(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6196508
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】水処理装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/42 20060101AFI20170904BHJP
C02F 1/28 20060101ALI20170904BHJP
C02F 1/58 20060101ALI20170904BHJP
C02F 1/64 20060101ALI20170904BHJP
B01D 24/02 20060101ALI20170904BHJP
B01D 24/16 20060101ALI20170904BHJP
B01D 24/26 20060101ALI20170904BHJP
B01D 36/00 20060101ALI20170904BHJP
B01D 39/06 20060101ALI20170904BHJP
【FI】
C02F1/42 A
C02F1/28 D
C02F1/28 F
C02F1/58 P
C02F1/58 Z
C02F1/64 A
B01D23/10 A
B01D23/10 C
B01D36/00
B01D39/06
【請求項の数】3
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2013-190266(P2013-190266)
(22)【出願日】2013年9月13日
(65)【公開番号】特開2015-54303(P2015-54303A)
(43)【公開日】2015年3月23日
【審査請求日】2016年7月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】390014074
【氏名又は名称】前澤工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(72)【発明者】
【氏名】根本 雄一
【審査官】
片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】
実開平06−057493(JP,U)
【文献】
特開平11−244870(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/161339(WO,A1)
【文献】
特開2004−098048(JP,A)
【文献】
特開平11−197682(JP,A)
【文献】
特開2001−137616(JP,A)
【文献】
特開昭50−043054(JP,A)
【文献】
実開昭54−007248(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/28、42
B01J 20/00−34、39/00−49/02
B01D 23/00−28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理槽の内部を、仕切壁によってイオン交換処理室とろ過室とに区画し、
前記イオン交換処理室は、該イオン交換処理室の下部に原水を導入する原水導入部と、原水とイオン交換樹脂とを混合する撹拌機とを備えて、上向流にて原水とイオン交換樹脂とを接触させ、
前記ろ過室は、前記イオン交換処理室の上部からろ過室に流入するイオン交換処理水をろ過室の下部に導入する処理水ガイド部と、ろ過室中段部に設けられたろ材層と、該ろ材層の上方に設けられた処理水導出部とを備えて、処理水ガイド部から流入したイオン交換処理水に対して上向流にてろ過処理を行うとともに、ろ過室底部に沈降したイオン交換樹脂を抜き出して前記イオン交換処理室の下部に返送して、前記イオン交換処理室にて原水と混合して再利用するためのイオン交換樹脂返送経路を備えている
ことを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
前記仕切壁の上部に、イオン交換処理水をイオン交換処理室から処理水ガイド部に流入させる越流部又は通水孔が設けられていることを特徴とする請求項1記載の水処理装置。
【請求項3】
前記ろ材層のろ材が、粒状活性炭、アンスラサイト、マンガン砂、接触ろ材の少なくともいずれか1種を含んでいることを特徴とする請求項1又は2記載の水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理装置に関し、詳しくは、イオン交換処理とろ過処理とを含む水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カビ臭などの臭気物質やトリハロメタンの生成原因などとなる溶解性有機成分を含む原水を処理するための水処理装置として、原水に粉末状の活性炭及び粉末状のイオン交換樹脂を同時に混合し、前記臭気物質や溶解性有機成分を活性炭やイオン交換樹脂に吸着させた後、固液分離手段で活性炭及びイオン交換樹脂を固液分離することにより、臭気物質や溶解性有機成分を除去した処理水を得る水処理装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−230038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載されたような水処理装置では、活性炭及びイオン交換樹脂を混合するための混合槽と、これらを分離するための分離槽とを別個に設けて配管などで接続しているため、初期コストが嵩んだり、広い設置スペースを必要としたりするなどの問題があった。
【0005】
そこで本発明は、装置の小型化や簡略化を図りながら、イオン交換樹脂によるイオン交換処理とろ材によるろ過処理とを連続して行うことができる水処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の水処理装置は、処理槽の内部を、仕切壁によってイオン交換処理室とろ過室とに区画し、前記イオン交換処理室は、該
イオン交換処理室の下部に原水を導入する原水導入部と、原水とイオン交換樹脂とを混合する撹拌機とを備え
て、上向流にて原水とイオン交換樹脂とを接触させ、前記ろ過室は、前記イオン交換処理室の上部からろ過室に流入するイオン交換処理水をろ過室の下部に導入する処理水ガイド部と、ろ過室中段部に設けられたろ材層と、該ろ材層の上方に設けられた処理水導出部とを備え
