(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
A.第1実施形態:
図1は、搬送装置10の構成を示す説明図である。搬送装置10は、被搬送体90を搬送する。本実施形態では、搬送装置10は、半導体製造装置の一部を構成する装置であり、被搬送体90は、円板状の誘電体であるシリコン製のウェハである。
【0015】
搬送装置10は、制御部100と、セラミック部材200と、アーム機構710と、移動機構720と、吸着電極駆動部830と、負圧供給部840と、電熱体駆動部850と、処理ガス供給部860とを備える。
【0016】
搬送装置10の制御部100は、アーム機構710、移動機構720、吸着電極駆動部830、負圧供給部840、電熱体駆動部850、および処理ガス供給部860の各部の動作を制御する。本実施形態では、制御部100の機能は、コンピュータプログラムに基づいてCPU(Central Processing Unit)が動作することによって実現される。他の実施形態において、制御部100の機能は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)がその回路構成に基づいて動作することによって実現されても良い。
【0017】
搬送装置10のアーム機構710は、セラミック部材200と移動機構720との間を連結する機構であり、セラミック部材200を移動機構720に対して相対的に移動させ、搬送装置10の外部に対する被搬送体90の受け渡しを行う。搬送装置10の移動機構720は、セラミック部材200およびアーム機構710を搭載し、搬送装置10の外部に対して相対的に移動可能に構成された機構であり、セラミック部材200に保持された被搬送体90の移動を行う。
【0018】
搬送装置10のセラミック部材200は、ピックとも呼ばれ、搬送装置10において被搬送体90を保持した状態で被搬送体90と共に移動可能に構成されている。セラミック部材200は、絶縁性セラミック材料を用いた複数のセラミック層を一体焼成してなる。セラミック部材200の内部には、導電性材料を用いた導体パターンが形成されている。
【0019】
本実施形態では、セラミック部材200に用いられる絶縁性セラミック材料の主成分は、酸化アルミニウム(アルミナ)(Al2O3)である。他の実施形態において、絶縁性セラミック材料の主成分は
、イットリア(Y2O3)、酸化ケイ素(SiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化マグネシウム(MgO)、ムライト(3Al2O3・2SiO2)、またはガラスセラミック(例えば、アルミナとホウケイ酸ガラスとの混合物)であっても良い。
【0020】
本実施形態では、セラミック部材200に用いられる導電性材料の主成分は、タングステン(W)である。他の実施形態において、導電性材料の主成分は、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、銀(Ag)、または銅(Cu)であっても良いし、これら導電性金属の合金や、導電性炭化ケイ素(SiC)であっても良い。
【0021】
本実施形態では、セラミック部材200は、吸着電極駆動部830から電力の供給を受けることによって、誘電体である被搬送体90を静電力で吸着可能に構成されている。セラミック部材200における静電吸着のための構成の詳細については後述する。
【0022】
本実施形態では、セラミック部材200は、負圧供給部840から負圧(真空)の供給を受けることによって、被搬送体90を負圧で吸着可能に構成されている。セラミック部材200における負圧吸着のための構成の詳細については後述する。
【0023】
本実施形態では、セラミック部材200は、電熱体駆動部850から電力の供給を受けることによって発熱可能に構成されている。セラミック部材200における発熱するための構成の詳細については後述する。
【0024】
本実施形態では、セラミック部材200は、処理ガス供給部860から処理ガスの供給を受けることによって、被搬送体90に対して処理ガスを放出可能に構成されている。本実施形態では、処理ガス供給部860によってセラミック部材200に供給される処理ガスは、セラミック部材200の熱を被搬送体90に伝達させるための熱伝達用ガス(例えば、ヘリウム(He))である。セラミック部材200における処理ガスを放出するための構成の詳細については後述する。
【0025】
図2は、セラミック部材200の上面を示す説明図である。
図3は、
図2における矢視F3から見たセラミック部材200の側面を示す説明図である。
図4は、
図2における矢視F4−F4から見たセラミック部材200の断面を示す説明図である。
図2には、相互に直交するXYZ軸を図示した。
図2のXYZ軸は、
図3および
図4を始めとする他の図におけるXYZ軸に対応する。
【0026】
図2および
図3に示すように、本実施形態では、セラミック部材200は、略U字形の板状をなす。搬送装置10におけるセラミック部材200の使用状態において、セラミック部材200におけるU字の横方向に沿った軸をX軸とし、U字の縦方向に沿った軸をY軸とし、重力方向に沿った軸をZ軸とする。セラミック部材200におけるU字の右側から左側に向かって+X軸方向、その逆を−X軸方向とする。セラミック部材200におけるU字の閉塞端から開放端に向かって+Y軸方向、その逆を−Y軸方向とする。重力方向の下方から上方に向かって+Z軸方向、その逆を−Z軸方向とする。本実施形態では、セラミック部材200におけるX軸およびY軸に平行な面上に被搬送体90が保持される。セラミック部材200の厚さ方向は、Z軸方向に対応する。
【0027】
図4に示すように、セラミック部材200は、複数のセラミック層として、7層のセラミック層291,292,293,294,295,296,297を備える。これらのセラミック層は、底面216側から、セラミック層291、セラミック層292、セラミック層293、セラミック層294、セラミック層295、セラミック層296、セラミック層297の順に積層されている。これらのセラミック層の層面方向は、X軸およびY軸に平行な面に沿った方向である。セラミック部材200におけるセラミック層の数は7層に限られるものではなく、他の実施形態では、6層以下であっても良いし、8層以上であっても良い。
【0028】
セラミック部材200は、基端面211と、基端側面213,214と、基端上面215と、底面216と、貫通孔218と、基端段差面219と、先端面222,223と、外側面224,225と、内側面221,226,227と、対向面231,232,233,234,235と、先端上面242,243と、先端段差面248,249とを有する。
【0029】
セラミック部材200の基端面211は、X軸およびZ軸に平行であって−Y軸方向を向いた面である。基端面211は、セラミック部材200における−Y軸方向の端に位置し、搬送装置10に取り付けられる側の端である基端部を構成する。基端面211は、基端側面213,214、基端上面215、および底面216の各面に繋がる。
【0030】
セラミック部材200の基端側面213は、−X軸方向および−Y軸方向を向いたZ軸に平行な面であり、基端面211と外側面224との間に形成されている。セラミック部材200の基端側面214は、+X軸方向および−Y軸方向を向いたZ軸に平行な面であり、基端面211と外側面225との間に形成されている。
