隔する方向へ移動させて、ワークWを解放するようになっている。
【0043】
回転装置11は、駆動源となるモータ13の回転がモータ軸に取付けられた図示しない歯車からワーク回転軸52外周部の歯車52bを介して、ワーク回転軸52へ伝達されるようになっている。そして、ワーク回転軸52を回転させることで、回転装置11は、ワーク回転軸52の内部に挿入された第1コレット51を回転し、第1コレット51に連結された第2把持装置7を一体として回転する。
【0044】
<長尺ワークの加工>
図3に従って、長尺ワークW1を加工する場合の加工方法について説明する。
長尺ワークW1を使用する場合、第1把持装置5を開放して長尺ワークW1を取り外した状態で、第2コレット解放装置9の空気圧シリンダ93により押込み棒91を後退させ、第2把持装置7を第1把持装置5に取り付けておく。
【0045】
図3(a)は長尺ワークW1の把持状態を示す。第1シリンダ55は後方に移動し、押込み棒91は後退している。
長尺ワークW1を把持状態から解放するためには、まず、
図3(b)に示すように、第1シリンダ55を前方に移動して、第1把持装置5を開放する。
図3(b)は、第1シリンダ55が前進して第1把持装置5が長尺ワークW1を開放し、押込み棒91が後退して第2把持装置7が長尺ワークW1を把持した状態を示す。
【0046】
具体的には、第1把持装置5の第1ハウジング10の作動油流路1bから作動流体をシリンダ55の後方側へ注入し、第1シリンダ55を前進させる。第1シリンダ55の前進に従って、第1コレット51が前進し、第1コレット51の第2テーパ面51aがワーク回転軸52の第1テーパ面52aと乖離し、第1コレット51の挟持部が拡大し、第1把持装置5が長尺ワークW1を開放する。
【0047】
次いで、第2把持装置7を開放する。
図3(c)は第1把持装置5と第2把持装置7とが共に解放状態にあり、長尺ワークW1が取り出し可能な状態を示す。
第2コレット解放装置9の空気圧シリンダ93を伸長させ、押込み棒91を前進させる。押込み棒91が第2把持装置7に設けられた皿バネ72の弾性力に抗して第2コレット73を押し込む。第2コレット73が第2ハウジング71内を前進することで、第2コレット73の挟持部が開き、第2把持装置7が長尺ワークW1を解放する。第1把持装置5、第2把持装置7がそれぞれ開放することで、長尺ワークW1が取り出し可能になる。
【0048】
続いて、
図3に従って、長尺ワークW1の挿入及び把持方法を説明する。
図3(c)に示すように、第1把持装置5、及び第2把持装置7が解放した状態で、長尺ワークW1を第1把持装置側から挿入する。
図3(b)に示すように、第2コレット解放装置9の空気圧シリンダ93により、押込み棒91を後退させる。すると、皿バネ72の弾性力により第2コレット73が第2ハウジング71内を後退し、第2コレット73の第2テーパ面73aと第2ハウジング71の第1テーパ面71aが密着することで、第2コレット73の挟持部の内径が狭まり、長尺ワークW1が第2把持装置7で把持される。
【0049】
さらに、
図3(a)に示すように、第1ハウジング10内の流路1aから作動流体を、第1シリンダ55の前方側に注入することで第1シリンダ55が後退する。このとき、第1シリンダ55、ベアリング56、引き込みリング58、及び第2把持装置7が第1コレット51と一体となって、第1コレット51がワーク回転軸52の内部を後退する。第1コレット51の第2テーパ面51aとワーク回転軸52の第1テーパ面52aとが圧着され、第1コレット51の挟持部の内径が狭まることにより、第1把持装置5が長尺ワークW1を把持する。
【0050】
図4に従って、短尺ワークW2の解放方法を説明する。短尺ワークW2を使用する場合、ワーク解放状態で、ボルトB(
図2参照)を外して第1把持装置5から第2把持装置7を予め取り外しておく。
第1把持装置5を開放する。
図4(a)は第2把持装置7(
図2参照)を取外し、第1把持装置5が短尺ワークW2を把持した状態を示す。第1把持装置5の解放は上記と同様のため、詳細は省略する。第2把持装置7を使用しないため、第2コレット解放装置9は使用しない。
【0051】
<短尺ワークの加工>
短尺ワークの把持方法を説明する。
図4(b)は第2把持装置を取り外し、第1把持装置5がワークW2を開放した状態を示す。短尺ワークW2の把持では、第2把持装置7(
図2参照)を使用しないため、第1把持装置5を把持する事のみによって、短尺ワークW2を把持する。第1把持装置5の把持方法は上記と同様のため、詳細な説明は省略する。
【0052】
図5に従って、ワークの一部が大径又はワークの一部に突起部を有するワークW3の両側から深孔加工を行う場合の加工方法を説明する。ワークW3が小径部W31と大径部W32(突起部)からなり、小径部W31を把持して加工する場合には、以下のように行なう。
