特許第6196572号(P6196572)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6196572
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】過電流保護機能変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20170904BHJP
【FI】
   H02M3/28 C
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-67828(P2014-67828)
(22)【出願日】2014年3月28日
(65)【公開番号】特開2015-192522(P2015-192522A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2016年9月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086737
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 和秀
(72)【発明者】
【氏名】山田 信吾
【審査官】 宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−041834(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3144673(JP,U)
【文献】 特開2010−124572(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M3/00−3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング電源装置における自動復帰型の過電流保護機能をもつコントロールICに対して組み合わせることにより、過電流保護機能を自動復帰型からラッチ停止型に切り替える過電流保護機能変換装置であって、
前記スイッチング電源装置の起動用のスイッチング素子を介して前記コントロールICの電源入力端子に給電して前記コントロールICを起動した後に、前記スイッチング電源装置のメインのスイッチング素子を駆動して前記スイッチング電源装置の補助電源部から前記電源入力端子に給電し、
前記スイッチング電源装置の起動用のスイッチング素子および前記電源入力端子に接続されるもので、起動時および通常動作時にはオフ状態に保持され、過電流時にはターンオンされるラッチ停止用のスイッチング素子のオフ/オン切り替えによって前記電源入力端子をグランドレベルから引き離す非導通ラッチ状態と前記電源入力端子をグランドレベルに引き込む導通ラッチ状態とに切り替え可能なラッチ動作部と、
前記スイッチング電源装置における補助電源部と前記電源入力端子との間に接続されるもので、前記ラッチ停止用のスイッチング素子の動作状態について、起動時および通常動作時にはオフ状態を与え、過電流時には過電流発生時より規定の遅延時間をおいて前記ラッチ停止用のスイッチング素子をターンオンさせる遅延トリガ部とを備えた過電流保護機能変換装置。
【請求項2】
前記ラッチ動作部と遅延トリガ部は、過電流時に前記電源入力端子の電圧をグランドレベルより高く前記コントロールICの起動電圧よりも低い状態に保持するように構成されている請求項1に記載の過電流保護機能変換装置。
【請求項3】
前記ラッチ動作部は、前記コントロールICの電源入力端子にツェナーダイオードを介してグランドとの間に接続されたラッチ停止用のスイッチング素子と、前記ツェナーダイオードと前記電源入力端子との接続点と前記ラッチ停止用のスイッチング素子の制御端子との間に挿入されたラッチ補助用のスイッチング素子および整流ダイオードの直列回路と、前記ラッチ停止用のスイッチング素子の制御端子とグランドとの間に挿入された平滑コンデンサとを備え、前記ラッチ停止用のスイッチング素子と前記ツェナーダイオードとの接続点が前記ラッチ補助用のスイッチング素子の制御端子に接続されている請求項1または請求項2に記載の過電流保護機能変換装置。
【請求項4】
前記遅延トリガ部は、前記補助電源部とグランドとの間に挿入された整流ダイオードと平滑コンデンサからなる第1の直列回路と、前記補助電源部とグランドとの間に挿入された整流ダイオードと平滑コンデンサからなる第2の直列回路と、前記コントロールICの電源入力端子に接続された逆流防止ダイオードとグランドとの間に挿入された抵抗素子と遅延制御用のスイッチング素子からなる第3の直列回路とを備え、前記遅延制御用のスイッチング素子の制御端子は前記第1の直列回路における前記平滑コンデンサに接続され、前記遅延制御用のスイッチング素子のハイサイド端子は前記ラッチ動作部における前記ラッチ停止用のスイッチング素子の制御端子に接続されている請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の過電流保護機能変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスイッチング電源装置における自動復帰型の過電流保護機能をもつコントロールICに組み合わせるもので、コントロールICの過電流保護機能を自動復帰型からラッチ停止型に切り替えるための過電流保護機能変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチング電源装置におけるコントロールICに搭載される過電流保護機能には自動復帰型とラッチ停止型とがある。