(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6196558
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】潤滑剤組成物及びそれを用いた金属加工方法
(51)【国際特許分類】
C10M 141/06 20060101AFI20170904BHJP
C10M 169/04 20060101ALI20170904BHJP
C10M 125/02 20060101ALN20170904BHJP
C10M 133/12 20060101ALN20170904BHJP
C10M 133/16 20060101ALN20170904BHJP
C10M 101/02 20060101ALN20170904BHJP
C10M 101/04 20060101ALN20170904BHJP
C10M 107/02 20060101ALN20170904BHJP
C10M 105/04 20060101ALN20170904BHJP
C10M 105/24 20060101ALN20170904BHJP
C10M 105/32 20060101ALN20170904BHJP
C10M 135/22 20060101ALN20170904BHJP
C10M 135/04 20060101ALN20170904BHJP
B21C 9/00 20060101ALN20170904BHJP
C10N 10/04 20060101ALN20170904BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20170904BHJP
C10N 30/06 20060101ALN20170904BHJP
C10N 40/24 20060101ALN20170904BHJP
【FI】
C10M141/06
C10M169/04
!C10M125/02
!C10M133/12
!C10M133/16
!C10M101/02
!C10M101/04
!C10M107/02
!C10M105/04
!C10M105/24
!C10M105/32
!C10M135/22
!C10M135/04
!B21C9/00 K
C10N10:04
C10N30:00 Z
C10N30:06
C10N40:24
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-9114(P2014-9114)
(22)【出願日】2014年1月22日
(65)【公開番号】特開2014-167100(P2014-167100A)
(43)【公開日】2014年9月11日
【審査請求日】2016年10月27日
(31)【優先権主張番号】特願2013-16490(P2013-16490)
(32)【優先日】2013年1月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391045668
【氏名又は名称】パレス化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】きさらぎ国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】森 静男
(72)【発明者】
【氏名】野上 武史
(72)【発明者】
【氏名】大前 伸夫
【審査官】
吉田 邦久
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−202430(JP,A)
【文献】
特開2009−063154(JP,A)
【文献】
特開平02−242893(JP,A)
【文献】
特開平10−195473(JP,A)
【文献】
特開2011−105831(JP,A)
【文献】
特開2006−182806(JP,A)
【文献】
特開2006−143988(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/004609(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0107525(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 141/06
C10M 169/04
B21C 9/00
C10M 101/02
C10M 101/04
C10M 105/04
C10M 105/24
C10M 105/32
C10M 107/02
C10M 125/02
C10M 133/12
C10M 133/16
C10M 135/04
C10M 135/22
C10N 10/04
C10N 30/00
C10N 30/06
C10N 40/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)オニオンライクカーボンを0.001〜10質量%、並びに(B)コハク酸イミド系分散剤及びベンジルアミン系分散剤のうちいずれか一以上の分散剤を0.1〜10質量%含有し、オニオンライクカーボンの分散処理が施されていることを特徴とする金属加工用潤滑剤組成物。
