(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記切替機能は、前記バックアップモードにおいて、前記電池からの電力が前記第1センサまたは前記第2センサの一方のみに供給されるように電力供給経路の切替を行う機能であることを特徴とする請求項1または2記載のエンコーダ。
【背景技術】
【0002】
従来、回転体の回転角度の絶対位置を検出するためのエンコーダとして、主電源とバックアップ用の電池とを有するエンコーダが知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のエンコーダは、サーボモータのロータの回転角度を検出するためのものであり、ロータを構成する回転軸等に固定されるセンサ磁石と、センサ磁石に対向配置される磁気抵抗素子および2個のホール素子とを備えている。また、このエンコーダは、2個のホール素子のそれぞれが電気的に接続される2個のコンパレータと、2個のコンパレータの出力側が接続されるCPUとを備えている。このエンコーダでは、主電源から供給される電力によってエンコーダが動作する通常動作モードと、主電源からの電力の供給が停止されるとともにバックアップ用の電池から供給される電力によってエンコーダが動作するバックアップモードとに切り替え可能となっている。
【0003】
特許文献1に記載のエンコーダでは、通常動作モードにおいて、2個のホール素子および2個のコンパレータに主電源から常時、電力が供給されている。また、このエンコーダでは、通常動作モードにおいて、一方のホール素子から出力される出力信号に基づいて第1検出信号が生成されるとともに、他方のホール素子から出力される出力信号に基づいて第2検出信号が生成される。第1検出信号および第2検出信号は、ロータの1回転を1周期とするとともに互いの位相が90°ずれた矩形波状の信号である。そのため、第1検出信号のレベルと第2検出信号とのレベルとの組合せとして4つの組合せが生じる。特許文献1に記載のエンコーダでは、この4つの組合せに基づいて、ロータの1回転の範囲内におけるロータの概略回転位置が検出される。また、このエンコーダでは、第1検出信号のレベルと第2検出信号とのレベルとの組合せが順次、変遷していくことを検出することで、ロータが所定の原点位置から何回転したのかが検出される。
【0004】
また、特許文献1に記載のエンコーダでは、バックアップモードにおいて、所定のサンプリング周期で、一方のホール素子および一方のコンパレータにバックアップ用の電池から電力が供給されて、このホール素子およびコンパレータが起動、停止し、第1検出信号が生成される。また、バックアップモードにおいては、所定のサンプリング周期で生成される第1検出信号のレベルが反転したときに、他方のホール素子および他方のコンパレータに電池から電力が供給されて、このホール素子およびコンパレータが起動、停止し、第2検出信号が生成される。
【0005】
このように、特許文献1に記載のエンコーダでは、バックアップモードにおいて、所定のサンプリング周期で、一方のホール素子およびコンパレータに電池から電力が供給されるが、所定のサンプリング周期で生成される第1検出信号のレベルが反転しなければ、他方のホール素子およびコンパレータに電池から電力が供給されない。そのため、このエンコーダでは、バックアップ用の電池から供給される電力によってエンコーダが動作するバックアップモードにおいて、エンコーダの消費電力を低減することが可能になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、特許文献1に記載のエンコーダでは、バックアップモードにおいて、所定のサンプリング周期で生成される第1検出信号のレベルが反転しなければ、他方のホール素子およびコンパレータに電力が供給されない。すなわち、このエンコーダでは、バックアップモードにおいて、所定のサンプリング周期で生成される第1検出信号のレベルが反転しなければ、第2検出信号が生成されない。そのため、このエンコーダでは、バックアップモードにおいて、第1検出信号のレベルと第2検出信号とのレベルとの組合せを正確に把握できない状況が生じうる。第1検出信号のレベルと第2検出信号とのレベルとの組合せを正確に把握できない状況が生じると、ロータの1回転の範囲内におけるロータの概略回転位置を正確に把握することが困難になるとともに、ロータが所定の原点位置から何回転したのかを正確に把握することが困難になる。
