(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6196543
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】タイヤ加硫機、及びそれを用いたタイヤ製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 33/02 20060101AFI20170904BHJP
B29C 35/04 20060101ALI20170904BHJP
B29D 30/12 20060101ALI20170904BHJP
B29L 30/00 20060101ALN20170904BHJP
【FI】
B29C33/02
B29C35/04
B29D30/12
B29L30:00
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-249433(P2013-249433)
(22)【出願日】2013年12月2日
(65)【公開番号】特開2015-104906(P2015-104906A)
(43)【公開日】2015年6月8日
【審査請求日】2016年10月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 豊
(72)【発明者】
【氏名】羽生 弘光
【審査官】
辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−006367(JP,A)
【文献】
特開2011−167979(JP,A)
【文献】
特開2006−297599(JP,A)
【文献】
特開2002−018857(JP,A)
【文献】
特開2003−220613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C33/00−33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外表面にタイヤ成形面を有する剛性中子の前記タイヤ成形面に形成された生タイヤを、前記剛性中子ごと加硫金型内に投入する中心機構を有するタイヤ加硫機であって、
前記中心機構は、
生タイヤ付きの剛性中子を同心に支持でき、かつ上下に移動することにより、上昇位置にて生タイヤ付きの剛性中子を受け取りかつ下降位置にて受け取った生タイヤ付きの剛性中子を前記加硫金型内に投入しうる中子支持軸部と、
前記中子支持軸部を、上下に移動可能かつ軸芯回りで回転可能に外挿保持する中子支持軸案内部と、
前記投入に先駆け、受け取った生タイヤ付きの剛性中子とともに前記中子支持軸部を軸芯回りで回転させかつ所定の回転位置で停止させることにより、加硫金型に対する生タイヤ付きの剛性中子の位相角度を調整する相対角度調整手段とを具えることを特徴とするタイヤ加硫機。
【請求項2】
前記剛性中子は、熱流体が充填される内側加熱用のチャンバ室を内部に有し、かつ下面に前記チャンバ室に熱流体を給排気する給排口部を具えるとともに、
前記加硫金型は、上面に前記給排口部に接続可能な接続口部を設けた下金型を具え、
かつ前記所定の回転位置は、前記給排口部が接続口部と一致する位置であることを特徴とする請求項1記載のタイヤ加硫機。
【請求項3】
前記相対角度調整手段は、前記中子支持軸部を回転駆動する駆動手段と、中子支持軸部の回転量を検知する回転量検知手段と、所定の回転位置にて中子支持軸部を固定する固定手段とを具えることを特徴とする請求項1又は2記載のタイヤ加硫機。
【請求項4】
前記固定手段は、前記中子支持軸部と一体回転できかつ外周にV溝状の係止溝又は該係止溝に係合しうるV字状の係止突起の一方からなる第1の係合部を有する回転板と、前記係止溝又は係止突起の他方からなる第2の係合部を第1の係合部に向かって半径方向に進退自在に有するストッパとを具えることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のタイヤ加硫機。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載のタイヤ加硫機を用いて生タイヤを加硫する加硫工程を有するタイヤ製造方法であって、
生タイヤ付きの剛性中子の加硫金型内への投入に先駆け、前記中子支持軸部を、前記受け取った生タイヤ付きの剛性中子とともに軸芯回りで回転させかつ所定の回転位置で停止させることにより、加硫金型に対する生タイヤ付きの剛性中子の位相角度を調整する相対角度調整工程を具えることを特徴とするタイヤ製造方法。