【請求項2】
さらに、(C)鉱油、合成炭化水素油、天然油脂、脂肪酸、及び合成エステルのうちいずれか1種以上、並びに(D)カルシウムスルフォネート系添加剤、硫黄系極圧添加剤、及び燐系極圧添加剤のうちいずれか1種以上を含有することを特徴とする請求項1記載の金属加工用潤滑剤組成物。
【請求項3】
前記(C)の含有量が10質量%以上であり、前記(D)の含有量が0.1〜70質量%であることを特徴とする請求項2記載の金属加工用潤滑剤組成物。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれか記載の金属加工用潤滑剤組成物を用いて、塑性変形を伴う金属の加工を行うことを特徴とする金属加工方法。
【請求項5】
前記塑性変形を伴う金属の加工は、工具又は金属材料に前記金属加工用潤滑剤組成物を液体状で供給し、前記工具と前記金属材料との間隙に潤滑剤膜を施すことを特徴とする請求項4記載の金属加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オニオンライクカーボンを含有する潤滑剤組成物及びそれを用いた金属加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷間の塑性加工の分野では、鉱油に塩素系添加剤、硫黄系添加剤、燐系添加剤などが配合された潤滑剤組成物が使用されている。また、近年、塩素フリー潤滑剤として高塩基性カルシウムスルフォネートを配合した潤滑剤組成物が使用されている。しかし、冷間塑性加工の分野では、塩素フリー潤滑剤を使用すると加工能率が低下してしまう。あえて加工効率を低下させてまでも塩素フリー潤滑剤を使用する試みもなされているが、過酷な加工では、焼付や成型不良が発生してしまう。そのため、過酷な加工には、依然として塩素系潤滑剤組成物も使用されているのが現状である。
【0003】
また、温間、熱間塑性加工の分野においても精密な加工が要望されているが、黒鉛、二硫化モリブデン、雲母などの固体潤滑剤を配合した潤滑剤組成物が使用されていることから、その粒子の大きさより多量に付着させなければならず、付着膜厚が影響して精密さに欠けるのが現状である。
【0004】
また、近年、フラーレン、カーボンナノチューブ及びカーボンナノホーンなどのナノカーボン粒子を用いた潤滑剤及び潤滑方法もいくつか提案されている。
例えば、特許文献1には、特定の基油に酸化防止剤としてのフラーレンを添加し、耐熱性、酸化防止性を併せ持つ潤滑剤組成物が、特許文献2には、キャビティ面にフラーレンを付着させる工程を有することを特徴とする鋳造型の製造方法が、特許文献3には、フラーレン類を主成分とする膜の形成に使用される膜形成用品および膜形成方法ならびにフラーレン類を含有する離型剤が、特許文献4には、フラーレン、カーボンナノチューブおよびその他のナノ粒子を含有する水系潤滑剤組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−336309号公報
【特許文献2】特開2007−144499号公報
【特許文献3】特開2006−306010号公報
【特許文献4】特開2009−173814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のように、塩素フリー潤滑剤は潤滑性に問題があり、また、フラーレンやカーボンナノチューブを用いた潤滑剤組成物は数多く提案されているが、過酷な塑性加工に対しては、未だ十分な検討がなされていないのが現状である。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、優れた潤滑性を有し、過酷な塑性加工に適用でき、廃棄焼却時に環境負荷低減にも貢献できる潤滑剤組成物及びそれを用いた金属加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、以上の目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、オニオンライクカーボンを特定の割合で含有させた潤滑剤組成物を用いることにより、上記課題が解決されることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、(A)オニオンライクカーボンを0.001〜10質量%含有することを特徴とする潤滑剤組成物を提供する。
【0010】
本発明の潤滑剤組成物においては、さらに、(B)分散剤を含有し、オニオンライクカーボンの分散処理が施されていることが好ましい。
【0011】
また、本発明の潤滑剤組成物においては、さらに、(C)鉱油、合成炭化水素油、天然油脂、脂肪酸、及び合成エステルのうちいずれか1種以上、並びに(D)カルシウムスルフォネート系添加剤、硫黄系極圧添加剤、及び燐系極圧添加剤のうちいずれか1種以上を含有することが好ましく、前記(C)の含有量が10質量%以上であることが好ましく、前記(D)含有量が0.1〜70質量%であることがより好ましい。
【0012】
