【文献】
Best Practice & Research Clinical Haematology, 2011, Vol.24, p.393-401
【文献】
ALBRECHT JANA,CANCER IMMUNOLOGY, IMMUNOTHERAPY,2011年 2月,V60 N2,P235-248
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
セントラルメモリーTリンパ球(Tcm)表現型を有するGVHD非誘導の抗第三者細胞を含む単離された細胞集団を作製する方法であって、前記細胞は寛容性誘導細胞であり、かつ/または、抗疾患活性を備え、かつ、リンパ節へのホーミングを移植後に行うことができ、前記方法が、
(a)CD4+細胞および/またはCD56+細胞を枯渇化することができる作用因で末梢血単核細胞(PBMC)を処理して、CD8+T細胞を得ること、
(b)前記CD8+T細胞をIL−21の存在下において第三者抗原(1つまたは複数)と接触させて、その結果、抗原反応性細胞の濃縮を可能にするようにすること、および、
(c)工程(b)から生じる前記細胞を、抗原非存在の環境で、IL−21、IL−15およびIL−7の存在下において培養して、その結果、前記セントラルメモリーTリンパ球(Tcm)表現型を含む細胞の増殖を可能にするようにし、それにより、前記単離された細胞集団を作製すること
を含む方法。
工程(b)から生じる前記細胞を、工程(b)の後で、工程(c)の前に、IL−21、IL−15およびIL−7の存在下において第三者抗原(1つまたは複数)とともに培養することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
前記第三者抗原(1つまたは複数)が、第三者細胞、細胞抗原、ウイルス抗原、細菌抗原、タンパク質抽出物、自己の提示細胞によって、非自己の提示細胞によって、または、人工小胞もしくは人工抗原提示細胞に提示される精製されたタンパク質および合成されたペプチドからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
セントラルメモリーTリンパ球(Tcm)表現型を有するGVHD非誘導の抗第三者細胞を含む単離された細胞集団を作製する方法であって、前記細胞は寛容性誘導細胞であり、かつ/または、移植片対白血病(GVL)活性を備え、かつ、リンパ節へのホーミングを移植後に行うことができ、前記方法が、
(a)非接着性の末梢血単核細胞(PBMC)を、CD4+細胞および/またはCD56+細胞を枯渇化することができる作用因により処理して、その結果、CD8+T細胞を得るようにすること、
(b)前記CD8+T細胞をIL−21の存在下において第三者樹状細胞と12時間〜5日間接触させて、その結果、抗原反応性細胞の濃縮を可能にするようにすること、
(c)工程(b)から生じる前記細胞を、IL−21、IL−15およびIL−7の存在下において前記第三者樹状細胞とともに12時間〜3日間培養すること、および、
(d)工程(c)から生じる前記細胞を、抗原非存在の環境で、IL−21、IL−15およびIL−7の存在下において5日間〜20日間培養して、その結果、前記セントラルメモリーTリンパ球(Tcm)表現型を含む細胞の増殖を可能にするようにし、それにより、前記単離された細胞集団を作製すること
を含む方法。
セントラルメモリーTリンパ球(Tcm)表現型を有するGVHD非誘導の抗第三者細胞を含む単離された細胞集団を作製する方法であって、前記細胞は抗疾患活性を備え、かつ、リンパ節へのホーミングを移植後に行うことができ、前記方法は、
(a)非接着性の末梢血単核細胞(PBMC)を、CD4+細胞および/またはCD56+細胞を枯渇化することができる作用因により処理して、その結果、CD8+T細胞を得るようにすること、
(b)前記CD8+T細胞をIL−21の存在下において非同系樹状細胞と12時間〜5日間接触させて、その結果、抗原反応性細胞の濃縮を可能にするようにすること、
(c)工程(b)から生じる前記細胞を、IL−21、IL−15およびIL−7の存在下において前記非同系樹状細胞とともに12時間〜3日間培養すること、および、
(d)工程(c)から生じる前記細胞を、抗原非存在の環境で、IL−21、IL−15およびIL−7の存在下において5日間〜20日間培養して、その結果、前記セントラルメモリーTリンパ球(Tcm)表現型を含む細胞の増殖を可能にするようにし、それにより、前記単離された細胞集団を作製すること
を含む方法。
CD45RA+細胞および/またはCD45RO−細胞を、工程(a)の後で、工程(b)の前に前記PBMCから選択することをさらに含む、請求項9または10に記載の方法。
前記活性化された細胞について選択することが、CD137+細胞および/またはCD25+細胞を選択することによって行われる、請求項17または18に記載の方法。
前記IL−21、IL−15およびIL−7の存在下において前記第三者抗原(1つまたは複数)とともに培養することが12時間〜3日間行われる、請求項5に記載の方法。
前記抗原非存在の環境で、前記IL−21、IL−15およびIL−7の存在下において培養することが7日間〜11日間行われる、請求項1,9または10に記載の方法。
前記同種反応性細胞を枯渇化することが、前記セントラルメモリーTリンパ球(Tcm)を含む前記細胞を宿主の抗原提示細胞(APC)と接触させた後でCD137+細胞および/またはCD25+細胞を枯渇化することによって行われる、請求項24または25に記載の方法。
セントラルメモリーTリンパ球(Tcm)表現型を有するGVHD非誘導の抗第三者細胞を含む単離された細胞集団であって、前記細胞は寛容性誘導細胞であり、かつ/または、抗疾患活性を備え、かつ、リンパ節へのホーミングを移植後に行うことができ、請求項1〜28に記載の方法に従って作製され、Tセントラルメモリー表現型を有する前記抗第三者細胞は、CD3+、CD8+、CD62L+、CD45RA−、CD45RO+のシグナチャーを含み、前記単離された細胞集団の少なくとも50%がCD3+CD8+細胞であり、その少なくとも50%が前記シグナチャーを有する、単離された細胞集団。
悪性疾患、ウイルス性疾患および自己免疫疾患からなる群から選択される疾患をその必要性のある対象において処置するために識別される医薬の製造のための、請求項29に記載の単離された細胞集団の治療効果的な量の使用。
前記細胞移植片または組織移植片は、HLA同一の同種ドナー、HLA非同一の同種ドナー、同系ドナー、および、異種ドナーからなる群から選択されるドナーに由来する、請求項32に記載の使用。
前記細胞移植片または組織移植片が、肝臓、膵臓、脾臓、腎臓、心臓、肺、皮膚、腸、および、リンパ系/造血系の組織または臓器からなる群から選択される、請求項32に記載の使用。
前記細胞は、IL−21の非存在下において第三者抗原(1つまたは複数)と接触させられた細胞と比較して増大した増殖を示す、請求項29に記載の単離された細胞集団。
【図面の簡単な説明】
【0079】
本明細書では本発明のいくつかの実施形態を単に例示し添付の図面を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の実施形態を例示考察することだけを目的としていることを強調するものである。この点について、図面について行う説明によって、本発明の実施形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
【0080】
【
図1A-1B】
図1A〜
図1Bは、ヒトの自己状況(
図1A)および同種状況(
図1B)を示す概略図である。注目すべきことに、これら2つの状況は、骨髄(BM)ドナーの起源(宿主対同種)、Tcm作製に関与する応答細胞(宿主対同種)および刺激細胞(任意の同種ドナー対宿主MHC交差非反応性第三者)において互いに異なる。
【0081】
【
図2A-2B】
図2A〜
図2Bは、マウスの同系状況(
図2A)および同種状況(
図2B)を示す概略図である。注目すべきことに、これら2つの状況は、BMドナーの起源(同系またはF1対同種)、Tcm作製に関与する応答細胞(同系またはF1対同種)および刺激細胞(同種対第三者)において互いに異なる。