自動復帰型は過電流検出時にコントロールICを一旦リセットした上で、再度起動をかけ、過電流状態が解消されていれば通常動作状態に移行するが、過電流状態が継続していればリセット・再起動を繰り返すというものである。一方、ラッチ停止型は上記の自動復帰型のようなリセット・再起動の繰り返しはせずに、過電流検出時に出力を遮断し、コントロールICが出力遮断状態を保持するというもので、一旦その遮断状態に入ってしまえばAC入力のオン/オフをしない限り、過電流状態が継続していなくても再起動できない。
【0003】
自動復帰型のコントロールICとしては特許文献1や非特許文献1に記載されたものがある。また、ラッチ停止型と自動復帰型を兼備するコントロールICとして特許文献2、3、4に記載されたものがある。
【0004】
図5は非特許文献1に掲載された自動復帰型のコントロールICを備えたスイッチング電源装置の従来例を示す回路図、図6はその動作を示すタイミングチャートである。
【0005】
(1)起動期間T1
スイッチング電源装置の起動時において、ダイオードブリッジDBの出力側のバルクコンデンサC11に現れる1次側整流後のバルク電圧から起動用のスイッチング素子Q11を通してコントロールIC 10の電源入力端子VCCに対して充電が開始される。起動用のスイッチング素子Q11にはデプリーション型のMOS‐FETが用いられる。この起動用のスイッチング素子Q11はゲート電圧が0ボルトのときでもドレイン電流が流れるノーマリオン型である。コントロールIC 10の電源電圧VCCがコントロールIC 10の起動電圧VACT に達すると、メインのスイッチング素子Q12のスイッチング動作が始まり、トランスT1の補助巻線N13から逆流防止ダイオードD17を通してコントロールIC 10の電源入力端子(VCC)へ電力が供給される。このとき、電源電圧VCCが起動電圧VACT に達すると、それと同時にASU(active start-up)端子が負電位となり、起動用のスイッチング素子Q11はターンオフする。
【0006】
タイミングチャートで説明すると、起動期間T1において、コントロールIC 10の電源電圧VCCがゼロレベルから立ち上がり、次第に上昇する。そして、タイミングt1でコントロールIC 10の起動電圧VACT に達する。
【0007】
(2)立ち上がり期間T2
電源電圧VCCが起動電圧VACT に達すると、二次側の出力電圧VOUT が急速に上昇し、やがて規定出力電圧レベルに到達する(タイミングt2)。なお、電源電圧VCCが起動電圧VACT に達した直後の起動用のスイッチング素子Q11のターンオフに伴って、電源電圧VCCが一瞬低下した後、補助巻線N13経由の給電で電源電圧VCCは再び上昇に転じ、やがて規定電源電圧レベルに達する。
【0008】
(3)通常動作期間T3
スイッチング電源装置が通常動作にある期間では、コントロールIC 10の動作電圧は上述の補助巻線N13〜逆流防止ダイオードD17の経路で供給され続ける。一次側から二次側への出力電圧VOUT を補助巻線N13に接続の抵抗分圧器13で検出し、出力電圧検出端子(VSENSE)よりコントロールIC 10に入力する。コントロールIC 10はこの出力電圧が規定範囲内に収まるようにメインのスイッチング素子Q12をスイッチング制御する。この通常動作期間T3では、電源電圧VCCも出力電圧VOUT も一定レベルに安定する(タイミングt3〜t4)。
【0009】
(4)過電流状態期間T4
電流検出端子(ISENSE)によってコントロールIC 10に入力した出力電流が過電流を示すとき、コントロールIC 10は過電流保護状態に移行する(タイミングt4)。出力電圧が低下し、それに比例して補助巻線N13から逆流防止ダイオードD17を経由するコントロールIC 10の電源電圧VCCも低下し、やがてリセット電圧VRST より低下する(タイミングt6)。すると、このコントロールIC 10は自動復帰型であるため、起動前の状態に戻る。その後、上述した起動の動作に移るが、過電流状態が継続されていると、起動電圧VACT に達しても出力電圧が立ち上がらず、そのために補助巻線N13からの電力供給もできず、メインのスイッチング素子Q12に対するスイッチング動作を維持できない。つまり、起動しようとして起動できないという状態が継続される。
【0010】