また、本発明は、上記潤滑剤組成物を用いて、塑性変形を伴う金属の加工を行うことを特徴とする金属加工方法を提供する。
【0013】
本発明に係る金属加工方法において、前記塑性変形を伴う金属の加工は、工具又は金属材料に前記潤滑剤組成物を液体状で供給し、前記工具と前記金属材料との間隙に潤滑剤膜を施すことにより行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、優れた潤滑性を有し、過酷な塑性加工に適用でき、廃棄焼却時に環境負荷低減にも貢献できる潤滑剤組成物及びそれを用いた金属加工方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の潤滑剤組成物について、好適な実施形態を詳細に説明する。
本実施形態に係る潤滑剤組成物において、(A)成分であるオニオンライクカーボンは、sp
2カーボンがタマネギ状に構成されたナノ粒子であり、その表面に、水素や他の元素が結合されているものもある。また、オニオンライクカーボンの大きさは、炭素−炭素結合の網目構造の層が何重かによって決定されるものであり、一次粒子は、数nm〜数十nmである。大量合成されたオニオンライクカーボンは、一次粒子が複数凝集し、平均粒子径が数十〜数百μm以下の凝集体を形成しているものが多く含まれているので、潤滑剤組成物においては、凝集体を微粒子化させることが好ましい。オニオンライクカーボンの微粒子化は、後述するように、オニオンライクカーボンに分散処理を施し、分散液を作製することが好ましい。本実施形態に係る潤滑剤組成物においては、分散液中のオニオンライクカーボンの下記方法により求めた平均粒子径が、5〜300nmが好ましく、10〜200nmがより好ましく、20〜100nmが特に好ましい。300nmを超えるとオニオンライクカーボンの分散安定性が悪くなるばかりでなく、潤滑性を保持するためには多量に配合しなければならない傾向がある。
【0016】
上記オニオンライクカーボンの平均粒子径の測定方法としては、以下の測定装置に分散液を供して測定することができる。
【0018】
本実施形態に係る潤滑剤組成物において、使用されるオニオンライクカーボンは、特に製法が限定されるものではないが、例えば、神港精機(株)製装置により作製されたもの(特許515996号公報)を好適に用いることができる。具体的には、アセチレンガスのような炭化水素系ガスを用いて300℃以下でプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法によりDLC(Diamond like Carbon)粉末を作製し、そのDLC粉末を真空中又は不活性ガス雰囲気中で1600〜2000℃で加熱することによって得られるオニオンライクカーボンが好ましい。
【0019】
本実施形態の潤滑剤組成物は、上記(A)成分を0.001〜10質量%含有し、好ましくは0.01〜10質量%、特に好ましくは0.1〜10質量%含有する。オニオンライクカーボンが0.001質量%未満では潤滑効果に乏しく、10質量%を超えると分散液の粘度が高くなりゲル状になりやすいのであまり好ましくない。
【0020】
また、本実施形態の潤滑剤組成物は、上記(A)成分の他に、(B)成分として、分散剤を添加することが好ましい。分散剤の種類は、特に限定されないが、市販のポリブテニルコハク酸イミドなどのコハク酸アミド系分散剤やポリオレフィン・フェノールアミンなどのベンジルアミン系分散剤などをオニオンライクカーボンの含有量に応じて用いることができる。本実施形態の潤滑剤組成物における(B)成分の含有量としては、0.1〜10質量%が好ましく、0.2〜5質量%がより好ましい。
【0021】
(B)成分を配合し、オニオンライクカーボンの分散処理を施すことで、潤滑剤組成物中のオニオンライクカーボンの分散を安定化させることができるため、より優れた潤滑性を有し、過酷な塑性加工に適用することができる。
【0022】
本実施形態において、「分散処理を施す」とは、潤滑剤組成物におけるオニオンライクカーボンの1次粒子が凝集して形成されている平均粒子径数十〜数百μmの粒子を、平均粒子径5〜300nmの粒子に分散し、安定化することをいう。分散処理の方法としては、特に限定されないが、攪拌機、超音波分散機、ビーズミルなどの装置を用いて分散処理を施すことが好ましい。
【0023】
また、本実施形態に係る潤滑剤組成物においては、(C)成分として、鉱油、合成炭化水素、天然油脂、脂肪酸、及び合成エステルのうちいずれか1種以上を含有することが好ましい。
鉱油としては、特に限定されないが、40℃における動粘度が20〜500mm
2/秒の精製鉱油が好適である。合成炭化水素としては、ポリブデン、ポリアルファーオレフィンなどが使用できる。天然油脂としては、菜種油、大豆油、パーム油、牛脂、豚脂およびそれらを精製したものなどが使用できる。脂肪酸としては、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などやイソステアリン酸のような合成脂肪酸が使用できる。合成エステルとしては、メチルオレエート、メチルステアレート、ブチルステアレート、2−エチルヘキシルステアレート、2−エチルヘキシルパルミテート、ネオペンチルグリコールモノステアレート、ネオペンチルグリコールジオレート、トリメチロールプロパントリオレート、ジオクチルフタレート、トリオクチルトリメテートなどが使用できる。
