(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明はエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シートおよび防火区画貫通部構造の施工方法に関するものであるが、最初に本発明のエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シートについて説明する。
図1は本発明の第一の実施形態に係るエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シートを説明するための模式部分斜視図である。
第一の実施形態に係るエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100は、エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1と基材層2とを有する。
なお本発明のエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シートはエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1と基材層2とを少なくとも有するものである。
図1に例示される通り、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100の一方の面Aに二以上の線状溝10aが形成されている。
それぞれの前記線状溝10aは、互いに間隔をおいて前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1に形成されている。
【0046】
図1の場合では、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100の長手方向(
図1の矢印の示す方向)に対して、それぞれの前記線状溝10aは略垂直に形成されている。またそれぞれの前記線状溝10aは連続していて、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1の一辺3と他辺4との両方に達している。
なおここで略垂直とは、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100の長手方向に対して、85度を超え95度未満の範囲の角度をいう。
【0047】
図2は前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層に形成された線状溝の形状を説明するための模式部分断面図である。
図2は、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100の長手方向に沿って前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100を切断した際の前記線状溝10aの断面を例示したものである。
図2に例示される通り、前記線状溝10aの断面は三角形である。
【0048】
前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1の一方の面Aに切り込みを設けることにより、前記線状溝10aを形成することができる。
前記線状溝10aの断面は、前記面Aに対して垂直の辺11と、前記辺11に対して30度の角度である辺12とにより形成されている。
【0049】
前記辺11と辺12との角度は、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100を配管類に巻く際の配管類の外形、直径等に応じて適宜選択することができるが、例えば、1〜80度の範囲が好ましく、30〜70度の範囲がより好ましく、45〜60度の範囲であればさらに好ましい。
前記辺11と辺12との角度が1〜70度の範囲であれば、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100を自由に曲げることができる。
【0050】
次に本発明の第二の実施形態に係るエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート110について説明する。
図3は本発明の第二の実施形態に係るエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シートを説明するための模式部分断面図である。
第二の実施形態に係るエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート110は、第一の実施形態に係るエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100と比較して線状溝10bの形状が異なる。それ以外は第一の実施形態に係るエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100と同様である。
先に説明した第一の実施形態に係るエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100の場合は前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1に対して線状溝10aが深いのに対し、第二の実施形態に係るエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート110の場合は前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1に対して線状溝10bが浅い。
【0051】
図3では、前記線状溝10bの断面形状がV字である。前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1の一方の表面Aに形成される前記線状溝10bは、ノッチ、切り欠き、掻き傷等と呼ばれることがある。
本発明の第二の実施形態に係るエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート110の場合は、この線状溝10bを利用して前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1を割って使用することができる。
【0052】
図4は前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層を曲げた状態を説明するための模式要部断面図であり、
図5は前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層が割れた状態を説明するための模式要部断面図である。
【0053】
図4に例示される様に、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート110に含まれる前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1を、前記線状溝10bが開く方向に曲げると、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート110に含まれる前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1は、
図5に例示される様に脆性破壊を起こす。
【0054】
図4では説明のための便宜上、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート110のたわむ状態が強調されている。
前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート110がたわむ状態を肉眼により確認できる場合もあるが、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート110に含まれる前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1を、前記線状溝10bが開く方向に曲げると同時に、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1は脆性破壊を起こして割れる場合が多い。
【0055】
なお本発明に採用される前記線状溝10bの断面形状は、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1に前記線状溝10bを広げる方向に応力を加えたときに前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1が脆性破壊を起こす形状であれば特に限定はなく、例えば、断面形状がV字の他に、U字、I字等の形状等であってもよい。
【0056】
図6は、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1を割った後に形成される複数のエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物片を説明するための模式部分断面図である。
前記線状溝10bに沿って前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1を割ることにより、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1は複数のエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物片5に分割される。
前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物片5は基材層2に固定されていて、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1を割った後に前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物片5が基材層2から脱落することを防止することができる。
また前記基材層2として柔らかい材料を使用することにより、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート110を自由に折り曲げることができる。
【0057】
次に本発明の第三の実施形態に係るエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート120について説明する。