【0008】
一方、バックアップモードにおいて、第1検出信号のレベルと第2検出信号とのレベルとの組合せを正確に把握して、ロータの1回転の範囲内におけるロータの概略回転位置を正確に把握するとともにロータが所定の原点位置から何回転したのかを正確に把握するためには、所定のサンプリング周期で、両方のホール素子およびコンパレータに電力を供給して、第1検出信号のレベルと第2検出信号とのレベルとを検出すれば良い。しかしながら、この場合には、バックアップモードにおいて、エンコーダの消費電力が増大する。
【0009】
そこで、本発明の課題は、バックアップ用の電池から供給される電力によって動作するバックアップモードにおいて、回転体の1回転の範囲内における回転体の概略回転位置を正確に把握すること、および、回転体が所定の原点位置から何回転したのかを正確に把握することが可能であっても、消費電力を低減することが可能なエンコーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明のエンコーダは、主電源とバックアップ用の電池とを備えるエンコーダであって、回転体の回転角度を検出するための第1センサおよび第2センサと、第1センサが出力する第1出力信号および第2センサが出力する第2出力信号が入力されるマイコンとを備え、第1出力信号は、回転体の1回転を1周期とする正弦波信号であり、第2出力信号は、回転体の1回転を1周期とする余弦波信号であり、正弦波信号の位相と余弦波信号の位相とは、互いに90°ずれており、主電源からの電力の供給が停止されるとともに電池から供給される電力によってマイコンが動作するときのエンコーダのモードをバックアップモードとし、1周期分の正弦波信号のレベルと余弦波信号のレベルとの組合せに基づいて特定される回転体の1回転内の4つの回転角度範囲を第1回転角度範囲、第2回転角度範囲、第3回転角度範囲および第4回転角度範囲とすると、回転体が一方向へ回転しているときには、回転体の回転角度範囲は、第1回転角度範囲、第2回転角度範囲、第3回転角度範囲および第4回転角度範囲の順番に変遷するとともに、回転体が1回転すると第4回転角度範囲から第1回転角度範囲に戻り、マイコンは、第1出力信号と所定の第1の閾値とを比較しこの比較結果に基づいて矩形波状の第1検出信号を生成するとともに、第2出力信号と所定の第2の閾値とを比較しこの比較結果に基づいて矩形波状の第2検出信号を生成するコンパレータ機能と、コンパレータ機能によって第1検出信号または第2検出信号のいずれの生成を行うかの切替を行うための切替機能と、回転体の回転角度が第1回転角度範囲、第2回転角度範囲、第3回転角度範囲または第4回転角度範囲のいずれの範囲内にあるのかを示す概略回転位置データと回転体が所定の原点位置から何回転したのかを示す多回転データとを第1検出信号と第2検出信号とに基づいて生成するデータ生成機能と、概略回転位置データおよび多回転データを記憶するデータ記憶機能と、電池からマイコンに供給された電力を第1センサおよび第2センサに供給する電力供給機能とを備え、バックアップモードにおいて、マイコンは、所定のサンプリング周期で起動、停止し、マイコンの動作時に、コンパレータ機能および切替機能によって第1検出信号および第2検出信号を順次生成するとともに、順次生成された第1検出信号および第2検出信号に基づいて、概略回転位置データおよび多回転データを生成して記憶することを特徴とする。
【0011】