【0024】
(C)成分の含有量としては、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、30〜99.5質量%がさらに好ましく、60〜90質量%が特に好ましい。(C)成分が10質量%未満ではオニオンライクカーボンの分散安定性が悪くなる傾向がある。
【0025】
また、本実施形態に係る潤滑剤組成物は、(D)成分として、カルシウムスルフォネート系添加剤、硫黄系極圧添加剤、及び燐系極圧添加剤のうちいずれか1種以上を含有することが好ましい。
カルシウムスルフォネート系添加剤としては、特に限定されないが、塩基価が200mgKOH/g以上のものが好適である。硫黄系極圧添加剤としては、ポリスルフィド、硫化油脂、硫化エステルなどを使用することができる。燐系極圧添加剤としては、リン酸エステル、ジチオリン酸亜鉛などの有機リン化合物などを使用することができる。
【0026】
(D)成分の含有量としては、0.1〜70質量%が好ましく、0.1〜50質量%がより好ましく、0.1〜20質量%が特に好ましい。(D)成分が70質量%を超えるとオニオンライクカーボンの分散安定性が悪くなる傾向がある。
【0027】
また、本実施形態に係る潤滑剤組成物においては、さらに、潤滑性能に加えて二次性能を付与する防錆剤、消泡剤を添加することができる。
【0028】
以上説明した本実施形態に係る潤滑剤組成物は、所定量のオニオンライクカーボンを含有しているため、優れた潤滑性を示し、これを潤滑剤として用いることにより、過酷な条件下での効果的な塑性変形加工を行うことが可能である。また、塩素系添加剤を用いる必要がないため、廃棄及び焼却が可能であり、環境負荷の低減に貢献することができる。
【0029】
次に、本発明の他の実施形態に係る金属加工方法について説明する。本実施形態に係る金属加工方法は、塑性変形を伴う金属の加工に際し、工具又は金属材料に上記実施形態に係るオニオンライクカーボン含有潤滑剤組成物を液状の形で供給し、工具と金属材料の間隙に優れた潤滑剤膜を施すことを特徴とする。
【0030】
潤滑剤膜は、液体、固体の何れでもよいが、特に温間及び熱間加工においては固体潤滑皮膜を形成することが作業環境上望ましい。
【0031】
以上説明した本実施形態に係る金属加工方法によると、所定量のオニオンライクカーボンを含有する潤滑剤を用いているため、過酷な条件下での効果的な塑性変形加工が可能である。
【0032】
以上の実施形態に係る潤滑剤組成物及びそれを用いた金属加工方法において、潤滑剤に含まれるオニオンライクカーボンが優れた潤滑性を示し、過酷な条件下での効果的な塑性変形加工を行うことを可能とするメカニズムは、必ずしも完全には理解されていないが、おそらく、オニオンライクカーボンが有する特異的な構造によるものと思われる。
【実施例】
【0033】
以下に、実施例及び比較例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0034】
まず、下記表2に示した組成にて、実施例1〜5及び比較例1、2に係る潤滑剤組成物を作製した。具体的には、オニオンライクカーボン及び分散剤を鉱油に添加し、ビーズミル(ビューラー(株)製PML−2)によりφ0.2mmのジルコニアビーズを用いて、湿式分散処理を施し、オニオンライクカーボンの平均粒子径が5〜300nmになるように分散液を作製した。次いで、オニオンライクカーボンが0.001〜10%になるように、分散液に鉱油、天然油脂、脂肪酸、エステル、カルシウムスルフォネート、硫黄系極圧添加剤、および燐系極圧添加剤のいずれか1種以上を配合することで潤滑剤組成物を作製した。
【0035】
[原料成分]
オニオンライクカーボン:神港精機(株)製、平均粒子径1mm以下の凝集体の原料
分散剤:ポリオレフィン・フェノールアミン
鉱油:40℃における動粘度が30mm
2/sのパラフィン系鉱油
天然油脂:豚脂精製トリグリセライド
硫黄系極圧添加剤(1):ジターシャリードデシルトリサルファイド
硫黄系極圧添加剤(2):硫化オレフィン
カーボンナノチューブ:昭和電工(株)製、CVD法合成、繊維径150nm
フラーレン(C
60):フロンティアカーボン(株)製、平均粒子径30〜70μmの凝集体の原料
【0036】
次に、上記潤滑剤組成物の潤滑性を確認するため、下記に示すとおり、摩擦試験(FALEX試験条件、曽田式四球試験条件、およびリング圧縮試験条件)を実施した。
【0037】
(実験例1:FALEX試験)
まず、表2及び表3の配合量(重量%)に従って、実施例1〜5に係る金属加工油剤、並びに比較例1、2に係る金属加工油剤を作成し、FALEX試験に供した。
【0038】
[試験条件]
ピン:AISI 1137(硫黄複合快削鋼)
Vブロック:SAE13135(ニッケルクロム鋼材)
荷重:0kNから15kNへ連続して荷重を上げた。
速度:290rpm