先に説明した第一の実施形態に係るエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100および第二の実施形態に係るエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート110は、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1と基材層2との二層構造であった。
これに対して第三の実施形態に係るエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート120は、基材層2、エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1および基材層6が、それぞれ基材層2−エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1−基材層6の順に積層された三層構造である点が、先の第一の実施形態に係るエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100および第二の実施形態に係るエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート110の場合と異なる。
【0058】
図7は本発明の第三の実施形態に係るエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シートを説明するための模式部分断面図である。
図7に例示される通り、前記基材層2,6が、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1の両面に積層されている。
また線状溝10cが、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート120の一方の面A’に積層された基材層6を貫通し、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1に達している。
【0059】
前記基材層6およびエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1に切り込みを設けることにより、前記線状溝10cを形成することができる。
前記線状溝10cの断面は、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート120の一方の面A’に対して三角形の辺11,12により形成されている。
【0060】
第一の実施形態に係るエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート〜第三の実施形態に係るエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シートのそれぞれの前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1の厚みは、取り扱い性の観点から、0.5〜4mmの範囲であることが好ましい。
第一の実施形態に係るエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート〜第三の実施形態に係るエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シートに対するそれぞれの前記線状溝10a,10b,10cの深さは、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シートをそれぞれ配管類に巻く際の配管類の外形、直径等に応じて適宜選択することができる。
例えば、前記線状溝10の深さは、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1の厚さtを基準として前記面Aに対して垂直方向に、0.001t〜0.95tの範囲が好ましく、0.01t〜0.7tの範囲であればより好ましい。
【0061】
また前記線状溝の間隔は、後に説明する配管類の最大外径の半分であるrを基準として、1/5r〜2/5rの範囲であることが取り扱い性の面から好ましい。
それぞれのエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100〜120に形成される線状溝の数は、多ければ多いほど、容易にエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100〜120を曲げることができることから好ましい。
【0062】
次に前記線状溝10a〜10cを形成する方法について説明する。
前記線状溝10a〜10cを形成する方法としては、例えば、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100〜120を成形する際に、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1に含まれるエポキシ樹脂の硬化が完了する前に、突起物、例えば突起のある金型を前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100〜120に押し付ける方法等があげられる。
また前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1に含まれるエポキシ樹脂の硬化が完了した後は、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100〜120の表面を刃により切削する方法等が挙げられる。
【0063】
前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100〜120の表面を刃により切削する方法としては、例えば、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100〜120の表面にナイフ等の面状の刃を接触させて押す方法、
前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100〜120の表面にナイフ等の面状の刃を接触させてから前記刃を移動させる方法、
前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100〜120の表面に、釘等の棒の先端が尖った刃を接触させて、釘等の棒の先端が尖った刃を移動させて前記線状溝10a〜10cを形成する方法、
前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100〜120の表面に、回転する円盤状の刃を接触させて、回転する円盤状の刃を移動させて前記線状溝10a〜10cを形成する方法等が挙げられる。
なお、それぞれの刃を移動させる代わりに、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100〜120を移動させてもよいし、それぞれの刃と前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100〜120を反対方向に移動させてもよい
前記線状溝10a〜10cを形成する方法は一種もしくは二種以上を採用することができる。
【0064】
前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1の厚みは、0.3〜4mmの範囲であることが好ましく、0.5〜3mmの範囲であればより好ましい。
前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1の厚みが4mm以下の場合は前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100〜120を自由に折り曲げることができる。また前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1の厚みが0.3mm以上の場合は前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100〜120が火災等の熱にさらされた場合には、十分な厚みの膨張残渣を形成することから耐火性に優れる。
【0065】
次に前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1の組成について説明する。
前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1はエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物により形成されるものである。
前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物としては、例えば、エポキシ樹脂を樹脂成分とし、リン化合物、熱膨張性層状無機物および無機充填材等を含むエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物等を挙げることができる。
【0066】
前記樹脂成分としては特に限定はないが、例えば、エポキシ基を持つモノマーと硬化剤とを反応させて得られる樹脂等を挙げることができる。
【0067】
前記エポキシ基を持つモノマーとしては、例えば、2官能のグリシジルエーテル型として、ポリエチレングリコール型、ポリプロピレングリコール型、ネオペンチルグリコール型、1,6−ヘキサンジオール型、トリメチロールプロパン型、プロピレンオキサイド−ビスフェノールA、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型等のモノマーが挙げられる。
【0068】
また、グリシジルエステル型として、ヘキサヒドロ無水フタル酸型、テトラヒドロ無水フタル酸型、ダイマー酸型、p−オキシ安息香酸型等のモノマーが挙げられる。
【0069】
更に多官能のグリシジルエーテル型として、フェノールノボラック型、オルトクレゾール型、DPPノボラック型、ジシクロペンタジエン、フェノール型等のモノマーが挙げられる。
【0070】
これらは、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0071】
また、前記硬化剤としては、例えば、重付加型硬化剤、触媒型硬化剤等が挙げられる。
前記重付加型硬化剤としては、例えば、ポリアミン、酸無水物、ポリフェノール、ポリメルカプタン等が挙げられる。
【0072】
前記触媒型硬化剤としては、例えば三級アミン類、イミダゾール類、ルイス酸錯体等が挙げられる。これらエポキシ樹脂の硬化方法は特に限定されず、公知の方法により行うことができる。
【0073】