タイムチャートでは、タイミングt4において、過電流検出に伴ってコントロールIC 10の動作が停止され、電源電圧VCCも出力電圧VOUT も比較的急速に低下する。タイミングt6で電源電圧VCCがコントロールIC 10のリセット電圧VRST を下回り、コントロールIC 10がリセットされ、ASU端子がゼロ電圧とされ、タイミングt7で電源電圧VCCおよび出力電圧VOUT がゼロレベルになり、起動用のスイッチング素子Q11の再度のターンオンによって再起動が行われ、電源電圧VCCが次第に上昇する。しかし、いまだ過電流状態であるため、出力電圧VOUT の方はゼロレベルを保ったままとなる。タイミングt8で電源電圧VCCがコントロールIC 10の起動電圧VACT に達する。出力電圧VOUT は上昇しようとするが、いまだ過電流状態であるため、コントロールIC 10は再び動作が停止され、電源電圧VCCが低下し、出力電圧VOUT も低下する。これ以降、過電流状態が続く限り、リセット・再起動が繰り返される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平10−248257号公報
【特許文献2】特開2003−169471号公報
【特許文献3】特開2011−147315号公報
【特許文献4】特開2012−139101号公報
【非特許文献1】「iW1699 Product Brief Off-Line Digital Green-Mode Quasi-Resonant PWM Controller」[online]http://iwatt.com/files/iw1699-product-brief/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記で説明した図5図6の従来例のスイッチング電源装置にあっては、そのコントロールICが自動復帰型に構成されている。自動復帰型のコントロールICは高い効率を発揮するものである。しかし、それは過電流状態が比較的早期のうちに回復した場合に該当するが、過電流状態が長時間にわたって継続するときには、リセット・再起動の繰り返しが止まらなくなって電力損失が増大化し、効率的に問題となる。
【0013】
過電流保護に関して高効率を発揮する自動復帰型のコントロールICを備えたスイッチング電源装置について、過電流状態が長時間にわたって継続すると想定される条件下では、そのスイッチング電源装置にラッチ停止の機能を追加することは非常に重要なことであると言える。しかるに、従来にあっては、ラッチ停止型のコントロールICを備えたスイッチング電源装置において自動復帰の機能を追加するものはあるものの、ここで問題としているところの、自動復帰型のコントロールICを備えたスイッチング電源装置においてラッチ停止の機能を追加するものは知られていない。
【0014】
本発明はこのような事情に鑑みて創作したものであり、スイッチング電源装置に装備される自動復帰型専用のコントロールICに対してラッチ停止の機能を追加するもので、自動復帰の機能だけであれば生じることとなるリセット・再起動の繰り返しによる無駄な電力消費を未然に回避することができる過電流保護機能変換装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、次の手段を講じることにより上記の課題を解決する。
【0016】
本発明による過電流保護機能変換装置は、スイッチング電源装置における自動復帰型の過電流保護機能をもつコントロールICに対して組み合わせることにより、過電流保護機能を自動復帰型からラッチ停止型に切り替える過電流保護機能変換装置である。この過電流保護機能変換装置は、スイッチング電源装置の起動用のスイッチング素子を介してコントロールICの電源入力端子に給電してコントロールICを起動した後に、スイッチング電源装置のメインのスイッチング素子を駆動してスイッチング電源装置の補助電源部から電源入力端子に給電するようになっている。さらに、この過電流保護機能変換装置は、それぞれ次のような機能・構成を有するラッチ動作部と遅延トリガ部とを備えたものとして構成されている。
【0017】
前記のラッチ動作部は、前記スイッチング電源装置の起動用のスイッチング素子および前記電源入力端子に接続されるもので、起動時および通常動作時にはオフ状態に保持され、過電流時にはターンオンされるラッチ停止用のスイッチング素子のオフ/オン切り替えによって前記電源入力端子をグランドレベルから引き離す非導通ラッチ状態と前記電源入力端子をグランドレベルに引き込む導通ラッチ状態とに切り替え可能に構成されている。
【0018】
また、前記の遅延トリガ部は、前記スイッチング電源装置における補助電源部と前記電源入力端子との間に接続されるもので、前記ラッチ停止用のスイッチング素子の動作状態について、起動時および通常動作時にはオフ状態を与え、過電流時には過電流発生時より規定の遅延時間をおいて前記ラッチ停止用のスイッチング素子をターンオンさせるように構成されている。
【0019】
ここでは上記の本発明の過電流保護機能変換装置の構成を図1を用いて説明する。図1は本発明の過電流保護機能変換装置の基本的な構成を示す概念図である。図1において、Q11は起動用のスイッチング素子、Q12はメインのスイッチング素子、10は自動復帰型の過電流保護機能をもつコントロールIC、20は過電流保護機能変換装置、21は遅延トリガ部、22はラッチ動作部、30は補助電源部である。
【0020】