【請求項6】
前記剛性中子は、熱流体が充填される内側加熱用のチャンバ室を内部に有し、かつ下面に前記チャンバ室に熱流体を給排気する給排口部を具え、
前記加硫金型は、上面に前記給排口部に接続可能な接続口部を設けた下金型を具え、
かつ前記所定の回転位置は、前記給排口部が接続口部と一致する位置であり、
しかも前記給排口部と接続口部との形成数nは複数かつ同数であり、それぞれ同一円周線上に等間隔を隔てて形成されることにより、給排口部が接続口部と一致する回転位置がn個存在するとともに、
前記相対角度調整工程では、前記n個の回転位置のうち、加硫後のタイヤのユニフォーミティにとって最適となる回転位置にて生タイヤ付きの剛性中子を停止させることを特徴とする請求項5記載のタイヤ製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剛性中子のタイヤ成形面に形成された生タイヤを、剛性中子ごと加硫金型内に投入して加硫を行うタイヤ加硫機、及びそれを用いたタイヤ製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤの形成精度を高めるため、タイヤ内面形状に相当する外形形状を有する中空トロイド状の剛性中子を用いたタイヤ形成方法(以下「中子工法」という場合がある。)が提案されている。この中子工法では、剛性中子の外表面上でタイヤ構成部材を順次貼り付けることで生タイヤが形成されるとともに、該生タイヤを剛性中子ごと加硫金型内に投入して加硫成形が行われる。
【0003】
そして下記の特許文献1には、前記工法に適用される剛性中子が提案されている。この提案の剛性中子は、中子本体をなす複数の中子セグメントの内部に、熱流体が充填される気密なチャンバー室を具え、これにより加硫時、剛性中子を内側加熱することが可能になっている。前記チャンバー室への熱流体の給排気は、剛性中子の下面に設けられた給排口部と、加硫金型の一部をなす下金型(例えばビードリング)の上面に設けられた接続口部とが、剛性中子の加硫金型への投入により接続されることで行われる。
【0004】
しかしながらこの場合、加硫金型内への投入に先駆け、加硫機の中心機構によって支持される生タイヤ付きの剛性中子を、その軸芯回りで回転させて加硫金型に対する位相角度を調整し、給排口部の位置を接続口部の位置に一致させることが必要であり、中心機構には、そのための新規な構造が必要となる。
【0005】
又、中子工法によって形成されるタイヤのユニフォーミティには、剛性中子上で各種のタイヤ構成部材を順次貼り付けて生タイヤを形成する際に生じる生タイヤ形成要因、剛性中子のタイヤ成形面の形状などに起因する中子要因、加硫金型の金型面の形状などに起因する金型要因などがある。そして前記ユニフォーミティを改善させるためには、各要因による影響を互いに打ち消し合わせて、総合的な影響を減じることが好ましい。この場合、加硫金型に対する生タイヤ付きの剛性中子の位相角度を最適に調整することが必要であり、中心機構には、そのための新規な構造が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−6367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで発明は、加硫金型内への投入に先駆けて、加硫金型に対する生タイヤ付きの剛性中子の位相角度を調整することができ、例えば、内側加熱が可能な剛性中子において、中子側の給排口部と金型側の接続口部との投入時の自動接続を可能にしたり、又ユニフォーミティの悪化要因を互いに打ち消し合わせてユニフォーミティの向上を図りうるタイヤ加硫機、及びそれを用いたタイヤ製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願第1発明は、外表面にタイヤ成形面を有する剛性中子の前記タイヤ成形面に形成された生タイヤを、前記剛性中子ごと加硫金型内に投入する中心機構を有するタイヤ加硫機であって、
前記中心機構は、
生タイヤ付きの剛性中子を同心に支持でき、かつ上下に移動することにより、上昇位置にて生タイヤ付きの剛性中子を受け取りかつ下降位置にて受け取った生タイヤ付きの剛性中子を前記加硫金型内に投入しうる中子支持軸部と、
前記中子支持軸部を、上下に移動可能かつ軸芯回りで回転可能に外挿保持する中子支持軸案内部と、