前記線状溝10a〜10cが形成されたエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1に前記線状溝10a〜10cが開く方向に応力をかけた場合に前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1に脆性破壊を起こさせるためには、使用するエポキシ樹脂、硬化剤等の種類、エポキシ基を持つモノマーと硬化剤との配合比を調整すればよい。
【0074】
なお、前記樹脂成分の溶融粘度、柔軟性、粘着性等の調整のため、二種以上の樹脂成分をブレンドしたものを使用することができる。
【0075】
また前記リン化合物としては、特に限定されず、例えば、
赤リン、
トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート等の各種リン酸エステル、
リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウム等のリン酸金属塩、
ポリリン酸アンモニウム類、
下記化学式で表される化合物等が挙げられる。
【0076】
これらのリン化合物は、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0077】
これらのうち、耐火性の観点から、赤リン、上記の化学式で表される化合物、及び、ポリリン酸アンモニウム類が好ましく、性能、安全性、費用等の点においてポリリン酸アンモニウム類がより好ましい。
【0078】
上記化学式中、R
1及びR
3は、水素、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は、炭素数6〜16のアリール基を表す。
【0079】
R
2は、水酸基、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基、炭素数6〜16のアリール基、又は、炭素数6〜16のアリールオキシ基を表す。
【0080】
前記化学式で表される化合物としては、例えば、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、2−メチルプロピルホスホン酸、t−ブチルホスホン酸、2,3−ジメチル−ブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジオクチルフェニルホスホネート、ジメチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、メチルプロピルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジエチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィン酸等が挙げられる。
【0081】
中でも、t−ブチルホスホン酸は、高価ではあるが、高難燃性の点において好ましい。
【0082】
ポリリン酸アンモニウム類としては、特に限定されず、例えば、ポリリン酸アンモニウム、メラミン変性ポリリン酸アンモニウム等が挙げられるが、難燃性、安全性、コスト、取扱性等の点からポリリン酸アンモニウムが好適に用いられる。
【0083】
市販品としては、例えば、クラリアント社製の「商品名:EXOLIT AP422」および「商品名:EXOLIT AP462」等が挙げられる。
【0084】
前記リン化合物は、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛等の金属炭酸塩と反応して、金属炭酸塩の膨張を促すと考えられ、特に、リン化合物として、ポリリン酸アンモニウムを使用した場合に、高い膨張効果が得られる。また、有効な骨材として働き、燃焼後に形状保持性の高い残渣を形成する。
【0085】
次に前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物の各成分のうち、前記熱膨張性層状無機物について説明する。前記熱膨張性層状無機物は加熱時に膨張するものであるが、かかる熱膨張性層状無機物に特に限定はなく、例えば、バーミキュライト、カオリン、マイカ、熱膨張性黒鉛等を挙げることができる。
【0086】
前記熱膨張性黒鉛とは、従来公知の物質であり、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を、濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤とにより処理してグラファイト層間化合物を生成させたものであり、炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物の一種である。
【0087】
上記のように酸処理して得られた熱膨張性黒鉛は、更にアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等で中和したものを使用するのが好ましい。
【0088】
前記脂肪族低級アミンとしては、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等が挙げられる。
【0089】
前記アルカリ金属化合物および前記アルカリ土類金属化合物としては、例えば、カリウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム等の水酸化物、酸化物、炭酸塩、硫酸塩、有機酸塩等が挙げられる。
【0090】
前記熱膨張性黒鉛の粒度は、20〜200メッシュの範囲のものが好ましい。
粒度が20メッシュより小さくなると、黒鉛の膨張度が小さく、充分な耐火断熱層が得られにくく、また、粒度が200メッシュより大きくなると、黒鉛の膨張度が大きいという利点はあるが、前記熱可塑性樹脂又はエポキシ樹脂と混練する際に分散性が悪くなり、物性が低下し易い。
【0091】
前記熱膨張性黒鉛の市販品としては、例えば、UCAR CARBON社製の「GRAFGUARD#160」、「GRAFGUARD#220」、東ソー社製の「GREP−EG」等が挙げられる。
【0092】
次に先のエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物の各成分のうち、前記無機充填材について説明する。
前記無機充填材としては、特に限定されないが、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーソナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム等のカリウム塩、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セビオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、無機系リン化合物、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、ジルコニア繊維等が挙げられる。
【0093】
これらは、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0094】
前記無機充填材は骨材的役割を果たして、加熱後に生成する膨張断熱層強度の向上や熱容量の増大に寄与する。
【0095】
このため、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛で代表される金属炭酸塩、骨材的役割の他に加熱時に吸熱効果も付与する水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムで代表される含水無機物が好ましく、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及び周期律表IIbの金属炭酸塩又はこれらと前記含水無機物との混合物が好ましい。
【0096】
本発明に使用する無機充填材が粒状の場合には、その粒径としては、0.5〜200μmの範囲のものが好ましく、より好ましくは、1〜50μmの範囲のものである。
【0097】
無機充填材の添加量が少ないときは、分散性が性能を大きく左右するため、粒径の小さいものが好ましいが、粒径0.5μm未満では二次凝集が起こり、分散性が悪くなることがある。
【0098】
また、無機充填材の添加量が多いときは、高充填が進むにつれて、樹脂組成物の粘度が高くなり成形性が低下するが、粒径を大きくすることによって樹脂組成物の粘度を低下させることができる点から、上記範囲の中でも粒径の大きいものが好ましい。
【0099】
なお、粒径が200μmを超えると、成形体の表面性、樹脂組成物の力学的物性が低下することがある。
【0100】
前記無機充填材の中でも、特に骨材的役割を果たす炭酸カルシウム、炭酸亜鉛等の金属炭酸塩;骨材的役割の他に加熱時に吸熱効果を付与する水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の含水無機物が好ましい。
【0101】
前記含水無機物及び金属炭酸塩を併用することは、燃焼残渣の強度向上や熱容量増大に大きく寄与すると考えられる。
【0102】
前記無機充填材の中で、特に水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の含水無機物は、加熱時の脱水反応によって生成した水のために吸熱が起こり、温度上昇が低減されて高い耐熱性が得られる点、および燃焼残渣として酸化物が残存し、これが骨材となって働くことで燃焼残渣の強度が向上する点で好ましい。
【0103】
また、水酸化マグネシウムと水酸化アルミニウムは、脱水効果を発揮する温度領域が異なるため、併用すると脱水効果を発揮する温度領域が広くなり、より効果的な温度上昇抑制効果が得られることから、併用することが好ましい。
【0104】
前記含水無機物の粒径は、小さくなると嵩が大きくなって高充填化が困難となるので、脱水効果を高めるために高充填するには粒径の大きなものが好ましい。具体的には、粒径が18μmでは、1.5μmの粒径に比べて充填限界量が約1.5倍程度向上することが知られている。さらに、粒径の大きいものと小さいものとを組み合わせることによって、より高充填化が可能となる。
【0105】
前記含水無機物の市販品としては、例えば、水酸化アルミニウムとして、粒径1μmの「商品名:ハイジライトH−42M」(昭和電工社製)、粒径18μmの「商品名:ハイジライトH−31」(昭和電工社製)等が挙げられる。
【0106】
前記炭酸カルシウムの市販品としては、例えば、粒径1.8μmの「商品名:ホワイトンSB赤」(白石カルシウム社製)、粒径8μmの「商品名:BF300」(備北粉化社製)等が挙げられる。
【0107】
冒頭に説明したとおり、本発明に使用するエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物としては、上記に説明したエポキシ樹脂等の樹脂成分、前記熱膨張性層状無機物、前記無機充填材等を含むもの等を挙げることができるが、次にこれらの配合について説明する。