【0082】
【
図3A】
図3Aは、Tcmを作製するための自己ヒト用プロトコル(
図3A)を同系マウス用プロトコル(
図3B)との比較で示す概略図である。
【
図3B】
図3Bは、同系マウス用プロトコル(
図3B)をTcmを作製するための自己ヒト用プロトコル(
図3A)との比較で示す概略図である。
【0083】
【
図4A-4C】
図4A〜
図4Cは抗第三者セントラルメモリー作製(「参照コントロール実験」)の速度論を示す。ナイーブCD8 T細胞を、放射線照射された同種第三者DCにより、IL−21を含有する培地において4:1の比率で3日間刺激した。その後で、細胞はさらなる活性化を何ら受けず、細胞を、IL−7およびIL−15を含有する培地において12.5日目まで拡大培養した。7.5日目、10.5日目および12.5日目に、細胞を、FACS分析を使用して表現型(表面マーカー発現)(
図4A)、および、CD8 T細胞からのTcm(CD62L+CD45RO+)の割合(
図4B)について評価し、トリパンブルー排除によって細胞数について評価した(
図4C)。それぞれの時点について、データは、n回の独立した実験の平均±SEを表す。
【0084】
【
図5A】
図5Aは、同種DCによる初回抗原刺激の役割を明らかにする典型的な実験を示す。注目すべきことに、IL−21単独、または、IL−7+IL−15は、DCの初回抗原刺激を伴わない場合、セントラルメモリー表現型をナイーブCD8 T細胞において誘導せず、また、それらの拡大培養を十分には支援していない。
図5Aは、放射線照射された同種第三者DCにより、IL−21を含有する培地において4:1の比率で3日間刺激されたナイーブCD8 T細胞を例示する。その後で、細胞はさらなる活性化を何ら受けず、細胞をIL−7およびIL−15とともに13日目まで拡大培養した(“参照コントロール群”=d(0−3)IL21+DC d(3−13)IL7+IL15)。
【
図5B】
図5Bは、同種DCによる初回抗原刺激の役割を明らかにする典型的な実験を示す。注目すべきことに、IL−21単独、または、IL−7+IL−15は、DCの初回抗原刺激を伴わない場合、セントラルメモリー表現型をナイーブCD8 T細胞において誘導せず、また、それらの拡大培養を十分には支援していない。
図5Bは、IL−21とともに、刺激の非存在下、10日目または13日目までそれぞれ培養されたナイーブCD8 T細胞を例示する。
【
図5C】
図5Cは、同種DCによる初回抗原刺激の役割を明らかにする典型的な実験を示す。注目すべきことに、IL−21単独、または、IL−7+IL−15は、DCの初回抗原刺激を伴わない場合、セントラルメモリー表現型をナイーブCD8 T細胞において誘導せず、また、それらの拡大培養を十分には支援していない。
図5Cは、IL−7およびIL−15の組合せとともに、刺激の非存在下、10日目または13日目までそれぞれ培養されたナイーブCD8 T細胞を例示する。
【0085】
【
図6A-6B】
図6A〜
図6Bは、参照コントロール群と比較してTcmレベルおよび拡大倍数に対する平均相対的影響によって明らかにされる、同種DCによる初回免疫刺激の役割を示す。ナイーブCD8 T細胞を、放射線照射された同種第三者DCにより、IL−21を含有する培地において4:1の比率で3日間刺激した。その後で、細胞はさらなる活性化を何ら受けず、細胞をIL−7およびIL−15とともに13日目まで拡大培養した(“参照コントロール群”=d(0−3)IL21+DC d(3−13)IL7+IL15)。代替として、ナイーブCD8 T細胞を、IL−21とともに、または、IL−7およびIL−15の組合せとともに、刺激の非存在下、13日目まで培養した。細胞をトリパンブルー排除によって細胞数について評価し(
図6A)、FACS分析を使用してCD8 T細胞からのTcm(CD62L+CD45RO+)の割合について評価した(
図6B)。それぞれの時点について、データは、n回の独立した実験の平均±SEを表す。
【0086】
【
図7A】
図7Aは、抗第三者Tcmの初回免疫刺激段階および拡大培養段階におけるIL−21の役割を明らかにする典型的な実験を示す。注目すべきことに、初回免疫刺激段階からのIL−21の除去は拡大培養およびTcm誘導の両方を低下させ、一方、培養期間中を通したIL−21の存在はTcm誘導を増大させた。
図7Aは、放射線照射された同種第三者DCにより、IL−21を含有する培地において4:1の比率で3日間刺激されたナイーブCD8 T細胞を例示する。その後で、細胞はさらなる活性化を何ら受けず、細胞をIL−7およびIL−15とともに13日目まで拡大培養した(“参照コントロール群”=d(0−3)IL21+DC d(3−13)IL7+IL15)。
【
図7B】
図7Bは、抗第三者Tcmの初回免疫刺激段階および拡大培養段階におけるIL−21の役割を明らかにする典型的な実験を示す。注目すべきことに、初回免疫刺激段階からのIL−21の除去は拡大培養およびTcm誘導の両方を低下させ、一方、培養期間中を通したIL−21の存在はTcm誘導を増大させた。
図7Bは、放射線照射された同種第三者DCにより、IL−21の非存在下において4:1の比率で3日間刺激されたナイーブCD8 T細胞を例示する。その後で、細胞はさらなる活性化を受けず、細胞をIL−7およびIL−15とともに13日目まで拡大培養した。
【
図7C】
図7Cは、抗第三者Tcmの初回免疫刺激段階および拡大培養段階におけるIL−21の役割を明らかにする典型的な実験を示す。注目すべきことに、初回免疫刺激段階からのIL−21の除去は拡大培養およびTcm誘導の両方を低下させ、一方、培養期間中を通したIL−21の存在はTcm誘導を増大させた。
図7Cは、放射線照射された同種第三者DCにより、IL−21の非存在下において4:1の比率で3日間刺激されたナイーブCD8 T細胞を例示する。その後で、細胞は放射線照射された同種第三者DCにより、4:1の比率で、初回免疫刺激段階(IL−21単独)および拡大培養段階(IL−7およびIL−15と一緒)の両方においてIL−21の連続した存在とともに刺激した(
図7C)。
【0087】
【
図8A-8B】
図8A〜
図8Bは、最適なTcm産生(数回の独立した実験の平均)のためにIL−21が要求されることを示す。ナイーブCD8 T細胞を上記のように処理し、培養物をトリパンブルー排除によって細胞数について評価し(
図8A)、FACS分析を使用してCD8 T細胞からのTcm(CD62L+CD45RO+)の割合について評価した(
図8B)。それぞれの実験の結果が別々に示され、線はn回の実験についての平均結果を示している。
【0088】
【
図9A-9B】
図9A〜
図9Bは、Tcm表現型の誘導およびロバストな拡大培養のための最適な応答細胞/DC比率を示す。4×10
5個のナイーブCD8 T細胞を、増大する数での放射線照射された同種第三者DCに対して、IL−21の存在下において3日間刺激した。その後で、細胞はさらなる活性化を何ら受けず、細胞をIL−7およびIL−15とともに13日目まで拡大培養した(“参照コントロール群”=d(0−3)IL21+10000DC d(3−13)IL7+IL15)。培養物をトリパンブルー排除によって細胞数について評価し(
図9A)、FACS分析を使用してCD8 T細胞からのTcm(CD62L+CD45RO+)の割合について評価した(
図9B)。それぞれの実験の結果が別々に示され、線はn回の実験についての平均結果を示している。
【0089】
【
図10】
図10は、CD8+T細胞およびナイーブCD8+CD45RA+T細胞の濃縮に対する種々のGMP規格試薬の影響の評価を示す。ドナーPBMCを、接着性の骨髄性細胞を除くために特別に設計されたプレートにおける一晩のインキュベーションによって接着性細胞から枯渇させ(上段パネル)、0日目において、非接着性細胞を4つの試験群に分割し、それぞれを異なる磁気的選別プロトコルに供した。細胞をFACS分析によって細胞組成およびTcm表現型について評価した。左側の欄における結果(CD45ROおよびCD45RA)は、CD3+CD8+細胞に対してゲート制御される。結果は、行われた2回の独立した実験からの典型的な実験を表す。
【0090】