ラッチ動作部22は、スイッチング電源装置の起動用のスイッチング素子Q11およびコントロールIC 10の電源入力端子(VCC)に接続されるもので、起動時および通常動作時にはオフ状態に保持され、過電流時にはターンオンされるラッチ停止用のスイッチング素子Q2のオフ/オン切り替えによってコントロールIC 10の電源入力端子(VCC)をグランドレベルから引き離す非導通ラッチ状態と電源入力端子(VCC)をグランドレベルに引き込む導通ラッチ状態とに切り替え可能に構成されている。また、遅延トリガ部21は、スイッチング電源装置における補助電源部30とコントロールIC 10の電源入力端子(VCC)との間に接続されるもので、ラッチ動作部22におけるラッチ停止用のスイッチング素子Q2の動作状態について、起動時および通常動作時にはオフ状態を与え、過電流時には過電流発生時より規定の遅延時間をおいてラッチ停止用のスイッチング素子Q2をターンオンさせるように構成されている。
【0021】
このように構成された本発明の過電流保護機能変換装置においては、次のような作用が発揮される。
【0022】
起動用のスイッチング素子Q11はノーマリオン型でコントロールIC 10の停止状態でオン状態となっている。スイッチング電源装置の主電源が投入されるとオン状態にある起動用のスイッチング素子Q11を介してコントロールIC 10の電源入力端子(VCC)に主電源が供給され、コントロールIC 10が起動される。その結果、コントロールIC 10がメインのスイッチング素子Q12を駆動し、スイッチング電源装置の一次側から二次側への電力伝達が行われるとともに、補助電源部30が活性化される。並行してコントロールIC 10は起動用のスイッチング素子Q11をターンオフさせるが、その前にコントロールIC 10の電源入力端子(VCC)には活性化された補助電源部30からの給電が行われ、コントロールIC 10の立ち上がりは継続される。
【0023】
ここで、もし、ラッチ動作部22におけるラッチ停止用のスイッチング素子Q2が導通状態にあってコントロールIC 10の電源入力端子(VCC)がグランドレベルに引き込まれると仮定すると、コントロールIC 10の電源電圧VCCは立ち上がらないことになるが、ラッチ停止用のスイッチング素子Q2は起動時および通常動作時に非導通ラッチ状態となっているため、電源入力端子(VCC)はグランドレベルから切り離され、コントロールIC 10の電源電圧VCCは立ち上がることになる。このことの補償があれば、上記したメインのスイッチング素子Q12の駆動、補助電源部30の活性化への動作推移も補償される。
【0024】
次に、スイッチング電源装置の一次側主回路に過電流状態が発生したとする。すると、ラッチ停止用のスイッチング素子Q2がそれまでの非導通ラッチ状態から導通ラッチ状態へと切り替わり、コントロールIC 10の電源入力端子(VCC)が導通ラッチ状態にあるラッチ停止用のスイッチング素子Q2を介してグランドレベルとつながる。この場合に、ラッチ動作部22による電圧降下分の電圧があるのでコントロールIC 10の電源電圧VCCはグランドレベルよりは高いレベルに持ち上げられる。しかし、そのレベルはコントロールIC 10の起動電圧VACT よりも低いレベルである。したがって、コントロールIC 10が起動されることはない。コントロールIC 10が起動されないので、メインのスイッチング素子Q12は駆動されないし、補助電源部30も活性化されない。コントロールIC 10が起動されないので起動用のスイッチング素子Q11はオン状態を保持する。
【0025】
以上のようにして、コントロールIC 10の電源電圧VCCはグランドレベルよりは高く、起動電圧VACT よりは低い電圧に保持される。これは、従来例のような電源電圧VCCが上昇してコントロールIC 10のリセット電圧VRST にまで達する結果、コントロールIC 10の動作としてリセット・再起動の繰り返しが起きるという状態を生じさせないことを意味している。つまり、リセット・再起動の繰り返しは生じないということであり、無駄な電力消費を防止することができる。
【0026】
ラッチ停止用のスイッチング素子Q2にターンオンを起こすには、それなりの制御端子(ゲート)印加電圧が必要である。この電圧は遅延トリガ部21において補助電源部30から確保されるようになっている。補助電源部30は過電流発生によって直ちに非活性化されるから、遅延トリガ部21の遅延機能がなく単なるトリガ機能だけであれば、ラッチ停止用のスイッチング素子Q2の制御端子に対する印加電圧が確保できない状況となり、ラッチ停止用のスイッチング素子Q2のターンオンが起こらないままとなる。そうなると、リセット・再起動においてコントロールIC 10の電源電圧VCCが上昇していく過程でラッチ動作部22による電圧降下分に基づく上昇規制の機能が働かなくなってしまう。つまり、電源電圧VCCは自動復帰型のコントロールICの場合と同様に起動電圧VACT まで達してしまう。そうなると、前述のリセット・再起動の繰り返しが始まってしまう。
【0027】