【0108】
前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物は、前記エポキシ樹脂等の樹脂成分100重量部に対し、前記熱膨張性層状無機物を20〜350重量部及び前記無機充填材を50〜400重量部の範囲で含むものが好ましい。また、前記熱膨張性層状無機物および前記無機充填材の合計は、200〜600重量部の範囲が好ましい。
また前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物において、前記リン化合物を添加する場合、前記リン化合物の配合量は、前記エポキシ樹脂等の樹脂成分100重量部に対して30〜300重量部の範囲であることが好ましい。
【0109】
かかる樹脂組成物は加熱によって膨張し耐火断熱層を形成する。この配合によれば、前記熱膨張性耐火材は火災等の加熱によって膨張し、必要な体積膨張率を得ることができ、膨張後は所定の断熱性能を有すると共に所定の強度を有する残渣を形成することもでき、安定した防火性能を達成することができる。
【0110】
前記層状無機物の量が20重量部未満であると、膨張倍率が不足し、充分な耐火、防火性能が得られないことがある。一方、層状無機物の量が350重量部を超えると、擬集力が不足するため、成形品としての強度が得られないことがある。また前記無機充填材の量が50重量部未満であると、燃焼後の残体積量が減少するため、充分な耐火断熱層が得られないことがある。さらに可燃物の比率が増加するため、難燃性が低下することがある。
【0111】
一方、無機充填材の量が400重量部を超えると樹脂成分の配合比率が減少するため、凝集力が不足して成形品としての強度が得られにくい。
【0112】
前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物における熱膨張性層状無機物及び無機充填材の合計量は、200重量部未満では燃焼後の残渣量が不足して十分な耐火性能が得られにくく、600重量部を超えると機械的物性の低下が大きくなり、使用に耐えられなくなることがある。
【0113】
さらに本発明に使用する前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物は、それぞれ本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤の他、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料、粘着付与樹脂等の添加剤、ポリブテン、石油樹脂等の粘着付与剤を含むことができる。
【0114】
次に前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物の製造方法について説明する。前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物の製造方法に特に限定はないが、例えば、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物を有機溶剤に懸濁させたり、加温して溶融させたりして塗料状とする方法、溶剤に分散してスラリーを調製する等の方法、また前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物を加熱下に溶融させる等の方法により前記熱膨張性樹脂組成物を得ることができる。
【0115】
前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物は、上記各成分を単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、混練ロール、ライカイ機、遊星式撹拌機等公知の装置を用いて混練することにより得ることができる。
【0116】
また、エポキシ基をもつモノマーと硬化剤とに別々に充填材を混練しておき、成形直前にスタティックミキサー、ダイナミックミキサー等で混練して得ることもできる。
【0117】
以上説明した方法により、本発明に使用する前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物を得ることができる。
【0118】
先に説明したエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物を基材と基材との間に積層して、基材層2、エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1および基材層6を備えた積層体が得られる。
前記積層体に対して、例えば、所望の形状の金型、刃を押し当てる等の方法により、線状溝を形成することができる。
前記積層体を所望の長さに切断することにより、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100〜120を得ることができる。
【0119】
前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100〜120は、エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1および基材層2を必須の構成要素とし、必要に応じて一または二以上の基材層6を積層することができるが、次に本発明に使用する基材層について説明する。
【0120】
本発明に使用する前記基材層としては、例えば、可燃層、不燃層等を挙げることができる。
前記可燃層に使用される素材としては、例えば、布材、紙材、木材、天然樹脂、合成樹脂等の一種もしくは二種以上を挙げることができる。
また前記不燃層に使用される素材としては、例えば、金属、無機材等の一種もしくは二種以上を挙げることができる。
【0121】
前記布材としては、例えば、木綿、絹、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン等の織布、不織布からなるもの等を挙げることができる。
【0122】
前記紙材としては、例えば、木材等の植物から取り出した繊維状物質、化学繊維を水等の分散媒中に分散させ、これを濾過して均一層を形成してから乾燥させた紙等が挙げられる。
前記紙に対して、塗料、撥水剤等を塗布して得られる加工紙、波状の紙をライナーと呼ばれる平面の紙により挟んで接着した段ボール等が挙げられる。
【0123】
前記木材としては、例えば、天然木材から得られる木素材に限られず、木素材を含む集成木材、積層木材、積層木板等が挙げられる。
【0124】
前記天然樹脂としては、例えば、セルロース誘導体、ゼラチン、アルギン酸塩、キトサン、プルラン、ペクチン、カラゲナン、タンパク質、タンニン、リグニン、ロジン酸等を主成分とする高分子、天然ゴム等が挙げられる。
【0125】
前記合成樹脂としては、例えば、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、1,2−ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、ポリイソブチレンゴム、塩化ブチルゴム等の合成ゴム、
ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ(1−)ブテン樹脂、ポリペンテン樹脂等のポリオレフィン樹脂、
ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、全芳香族ポリ
エステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0126】
前記金属としては、例えば、アルミニウム、鉄、ステンレス、錫、鉛、錫鉛合金、銅等が挙げられる。
また前記金属として金属箔を使用することが好ましく、前記金属箔としては、例えば、アルミニウム箔、鉄箔、ステンレス箔、錫箔、鉛箔、錫鉛合金箔、銅箔等が挙げられる。
【0127】
前記無機材としては、例えば、グラスウール、ロックウール、セラミックウール、石膏繊維、炭素繊維、ステンレス繊維、スラグ繊維、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、ジルコニア繊維等が挙げられる。
前記無機繊維層は、前記無機繊維を用いた無機繊維クロスを使用することが好ましい。
また前記無機繊維層に使用する無機繊維は、金属箔をラミネートしたものを使用することが好ましい。
金属箔ラミネート無機繊維の具体例としては、例えば、アルミニウム箔ラミネートガラスクロス、銅箔ラミネートガラスクロス等がさらに好ましい。
【0128】
前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100〜120は、例えば、エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層、無機繊維層、金属箔層等を積層することにより得ることができる。これらの積層には溶融同時押出、熱プレス等の他、接着剤により各層を貼着する手段等により形成することもできる。前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100〜120は金属箔層が最外面にあることが好ましい。
【0129】
図8は本発明の第一の実施形態に係るエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100の製造過程を説明するための模式部分断面図である。
図8(a)では基材層2として不織布が使用され、基材層6として離型紙が使用されている。
図8(b)に示される様に、離型紙を取り除き、不織布からなる基材層2と、エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1とからなる二層のエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100を得る。
次に
図8(c)に示される様に、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100の長手方向に直交し、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100の幅より長い刃を押し当てて、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100に線状溝10aを形成した。
前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100に形成される線状溝10aのそれぞれは、先の
図1に示した様に、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100の一辺3から他方の辺4に至る連続溝となっている。
【0130】
