特許第6196509号(P6196509)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6196509
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】土除去装置
(51)【国際特許分類】
   A01B 63/16 20060101AFI20170904BHJP
【FI】
   A01B63/16 Z
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-190601(P2013-190601)
(22)【出願日】2013年9月13日
(65)【公開番号】特開2015-53921(P2015-53921A)
(43)【公開日】2015年3月23日
【審査請求日】2016年5月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000188009
【氏名又は名称】松山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】池田 俊朗
(72)【発明者】
【氏名】黒田 将仁
【審査官】 佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−225683(JP,A)
【文献】 特開平09−275709(JP,A)
【文献】 実開昭54−139915(JP,U)
【文献】 特開平07−203716(JP,A)
【文献】 特開2013−000062(JP,A)
【文献】 登録実用新案第357684(JP,Z2)
【文献】 実公昭25−003528(JP,Y1)
【文献】 米国特許第04775013(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 5/00−49/06
A01B 63/14−63/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
農作業機の回転体に付着した付着土を除去する土除去装置であって、
支持部を有する支持体と、
前記支持部にて回動可能に支持され、前記付着土を除去する土除去体とを備え
前記土除去体は、
前記支持部にて回動可能に支持された被支持部と、
この被支持部の後側部分に突設され、前記回転体の外周面部に接触可能な一方側土除去部と、
前記被支持部の前側部分に突設され、前記回転体の外周面部に接触可能な他方側土除去部とを有する
ことを特徴とする土除去装置。
【請求項2】
農作業機の回転体に付着した付着土を除去する土除去装置であって、
支持部を有する支持体と、
前記支持部にて回動可能に支持され、前記付着土を除去する土除去体とを備え、
前記土除去体は、
前記支持部にて回動可能に支持された被支持部と、
この被支持部に突設され、回転体の外周面部に接触可能な一方側土除去部と、
前記被支持部に突設され、前記回転体の外周面部に接触可能な他方側土除去部とを有し、
前記土除去体の前記一方側土除去部および前記他方側土除去部のいずれか一方が前記回転体の外周面部に接触した状態では、いずれか他方と前記回転体の外周面部との間に隙間が存在し、
前記土除去体は、前記支持体の前記支持部に対して前記隙間分だけ回動可能となっている
ことを特徴とする土除去装置。
【請求項3】
土除去体は、支持体の支持部の軸方向に間隔をおいて並ぶ複数の土除去部材にて構成されている
ことを特徴とする請求項1または2記載の土除去装置。
【請求項4】
土除去体を回転体に接触させるための付勢体を備える
ことを特徴とする請求項1ないしのいずれか一記載の土除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作業機の回転体に付着した付着土を除去する土除去装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載された農作業機が知られている。
【0003】
この農作業機は、走行車に連結される機体と、この機体に設けられ耕耘作業をする耕耘体と、この耕耘体の後方で整地作業をする整地体と、機体の前部に設けられ車軸部を中心として回転可能な車輪部(回転体)を有するゲージ輪とを備えている。
【0004】
