(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6196617
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】遠心式インペラ及びターボ機械
(51)【国際特許分類】
F04D 29/16 20060101AFI20170904BHJP
F04D 29/44 20060101ALI20170904BHJP
F04D 29/28 20060101ALI20170904BHJP
【FI】
F04D29/16
F04D29/44 Y
F04D29/44 N
F04D29/28 P
F04D29/28 R
F04D29/28 C
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-522048(P2014-522048)
(86)(22)【出願日】2012年7月20日
(65)【公表番号】特表2014-521861(P2014-521861A)
(43)【公表日】2014年8月28日
(86)【国際出願番号】EP2012064341
(87)【国際公開番号】WO2013014106
(87)【国際公開日】20130131
【審査請求日】2015年7月17日
(31)【優先権主張番号】CO2011A000029
(32)【優先日】2011年7月26日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】505347503
【氏名又は名称】ヌオーヴォ ピニォーネ ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】イウリシ,ジョゼッペ
(72)【発明者】
【氏名】ブロジェッリ,リカルド
【審査官】
山本 崇昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭64−083891(JP,A)
【文献】
特開2002−228014(JP,A)
【文献】
特開昭49−064905(JP,A)
【文献】
実開昭62−044180(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 1/00−13/16
F04D 17/00−19/02
F04D 21/00−25/16
F04D 29/00−35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング(2)と、
少なくとも一つの遠心式インペラ(10)の入口側(11)から出口側(12)へ流れる流体のための前記インペラ(10)を含むロータ・アセンブリ(3)と、
前記遠心式インペラ(10)のインペラ入口(15)と前記ケーシング(2)との間に延在して、前記流体が前記インペラ(10)の高圧側から低圧側へ漏れるのを防ぐ入口シール(20)と、
を備え、
前記入口シール(20)は、前記インペラ(10)の前記入口側(11)に近い最初の部分(21a)と、前記出口側(12)に近い最後の部分(21e)とを少なくとも含む複数の部分(21a〜e)を含み、各部分(21a〜e)の径が、前記最後の部分(21e)から前記最初の部分(21a)に向かって増大する、
遠心式ターボ機械(1)。
【請求項2】
前記入口シール(20)はラビリンス形式のものであり、複数の歯(21a〜21e)が前記インペラ(10)の回転軸(X)へ向けて半径方向に延在している、請求項1に記載の遠心式ターボ機械(1)。
【請求項3】
前記入口シール(20)は前記ケーシング(2)の入口環(4)に装着され、前記インペラ(10)の吸込側に近い最初の部分(17a)と前記出口側に近い最後の部分(17e)とを少なくとも含んでいる前記インペラ入口(15)の領域(16)に対面しており、前記最後の部分(17e)は前記最初の部分(17a)よりも径が小さい、請求項1又は請求項2に記載の遠心式ターボ機械(1)。
【請求項4】
前記ラビリンス入口シール(20)は前記ケーシング(2)の入口環(4)に装着され、前記インペラ(10)の吸込側に近い最初の階段(17a)と前記出口側に近い最後の階段(17e)とを少なくとも含んでいる前記インペラ入口(15)の階段領域(16)に対面しており、前記最後の階段(17e)は前記最初の階段(17a)よりも径が小さい、請求項2に記載の遠心式ターボ機械(1)。