図9は本発明の第一の実施形態に係るエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シートと配管類との関係を説明するための模式部分斜視図であり、
図10は、第一の実施形態に係るエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シートを配管類に設置した後に、最外面に基材テープを配置した状態を説明するための模式部分断面図である。
【0131】
前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100の前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1を、連続的に形成された線状溝10aが開く方向に曲げて、前記線状溝10aを外側に向けて前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100を配管類30に巻くことができる。
前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100は一周もしくは一周以上を前記配管類30の周囲に巻くことが好ましい。
【0132】
前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100には前記線状溝10aが形成されているために、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100を簡単に曲げることができる。
【0133】
次に前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100の周囲に基材テープ7を巻いた。
前記基材テープ7の素材は先に説明した基材層の場合と同様であるが、金属、無機材等の不燃材を少なくとも一種含むものである。
前記基材テープ7として、アルミニウム箔ラミネートガラスクロスを使用した。前記基材テープ7を前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100の周囲に巻く際には、アルミニウム箔が最外面となるようにした。
前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100の周囲に隙間なく前記基材テープ7を巻いた後、ピン、ビス、タッカー、ステープラー、粘着テープ等の固定手段により、前記配管類30に前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100と前記基材テープ7とを固定した。
図10では前記固定手段として、ピン8が使用されている。
【0134】
前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100を配管類30の周囲に巻く回数は、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100に含まれる前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1の膨張率、厚みを考慮し、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1が火災等の熱にさらされて膨張した際に、形成された膨張残渣が前記配管類30の内側を閉塞できる量に設定することが好ましい。
【0135】
前記配管類30に対して前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100の前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1を最外層に配置する場合には、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100の周囲に前記基材テープ7を配置することが好ましい。
前記配管類30が火災等の熱により変形、焼失等した場合でも、火災等の熱により形成された前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1の膨張残渣が前記基材テープ7により保持される。
前記基材テープ7の内側は前記膨張残渣により閉塞されることから、前記配管類30の内部を通って火災等の炎や煙が広がることを防止することができる。
【0136】
本発明に使用する配管類30としては、例えば、冷媒管、熱媒管、水道管、下水管、注排水管、燃料移送管、油圧配管等の液体移送用管類、ガス管、暖冷房用媒体移送管、通気管等の気体移送用管類、電線ケーブル、光ファイバーケーブル、船舶用ケーブル等のケーブル類等、またこれらの液体移送用管類、気体移送用管類、ケーブル類等を内部に挿通させるためのスリーブ等が挙げられる。
これらの中でも施工性の観点から冷媒管、熱媒管、水道管、下水管、注排水管、燃料移送管、油圧配管等の液体移送用管類が好ましく、冷媒管、熱媒管であればさらに好ましい。
【0137】
前記配管類は、液体移送用管類、気体移送用管類、ケーブル類、スリーブ等の一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0138】
図9および
図10に例示される前記配管類30の形状は円筒であるが、本発明に使用する配管類の形状は円筒に限定されない。
本発明に使用する配管類の形状は円筒以外も使用することができ、例えば、前記配管類30の長軸方向に対し垂直方向の断面形状が三角形、四角形等の多角形、長方形等の互いの辺の長さが異なる形状、平行四辺形等の互いの内角が異なる形状、楕円形、円形等の形状が挙げられる。これらの中でも、断面形状が円形、四角形等であるものが施工性に優れることから好ましい。
【0139】
前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100の前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1に形成される前記線状溝10a,10a間の距離を調整することにより、任意の配管類の形状の外周に簡単に前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100を巻くことができる。
前記線状溝10a,10a間の距離は、配管類の外形、曲率等を考慮して適宜設定することができるが、通常は、5〜100mmの範囲であることが好ましく、10〜50mmの範囲であればより好ましく、前記線状溝10a,10a間の距離は同じであればさらに好ましい。
【0140】
また前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1に形成される前記線状溝10aのそれぞれは取り扱い性の観点から互いに平行であることが好ましい。
【0141】
第二および第三の実施形態に係る前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート110,120の場合も同様である。
【0142】
前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100〜120は、前記配管類30の外形に依存せず使用することができるから取り扱い性に優れる。
また配管類30に前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100〜120を巻くことにより、前記配管類30の耐火性を向上させることができることから、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100〜120は配管類30の耐火性能を向上させる用途に好ましく使用することができる。
【0143】
次に第一の実施形態に係るエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100を使用した防火区画貫通部構造の施工方法について説明する。
【0144】
図11は、区画40に設けられた貫通孔41を配管類30が挿通した状態を説明するための模式部分断面図である。
前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100を、区画40に設けられた貫通孔41を挿通する配管類30に対して、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1の線状溝10aを外側にして巻く。
次に先の
図9および
図10で説明した通り、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100の周囲にアルミニウム箔ラミネートガラスクロスからなる基材テープ7を、アルミニウム箔が最外面となるように巻く。
【0145】
図12は、第一の実施形態に係る防火区画貫通部構造を説明するための模式断面図である。
配管類30に前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100と前記基材テープ7を巻いた後、前記区画40に設けられた貫通孔41との隙間を、不燃材50により埋めることにより、防火区画貫通部構造200が得られる。
【0146】
図11および
図12では前記区画40として壁が使用されている。
本発明に使用することのできる前記区画40の具体例としては、例えば、建築物の壁、船舶の防火区画や船室に設けられた鋼板等が挙げられる。
また本発明に使用される区画40は垂直区画に限定されず、建築物の床、天井等、船舶の防火区画や船室に設けられた床、天井等の鋼板等の水平区画も使用することができる
【0147】
本発明に使用する前記区画40の具体例としては、例えば、床、天井、壁等のコンクリートスラブ、耐熱パネル等を挙げることができる。
【0148】
前記耐熱パネルとしては、例えば、セメント系パネル、無機セラミック系パネル等が挙げられる。
前記セメント系パネルとしては、例えば、硬質木片セメント板、無機繊維含有スレート板、軽量気泡コンクリート板、モルタル板、プレキャストコンクリート板等が挙げられる。
前記無機セラミック系パネルとしては、例えば、石膏ボード、けい酸カルシウム板、炭酸カルシウム板、ミネラルウール板、窯業系板等が挙げられる。
【0149】
ここで前記石膏ボードとしては、具体的には焼石膏に鋸屑やパーライト等の軽量材を混入し、両面に厚紙を貼って成形したもので、例えば、普通石膏ボード(JIS A6901準拠:GB−R)、化粧石膏ボード(JIS A6911準拠:GB−D)、防水石膏ボード(JIS A6912準拠:GB−S)、強化石膏ボード(JIS A6913準拠:GB−F)、吸音石膏ボード(JIS A6301準拠:GB−P)等が挙げられる。
【0150】
前記耐熱パネルは一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0151】