そして、ゲージ輪は、上下方向長手状のアーム部を有し、このアーム部には、車輪部の外周面部に付着した付着土を除去する土除去手段である略板状のスクレーパが固着され、このスクレーパと車輪部の外周面部との間には所定寸法の隙間が常に存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−250749号公報(図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このため、上記従来のスクレーパでは、十分な土除去効果が得られず、付着土を適切に除去できないおそれがある。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、付着土を適切に除去できる土除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の土除去装置は、農作業機の回転体に付着した付着土を除去する土除去装置であって、支持部を有する支持体と、前記支持部にて回動可能に支持され、前記付着土を除去する土除去体とを備え、前記土除去体は、前記支持部にて回動可能に支持された被支持部と、この被支持部の後側部分に突設され、前記回転体の外周面部に接触可能な一方側土除去部と、前記被支持部の前側部分に突設され、前記回転体の外周面部に接触可能な他方側土除去部とを有するものである。
【0009】
求項記載の土除去装置は、農作業機の回転体に付着した付着土を除去する土除去装置であって、支持部を有する支持体と、前記支持部にて回動可能に支持され、前記付着土を除去する土除去体とを備え、前記土除去体は、前記支持部にて回動可能に支持された被支持部と、この被支持部に突設され、回転体の外周面部に接触可能な一方側土除去部と、前記被支持部に突設され、前記回転体の外周面部に接触可能な他方側土除去部とを有し、前記土除去体の前記一方側土除去部および前記他方側土除去部のいずれか一方が前記回転体の外周面部に接触した状態では、いずれか他方と前記回転体の外周面部との間に隙間が存在し、前記土除去体は、前記支持体の前記支持部に対して前記隙間分だけ回動可能となっているものである。
【0010】
請求項記載の土除去装置は、請求項1または2記載の土除去装置において、土除去体は、支持体の支持部の軸方向に間隔をおいて並ぶ複数の土除去部材にて構成されているものである。
【0011】
請求項記載の土除去装置は、請求項1ないしのいずれか一記載の土除去装置において、土除去体を回転体に接触させるための付勢体を備えるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、土除去体が支持体の支持部にて回動可能に支持された構成であるため、農作業機の回転体に付着した付着土を適切に除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る土除去装置を備えた農作業機の側面図である。
図2】同上農作業機のゲージ輪の正面図である。
図3】同上土除去装置の取付状態を示す側面図である。
図4】同上土除去装置の取付状態を示す平面図である。
図5】同上土除去装置を示す図で、(a)が側面図、(b)が平面図である。
図6】同上土除去装置の土除去体の回動動作を説明するための説明図である。
図7】(a)は同上土除去体が通常位置に位置した状態の作用図、(b)は同上土除去体が回動位置に位置した状態の作用図である。
図8】本発明の第2の実施の形態に係る土除去装置の取付状態を示す側面図である。
図9】本発明の第3の実施の形態に係る土除去装置の取付状態を示す側面図である。
図10】同上土除去装置の取付状態を示す平面図である。
図11】本発明の第4の実施の形態に係る土除去装置を示す図で、(a)が側面図、(b)が平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の第1の実施の形態について図1ないし図7を参照して説明する。
【0015】
図中の1は農作業機で、この農作業機1は、例えば走行車であるトラクタ(図示せず)の後部に連結され、そのトラクタの走行により前方(進行方向)に移動しながら農作業である耕耘整地作業等を行うものである。
【0016】
農作業機1は、図1に示されるように、トラクタの後部の3点リンク部(農作業機昇降部)に脱着可能に連結される機体2と、この機体2に回転可能に設けられ所定方向に回転しながら耕耘作業をする耕耘体3と、機体2に上下回動可能に設けられ耕耘体3の後方で整地作業をする整地体(均平板)4とを備えている。
【0017】
機体2は、トラクタの3点リンク部に脱着可能に連結される3点連結部6を有している。この3点連結部6は、1本のトップマスト7および左右1対で2本のロワアーム8等にて構成されている。機体2は、左右方向中央部にミッションケース部9を有し、このミッションケース部9にて前後方向の入力軸10が回転可能に支持されている。なお、入力軸10は、図示しないトラクタのPTO軸にジョイント等を介して接続される。