【請求項5】
前記インペラ入口(15)の前記入口シール(20)の歯(21a〜21e)の数は、前記階段領域(16)の階段(17a〜17e)の数に等しく、前記入口シール(20)は、当該入口シール(20)の各々の歯(21a〜21e)が前記インペラ入口(15)のそれぞれの一つの階段(17a〜17e)に対面するような方法で前記ケーシング(2)の前記入口環(4)に装着されている、請求項4に記載の遠心式ターボ機械(1)。
【請求項6】
前記階段領域(16)の階段(17a〜17e)の数は4と10との間にある、請求項4または5に記載の遠心式ターボ機械(1)。
【請求項7】
前記遠心式インペラ(10)はシュラウド形式のものであり、前記インペラ入口(15)の前記階段領域(16)は前記遠心式インペラ(10)のシュラウド(19)に設けられている、請求項4から請求項6の何れか一項に記載の遠心式ターボ機械(1)。
【請求項8】
当該遠心式ターボ機械(1)は圧縮機であり、前記インペラの前記入口側(11)は前記出口側(12)よりも低圧にある、請求項1から請求項7の何れか一項に記載の遠心式ターボ機械(1)。
【請求項9】
インペラ入口(15)を備えた遠心式ターボ機械(1)のための遠心式インペラ(10)であって、前記インペラ入口(15)は階段領域(16)を有し、前記階段領域(16)は、当該遠心式インペラ(10)の入口側(11)に近い最初の階段(17a)と、出口側(12)に近い最後の階段(17e)とを少なくとも有し、前記最後の階段(17e)は前記最初の階段(17a)よりも径が小さい、遠心式インペラ(10)。
【請求項10】
遠心式ターボ機械(1)の入口シール(20)を通る漏れを減少させる方法であって、前記遠心式ターボ機械(1)は、ケーシング(2)と、当該インペラ(10)の入口側(11)から出口側(12)へ流れる流体のための少なくとも一つの遠心式インペラ(10)を含むロータ・アセンブリ(3)と、前記遠心式インペラ(10)のインペラ入口(15)と前記ケーシング(2)との間に延在して、前記流体が前記ケーシング(2)と前記遠心式インペラ(10)との間で漏れるのを防ぐ入口シール(20)とを有し、該入口シール(20)は、前記インペラ(10)の前記入口側(11)に近い最初の部分(21a)、及び前記出口側(12)に近い最後の部分(21e)を含む複数の部分(21a〜e)を含み、各部分(21a〜e)の径が、前記最後の部分(21e)から前記最初の部分(21a)に向かって増大する、前記入口シール(20)を装着するステップを備えた方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心式ターボ機械、ターボ機械用の遠心式インペラ、及び関連する製造方法に関し、特に、排他的に述べるものではないが石油及びガス応用のためのものに関する。
【背景技術】
【0002】
遠心式ターボ機械は、作動流体と遠心式インペラとの間で機械的なエネルギを伝達する回転機械である。流体が典型的には気体状流体であるような石油及びガス応用では、遠心式ターボ機械は圧縮機及び膨張機(エキスパンダ)を含んでいる。圧縮機は、機械的エネルギの利用を通じて気体状流体の圧力を増大させるターボ機械である。エキスパンダは、気体状作動流体の圧力を利用して、流体を膨張させるインペラを用いることによりシャフトに対する機械的な仕事を生成するターボ機械である。
【0003】
非圧縮性流体、例えば水においては、遠心式ターボ機械はポンプとタービンとを含んでおり、それぞれ圧縮機及びエキスパンダに類似した方法で流体とインペラとの間でエネルギを伝達する。
【0004】
一般的には、全ての場合において、作動流体は、インペラの回転軸からインペラの周辺の円周エッジへ配向した半径方向外向き方向に沿って遠心式インペラに流入することにより、エネルギを遠心式機械と交換する。
【0005】
具体的には、圧縮機ターボ機械の遠心式インペラは、ターボ機械を駆動するモータによって供給される機械的なエネルギを気体状作動流体に伝達し、気体状作動流体は遠心式インペラにおいて当該流体を加速することにより圧縮される。インペラによって作動流体に与えられる運動エネルギは、流体の外向き移動がディフューザ及び機械ケーシングによって閉じ込められているときには圧力エネルギへ変換される。