このことを避けるには、ラッチ動作部22を駆動する前段の制御部としては単なるトリガ機能だけのものであってはならず、遅延機能をもった遅延トリガ部21でなければならないことになる。本発明にあっては、ラッチ動作部22を駆動する前段の制御部として、補助電源部30から電源を受ける遅延トリガ部21がある。遅延トリガ部21は、ラッチ停止用のスイッチング素子Q2の動作状態について、起動時および通常動作時にはオフ状態を与え、過電流時には過電流発生時より規定の遅延時間をおいてラッチ停止用のスイッチング素子Q2をターンオンさせる。その結果として、過電流発生時に電源電圧VCCが降下してリセット電圧VRST を下回った結果の初回の再起動で電源電圧VCCが再度上昇していく過程において、その電圧をグランドレベルよりは高く、起動電圧VACT よりは低い電圧に保持し、起動電圧VACT までは上昇させないことにより、コントロールIC 10の再度の起動を回避し、リセット・再起動の繰り返しをなくすことで無駄な電力消費を防止することができるのである。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、スイッチング電源装置に装備される自動復帰型専用のコントロールICに対してラッチ停止の機能を追加するもので、自動復帰の機能だけであれば生じることとなるリセット・再起動の繰り返しによる無駄な電力消費を未然に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の過電流保護機能変換装置の基本的な構成を示す概念図
図2】本発明の実施例における過電流保護機能変換装置の構成を示す回路図
図3】自動復帰型の過電流保護機能をもつコントロールICに本発明実施例の過電流保護機能変換装置を組み合わせたスイッチング電源装置の回路図
図4】本発明の実施例における過電流保護機能変換装置を組み合わせたコントロールICの動作を示すタイミングチャート
図5】従来例(非特許文献1)の自動復帰型のコントロールICを備えたスイッチング電源装置の回路図
図6】従来例(非特許文献1)の自動復帰型のコントロールICの動作を示すタイミングチャート
【発明を実施するための形態】
【0030】
上記構成の本発明の過電流保護機能変換装置には、次のような好ましい態様がある。
【0031】
前記のラッチ動作部については、次のように構成することが好ましい。すなわち、前記コントロールICの電源入力端子にツェナーダイオードを介してグランドとの間に接続されたラッチ停止用のスイッチング素子を有している。また、前記ツェナーダイオードと前記電源入力端子との接続点と前記ラッチ停止用のスイッチング素子の制御端子との間に挿入されたラッチ補助用のスイッチング素子および整流ダイオードの直列回路を有している。さらに、前記ラッチ停止用のスイッチング素子の制御端子とグランドとの間に挿入された平滑コンデンサを有している。そして、前記ラッチ停止用のスイッチング素子と前記ツェナーダイオードとの接続点が前記ラッチ補助用のスイッチング素子の制御端子に接続されている、という態様である。
【0032】
また、前記の遅延トリガ部については、次のように構成することが好ましい。すなわち、前記補助電源部とグランドとの間に挿入された整流ダイオードと平滑コンデンサからなる第1の直列回路を有している。また、前記補助電源部とグランドとの間に挿入された整流ダイオードと平滑コンデンサからなる第2の直列回路を有している。さらに、前記コントロールICの電源入力端子に接続された逆流防止ダイオードとグランドとの間に挿入された抵抗素子と遅延制御用のスイッチング素子からなる第3の直列回路を有している。そして、前記遅延制御用のスイッチング素子の制御端子は前記第1の直列回路における前記平滑コンデンサに接続されている。さらに、前記遅延制御用のスイッチング素子のハイサイド端子は前記ラッチ動作部における前記ラッチ停止用のスイッチング素子の制御端子に接続されている、という態様である。
【実施例】
【0033】
以下、本発明にかかわる過電流保護機能変換装置の実施例を図面を用いて説明する。
【0034】
図2は本発明の実施例における過電流保護機能変換装置20の構成を示す回路図、図3はコントロールICとして自動復帰型の過電流保護機能をもつコントロールIC 10に図1の実施例の過電流保護機能変換装置20を組み合わせたスイッチング電源装置の回路図、図4は過電流保護機能変換装置20を組み合わせたコントロールIC 10の動作を示すタイミングチャートである。
【0035】
まず、スイッチング電源装置の構成について説明する。図3に示すスイッチング電源装置はAC/DCフライバック式のスイッチング電源装置である。AC電圧源(図示せず)の一方の出力端子に接続されるノードNにはインダクタL11と抵抗素子R11の並列回路が接続され、もう一方の出力端子に接続されるノードLには抵抗素子R12が接続されている。さらに、ダイオードD11,D12,D13,D14からなるダイオードブリッジDBとバルクコンデンサC11とでブリッジ整流器11が構成されている。バルクコンデンサC11の正極端子とグランド(GND)との間に抵抗素子R13,R14と起動用のスイッチング素子Q11と高周波除去用のコンデンサC12の直列回路が接続されている。起動用のスイッチング素子Q11とコンデンサC12との接続点がコントロールIC 10の電源入力端子VCCに接続されている。