【0018】
また、機体2は、ミッションケース部9に連結固定された左右1対のフレームパイプ部11を有している。進行方向左側のフレームパイプ部11の左端部にはチェーンケース部12の上部が取り付けられ、進行方向右側のフレームパイプ部11の右端部にはブラケット部(図示せず)の上部が取り付けられている。そして、チェーンケース部12の下部とブラケット部の下部との間には、入力軸10側からの動力に基づいて所定方向に回転しながら耕耘作業をする耕耘体3が回転可能に架設されている。
【0019】
耕耘体3は、チェーンケース部12の下部およびブラケット部の下部間に回転可能に架設された左右方向の耕耘軸16と、この耕耘軸16に取り付けられこの耕耘軸16と一体となって回転して耕耘作業をする複数の耕耘爪17とを有している。そして、耕耘体3の上方部が機体2の略板状の耕耘カバー部13にて覆われ、耕耘体3の後方部が略板状の整地体4にて覆われている。
【0020】
整地体4は、機体2の耕耘カバー部13の後端部に前端部(上端部)が左右方向の軸20を介して回動可能に連結された略板状の整地本体21と、この整地本体21の上面に立設された立設板22とを有している。そして、整地体4の立設板22と機体2のフレームパイプ部11とが接地圧調整手段23にて連結され、この接地圧調整手段23によって整地体4の圃場に対する接地圧が調整可能となっている。なお、接地圧調整手段23は、ロッド24、このロッド24の外周側に配設されたコイルバネ25およびタンブラ26等にて構成されている。
【0021】
また一方、機体2は、左右方向長手状をなす前フレーム部28を前部に有し、この前フレーム部28における左右方向に間隔をおいた複数箇所には、筒状のホルダ部29が左右位置調整可能に取り付けられている。そして、各ホルダ部29には、耕耘体3の前方で圃場に接地する接地輪であるゲージ輪31が止めピン30を介して上下位置調整可能に取り付けられている。
【0022】
ここで、ゲージ輪31は、図1ないし図4等に示されるように、複数の取付用孔32が形成された上下方向長手状のアーム部33を有し、このアーム部33が機体2のホルダ部29に止めピン30を介して上下位置調整可能に取り付けられている。
【0023】
アーム部33の上端部には、作業者が把持するハンドル部34が設けられている。その一方、アーム部33の下端部には、左右方向の車軸部(支軸部)35が水平状に固設されている。そして、車軸部35の外周側には、圃場に接地した状態で所定方向に回転しながら走行する円筒状の回転体である車輪部(接地回転部)36が複数のベアリング37を介して回転可能に設けられている。
【0024】
すなわち、ゲージ輪31は、左右方向に軸方向を有する車軸部35を下端側に有し、この車軸部35にて、この車軸部35を中心として回転する車輪部36が回転可能に支持されている。そして、車輪部36の外周面部は、圃場の表面部に接地する部分であり、例えば円筒面状に形成されている。この車輪部36の外周面部は、金属等からなるものには限定されず、例えば弾性変形可能なゴム等の弾性部材からなるもの等でもよい。
【0025】
なお、車軸部35の先端面部は円板状のカバー38にて覆われ、車軸部35の中間部には円環状のガード39が取り付けられている(図2参照)。
【0026】
また、農作業機1は、図1ないし図7に示されるように、作業時にゲージ輪31の車輪部(回転体)36の外周面部に付着した付着土aを除去する土除去手段である土除去装置41を備えている。
【0027】
土除去装置41は、左右方向長手状をなす軸状の支持部である支軸部42を有する支持体43と、この支持体43の支軸部42にてその支軸部(左右方向の回動中心軸線X)42を中心として上下方向に回動可能に支持され、ゲージ輪31の車輪部36の外周面部に接触して付着土aを除去する土除去体(スクレーパ)44とを備えている。
【0028】
すなわち例えば、土除去装置41は、支軸部42を有する支持体43と、この支持体43の支軸部42にて回動可能に支持され、機体2の振動および付着土aの押圧に基づいて支軸部42に対して回動して車輪部36の外周面部に接触して付着土aを除去する土除去体44とを備えている。
【0029】