前記不燃材50としては、例えば、モルタル、パテ、コーキング等を挙げることができる。
【0152】
次に第二の実施形態に係るエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート110を使用した防火区画貫通部構造の施工方法について説明する。
先に説明した
図4〜
図6の場合と同様に、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート110に形成された線状溝10bが開く方向に前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート110を曲げて前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1を割る。
前記線状溝10bに沿って前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1を割ることにより、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1は複数のエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物片5に分割される。
【0153】
前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物片5は前記基材層2に固定されているため前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1を割った後も、前記基材層2から前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物片5が脱落することを防止できる。
また前記基材層2として柔軟な素材を選択することにより、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート110を自由に曲げることができる。
【0154】
図13は、区画40に設けられた貫通孔41を配管類30が挿通した状態を説明するための模式部分断面図である。
前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート110を、区画40に設けられた貫通孔41を挿通する配管類30に対して、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1の前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物片5を外側にして巻く。
【0155】
図14は、第二の実施形態に係る防火区画貫通部構造を説明するための模式断面図である。
配管類30に前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート110を巻く。次に前記区画40に設けられた貫通孔41との隙間を、不燃材50により埋めることにより、防火区画貫通部構造210が得られる。
図14に示される様に、第二の実施形態に係る防火区画貫通部構造210の場合は前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1の外部に不燃材50が配置されている。
前記防火区画貫通部構造210が、火災等の熱にさらされた場合には、前記不燃材50の内側に向かって前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1の膨張残渣が形成される。
この膨張残渣により、前記貫通孔41を閉塞させることができるから、火災等の炎、煙等が区画40の一方から他方へ拡がることを防ぐことができる。
【0156】
前記防火区画貫通部構造210の場合は、先の前記防火区画貫通部構造200の場合と比較して前記基材テープ7を使用することが省略されている。
図13および
図14に例示した壁は単層構造となっている。また前記区画に設けられた貫通孔41の内面には不燃材50が設置されている。
前記防火区画貫通部構造210が火災等の熱にさらされた場合でも、前記不燃材50が焼失することなく残る。
火災等の熱により形成された、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート110に含まれるエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1による膨張残渣は前記不燃材50に保持される。
このため、前記区画40として、内面に火災等の炎が浸入することを防止できる単層構造の壁を使用する場合には、先の前記防火区画貫通部構造200に使用した前記基材テープ7の設置を省略することができる。
【0157】
次に第三の実施形態に係るエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート120を使用した防火区画貫通部構造の施工方法について説明する。
【0158】
第三の実施形態に係るエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート120は、前記基材層2,6が、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1の両面に積層されている。
前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート120の場合は、前記基材層2としてアルミニウム箔ラミネートガラスクロスが使用され、前記基材層6として不織布が使用されている。
前記基材2は、アルミニウム箔が最外層となるように配置されている。
先の
図7により説明した通り、線状溝10cが、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート120の一方の面A’に積層された基材層6を貫通し、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1に達している。
【0159】
図15は、区画42に設けられた貫通孔41を配管類30が挿通した状態を説明するための模式部分断面図である。
図15では区画42として、中空壁が使用されている。
区画として中空壁を使用する場合には、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シートに含まれる前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層の外側に積層された少なくとも一つの基材層に不燃材を含ことが好ましい。
前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層の外側に積層された少なくとも一つの基材層に不燃材が含まれる場合には、火災等の熱に前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層がさらされて形成された膨張残渣が前記不燃材により支持されるため、中空壁の内側へ火災等の炎、煙が浸入することを防止することができる。
【0160】
前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート120を、区画42に設けられた貫通孔41を挿通する配管類30に対して、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート120の一方の面A’(
図7参照)、すなわち前記線状溝10cが形成された側の一方の面を配管類30側に向けて巻く。
【0161】
図16は、第三の実施形態に係る防火区画貫通部構造を説明するための模式断面図である。
前記区画42に設けられた貫通孔41との隙間を、不燃材50により埋めることにより、防火区画貫通部構造220が得られる。
【0162】
次に第四の実施形態に係るエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート101について説明する。
第四の実施形態に係るエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート101は、第一の実施形態に係るエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100の変形例である。
図17は第四の実施形態に係るエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート101を説明するための模式部分断面図であり、
図18は、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート101を配管類30に巻いた状態を説明するための模式斜視図である。
先の第一の実施形態に係るエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100を曲げる際に、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1を内側にして曲げた場合、曲げる程度によっては前記基材層2が破断することが考えられる。
【0163】
先に説明した第一の実施形態に係るエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100は、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1とおよび前記基材層2の二層構造であった。
これに対し、第四の実施形態に係るエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート101は、前記基材層2の外側に、基材層9が積層されている点が異なる。
図17および
図18の場合は、前記基材層2としてアルミニウム箔ラミネートガラスクロスが使用され、前記基材層9として樹脂フィルムが使用されている。
【0164】
前記樹脂フィルムに使用される素材としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ(1−)ブテン樹脂、ポリペンテン樹脂等のポリオレフィン樹脂、
ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、全芳香族ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂等が挙げられる。
前記樹脂フィルムは、使いやすさの観点から、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等の汎用樹脂フィルムであることが好ましい。
【0165】
先のエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート101に含まれる前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1の線状溝10aを内側にして前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート101を曲げた場合、前記基材層2が破断した場合でも、前記基材層2を前記基材層9が保持する。このため第四の実施形態に係るエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート101は、前記基材層2が破断した場合でも使用することができる。
【0166】
図19は、第四の実施形態に係るエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート101を使用した防火区画貫通部構造230の施工方法について説明するための模式断面図である。
図19に示される様に、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート101に含まれる前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1の線状溝10aを内側にして前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート101を配管類30に巻く。
前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート101を配管類30に巻いた際に前記基材層2が破断した場合でも破断した前記基材層2を前記基材層9が保持していることから、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート101を一定の形状に保つことができる。
【0167】
図20は、第四の実施形態に係る防火区画貫通部構造230を説明するための模式断面図である。
前記区画42に設けられた貫通孔41との隙間を、不燃材50により埋めることにより
、防火区画貫通部構造230が得られる。
【0168】
次に第五の実施形態に係るエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート130について説明する。
前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート130は、先に説明した第三の実施形態に係るエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート120の変形例である。
先に説明した第三の実施形態に係るエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート120の場合は、前記基材層2としてアルミニウム箔ラミネートガラスクロスが使用され、前記基材層6として不織布が使用されていた。
これに対し、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート130の場合は、前記基材層2および前記基材層6として不織布が使用されていて、最外層に樹脂フィルムからなる基材層9が積層されている点が異なる。
【0169】
図21は、第五の実施形態に係るエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート130を使用した防火区画貫通部構造240の施工方法について説明するための模式断面図である。
前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート130に含まれるエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1に形成された線状溝10c(
図7参照)を内側、すなわち配管類30側に向けて、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート130を配管類30に巻く。
前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート130を配管類30に巻いた際に、最外層に樹脂フィルムからなる基材層9が配置される。
前記樹脂フィルムからなる基材層9が存在するため、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート130を配管類30に巻く際に前記基材層2が破断した場合でも、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート130が飛散することを防止できる。
【0170】
図22は、第五の実施形態に係る防火区画貫通部構造を説明するための模式断面図である。
前記区画42に設けられた貫通孔41との隙間を、不燃材50により埋めることにより、防火区画貫通部構造240が得られる。
【0171】
次に第一の実施形態に係るエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100を使用した防火区画貫通部構造200の施工方法の変形例について説明する。
図23はエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100を使用した防火区画貫通部構造200の変形例を例示した模式正面図である。
先の防火区画貫通部構造200では区画40として壁が使用されていた。
これに対し、
図23に示す防火区画貫通部構造250では区画44としてレンガが使用されている点が異なる。それ以外は先の防火区画貫通部構造200と同様である。
図23に示される様に、先の防火区画貫通部構造200の施工方法の場合と同様に、レンガ、コンクリートブロック等を積み上げて形成される区画に対しても簡便に防火区画貫通部構造250を施工することができる。
【0172】
次に第六の実施形態に係るエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート140について説明する。
図24は第六の実施形態に係るエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート140を説明するための模式斜視図である。
第六の実施形態に係るエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート140は、第一の実施形態に係るエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100と比較して前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1に形成された線状溝10dの形状が異なる。それ以外は第一の実施形態に係るエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100の場合と同様である。
【0173】
図24に例示される通り、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート140は、破線状の線状溝10dを有する。
本発明におけるエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート140の前記線状溝10dは、前記線状溝10dに沿って割ることのできる形状であれば必ずしも連続している必要はなく、断続している形状であってもよい。
図24に示すエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート140の前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1を、前記線状溝10dが開く方向に曲げて、前記線状溝10dに沿って割ることができる。
【0174】
前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート140の変形例として、例えば、先に説明した前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート110〜130のそれぞれの連続した線状溝10bおよび10cを、断続した線状溝とすることもできる。
【0175】
それぞれのエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シートを割って使用する場合には、前記線状溝は連続していても断続していてもよい。
これに対し、エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シートを割らないで使用する場合には、前記線状溝は連続していることが、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シートを容易に曲げることができることから好ましい。
【0176】
次に第七の実施形態に係るエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート150について説明する。
第七の実施形態に係るエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート150は、第一の実施形態に係るエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100と比較して前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1に形成された線状溝10eが、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート140の長手方向に対して斜めに形成されている点が異なる。それ以外は第一の実施形態に係るエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100の場合と同様である。
【0177】
図25および
図26は、それぞれ第七の実施形態に係るエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート150を説明するための模式斜視図である。
図25に例示される通り、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート150は、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1に形成された線状溝10eが、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート150の長手方向に対して斜めに形成されている。
【0178】
