【実施例】
【0033】
以下、本発明にかかわる過電流保護機能変換装置の実施例を図面を用いて説明する。
【0034】
図2は本発明の実施例における過電流保護機能変換装置20の構成を示す回路図、
図3はコントロールICとして自動復帰型の過電流保護機能をもつコントロールIC 10に
図1の実施例の過電流保護機能変換装置20を組み合わせたスイッチング電源装置の回路図、
図4は過電流保護機能変換装置20を組み合わせたコントロールIC 10の動作を示すタイミングチャートである。
【0035】
まず、スイッチング電源装置の構成について説明する。
図3に示すスイッチング電源装置はAC/DCフライバック式のスイッチング電源装置である。AC電圧源(図示せず)の一方の出力端子に接続されるノードNにはインダクタL11と抵抗素子R11の並列回路が接続され、もう一方の出力端子に接続されるノードLには抵抗素子R12が接続されている。さらに、ダイオードD11,D12,D13,D14からなるダイオードブリッジDBとバルクコンデンサC11とでブリッジ整流器11が構成されている。バルクコンデンサC11の正極端子とグランド(GND)との間に抵抗素子R13,R14と起動用のスイッチング素子Q11と高周波除去用のコンデンサC12の直列回路が接続されている。起動用のスイッチング素子Q11とコンデンサC12との接続点がコントロールIC 10の電源入力端子VCCに接続されている。コンデンサC12とグランドとの接続点がコントロールIC 10のグランド端子GNDに接続されている。起動用のスイッチング素子Q11はノーマリオン型であり、スイッチング電源装置のメイン電源のオフ時において導通状態にセットされる。このため起動用のスイッチング素子Q11はデプリーション型でNMOSタイプのFET(電界効果型トランジスタ)で構成され、ゲート電圧を0Vにしてもドレイン電流が流れるようになっている。起動用のスイッチング素子Q11のゲートはコントロールIC 10のASU(アクティブスタートアップ)端子に接続されている。起動用のスイッチング素子Q11の導通によりコントロールIC 10が起動すると、コントロールIC 10のASU端子の電圧がマイナスレベルにされ、起動用のスイッチング素子Q11がターンオフするようになっている。
【0036】
バルクコンデンサC11の正極端子とグランド(GND)との間にトランスT11の一次巻線N11とメインのスイッチング素子Q12と電流検出用の抵抗素子R15の直列回路が接続されている。メインのスイッチング素子Q12もNMOS型のFETで構成されている。このメインのスイッチング素子Q12はエンハンスメント型のFETでノーマリオフ型に構成されている。メインのスイッチング素子Q12と電流検出用の抵抗素子R15との接続点がコントロールIC 10の電流検出端子(IS)I
SENSEに接続されている。メインのスイッチング素子Q12のゲート端子はコントロールIC 10のスイッチング信号出力端子OUTPUTに接続されている。
【0037】
トランスT11の一次巻線N11とメインのスイッチング素子Q12との接続点はスナバ回路12を介してバルクコンデンサC11の正極端子に接続されている。スナバ回路12は整流ダイオードD15と抵抗素子R16および抵抗素子R17とコンデンサC13の並列回路で構成されている。スナバ回路12はメインのスイッチング素子Q12の遮断時に生じる過渡的な高電圧を吸収する保護回路である。
【0038】
トランスT11の二次巻線N12の両端間に整流ダイオード(ツェナーダイオード)D16と平滑コンデンサC14の直列回路が接続され、平滑コンデンサC14の両端間にプレ負荷用の抵抗素子R18が接続され、プレ負荷用の抵抗素子R18の両端に負荷(図示せず)の接続用の出力端子が接続されている。抵抗素子R18の正極端子に現れるのがスイッチング電源装置の出力電圧V
OUT である。一次巻線N11と二次巻線N12および補助巻線N13とは逆極性の関係となっている。
【0039】