そして、土除去体44は、例えば支持体43の支軸部42の軸方向である左右方向(長手方向)に等間隔をおいて並ぶ同一形状の複数、例えば3つ(2つや、4つ以上でもよい)の分割部材である土除去部材45にて構成されている。各土除去部材45は、支軸部42に対して前後に対称形状に形成されている。また、各土除去部材45は、支軸部42に対して脱着可能となっており、180度反転させて使用することも可能である。
【0030】
支持体43は、図5(a)および(b)等に示されるように、細長板状の取付部46を有し、この取付部46の基端部には、複数、例えば2つの取付用孔47が形成されている。なお、ゲージ輪31のアーム部33の下端近傍には、取付用孔47に対応する2つのねじ孔48が形成されている。
【0031】
そして、図3および図4等に示すように、取付手段であるボルト50が取付用孔47に挿入されてねじ孔48に螺合されることにより、支持体43の取付部46の基端側がゲージ輪31のアーム部33の下端近傍に脱着可能に取り付けられている。
【0032】
この取付状態において、支持体43の取付部46は、ゲージ輪31のアーム部33の下端近傍から斜め前上方に向って突出している。このため、土除去体44は、ゲージ輪31の車輪部36の外周面部のうち前部上側の部分と接触するように、側面視でゲージ輪31のアーム部33よりも前方の位置に配設されている。このように、土除去体44は、農作業機1の他の構成部材(例えば前フレーム部28やホルダ部29等)と干渉しない位置に配設されている。
【0033】
また、支持体43の取付部46の先端部には、土除去体44を回動可能に支持する1本の丸軸状の支軸部42が取付部46に対して直交するように固設されている。つまり、取付部46の先端部の側面から支軸部42が側方に向って一体的に突出している。
【0034】
そして、支軸部42の外周側には、複数、例えば3つの土除去部材45と複数、例えば3つの円筒状のカラー部材51とがそれぞれ個別に回転可能に嵌合配設されている。支軸部42の基端側に位置する一のカラー部材51は、一の土除去部材45と取付部46との間に挟持配設されている。残りの2つのカラー部材51の各々は、所定間隔を介して互いに隣り合う土除去部材45間に挟持配設されている。
【0035】
また、支軸部42の先端部には、土除去部材45およびカラー部材51が支軸部42から抜け出るのを防止する円形環状の抜止め用の止め輪49が脱着可能に嵌着されている。なお、例えばカラー部材51の変更等により、土除去部材45の支軸部42に対する位置を調整することが可能となっている。
【0036】
土除去体44を構成する各土除去部材45は、図5(a)および(b)等に示されるように、軸方向両端面が開口した円筒状をなす被支持部53を有し、この被支持部53内に支軸部42が嵌入され、この支軸部42にて被支持部53が回動中心軸線Xを中心として回動可能に支持されている。なお、回動中心軸線Xは、支軸部42の軸芯を通る水平な線である。
【0037】
また、被支持部53の外周面部のうち下部一方側の部分(後側部分)には、先端側の接触部54aが車輪部36の外周面部に線状に接触可能な板状の一方側土除去部54が後方に向かって突設されている。被支持部53の外周面部のうち下部他方側の部分(前側部分)には、先端側の接触部55aが車輪部36の外周面部に線状に接触可能な板状の他方側土除去部55が前方に向かって突設されている。なお、両土除去部54,55は、同一形状のもので、前後対称である点のみで異なっており、側面視でハ字状となるように被支持部53の下部両側に突設されている。
【0038】
一方側土除去部54は、矩形板状のもので、下面が1つの平面56にて形成されているが、上面は、その平面56と平行な第1面57と、先端ほど板厚が薄くなるように傾斜する傾斜状の第2面58とにて形成されている。そして、一方側土除去部54の基端部が被支持部53の外周面部の後側部分に固着され、一方側土除去部54の先端部が車輪部36の外周面部に線状に接触して付着土aを除去する接触部54aとなっている。
【0039】
同様に、他方側土除去部55は、矩形板状のもので、下面が1つの平面61にて形成されているが、上面は、その平面61と平行な第1面62と、先端ほど板厚が薄くなるように傾斜する傾斜状の第2面63とにて形成されている。そして、他方側土除去部55の基端部が被支持部53の外周面部の前側部分に固着され、他方側土除去部55の先端部が車輪部36の外周面部に線状に接触して付着土aを除去する接触部55aとなっている。
【0040】
