(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、レンチキュラーレンズを用いる場合、レンチキュラーレンズの凸レンズを画像に対して高精度な位置合わせを行って形成する必要がある。このため、適切な視覚効果を得るには、高い製造精度が要求されていた。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、視覚的効果を容易に得ることのできる装飾構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る装飾構造は、基材の表面に形成される画像層と、光を透過する材料によって前記画像層における表面側に積層される透明層と、非透過の部材からなると共に、平行に並ぶスリットを多数形成して前記透明層における表面側に積層されるスリット層と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この発明では、画像層における表面側に、スリットを多数形成するスリット層を、透明層を介して配設しているため、画像層の画像は、スリットを通過した光を視認することにより見ることになる。一方、スリットを通過する光は、スリットの形成方向には通過し易く、スリットの形成方向以外の方向には通過し難くなっているため、画像層を見る際の角度によって、スリットを通過した光を視認できるか否かが変化する。これにより、画像層とスリット層との相対的な位置を考慮することなく、画像層における表面側にスリット層を配設することのみで、画像層を見る際の角度によって、画像層の見え方を変化させることができる。この結果、視覚的効果を容易に得ることができる。
【0008】
また、上記装飾構造において、前記スリット層は、複数の前記スリットが平行に並ぶ方向が複数形成されていることが好ましい。
【0009】
この発明では、複数のスリットが平行に並ぶ方向が複数形成されているため、画像層を見る際の角度による画像層の見え方の変化を、多様なものにすることができる。この結果、より大きな視覚的効果を容易に得ることができる。
【0010】
また、上記装飾構造において、前記透明層は接着剤によって形成され、前記スリット層は、薄膜によって形成されると共に、前記接着剤によって前記画像層に接着されることが好ましい。
【0011】
この発明では、透明層は接着剤によって形成され、スリット層は、透明層を形成する接着剤によって画像層に接着されているため、スリット層と透明層を、画像層に対して容易に積層することができる。この結果、視覚的効果を容易に低コストで得ることができる。
【0012】
また、上記装飾構造において、前記画像層は、薄膜が接着剤によって前記基材の表面に接着されることにより形成されることが好ましい。
【0013】
この発明では、画像層は、薄膜が接着剤によって基材の表面に接着されることにより形成されるため、容易に画像層を形成することができる。この結果、視覚的効果を容易に低コストで得ることができる。
【0014】
また、上記装飾構造において、前記透明層を複数積層することが好ましい。
【0015】
この発明では、透明層を複数積層することにより、スリット層と画像層とを離間させることができ、多数のスリットが格子状に形成されることによる視覚的効果である、格子効果が優れた印刷物を得ることができる。
【0016】
また、上記装飾構造において、前記透明層は、接着層インクに対して露光することにより硬化させて形成し、複数が積層される前記透明層のうち前記画像層側に位置する層は、前記接着層インクの着弾直後に本硬化させ、複数が積層される前記透明層のうち前記スリット層側に位置する層は、前記接着層インクの着弾直後に仮硬化し、前記スリット層を積層することが好ましい。
【0017】
この発明では、複数が積層される透明層のうち、画像層側の層を本硬化させることにより厚みをかせぎ、スリット層側の層は表面を平滑化させるために仮硬化の状態でスリット層を積層することにより、スリット層が薄膜で形成される場合に、薄膜の金属光沢を良好にすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る装飾構造は、視覚的効果を容易に得ることができる、という効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明に係る装飾構造の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0021】