トランスT11の補助巻線N13に抵抗分圧器13を構成する抵抗素子R19,R20の直列回路が接続され、抵抗素子R19,R20の接続点がコントロールIC 10の電圧検出端子(VS)V
SENSEに接続されている。
【0040】
以上のように構成されたスイッチング電源装置において、
図3に示す3つのノードA,B,Cに本発明実施例の過電流保護機能変換装置20を接続するようになっている。
【0041】
図5の従来例にあっては、補助巻線N13と抵抗素子R19との接続点が給電ラインLnを介してコントロールIC 10の電源入力端子VCCに接続されているが、本発明実施例では×印で示すように、給電ラインLnの途中箇所を分断し、その一方の分断点を過電流保護機能変換装置20のノードBに接続し、他方の分断点をノードCに接続し、起動用のスイッチング素子Q11とコントロールIC 10の電源入力端子VCCとの接続点を過電流保護機能変換装置20のノードAに接続している。
【0042】
図2は本発明の実施例の過電流保護機能変換装置20を具体的に示した回路構成図である。補助巻線N13のハイサイド側に形成されたノードBに整流ダイオードD1のアノードが接続され、整流ダイオードD1のカソードが平滑コンデンサC1の正極端子に接続され、コンデンサC1の負極端子がグランド(GND)に接続されている(第1の直列回路)。平滑コンデンサC1の両端間に抵抗素子R1が接続されている。ノードBと整流ダイオードD1との接続点にダイオードD2のアノードが接続され、ダイオードD2のカソードとグランド(GND)の間に平滑コンデンサC2が接続されている(第2の直列回路)。平滑コンデンサC2の容量は平滑コンデンサC1の容量に比べて充分に大きくされている。
【0043】
コントロールIC 10の電源入力端子VCCにカソードが接続された逆流防止ダイオードD17のアノードにノードCが接続されているが、このノードCとグランド(GND)との間に抵抗素子R2、遅延制御用のスイッチング素子Q1の直列回路が接続されている(第3の直列回路)。遅延制御用のスイッチング素子Q1はNMOS‐FETで構成されている。抵抗素子R2とノードCとの接続点が平滑コンデンサC2の正極端子に接続され、遅延制御用のスイッチング素子Q1のゲートが平滑コンデンサC1の正極端子と抵抗素子R1の接続点に接続されている。以上で説明したダイオードD1,D2、平滑コンデンサC1,C2、抵抗素子R1,R2、遅延制御用のスイッチング素子Q1で遅延トリガ部21が構成されている。
【0044】
抵抗素子R2と遅延制御用のスイッチング素子Q1との接続点とグランド(GND)の間に抵抗素子R3が接続されている。抵抗素子R3に対して平滑コンデンサC3が並列に接続されている。平滑コンデンサC3の正極端子にラッチ停止用のスイッチング素子Q2のゲートが接続されている。このラッチ停止用のスイッチング素子Q2はNMOS‐FETで構成されている。ノードAはコントロールIC 10の電源入力端子VCCに接続されているが、このノードAとグランド(GND)との間にツェナーダイオード(定電圧ダイオード)ZD1とラッチ停止用のスイッチング素子Q2の直列回路が接続されている。ツェナーダイオードZD1のカソードがノードAに接続され、そのアノードがラッチ停止用のスイッチング素子Q2のドレインに接続されている。ツェナーダイオードZD1とノードAとの接続点とラッチ停止用のスイッチング素子Q2のゲートとの間にラッチ補助用のスイッチング素子Q3と整流ダイオードD3の直列回路が接続されている。ラッチ補助用のスイッチング素子Q3はPMOS‐FETで構成され、そのソースがツェナーダイオードZD1のカソードに接続され、そのドレインが整流ダイオードD3のアノードに接続されている。整流ダイオードD3のカソードはラッチ停止用のスイッチング素子Q2のゲートに接続されている。以上で説明したラッチ停止用のスイッチング素子Q2、ラッチ補助用のスイッチング素子Q3、ツェナーダイオードZD1、整流ダイオードD3、平滑コンデンサC3および抵抗素子R3でラッチ動作部22が構成されている。
【0045】