コンデンサC12とグランドとの接続点がコントロールIC 10のグランド端子GNDに接続されている。起動用のスイッチング素子Q11はノーマリオン型であり、スイッチング電源装置のメイン電源のオフ時において導通状態にセットされる。このため起動用のスイッチング素子Q11はデプリーション型でNMOSタイプのFET(電界効果型トランジスタ)で構成され、ゲート電圧を0Vにしてもドレイン電流が流れるようになっている。起動用のスイッチング素子Q11のゲートはコントロールIC 10のASU(アクティブスタートアップ)端子に接続されている。起動用のスイッチング素子Q11の導通によりコントロールIC 10が起動すると、コントロールIC 10のASU端子の電圧がマイナスレベルにされ、起動用のスイッチング素子Q11がターンオフするようになっている。
【0036】
バルクコンデンサC11の正極端子とグランド(GND)との間にトランスT11の一次巻線N11とメインのスイッチング素子Q12と電流検出用の抵抗素子R15の直列回路が接続されている。メインのスイッチング素子Q12もNMOS型のFETで構成されている。このメインのスイッチング素子Q12はエンハンスメント型のFETでノーマリオフ型に構成されている。メインのスイッチング素子Q12と電流検出用の抵抗素子R15との接続点がコントロールIC 10の電流検出端子(IS)ISENSEに接続されている。メインのスイッチング素子Q12のゲート端子はコントロールIC 10のスイッチング信号出力端子OUTPUTに接続されている。
【0037】
トランスT11の一次巻線N11とメインのスイッチング素子Q12との接続点はスナバ回路12を介してバルクコンデンサC11の正極端子に接続されている。スナバ回路12は整流ダイオードD15と抵抗素子R16および抵抗素子R17とコンデンサC13の並列回路で構成されている。スナバ回路12はメインのスイッチング素子Q12の遮断時に生じる過渡的な高電圧を吸収する保護回路である。
【0038】
トランスT11の二次巻線N12の両端間に整流ダイオード(ツェナーダイオード)D16と平滑コンデンサC14の直列回路が接続され、平滑コンデンサC14の両端間にプレ負荷用の抵抗素子R18が接続され、プレ負荷用の抵抗素子R18の両端に負荷(図示せず)の接続用の出力端子が接続されている。抵抗素子R18の正極端子に現れるのがスイッチング電源装置の出力電圧VOUT である。一次巻線N11と二次巻線N12および補助巻線N13とは逆極性の関係となっている。
【0039】
トランスT11の補助巻線N13に抵抗分圧器13を構成する抵抗素子R19,R20の直列回路が接続され、抵抗素子R19,R20の接続点がコントロールIC 10の電圧検出端子(VS)VSENSEに接続されている。
【0040】
以上のように構成されたスイッチング電源装置において、図3に示す3つのノードA,B,Cに本発明実施例の過電流保護機能変換装置20を接続するようになっている。
【0041】
図5の従来例にあっては、補助巻線N13と抵抗素子R19との接続点が給電ラインLnを介してコントロールIC 10の電源入力端子VCCに接続されているが、本発明実施例では×印で示すように、給電ラインLnの途中箇所を分断し、その一方の分断点を過電流保護機能変換装置20のノードBに接続し、他方の分断点をノードCに接続し、起動用のスイッチング素子Q11とコントロールIC 10の電源入力端子VCCとの接続点を過電流保護機能変換装置20のノードAに接続している。
【0042】
図2は本発明の実施例の過電流保護機能変換装置20を具体的に示した回路構成図である。補助巻線N13のハイサイド側に形成されたノードBに整流ダイオードD1のアノードが接続され、整流ダイオードD1のカソードが平滑コンデンサC1の正極端子に接続され、コンデンサC1の負極端子がグランド(GND)に接続されている(第1の直列回路)。平滑コンデンサC1の両端間に抵抗素子R1が接続されている。ノードBと整流ダイオードD1との接続点にダイオードD2のアノードが接続され、ダイオードD2のカソードとグランド(GND)の間に平滑コンデンサC2が接続されている(第2の直列回路)。平滑コンデンサC2の容量は平滑コンデンサC1の容量に比べて充分に大きくされている。
【0043】
コントロールIC 10の電源入力端子VCCにカソードが接続された逆流防止ダイオードD17のアノードにノードCが接続されているが、このノードCとグランド(GND)との間に抵抗素子R2、遅延制御用のスイッチング素子Q1の直列回路が接続されている(第3の直列回路)。遅延制御用のスイッチング素子Q1はNMOS‐FETで構成されている。抵抗素子R2とノードCとの接続点が平滑コンデンサC2の正極端子に接続され、遅延制御用のスイッチング素子Q1のゲートが平滑コンデンサC1の正極端子と抵抗素子R1の接続点に接続されている。以上で説明したダイオードD1,D2、平滑コンデンサC1,C2、抵抗素子R1,R2、遅延制御用のスイッチング素子Q1で遅延トリガ部21が構成されている。
【0044】