本発明のエンコーダでは、バックアップ用の電池から供給される電力によってマイコンが動作するバックアップモードにおいて、マイコンは、所定のサンプリング周期で起動、停止するマイコンの動作時に、コンパレータ機能および切替機能によって第1検出信号および第2検出信号を順次生成し、順次生成された第1検出信号および第2検出信号に基づいて、概略回転位置データおよび多回転データを生成して記憶している。すなわち、本発明では、バックアップモードにおいても、所定のサンプリング周期で生成される第1検出信号および第2検出信号に基づいて、概略回転位置データおよび多回転データを生成して記憶している。そのため、本発明では、バックアップモードにおいても、回転体の1回転の範囲内における回転体の概略回転位置を正確に把握すること、および、回転体が所定の原点位置から何回転したのかを正確に把握することが可能になる。
【0012】
また、本発明では、バックアップモードにおいて、1個のマイコンのコンパレータ機能を利用して、第1出力信号と第1の閾値とを比較しこの比較結果に基づいて矩形波状の第1検出信号を生成した後に、第2出力信号と第2の閾値とを比較しこの比較結果に基づいて矩形波状の第2検出信号を生成している。そのため、本発明では、2個のコンパレータを使用して第1検出信号および第2検出信号を生成する場合と比較して、バックアップモードにおける消費電力を低減することが可能になる。すなわち、本発明では、バックアップモードにおいて、回転体の1回転の範囲内における回転体の概略回転位置を正確に把握すること、および、回転体が所定の原点位置から何回転したのかを正確に把握することが可能であっても、消費電力を低減することが可能になる。
【0013】
本発明において、エンコーダは、マイコンが電気的に接続される第2のマイコンを備え、主電源から供給される電力によってマイコンおよび第2のマイコンが動作するときのエンコーダのモードを通常動作モードとすると、バックアップモードから通常動作モードに切り替わると、マイコンに記憶された概略回転位置データおよび多回転データが第2のマイコンに入力されることが好ましい。このように構成すると、バックアップモードから通常動作モードに切り替わったときに入力される概略回転位置データおよび多回転データに基づいて、第2のマイコンで、回転体の絶対回転位置(回転角度の絶対位置)を算出することが可能になる。
【0014】
本発明において、切替機能は、バックアップモードにおいて、電池からの電力が第1センサまたは第2センサの一方のみに供給されるように電力供給経路の切替を行う機能であることが好ましい。このように構成すると、バックアップモードにおけるマイコンの動作時に第1センサおよび第2センサの両方に常時電力が供給されている場合と比較して、バックアップモードにおいて、消費電力をより低減することが可能になる。
【0015】
本発明において、エンコーダは、マイコンが電気的に接続される第2のマイコンを備え、主電源から供給される電力によってマイコンおよび第2のマイコンが動作するときのエンコーダのモードを通常動作モードとするとともに、回転体の最高角加速度をa(rad/sec
2)とし、回転体の最高回転数をN(rpm)とすると、通常動作モードからバックアップモードに切り替わったときのサンプリング周期は、
t1<(√(π/{(1/2)×a})−√({π/2}/{(1/2)×a}))
の関係を満足するt1(sec)となっており、
バックアップモードにおいて概略回転位置データに変化があると、サンプリング周期は、
t2<1/{(N/60)/(90/360)}
の関係を満足するt2(sec)に切り替わることが好ましい。このように構成すると、バックアップモードにおいて、回転体の1回転の範囲内における回転体の概略回転位置をより正確に把握すること、および、回転体が所定の原点位置から何回転したのかをより正確に把握することが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明のエンコーダでは、バックアップ用の電池から供給される電力によって動作するバックアップモードにおいて、回転体の1回転の範囲内における回転体の概略回転位置を正確に把握すること、および、回転体が所定の原点位置から何回転したのかを正確に把握することが可能であっても、消費電力を低減することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0019】
(エンコーダの構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるエンコーダ1の概略構成を説明するためのブロック図である。