【0006】
遠心式ターボ機械に単一のインペラが設けられている場合には、しばしば単段ターボ機械と呼ばれ、複数のインペラが直列で設けられている場合には、しばしば多段遠心式ターボ機械と呼ばれる。
【0007】
多段遠心式圧縮機100の従来技術の実施形態を
図1に全体的な断面図として示し、
図2及び
図3には、さらに詳細な断面図として示す。圧縮機100はケーシング102に含まれており、ケーシング102の内部にはシャフト101及び複数のインペラ110が装着されている。シャフトは圧縮機100の回転軸Xに沿って延在する。シャフト101及びインペラ110はロータ・アセンブリ103を含んでおり、ロータ・アセンブリ103は、二つの軸受け150及び160を通じて支持されて、これらの軸受けが、ロータ・アセンブリが回転軸Xの周りを回転することを可能にする。多段圧縮機100は、複数の段107(
図1の実施形態では七つの段107)を含んでおり、各々の段107が複数のインペラ110の一つのインペラと、ケーシング102の一部とを含み、ここにインペラ110の上流に位置する入口ダクト170及びインペラ110の下流に位置する出口ダクト180が設けられている。インペラ110は、典型的な閉鎖設計構成を有し、シャフト101を閉鎖式に包囲するインペラ・ハブ113と、後部インペラ円板114と前部シュラウド119との間に延在する複数の羽根108とを含んでいる。インペラ110は、前部シュラウド109に設けられたインペラ入口(インペラ・アイ)115によって画定される入口低圧側111と、インペラ110の周辺の円周エッジによって画定される出口高圧側112とを含んでいる。
【0008】
インペラ110の動作を通じて多段圧縮機100の各々の段107が動作して、入口ダクト170に沿って流れる流入プロセス・ガスを取り入れ、インペラ110の入口低圧側111から出口高圧側112にプロセス・ガスを押し出して、引き続き出口ダクト180を通して流入圧よりも高い流出圧で排出する。
【0009】
プロセス・ガスは、例えば二酸化炭素、硫化水素、ブタン、メタン、エタン、プロパン、液化天然ガスの任意の一つであってもよいし、これらの組み合わせであってもよい。
【0010】
流体が、ケーシング102とインペラ110との間の空間で出口高圧側112から入口低圧側111へ漏れるのを防ぐために、各々の遠心式インペラ110のインペラ入口115とケーシング102との間にインペラ入口シール120が設けられている。ケーシング102はインペラ入口105に対面した入口環104を含んでおり、ケーシング102にはインペラ入口シール120を収容するための空洞部が設けられている。
【0011】
インペラ入口シール120はラビリンス形式のものであって、複数の歯121a〜121e(
図1〜
図3の実施形態では5枚の歯121a〜121e)を有している。各々の歯121a〜121eが、回転軸Xへ向けて半径方向に、且つ回転軸Xの周りに円周方向に延在している。歯121a〜121eの包絡外形は円錐形状であって、平均径122を有する。入口シール120はケーシング102の筐体に装着されて、入口低圧側111に近い最初の歯121aが出口高圧側111に近い最後の(第五の)歯121eよりも径が小さくなるような方法で配置されている。インペラ入口シール120の形状に合わせるために、インペラ入口115に階段領域116が設けられており、各々が複数の歯121a〜121eのそれぞれの1枚の歯に対面する複数の階段117a〜117e(
図1〜
図3の実施形態では五つの階段117a〜117e)を含んでいる。複数の階段117a〜117eは、インペラ110の入口低圧側111に近い最初の階段117aを含んでおり、階段117aは、出口高圧側112に近い最後(第五)の階段117eの径123eよりも小さい径123aを有する。
【発明の概要】
【0012】
出口側から入口側へ漏れる流体の部分は、インペラを通じて再び圧縮されなければならず、このようにしてターボ機械の効率を低下させるという理由で、入口シール120を通る流体漏れを可能な限り減少させなければならない。