〔実施形態〕
図1は、実施形態に係る装飾構造によって装飾が施される装飾体の平面図である。
図2は、
図1のA−A断面図である。同図に示す装飾体1は、本実施形態に係る装飾構造により、表面に装飾が施される。この装飾体1としては、例えば携帯電話のカバー等、人の目に触れる機会が多く、装飾による美観の向上の効果が大きいものに主に適用される。この装飾体1に施される装飾構造は、当該装飾体1を構成する基材5の表面6に複数の層を積層することにより、基材5の表面に装飾を施す。
【0022】
基材5の表面6に積層される複数の層は、基材5の表面に形成される画像層10と、光を透過する材料によって画像層10における表面側に積層される透明層15と、平行に並ぶスリット22(
図4参照)を多数形成して、透明層15における表面側に積層されるスリット層20と、から構成される。
【0023】
図3は、
図2のB−B断面図であり、画像層の説明図である。基材5の表面6に積層される複数の層のうち、画像層10は、装飾体1に施す装飾として、絵柄や文字等の画像を構成する層になっており、本実施形態では、接着剤からなる接着層11と、薄膜12と、からなる。詳しくは、薄膜12は、アルミ箔等の非透過性の膜状の部材になっており、例えば、アルミ蒸着膜によって形成される。装飾体1に施す画像は、この薄膜12によって形成される。即ち、薄膜12は、任意の画像の形状に形成されており、この薄膜12が接着層11を構成する接着剤によって基材5の表面6に接着されることにより、基材5の表面6に所望の画像の装飾が施される。
【0024】
なお、接着層11を構成する接着剤は、薄膜12と同じ形状で基材5の表面6に形成されている。つまり、接着層11は、基材5の表面6に施す画像の形状で接着剤が形成されることにより設けられており、接着層11の接着剤と同じ形状で形成される薄膜12が、この接着剤によって基材5の表面6に接着されている。画像層10は、このように平面視における形状が同じ形状となる接着層11と薄膜12とにより構成されている。
【0025】
透明層15は、画像層10の表面側、つまり、画像層10における基材5が位置する側の反対側の面に積層されている。この透明層15は、画像層10を構成する接着層11と同様に、接着剤によって形成されており、光を透過する接着剤によって形成されている。また、透明層15は、画像層10の接着層11よりも、厚さが厚くなっている。
【0026】
なお、画像層10は、接着層11と薄膜12とが共に画像の形状で形成されているため、基材5の表面6には接着層11や薄膜12が設けられていない部分があるが、その部分には、画像層10の表面側に積層される透明層15を形成する接着剤が流れ込む。
【0027】
透明層15は、透明層15の表面側に積層されるスリット層20を、当該透明層15を構成する接着剤により、画像層10に接着している。具体的には、スリット層20は、画像層10の薄膜12と同様に、アルミ箔等の非透過性の膜状の部材である薄膜21により形成されており、透明層15は、この薄膜21を画像層10に接着している。また、透明層15は、画像層10における接着層11と同様に、平面視における形状がスリット層20を構成する薄膜21の形状と同じ形状になっている。
【0028】
図4は、
図1のC部詳細図である。スリット層20は、薄膜21の厚さ方向に連通するスリット22が多数形成されており、この多数のスリット22は、薄膜21の形成方向に複数が平行に並んでいる。また、スリット層20は、複数のスリット22が平行に並ぶ方向が、複数のエリア毎に形成されている。詳しくは、スリット22は、薄膜21の形成方向において、互いに直交する方向に形成されており、一方の方向に形成されるスリット22は縦スリット23として形成され、縦スリット23に直交する方向に形成されるスリット22は横スリット24として形成されている。
【0029】
多数のスリット22は、これらの縦スリット23と横スリット24とが、共にそれぞれ複数の数で平行に並んで1つの区画を形成しており、スリット層20は、この区画を多数有している。このように、複数のスリット22によって形成される区画のうち、複数の縦スリット23が平行に並んでいる区画は縦スリット形成部26となっており、複数の横スリット24が平行に並んでいる区画は横スリット形成部27となっている。
【0030】