前記投入に先駆け、受け取った生タイヤ付きの剛性中子とともに前記中子支持軸部を軸芯回りで回転させかつ所定の回転位置で停止させることにより、加硫金型に対する生タイヤ付きの剛性中子の位相角度を調整する相対角度調整手段とを具えることを特徴としている。
【0009】
本発明に係る前記タイヤ加硫機では、前記剛性中子は、熱流体が充填される内側加熱用のチャンバ室を内部に有し、かつ下面に前記チャンバ室に熱流体を給排気する給排口部を具えるとともに、
前記加硫金型は、上面に前記給排口部に接続可能な接続口部を設けた下金型を具え、
かつ前記所定の回転位置は、前記給排口部が接続口部と一致する位置であることが好ましい。
【0010】
本発明に係る前記タイヤ加硫機では、前記相対角度調整手段は、前記中子支持軸部を回転駆動する駆動手段と、中子支持軸部の回転量を検知する回転量検知手段と、所定の回転位置にて中子支持軸部を固定する固定手段とを具えることが好ましい。
【0011】
本発明に係る前記タイヤ加硫機では、前記固定手段は、前記中子支持軸部と一体回転できかつ外周にV溝状の係止溝又は該係止溝に係合しうるV字状の係止突起の一方からなる第1の係合部を有する回転板と、前記係止溝又は係止突起の他方からなる第2の係合部を第1の係合部に向かって半径方向に進退自在に有するストッパとを具えることが好ましい。
【0012】
本願第2発明は、第1発明のタイヤ加硫機を用いて生タイヤを加硫する加硫工程を有するタイヤ製造方法であって、
生タイヤ付きの剛性中子の加硫金型内への投入に先駆け、前記中子支持軸部を、前記受け取った生タイヤ付きの剛性中子とともに軸芯回りで回転させかつ所定の回転位置で停止させることにより、加硫金型に対する生タイヤ付きの剛性中子の位相角度を調整する相対角度調整工程を具えることを特徴としている。
【0013】
本発明に係る前記タイヤ製造方法では、前記剛性中子は、熱流体が充填される内側加熱用のチャンバ室を内部に有し、かつ下面に前記チャンバ室に熱流体を給排気する給排口部を具え、
前記加硫金型は、上面に前記給排口部に接続可能な接続口部を設けた下金型を具え、
かつ前記所定の回転位置は、前記給排口部が接続口部と一致する位置であり、
しかも前記給排口部と接続口部との形成数nは複数かつ同数であり、それぞれ同一円周線上に等間隔を隔てて形成されることにより、給排口部が接続口部と一致する回転位置がn個存在するとともに、
前記相対角度調整工程では、前記n個の回転位置のうち、加硫後のタイヤのユニフォーミティにとって最適となる回転位置にて生タイヤ付きの剛性中子を停止させることを特徴とする請求項5記載のタイヤ製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明のタイヤ加硫機の中心機構は、生タイヤ付きの剛性中子を同心に支持しうる中子支持軸部を、上下に移動可能かつ軸芯回りで回転可能に外挿保持する中子支持軸案内部と、前記中子支持軸部を、生タイヤ付きの剛性中子ごと軸芯回りで回転させかつ所定の回転位置で停止させうる相対角度調整手段とを具える。従って、生タイヤ付きの剛性中子の加硫金型内への投入に先駆け、加硫金型に対する生タイヤ付きの剛性中子の位相角度を調整することができる。
【0015】
そのため、例えば、内側加熱が可能な剛性中子において、中子側の給排口部と金型側の接続口部とを位置合わせでき、投入時の自動接続を可能にしうる。又、位相角度の調整により、例えばタイヤのユニフォーミティの悪化要因となる中子要因や金型要因などの影響を、互いに打ち消し合わせて総合的な影響を減じることができ、ユニフォーミティを向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1発明のタイヤ加硫機の中心機構を示す軸心方向の断面図である。
【
図3】(A)、(B)は回転位置をストッパとともに示す平面図である。
【
図4】(A)、(B)は、自動脱着コネクタ対を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態のタイヤ加硫機1は、剛性中子2のタイヤ成形面Sに形成された生タイヤTを、剛性中子2ごと加硫金型3内に投入する中心機構4を含んで構成される。
【0018】
本例では、前記剛性中子2は、熱流体による内側加熱が可能であって、その下面には、剛性中子2のチャンバー室H内に熱流体を給排気する給排口部5が設けられる。
【0019】
具体的には、本例の剛性中子2は、