抵抗素子R2と遅延制御用のスイッチング素子Q1との接続点とグランド(GND)の間に抵抗素子R3が接続されている。抵抗素子R3に対して平滑コンデンサC3が並列に接続されている。平滑コンデンサC3の正極端子にラッチ停止用のスイッチング素子Q2のゲートが接続されている。このラッチ停止用のスイッチング素子Q2はNMOS‐FETで構成されている。ノードAはコントロールIC 10の電源入力端子VCCに接続されているが、このノードAとグランド(GND)との間にツェナーダイオード(定電圧ダイオード)ZD1とラッチ停止用のスイッチング素子Q2の直列回路が接続されている。ツェナーダイオードZD1のカソードがノードAに接続され、そのアノードがラッチ停止用のスイッチング素子Q2のドレインに接続されている。ツェナーダイオードZD1とノードAとの接続点とラッチ停止用のスイッチング素子Q2のゲートとの間にラッチ補助用のスイッチング素子Q3と整流ダイオードD3の直列回路が接続されている。ラッチ補助用のスイッチング素子Q3はPMOS‐FETで構成され、そのソースがツェナーダイオードZD1のカソードに接続され、そのドレインが整流ダイオードD3のアノードに接続されている。整流ダイオードD3のカソードはラッチ停止用のスイッチング素子Q2のゲートに接続されている。以上で説明したラッチ停止用のスイッチング素子Q2、ラッチ補助用のスイッチング素子Q3、ツェナーダイオードZD1、整流ダイオードD3、平滑コンデンサC3および抵抗素子R3でラッチ動作部22が構成されている。
【0045】
次に、上記のように構成された過電流保護機能変換装置を組み合わせたコントロールICの動作を図4のタイミングチャートを用いて説明する。
【0046】
図4において、T1はコントロールIC 10の起動期間、T2は立ち上がり期間、T3は通常動作期間、T4は過電流状態期間である。
【0047】
(1)起動期間T1
タイミングt0において、スイッチング電源装置の電源が投入される。すると、ダイオードブリッジDBの出力側のバルクコンデンサC11に現れる1次側整流後のバルク電圧によってノーマリオン型の起動用のスイッチング素子Q11を通してコントロールIC 10の電源入力端子VCCに対して充電が開始される。電源電圧VCCがゼロレベルから立ち上がり、次第に上昇する。そして、タイミングt1でコントロールIC 10の起動電圧VACT に達し、メインのスイッチング素子Q12のスイッチング動作が始まる。そして、トランスT1の補助巻線N13から逆流防止ダイオードD17を通してコントロールIC 10の電源入力端子VCCへ電力が供給される。電源電圧VCCが起動電圧VACT に達すると、それと同時にASU(active start-up)端子が負電位となり、起動用のスイッチング素子Q11はターンオフする。
【0048】
(2)立ち上がり期間T2
タイミングt1で電源電圧VCCが起動電圧VACT に達すると、コントロールIC 10はASU端子の電圧をマイナスレベルにする。これにより、起動用のスイッチング素子Q11はターンオフする。その後、補助巻線N13経由の給電でコントロールIC 10は動作を継続し、出力電圧VOUT が立ち上がって規定電圧に到達する。このとき、電源電圧VCCも出力電圧VOUT の上昇に合わせて上昇する。補助巻線N13で発生した電圧によりノードBから過電流保護機能変換装置20の遅延トリガ部21に電流が流れ込む。コントロールIC 10の電源入力端子VCCに対する電源供給がタイミングt1からタイミングt2にかけてごく短時間のうちに起動用のスイッチング素子Q11を通る経路から補助巻線N13→整流ダイオードD2→ノードC→逆流防止ダイオードD17を通る経路に切り替えられる。
【0049】
補助巻線N13で発生した電圧により整流ダイオードD1を通って平滑コンデンサC1に対し急速に充電が行われる。平滑コンデンサC1の充電電圧は「D」で表されているが、タイミングt1からタイミングt2までのごく短時間のうちに急峻に立ち上がっている。
【0050】
一方、平滑コンデンサC2に対しても充電が行われるが、平滑コンデンサC2の静電容量は平滑コンデンサC1の静電容量より充分に大きいので、平滑コンデンサC2の充電電圧はゆっくりと上昇する。平滑コンデンサC2の充電電圧は「C」で表されている。
【0051】
タイミングt2で平滑コンデンサC1が満充電になり、遅延制御用のスイッチング素子Q1のゲート電圧がしきい値電圧を超え、遅延制御用のスイッチング素子Q1はターンオンする。このとき、平滑コンデンサC2の充電電圧が低いため、遅延制御用のスイッチング素子Q1がターンオンする前に、平滑コンデンサC2から抵抗素子R2を経由してラッチ停止用のスイッチング素子Q2がターンオンすることはない。遅延制御用のスイッチング素子Q1がターンオンしてグランドレベルに引かれると、ラッチ動作部22におけるラッチ停止用のスイッチング素子Q2のゲート電圧が“L”レベルに保持されたままとなる。換言すれば、ラッチ停止用のスイッチング素子Q2のゲートが“H”レベルになる前に遅延制御用のスイッチング素子Q1のゲートが“H”レベルとなって遅延制御用のスイッチング素子Q1がターンオンする。そのため、ラッチ停止用のスイッチング素子Q2のゲートは“L”レベルのままであり、ラッチ停止用のスイッチング素子Q2は非導通状態に保持される。