【0031】
セラミック部材200の基端上面215は、X軸およびY軸に平行であって+Z軸方向を向いた面である。基端上面215は、基端面211および基端側面213,214に繋がる。
図3に示すように、基端上面215は、対向面231,232よりも+Z軸方向側に設けられている。基端上面215と対向面231との間には、基端段差面219が形成されている。本実施形態では、
図2に示すように、基端上面215の+Y軸方向側、基端段差面219、および対向面231の−Y軸方向側は、被搬送体90の外形に沿った円弧状に形成されている。
【0032】
セラミック部材200の底面216は、X軸およびY軸に平行であって−Z軸方向を向いた面である。底面216は、セラミック部材200の全体形状と同じ略U字形の面であり、基端面211、基端側面213,214、先端面222,223、外側面224,225、および内側面221,226,227の各面に繋がる。
【0033】
セラミック部材200の貫通孔218は、基端上面215と底面216との間をZ軸に沿って貫通する。本実施形態では、セラミック部材200は、貫通孔218を用いてアーム機構710に取り付けられる。本実施形態では、貫通孔218の個数は2個であるが、他の実施形態では、3個以上であっても良い。
【0034】
セラミック部材200の先端面222,223は、Z軸に平行であって+Y軸方向に凸状の円弧面である。先端面222,223は、セラミック部材200における+Y軸方向の端に位置し、基端面211との間に対向面231,232,
233,234,235を配置した先端部を構成する。先端面222は、−X軸方向側に位置し、先端面223は、+X軸方向側に位置する。先端面222は、底面216、外側面224、内側面226、対向面231、および先端上面242に繋がる。先端面223は、底面216、外側面225、内側面227、対向面231、および先端上面243に繋がる。
【0035】
セラミック部材200の外側面224は、Y軸およびZ軸に平行であって−X軸方向を向いた面であり、先端面222と基端側面213との間に形成されている。セラミック部材200の外側面225は、Y軸およびZ軸に平行であって+X軸方向を向いた面であり、先端面223と基端側面214との間に形成されている。外側面224,225は、セラミック部材200の外周を形成する外周部である。
【0036】
セラミック部材200の内側面221は、Z軸に平行であって+Y軸方向に対して凹状の円弧面であり、内側面226と内側面227との間に形成されている。セラミック部材200の内側面226は、Y軸およびZ軸に平行であって+X軸方向を向いた面であり、先端面222と内側面221との間に形成されている。セラミック部材200の内側面227は、Y軸およびZ軸に平行であって−X軸方向を向いた面であり、先端面223と内側面221との間に形成されている。内側面221,226,227は、セラミック部材200の外周を形成する外周部である。
【0037】
セラミック部材200の対向面231,232,233,234,235は、X軸およびY軸に平行であって+Z軸方向を向いた面である。対向面231,232,233,234,235は、セラミック部材200に被搬送体90を保持した状態で被搬送体90に対向する。
図2では、図の理解を容易にするために、対向面232,234にハッチングを施した。
【0038】
対向面231,233,235は、対向面232,234よりも底面216側、すなわち、対向面232,234よりも−Z軸方向側に、位置する第1の対向面である。対向面232,
234は、対向面231,233,235よりも被搬送体90側、すなわち、対向面231,233,
235よりも+Z軸方向側に、位置する第2の対向面である。本実施形態では、セラミック部材200の一体焼成後に、セラミック層297を切削することによって、対向面231,232,233,234,235を形成する。
【0039】
本実施形態では、
図2に示すように、対向面235は、Z軸方向から見て略U字形の平面である。対向面234は、対向面235よりも+Z軸方向に位置し、Z軸方向から見て対向面235の外周を囲繞する平面である。対向面233は、対向面234よりも−Z軸方向に位置し、Z軸方向から見て対向面234の外周を囲繞する平面である。対向面232は、対向面233よりも+Z軸方向に位置し、Z軸方向から見て対向面233の外周を囲繞する平面である。対向面231は、対向面232よりも−Z軸方向に位置し、Z軸方向から見て対向面232の外周を囲繞する平面である。本実施形態では、
図4に示すように、対向面231,233,235のZ軸方向の各位置は同じであり、対向面232,234のZ軸方向の各位置は同じである。
【0040】
セラミック部材200の先端上面242,243は、X軸およびY軸に平行であって+Z軸方向を向いた面である。先端上面242は、先端面222に繋がり、先端上面243は、先端面223に繋がる。
図3に示すように、先端上面242,243は、対向面231,232よりも+Z軸方向側に設けられている。先端上面242と対向面231との間には先端段差面248が形成されており、先端上面243と対向面231との間には先端段差面249が形成されている。本実施形態では、
図2に示すように、先端上面242,243の−Y軸方向側、先端段差面248,249、および対向面231の+Y軸方向側は、被搬送体90の外形に沿った円弧状に形成されている。
【0041】
図2および
図4に示すように、セラミック部材200の対向面235には、対向面235に負圧を提供することによって被搬送体90を吸着可能に構成した孔である吸着孔450が形成されている。本実施形態では、セラミック部材200の一体焼成前に、セラミック層295,296,297を切削することによって、吸着孔450を形成する。本実施形態では、吸着孔450の個数は6個であるが、他の実施形態では、5個以下であっても良いし、7個以上であっても良い。
【0042】
図2および
図4に示すように、セラミック部材200の対向面233には、処理ガスを放出可能に構成した孔であるガス放出孔650が形成されている。本実施形態では、セラミック部材200の一体焼成前に、セラミック層295,296,297を切削することによって、ガス放出孔650を形成する。本実施形態では、ガス放出孔650の個数は12個であるが、他の実施形態では、11個以下であっても良いし、13個以上であっても良い。
【0043】
図2および
図3に示すように、セラミック部材200は、給電口312,316と、負圧供給口412と、給電口512,516と、ガス供給口612とを備える。
【0044】
セラミック部材200の給電口312,316は、相互に極性が反転した電位となる電力の供給を吸着電極駆動部830からそれぞれ受け付ける。本実施形態では、給電口312,316は、基端上面215から+Z軸方向に突出した円筒状の導電性金属端子をロウ付けして形成されており、吸着電極駆動部830に接続されたケーブルの端子(図示しない)を固定可能に構成されている。
【0045】
セラミック部材200の負圧供給口412は、負圧供給部840から負圧の供給を受け付ける。本実施形態では、負圧供給口412は、基端上面215から+Z軸方向に突出した円筒状の導電性金属端子をロウ付けして形成されており、負圧供給部840に接続されたチューブの端部(図示しない)を固定可能に構成されている。
【0046】