図5に示すように、外表面にタイヤ成形面Sを有する中空トロイド状の中子本体60と、この中子本体60の中心孔60Hに内挿される円筒状のコア61と、前記中子本体60の軸心方向両側に配される一対の側壁体62L、62Uとを具える。
【0020】
前記中子本体60は、タイヤ周方向に分割された複数(n個)の中子セグメント63からなる。この中子セグメント63は、周方向両端面が半径方向内方に向かって周方向巾が減じる向きに傾斜する第1の中子セグメント63A、及び周方向両端面が半径方向内方に向かって周方向巾が増加する向きに傾斜しかつ前記第1の中子セグメント63Aとは交互に配される第2の中子セグメント63Bとから構成される。
【0021】
図6に示すように、中子セグメント63は、タイヤ成形面Sを構成する半径方向外側の外セグメント部64oと、その半径方向内側にボルト等を介して一体連結されるブロック状の内セグメント部64iとを具える。前記外セグメント部64o内には、熱流体が充填される内側加熱用のチャンバー室Hが凹設されるとともに、このチャンバー室Hの開口は、前記内セグメント部64iにより封止される。又内セグメント部64iの軸心方向下面には、チャンバー室Hに通じる給排口部5が設けられる。中子本体60には、中子セグメント63の形成数と同数のn個(本例では、n=8の場合が図示される。)の給排口部5が形成されており、各給排口部5は、同一円周線上に等間隔を隔てて形成される。なお本例では、給排口部5が、吸気用の給気口部5iと排気用の排気口部5oとからなる場合が例示される。なお符号68は案内フィンであって、チャンバー室H内で熱流体を給気側から排気側に案内する。
【0022】
前記
図5に示すように、前記コア61は円筒状をなし、中子本体60の前記中心孔60Hに内挿されることにより、各中子セグメント63の半径方向内側への移動を阻止する。コア61の軸心方向の一端には、側壁体62Lが固着されるとともに、他端には、側壁体62Uが例えば螺着等により着脱可能に連結される。前記コア61の外周面には、軸心方向に連続してのびる蟻溝又は蟻ほぞの一方からなる第1の蟻継ぎ部65が形成される。又各中子セグメント63の内周面(本例では内セグメント部64iの内周面)には軸心方向にのびかつ前記第1の蟻継ぎ部65に係合する蟻溝又は蟻ほぞの他方からなる第2の蟻継ぎ部66が形成される。これにより、コア61と中子セグメント63とは軸心方向にのみ移動可能に連結されるとともに、この移動は、両側の側壁体62L、62Uにより阻止される。又各側壁体62L、62Uの軸心方向の外端面には、中心軸部67が突出している。この中心軸部67は、例えば搬送装置などによって剛性中子2を把持して移動させるための把持部、及び移動した剛性中子2を例えば生タイヤ形成機、加硫機1、冷却機などに装着するための把持部として機能する。
【0023】
次に、タイヤ加硫機1は、加硫金型3を支持する加硫機本体6と、この加硫機本体6に取り付きかつ生タイヤ付きの剛性中子2を加硫金型3内に投入する中心機構4とを具える。
【0024】
前記
図1に示すように、前記加硫金型3は、従来と同様、生タイヤTの下のサイド面を受ける下金型8と、上のサイド面部を受ける上金型(図示しない。)と、トレッド面を受けるトレッドモールド(図示しない。)とを含んで構成される。そして下金型8の上面、本例では下ビードリング8Aの上面には、前記給排口部5に接続可能な接続口部10が形成される。この接続口部10の形成数は、前記給排口部5の形成数と同数(n個)であって、同一円周線上に等間隔を隔てて形成される。なお前記接続口部10には、下金型8を通る熱流体流路11a及び中心機構4を通る熱流体流路11bを介して、周知の熱流体給排装置(図示しない。)が導通される。
【0025】
前記加硫機本体6としては、従来と同様の構造が好適に採用できる。本例では、前記
図1に示すように、加硫機本体6が、下金型8を支持する下部プレート13、及び前記上金型とトレッドモールドとを支持する昇降可能な上部プレート(図示しない)を含む場合が示される。なお下部プレート13及び上部プレートには、下金型8及び上金型を加熱するプラテン板等も含まれる。又前記下部プレート13には、上下に貫通しかつ中心機構4が配される中心孔13Hが形成される。
【0026】
前記中心機構4は、生タイヤ付きの剛性中子2を同心に支持しうる中子支持軸部15と、この中子支持軸部15を上下に移動可能かつ軸芯回りで回転可能に外挿保持する中子支持軸案内部16と、中子支持軸部15を軸芯回りで回転かつ停止させて加硫金型3に対する生タイヤ付きの剛性中子2の位相角度を調整する相対角度調整手段17とを具える。