なじみ処理:スタート前に1.3kNにて5分間駆動させた。
温度:室温(25℃)
【0039】
[試験方法]
上記試験条件にて、ピンをVブロックで挟み、荷重を0kNから15kNまで連続して与えながら、ピンを回転させ摩擦させた。潤滑油組成物をピンとVブロックの間に常に供して、摩擦面が焼付く限界荷重をもって性能を比較した。結果を表2に示す。
【0040】
【表2】
【0041】
上記表2に示すように、実施例1〜5及び比較例1、2に係る潤滑剤組成物を比較すると、実施例1〜5に係るオニオンライクカーボンを含有する潤滑剤組成物が、比較例1、2に係るオニオンライクカーボンを含有しない潤滑剤組成物よりも、いずれも高い耐焼付荷重を示している。これにより、潤滑剤にオニオンライクカーボンを添加すると、優れた潤滑効果が得られることがわかる。
【0042】
(実験例2:曽田式四球試験)
更に、表3及び表4の配合量(質量%)に従って、実施例6〜11に係る金属加工油剤、並びに比較例3〜7に係る金属加工油剤を作成し、曽田式四球試験に供した。
【0043】
[実験条件]
加工機 :四球形摩擦試験機(神鋼造機)
試験用鋼球 :玉軸受け様鋼球3/4inch(19.05mm)上級JIS1501
立軸回転数 :750rpm
設定荷重 :34.3N/cm
2
【0044】
[試験方法]
上記試験条件にて、鋼球を5分間摩擦させて、試験開始後30秒以降の摩擦係数の最大値と、5分間摩擦させた後の下方の固定した3つの鋼球の摩耗痕径の平均値をもって性能を比較した。結果を表3及び表4に示す。
【0045】
【表3】
【0046】
【表4】
【0047】
上記表3及び4に示すように、実施例6〜11及び比較例3、4に係る潤滑剤組成物を比較すると、実施例6〜11に係る本願の範囲内の含有量のオニオンライクカーボンを含有する潤滑剤組成物が、比較例3、4に係る潤滑剤組成物よりも、いずれも摩擦係数の最大値が低く、小さい摩耗痕径を示している。これにより、潤滑剤にオニオンライクカーボンを添加すると、優れた潤滑効果が得られることがわかる。
【0048】
また、実施例9及び比較例5、6を比較すると、実施例9に係るオニオンライクカーボンを含有する潤滑剤組成物が、比較例5、6に係るカーボンナノチューブ、フラーレンなどのナノカーボンを含有する潤滑剤組成物よりも、いずれも摩擦係数の最大値が低く、小さい摩耗痕径を示している。これにより、潤滑剤にオニオンライクカーボンを添加すると、カーボンナノチューブやフラーレンよりも優れた潤滑効果が得られることがわかる。
【0049】
また、実施例6〜11及び比較例7を比較すると、実施例6〜11に係るオニオンライクカーボンを含有する潤滑剤組成物と、比較例7に係る塩素系添加剤を含有する潤滑剤組成物の摩擦係数の最大値および摩耗痕径はほぼ同等であり、潤滑剤にオニオンライクカーボンを添加すると、塩素系潤滑剤組成物とほぼ同等の潤滑効果が得られることがわかる。
【0050】
(実験例3:リング圧縮試験)
更に、表5の配合量(重量%)に従って、実施例12〜15に係る金属加工油剤、並びに比較例15〜18に係る金属加工油剤を作成し、リング圧縮試験に供した。
【0051】
[実験条件]
加工機 :油圧プレス機(RIKEN KIKI) 最大荷重500kN
試験用リング :SUS304 6.50×9.75×19.5(高さ×内径×外径)
試験用ダイス :SKD−11
試験温度 :300℃(リング)、100℃(ダイス)
圧縮荷重 :500kN
圧縮時間 :1秒
油膜量 :50μm
【0052】
摩擦係数の測定については、リング内径の変化及びリング高さの変化を元に下記の式にて算出した。
<摩擦係数計算式>
0.055×EXP((試験前のリング内径−試験後のリング内径)/試験前のリング内径×100)/EXP(0.044×((試験前のリング高さ−試験後のリング高さ)/試験前のリング高さ×100)+1.06)
【0053】
【表5】
【0054】
上記表5に示すように、実施例12〜15及び比較例15に係る潤滑剤組成物を比較すると、実施例12〜15に係るオニオンライクカーボンを含有する潤滑剤組成物が、比較例15に係るオニオンライクカーボンを含有しない潤滑剤組成物よりも、いずれも低い摩擦係数を示している。これにより、潤滑剤にオニオンライクカーボンを添加すると、優れた潤滑効果が得られることがわかる。
【0055】
また、実施例13及び比較例16、17を比較すると、実施例15に係るオニオンライクカーボンを含有する潤滑剤組成物が、比較例16、17に係るカーボンナノチューブ、フラーレンなどのナノカーボンを含有する潤滑剤組成物よりも、いずれも低い摩擦係数を示している。これにより、潤滑剤にオニオンライクカーボンを添加すると、カーボンナノチューブやフラーレンよりも優れた潤滑効果が得られることがわかる。
【0056】
また、実施例12〜15及び比較例18を比較すると、実施例12〜15に係るオニオンライクカーボンを含有する潤滑剤組成物が、比較例18に係る塩素系添加剤を含有する潤滑剤組成物よりも、いずれも低い摩擦係数を示している。これにより、潤滑剤にオニオンライクカーボンを添加すると、塩素系潤滑剤組成物よりも優れた潤滑効果が得られることがわかる。