【0013】
インペラ110と同じ設計を有するインペラをエキスパンダにも用いることができるが、主な相違は気体状流体がインペラにおいて膨張することであり、すなわちインペラ入口に対応する入口側が高圧側となり、周辺の円周エッジに対応する出口側が低圧側となる。エキスパンダでは、インペラ入口シールは、流体が、ケーシングとインペラとの間の空間で入口高圧側から入口低圧側へ漏れるのを防ぐ。入口側から出口側へ漏れる流体の部分はインペラを通って流れず、従ってシャフトに対する機械的な仕事を生成することには寄与せず、このようにしてターボ機械の効率を低下させるという理由で、エキスパンダにおいても入口シールを通る流体漏れを可能な限り減少させなければならない。
【0014】
遠心式インペラのインペラ入口を通る漏れ流を減少させるために改良型シール系を設計して提供することが望ましい。
【0015】
本発明の目的は、ターボ機械のケーシングとインペラとの間の漏れ流を減少させる改良型インペラ入口シール系を提供する遠心式ターボ機械及び遠心式インペラを製造することにある。
【0016】
第一の実施形態によれば、本発明は、ケーシングと、当該インペラの入口側から出口側へ流れる流体のための少なくとも一つの遠心式インペラを含むロータ・アセンブリと、遠心式インペラのインペラ入口とケーシングとの間に延在して、流体がケーシングと遠心式インペラとの間で漏れるのを防ぐ入口シールとを含む遠心式ターボ機械を提供することにより上述の目的を達成し、入口シールは、インペラの入口側に近い最初の部分と、出口側に近い最後の部分とを少なくとも有し、最後の部分は最初の部分よりもよりも径が小さい。
【0017】
第一の実施形態のさらに有利な特徴によれば、入口シールはラビリンス形式のものであって、複数の歯がインペラの回転軸へ向けて半径方向に延在している。
【0018】
第一の実施形態のさらに有利な特徴によれば、ラビリンス入口シールは、ケーシングの入口環に装着されて、インペラの吸込側に近い最初の階段と出口側に近い最後の階段とを少なくとも有するインペラ入口の階段領域に対面しており、最後の階段は最初の階段よりも径が小さく、入口シールの歯の数は、インペラ入口の階段領域の階段の数と等しく、入口シールは、入口シールの各々の歯がインペラ入口のそれぞれの一つの階段に対面するような方法でケーシングの入口環に装着されている。
【0019】
第一の実施形態のさらに有利な特徴によれば、インペラ入口の階段領域の階段の数は4と10との間にある。
【0020】
第一の実施形態のさらに有利な特徴によれば、遠心式インペラはシュラウド形式のものであって、インペラ入口の階段領域は遠心式インペラのシュラウドに設けられる。
【0021】
第一の実施形態のさらに有利な特徴によれば、遠心式ターボ機械は圧縮機であり、インペラの入口側は出口側よりも低圧である。
【0022】
第二の実施形態では、本発明は、インペラ入口を含む遠心式ターボ機械のための遠心式インペラを提供し、インペラ入口は階段領域を有し、階段領域は、遠心式インペラの入口側に近い最初の階段と、出口側に近い最後の階段とを少なくとも有し、最後の階段は最初の階段よりも径が小さい。
【0023】
上の各実施形態におけるインペラ入口の設計及びインペラ入口シールの装着は、インペラの入口の径を減少させることなく、すなわちインペラを通るガス流を変更することなくインペラ入口及びインペラ入口シールの平均径を減少させることを可能にする。インペラ入口を通る流体漏れはインペラ入口の平均径に比例するので、かかる径の減少によって流体漏れが減少し、このようにして本発明の目的を達成する。
【0024】
本発明による新たな設計が可能にするインペラの重量の減少によってさらに他の利点が決定される。インペラを軽量化することにより、インペラのロータダイナミック特性を改善し、軸方向スラストをさらに容易に均衡させることが可能である。
【0025】
本発明のさらにもう一つの目的は、上述のターボ機械及び上述のインペラの製造のための方法を開発することにある。
【0026】