図5(a)に示すように、ワークW3の小径部W31が第1把持装置5よりも長い場合においては、ボルトB(
図2参照)により、第2把持装置7を第1把持装置5に予め取付けておく。ワークW3の大径部W32又は突起部が前進側を向く方向で、ワークW3を前進側から挿入し、把持する。ワークW3の途中までガンドリル24により深孔加工を行い、その後ワークW3を開放する。この場合にあっては、上記長尺ワークW1(
図3参照)の使用方法を参照して把持又は解放を行う。
【0053】
次に、第2把持装置7を取り外す。
続いて
図5(b)に示すように、大径部W32又は突起部が後退側を向くようにして、ワークW3を第1把持装置5の後方側から挿入する。上記短尺ワークW2(
図4参照)の把持方法に従って把持し、小径部W31側から孔加工を行う。加工完了後、ワークW3を開放する。
なお、加工する順序は、
図5(b)に示すように、先に小径部W31側から加工を行い、次いで、
図5(a)に示すように、大径部W32側から加工する順序に変更することが可能である。
【0054】
次に、本発明の実施例1に係るワーク回転把持装置1の効果を説明する。
第1把持装置5と、この第1把持装置5と離間した位置において把持する第2把持装置7とにより、長尺ワークW1(
図3参照)を2点で軸支して回転させることが可能となり、長尺ワークW1を回転した際に、長尺ワークW1がその自重や遠心力で振れることが防止される。
【0055】
また、第1把持装置5は、その内部に設けられた第1シリンダ55の前後移動により長尺ワークW1の把持と開放を切替える。これに対して、第2把持装置7は、第2コレット解放装置9の空気圧シリンダ93の伸縮により押込み棒91が前後に移動することで長尺ワークW1の把持と開放を切替える。従って、第1把持装置5と第2把持装置7は独立して把持する状態と開放する状態とに切替えることができる。
【0056】
さらに、第2把持装置7は、第1把持装置5と脱着が可能であるため、把持部の全長を変更することができる。深孔明加工機20(
図1参照)においては、ワークWの前端をワーク回転把持装置1の前端部より突出させ、チップボックス26の内部に設けられた図示しないガイドリングに突き当てる必要がある。ところが、ワークの一部に突起や大径部がある場合、小径部の長さが把持部の全長に満たない場合には、大径部を後方に向け、把持部の後方からワークWを挿入することができない。
【0057】
しかし、
図5(b)に示すように、第2把持装置7を取り外し、第1把持装置5のみの構成とすることにより、把持部全長を変更可能とする構造を有することにより、ワークW3の一部に突起部や大径部W32が存する場合であって、小径部W31の長さが第1把持装置5の全長より長く、かつ、第1把持装置5と第2把持装置7の組合せた全長よりも短い場合であっても、ワークW3の取り付け向きを反転して取付けて深孔加工することができる効果を奏する。
【0058】
なお、第1把持装置5は、本発明の実施形態ではコレット式チャックであるが、パワーチャックを用いることも可能である。
また、第2把持装置7の第1テーパ面71a及び第2テーパ面73aは、実施例1では前端が大径で、後ろ方向にいくに従って小径となるテーパの向きを有しているが、後ろ端が大径で、前方向に行くにしたがって小径となるテーパを持ち、前端に皿バネ72を配設して第2コレット73を前方へ付勢するようにしても良い。
この場合には、第2コレット解放装置9は後退することによりワークWを開放する。また、短尺ワークを加工するときにおいては、第2コレット解放装置9は第2把持装置7を引き込むことなく、後退させる。
【0059】
第2コレット解放装置9は、実施例1では圧縮性流体である圧縮空気を利用した空気圧シリンダにより駆動したが、非圧縮性流体である作動油を用いた油圧シリンダ若しくはモータシリンダ又はモータを駆動源とするリンク機構、により駆動しても良い。皿バネ72はつるまきバネで代用しても良い。
【0060】
第2把持装置7および第2コレット解放装置9に替えて、空気圧シリンダを内蔵し、第1把持装置5と同様のシリンダ55によるシリンダ機構を採用して、ワークを把持する状態と開放する状態に切り替えることができる第2把持装置(不図示)を利用しても良い。この場合にあっても、第2把持装置の先端部分と第1把持装置5の後端部分を嵌合し、第2把持装置を第1把持装置5に取外し自在に連接する。この場合には、第2把持装置への空気圧回路は柔軟性を有する、例えばプラスチックスチューブを利用できる。
【0061】
[実施例2]
続いて、主として
図6を参照しながら、第1把持装置及び第2把持装置が共にワークを解放している状態において、ワークW4の挿入位置を一定位置に規定するワーク回転把持装置1Aについて説明する。
図6は本発明の実施例2に係るワーク回転把持装置の構成および動作を示す断面図である。
【0062】