図2は、
図1に示すエンコーダ1の機械的な構成を説明するための概略図である。
図3は、
図1に示すマイコン8で生成される第1検出信号S1および第2検出信号S2と、磁気抵抗素子7からの入力信号に基づいてマイコン9で算出される計算値とを説明するための図である。
図4は、
図1に示すエンコーダ1の通常動作モードにおけるホール素子5、6の駆動タイミングを説明するための図である。
図5は、
図1に示すエンコーダ1のバックアップモードにおけるマイコン8およびホール素子5、6の駆動タイミングを説明するための図である。
【0020】
本形態のエンコーダ1は、回転体の回転角度(回転位置)を検出するための装置である。具体的には、エンコーダ1は、回転体としてのサーボモータのロータの回転角度を検出するための装置であり、サーボモータに取り付けられている。このエンコーダ1は、サーボモータを駆動および制御するモータ駆動装置(モータドライバ)に電気的に接続されている。また、エンコーダ1は、ロータの回転角度の絶対位置を検出するためのアブソリュートエンコーダ(絶対値エンコーダ)である。
【0021】
また、本形態のエンコーダ1は、磁気式のロータリーエンコーダである。このエンコーダ1は、サーボモータのロータを構成する回転軸3に固定される検出用磁石4と、ロータの回転角度を検出するための2個のホール素子5、6および磁気抵抗素子7と、ホール素子5が出力する第1出力信号およびホール素子6が出力する第2出力信号が入力されるマイコン(マイクロコントローラ)8と、磁気抵抗素子7が出力する出力信号が入力されるとともにマイコン8が電気的に接続されるマイコン(マイクロコントローラ)9とを備えている。本形態のホール素子5は第1センサであり、ホール素子6は第2センサであり、マイコン9は第2のマイコンである。
【0022】
また、エンコーダ1は、主電源11と、バックアップ用の電池12とを備えている。主電源11は、マイコン8、9に接続され、電池12は、マイコン8に接続されている。エンコーダ1では、通常、主電源11からマイコン8、9に電力が供給されており、マイコン8、9は、主電源11から供給される電力によって動作している。また、何らかの原因で、主電源11からの電力の供給が停止されると、電池12からマイコン8に電力が供給され、マイコン8は、電池12から供給される電力によって動作する。すなわち、エンコーダ1は、主電源11から供給される電力によってマイコン8、9が動作するときのエンコーダ1のモードである通常動作モードと、電池12から供給される電力によってマイコン8が動作するときのエンコーダ1のモードであるバックアップモードとに切替可能となっている。バックアップモードにおいては、マイコン9には電力が供給されず、マイコン9は停止している。
【0023】
ホール素子5、6および磁気抵抗素子7は、検出用磁石4に対向配置されている。検出用磁石4は、円板状に形成された永久磁石である。検出用磁石4の、ホール素子5、6および磁気抵抗素子7との対向面には、ロータの周方向において、N極とS極とが1極ずつ形成されている。検出用磁石4は、回転軸3の軸方向から見たときに、ロータの回転中心と検出用磁石4の中心とが一致するように回転軸3に固定されている。
【0024】
ホール素子5とホール素子6とは、回転軸3の軸方向から見たときに、ロータの回転中心に対して(すなわち、検出用磁石4の中心に対して)互いに90°ずれた位置に配置されている。ホール素子5は、第1出力信号として、ロータの1回転を1周期とする正弦波信号を出力し、ホール素子6は、第2出力信号として、ロータの1回転を1周期とする余弦波信号を出力する。すなわち、ホール素子5、6は、ロータの回転角度に応じて周期的にそのレベルが変動する正弦波信号および余弦波信号を出力する。ホール素子5が出力する正弦波信号の位相と、ホール素子6が出力する余弦波信号の位相とは、互いに90°ずれている。
【0025】