セラミック部材200の給電口512,516は、電熱体駆動部850から電力の供給を受け付け、一方が正極に対応し、他方が負極に対応する。本実施形態では、給電口512,516は、基端上面215から+Z軸方向に突出した円筒状の導電性金属端子をロウ付けして形成されており、電熱体駆動部850に接続されたケーブルの端子(図示しない)を固定可能に構成されている。
【0047】
セラミック部材200のガス供給口612は、処理ガス供給部860から処理ガスの供給を受け付ける。本実施形態では、ガス供給口612は、基端上面215から+Z軸方向に突出した円筒状の導電性金属端子をロウ付けして形成されており、処理ガス供給部860に接続されたチューブの端部(図示しない)を固定可能に構成されている。
【0048】
図4に示すように、セラミック層296とセラミック層297との間には、導体パターンである吸着電極372,374,376,378が形成されている。本実施形態では、セラミック層296にセラミック層297を積層する前に、導電性材料を含有する導電体ペーストをセラミック層296にスクリーン印刷することによって、吸着電極372,374,376,378を形成する。本実施形態では、吸着電極372,374は、吸着電極376,378とは異なる極性の電位となるように構成した第1電極であり、吸着電極376,378は、吸着電極372,374とは異なる極性の電位となるように構成した第2電極である。
【0049】
図5は、
図4の矢視F5−F5に対応する位置から見たセラミック層296を示す説明図である。
図5には、吸着電極372,374,376,378が形成されたセラミック層296を図示した。
図5には、図の理解を容易にするために、吸着電極372,374,376,378にハッチングを施した。
図5に示すように、吸着電極372,374,376,378は、吸着孔450およびガス放出孔650を避けて形成されている。
【0050】
図2、
図4および
図5に示すように、吸着電極372は、Z軸方向から見て、対向面232の外側寄りに沿って重なり、吸着電極376は、Z軸方向から見て、対向面232の内側寄りに沿って重なる。吸着電極372および吸着電極376の各々は、Z軸方向から見て、対向面232に対して略均等に重なるように配置されている。
【0051】
図2、
図4および
図5に示すように、吸着電極374は、Z軸方向から見て、対向面234の外側寄りに沿って重なり、吸着電極378は、Z軸方向から見て、対向面234の内側寄りに沿って重なる。吸着電極374および吸着電極378の各々は、Z軸方向から見て、対向面234に対して略均等に重なるように配置されている。
【0052】
図6は、
図4の矢視F6−F6に対応する位置から見たセラミック層295を示す説明図である。
図7は、
図6の矢視F7−F7に対応する位置から見たセラミック部材200の断面を示す説明図である。
図6および
図7に示すように、セラミック層295とセラミック層296との間には、導体パターンであるランド332,336が形成されている。
図6には、図の理解を容易にするために、ランド332,336にハッチングを施した。
図6には、給電口312,316を、Z軸方向に沿ってセラミック層295上に投影した位置に一点鎖線で図示した。なお、
図5には、ランド332,336を破線で図示した。
【0053】
本実施形態では、セラミック層295にセラミック層296を積層する前に、導電性材料を含有する導電体ペーストをセラミック層295にスクリーン印刷することによって、ランド332,336を形成する。
【0054】
ランド332は、給電口312を通じて受電可能に構成した導体である。本実施形態では、ランド332は、円筒状の給電口312の内部に露出することによって、給電口312を通じて受電可能に構成されている。
【0055】
ランド336は、給電口316を通じて受電可能に構成した導体である。本実施形態では、ランド336は、円筒状の給電口316の内部に露出することによって、給電口316を通じて受電可能に構成されている。
【0056】
図7に示すように、セラミック層296にはビア352,354が形成されており、同様に、セラミック層296にはビア356,358が形成されている。
図5には、ビア352,354,356,358を破線で図示した。
図6には、ビア352,354,356,358を、Z軸方向に沿ってセラミック層295上に投影した位置に一点鎖線で図示した。
【0057】
本実施形態では、吸着電極372,374,376,378をセラミック層296に形成する前に、セラミック層
296に貫通孔を形成し、その貫通孔に導電性材料を含有する導電体ペーストを穴埋め印刷することによって、ビア352,354,356,358を形成する。
【0058】
ビア352は、セラミック層296を貫通してランド332と吸着電極372との間を電気的に接続する導体である。ビア354は、セラミック層296を貫通してランド332と吸着電極374との間を電気的に接続する導体である。
【0059】
ビア356は、セラミック層296を貫通してランド336と吸着電極376との間を電気的に接続する導体である。ビア358は、セラミック層296を貫通してランド336と吸着電極378との間を電気的に接続する導体である。
【0060】
図4に示すように、セラミック層294には、負圧連通路430およびガス連通路630が形成されている。負圧連通路430は、負圧供給口412と吸着孔450との間を連通する流路である。ガス連通路630は、ガス供給口612とガス放出孔650との間を連通する流路である。本実施形態では、セラミック層294にセラミック層295を積層する前に、セラミック層294を切削することによって、負圧連通路430およびガス連通路630を形成する。
【0061】
図8は、
図4の矢視F8−F8に対応する位置から見たセラミック層294を示す説明図である。
図8には、負圧供給口412、吸着孔450、ガス供給口612、およびガス放出孔650の各々を、Z軸方向に沿ってセラミック層294上に投影した位置に一点鎖線で図示した。
【0062】
本実施形態では、負圧連通路430は、負圧供給口412に対応する位置から内側面221へと進んだ後、先端面222および先端面223に向けて2つに分岐して6個の吸着孔450に対応する位置を通る。本実施形態では、ガス連通路630は、ガス供給口612に対応する位置から先端面222および先端面223に向けて2つに分岐した後、一方で外側面224、先端面222、内側面226の順に沿って6個のガス放出孔650に対応する位置を通り、他方で外側面225、先端面223、内側面227の順に沿って6個のガス放出孔650に対応する位置を通る。
【0063】
図4に示すように、セラミック層291とセラミック層292との間には、導体パターンである電熱体572,574,576が形成されている。本実施形態では、セラミック層291にセラミック層292を積層する前に、導電性材料を含有する導電体ペーストをセラミック層291にスクリーン印刷することによって、電熱体572,574,576を形成する。
【0064】
図9は、
図4の矢視F9−F9に対応する位置から見たセラミック層292を示す説明図である。
図10は、
図4の矢視F10−F10に対応する位置から見たセラミック層291を示す説明図である。
図11は、
図9の矢視F11−F11に対応する位置から見たセラミック部材200の断面を示す説明図である。
図10では、図の理解を容易にするために、電熱体572,574,576にハッチングを施した。