これらの縦スリット形成部26と横スリット形成部27とは、共に平面視における形状が略正方形の形状で形成されており、スリット層20には、薄膜21の形成方向において縦スリット形成部26と横スリット形成部27とが互い違いに交互に形成される。換言すると、スリット層20には、多数の縦スリット形成部26と横スリット形成部27とが、市松模様状に形成されている。スリット層20は、このように複数の縦スリット23が平行に並ぶ縦スリット形成部26と、複数の横スリット24が平行に並ぶ横スリット形成部27とが、共に複数形成されることにより、複数のスリット22が平行に並ぶ方向が、複数形成されている。
【0031】
次に、装飾体1に対して本実施形態に係る装飾構造で装飾を施す際の製造方法について説明する。本実施形態に係る装飾構造では、接着層11や透明層15を構成する接着剤は、例えば、インクジェットプリンタ100(
図5参照)で印刷を行うことにより、接着層11や透明層15を所望の形状で形成する。
【0032】
図5は、実施形態に係る装飾構造で用いるインクジェットプリンタの概略構成を表す概略構成図である。装飾体1に装飾を施す際に用いるインクジェットプリンタ100は、主走査方向に設けたYバー101と、インクタンク102と、キャリッジ103と、制御装置104とを備える。インクタンク102は、メディア(本実施形態では装飾体1)Mに吐出するインクを貯留するものであり、ここでは、少なくとも接着層インクタンク106を含んで構成される。接着層インクタンク106は、接着層11や透明層15を形成するインクであって、露光することで硬化度が変化するインクである接着層インクを貯留するものである。
【0033】
接着層インクとしては、例えば、インクジェットUVプライマーである、株式会社ミマキエンジニアリング製の「IJ Primer PR−100(製品名)」等を用いることができる。この「IJ Primer PR−100」のインク組成は、例えば、アクリル酸エステル(80−90%)、開始剤(5−15%)、添加剤(0.1−5%)となっている。即ち、本実施形態では、この接着層インクが、接着層11や透明層15を構成する接着剤として用いられる。
【0034】
キャリッジ103は、Yバー101に沿って主走査方向に移動可能になっている。キャリッジ103は、メディアMの印刷搬送方向(副走査方向)に対して直交する方向(主走査方向)に移動制御される。また、キャリッジ103は、ホルダー107と、ホルダー107の主走査方向の両側に設けた露光部としての一対の紫外線ランプ108とを有している。
【0035】
キャリッジ103が有するホルダー107には、吐出部109が配置されている。吐出部109は、接着層インクタンク106に貯留された接着層インクをメディアMに吐出可能になっている。吐出部109は、例えば、メディアMに対向してインクを吐出するプリンタヘッド、インクタンク102とプリンタヘッドとを接続する各種インク流路、インク流路上に設けられるレギュレータ及びポンプ等を含んで構成される。
【0036】
ここでは、プリンタヘッドは、少なくとも接着層インクを吐出するヘッド部を含んで構成され、接着層インクの流路を介して接着層インクタンク106に接続されている。吐出部109は、ポンプが駆動することで、プリンタヘッドの各ヘッド部から接着層インクタンク106の接着層インク等を所定の吐出量でメディアMに向けてインクジェット方式で吐出することができる。
【0037】
各紫外線ランプ108は、メディアMに吐出されたインクに対して露光可能なものである。各紫外線ランプ108は、例えば、紫外線を照射可能なLEDモジュール等により構成される。また、インクジェットプリンタ100は、メディアMを載せるプラテン、テーブル等と共に、キャリッジ103に対してメディアMを印刷搬送方向(副走査方向)に相対移動させる搬送装置を備えている。
【0038】
制御装置104は、吐出部109、各紫外線ランプ108等を含むインクジェットプリンタ100の各部を制御するものである。制御装置104は、機能概念的に、吐出制御部104a、露光制御部104b、パターン変換部104c等を含んで構成されている。また、制御装置104は、演算装置、メモリ等のハードウェア及びこれらの所定の機能を実現させるプログラムから構成されている。
【0039】
制御装置104が有する吐出制御部104aは、吐出部109のポンプ等を制御し、吐出部109から吐出するインクの吐出量、吐出タイミング、吐出期間等を制御するものである。露光制御部104bは、各紫外線ランプ108等を制御し、当該各紫外線ランプ108から照射する紫外線の強度、露光タイミング、露光期間等を制御するものである。パターン変換部104cは、制御装置104に有線/無線で接続されるPC、種々の端末等の入力装置200から入力される入力情報に応じて、吐出制御量や露光制御量を設定するものである。