第三の実施形態によれば、本発明は、遠心式ターボ機械の入口シールを通る漏れを減少させる方法を提供することにより、このさらにもう一つの目的を達成し、遠心式ターボ機械は、ケーシングと、当該インペラの入口側から出口側へ流れる流体のための少なくとも一つの遠心式インペラを含むロータ・アセンブリと、遠心式インペラのインペラ入口とケーシングとの間に延在して、流体がケーシングと遠心式インペラとの間で漏れるのを防ぐ入口シールとを有し、入口シールは、最初の部分と、該最初の部分よりも径が小さい最後の部分とを少なくとも有し、この方法は、インペラの入口側に近い最初の部分、及び出口側に近い最後の部分を有するラビリンス入口シールを装着するステップを含んでいる。
【0027】
上で本発明の第一及び第二の実施形態に関して記載されている同じ利点が第三の実施形態によって達成される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明の他の目的、特徴及び利点は、以下の図面と共に本発明の各実施形態の以下の記載を読むと明らかとなろう。
【
図1】従来の遠心式ターボ機械の長手方向断面図である。
【
図2】
図1の遠心式ターボ機械の重要な部分を示す長手方向断面図である。
【
図3】
図1及び
図2の遠心式ターボ機械の詳細な構成要素を示す長手方向断面図である。
【
図4】本発明による遠心式ターボ機械の長手方向断面図である。
【
図5】
図3の図に対応する長手方向断面図であって、
図3の遠心式ターボ機械の本発明による遠心式インペラを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の第一及び第二の実施形態を、それぞれ
図4及び
図5に示す。
【0030】
図4を参照して述べると、遠心式ターボ機械1が、固定ケーシング2とロータ・アセンブリ3とを含む遠心式多段圧縮機によって構成されている。ケーシング2及びロータ・アセンブリ3は、直列に接続された複数の(七つの)段7に分割されている。以下に記載されない部材については、圧縮機1は従来通りであって上述の
図1〜
図3の圧縮機100と同等であると考えられるべきである。
【0031】
各々の段7が、インペラ10の入口低圧側11から出口高圧側12に流れる気体状流体のための遠心式インペラ10を含んでいる。遠心式インペラ10はシュラウド形式のものであって、インペラ10のインペラ入口15が設けられたシュラウド19を含んでいる。インペラ入口15は入口低圧側11を画定しており、ここを通って流体がインペラ10の回転軸Xに実質的に平行な方向に沿ってインペラ10に流入する。流体がインペラ10から流出する出口高圧側12は、インペラ10の周辺の円周エッジによって画定される。
【0032】
各々の段7はさらに、ラビリンス形式の入口シール20を含んでおり、入口シール20は遠心式インペラ10のインペラ入口15とケーシング2の入口環4との間に延在して、流体がケーシング2と遠心式インペラ10との間で出口高圧側12から入口低圧側11へ漏れるのを防いでいる。
【0033】
ラビリンス入口シール20は、インペラ10の回転軸Xへ向けて半径方向に、且つ回転軸Xの周りで円周方向に延在する複数の歯21a〜21e(
図4及び
図5の実施形態では5枚の歯21a〜21e)を有している。歯21a〜21eの包絡外形は円錐形状であって平均径22を有する。複数の歯21a〜21eは、インペラ10の入口側11に近い最初の歯21aと、出口側12に近い最後の歯21eとを含んでおり、最後の歯21eは最初の部分21aよりも径が小さい。
【0034】
ラビリンス入口シール2は、ケーシング2の入口環4の空洞部に装着されて、インペラ入口15の階段領域16に対面している。階段領域16は、インペラ10の吸込側に近い最初の階段17aと、出口側に近い最後の階段17eとを含んでいる。ラビリンス入口シール20の外形に合わせるために、最後の階段17eは、階段領域16の最初の階段17aの対応する径23aよりも小さい径23eを有する。
【0035】
好ましくは、入口シール20の歯21a〜21eの数は、インペラ入口15の階段領域16の階段17a〜17eの数に等しく、入口シール20は、入口シール20の複数の歯21a〜21eの各々の歯がインペラ入口15の複数の階段17a〜17eのそれぞれの一つの階段に対面するような方法で入口環4に装着されている。
【0036】