磁気抵抗素子7は、回転軸3の軸方向から見たときに、ロータの回転中心と磁気抵抗素子7の中心とが略一致するように配置されている。磁気抵抗素子7には、互いに略直交する方向に配置される磁気抵抗パターンが形成されている。磁気抵抗素子7は、ロータの半回転を1周期とする正弦波信号および余弦波信号を出力する。すなわち、磁気抵抗素子7は、ホール素子5、6が出力する正弦波信号および余弦波信号の半分の周期を有するとともに、ロータの回転角度に応じて周期的にそのレベルが変動する正弦波信号および余弦波信号を出力する。磁気抵抗素子7が出力する正弦波信号の位相と、磁気抵抗素子7が出力する余弦波信号の位相とは、互いに90°ずれている。
【0026】
マイコン8は、ホール素子5が出力する正弦波信号と所定の第1の閾値とを比較し、この比較結果に基づいて矩形波状の第1検出信号(A相信号)S1を生成するとともに、ホール素子6が出力する余弦波信号と所定の第2の閾値とを比較し、この比較結果に基づいて矩形波状の第2検出信号(B相信号)S2を生成するコンパレータ機能を備えている。すなわち、マイコン8では、そのコンパレータ機能によって、ホール素子5が出力する正弦波信号に基づいて、ロータの1回転を1周期とする矩形波状の第1検出信号S1が生成され、ホール素子6が出力する余弦波信号に基づいて、ロータの1回転を1周期とする矩形波状の第2検出信号S2が生成される。たとえば、ロータが一定速度で回転している場合であって、かつ、第1検出信号S1および第2検出信号S2が連続で生成されている場合には、
図3に示すような第1検出信号S1および第2検出信号S2がマイコン8で生成される。なお、本形態では、後述のように、実際には、第1検出信号S1および第2検出信号S2は、間欠的に生成される。
【0027】
第2検出信号S2の位相は、第1検出信号S1の位相に対して90°ずれている。そのため、
図3に示すように、1周期分の第1検出信号S1および第2検出信号S2に基づいて、第1検出信号S1のレベルおよび第2検出信号S2のレベルがともに「ロー」であるときのロータの回転角度範囲(第1回転角度範囲)A1と、第1検出信号S1のレベルが「ロー」で第2検出信号S2のレベルが「ハイ」であるときのロータの回転角度範囲(第2回転角度範囲)A2と、第1検出信号S1のレベルおよび第2検出信号S2のレベルがともに「ハイ」であるときのロータの回転角度範囲(第3回転角度範囲)A3と、第1検出信号S1のレベルが「ハイ」で第2検出信号S2のレベルが「ロー」であるときのロータの回転角度範囲(第4回転角度範囲)A4とのロータの1回転内の4つの回転角度範囲を特定することができる。すなわち、1周期分の第1検出信号S1のレベルと第2検出信号S2のレベルとの組合せに基づいて、ロータの1回転内の4つの回転角度範囲を特定することができる。すなわち、ホール素子5が出力する1周期分の正弦波信号のレベルとホール素子6が出力する1周期分の余弦波信号のレベルとの組合せに基づいて、ロータの1回転内の4つの回転角度範囲を特定することができる。
【0028】
たとえば、所定の原点位置にロータがあるときのロータの回転角度を0°とすると、ロータの回転角度が0°〜90°の間であるときに、ロータは第1回転角度範囲A1内にあり、ロータの回転角度が90°〜180°であるときに、ロータは第2回転角度範囲A2内にあり、ロータの回転角度が180°〜270°であるときに、ロータは第3回転角度A3内にあり、ロータの回転角度が270°〜360°であるときに、ロータは第4回転角度A4内にある。
【0029】
また、マイコン8は、所定のサンプリングタイムで第1検出信号S1および第2検出信号S2のレベルを取得して、ロータの回転角度が、第1回転角度範囲A1、第2回転角度範囲A2、第3回転角度範囲A3または第4回転角度範囲A4のいずれの範囲内にあるのかを示す概略回転位置データを生成する。また、ロータが一方向へ回転しているときに、ロータの1回転内の回転角度範囲は、第1回転角度範囲A1、第2回転角度範囲A2、第3回転角度範囲A3および第4回転角度範囲A4の順番に変遷するとともに、ロータが1回転すると第4回転角度範囲A4から第1回転角度範囲A1に戻る。そのため、マイコン8は、ロータの回転角度範囲の変遷に基づいて、ロータが所定の原点位置から何回転したのかを示す多回転データを生成する。
【0030】