【0040】
パターン変換部104cには、入力情報として、例えば、入力装置200等を介して入力された画像情報であって、装飾体1に対して装飾したい所望の図形(文字、絵柄、模様等)や、スリット層20に多数形成されるスリット22の形態の画像情報等が入力される。パターン変換部104cは、この入力情報に基づいて、装飾体1に印刷したい所望の図形となるように接着層11のパターンを生成し、当該生成した印刷パターンを実現可能な吐出制御量、露光制御量に変換する。そして、吐出制御部104aは、パターン変換部104cが算出した吐出制御量に基づいて吐出部109による吐出を制御し、露光制御部104bは、パターン変換部104cが算出した露光制御量に基づいて各紫外線ランプ108による露光を制御する。
【0041】
これらのように構成されるインクジェットプリンタ100は、制御装置104による制御に応じて、メディアMに対してキャリッジ103を主走査方向に往復移動させつつ、メディアMの印刷面に対して吐出部109によって所定の印刷幅でインクを吐出する。そして、インクジェットプリンタ100は、制御装置104による制御に応じて、各紫外線ランプ108が所定のタイミングで、相対的に弱い紫外線を照射し露光することでメディアMに着弾したインクの拡がりを抑制しそのドット径等をコントロールし滲みを抑制する仮硬化(ピニング露光)を行う。さらに、インクジェットプリンタ100は、仮硬化を行ったインクに対して、相対的に強い紫外線を照射し露光することで、完全硬化させる本硬化(キュアリング露光)を行う。
【0042】
インクジェットプリンタ100は、上記所定の印刷幅に応じてキャリッジ103に対してメディアMを印刷搬送方向(副走査方向)に相対移動させながら、これを繰り返し、所定のパターンを印刷していく。この間、制御装置104は、吐出制御部104aが吐出部109から吐出するインクの吐出量、吐出タイミング、吐出期間等を制御し、露光制御部104bが各紫外線ランプ108から照射する紫外線の強度、ピニング/キュアリング露光タイミング、ピニング/キュアリング露光期間等を制御する。これにより、インクジェットプリンタ100は、パターン変換部104cが生成した印刷パターンに応じて、接着層11や透明層15の形状、厚み、面積、直径、密度等を調節し、所望の図形を印刷することができる。
【0043】
装飾体1に対して本実施形態に係る装飾構造で装飾を施す際には、まず装飾体1を構成する基材5の表面6に、このインクジェットプリンタ100を用いて、画像層10の接着層11を形成する。つまり、接着層11を構成する接着剤として用いられる接着層インクを、画像層10で表す画像の形状に、インクジェットプリンタ100を用いて基材5の表面6に印刷する。この接着層11に対しては、接着層インクの着弾後に仮硬化の状態で、薄膜12を接着する。
【0044】
接着層11と共に画像層10を構成する薄膜12は、転写用のフィルムに薄膜12であるアルミ箔等の転写膜が蒸着された、いわゆる転写箔を用いて接着層11上に接着する。詳しくは、薄膜12側を接着層11に対向させる向きで転写箔を接着層11に接着させて、転写箔における接着層11側の面の反対側の面から押圧することにより、基材5上の接着層11に薄膜12を接着させる。
【0045】
その後、転写箔のフィルムを剥がすことにより、接着層11の形状で薄膜12が基材5側に残り、転写箔における接着層11が形成されている部分以外の薄膜12とフィルムとが、接着層11から剥がれる。これにより、基材5上には、接着層11によって基材5の表面6に接着された薄膜12が、インクジェットプリンタ100で印刷した接着層11の形状で残り、薄膜12は、画像層10で表す画像の形状で基材5の表面6上に形成される。接着層11と薄膜12とより構成される画像層10は、これにより、所望の画像形状を基材5の表面6上に形成する。
【0046】
次に、この画像層10の表面に、接着層11を印刷する場合と同様に、インクジェットプリンタ100を用いて透明層15を形成する。つまり、透明層15を構成する接着剤として用いられる接着層インクを、スリット層20に所望の形態でスリット22を多数形成することができる形状に、インクジェットプリンタ100を用いて画像層10の表面に印刷する。これにより、画像層10における基材5側の面の反対側の面に、透明層15を形成する。