【0052】
(3)通常動作期間T3
スイッチング電源装置が通常動作状態にある期間T3では、コントロールIC 10の動作電圧は上述の補助巻線N13→整流ダイオードD2→ノードC→逆流防止ダイオードD17を通る経路で供給され続ける。補助巻線N13の電圧を抵抗素子R19,R20による抵抗分圧器13で検出し、出力電圧検出端子(VSENSE)よりコントロールIC 10に入力する。コントロールIC 10はこの検出電圧が規定範囲内に収まるようにメインのスイッチング素子Q12をスイッチング制御する。この通常動作期間T3では、電源電圧VCCも出力電圧VOUT も一定レベルに安定する。
【0053】
(4)過電流状態期間T4
タイミングt4において過電流が発生したとする。電流検出用の抵抗素子R15に接続の電流検出端子(ISENSE)によってコントロールIC 10に入力された検出電流が過電流を示すとき、コントロールIC 10は過電流保護状態に移行する。従来例の図6の場合、電源電圧VCCも出力電圧VOUT も低下し、それに比例し補助巻線N13から逆流防止ダイオードD17を経由するコントロールIC 10の電源電圧VCCも低下し、やがてタイミングt6でリセット電圧VRST より低下する。すると、このコントロールIC 10は自動復帰型であるため、起動前の状態に戻る。その後、上述した起動の動作に移るが、過電流状態が継続されていると、電源電圧VCCが起動電圧VACT に達しても出力電圧VOUT は立ち上がらない。そのために補助巻線N13からの電力供給もできず、メインのスイッチング素子Q12に対するスイッチング動作を維持できない。つまり、起動しようとして起動できないという状態が継続される。
【0054】
本発明の実施例においては、タイミングt4からタイミングt5までのごく短時間に平滑コンデンサC1は放電され、平滑コンデンサC2の充電電圧が高い状態のうちに遅延制御用のスイッチング素子Q1のゲートが“L”レベルとなって遅延制御用のスイッチング素子Q1がターンオフし、グランド(GND)から切り離される。すると、ラッチ停止用のスイッチング素子Q2のゲートに対して平滑コンデンサC2からある時定数をもって充電が行われる。タイミングt6において電源電圧VCCがリセット電圧VRST を下回った後に、ラッチ停止用のスイッチング素子Q2のゲート電圧がしきい値電圧に達し、ラッチ停止用のスイッチング素子Q2がターンオンする。
【0055】
電源電圧VCCがリセット電圧VRST より低下すると起動時と同じようにまた起動用のスイッチング素子Q11から充電を始めるが、今度はラッチ停止用のスイッチング素子Q2がターンオンしているため、起動用のスイッチング素子Q11→ノードA→ツェナーダイオードZD1→ラッチ停止用のスイッチング素子Q2の経路で電流が流れ、コントロールIC 10の電源入力端子VCCはツェナーダイオードZD1のツェナー電圧VZDまで充電される。すると、ラッチ補助用のスイッチング素子Q3のゲート・ソース間もツェナー電圧VZDが印加され、ラッチ補助用のスイッチング素子Q3はターンオンする。ラッチ停止用のスイッチング素子Q2のゲートにも整流ダイオードD3を介してツェナー電圧VZDが印加され、ラッチ停止用のスイッチング素子Q2およびラッチ補助用のスイッチング素子Q3の導通状態が保持される。ここで、ツェナー電圧VZDはコントロールIC 10の起動電圧VACT より低く設定しているためにコントロールIC 10は動作開始せず、この停止状態が保持される。つまりラッチ停止状態となる。
【0056】
以上説明したように、元は自動復帰型の過電流保護機能をもつコントロールIC 10をベースとして用いながら、本発明実施例の過電流保護機能変換装置20を組み合わせることにより、ラッチ停止型の過電流保護機能の下でスイッチング電源装置を制御することができるようになった。つまり、図6の過電流状態期間T4に見られるリセット・再起動の繰り返しの無駄な動作を抑え込み、消費電力の無意味な増大を防止することができるようになった。
【0057】
なお、本発明実施例の過電流保護機能変換装置20を組み合わせたスイッチング電源装置においては、出力が過電流状態または短絡状態で、装置のメイン電源を投入した場合においてもラッチ停止状態を保持することになる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の過電流保護機能変換装置は、スイッチング電源装置に装備される自動復帰型専用のコントロールICに対してラッチ停止の機能を追加するもので、自動復帰の機能だけであれば生じることとなるリセット・再起動の繰り返しによる無駄な電力消費を未然に回避する技術として有用である。
【符号の説明】
【0059】
10 コントロールIC
20 過電流保護機能変換装置
21 遅延トリガ部
22 ラッチ動作部
C1,C2,C3 平滑コンデンサ
D1,D2,D3 整流ダイオード
Q1 遅延制御用のスイッチング素子
Q2 ラッチ停止用のスイッチング素子
Q3 ラッチ補助用のスイッチング素子
Q11 起動用のスイッチング素子
Q12 メインのスイッチング素子
ZD1 ツェナーダイオード
図1
図2
図3
図4
図5
図6