ここで、図6から明らかなように、これら前後の一方側土除去部54および他方側土除去部55のいずれか一方、例えば一方側土除去部54の接触部54aがゲージ輪31の車輪部36の外周面部に接触した状態では、一方側土除去部54および他方側土除去部55のいずれか他方、例えば他方側土除去部55の接触部55aとゲージ輪31の車輪部36の外周面部との間に所定寸法の隙間sが存在する。そして、土除去体44の各土除去部材45の被支持部53は、支持体43の支軸部42に対してその隙間s分だけ上下回動可能となっている。
【0041】
具体的に説明すると、図6に示す例では、土除去部材45の重心が回動中心軸線Xよりも後方にずれて位置するため、土除去部材45は、通常では、実線で示す通常位置に位置し、一方側土除去部54の接触部54aがゲージ輪31の車輪部36の外周面部に接触した状態となる。この状態で、土除去部材45は、支軸部42に対して隙間s分だけ一方向(A方向)に回動可能である。
【0042】
そして、土除去部材45は、隙間s分だけ一方向に回動すると、他方側土除去部55の接触部55aがゲージ輪31の車輪部36の外周面部に接触することによりその他方側土除去部55がストッパとなってその一方向への回動が規制され、2点鎖線で示す回動位置に位置した状態となる。この状態で、土除去部材45は、支軸部42に対して隙間s分だけ一方向とは反対の他方向(B方向)に回動可能である。
【0043】
そして、土除去部材45は、隙間s分だけ他方向に回動すると、一方側土除去部54の接触部54aがゲージ輪31の車輪部36の外周面部に接触することによりその一方側土除去部54がストッパとなってその他方向への回動が規制され、もとの通常位置に位置した状態となる。
【0044】
このように、土除去体44の各土除去部材45は、支持体43の支軸部42に対して、所定寸法の隙間s分だけA方向およびB方向にそれぞれ個別に上下回動可能となっている。なお、隙間sの大きさは、例えば1〜8mmで、好ましくは3mmである。
【0045】
次に、農作業機1の作用等を説明する。
【0046】
農作業機1がトラクタの走行により前方に移動すると、耕耘体3が耕耘作業をし、この耕耘体3の後方で整地体4が整地作業をする。
【0047】
この作業時に、ゲージ輪31は、圃場に接地した状態で圃場上を走行し、耕耘体3の耕耘深さを設定するが、このゲージ輪31の車輪部36の外周面部には圃場の土が付着して付着土aとなる。
【0048】
しかし、この付着土aは、図7に示すように、土除去装置41の土除去体44によって掻き取られて車輪部36の外周面部から除去される。
【0049】
すなわち、図7(a)に示すように、土除去体44の土除去部材45が通常位置に位置した状態では、回転する車輪部36の回転方向後方側に位置する一方側土除去部54の接触部54aが、車輪部36の外周面部に接触してその外周面部の付着土aを掻き取って除去する。
【0050】
また、図7(b)に示すように、耕耘体3の回転等による機体2の振動や、車輪部36の外周面部に付着した付着土aからの押圧に基づいて、土除去体44の土除去部材45が隙間s分だけ回動して回動位置に位置した状態では、回転する車輪部36の回転方向前方側に位置する他方側土除去部55の接触部55aが、車輪部36の外周面部に接触してその外周面部の付着土aを掻き取って除去する。
【0051】
またこのとき、一方側土除去部54の接触部54aは、車輪部36の外周面部から隙間s分だけ離れているが、付着土aのうち隙間sよりも厚く付着した表面側の部分を掻き取って除去する。すなわち、この図7(b)の状態では、一方側土除去部54の接触部54aが付着土aの表面部分を除去し、かつ、他方側土除去部55の接触部55aが付着土aの残り部分を除去する。
【0052】
なお、各土除去部材45は、機体2の振動や付着土aの押圧等に基づいて、通常位置に復帰することもあり、例えば通常位置および回動位置間を往復回動することもある。
【0053】
また一方、例えば長期の使用によって一方側土除去部54が大きく磨耗した場合には、土除去部材45を支軸部42から一旦取り外し、180度回して前後反転させた後、その土除去部材45を再度支軸部42に取り付けて使用する。なお、一方側土除去部54および他方側土除去部55の両方が大きく磨耗してしまった場合には、新たな土除去部材45に交換する。
【0054】
そして、上記農作業機1の土除去装置41によれば、土除去体44が支持体43の支軸部42にて回動可能に支持された構成であるため、従来のようなスクレーパを固着した構成に比べて、ゲージ輪31の車輪部36に付着した付着土aを適切に除去できる。
【0055】