【0047】
その際に、透明層15は、画像層10とスリット層20との距離をあける役割を担っているため、厚さを接着層11の厚さよりも厚くする。例えば、薄膜12を基材5に接着するのみの役割を有する接着層11は、インクジェットプリンタ100で接着層インクを1層印刷するのみであるのに対し、透明層15は、接着層インクを3層印刷する。これにより、透明層15を複数積層し、透明層15の厚さを接着層11の厚さよりも厚くする。
【0048】
この場合、複数が積層される透明層15のうち、画像層10側に位置する層は、接着層インクの着弾直後に本硬化させる。また、スリット層20側に位置する層は、接着層インクの着弾直後に仮硬化する。スリット層20は、複数が積層される透明層15のうち、このようにスリット層20側に位置する層が仮硬化の状態で積層する。例えば、3層の透明層15のうち、画像層10側から数えて1層目と2層目は、接着層インクの着弾直後に本硬化させ、3層目は、接着層インクの着弾直後に仮硬化させた状態で、透明層15にスリット層20を積層する。
【0049】
次に、スリット層20を形成する薄膜21を、画像層10の薄膜12と同様に、転写膜を用いて透明層15上に接着する。詳しくは、薄膜21側を透明層15に対向させる向きで転写箔を透明層15に接着させて、転写箔における透明層15側の面の反対側の面から押圧することにより、透明層15に薄膜21を接着させる。
【0050】
その後、転写箔のフィルムを剥がすことにより、透明層15の形状で薄膜21が透明層15側に残り、転写箔における透明層15が形成されている部分以外の薄膜21とフィルムとが、透明層15から剥がれる。これにより、画像層10上には、透明層15を構成する接着剤によって透明層15に接着された薄膜21が、インクジェットプリンタ100で印刷した透明層15の形状で残り、薄膜21は、多数のスリット22を形成可能な形状で画像層10上に形成される。これにより、スリット層20は、多数の縦スリット23と横スリット24とにより、市松模様状に縦スリット形成部26と横スリット形成部27とを形成する形状で、画像層10に形成される。また、最後に紫外線を照射することにより、仮硬化状態であった画像層11の接着層11と透明層15におけるスリット層20を、本硬化させる。
【0051】
本実施形態に係る装飾構造は、これらのように、インクジェットプリンタ100を用いて接着層11と透明層15とを印刷し、転写箔を用いて画像層10の薄膜12とスリット層20の薄膜21とを、接着層11や透明層15に接着することにより、基材5の表面6に、画像層10と、透明層15と、スリット層20とを積層する。
【0052】
次に、本実施形態に係る装飾構造の作用について説明する。装飾体1の画像層10で表現されている画像を視認する場合には、画像層10を目視する者にとって画像層10の手前にあるスリット層20を介して視認することになる。このため、画像層10を視認する際には、外部からの入光によって画像層10で反射した光のうち、スリット層20のスリット22を通って、目視する者の目に届いた光は、この者は視認することができ、スリット層20の薄膜21で遮られ、スリット22を通らなかった光は、この者は視認できないようになっている。
【0053】
一方、スリット層20には、縦スリット23と横スリット24とが形成されているため、目視するものに対する装飾体1の角度によって、画像層10で反射した光がスリット22を通るか否かは異なっている。また、スリット層20には、縦スリット形成部26と横スリット形成部27とが形成されているため、画像層10で反射した光のスリット22の通過の仕方は、画像層10の位置によって異なっている。
【0054】
まず、装飾体1を、基材5の表面6に対して垂直方向から見る場合について説明する。
図6は、
図2のD部詳細図であり、装飾体を垂直方向から見る場合の説明図である。装飾体1を、垂直方向から見る場合は、画像層10で反射した光のうち、基材5の表面6に対して垂直方向に反射した光を見ることになる。画像層10で反射した光は、透明層15を透過したあと、スリット層20に向かうため、この光はスリット層20に対しても、透明層15側から垂直方向に入射する。
【0055】