【
図11】
図11は、Tcm表現型を有するCD8+ T細胞の割合と、NK細胞およびNKT細胞による混入とに対する、CD8 T細胞の単離のために使用された種々のGMP規格試薬の影響を第三者DCによる刺激の7日後において示す典型的な実験を示す。IL−7単独との培養で維持された刺激されていない細胞(上段パネル)を参照として使用した。最も左側の欄における結果(CD45ROおよびCD45RA)および最も右側の欄における結果(CD62LおよびCD45RO)はCD3+CD8+細胞に対してゲート制御される。
【0091】
【
図12】
図12は、Tcm表現型を有するCD8+ T細胞の割合と、NK細胞およびNKT細胞による混入とに対する、CD8 T細胞の単離のために使用された種々のGMP規格試薬の影響を第三者DCによる刺激の14日後において示す典型的な実験を示す。IL−7単独との培養で維持された刺激されていない細胞(上段パネル)を参照として使用した。最も左側の欄における結果(CD45ROおよびCD45RA)および最も右側の欄における結果(CD62LおよびCD45RO)はCD3+CD8+細胞に対してゲート制御される。
【0092】
【
図13A-13B】
図13A〜
図13Bは、Tcm表現型を有するCD8 T細胞のレベルに対する、CD8 T細胞の単離のために使用された種々のGMP規格試薬の影響を第三者DCに対する7日間の刺激の後において示す。CD3+CD8+NKT− T細胞の平均割合(
図13A)およびTcmの平均割合(
図13B)が、4つすべての試薬(CD4/CD56/CD19/CD45RA)を使用する最適なコントロール群において達成されるレベルのパーセントとして示される。
【0093】
【
図14A-14C】
図14A〜
図14Cは、Tcm表現型を有するCD8 T細胞の最終的産生量に対する、CD8 T細胞の単離のために使用された種々のGMP規格試薬の影響を第三者DCに対する10日間の刺激の後において示す。10日目における0日目からの平均拡大倍数(
図14A)、および、磁気的選別後の平均産生量(
図14B)が、4つすべての選択試薬(CD4/CD56/CD19/CD45RA)を使用する最適なコントロール群において達成されるレベルのパーセントとして示される。10日目におけるTcmの産生量(
図14C)を、(0日目における)磁気的選別後の産生量に(10日目における)0日目からの拡大倍数を乗じることによって計算した。
【0094】
【
図15】
図15は、同種DC刺激細胞のための供給源を変更することはTcm細胞の拡大培養能に対するほんの些細な影響を有しただけであったことを示す。CD8 T細胞を、解凍された白血球除去輸血から、CliniMacsシステムを使用するCD4+細胞およびCD56+細胞の枯渇化によって濃縮した。濃縮されたCD8 T細胞をその後、2つの試験群に分割し、それぞれを、異なる放射線照射された同種第三者DCにより、IL−21を含有する培地において6:1の比率で、培養バッグにおいて3日間刺激した。その後で、細胞はさらなる活性化を何ら受けず、細胞を、IL−7、IL−15およびIL−21を含有する培地において11日目まで拡大培養した。培養の5日目、7日目、9日目および11日目に、細胞数をトリパンブルー排除によって求めた。
【0095】
【
図16A】
図16Aは、同種DC刺激細胞のための供給源を変更することは細胞組成に対するほんの些細な影響を有しただけであったことを示す。CD8 T細胞を、解凍された白血球除去輸血から、CliniMacsシステムを大規模単離のために使用するCD4+細胞およびCD56+細胞の枯渇化によって濃縮した。濃縮されたCD8 T細胞をその後、2つの試験群に分割し、それぞれを、異なる放射線照射された同種第三者DCにより、IL−21を含有する培地において6:1の比率で、培養バッグにおいて3日間刺激した。その後で、細胞はさらなる活性化を何ら受けず、細胞を、IL−7、IL−15およびIL−21を含有する培地において11日目まで拡大培養した。培養の0日目、5日目、9日目および12日目に、細胞をFACS分析によって細胞組成について評価した。すべての結果がリンホゲート(lymphogate)およびライブゲート(live gate)(7AAD−)からゲート制御される。
【
図16B】
図16Bは、同種DC刺激細胞のための供給源を変更することは細胞組成に対するほんの些細な影響を有しただけであったことを示す。CD8 T細胞を、解凍された白血球除去輸血から、CliniMacsシステムを大規模単離のために使用するCD4+細胞およびCD56+細胞の枯渇化によって濃縮した。濃縮されたCD8 T細胞をその後、2つの試験群に分割し、それぞれを、異なる放射線照射された同種第三者DCにより、IL−21を含有する培地において6:1の比率で、培養バッグにおいて3日間刺激した。その後で、細胞はさらなる活性化を何ら受けず、細胞を、IL−7、IL−15およびIL−21を含有する培地において11日目まで拡大培養した。培養の0日目、5日目、9日目および12日目に、細胞をFACS分析によって細胞組成について評価した。すべての結果がリンホゲート(lymphogate)およびライブゲート(live gate)(7AAD−)からゲート制御される。
【0096】
【
図17A-17B】
図17A〜
図17Bは、同種DC刺激細胞のための供給源を変更することは細胞組成に対するほんの些細な影響を有しただけであったことを示す。CD8 T細胞を、解凍された白血球除去輸血から、CliniMacsシステムを使用するCD4+細胞およびCD56+細胞の枯渇化によって濃縮した。濃縮されたCD8 T細胞をその後、2つの試験群に分割し、それぞれを、異なる放射線照射された同種第三者DCにより、IL−21を含有する培地において6:1の比率で、培養バッグにおいて3日間刺激した。その後で、細胞はさらなる活性化を何ら受けず、細胞を、IL−7、IL−15およびIL−21を含有する培地において11日目まで拡大培養した。培養の0日目、5日目、9日目および12日目に、細胞をFACS分析によってTcm表現型(CD45RO+CD62L+)組成について評価した。すべての結果が、リンホゲートおよびライブゲート(7AAD−)、ならびに、CD8 T細胞(CD3+CD8+CD56−CD16−)からゲート制御される。
【0097】
【
図17C】
図17Cは、B細胞リンパ腫細胞株および形質細胞性白血病細胞株との22時間の混合リンパ球反応(MLR)の後におけるパーセントアポトーシス細胞を示す。カルセインAMにより事前に標識されたDaudi細胞株、H.My2 C1R HLA A2 K66A変異細胞株またはL363細胞株を、5倍過剰の抗第三者Tcmを伴って、または伴うことなく22時間インキュベーションした。アネキシンV+細胞をFACSによって求めた。データが、五連の培養物の平均±SDとして示される。
***p<0.001の値は、Tcmの非存在下で培養されたサンプルと比較して統計学に有意な変化を示している。
【0098】
【
図18】
図18は、非CD8 T細胞(すなわち、CD4+T細胞、γ/δT細胞、B細胞、NK細胞、樹状細胞、単球、顆粒球および赤血球系細胞)を、磁気ビーズ選別を使用して大々的に枯渇化することによる、移植片対白血病(GVL)アッセイの14日前のCD8 T細胞についての濃縮を示す典型的な実験を示す。
【0099】
【
図19A-19D】
図19A〜
図19Dは、カルセインAM(細胞死時に放出される生体染色色素)により標識され、その後、抗第三者Tcm細胞に有利になるように1対5の比率で抗第三者Tcm細胞を伴って、または伴うことなく22時間インキュベーションされた、H.My C1R(“Neo”)およびH.My C1R HLA A2 K66A変異トランスフェクタント(“K66A”)のB細胞リンパ芽球様細胞株を示す。22時間後、細胞を回収し、FACSによって、生存しているカルセイン+染色細胞の数を測定することにより生存について、また、カルセイン+集団からのアネキシンV+細胞によりアポトーシスについて分析した。
図19A〜
図19Bおよび
図19C〜
図19Dは2回の独立した実験をそれぞれ表す;
図19Aおよび
図19Cは死滅を示し、一方、
図19Bおよび
図19Dはアポトーシスを示す。