【0027】
前記中子支持軸部15は、前記中心孔13Hを通って上下にのびる直軸状の基体15Aの上部に、前記中心軸部67を保持するチャック部15Bを具える。チャック部15Bは、本例では所謂ボールロック機構14を有し、例えば作動空気による遠隔操作により、前記中心軸部67を着脱自在にかつ同心に保持しうる。なお中子支持軸部15と剛性中子2とを位相のズレなく一体回転させるために、チャック部15Bの上端には、先細テーパ状の係止ピン12a又はこの係止ピン12aに係合しうる係止孔12bの一方(本例では係止ピン12a)が形成され、又前記中心軸部67の下端には、他方(本例では係止孔12b)が形成される。
【0028】
前記中子支持軸部15は、加硫機本体6に取り付く昇降手段18によって上下に移動する。本例の昇降手段18は、前記下部プレート13下面に固定される下向きの一対のシリンダ18Aを具え、そのロッド下端に取り付く昇降板18B上に、前記中子支持軸部15が立設される。そして中子支持軸部15の上下の移動により、中子支持軸部15は、上昇位置にて、生タイヤ付きの剛性中子2を搬送装置(図示しない)などから受け取るとともに、下降位置にて、受け取った生タイヤ付きの剛性中子2を加硫金型3内に投入する。
【0029】
前記中子支持軸案内部16は、半径方向内側の内筒部16Aと、外側の外筒部16Bとを具える。外筒部16Bは、前記中心孔13Hに固定される円筒状をなし、その内部には、前記熱流体流路11bが形成される。内筒部16Aは、前記外筒部16Bに固定される円筒状をなし、その内周面には、前記中子支持軸部15を上下に摺動移動可能かつ軸芯廻りで回転可能に保持する軸受け部材16A1が配される。
【0030】
前記相対角度調整手段17は、前記昇降板18Bに支持され、中子支持軸部15と一体に上下に移動しうる。又相対角度調整手段17は、生タイヤ付きの剛性中子2の加硫金型3内への投入に先駆け、中子支持軸部15を、生タイヤ付きの剛性中子2とともに軸芯回りで回転させ、かつ所定の回転位置Pで停止させる。これにより、加硫金型3に対する生タイヤ付きの剛性中子2の位相角度を調整する。
【0031】
具体的には、前記相対角度調整手段17は、中子支持軸部15を回転駆動する駆動手段20と、中子支持軸部15の回転量を検知する回転量検知手段21と、所定の回転位置Pにて中子支持軸部15を固定する固定手段22とを具える。
【0032】
図2に示すように、前記駆動手段20は、昇降板18Bに取り付くモータ20Aと、その出力を中子支持軸部15に伝達する伝達手段20Bとを含む。本例の伝達手段20Bは、前記中子支持軸部15の下端部に一体回転可能かつ同心に固定される第1の歯車20B1と、該第1の歯車20B1に噛合しかつ前記モータ20Aの出力軸に連係する第2の歯車20B2とを含んで構成される。
【0033】
前記回転量検知手段21は、昇降板18Bに取り付くエンコーダ21Aと、中子支持軸部15の回転量を前記エンコーダ21Aに伝達する伝達手段21Bとを含む。本例の伝達手段21Bは、前記中子支持軸部15の下端部に一体回転可能かつ同心に固定される第1の鎖車21B1と、前記エンコーダ21Aの入力軸に連係する第2の鎖車21B2とを含み、前記第1、第2の鎖車21B1、21B2は無端連紐を介して接続されている。そして、前記回転量検知手段21によって検出する中子支持軸部15の回転量に基づいて前記モータ20Aが制御され、所定の回転位置Pで中子支持軸部15が停止される。
【0034】
前記固定手段22は、回転板22Aとストッパ22Bとを具える。前記回転板22Aは、中子支持軸部15の下端部に、一体回転可能かつ同心に固定される。回転板22Aの外周には、V溝状の係止溝23A又は該係止溝23Aに係合しうるV字状の係止突起23Bの一方(本例では係止溝23A)からなる第1の係合部24が1以上配される。本例では、給排口部5及び接続口部10の形成数と同数のn個の第1の係合部24が、周方向に等間隔を隔てて形成される。
【0035】
前記ストッパ22Bは、前記係止溝23A又は係止突起23Bの他方(本例では係止突起23B)からなる第2の係合部25と、この第2の係合部25を前記第1の係合部24に向かって半径方向に進退移動させるシリンダなどの進退具26とを具える。
【0036】
従って、