【0065】
図10に示すように、本実施形態では、電熱体572,576は、セラミック層291の外周側に配置された第1電熱体であり、電熱体574は、電熱体572,576よりも内側に配置された第2電熱体である。本実施形態では、電熱体572,576を電熱体574よりも抵抗値が高い導電性材料で形成することによって、電熱体572,576の単位面積あたりの発熱量が電熱体574よりも大きくなるように構成されている。他の実施形態では、電熱体572,576に電熱体574より大きな電流を供給することによって、電熱体572,576の単位面積あたりの発熱量が電熱体574よりも大きくなるように構成しても良い。また、他の実施形態では、電熱体572,574,576の単位面積あたりの発熱量が同じになるように構成しても良い。
【0066】
図9ないし
図11に示すように、セラミック層292とセラミック層293との間には、導体パターンであるランド532,536が形成されている。
図9には、図の理解を容易にするために、ランド532,536にハッチングを施した。
図9には、給電口512,516を、Z軸方向に沿ってセラミック層292上に投影した位置に一点鎖線で図示した。
図10には、ランド532,536を、Z軸方向に沿ってセラミック層291上に投影した位置に一点鎖線で図示した。
【0067】
本実施形態では、セラミック層292にセラミック層293を積層する前に、導電性材料を含有する導電体ペーストをセラミック層292にスクリーン印刷することによって、ランド532,536を形成する。
【0068】
ランド532は、給電口512を通じて受電可能に構成した導体である。本実施形態では、ランド532は、円筒状の給電口512の内部に露出することによって、給電口512を通じて受電可能に構成されている。
【0069】
ランド536は、給電口516を通じて受電可能に構成した導体である。本実施形態では、ランド536は、円筒状の給電口516の内部に露出することによって、給電口516を通じて受電可能に構成されている。
【0070】
図9および
図11に示すように、セラミック層292には、ビア552,553,554、およびビア556,557,558が形成されている。
図9には、ビア552,553,554、およびビア556,557,558を破線で図示した。
図10には、給電口512,516、ランド532,536、ビア552,553,554、およびビア556,557,558の各々を、Z軸方向に沿ってセラミック層291上に投影した位置に一点鎖線で図示した。
【0071】
本実施形態では、ランド
532,536をセラミック層292に形成する前に、セラミック層292に貫通孔を形成し、その貫通孔に導電性材料を含有する導電体ペーストを穴埋め印刷することによって、ビア552,553,554、およびビア556,557,558を形成する。
【0072】
ビア552は、セラミック層292を貫通して、電熱体572における+X軸方向側の端部と、ランド532との間を電気的に接続する導体である。ビア553は、セラミック層292を貫通して、電熱体574における+X軸方向側の端部と、ランド532との間を電気的に接続する導体である。ビア554は、セラミック層292を貫通して、電熱体576における+X軸方向側の端部と、ランド532との間を電気的に接続する導体である。
【0073】
ビア556は、セラミック層292を貫通して、電熱体572における−X軸方向側の端部と、ランド536との間を電気的に接続する導体である。ビア557は、セラミック層292を貫通して、電熱体574における−X軸方向側の端部と、ランド536との間を電気的に接続する導体である。ビア558は、セラミック層292を貫通して、電熱体576における−X軸方向側の端部と、ランド536との間を電気的に接続する導体である。
【0074】
図27は、セラミック部材200の製造工程を示す説明図である。セラミック部材200を製造する際には、始めに、セラミック層291〜297の元となるグリーンシートを用意する(工程P110)。グリーンシートは、絶縁性セラミック材料粉末に、有機バインダ、可塑剤、溶剤などを混合してシート状に成形したものである。
【0075】
グリーンシートを用意した後(工程P110)、セラミック層291〜297の各々の構成に応じてグリーンシートを加工する(工程P120)。具体的には、各グリーンシートを正方形に切削加工した後、後工程(スクリーン印刷、切削加工および熱圧着など)における位置合わせに適したガイド孔を、各グリーンシートの外周付近にパンチング加工する。必要に応じて、吸着電極372,374,376,378、ランド332,336、電熱体572,574,576、ランド532,536の各形状に合わせて導電体ペーストをグリーンシートの表面にスクリーン印刷する。必要に応じて、ビア352,354,356,358、ビア552,553,554,556,557,558を形成する位置に、貫通孔であるビア孔をパンチング加工し、そのビア孔に導電体ペーストを穴埋め印刷する。必要に応じて、貫通孔218、負圧連通路430、吸着孔450、ガス連通路630、ガス放出孔650などをグリーンシートに切削加工する。
【0076】
セラミック層291〜297の各々に応じてグリーンシートを加工した後(工程P120)、セラミック層291〜297の各々に応じた複数のグリーンシートを積層し、熱圧着により隣接するセラミック層同士を接合する(工程P125)。これによって、複数のグリーンシートを積層したグリーンシート積層体が形成される。
【0077】
グリーンシート積層体を形成した後(工程P125)、このグリーンシート積層体を、後工程の焼成に適した外形形状に切削加工する(工程P130)。
【0078】
グリーンシート積層体を切削加工した後(工程P130)、グリーンシート積層体を脱脂する(工程P140)。具体的には、グリーンシート積層体を250℃の大気雰囲気中に10時間曝すことによって脱脂する。
【0079】
グリーンシート積層体を脱脂した後(工程P140)、グリーンシート積層体を一体焼成する。具体的には、1400〜1600℃の還元雰囲気中にてグリーンシート積層体を焼成する(工程P150)。これによって、グリーンシートに由来するアルミナと、導電体ペーストに由来するタングステンとが同時焼結し、セラミック部材200の内部構造が形成された焼成体を得る。
【0080】
焼成の後(工程P150)、焼成で得た焼成体をセラミック部材200へと成形する(工程P160)。具体的には、セラミック部材200に合わせて焼成体の外形形状を研磨切削加工する。対向面231,233,235については、本実施形態では、研磨切削加工で形成するが、他の実施形態では、ブラスト加工で形成しても良い。
【0081】
以上説明した第1実施形態では、第1のセラミック層であるセラミック層296上に吸着電極372,374,376,378を形成し、第2のセラミック層であるセラミック層295上に給電口312,316を通じて受電可能に構成したランド332,336を形成し、セラミック層296を貫通して吸着電極372,374,376,378とランド332,336との間を電気的に接続するビア352,354,356,358を形成した。この第1実施形態によれば、セラミック層296上に形成した吸着電極372,374,376,378に対して、セラミック層295上に形成したランド332,336を経由し、ビア352,354,356,358を通じて給電するため、セラミック層296上における吸着電極372,374,376,378の配置や形状の自由度を向上させることができる。その結果、静電力による吸着力を向上させることができ、ひいては、搬送装置10の搬送性能を向上させることができる。