【0100】
Bリンパ芽球系細胞死滅の割合を下記の式によって計算した:
【0101】
負の値は、B細胞リンパ芽球細胞株がTcmの存在下において増殖したことを意味する。
【0102】
特異的アポトーシスを受けるBリンパ芽球系細胞の割合を下記の式によって計算した:=(アッセイウエルにおける%カルセイン+アネキシンV+のBリンパ芽球系細胞)−(コントロールウエルにおける%カルセイン+アネキシンV+のBリンパ芽球系細胞)。
【0103】
【
図20】
図20は、K66A死滅のレベルに対する、CD8 T細胞の単離のために使用された種々のGMP規格試薬の影響を示す。H.My C1R HLA A2 K66A変異トランスフェクタント細胞株を、抗第三者Tcm細胞に有利になるように1対5の比率で抗第三者Tcm細胞を伴って、または伴うことなく22時間インキュベーションした。22時間後、細胞を回収し、生存しているカルセイン+染色細胞の数をFACSによって測定することにより生存について分析した(2回の独立した実験の平均)。4つすべての試薬(CD4/CD56/CD19/CD45RA)を使用して単離された最適なコントロール群において達成されるレベルのパーセントとして示される、H.My C1R HLA A2 K66A変異細胞の死滅の平均パーセント。
【0104】
【
図21】
図21は、自己移植用のTcm作製プロトコルである。
【
図22】
図22は、同種移植用のTcm作製プロトコルを示す概略的例示である。
【0105】
【
図23A-23B】
図23A〜
図23Bは、同種の第三者単球由来の成熟DCによって刺激されるCD8 T細胞におけるTcm表現型の誘導に対するサイトカイン添加時期の役割を明らかにする典型的な実験を示す。
図23Aは、放射線照射された同種第三者DCにより、IL−21を含有する培地において4:1の比率で3日間刺激されたナイーブCD8 T細胞を例示する。その後で、細胞はさらなる活性化を何ら受けず、細胞をIL−7およびIL−15とともに13日目まで拡大培養した(“参照コントロール群”=d(0−3)IL21+DC d(3−13)IL7+IL15);
図23Bは、放射線照射された同種第三者DCにより、IL−21の存在下において4:1の比率で7日間刺激されたナイーブCD8 T細胞を例示する。その後で、細胞はさらなる活性化を受けず、細胞をIL−7およびIL−15とともに13日目まで拡大培養した。
【
図23C-23D】
図23C〜
図23Dは、同種の第三者単球由来の成熟DCによって刺激されるCD8 T細胞におけるTcm表現型の誘導に対するサイトカイン添加時期の役割を明らかにする典型的な実験を示す。
図23Cは、放射線照射された同種第三者DCにより、4:1の比率で、初回免疫刺激段階(IL−21単独)および拡大培養段階(IL−15と一緒)の両方においてIL−21の連続した存在とともに刺激されたCD8 T細胞を例示する;
図23Dは、放射線照射された同種第三者DCにより、サイトカイン遮断とともに4:1の比率で7日間刺激されたCD8 T細胞を例示する。その後で、細胞はさらなる活性化を何ら受けず、細胞をIL−15単独とともに13日目まで拡大培養した。
【0106】
【
図24A-24B】
図24A〜
図24Bは、ヒト同種モデルにおけるサイトカイン添加時期の役割;実験の概要を示す。ナイーブCD8 T細胞を、放射線照射された同種第三者DCにより、IL−21を含有する培地において4:1の比率で3日間刺激した。その後で、細胞はさらなる活性化を受けず、細胞をIL−7およびIL−15とともに13日目まで拡大培養した(“参照コントロール群”=d(0−3)IL21→d(3−13)IL7+IL15)。それ以外の群は、グラフの下に示されるように処理された。細胞をトリパンブルー排除によって細胞数について評価し(
図24A)、FACS分析を使用してCD8 T細胞からのTcm(CD62L+CD45RO+)の割合について評価した(
図24B)。それぞれの時点について、データは、示された数(n)の独立した実験の平均±SEを表す。
【0107】
【
図25】
図25は、CD137+細胞の正の選択による抗第三者特異的CD8 T細胞の濃縮を示す。ナイーブCD8 T細胞を、放射線照射された同種第三者DCにより、IL−21の存在下において(5.7:1の比率で)刺激した。14時間の活性化の後、CD137+細胞を磁気的選別による正の選択に供した。CD8 T細胞におけるCD137の発現をFACSによって評価した。
【0108】
【
図26】
図26は、CD137+細胞の正の選択による抗第三者特異的CD8 T細胞の濃縮はTcm表現型の取得を低下させないことを示す。ナイーブCD8 T細胞を、放射線照射された同種第三者DCにより、IL−21の存在下において4:1の比率で3日間刺激した。その後で、細胞はさらなる活性化を何ら受けず、細胞をIL−7およびIL−15とともに10日目まで拡大培養した(“参照コントロール群”)。代替として、ナイーブCD8 T細胞を、放射線照射された同種第三者DCにより、IL−21の存在下において5.7:1の比率で刺激した。14時間の活性化の後、CD137+細胞を磁気的選別による正の選択に供した。CD137+細胞をその後、放射線照射された同種第三者DCにより、IL−21の存在下において4:1の比率で3日目まで再刺激した。その後で、細胞をIL−7およびIL−15とともに10日目まで拡大培養した。細胞を、FACS分析によって、CD8 T細胞からのTcm(CD62L+CD45RO+)の割合について評価した。
【0109】
【
図27】
図27は増殖速度論の比較を示す。ナイーブCD8 T細胞を、放射線照射された同種第三者DCにより、IL−21の存在下において4:1の比率で3日間刺激した。細胞はその後でのさらなる活性化を何ら受けず、細胞をIL−7およびIL−15とともに14日目まで拡大培養した(“参照コントロール群”)。代替として、ナイーブCD8 T細胞を、放射線照射された同種第三者DCにより、IL−21の存在下において5.7:1の比率で刺激した。14時間の活性化の後、CD137+細胞を磁気的選別による正の選択に供した。CD137+細胞をその後、放射線照射された同種第三者DCにより、IL−21の存在下において4:1の比率で3日目まで再刺激した。その後で、細胞をIL−7およびIL−15とともに10日目まで拡大培養した。10日目に、細胞を2つの試験群に分割した。第1の群において、細胞は、IL−7およびIL−15とともに14日目まで拡大培養され続け(“抗第三者CD137+”)、一方、第2の試験群における細胞は、放射線照射された宿主PBMCにより、IL−7およびIL−15の存在下において(1:2の比率で)活性化された。24時間後、CD137+細胞を磁気的選別によって枯渇化した。CD137枯渇細胞をIL−7およびIL−15とともに再置床し、14日目まで培養した(“抗第三者CD137+および抗宿主CD137−”)。示された日に、細胞をトリパンブルー排除によって計数した。
【0110】
【
図28】
図28は、放射線照射された宿主PBMCによる活性化の後でCD137+細胞を枯渇化することによる抗宿主特異的クローンの枯渇化を示す。培養の10日目に、すなわち、抗第三者特異的クローンの正の選択を行った9日後に、細胞を、放射線照射された宿主PBMCによって、IL−7およびIL−15の存在下において(宿主PBMCに有利になるように1:2の比率で)活性化した。24時間後、細胞はCD137+細胞が枯渇化された。CD8 T細胞におけるCD137の発現をFACS分析によって評価した。
【0111】
【
図29】