スリット層20に多数形成されるスリット22は、スリット層20を構成する薄膜21の厚さ方向に連通しているため、スリット層20に対して垂直方向に入射した光は、大部分がスリット22を通過する。このため、装飾体1を、垂直方向から見る場合は、画像層10を、画像層10で形成されている形状を、ほぼそのままの形状で視認することができる(
図1参照)。
【0056】
これに対し、装飾体1を、基材5の表面6に対して斜め方向から見る場合は、見る方向によって見え方が異なる。つまり、スリット層20に形成されるスリット22は、縦スリット23と横スリット24とがあるため、装飾体1を見る斜め方向が、薄膜21の形成方向におけるスリット22の形成方向である場合には、画像が見え易くなり、装飾体1を見る斜め方向が、スリット22の形成方向以外の方向である場合には、画像が見え難くなる。
【0057】
次に、装飾体1を、基材5の表面6に対して斜め方向から見る場合について説明する。
図7は、
図2のD部詳細図であり、装飾体を斜め方向から見る場合の説明図である。装飾体1を、斜め方向から見る場合は、画像層10で反射した光のうち、基材5の表面6に対して斜め方向に反射した光を見ることになり、スリット層20に対して、透明層15側から斜め方向に入射した光を見ることになる。一方、スリット層20に多数形成されるスリット22には、縦スリット23と横スリット24とがあるため、透明層15側から入射する光の方向と、スリット22の形成方向とにより、スリット22を通過するか否かが異なる。
【0058】
例えば、装飾体1を見る斜めの方向が、薄膜21の形成方向における縦スリット23の形成方向の場合で説明すると、透明層15側からスリット層20に斜めに入射した光が、縦スリット23に入り込んだ場合は、この光は、スリット層20の厚さ方向に進みつつ、縦スリット23の長さ方向を進むことができる。これにより、縦スリット23を通過することができ、装飾体1を見ている者は、この光を視認することができる。
【0059】
これに対し、この光が、横スリット24に入り込んだ場合は、この光は、スリット層20の厚さ方向に進んでいる途中で、横スリット24の内壁に当たり、この内壁に遮られる。これにより、この光は、横スリット24を通過することができずに薄膜21で遮蔽され、装飾体1を見ている者は、この光を視認することができない。これにより、装飾体1を縦スリット23の形成方向に沿った斜め方向に見た場合は、縦スリット23が位置する部分の画像層10しか見ることができなくなる。
【0060】
図8は、装飾体を縦スリットの形成方向に沿った斜め方向に見た場合の説明図である。縦スリット23と横スリット24とは、それぞれ複数が平行に並んで縦スリット形成部26と横スリット形成部27とを形成している。このため、装飾体1を縦スリット23の形成方向に沿った斜め方向に見た場合は、全ての縦スリット形成部26で画像層10を見ることができ、全ての横スリット形成部27では、画像層10を見ることができなくなる。
【0061】
従って、この場合、画像層10で表されている画像は、
図8に示すように、市松模様状に形成されている縦スリット形成部26と横スリット形成部27とにおける、横スリット形成部27の部分では見えなくなる。
【0062】
図9は、装飾体を横スリットの形成方向に沿った斜め方向に見た場合の説明図である。これらに対し、装飾体1を横スリット24の形成方向に沿った斜め方向に見た場合、透明層15側からスリット層20に斜めに入射した光は、横スリット24に入り込んだ光は横スリット24を通過することができるが、縦スリット23に入り込んだ光は、縦スリット23を通過することができない。このため、装飾体1を横スリット24の形成方向に沿った斜め方向に見た場合は、横スリット24が位置する部分の画像層10しか見ることができなくなる。
【0063】
このため、装飾体1を横スリット24の形成方向に沿った斜め方向に見た場合は、全ての横スリット形成部27で画像層10を見ることができ、全ての縦スリット形成部26では、画像層10を見ることができなくなる。従って、この場合、画像層10で表されている画像は、
図9に示すように、市松模様状に形成されている縦スリット形成部26と横スリット形成部27とにおける、縦スリット形成部26の部分では見えなくなる。
【0064】
本実施形態に係る装飾構造によって装飾が施される装飾体1を視認する場合は、装飾体1を見る角度を変化させることによって、これらが連続的に変化するため、装飾体1上の場所ごとに、画像層10で表されている画像の見え方が、連続的に変化する。
【0065】