好ましくは、階段領域16の階段17a〜17eの数及びラビリンス入口シール20の歯21a〜21eの数は4と10との間にある。
【0037】
本発明は、遠心式エキスパンダ応用にも用いることができ、この場合には入口シールは、気体状流体が入口高圧側から出口低圧側へケーシングと遠心式インペラとの間で漏れるのを防ぐ。
【0038】
さらに一般的には、本発明を圧縮性流体及び非圧縮性流体のための遠心式ターボ機械に用いることもでき、後者のターボ機械はポンプ及び水車を含んでいる。
【0039】
図3の従来の解決法を
図5の本発明の解決法と比較することにより、階段領域116、16の最初の階段117a、17aの径の値が同じであるときに、インペラ入口シール20の平均径22の値は従来のインペラ入口シール120の平均径122よりも小さいことが明らかである。これにより、インペラ入口シール20を通る漏れ流が減少する。
【0040】
さらに、従来の遠心式インペラ110(
図3)を本発明の遠心式インペラ10(
図5)と比較することにより、二つのインペラ110、10が同じ流動形状を有するときには、インペラ10の重量はインペラ110のの重量よりも小さいことも明らかである。実際に、階段領域116、16の最初の階段117a、17aの径の値が同じであるときに、階段領域16の第二の階段から第五の階段17b〜17eの径の値は、従来の階段領域16の第二の階段から第五の階段117b〜117eの径の値よりも小さい。これにより、重量の減少は典型的には約10%となる。軽量化する結果として、遠心式インペラ10は、改善されたロータダイナミック特性、及び軸方向スラストの改善された均衡を示す。
【0041】
本発明の第三の実施形態によれば、上述の遠心式ターボ機械1の入口シール20を通る漏れを減少させる方法が、遠心式インペラ10の入口側11に近い最初の歯21a、及び出口側12に近い最後の部分21eを有するラビリンス入口シール20を装着するステップを含んでいる。
【0042】
本発明の全ての実施形態が、上に記載する目的及び利点を達成することを可能にする。
【0043】
加えて、本発明はさらに他の利点を達成することを可能にする。具体的には、上述の方法は、複数の遠心式インペラ110及び複数の入口シール120を複数のインペラ10及び複数の入口シール20で置き換えることにより従来のターボ機械100を改造するのに用いられることができ、このようにして従来のターボ機械の他の構成要素を改変することなく本発明のターボ機械1を得ることができる。
【0044】
一般的には、本発明の全ての実施形態について、さらにもう一つの利点は、階段領域16の幾何学的パラメータすなわち階段の高さ及び幅が従来の応用と同じである場合には、、単に階段を180°だけ回転させて、歯がインペラの入口側に近いほど大きい径を有するようにしてケーシングの入口環に装着することにより、従来の応用に用いられている同じ入口シールを依然として用い得ることにある。
【0045】
この書面の記載は、最適な態様を含めて発明を開示し、また任意の装置又はシステムを製造して利用すること及び任意の組み込まれた方法を実行することを含めてあらゆる当業者が発明を実施することを可能にするように実例を用いている。特許付与可能な発明の範囲は特許請求の範囲によって画定されており、当業者に想到される他の実例を含み得る。かかる他の実例は、特許請求の範囲の書字言語に相違しない構造要素を有する場合、又は特許請求の範囲の書字言語と非実質的な相違を有する等価な構造要素を含む場合には、特許請求の範囲内にあるものとする。
【符号の説明】
【0046】
1:遠心式ターボ機械
2、102:ケーシング
3、103:ロータ・アセンブリ
4、104:入口環
7、107:段
10、110:インペラ
11、111:入口低圧側
12、112:出口高圧側
15、115:インペラ入口
16、116:階段領域
17、117:階段
19、119:シュラウド
20、120:入口シール
21、121:歯
22、122:平均径
23a、123a:最初の階段の径
23e、123e:最後の階段の径
100:多段遠心式圧縮機
101:シャフト
108:羽根
113:インペラ・ハブ
114:インペラ円板
150、160:軸受け
170:入口ダクト
180:出口ダクト