このように、マイコン8は、第1検出信号S1と第2検出信号S2とに基づいて、概略回転位置データおよび多回転データを生成するデータ生成機能を備えている。また、マイコン8は、生成された概略回転位置データおよび多回転データを記憶するデータ記憶機能も備えている。マイコン8は、生成した概略回転位置データおよび多回転データをマイコン9へ出力する。また、マイコン8は、通常動作モードにおいて、主電源11からマイコン8に供給された電力をホール素子5、6に供給するとともに、バックアップモードにおいて、電池12からマイコン8に供給された電力をホール素子5、6に供給する電力供給機能を備えている。
【0031】
マイコン9は、磁気抵抗素子7から入力される正弦波信号および余弦波信号を用いた所定の演算を行って、この正弦波信号および余弦波信号の1周期ごとに所定値から所定値まで増加する計算値を算出する。具体的には、マイコン9は、磁気抵抗素子7から入力される正弦波信号の値と余弦波信号の値との比のATAN(アークタンジェント)を算出する。たとえば、マイコン9は、ロータが一定速度で回転している場合に、
図3に示すのこぎり刃状の直線をなす計算値を算出する。また、マイコン9は、この計算値と、マイコン8から入力される概略回転位置データとに基づいて、ロータの1回転内の回転角度の詳細位置を算出するとともに、このロータの1回転内の回転角度の詳細位置と、多回転データとに基づいて、所定の原点位置からのロータの回転角度の絶対位置を算出する。
【0032】
以上のように構成されたエンコーダ1では、通常動作モードにおいては、マイコン8に常時、電力が供給されている。一方で、通常動作モードでは、マイコン8からホール素子5とホール素子6とに交互に電力が供給されている。また、通常動作モードでは、ホール素子5およびホール素子6の両方に電力が供給されない時間も設定されている。すなわち、
図4に示すように、通常動作モードでは、第1検出信号(A相信号)S1を生成するための正弦波信号を出力するホール素子5と、第2検出信号(B相信号)S2を生成するための余弦波信号を出力するホール素子6とが交互に起動、停止するとともに、ホール素子5およびホール素子6の両方が停止している時間がある。マイコン8は、そのコンパレータ機能によって、第1検出信号S1と第2検出信号S2とを交互に生成する。すなわち、本形態では、第1検出信号S1および第2検出信号S2が間欠的に生成される。また、通常動作モードにおいて、マイコン8は、生成された第1検出信号S1および第2検出信号S2に基づいて、ホール素子5およびホール素子6の両方が停止している時間に概略回転位置データおよび多回転データを生成し、生成された概略回転位置データおよび多回転データをマイコン9に向かって出力する。
【0033】
バックアップモードにおいては、
図5に示すように、所定のサンプリング周期Tで、マイコン8に電力が供給され、マイコン8は、サンプリング周期Tで起動、停止する。また、バックアップモードでは、マイコン8の動作時間ΔT内に、ホール素子5とホール素子6に電力が順次、供給される。また、バックアップモードでは、動作時間ΔT内に、ホール素子5およびホール素子6の両方に電力が供給されない時間も設定されている。すなわち、バックアップモードでは、動作時間ΔT内に、第1検出信号(A相信号)S1を生成するための正弦波信号を出力するホール素子5と、第2検出信号(B相信号)S2を生成するための余弦波信号を出力するホール素子6とが順番に1回ずつ起動、停止するとともに、ホール素子5およびホール素子6の両方が停止している時間がある。たとえば、マイコン8が起動するのとほぼ同時にホール素子5が起動し、ホール素子5が停止するのとほぼ同時にホール素子6が起動する。また、ホール素子6が停止してから所定時間経過後にマイコン8が停止する。マイコン8は、そのコンパレータ機能によって、動作時間ΔT内に、ホール素子5が出力した正弦波信号に基づいて第1検出信号S1を生成した後、ホール素子6が出力した余弦波信号に基づいて第2検出信号S2を生成する。また、バックアップモードにおいて、マイコン8は、生成された第1検出信号S1および第2検出信号S2に基づいて、ホール素子5およびホール素子6の両方が停止している時間に概略回転位置データおよび多回転データを生成して記憶する。