図6に示すように、第2コレット解放装置9Aの押込み棒91の先端にワーク位置決め具101が設置されている。ワーク位置決め具101の径は第2コレット73の内径よりも小径とする。ワーク位置決め具101の先端にはメカストッパ101aとアブソーバ101bが設けられている。
その余りの構成及び機能は実施例1と同様であり、説明を省略する。
【0063】
次に、使用方法を説明する。第2コレット解放装置9Aが前進することで第2把持装置7が解放状態にあり、かつ、第1把持装置5が解放状態にある場合において、第2把持装置7の第2コレット73内に、ワーク位置決め具101が挿入されている。
ここで、ワークW4を第1把持装置5の前進側から、ワークW4が第2把持装置7内のワーク位置決め具101の先端に設けられたメカストッパ101aに当たる位置まで挿入する。アブソーバ101bは、ワークW4とメカストッパ101aとが接触する際に、クッションとして作用する。
【0064】
次に、第2把持装置7の第2コレット解放装置9Aを後退させると、ワークW4が第2把持装置7により、把持される。ここで、初期のワークW4の挿入深さはワーク位置決め具101により制限されているため、所定の深さにワークW4が把持される。引き続いて第1把持装置5によりワークW4を把持すると、所定位置でワークW4を把持する事が可能となる。
【0065】
なお、実施例2では、ワーク位置決め具101の先端にアブソーバ101b、及びメカストッパ101aを設けたが、これらは設けることを要しない。メカストッパ101aを設けない場合には、ワークW4の位置は、ワーク位置決め具101により規定される。アブソーバ101bに替えてボールプランジャを選定することができる。
また、ワーク位置決め具101は円柱形である必要はなく、多角柱型でも構わない。ガイド94は、ガイドシャフトとすべり軸受けの組合せ、ボールスプライン、直線ガイド等を利用することができる。
【0066】
[実施例3]
続いて、主として
図7を参照しながら、第2把持装置7を取外して加工する場合において、第2コレット解放装置9Bの押込み棒91Bの先端にセンタリング軸111を取付け、ワークW5の後端をセンタリングすることでワークW5の回転の振れを防止するワーク回転把持装置1Bについて説明する。
図7は、本発明の実施例3に係るワーク回転把持装置の構成および動作を示す断面図であり、(a)は第1把持装置と第2把持装置を解放して大径部を有するワークを前方から挿入して位置決めした状態、(b)は第1把持装置と第2把持装置でワークを把持してワークの大径部側の半分を加工する状態、(c)は第2把持装置を取り外し、ワークを反転し第1把持装置の後方からワークを挿入して把持しワークの小径部側の残り半分を加工する状態を示す。
【0067】
図7(a)に示すように、押込み棒91Bの中心部には貫通穴が設けられる。貫通穴内に、ベアリング110が設けられ、ベアリング110にはセンタリング軸111が軸支される。ワークW5の解放時には、押込み棒91により、第2コレット73が第2ハウジング71内を前方に移動し、開放している。このときに、センタリング軸111は第2コレット73内に挿入されており、センタリング軸111によって、ワークW5の挿入深さが制限される。
【0068】
図7(b)に示すように、第2把持装置7を第1把持装置5に組付けてワークW5の大径側を第1把持装置5側に向け、ワークW5を前方から挿入し、ガンドリル24により深孔加工する。この場合には、第2把持装置7の挟持部(第2コレット73の第2テーパ面73aの位置)と第1把持装置5の挟持部(第1コレット51の第2テーパ面51aの位置)が離間しているため、ワークW5が振れることが防止される。
【0069】
図7(c)に示すように、第2把持装置7を取り外した後に、ワークW5を反転させ、第1把持装置5の後ろ側より挿入してワークW5を把持する。このあと、第2コレット解放装置9Bを前進させると、押込み棒91Bに軸支したセンタリング軸111がワークW5に当たるまで前進する。この状態でワークW5をモータ3により回転すると、ワークW5の回転と共にセンタリング軸111が回転する。
【0070】
実施例3の発明によれば、
図7(c)に示すように、第1の把持装置5と第2の把持装置7に替えて、第1の把持装置とワークWの後端を回転軸中心に支えるセンタリング軸111とにより、回転による振れをより確実に防止することができる。
なお、本実施例では、大径部側の半分を先に加工して、小径部側を後から加工したが、加工の順を入れ替えてもよく、また、大径部側からのみ加工することで、止まり穴を形成してもよい。
【0071】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記した実施形態に限定されず、適宜変更して実施することが可能である。
例えば、本実施形態においては、工作機械として深孔明加工機20について説明したが、これに限定されるものではなく、ワーク回転把持装置1を適用できるものであれば、旋盤や中ぐり盤等の種々の工作機械に適用することもできる。