て、処理水ガイド部から流入したイオン交換処理水に対して上向流にてろ過処理を行うとともに、ろ過室底部に沈降したイオン交換樹脂を抜き出して前記イオン交換処理室の下部に返送して、前記イオン交換処理室にて原水と混合して再利用するためのイオン交換樹脂返送経路を備えていることを特徴としている。
【0007】
さらに、本発明の水処理装置
は、前記仕切壁の上部に、イオン交換処理水をイオン交換処理室から処理水ガイド部に流入させる越流部又は通水孔が設けられていること、前記ろ材層のろ材が、粒状活性炭、アンスラサイト、マンガン砂、接触ろ材の少なくともいずれか1種を含んでいることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の水処理装置によれば、処理槽の内部を仕切壁によってイオン交換処理室とろ過室とに区画しているので、水処理装置の小型化や簡略化を図りながら、イオン交換樹脂によるイオン交換処理とろ材によるろ過処理とを連続して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の水処理装置の一形態例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本形態例に示す水処理装置11は、処理槽12の内部を、上部に越流部13を有する仕切壁14により、イオン交換処理室15とろ過室16とに区画し、イオン交換処理室15では、上向流にて原水とイオン交換樹脂とを接触させてイオン交換処理を行い、前記ろ過室16では、上向流にてろ材によるろ過処理を行うように形成されている。
【0011】
イオン交換処理室15の下部には、原水導入経路17から供給される原水を槽下部に導入する原水導入部18が設けられるとともに、槽内の原水を撹拌して原水とイオン交換樹脂とを効果的に混合して接触させるための撹拌機19が設けられている。
【0012】
ろ過室16は、仕切壁14に隣接する位置にガイド部材20を設け、前記越流部13を越えてイオン交換処理室15からろ過室16に流入するイオン交換処理水をろ過室16の下部に導入する処理水ガイド部21を形成するとともに、中段部には原水の処理目的に応じたるろ材を充填したろ材層22が設けられ、該ろ材層22の上方には、ろ過処理を行った処理水を導出する処理水導出部23が設けられている。
【0013】
さらに、ろ過室16の底部には、ろ過室16の底部に沈降したイオン交換樹脂を抜き出し、返送ポンプ24を介して前記イオン交換処理室15にイオン交換樹脂を返送するイオン交換樹脂返送経路25が設けられている。
【0014】
原水は、原水導入部18からイオン交換処理室15の下部に流入し、撹拌機19により撹拌され、イオン交換処理室15内にあらかじめ投入されているイオン交換樹脂と混合、接触する。イオン交換樹脂と接触してイオン交換処理されたイオン交換処理水は、イオン交換処理室15内を上昇し、仕切壁14の上部の越流部13を越えて処理水ガイド部21に流入し、処理水ガイド部21を通ってろ過室16の下部に流入する。
【0015】
ろ過室16の下部に流入したイオン交換処理水は、ろ過室16内を上昇してろ材層22に流入し、このろ材層22にて所定のろ過処理が行われる。ろ過処理を終えてろ材層22の上方に上昇した処理水は、処理水導出部23から取り出される。
【0016】
このように、上部に越流部13を有する仕切壁14を設けて一つの処理槽12をイオン交換処理室15とろ過室16とに区画することにより、色度や有機物などを除去する所定のイオン交換処理と、濁質や金属類の除去といった所定のろ過処理とを一つの処理槽12で行うことができ、水処理装置11の小型化を図ることができる。
【0017】
また、撹拌機19によって撹拌された状態のイオン交換処理水と共にろ過室16に流入したイオン交換樹脂は、一般的に、水より比重が大きいため、ろ過室16の底部に沈降し、一部の水と共にイオン交換樹脂返送経路25に抜き出されてイオン交換処理室15の下部に返送され、再び原水と混合して再利用される。
【0018】
このように、イオン交換処理室15からろ過室16に流出したイオン交換樹脂をろ過室16の底部から抜き出してイオン交換処理室15に返送することにより、イオン交換樹脂が備えるイオン交換能力を十分に活用することができ、イオン交換樹脂の使用量を削減できるとともに、イオン交換樹脂を再生するための薬剤の使用量も削減でき、イオン交換樹脂を再生する際に発生する再生廃液の量も低減することができる。
【0019】
また、イオン交換処理室15の断面積及び高さ、撹拌機19の撹拌強度などの条件を適宜設定することにより、撹拌機19の撹拌力が弱くなるイオン交換処理室15の上部を上昇する原水の流れに逆らってイオン交換樹脂をイオン交換処理室15の底部に向かって沈降させる状態にすることができる。これにより、イオン交換樹脂が越流部13を越えてろ過室16に流入することがほとんど無い状態にできるので、イオン交換樹脂返送経路25を省略しても、イオン交換樹脂をイオン交換処理室15内に保持しておくことができる。
【0020】
一方、ろ過室16では、ろ材層22に用いるろ材として、原水の性状に応じて粒状活性炭、アンスラサイト、マンガン砂、接触ろ材などを適宜使用することにより、カビ臭やアンモニア、マンガンなどの除去も行うことができる。
【0021】
なお、イオン交換能力が低下したイオン交換樹脂は、イオン交換処理室の底部などの適宜な位置から抜き出すことにより、周知の再生方法で再生して再利用することができ、イオン交換処理室へのイオン交換樹脂の投入は、イオン交換処理室の上方などの任意の位置から行うことができる。また、本形態例では、イオン交換処理水を処理水ガイド部に流入させるために仕切壁の上部に越流部を設けたが、仕切壁の上部の適宜な位置に通水孔を設け、
図1に矢印Wで示すように、この通水孔から処理水ガイド部へイオン交換処理水を流入させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0022】
11…水処理装置、12…処理槽、13…越流部、14…仕切壁、15…イオン交換処理室、16…ろ過室、17…原水導入経路、18…原水導入部、19…撹拌機、20…ガイド部材、21…処理水ガイド部、22…ろ材層、23…処理水導出部、24…返送ポンプ、25…イオン交換樹脂返送経路