次に、上記のように構成された過電流保護機能変換装置を組み合わせたコントロールICの動作を
図4のタイミングチャートを用いて説明する。
【0046】
図4において、T1はコントロールIC 10の起動期間、T2は立ち上がり期間、T3は通常動作期間、T4は過電流状態期間である。
【0047】
(1)起動期間T1
タイミングt0において、スイッチング電源装置の電源が投入される。すると、ダイオードブリッジDBの出力側のバルクコンデンサC11に現れる1次側整流後のバルク電圧によってノーマリオン型の起動用のスイッチング素子Q11を通してコントロールIC 10の電源入力端子VCCに対して充電が開始される。電源電圧VCCがゼロレベルから立ち上がり、次第に上昇する。そして、タイミングt1でコントロールIC 10の起動電圧V
ACT に達し、メインのスイッチング素子Q12のスイッチング動作が始まる。そして、トランスT1の補助巻線N13から逆流防止ダイオードD17を通してコントロールIC 10の電源入力端子VCCへ電力が供給される。電源電圧VCCが起動電圧V
ACT に達すると、それと同時にASU(active start-up)端子が負電位となり、起動用のスイッチング素子Q11はターンオフする。
【0048】
(2)立ち上がり期間T2
タイミングt1で電源電圧VCCが起動電圧V
ACT に達すると、コントロールIC 10はASU端子の電圧をマイナスレベルにする。これにより、起動用のスイッチング素子Q11はターンオフする。その後、補助巻線N13経由の給電でコントロールIC 10は動作を継続し、出力電圧V
OUT が立ち上がって規定電圧に到達する。このとき、電源電圧VCCも出力電圧V
OUT の上昇に合わせて上昇する。補助巻線N13で発生した電圧によりノードBから過電流保護機能変換装置20の遅延トリガ部21に電流が流れ込む。コントロールIC 10の電源入力端子VCCに対する電源供給がタイミングt1からタイミングt2にかけてごく短時間のうちに起動用のスイッチング素子Q11を通る経路から補助巻線N13→整流ダイオードD2→ノードC→逆流防止ダイオードD17を通る経路に切り替えられる。
【0049】
補助巻線N13で発生した電圧により整流ダイオードD1を通って平滑コンデンサC1に対し急速に充電が行われる。平滑コンデンサC1の充電電圧は「D」で表されているが、タイミングt1からタイミングt2までのごく短時間のうちに急峻に立ち上がっている。
【0050】
一方、平滑コンデンサC2に対しても充電が行われるが、平滑コンデンサC2の静電容量は平滑コンデンサC1の静電容量より充分に大きいので、平滑コンデンサC2の充電電圧はゆっくりと上昇する。平滑コンデンサC2の充電電圧は「C」で表されている。
【0051】
タイミングt2で平滑コンデンサC1が満充電になり、遅延制御用のスイッチング素子Q1のゲート電圧がしきい値電圧を超え、遅延制御用のスイッチング素子Q1はターンオンする。このとき、平滑コンデンサC2の充電電圧が低いため、遅延制御用のスイッチング素子Q1がターンオンする前に、平滑コンデンサC2から抵抗素子R2を経由してラッチ停止用のスイッチング素子Q2がターンオンすることはない。遅延制御用のスイッチング素子Q1がターンオンしてグランドレベルに引かれると、ラッチ動作部22におけるラッチ停止用のスイッチング素子Q2のゲート電圧が“L”レベルに保持されたままとなる。換言すれば、ラッチ停止用のスイッチング素子Q2のゲートが“H”レベルになる前に遅延制御用のスイッチング素子Q1のゲートが“H”レベルとなって遅延制御用のスイッチング素子Q1がターンオンする。そのため、ラッチ停止用のスイッチング素子Q2のゲートは“L”レベルのままであり、ラッチ停止用のスイッチング素子Q2は非導通状態に保持される。
【0052】
(3)通常動作期間T3
スイッチング電源装置が通常動作状態にある期間T3では、コントロールIC 10の動作電圧は上述の補助巻線N13→整流ダイオードD2→ノードC→逆流防止ダイオードD17を通る経路で供給され続ける。補助巻線N13の電圧を抵抗素子R19,R20による抵抗分圧器13で検出し、出力電圧検出端子(V