図29は、CD8 T細胞の抗原特異的な活性化の後におけるCD137のアップレギュレーションに基づく2段階の磁気的選別技術は抗宿主クローンを首尾よく枯渇化し、第三者抗原に対して特異的である細胞のパーセントを増大させることを示す。ナイーブCD8 T細胞を、放射線照射された同種第三者DCにより、IL−21の存在下において4:1の比率で3日間刺激した。細胞はその後でのさらなる活性化を何ら受けず、細胞をIL−7およびIL−15とともに14日目まで拡大培養した(“参照コントロール群”)。代替として、ナイーブCD8 T細胞を、放射線照射された同種第三者DCにより、IL−21の存在下において5.7:1の比率で刺激した。14時間の活性化の後、CD137+細胞を磁気的選別による正の選択に供した。CD137+細胞をその後、放射線照射された同種第三者DCにより、IL−21の存在下において4:1の比率で3日目まで再刺激した。その後で、細胞をIL−7およびIL−15とともに10日目まで拡大培養した。10日目に、細胞を2つの試験群に分割した。第1の群において、細胞は、IL−7およびIL−15とともに14日目まで拡大培養され続け(“抗第三者CD137+”)、一方、第2の試験群における細胞は、放射線照射された宿主PBMCにより、IL−7およびIL−15の存在下において(1:2の比率で)活性化された。24時間後、CD137+細胞を磁気的選別によって枯渇化した。CD137枯渇細胞をIL−7およびIL−15とともに再置床し、14日目まで培養した(“抗第三者CD137+および抗宿主CD137−”)。14日目に、抗第三者および抗宿主の同種反応性を、第三者PBMCまたは放射線照射された宿主PBMCに対するCFSEアッセイによって評価した。CFSEアッセイのために、1×10
6個のCFSE+応答細胞を、2×10
6個の放射線照射(20Gy)されたPBMC刺激細胞を伴って、または伴うことなく、IL−7の存在下において84時間インキュベーションした。84時間後、細胞を回収し、CFSE低染色されたCD8 T細胞(CD3+CD8+CD56−)細胞の数をFACSによって測定することによって細胞分裂について分析した。細胞の絶対値を得るために、サンプルを一定量の体積で懸濁し、それぞれのサンプルについてのフローサイトメトリーカウント数を一定の所定の期間の期間中に得た。特定の分裂細胞の数=(APCを伴う分裂細胞の数)−(APCを伴わない分裂細胞の数)。負の値は、宿主PBMCによる活性化に対する応答における分裂細胞の数が、活性化を何ら伴わない分裂細胞の数よりも一層少なかったことを意味する。
【発明を実施するための形態】
【0112】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、セントラルメモリーTリンパ球表現型を含む寛容誘導性および/または移植片対白血病反応性の抗第三者細胞に関連し、より具体的には、しかし、限定ではなく、当該細胞の作製方法、ならびに、移植および疾患処置における当該細胞の使用に関連する。
【0113】
本発明の原理および操作は、図面および付随する説明を参照してより良く理解されることができる。
【0114】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明に示される細部、または、実施例によって例示される細部に必ずしも限定されないことを理解しなければならない。本発明は他の実施形態が可能であり、あるいは、様々な方法で実施、または、実行される。また、本明細書中において用いられる表現法および用語法は説明のためであって、限定として見なされるべきでないことを理解しなければならない。
【0115】
本発明を実施に移しているとき、本発明者らは、リンパ節へのホーミングを移植後に行い、かつ、寛容性および抗疾患活性(例えば、移植片対白血病(GVL)活性)を、移植片対宿主(GVH)反応を誘導することなく誘導する抗第三者セントラルメモリーT(Tcm)細胞の改善された集団を発見している。
【0116】
本明細書中下記および下記の実施例において示されるように、本発明者らは、同種適用および自己適用のためのTcm細胞を作製する新しい方法を提供している。
図1Aおよび
図21に示されるように、抗疾患活性(例えば、抗腫瘍活性)を備える自己Tcm細胞が、最初に、CD8
+T細胞をIL−21の存在下において3日間、同種刺激(例えば、樹状細胞)にさらし、続いて、IL−15およびIL−7を、この抗原性刺激とともにさらに1日間〜2日間、この細胞に加えることによって作製された。次に、生じた細胞を、抗原非存在の環境で、IL−21、IL−15およびIL−7の存在下においてさらに6日間〜8日間培養した。
【0117】
図1Bおよび
図22に示されるように、寛容性誘導細胞であり、かつ、GVL活性を備える同種Tcm細胞が、最初に、CD8
+T細胞をIL−21の存在下において3日間、第三者刺激(例えば、樹状細胞)にさらすことによって作製された。培養開始からおよそ14時間で、活性化された細胞をCD137+の正の選択によって選択し、これらの細胞をIL−21とともに再培養した。続いて、IL−15およびIL−7を、さらに1日間〜2日間、この抗原性刺激とともにIL−21培養物に加えた。次に、生じた細胞を、抗原非存在の環境で、IL−21、IL−15およびIL−7の存在下においてさらに6日間〜8日間培養した。培養が終了したとき、Tcm細胞は、同種反応性細胞が、CD137+細胞を枯渇させ、その後、Tcm細胞を宿主タイプの抗原提示細胞(例えば、樹状細胞)と接触させることによって枯渇化された。
【0118】
本発明者らによって作製された細胞は、50%を超えるCD3+CD8+細胞を含み(その50%超がTcm細胞である(すなわち、CD3
+、CD8
+、CD62L
+、CD45RA
−、CD45RO
+のシグナチャーを含む;例えば、下記の実施例の節の実施例1を参照のこと))、かつ、TCR非依存的な抗白血病活性を含んでいた(実施例2を参照のこと)。
【0119】
まとめると、これらの結果は、移植を容易にする細胞としての、また、同種移植が正当化される状況(例えば、造血幹細胞移植または実質臓器移植)での疾患処置における使用のための抗第三者Tcm細胞の使用を実証している。そのうえ、これらの結果は、自己移植が血液学的悪性腫瘍などのために必要となる状況での疾患処置における抗第三者Tcm細胞の使用を実証している。
【0120】
したがって、本発明の1つの態様によれば、セントラルメモリーTリンパ球(Tcm)表現型を有するGVHD非誘導性の抗第三者細胞(ただし、前記細胞は寛容性誘導細胞であり、かつ、リンパ節へのホーミングを移植後に行うことができる)を含む単離された細胞集団が提供される。
【0121】
表現「単離された細胞集団」は、本明細書中で使用される場合、それらの天然の環境(例えば、ヒト身体)から単離されている細胞を示す。
【0122】
用語「非GVHD」は、本明細書中で使用される場合、移植片対宿主誘導活性が実質的に減少されているかまたは移植片対宿主誘導活性を実質的に有さないことを示す。したがって、本発明の細胞は、移植の100日後の移植された対象の生存率、体重、および全体的な外観によって証明されるように、移植片対宿主病(GVHD)を著しく生じさせることがないように作製される。
【0123】
本明細書中で使用される場合、用語「同系(の)」は、本質的には当該対象と遺伝子的に同一である個体に由来する細胞または組織を示す。典型的には、本質的に完全に同系交配された哺乳動物、哺乳動物クローン、または、ホモ接合性双胎哺乳動物が同系である。
【0124】
同系の細胞または組織の例には、当該対象に由来する細胞または組織(これらは「自己(由来)」としてこの技術分野では示される)、当該対象のクローン、あるいは、当該対象のホモ接合性双胎子が含まれる。
【0125】
本明細書中で使用される場合、用語「非同系(の)」は、当該対象のリンパ球に関して同種または異種である個体に由来する細胞または組織を示す。
【0126】
本明細書中で使用される場合、用語「同種(の)」は、当該対象と同じ種であるが、当該対象とは実質的に非クローンであるドナーに由来する細胞または組織を示す。典型的には、同じ種の非近交系の非接合体(non−zygotic)双胎哺乳動物は互いに同種である。同種ドナーは対象に関してHLA同一またはHLA非同一であってもよいことが理解される。
【0127】
本明細書中で使用される場合、用語「異種(の)」は、当該対象のリンパ球の実質的割合の種に対して異なる種の抗原を実質的に発現する細胞または組織を示す。典型的には、異なる種の非近交系哺乳動物は互いに異種である。
【0128】