以上の実施形態に係る装飾構造は、画像層10における表面側に、スリット22を多数形成するスリット層20を、透明層15を介して配設しているため、装飾体1を見る場合に、見る角度によって、スリット22を通過した光を視認できるか否かを変化させることができる。これにより、画像層10とスリット層20との相対的な位置を考慮することなく、画像層10における表面側にスリット層20を配設することのみで、画像層10を見る際の角度によって、画像層10の見え方を変化させることができる。この結果、視覚的効果を容易に得ることができる。
【0066】
また、スリット層20は、縦スリット形成部26と横スリット形成部27とを有しており、複数のスリット22が平行に並ぶ方向が複数形成されているため、画像層10を見る際の角度による画像層10の見え方の変化を、多様なものにすることができる。この結果、より大きな視覚的効果を容易に得ることができる。
【0067】
また、透明層15は接着剤によって形成され、スリット層20は、透明層15を形成する接着剤によって画像層10に接着されているため、スリット層20と透明層15を、画像層10に対して容易に積層することができる。この結果、視覚的効果を容易に低コストで得ることができる。
【0068】
また、画像層10は、薄膜12が接着剤によって基材5の表面6に接着されることにより形成されるため、容易に画像層10を形成することができる。この結果、視覚的効果を容易に低コストで得ることができる。
【0069】
また、透明層15を複数積層することにより、スリット層20と画像層10とを離間させることができ、多数のスリット22が格子状に形成されることによる視覚的効果である、格子効果が優れた印刷物を得ることができる。
【0070】
また、複数が積層される透明層15のうち、画像層10側の層を本硬化させることにより厚みをかせぎ、スリット層20側の層は表面を平滑化させるために仮硬化の状態で薄膜21を接着することにより、薄膜21(アルミ蒸着膜)の金属光沢を良好にすることができる。また、画像層10の接着層11も、仮硬化の状態で薄膜12を接着することにより、画像層10の薄膜12(アルミ蒸着膜)も良好にすることができる。
【0071】
〔変形例〕
なお、上述した装飾構造では、スリット層20の表面側には、特に表面処理を施していないが、表面処理を施してもよい。例えば、スリット層20の表面側には、透明なインク等を印刷することにより、保護層となるクリアコートを施してもよい。このような保護層を施すことにより、スリット層20の保護をすることができ、長い期間に亘って、視覚的効果を持続させることができる。
【0072】
また、上述した装飾構造では、画像層10は、薄膜12が接着層11によって基材5に接着されることにより形成されているが、画像層10は、これ以外で形成されていてもよい。例えば、インクジェットプリンタ100を用いて、基材5の表面6にインクによって印刷を行うことにより、画像層10を形成してもよい。スリット層20も、薄膜21以外で形成されていてもよく、インクジェットプリンタ100を用いて、透明層15の表面6にインクによって印刷を行うことにより、スリット層20を形成してもよい。
【0073】
このように、画像層10やスリット層20を、インクで印刷することによって形成することにより、全ての層を、印刷によって形成することができるため、透明層15やスリット層20を備える装飾構造を、より容易に実現することができる。
【0074】
また、上述した装飾構造では、スリット層20が有するスリット22は、縦スリット23と横スリット24のみであるが、スリット22の種類は3種類以上であってもよい。形成される方向が異なるスリット22の種類を増やすことにより、より多様な視覚的効果を得ることができる。
【0075】
また、透明層15は、接着層インク等の接着剤以外を用いて形成してもよい。例えば、接着層インク以外の硬質のインクを用いて透明層15を構成してもよい。この場合、画像層10と透明層15との間、及び透明層15とスリット層20との間に接着剤を介在させ、これらの層の接合度を確保するのが好ましい。
【0076】
また、装飾構造は、上述した実施形態、及び変形例で用いられている構成等を適宜組み合わせてもよく、または、上述した構成以外を用いてもよい。装飾構造の構成等に関わらず、画像層10における表面側に、スリット22を多数形成するスリット層20を配設することにより、画像層10を見る際の角度によって、画像層10の見え方を変化させることができ、視覚的効果を容易に得ることができる。