また、土除去体44は、支軸部42に対して対称形状をなす一方側土除去部54および他方側土除去部55を有するため、付着土aをより一層適切に除去でき、しかも、例えば磨耗した場合に土除去体44を前後反転させて使用できるので、片側のみの構成に比べて、耐久性の向上を図ることができる。
【0056】
さらに、土除去体44は、支持体43の支軸部42に対して隙間s分だけ回動可能となっているため、不用意に大きく回動することがなく、大量の土が付着した場合であっても、その付着土aを適切かつ効果的に除去できる。
【0057】
また、土除去体44は、支持体43の支軸部42の軸方向に間隔をおいて並ぶ複数の土除去部材45にて構成されているため、各土除去部材45が支軸部42に対してそれぞれ個別に回動することとなり、よって付着土aをより一層適切に除去できる。
【0058】
次に、図8には、本発明の第2の実施の形態が示されている。
【0059】
この図8に示されるように、土除去体(土除去部材)44が、ゲージ輪31の車輪部36の外周面部のうち後部上側の部分と接触するように、側面視でゲージ輪31のアーム部33よりも後方の位置に配設される構成でもよい。
【0060】
次に、図9および図10には、本発明の第3の実施の形態が示されている。
【0061】
この図9図10に示されるように、土除去体44をゲージ輪31の車輪部36の外周面部に接触させるための付勢体であるコイルばね71を備える構成でもよい。すなわち、この土除去装置41は、土除去部材45の一方側土除去部54の接触部54aを車輪部36の外周面部に線状に接触させるためのコイルばね71を備えている。
【0062】
コイルばね71の一端部は、支持体43の取付部46の孔部72に取り付けられている。コイルばね71の他端側は、真っ直ぐな直線部71aにて構成され、この直線部71aが複数(例えば3つ)の土除去部材45の他方側土除去部55の下面に当接している。こうして、1本のコイルばね71によって複数の土除去部材45が所定方向(図6のB方向)に向けて同時に付勢され、これらの各土除去部材45の一方側土除去部54の接触部54aが車輪部36の外周面部に押し付けられている。
【0063】
そして、この構成では、土除去体44の接触部54aがコイルばね71の付勢力によってゲージ輪31の車輪部36の外周面部に接触するため、ゲージ輪31の車輪部36の外周面部に付着した付着土aをより一層適切に除去できる。
【0064】
次に、図11(a)および(b)には、本発明の第4の実施の形態が示されている。
【0065】
この図11(a)、(b)に示されるように、部品点数の軽減等のために、土除去体44を1つの土除去部材45のみで構成したものでもよい。なお、例えば1つの土除去部材45のみからなる土除去体44をゲージ輪31のアーム部33よりも後方の位置に配設するようにしてもよく(図8参照)、また、1つの土除去部材45のみからなる土除去体44をコイルばね71で付勢してゲージ輪31の車輪部36の外周面部に接触させるようにしてもよい。
【0066】
なお、いずれの実施の形態においても、土除去装置41は、ゲージ輪31の車輪部36に付着した付着土aを除去するものとして説明したが、ゲージ輪31の車輪部36には限定されず、農作業機の回転体であれば任意であり、農作業機の種類も問わない。
【0067】
また、土除去体44は、一方側土除去部54および他方側土除去部55の両方を有するものには限定されず、例えば一方側土除去部54および他方側土除去部55のいずれか一方のみを有するものでもよい。
【0068】
さらに、土除去体44は、土除去部54,55が被支持部53に固着されたものには限定されず、例えば磨耗した土除去部54,55を交換できるように、土除去部54,55が被支持部53に脱着可能に取り付けられたものでもよい。
【0069】
また、例えば支持体43の取付部46に関し、図3の取付状態と図8の取付状態とを適宜選択できるような対称形状としてもよい。
【0070】
なお、本発明のいくつかの実施の形態およびその変形例について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、前記各実施の形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 農作業機
36 回転体である車輪部
41 土除去装置
42 支持部である支軸部
43 支持体
44 土除去体
45 土除去部材
53 被支持部
54 一方側土除去部
55 他方側土除去部
71 付勢体であるコイルばね
a 付着土
s 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
図11