図3(A)に示すように、第1の係合部24が、第2の係合部25と半径方向内外で向き合う回転位置では、第2の係合部25の前進により、第1の係合部24と第2の係合部25とが互いに係合し、回転板22A(即ち、中子支持軸部15)を固定できる。従って、第1の係合部24と第2の係合部25とが半径方向内外で向き合う回転位置が、前記所定の回転位置Pを意味する。又、この所定の回転位置Pにおいて、前記給排口部5と接続口部10とが一致するように、ストッパ22Bの取り付け位置、回転板22Aの取り付け角度などが適宜設定される。本例では、n個の回転位置Pが360/n度の角度ピッチで存在する。即ち、360/n度の角度ピッチで、回転板22Aを固定できる
【0037】
本例では、係止溝23A及び係止突起23BがV字状をなすため、ズレを有することなく正確な回転位置にて回転板22Aを固定できる。特に、停止時において回転板22Aの位置が多少ずれている場合にも、前記固定手段22により、位置修正しながら正確な回転位置で回転板22Aを固定することができる。又前記固定手段22では、第1の係合部24と第2の係合部25とが嵌り合っていることを検知するセンサを設けることが好ましい。このような検知は、例えば第2の係合部25の前進時の位置や移動量などの検出により行いうる。なお固定手段22は、前記回転量検知手段21によって検出する中子支持軸部15の回転量に基づいて制御される。
【0038】
タイヤ加硫機1では、搬送装置により搬送される生タイヤ付きの剛性中子2を、中子支持軸部15によって受け取る際、剛性中子側の係止孔12bと中子支持軸部側の係止ピン12aとを係合させる必要がある。そのため本例では、
図3(B)に示すように、中子支持軸部15を、係止孔12bと係止ピン12aとの位置が一致する回転位置Qにて停止させるためのストッパ27を設けている。ストッパ27はストッパ22Bと略同構成をなす。このようなストッパ27をさらに設けることにより、剛性中子側の係止孔12bの位置に合わせて中子支持軸部15の回転位置Qを自在に設定することができるというメリットが生まれる。なお剛性中子側の係止孔12bの位置を調整可能に構成する場合には、ストッパ27を排除し、回転位置Pにて係止孔12bと係止ピン12aとが一致するように設定することもできる。
【0039】
このように中心機構4が、前記中子支持軸部15、中子支持軸案内部16、相対角度調整手段17を具えるため、加硫金型3への投入に先駆け、加硫金型3に対する生タイヤ付きの剛性中子2の位相角度を調整することができる。本例では、投入に先駆けて給排口部5と接続口部10とを位置合わせでき、投入時の自動接続を可能にしている。
【0040】
なお前記給排口部5と接続口部10とは、互いに自動脱着可能な自動脱着コネクタ41、42の対から形成される。
図4にその一例を示すように、一方のコネクタ41は、中心孔43を有する基筒部44と、前記中心孔43に設ける弁座43aを開閉しうる弁軸45と、この弁軸45を弁座43aに向かって付勢するバネ片46とを具える。本例の基筒部44は、被取付け物(例えば中子セグメント63、下金型8)に取り付く胴部44aの前方に、小径な接続筒部44bを設けた段付き筒状をなし、前記胴部44aには、被取付け物との間をシールするシールリング47が配される。前記中心孔43は、その前端部に、前方に向かって小径となるコーン面状の前記弁座43aを具える。前記弁軸45は、前記弁座43aと当接して該弁座43aを閉じる頭部45aと、この頭部45aから後方にのびかつ前記中心孔43に固定の保持筒48によって前後にスライド自在に保持される軸部45bとを具える。又前記バネ片46は、軸部45bに外挿され、常時は弁座43aを閉止する。
【0041】
又他方のコネクタ42も、中心孔53を有する基筒部54と、前記中心孔53に設ける弁座53aを開閉しうる弁軸55と、この弁軸55を弁座53aに向かって付勢するバネ片56とを具える。本例では、前記基筒部54は、被取付け物(例えば中子セグメント63、下金型8)に取り付く胴部54aの前端側に大径な接続筒部54bを設けた段付き筒状をなし、前記胴部54aには、被取付け物との間をシールするシールリング57が配される。前記中心孔53は、前方に向かって小径となるコーン面状の前記弁座53aと、この弁座53aの前方側に配されかつ前記接続筒部44bに填り合う接続孔部53bと、弁座53aの後方側に配されかつ弁軸55を収容する収容孔部53cとを具える。なお接続孔部53bには、接続筒部44bとの間をシールするシールリング59が配される。前記弁軸55は、前記弁座53aと当接して該弁座53aを閉じる頭部55aと、この頭部55aから後方にのびかつ前記収容孔部53cに固定の保持筒58によって前後にスライド自在に保持される軸部55bと、前記頭部55aから前方にのびる突出ピン部55cとを具える。又前記バネ片56は、軸部55bに外挿され、常時は弁座53aを閉止する。