本発明では、異種の細胞または組織が様々な種に由来すること、例えば、ウシ属の動物(例えば、ウシ)、ウマ科の動物(例えば、ウマ)、ブタ類(例えば、ブタ)、オビド類(ovids)(例えば、ヤギ、ヒツジ)、ネコ属の動物(例えば、イエネコ(Felis domestica))、イヌ科の動物(例えば、イヌ(Canis domestica))、齧歯類(例えば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、アレチネズミ、ハムスター)または霊長類(例えば、チンパンジー、アカゲザル、マカクザル、マーモセット)など(これらに限定されない)に由来することが想定される。
【0129】
異種起源(例えば、ブタ起源)の細胞または組織が好ましくは、人畜共通感染症(例えば、ブタの内因性レトロウイルスなど)を有しないことが知られている供給源から得られる。同様に、ヒト由来の細胞または組織が好ましくは、実質的に病原体非含有の供給源から得られる。
【0130】
表現「抗第三者細胞」は、本明細書中で使用される場合、第三者抗原(1つまたは複数)に対して(例えば、T細胞認識によって)向けられるリンパ球(例えば、Tリンパ球)を示す。
【0131】
本明細書中で使用される場合、表現「第三者抗原(1つまたは複数)」は、下記で詳しく示されるように、ドナーまたはレシピエントのどちらにも存在しない可溶性または非可溶性(例えば、膜結合型)の抗原(1つまたは複数)を示す。
【0132】
例えば、第三者抗原は、第三者細胞、ウイルス(例えば、エプスタイン・バールウイルス(EBV)またはサイトメガロウイルス(CMV)など)の抗原、細菌の抗原(例えば、フラジェリンなど)が可能である。ウイルスまたは細菌の抗原を、それに感染した細胞(例えば、細胞株)によって、または、そうでない場合にはウイルス/細菌タンパク質を発現させるために作製される細胞(例えば、細胞株)によって提示させることができる。自己または非自己の抗原提示細胞を、それに融合または負荷された短い合成ペプチドを提示するために使用することができる。そのような短いペプチドは、ウイルス由来のペプチド、または、何らかの他の抗原を表すペプチドであり得る。
【0133】
専用のソフトウエアを、ウイルス配列または他の配列を分析して、免疫原性の短いペプチド(すなわち、クラスIのMHCまたはクラスIIのMHCの状況で提示可能なペプチド)を特定するために使用することができる。
【0134】
第三者細胞は、(下記でさらに詳しく説明される)レシピエントに関して同種または異種のどちらも可能である。同種の第三者細胞の場合、そのような細胞は、そのような細胞に対して作製された抗第三者細胞が移植片またはレシピエント抗原に対する反応性を有しないように、ドナーのHLA抗原とは異なるが、レシピエントのHLA抗原との交差反応性がないHLA抗原を有する。
【0135】
本発明の1つの実施形態によれば、同種または異種の第三者細胞は刺激性細胞であり、末梢血リンパ球(PBL)、脾臓またはリンパ節、サイトカイン動員されたPBL、インビトロ拡大培養された抗原提示細胞(APC)、インビトロ拡大培養された樹状細胞(DC)、および人工抗原提示細胞から精製される細胞からなる群から選択される。
【0136】
本発明の人工APCは、自己MHCを、外因性ペプチドによりパルス刺激されることなく、第三者ペプチドまたは第三者MHCにより示すように操作される場合がある。したがって、1つの実施形態によれば、人工APCは、[以前に記載されたように、例えば、Suhoski MM他、Mol Ther、(2007)、15(5):981〜8に記載されたように]第三者MHC決定基および共刺激分子によりトランスフェクションされたK562腫瘍細胞、または、これらによりトランスフェクションされた線維芽細胞を含む。
【0137】
第三者抗原を、細胞表面、ウイルス表面または細菌表面に提示させることができ、あるいは、それらから得ることができ、かつ/または精製することができる。加えて、ウイルス抗原または細菌抗原を感染細胞の表面に呈示させることができ、細胞抗原を、人工ビヒクル(例えば、リポソームまたは人工APC(例えば、第三者抗原(1つまたは複数)によりトランスフェクションされた線維芽細胞または白血病細胞株)など)の表面に呈示させることができる。
【0138】
第三者抗原はさらに、自己の提示細胞、非自己の提示細胞によって、あるいは、人工小胞において、または、人工抗原提示細胞において提示される合成されたペプチドを含む場合がある。
【0139】
加えて、第三者抗原は、例えば、様々な供給源から抽出または精製されるタンパク質が可能である。本発明による第三者抗原として役立ち得る精製タンパク質の一例がオボアルブミンである。他の様々な例が想定される。
【0140】
細胞、ウイルス、細菌、ウイルス感染細胞、細菌感染細胞、ウイルスペプチド提示細胞または細菌ペプチド提示細胞を第三者抗原として利用することが特に好都合である。これは、そのような第三者抗原は多様な一連の抗原決定基を含み、かつ、そのようなものとして、多様な集団の抗第三者細胞の形成を導き、そして、この抗第三者細胞がさらに、T細胞のより早い再構成において、そのような再構成が要求される場合に、例えば、致死的または亜致死的な放射線照射手順または化学療法手順の後で役立ち得るからである。
【0141】
さらに、抗第三者細胞が第三者抗原に対して向けられるとき、細胞は、抗疾患活性を備える。用語「抗疾患活性」は、疾患している細胞(例えば、ガン細胞)に対するTcm細胞の活性(例えば、殺傷能力)(移植片対白血病(GVL)活性など)に言及する。この活性は、典型的には、LFA1−ICAM1結合によって媒介されるTCR非依存的な殺傷に起因する[Arditti他、Blood(2005)、105(8):3365〜71。Epub:2004年7月6日]。
【0142】
1つの実施形態によれば、第三者細胞は樹状細胞を含む。
【0143】
1つの実施形態によれば、第三者細胞は、成熟した樹状細胞を含む。
【0144】
Tcm細胞を誘導するための刺激細胞として使用される場合がある第三者樹状細胞を作製する様々な方法が、この技術分野では広く知られている。したがって、限定されない一例として、末梢血単核細胞(PBMC)が、第三者の非同系細胞ドナーから得られる場合がある[例えば、Tcm細胞が同系(例えば、自己)である場合、樹状細胞(DC)は非同系であってもよく、例えば、対象に対して同種であってもよい;これに対して、Tcm細胞が非同系(例えば、同種)であるならば、DCは、非同系(例えば、同種)であるドナーから選択され、HLAが対象およびTcm細胞の両方と不一致である]。単球がその後、プラスチック接着によって単離され、ヒト血清(例えば、1%ヒト血清)、ペニシリン/ストレプトマイシン、ならびに、GM−CSF(800IU/ml)およびIL−4(20ng/ml)(例えば、Peprotech(Hamburg、ドイツ)から入手可能である)が補充されるDC細胞培地(例えば、Cellgro DC培地)を使用して(例えば、細胞培養プレートで)培養される場合がある。約48時間の培養の後、GM−CSF(1600IU/ml)およびIL−4(20ng/ml)を含むDC培地が加えられる場合がある。約24時間後、非接着性細胞が集められる場合があり、大型の細胞(主として未成熟DC)が、GM−CSF(800IU/ml)、IL−4(20ng/ml)、LPS(例えば、E.coli O55:B5由来、10ng/mlで)およびIFNγ(100IU/ml)(例えば、Peprotech(Hamburg、ドイツ)から入手可能である)を含有する新鮮な培地に再懸濁され、置床され、一晩インキュベーションされる場合がある。翌日、非接着性細胞が捨てられる場合があり、接着性細胞が、例えば、氷上での20分間のインキュベーションの後、冷PBS/1%HSを使用して穏やかに取り出される場合があり、それにより、成熟DCからなる大型の細胞が得られる。
【0145】
1つの実施形態によれば、第三者細胞は、放射線照射された樹状細胞を含む。
【0146】
したがって、1つの実施形態によれば、DCには、約5Gy〜10Gyの放射線が照射され、約10Gy〜20Gyの放射線が照射され、約20Gy〜30Gyの放射線が照射され、約20Gy〜40Gyの放射線が照射され、約20Gy〜50Gyの放射線が照射され、約10Gy〜50Gyの放射線が照射される。1つの具体的な実施形態によれば、DCには、約10Gy〜50Gy(例えば、30Gy)の放射線照射が行われる。
【0147】