【0082】
また、吸着電極372,374,376,378をランド332,336よりも被搬送体90を保持する側(すなわち、+Z軸方向側)に配置したため、被搬送体90を保持する側(すなわち、対向面231,232,233,234,235側)により多くの電荷を発生させ、静電力による吸着力を更に向上させることができる。
【0083】
また、第2の対向面である対向面232,234は、第1の対向面である対向面231,233,235よりも被搬送体90側(すなわち、+Z軸方向側)に位置し、Z軸方向から見て吸着電極372,374,376,378の少なくとも一部が対向面232,234に重なるように、吸着電極372,374,376,378を配置したため、被搬送体90により近い対向面232,234により多くの電荷を発生させ、静電力による吸着力を更に向上させることができる。
【0084】
また、第1電極である吸着電極372,374と、第2電極である吸着電極376,378とを、相互に異なる極性の電位になるように構成し、吸着電極372,374および吸着電極376,378の各々を、Z軸方向から見て対向面232,234に対して略均等に重なるように配置したため、セラミック部材200および被搬送体90にそれぞれ発生させる正電荷と負電荷との均衡を保つことができる。
【0085】
また、Z軸方向から見て、吸着孔450を形成した対向面235を対向面234が取り囲むため、対向面234に囲まれた対向面235にわたって負圧による吸着力を被搬送体90に対して及ぼすことができる。
【0086】
また、第1実施形態では、ガス供給口612に連通するガス連通路630をセラミック層294に形成し、ガス連通路630から対向面233へと貫通するガス放出孔650を形成した。この第1実施形態によれば、ガス放出孔650から対向面233へと熱伝達用ガス(処理ガス)を放出し、被搬送体90とセラミック部材200との間(特に、被搬送体90と対向面232,234との隙間)に熱伝達用ガスを介在させることによって、セラミック部材200から被搬送体90に対する熱伝達を促進することができる。したがって、静電力による吸着機能を実現しながら、被搬送体90の温度調整を効果的に行うことができる。その結果、被搬送体90の温度調整に要する時間を短縮することができ、ひいては、搬送装置10の搬送性能を向上させることができる。
【0087】
また、第1実施形態では、セラミック層297上に吸着電極372,374,376,378を形成して静電力による吸着力を確保した上で、セラミック層291上に形成した電熱体572,574,576に対して、セラミック層292上に形成したランド532,536を経由しビア552,553,554,556,557,558を通じて給電する。この第1実施形態によれば、セラミック層291上における電熱体572,574,576の配置や形状の自由度を向上させることができる。その結果、静電力による吸着力を阻害することなく、電熱体572,574,576による温度調整を効果的に行うことができ、ひいては、搬送装置10の搬送性能を向上させることができる。
【0088】
また、電熱体572,574,576を対向面231,232,233,234,235よりも底面216寄りに配置したため、対向面231,232,233,234,235における温度ムラを抑制し、電熱体572,574,576による温度調整を一層効果的に行うことができる。
【0089】
また、第1電熱体である外周側の電熱体572,576を、第2電熱体である内側の電熱体574よりも単位面積あたりの発熱量が大きくなるように構成したため、セラミック部材200における外周側と内側との間の温度ムラを抑制し、電熱体572,574,576による温度調整を一層効果的に行うことができる。
【0090】
B.第2実施形態:
第2実施形態の説明では、第1実施形態と同様の構成については第1実施形態と同じ符号を用い、形状や配置などが異なるものの第1実施形態に対応する構成については第1実施形態の符号に英文字「A」を付した符号を用いる。
【0091】
図12Aは、第2実施形態におけるセラミック部材200Aの上面を示す説明図である。
図12Bは、第2実施形態におけるセラミック部材200Aの部分断面を示す説明図である。第2実施形態のセラミック部材200Aは、基端段差面219Aにガス放出孔650Aを形成した点を除き、第1実施形態のセラミック部材200と同様である。第2実施形態の基端段差面219Aは、基端上面215と対向面231との間に形成された面であり、第1実施形態の基端段差面219に対応する。
【0092】
第2実施形態のガス放出孔650Aは、ガス連通路630Aに連通し、処理ガスを放出可能に構成した孔である。本実施形態では、
図12Bに示すように、ガス放出孔650Aは、ガス連通路630Aからセラミック層295A,296AをZ軸方向に沿って貫通した後、セラミック層297Aの内部から層面方向に沿って基端段差面219Aへと貫通する。
【0093】
本実施形態では、
図12Aに示すように、ガス放出孔650Aは、対向面231の外周に沿った方向に向けて基端段差面219Aを貫通する。他の実施形態では、ガス放出孔650Aは、対向面231の外周に直交する方向に向けて基端段差面219Aを貫通しても良い。
【0094】
本実施形態では、セラミック部材200Aの一体焼成前に、セラミック層295A,296A,297Aを切削することによって、ガス放出孔650Aを形成する。本実施形態では、ガス放出孔650Aの個数は4個であるが、他の実施形態では、3個以下であっても良いし、5個以上であっても良い。
【0095】
以上説明した第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、静電力による吸着力を向上させることができる。また、基端段差面219Aにガス放出孔650Aを形成したため、対向面233に加えて基端段差面219Aからも処理ガスを放出することによって被搬送体90の温度調整を一層効果的に行うことができる。また、ガス放出孔650Aが対向面231の外周に沿った方向に向けて基端段差面219Aを貫通するため、被搬送体90の外周に沿って処理ガスを放出することによって被搬送体90の温度調整を一層効果的に行うことができる。また、ガス放出孔650Aを対向面231よりも基端面211側に配置したため、基端面211側に位置する被搬送体90の部位に対する温度調整を一層効果的に行うことができる。
【0096】
C.第3実施形態:
第3実施形態の説明では、第1実施形態と同様の構成については第1実施形態と同じ符号を用い、形状や配置などが異なるものの第1実施形態に対応する構成については第1実施形態の符号に英文字「B」を付した符号を用いる。
【0097】
図13Aは、第3実施形態におけるセラミック部材200Bの上面を示す説明図である。
図13Bは、第3実施形態におけるセラミック部材200Bの部分断面を示す説明図である。第3実施形態のセラミック部材200Bは、先端段差面248B,249Bにガス放出孔650Bを形成した点を除き、第1実施形態のセラミック部材200と同様である。
【0098】