【0034】
このように、マイコン8は、コンパレータ機能によって第1検出信号S1または第2検出信号S2のいずれの生成を行うかの切替を行うための切替機能を備えている。この切替機能は、通常動作モードにおいては、主電源11からの電力がホール素子5またはホール素子6の一方のみに供給されるように電力供給経路の切替を行う機能であり、バックアップモードにおいては、電池12からの電力がホール素子5またはホール素子6の一方のみに供給されるように電力供給経路の切替を行う機能である。この切替機能およびコンパレータ機能によって、マイコン8は、バックアップモードにおいて、その動作時に、第1検出信号S1および第2検出信号S2を順次生成する。
【0035】
ここで、ロータの最高角加速度をa(rad/sec
2(ラジアン/秒
2))とし、ロータの最高回転数をN(rpm)とすると、ロータの1回転内の回転角度範囲が、90°ごとに区切られる第1回転角度範囲A1〜第4回転角度範囲A4に順次、変遷していくことをマイコン8が検出して、適切な概略回転位置データおよび多回転データを生成できるように、サンプリング周期Tは以下のように設定されている。
【0036】
すなわち、通常動作モードからバックアップモードに切り替わったときのサンプリング周期Tは、
t1<(√(π/{(1/2)×a})−√({π/2}/{(1/2)×a}))
の関係を満足するt1(sec)となっている。本形態では、たとえば、ロータの最高角加速度は、80000(rad/sec
2)であり、t1は、2.6(msec(ミリ秒))となっている。
【0037】
また、バックアップモードにおいて概略回転位置データに変化があると(すなわち、ロータの回転角度範囲が、第1回転角度範囲A1、第2回転角度範囲A2、第3回転角度範囲A3または第4回転角度範囲A4のいずれかから第1回転角度範囲A1、第2回転角度範囲A2、第3回転角度範囲A3または第4回転角度範囲A4のいずれかに変遷すると)、サンプリング周期Tは、
t2<1/{(N/60)/(90/360)}
の関係を満足するt2(sec)に切り替わる。本形態では、t2は、たとえば、0.5(msec)となっている。
【0038】
また、その後、t2(sec)のサンプリング周期Tで、複数回サンプリングを行っても、概略回転位置データに変化がない場合には、サンプリング周期Tは、t2(sec)からt1(sec)へ切り替わる。たとえば、t2(sec)のサンプリング周期Tで、8回サンプリングを行っても、概略回転位置データに変化がない場合に、サンプリング周期Tは、t2(sec)からt1(sec)へ切り替わる。
【0039】
また、バックアップモードから通常動作モードに切り替わると、マイコン8は、記憶している概略回転位置データおよび多回転データをマイコン9に向かって出力する。すなわち、バックアップモードから通常動作モードに切り替わると、マイコン8に記憶された概略回転位置データおよび多回転データがマイコン9に入力される。そのため、バックアップモードにおいて、マイコン9が停止していても、通常動作モードに切り替わったときに、マイコン9は、所定の原点位置からのロータの回転角度の絶対位置を算出することが可能になる。
【0040】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、マイコン8は、バックアップモードにおいて、サンプリング周期Tで起動、停止するマイコン8の動作時間内ΔT内に、第1検出信号S1と第2検出信号S2とを順番に生成するとともに、生成された第1検出信号S1および第2検出信号S2に基づいて、ホール素子5およびホール素子6の両方が停止している時間に概略回転位置データおよび多回転データを生成して記憶している。すなわち、本形態では、バックアップモードにおいても、サンプリング周期Tで生成される第1検出信号S1および第2検出信号S2に基づいて、ホール素子5およびホール素子6の両方が停止している時間に概略回転位置データおよび多回転データを生成して記憶している。そのため、本形態では、バックアップモードにおいても、ロータの1回転の範囲内におけるロータの概略回転位置を正確に把握すること、および、ロータが原点位置から何回転したのかを正確に把握することが可能になる。