図25に示すエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート150の前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1を、前記線状溝10eが開く方向または閉じる方法に曲げることができることから、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート150を自由に曲げることができる。
また前記線状溝10eが、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート150の長手方向に対して斜めに形成されていることから、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート150を簡単にらせん状に変形させることができる。
このエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート150を用いて配管類30の外周に簡単にらせん状にエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート150を巻くことができる。
【0179】
らせんのピッチ等は、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1に形成する前記線状溝10eの角度、前記線状溝10eの間隔等により調整することができる。
前記線状溝10eは、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート150の長手方向に対して、10〜85度の角度の範囲であることが好ましく、30〜85度の範囲であることがより好ましい。
【0180】
次に第八の実施形態に係るエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート160について説明する。
図27は、第八の実施形態に係るエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート160を説明するための模式部分断面図である。
前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート160の構成は、先に説明したエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート120の場合と同様である。
先に説明したエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート120の場合は、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート120の一方の面に線状溝10cが形成されていた。
これに対し、第八の実施形態に係るエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート160の場合は、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート160の両方の面に線状溝10aが形成されている点が異なる。
【0181】
図28は、第八の実施形態に係るエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート160を使用した防火区画貫通部構造の施工例を示す模式正面図である。
前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート160は、両方の面に線状溝10aを有することから、一方の面に線状溝10cが形成されたエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート120と比較して、自由に曲げることができる。
このため前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート160を使用した場合、配管類31の外形が複雑な形状であっても、
図28に示す通り、簡単に防火区画貫通部構造260を施工することができる。
【0182】
次に第九の実施形態に係るエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート170について説明する。
図29は、第九の実施形態に係るエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート170を説明するための模式斜視図である。
前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート170は、先に説明したエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート100の変形例である。
前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート170は、二以上の線状溝10aに加え、これらの線状溝10aと交わる、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート170の長手方向に形成された線状溝10fを有する。
この線状溝10fを利用して、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート170を二つに割ることができる。
この様に前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート170の長手方向に線状溝10fを設けることにより、必要に応じて前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート170を複数のシートに分割して使用することもできる。
【0183】
次に実施例により本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0184】
実施例1に使用したエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シートは先の
図3で説明した第二の実施形態に係るエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート110と同様である。
実施例1に使用したエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート110は積水化学工業社製のフィブロック(登録商標。エポキシ樹脂、熱膨張性黒煙、リン化合物および無機充填材を配合してなる。積水化学工業社より入手可能。)を使用した。
前記フィブロックはエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1と基材層2とを積層したものであり、前記基材層2は、アルミニウム箔ラミネートガラスクロスである。前記フィブロック(登録商標)は、エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1、ガラスクロスおよびアルミニウム箔がそれぞれこの順番に積層されたものである。
幅130mm、長さ1000mmの前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート110を用いて、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1の表面に、15mm間隔に平行に線状溝10bを形成した。
前記線状溝10bは、定規を使用して手でナイフの先端をエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1に接触させ、手で前記ナイフを移動させて形成した。
【0185】
次に手で前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート110を持ち、前記線状溝10bが開く方向に前記フィブロックを手で曲げたところ、
図5および
図6に示す通り、前記線状溝10bに沿って前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1が割れた。
【0186】
次に前記フィブロックの前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1を外側に向けて、
図13に示す通りポリ塩化ビニル製の配管類30の周囲に前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート110を巻いた。
前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート110を前記配管類30の周囲に巻いた後、市販の粘着テープを用いて前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート110を前記配管類30の周囲に固定した。
【0187】
次に
図14に示す通り、前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート110が巻かれた配管類30と、前記区画40に設けられた貫通孔41との隙間を、モルタルからなる不燃材50により埋めることにより、防火区画貫通部構造210を得た。
【0188】
一方、実施例1に使用した前記エポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物シート110のエポキシ樹脂含有熱膨張性樹脂組成物層1を用いて3点曲げ試験を行った。
まず横20mm、縦30mmおよび厚み2mmの試験片を準備し、前記試験片を24mm離れた台の上に乗せ、前記試験片の中央部を上から5mm/分の速度で押して得られる応力を測定した。
前記試験片は、5℃の温度で過重をかけたところ、過重が250〜350Nの範囲、変位が3〜4.5mmの範囲で脆性破壊を起こした。
【0189】
また前記フィブロックの600℃における膨張倍率は30.4倍であった。
前記フィブロックを600℃で20分間保持し、得られた膨張残さを垂直に立てたときこの膨張残さはそのままの形状を保持した。
【0190】
実施例1に使用したエポキシ樹脂を含有するフィブロック(登録商標。積水化学工業社から入手可能)に代えて、エポキシ樹脂を含まないブチルゴムを含有するフィブロック(登録商標。積水化学工業社から入手可能)を使用した。
実施例1と全く同様の操作を行ったが、ブチルゴムを含有するフィブロックを割ることはできなかった。
【0191】
またブチルゴムを含有する前記フィブロックの600℃における膨張倍率は35.1倍であった。
前記フィブロックを600℃で20分間保持し、得られた膨張残さを垂直に立てたときこの膨張残さは形状を保持することができず、崩れ落ちた。