第3実施形態の先端段差面248Bは、先端上面242と対向面231との間に形成された面であり、第1実施形態の先端段差面248に対応する。第3実施形態の先端段差面249Bは、先端上面243と対向面231との間に形成された面であり、第1実施形態の先端段差面249に対応する。
【0099】
第3実施形態のガス放出孔650Bは、ガス連通路630Bに連通し、処理ガスを放出可能に構成した孔である。本実施形態では、
図13Bに示すように、ガス放出孔650Bは、ガス連通路630Bからセラミック層295B,296BをZ軸方向に沿って貫通した後、セラミック層297Bの内部から層面方向に沿って先端段差面248B,249Bへと貫通する。
【0100】
本実施形態では、
図13Aに示すように、ガス放出孔650Bは、対向面231の外周に沿った方向に向けて先端段差面248B,249Bを貫通する。他の実施形態では、ガス放出孔650Bは、対向面231の外周に直交する方向に向けて先端段差面248B,249Bを貫通しても良い。
【0101】
本実施形態では、セラミック部材200Bの一体焼成前に、セラミック層295B,296B,297Bを切削することによって、ガス放出孔650Bを形成する。本実施形態では、ガス放出孔650Bの個数は、先端段差面248B,249Bにそれぞれ2個であるが、他の実施形態では、先端段差面248B,249Bにそれぞれ1個であっても良いし、それぞれ3個以上であっても良い。
【0102】
以上説明した第3実施形態によれば、第1実施形態と同様に、静電力による吸着力を向上させることができる。また、先端段差面248B,249Bにガス放出孔650Bを形成したため、対向面233に加えて先端段差面248B,249Bからも処理ガスを放出することによって被搬送体90の温度調整を一層効果的に行うことができる。また、ガス放出孔650Bが対向面231の外周に沿った方向に向けて先端段差面248B,249Bを貫通するため、被搬送体90の外周に沿って処理ガスを放出することによって被搬送体90の温度調整を一層効果的に行うことができる。また、ガス放出孔650Bを対向面231よりも先端面222,223側に配置したため、先端面222,223側に位置する被搬送体90の部位に対する温度調整を一層効果的に行うことができる。
【0103】
D.第4実施形態:
第4実施形態の説明では、第1実施形態と同様の構成については第1実施形態と同じ符号を用い、形状や配置などが異なるものの第1実施形態に対応する構成については第1実施形態の符号に英文字「C」を付した符号を用いる。
【0104】
図14は、第4実施形態におけるセラミック部材200Cの断面を示す説明図である。
図14には、
図2における矢視F4−F4に対応する位置から見たセラミック部材200Cの断面を図示した。第4実施形態のセラミック部材200Cは、外側面224C,225Cおよび内側面226C,227Cにガス放出孔650Cを形成した点を除き、第1実施形態のセラミック部材200と同様である。
【0105】
第4実施形態の外側面224Cは、先端面222と基端側面213との間に形成された面であり、第1実施形態の外側面224に対応する。第4実施形態の外側面225Cは、先端面223と基端側面214との間に形成された面であり、第1実施形態の外側面225に対応する。
【0106】
第4実施形態の内側面226Cは、先端面222と内側面221との間に形成された面であり、第1実施形態の内側面226に対応する。第4実施形態の内側面227Cは、先端面223と内側面221との間に形成された面であり、第1実施形態の内側面227に対応する。
【0107】
第4実施形態のガス放出孔650Cは、ガス連通路630Cに連通し、処理ガスを放出可能に構成した孔である。本実施形態では、
図14に示すように、ガス放出孔650Cは、ガス連通路630Cから層面方向に沿って外側面224C,225Cおよび内側面226C,227Cへとそれぞれ貫通する。
【0108】
本実施形態では、ガス放出孔650Cは、外側面224C,225Cおよび内側面226C,227Cにそれぞれ直交する方向に向けて外側面224C,225Cおよび内側面226C,227Cをそれぞれ貫通する。他の実施形態では、ガス放出孔650Cは、被搬送体90の外形に沿った方向に向けて外側面224C,225Cおよび内側面226C,227Cをそれぞれ貫通しても良い。
【0109】
本実施形態では、セラミック部材200Cの一体焼成前に、セラミック層294Cを切削することによって、ガス放出孔650Cを形成する。本実施形態では、ガス放出孔650Cの個数は、外側面224C,225Cおよび内側面226C,227Cにそれぞれ複数であるが、他の実施形態では、それぞれ1個であっても良い。
【0110】
以上説明した第4実施形態によれば、第1実施形態と同様に、静電力による吸着力を向上させることができる。また、外側面224C,225Cおよび内側面226C,227Cにガス放出孔650Cを形成したため、対向面233に加えて外側面224C,225Cおよび内側面226C,227Cからも処理ガスを放出することによって被搬送体90の温度調整を一層効果的に行うことができる。また、ガス放出孔650Cを外側面224C,225Cおよび内側面226C,227Cに配置したため、外側面224C,225Cおよび内側面226C,227Cの各近傍に位置する被搬送体90の部位に対する温度調整を一層効果的に行うことができる。
【0111】
なお、第4実施形態では、外側面224C,225Cおよび内側面226C,227Cにガス放出孔650Cを形成したが、他の実施形態では、外側面224C,225Cのみにガス放出孔650Cを形成しても良いし、内側面226C,227Cのみにガス放出孔650Cを形成しても良い。また、第4実施形態では、内側面221にはガス放出孔650Cを形成していないが、他の実施形態では、内側面221にガス放出孔650Cを形成しても良い。
【0112】
E.第5実施形態:
第5実施形態の説明では、第1実施形態と同様の構成については第1実施形態と同じ符号を用い、形状や配置などが異なるものの第1実施形態に対応する構成については第1実施形態の符号に英文字「D」を付した符号を用いる。
【0113】
図15は、第5実施形態におけるセラミック部材200Dの上面を示す説明図である。
図16は、
図15における矢視F16−F16から見たセラミック部材200Dの断面を示す説明図である。第5実施形態のセラミック部材200Dは、対向面231,232,233および先端上面242,243に代えて対向面231Dが形成されている点、処理ガス供給部860から供給される処理ガスが被搬送体90を冷却するための冷却ガスである点を除き、第1実施形態のセラミック部材200と同様である。
【0114】
第5実施形態の対向面231Dは、第1実施形態における対向面232および先端上面242,243を対向面231,233の位置にまで切削した形状を有し、第1実施形態の対向面231,233に対応する面を含む。対向面231Dは、対向面234よりも−Z軸方向に位置し、対向面234の外周を囲繞する。対向面231Dは、基端段差面219、先端面222,223、外側面224,225、および内側面221,226,227の各面に繋がる。対向面231Dには、ガス放出孔650が第1実施形態と同様の配置で形成されている。
【0115】
第5実施形態の処理ガス供給部860は、十分に冷却された処理ガスを冷却ガスとしてセラミック部材200Dに供給する。処理ガス供給部860から供給される冷却ガスは、被搬送体90を損傷および汚染することのない気体であれば良い。本実施形態では、冷却ガスは、窒素(N2)であるが、他の実施形態では、アルゴン(Ar)、二酸化炭素(CO2)などの他の不活性ガスであっても良い。