いくつかの実施形態によれば、本発明の抗第三者細胞はセントラルメモリーTリンパ球(Tcm)表現型を含む。
【0148】
表現「セントラルメモリーTリンパ球(Tcm)表現型」は、本明細書中で使用される場合、リンパ節へホーミングするT細胞傷害性細胞のサブセットを示す。Tcm表現型を有する細胞はヒトにおいては、典型的には、CD3+/CD8+/CD62L+/CD45RO+/CD45RA−のシグナチャーを含む。Tcm細胞はこれらのシグナチャーマーカーのすべてを1個の細胞において発現し得るか、または、これらのシグナチャーマーカーの一部のみを1個の細胞において発現し得ることが理解されるであろう。
【0149】
少なくとも、単離された細胞集団の少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%さえもが、CD3+CD8+細胞であることが理解されるであろう。特定の実施形態によれば、単離された細胞集団は、約70〜90%のCD3+CD8+細胞を含む。
【0150】
上記CD3+CD8+細胞の少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または、それどころか100%がTcm細胞シグナチャーを有することが理解されるであろう。1つの具体的な実施形態によれば、上記CD3+CD8+細胞の約30%〜80%がTcm細胞シグナチャーを有する(例えば、40%〜50%)。
【0151】
1つの実施形態によれば、セントラルメモリーTリンパ球(Tcm)表現型を有する第三者細胞を含む単離された細胞集団が提供され、ただし、この場合、前記単離された細胞集団の少なくとも50%がCD3+CD8+細胞であり、その少なくとも50%が、CD3
+、CD8
+、CD62L
+、CD45RA
−、CD45RO
+のシグナチャーを含み、さらに、前記細胞は寛容性誘導細胞であり、かつ/または、抗疾患活性(例えば、移植片対白血病(GVL)活性)を備え、かつ、リンパ節へのホーミングを移植後に行うことができる。
【0152】
述べられたように、Tcm細胞は典型的には、移植後、リンパ節へホーミングする。いくつかの実施形態によれば、本発明の抗第三者Tcm細胞は、移植後、リンパ節のいずれかへホーミングすることができ、例えば、末梢リンパ節および腸間膜リンパ節のようなリンパ節へホーミングすることができる。これらの細胞のホーミング性により、これらの細胞はその寛容効果を迅速かつ効率的な様式で発揮することができる。
【0153】
したがって、本発明の抗第三者Tcm細胞は寛容性誘導細胞である。
【0154】
表現「寛容性誘導細胞」は、本明細書中で使用される場合、レシピエントの細胞(例えば、レシピエントのT細胞)と接触したとき、投与された寛容性誘導細胞の非存在下におけるレシピエントの細胞の応答性と比較して、低下した応答性を誘発する細胞を示す。寛容性誘導細胞には、PCT公開番号WO2001/049243および同第WO2002/102971において以前に記載されたように、veto細胞(すなわち、宿主T細胞と接触したときに宿主T細胞のアポトーシスを引き起こすT細胞)が含まれる。
【0155】
いくつかの実施形態によれば、本発明のTcm細胞は遺伝子非改変細胞または遺伝子改変細胞(例えば、特定の遺伝子、マーカーもしくはペプチドを発現させるために、または発現させないために、あるいは、特定のサイトカインを分泌させるために、または分泌させないために遺伝子操作されている細胞)である場合がある。この技術分野で知られている方法はどれも、細胞を、例えば、関連遺伝子(1つまたは複数)の不活性化、または、ポリペプチド発現を妨害するアンチセンスRNAの挿入によって遺伝子操作することにおいて実行することができる(例えば、国際公開WO/2000/039294を参照のこと。これは本明細書により参照によって組み込まれる)。
【0156】
本発明のいくつかの実施形態によれば、セントラルメモリーTリンパ球(Tcm)表現型を有する抗第三者細胞(ただし、前記細胞は寛容性誘導細胞であり、かつ/または、抗疾患活性を備え、かつ、リンパ節へのホーミングを移植後に行うことができる)を含む単離された細胞集団を作製する方法であって、(a)末梢血単核細胞(PBMC)をIL−21の存在下において第三者抗原(1つまたは複数)と接触させて、その結果、抗原反応性細胞の濃縮を可能にするようにすること、および、(b)工程(a)から生じる細胞を、抗原非存在の環境で、IL−21、IL−15およびIL−7の存在下において培養して、その結果、前記セントラルメモリーTリンパ球(Tcm)表現型を含む細胞の増殖を可能にするようにすることを含む方法が提供される。
【0157】
本発明の抗第三者Tcm細胞は典型的には、最初、同系または非同系の末梢血単核細胞(PBMC)を、IL−21を補充された培養(さもなくば、サイトカイン非含有の培養、すなわち、いかなる追加のサイトカインの添加が行われない培養)において第三者抗原(1つまたは複数)(例えば、上記で記載されるものなど)と接触させることによって作製される。この工程は典型的には、約12時間〜24時間、約12時間〜36時間、約12時間〜72時間、24時間〜48時間、24時間〜36時間、約24時間〜72時間、約48時間〜72時間、1日間〜2日間、2日間〜3日間、1日間〜3日間、2日間〜4日間、1日間〜5日間、2日間〜5日間、2日間〜6日間、1日間〜7日間、5日間〜7日間、2日間〜8日間、8日間〜10日間、または1日間〜10日間にわたって行われ、抗原反応性細胞の濃縮を可能にする。1つの具体的な実施形態によれば、同系または非同系のPBMCをIL−21補充の培地(他の場合にはサイトカイン非含有培地)において第三者抗原(1つまたは複数)(例えば、上記で記載される第三者抗原など)と接触させることが、1日間〜5日間(例えば、3日間)行われる。この工程は典型的には、約0.001ng/ml〜3000ng/ml、0.001ng/ml〜1000ng/ml、0.01ng/ml〜1000ng/ml、0.1ng/ml〜1000ng/ml、1ng/ml〜1000ng/ml、10ng/ml〜1000ng/ml、10ng/ml〜500ng/ml、10ng/ml〜300ng/ml、10ng/ml〜100ng/ml、100ng/ml〜1000ng/ml、1ng/ml〜100ng/ml、1ng/ml〜50ng/ml、1ng/ml〜30ng/ml、10ng/ml〜50ng/ml、10ng/ml〜30ng/ml、10ng/ml〜20ng/ml、20ng/ml〜30ng/ml、20ng/ml〜50ng/ml、30g/ml〜50ng/ml、30ng/ml〜100ng/ml、1ng/ml〜10ng/ml、0.1ng/ml〜10ng/ml、0.1ng/ml〜100ng/ml、1ng/ml、10ng/ml〜100ng/mlのIL−21の存在下において行われる。1つの具体的な実施形態によれば、IL−21の濃度は10ng/ml〜50ng/ml(例えば、30ng/ml)である。
【0158】
1つの具体的な実施形態によれば、同系または非同系のPBMCを第三者抗原(1つまたは複数)と接触させることが、サイトカイン非含有培地(例えば、IL−21のみが補充されるサイトカイン非含有培地)において行われ、そのような培養条件は、当該第三者抗原(1つまたは複数)(すなわち、抗原反応性細胞の当該第三者抗原)による刺激および活性化を受けるそのような細胞のみの生存および濃縮を可能にする。これは、これらの細胞が、それらの生存を可能にするサイトカイン(例えば、IL−2)を分泌するからである(残りの細胞のすべてがこれらの培養条件のもとでは死滅するからである)。
【0159】
第三者抗原(1つまたは複数)(例えば、樹状細胞)対PBMCの比率が典型的には、約1:2から約1:10までであり、例えば、約1:4、約1:6、約1:8または約1:10である。1つの具体的な実施形態によれば、第三者抗原(1つまたは複数)(例えば、樹状細胞)対PBMCの比率が約1:2から約1:8までである(例えば、1:4)。
【0160】