【0041】
本形態では、マイコン8は、バックアップモードにおいて、マイコン8の動作時間内ΔT内にホール素子5とホール素子6とに順次電力を供給して、第1検出信号S1と第2検出信号S2とを順番に生成している。すなわち、本形態では、バックアップモードにおいて、1個のマイコン8のコンパレータ機能を利用して、マイコン8の動作時間内ΔT内に第1検出信号S1を生成した後に第2検出信号S2を生成している。そのため、本形態では、マイコン8の動作時間内ΔT内に2個のコンパレータを使用して第1検出信号S1および第2検出信号S2を生成する場合と比較して、バックアップモードにおける消費電力を低減することが可能になる。
【0042】
特に本形態では、バックアップモードにおいて、マイコン8の動作時間内ΔT内に、ホール素子5とホール素子6とが順番に1回ずつ起動、停止しているため、マイコン8の動作時間内ΔT内に、ホール素子5およびホール素子6の両方に常時電力が供給されている場合と比較して、バックアップモードにおいて、消費電力をより低減することが可能になる。
【0043】
本形態では、通常動作モードからバックアップモードに切り替わったときのサンプリング周期Tは、
t1<(√(π/{(1/2)×a})−√({π/2}/{(1/2)×a}))
の関係を満足するt1(sec)となっており、また、バックアップモードにおいて概略回転位置データに変化があると、サンプリング周期Tは、
t2<1/{(N/60)/(90/360)}
の関係を満足するt2(sec)に切り替わる。そのため、上述のように、ロータの1回転内の回転角度範囲が、90°ごとに区切られる第1回転角度範囲A1〜第4回転角度範囲A4に順次、変遷していくことをマイコン8が検出して、適切な概略回転位置データおよび多回転データを生成することが可能になる。したがって、本形態では、バックアップモードにおいて、ロータの1回転の範囲内におけるロータの概略回転位置をより正確に把握すること、および、ロータが原点位置から何回転したのかをより正確に把握することが可能になる。また、本形態では、t2(sec)のサンプリング周期Tで、複数回サンプリングを行っても、概略回転位置データに変化がない場合に、サンプリング周期Tがt2(sec)からt1(sec)へ切り替わるため、バックアップモードにおいて、消費電力を効果的に低減することが可能になる。
【0044】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0045】
上述した形態では、マイコン8は、主電源11または電池12からの電力がホール素子5またはホール素子6の一方のみに供給されるように電力供給経路の切替を行う切替機能を備えている。この他にもたとえば、主電源11または電池12からの電力がホール素子5およびホール素子6の両方に供給されるとともに、ホール素子5が出力する正弦波信号またはホール素子6が出力する余弦波信号の一方のみを閾値と比較して第1検出信号S1または第2検出信号S2のいずれかを生成するように信号経路の切替を行う切替機能を、マイコン8が備えていても良い。すなわち、コンパレータ機能によって第1検出信号S1または第2検出信号S2のいずれの生成を行うかの切替を行うための切替機能は、ホール素子5、6が出力する正弦波信号および余弦波信号の信号経路の切替を行う機能であっても良い。
【0046】
上述した形態では、エンコーダ1は、ロータの回転角度を検出するための第1センサおよび第2センサとして、ホール素子5、6を備えているが、エンコーダ1は、第1センサおよび第2センサとして、たとえば、発光素子および受光素子を有する光学式のセンサを備えていても良い。また、エンコーダ1は、第1センサおよび第2センサとして、磁気式のセンサおよび光学式のセンサ以外のセンサを備えていても良い。また、上述した形態では、エンコーダ1は、アブソリュートエンコーダであるが、エンコーダ1は、インクリメンタルエンコーダであっても良い。