【0116】
以上説明した第5実施形態によれば、第1実施形態と同様に、静電力による吸着力を向上させることができる。また、ガス放出孔650から対向面231Dへと冷却ガス(処理ガス)を放出することによって、被搬送体90を冷却することができる。したがって、静電力による吸着機能を実現しながら、被搬送体90の温度調整を効果的に行うことができる。その結果、被搬送体90の温度調整に要する時間を短縮することができ、ひいては、搬送装置10の搬送性能を向上させることができる。
【0117】
なお、第2実施形態のガス放出孔650A、第3実施形態のガス放出孔650B、第4実施形態のガス放出孔650Cの少なくとも一つを、第5実施形態のセラミック部材200Dに適用しても良い。これによって、被搬送体90の温度調整を一層効果的に行うことができる。
【0118】
F.第6実施形態:
第6実施形態の説明では、第1実施形態と同様の構成については第1実施形態と同じ符号を用い、形状や配置などが異なるものの第1実施形態に対応する構成については第1実施形態の符号に英文字「E」を付した符号を用いる。
【0119】
図17は、第6実施形態におけるセラミック部材200Eの上面を示す説明図である。
図18は、
図17における矢視F18−F18から見たセラミック部材200Eの断面を示す説明図である。第6実施形態のセラミック部材200Eは、対向面231,233,234,235および先端上面242,243に代えて対向面231E,235Eが形成されている点、処理ガスを放出するための構成を備えていない点を除き、第1実施形態のセラミック部材200と同様である。
【0120】
第6実施形態の対向面231Eは、第1実施形態における先端上面242,243を対向面231の位置にまで切削した形状を有し、第1実施形態の対向面231に対応する面を含む。対向面231Eは、対向面232よりも−Z軸方向に位置し、対向面232の外周を囲繞する。対向面231Eは、基端段差面219、先端面222,223、外側面224,225、および内側面221,226,227の各面に繋がる。
【0121】
第6実施形態の対向面235Eは、第1実施形態における対向面234を対向面235の位置にまで切削した形状を有し、第1実施形態の対向面233,235に対応する面を含む。対向面235Eは、対向面232よりも−Z軸方向に位置し、対向面235Eの外周は、対向面232に囲まれている。対向面235Eには、吸着孔450が第1実施形態と同様の配置で形成されている。
【0122】
以上説明した第6実施形態によれば、第1実施形態と同様に、静電力による吸着力を向上させることができる。
【0123】
G.第7実施形態:
第7実施形態の説明では、第1実施形態と同様の構成については第1実施形態と同じ符号を用い、形状や配置などが異なるものの第1実施形態に対応する構成については第1実施形態の符号に英文字「F」を付した符号を用いる。
【0124】
図19は、第7実施形態におけるセラミック部材200Fの上面を示す説明図である。
図20は、
図19における矢視F20−F20から見たセラミック部材200Fの断面を示す説明図である。第7実施形態のセラミック部材200Fは、対向面231,232,233,234,235および先端上面242,243に代えて対向面232F,235Fが形成されている点、吸着電極の形状が異なる点、負圧連通路の形状が異なる点、処理ガスを放出するための構成を備えていない点、並びに、電熱体572,574,576を備えていない点を除き、第1実施形態のセラミック部材200と同様である。
【0125】
第7実施形態の対向面232F,235Fは、X軸およびY軸に平行であって+Z軸方向を向いた面である。対向面232F,235Fは、セラミック部材200Fに被搬送体90を保持した状態で被搬送体90に対向する。対向面232Fは、対向面235Fよりも+Z軸方向側に位置する。対向面232Fは、基端段差面219、先端面222,223、外側面224,225、および内側面221,226,227の各面に繋がる。対向面235Fは、対向面232Fの内側に位置し、略U字形の網目状をなす。
【0126】
図19に示すように、対向面235Fにおける網目の交点には、吸着孔450Fが形成されている。第7実施形態では、吸着孔450Fの個数は、9個であるが、他の実施形態では、8個以下であっても良いし、10個以上であっても良い。
【0127】
図20に示すように、セラミック部材200Fは、複数のセラミック層として、5層のセラミック層293F,294F,295F,296F,297Fを備える。これらのセラミック層は、底面216側から、セラミック層293F、セラミック層294F、セラミック層295F、セラミック層296F、セラミック層297Fの順に積層されている。
【0128】
図21は、
図20の矢視F21−F21に対応する位置から見たセラミック層296Fを示す説明図である。
図21には、吸着電極372F,376Fが形成されたセラミック層296Fを図示した。
【0129】
吸着電極372Fおよび吸着電極376Fの各々は、相互に異なる極性の電位となるように構成されている。吸着電極372F,376Fは、吸着孔450Fを避けて形成されている。
図19、
図20および
図21に示すように、吸着電極372Fは、外側面224、基端段差面219、外側面225に沿って配置され、吸着電極376Fは、内側面226、内側面221、内側面227に沿って配置されている。吸着電極372Fおよび吸着電極376Fの各々は、Z軸方向から見て、対向面232Fに対して略均等に重なるように配置されている。
【0130】
図22は、
図20の矢視F22−F22に対応する位置から見たセラミック層294Fを示す説明図である。
図22には、負圧供給口412Fおよび吸着孔450Fの各々を、Z軸方向に沿ってセラミック層294F上に投影した位置に一点鎖線で図示した。第7実施形態の負圧連通路430Fは、負圧供給口412Fに対応する位置から内側面221へと進んだ後、先端面222および先端面223に向けて2つに分岐して9個の吸着孔450Fに対応する位置を通る。
【0131】
図21には、ランド332F,336Fおよびビア352F,356Fを破線で図示した。ランド332Fは、セラミック層295Fに形成した導体パターンであり、給電口312Fを通じて受電可能に構成されている。ランド336Fは、セラミック層295Fに形成した導体パターンであり、給電口316Fを通じて受電可能に構成されている。ビア352Fは、セラミック層296Fを貫通してランド332Fと吸着電極372Fとの間を電気的に接続する導体である。ビア356Fは、セラミック層296Fを貫通してランド336Fと吸着電極376Fとの間を電気的に接続する導体である。
【0132】
以上説明した第7実施形態によれば、セラミック層296F上に形成した吸着電極372F,376Fに対して、セラミック層295F上に形成したランド332F,336Fを経由し、ビア352F,356Fを通じて給電するため、セラミック層296F上における吸着電極372F,376Fの配置や形状の自由度を向上させることができる。その結果、静電力による吸着力を向上させることができ、ひいては、搬送装置10の搬送性能を向上させることができる。
【0133】
H.第8実施形態:
第8実施形態の説明では、第1実施形態と同様の構成については第1実施形態と同じ符号を用い、形状や配置などが異なるものの第1実施形態に対応する構成については第1実施形態の符号に英文字「G」を付した符号を用いる。
【0134】
図23は、第8実施形態におけるセラミック部材200Gの断面を示す説明図である。第8実施形態におけるセラミック部材200Gの上面は、
図17に示した第6実施形態のセラミック部材200Eと同様である。
図23には、
図17における矢視F18−F18に対応する位置から見たセラミック部材200Gの断面を図示した。
【0135】
第8実施形態のセラミック部材200Gは、負圧連通路430Gよりも+Z軸方向側に電熱体572G,576Gを形成した点を除き、第6実施形態と同様である。第8実施形態では、セラミック層292Gに負圧連通路430Gが形成されており、セラミック層292Gとセラミック層293Gとの間に電熱体572G,576Gが形成されている。
【0136】
以上説明した第8実施形態によれば、第1実施形態と同様に、静電力による吸着力を向上させることができる。また、電熱体572G,576Gと被搬送体90との間が負圧連通路430Gによって断熱されてしまうことを回避し、電熱体572G,576Gによる温度調整を一層効果的に行うことができる。
【0137】
I.第9実施形態:
第9実施形態の説明では、第1実施形態と同様の構成については第1実施形態と同じ符号を用い、形状や配置などが異なるものの第1実施形態に対応する構成については第1実施形態の符号に英文字「H」を付した符号を用いる。
【0138】
図24は、第9実施形態におけるセラミック部材200Hの上面を示す説明図である。第9実施形態のセラミック部材200Hは、3方向に延びた板状をなす点、対向面および吸着電極の形状が異なる点、負圧吸着のための構成および処理ガスを放出するための構成を備えていない点を除き、第1実施形態のセラミック部材200と同様である。
【0139】
セラミック部材200Hは、3方向に延びた対向面231Hを有する。対向面231Hにおける3箇所の先端近傍には、Z軸方向から見て円形の対向面232Hがそれぞれ配置されている。対向面232Hは、対向面231Hよりも+Z軸方向側に位置する。
【0140】
セラミック部材200Hの内部には、3つの対向面232Hに対応して吸着電極372H,376Hがそれぞれ形成されている。吸着電極372Hおよび吸着電極376Hの各々は、相互に異なる極性の電位となるように構成されている。Z軸方向から見て、吸着電極372Hは、内周が吸着電極376Hの外周よりも大きく、外周が対向面232Hの外周よりも大きな環状形をなし、吸着電極376Hは、対向面232Hの外周よりも小さな円形をなす。Z軸方向から見て、対向面232H、吸着電極372Hおよび吸着電極376Hにおける各円弧の中心は一致する。吸着電極372Hおよび吸着電極376Hの各々は、Z軸方向から見て、対向面232Hに対して略均等に重なるように配置されている。
【0141】
以上説明した第9実施形態によれば、第1実施形態と同様に、静電力による吸着力を向上させることができる。
【0142】
J.第10実施形態:
第10実施形態の説明では、第1実施形態と同様の構成については第1実施形態と同じ符号を用い、形状や配置などが異なるものの第1実施形態に対応する構成については第1実施形態の符号に英文字「I」を付した符号を用いる。
【0143】
図25は、第10実施形態におけるセラミック部材200Iの上面を示す説明図である。第10実施形態のセラミック部材200Iは、吸着電極の形状が異なる点を除き、第9実施形態のセラミック部材200Hと同様である。
【0144】
セラミック部材200Iは、3方向に延びた対向面231Iを有する。対向面231Iにおける3箇所の先端近傍には、Z軸方向から見て円形の対向面232Iがそれぞれ配置されている。対向面232Iは、対向面231Iよりも+Z軸方向側に位置する。
【0145】
セラミック部材200Iの内部には、3つの対向面232Iに対応して吸着電極372I,376Iがそれぞれ形成されている。吸着電極372Iおよび吸着電極376Iの各々は、相互に異なる極性の電位となるように構成されている。Z軸方向から見て、吸着電極372Iは、外周が対向面232Iの外周よりも大きな半円をなし、吸着電極376Iは、吸着電極372Iに対して線対称な半円をなす。Z軸方向から見て、対向面232I、吸着電極372Iおよび吸着電極376Iにおける各円弧の中心は一致する。吸着電極372Iおよび吸着電極376Iの各々は、Z軸方向から見て、対向面232Iに対して略均等に重なるように配置されている。
【0146】
以上説明した第10実施形態によれば、第1実施形態と同様に、静電力による吸着力を向上させることができる。
【0147】
K.第11実施形態:
第11実施形態の説明では、第1実施形態と同様の構成については第1実施形態と同じ符号を用い、形状や配置などが異なるものの第1実施形態に対応する構成については第1実施形態の符号に英文字「J」を付した符号を用いる。
【0148】
図26は、第11実施形態におけるセラミック部材200Jの上面を示す説明図である。第11実施形態のセラミック部材200Jは、吸着電極の形状が異なる点を除き、第9実施形態のセラミック部材200Hと同様である。
【0149】
セラミック部材200Jは、3方向に延びた対向面231Jを有する。対向面231Jにおける3箇所の先端近傍には、Z軸方向から見て円形の対向面232Jがそれぞれ配置されている。対向面232Jは、対向面231Jよりも+Z軸方向側に位置する。
【0150】
セラミック部材200Jの内部には、3つの対向面232Jに対応して吸着電極372J,376Jがそれぞれ形成されている。吸着電極372Jおよび吸着電極376Jの各々は、相互に異なる極性の電位となるように構成されている。Z軸方向から見て、吸着電極372Jおよび吸着電極376Jは、相互に噛み合う櫛状をなす。吸着電極372Jおよび吸着電極376Jの各々は、Z軸方向から見て、対向面232Jに対して略均等に重なるように配置されている。
【0151】
以上説明した第11実施形態によれば、第1実施形態と同様に、静電力による吸着力を向上させることができる。
【0152】
L.他の実施形態:
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において様々な形態で実施し得ることは勿論である。
【0153】
例えば、セラミック部材の全体形状は、略U字形の板状や、3方向に延びた板状に限るものではなく、円形、三角形、四角形、多角形など種々の形状であっても良い。また、対
向面、吸着電極、負圧連通路、吸着孔、電熱体、ランド、ビア、ガス連通路、およびガス放出孔の各々についての形状、配置、個数などは、上述した実施形態に限定されるものではなく、実施態様に応じて適宜変更しても良い。
【0154】
また、搬送装置10は、ガラス基板を用いて液晶基板を製造する液晶基板製造装置の一部を構成する装置であり、被搬送体90は、そのガラス基板であるとしても良い。また、搬送装置10は、ガラス基板を用いてプラズマ基板を製造するプラズマ基板製造装置の一部を構成する装置であり、被搬送体90は、そのガラス基板であるとしても良い。また、搬送装置10は、アモルファスシリコンウェハを用いて太陽電池基板を製造する太陽電池製造装置の一部を構成する装置であり、被搬送体90は、そのアモルファスシリコンウェハであるとしても良い。