SENSE)よりコントロールIC 10に入力する。コントロールIC 10はこの検出電圧が規定範囲内に収まるようにメインのスイッチング素子Q12をスイッチング制御する。この通常動作期間T3では、電源電圧VCCも出力電圧V
OUT も一定レベルに安定する。
【0053】
(4)過電流状態期間T4
タイミングt4において過電流が発生したとする。電流検出用の抵抗素子R15に接続の電流検出端子(I
SENSE)によってコントロールIC 10に入力された検出電流が過電流を示すとき、コントロールIC 10は過電流保護状態に移行する。従来例の
図6の場合、電源電圧VCCも出力電圧V
OUT も低下し、それに比例し補助巻線N13から逆流防止ダイオードD17を経由するコントロールIC 10の電源電圧VCCも低下し、やがてタイミングt6でリセット電圧V
RST より低下する。すると、このコントロールIC 10は自動復帰型であるため、起動前の状態に戻る。その後、上述した起動の動作に移るが、過電流状態が継続されていると、電源電圧VCCが起動電圧V
ACT に達しても出力電圧V
OUT は立ち上がらない。そのために補助巻線N13からの電力供給もできず、メインのスイッチング素子Q12に対するスイッチング動作を維持できない。つまり、起動しようとして起動できないという状態が継続される。
【0054】
本発明の実施例においては、タイミングt4からタイミングt5までのごく短時間に平滑コンデンサC1は放電され、平滑コンデンサC2の充電電圧が高い状態のうちに遅延制御用のスイッチング素子Q1のゲートが“L”レベルとなって遅延制御用のスイッチング素子Q1がターンオフし、グランド(GND)から切り離される。すると、ラッチ停止用のスイッチング素子Q2のゲートに対して平滑コンデンサC2からある時定数をもって充電が行われる。タイミングt6において電源電圧VCCがリセット電圧V
RST を下回った後に、ラッチ停止用のスイッチング素子Q2のゲート電圧がしきい値電圧に達し、ラッチ停止用のスイッチング素子Q2がターンオンする。
【0055】
電源電圧VCCがリセット電圧V
RST より低下すると起動時と同じようにまた起動用のスイッチング素子Q11から充電を始めるが、今度はラッチ停止用のスイッチング素子Q2がターンオンしているため、起動用のスイッチング素子Q11→ノードA→ツェナーダイオードZD1→ラッチ停止用のスイッチング素子Q2の経路で電流が流れ、コントロールIC 10の電源入力端子VCCはツェナーダイオードZD1のツェナー電圧V
ZDまで充電される。すると、ラッチ補助用のスイッチング素子Q3のゲート・ソース間もツェナー電圧V
ZDが印加され、ラッチ補助用のスイッチング素子Q3はターンオンする。ラッチ停止用のスイッチング素子Q2のゲートにも整流ダイオードD3を介してツェナー電圧V
ZDが印加され、ラッチ停止用のスイッチング素子Q2およびラッチ補助用のスイッチング素子Q3の導通状態が保持される。ここで、ツェナー電圧V
ZDはコントロールIC 10の起動電圧V
ACT より低く設定しているためにコントロールIC 10は動作開始せず、この停止状態が保持される。つまりラッチ停止状態となる。
【0056】
以上説明したように、元は自動復帰型の過電流保護機能をもつコントロールIC 10をベースとして用いながら、本発明実施例の過電流保護機能変換装置20を組み合わせることにより、ラッチ停止型の過電流保護機能の下でスイッチング電源装置を制御することができるようになった。つまり、
図6の過電流状態期間T4に見られるリセット・再起動の繰り返しの無駄な動作を抑え込み、消費電力の無意味な増大を防止することができるようになった。
【0057】
なお、本発明実施例の過電流保護機能変換装置20を組み合わせたスイッチング電源装置においては、出力が過電流状態または短絡状態で、装置のメイン電源を投入した場合においてもラッチ停止状態を保持することになる。