【0042】
このコネクタ41、42は、コネクタ41の前記接続筒部44bが、前記コネクタ42の接続孔部53b内に挿入されることにより接続される。この接続状態(挿入状態)では、コネクタ42の弁軸55の突出ピン部55cが、コネクタ41の弁軸45の頭部45aと当接することで、双方の弁軸45、55が後退し、各弁座43a、53aを開放できる。これにより、コネクタ41、42間が導通される。本例では、給排口部5にコネクタ41が採用され、接続口部10にコネクタ42が採用される場合が示されるが、その逆であっても良い。
【0043】
次に、第2発明であるタイヤ製造方法は、前記タイヤ加硫機1を用いて生タイヤTを加硫する加硫工程を具える。この加硫工程では、加硫金型3への投入に先駆け、加硫金型3に対する生タイヤ付きの剛性中子2の位相角度を調整する相対角度調整工程を具える。この相対角度調整工程では、前記相対角度調整手段17を作動させ、中子支持軸部15を、生タイヤ付きの剛性中子2とともに軸芯回りで回転させ、かつ所定の回転位置Pで停止させる。これにより、給排口部5と接続口部10とが位置合わせされ、投入時の自動接続が行われる。
【0044】
特に、本例の相対角度調整工程では、前述のn個の回転位置Pのうち、加硫後のタイヤのユニフォーミティにとって最適となる回転位置P0(図示しない。)にて生タイヤ付きの剛性中子2を停止させる。これにより、加硫後のタイヤのユニフォーミティを向上させることができる。
【0045】
前述の如く、中子工法によって形成されるタイヤのユニフォーミティには、剛性中子2上で生タイヤTを形成する際に生じる生タイヤ形成要因、剛性中子2のタイヤ成形面Sの形状などに起因するに中子要因、加硫金型3の金型面の形状などに起因するに金型要因などがある。従って、これらの要因による影響を互いに打ち消し合わせて、総合的な影響を減じることで、ユニフォーミティを向上させることが可能となる。
【0046】
従って、n個の回転位置Pのうちで、前記要因による総合的な影響が小さくなりユニフォーミティにとって最適となる回転位置P0を選択し、この最適となる回転位置P0にて生タイヤ付きの剛性中子2を加硫金型3に投入することで、タイヤのユニフォーミティを向上することができる。
【0047】
前記最適な回転位置P0として、以下のような方法で選択できる。例えば、加硫金型3への投入時の位相角度を試験的に設定して、タイヤを試作する。そして試作タイヤのFV(フォースバリエーション)を測定した結果から、生タイヤ形成要因、中子要因、金型要因、加硫機要因などを解析し、FVが最も小さくなる位相角度を求めるとともに、n個の回転位置Pのうちで、前記FVが最も小さくなる位相角度により近いものを最適な回転位置P0として採用する。
【0048】
他の方法として、例えば、生タイヤTの成形前の段階で、剛性中子2のタイヤ形成面におけるRRO(以下「中子RRO」という。)、及び加硫金型3の金型面におけるRRO(以下「金型RRO」という。)を事前に測定する。そして、その測定結果に基づき、各回転位置Pにおいて、中子RROと金型RROとを重ね合わせ、その時の重ね合わせのRROの分布が一周に亘って最も均一で小さくなる時の回転位置を最適な回転位置P0として採用する。
【0049】
なお搬送装置から生タイヤTを受取った時の中子支持軸部15の位相角度(基準位置)から、前記最適な回転位置P0まで中子支持軸部15を回転させる際の回転時間を短縮させるために、基準位置から最適な回転位置P0までの回転角度が180度を超える場合、と越えない場合とで、中子支持軸部15の回転方向を正逆変更させることが好ましい。
【0050】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【符号の説明】
【0051】
1 タイヤ加硫機
2 剛性中子
3 加硫金型
4 中心機構
5 給排口部
8 下金型
10 接続口部
15 中子支持軸部
16 中子支持軸案内部
17 相対角度調整手段
20 駆動手段
21 回転量検知手段
22 固定手段
22A 回転板
22B ストッパ
23A 係止溝
23B 係止突起
24 第1の係合部
25 第2の係合部
H チャンバ室
P 回転位置
S タイヤ成形面
T 生タイヤ