次に、抗第三者細胞が、IL−21、IL−15およびIL−7の存在下、抗原非存在の環境で培養されて、その結果、Tcm表現型を含む細胞の増殖を可能にするようにされる。この工程は典型的には、約12時間〜24時間、約12時間〜36時間、約12時間〜72時間、24時間〜48時間、24時間〜36時間、約24時間〜72時間、約48時間〜72時間、1日間〜20日間、1日間〜15日間、1日間〜10日間、1日間〜5日間、5日間〜20日間、5日間〜15日間、5日間〜10日間、1日間〜2日間、2日間〜3日間、1日間〜3日間、2日間〜4日間、2日間〜5日間、2日間〜8日間、2日間〜10日間、4日間〜10日間、4日間〜8日間、6日間〜8日間、8日間〜10日間、7日間〜9日間、7日間〜11日間、7日間〜13日間、7日間〜15日間、10日間〜12日間、10日間〜14日間、12日間〜14日間、14日間〜16日間、14日間〜18日間、16日間〜18日間、または、18日間〜20日間行われる。1つの具体的な実施形態によれば、抗第三者細胞が、IL−21、IL−15およびIL−7の存在下、抗原非存在の環境で約7日間〜11日間(例えば、8日間)培養される。
【0161】
この工程は典型的には、約0.001ng/ml〜3000ng/ml、0.001ng/ml〜1000ng/ml、0.01ng/ml〜1000ng/ml、0.1ng/ml〜1000ng/ml、1ng/ml〜1000ng/ml、10ng/ml〜1000ng/ml、10ng/ml〜500ng/ml、10ng/ml〜300ng/ml、10ng/ml〜100ng/ml、100ng/ml〜1000ng/ml、1ng/ml〜100ng/ml、1ng/ml〜50ng/ml、1ng/ml〜30ng/ml、10ng/ml〜50ng/ml、10ng/ml〜30ng/ml、10ng/ml〜20ng/ml、20ng/ml〜30ng/ml、20ng/ml〜50ng/ml、30g/ml〜50ng/ml、30ng/ml〜100ng/ml、1ng/ml〜10ng/ml、0.1ng/ml〜10ng/ml、0.1ng/ml〜100ng/ml、1ng/ml〜100ng/mlのIL−21の濃度でのIL−21の存在下において行われる。1つの具体的な実施形態によれば、IL−21の濃度は10ng/ml〜50ng/ml(例えば、30ng/ml)である。
【0162】
この工程は典型的には、約0.001ng/ml〜3000ng/ml、0.001ng/ml〜1000ng/ml、0.01ng/ml〜1000ng/ml、0.05ng/ml〜1000ng/ml、0.1ng/ml〜1000ng/ml、0.5ng/ml〜1000ng/ml、0.05ng/ml〜500ng/ml、0.5ng/ml〜500ng/ml、0.1ng/ml〜100ng/ml、0.1ng/ml〜10ng/ml、0.5ng/ml〜100ng/ml、1ng/ml〜100ng/ml、5ng/ml〜100ng/ml、1ng/ml〜50ng/ml、5ng/ml〜50ng/ml、1ng/ml〜10ng/ml、5ng/ml〜10ng/ml、1ng/ml〜5ng/ml、2ng/ml〜3ng/ml、2ng/ml〜5ng/ml、2ng/ml〜7ng/ml、3ng/ml〜5ng/ml、3ng/ml〜7ng/ml、4ng/ml〜5ng/ml、5ng/ml〜6ng/ml、5ng/ml〜7ng/ml、1ng/ml〜8ng/ml、10ng/ml〜100ng/ml、10ng/ml〜1000ng/ml、100ng/ml〜1000ng/mlのIL−15の濃度でのIL−15の存在下においてさらに行われる。1つの具体的な実施形態によれば、IL−15の濃度は1ng/ml〜10ng/ml(例えば、5ng/ml)である。
【0163】
この工程は典型的には、約0.001ng/ml〜3000ng/ml、0.001ng/ml〜1000ng/ml、0.01ng/ml〜1000ng/ml、0.05ng/ml〜1000ng/ml、0.1ng/ml〜1000ng/ml、0.5ng/ml〜1000ng/ml、0.05ng/ml〜500ng/ml、0.5ng/ml〜500ng/ml、0.1ng/ml〜100ng/ml、0.1ng/ml〜10ng/ml、0.5ng/ml〜100ng/ml、1ng/ml〜100ng/ml、5ng/ml〜100ng/ml、1ng/ml〜50ng/ml、5ng/ml〜50ng/ml、1ng/ml〜10ng/ml、5ng/ml〜10ng/ml、1ng/ml〜5ng/ml、2ng/ml〜3ng/ml、2ng/ml〜5ng/ml、2ng/ml〜7ng/ml、3ng/ml〜5ng/ml、3ng/ml〜7ng/ml、4ng/ml〜5ng/ml、5ng/ml〜6ng/ml、5ng/ml〜7ng/ml、1ng/ml〜8ng/ml、10ng/ml〜100ng/ml、10ng/ml〜1000ng/ml、100ng/ml〜1000ng/mlのIL−7の濃度でのIL−7の存在下において行われる。1つの具体的な実施形態によれば、IL−7の濃度は1ng/ml〜10ng/ml(5ng/ml)である。
【0164】
本発明者らは、移植片対宿主(GVH)反応性細胞を欠き、かつ/または、抗疾患(例えば、GVL)反応性細胞について強化される、セントラルメモリーTリンパ球(Tcm)表現型を含む抗第三者細胞の増殖を改善するために利用され得るいくつかの基準を、労力を要する実験およびスクリーニングにより集めてきた。
【0165】
1つの実施形態によれば、PBMCは、非接着性細胞が、IL−21の存在下において第三者抗原(1つまたは複数)と接触させる前に枯渇化される。
【0166】
1つの実施形態によれば、PBMCは、CD4+細胞および/またはCD56+細胞が、IL−21の存在下において第三者抗原(1つまたは複数)と接触させる前に枯渇化される。
【0167】
1つの実施形態によれば、PBMCは、IL−21の存在下において第三者抗原(1つまたは複数)と接触させる前に、CD45RA+細胞について選択される。
【0168】
CD4
+細胞および/またはCD56+細胞の枯渇化が、この技術分野で知られているいずれかの方法を使用して、例えば、親和性に基づく精製(例えば、MACSビーズ、FACS選別機および/または捕獲ELISA標識化の使用による精製など)によるなどによって行われる場合がある。そのような工程は、培養物内のCD8
+細胞の純度を増大させるために(すなわち、細胞培養物内における他のリンパ球(例えば、T CD4
+細胞またはNK細胞)を排除するために)、または、CD8
+T細胞の数を増大させるために有益である場合がある。
【0169】
1つの実施形態によれば、PBMCは非接着性細胞を含む。
【0170】
1つの実施形態によれば、PBMCはCD8+ T細胞を含む。
【0171】
1つの実施形態によれば、PBMCはナイーブCD8+ T細胞を含む。
【0172】
ナイーブCD8+ T細胞の選択が、CD45RA+を発現する細胞、および/または、CD45RO−を発現する細胞を選択することによって行われる場合があり、また、この技術分野で知られているいずれかの方法を使用して、例えば、親和性に基づく精製(例えば、MACSビーズ、FACS選別機および/または捕獲ELISA標識化の使用による精製など)によるなどによって行われる場合がある。
【0173】
1つの実施形態によれば、PBMCはCD45RA+細胞を含む。
【0174】
本発明の教示に従って行われることがあるさらなる工程は、第三者抗原(1つまたは複数)を細胞培養物から除く前に(すなわち、抗原非存在の環境を生じさせる前に)、PBMC細胞を、IL−21、IL−15およびIL−7の存在下において第三者抗原(1つまたは複数)とともに培養することを含む。この工程は典型的には、約12時間〜24時間、約12時間〜36時間、約12時間〜72時間、24時間〜48時間、24時間〜36時間、約24時間〜72時間、約48時間〜72時間、1日間〜2日間、2日間〜3日間、1日間〜3日間、2日間〜4日間、1日間〜5日間、または、2日間〜5日間行われ、かつ、IL−21、IL−15およびIL−7の上記で示される同じ用量で行われる。1つの具体的な実施形態によれば、PBMC細胞を、IL−21、IL−15およびIL−7の存在下において第三者抗原(1つまたは複数)とともに培養することが、12時間〜4日間(例えば、1日間〜2日間)行われる。
【0175】
加えて、または、代替として、活性化された細胞の選択および単離を可能にするさらなる2工程のプロセスが行われる場合がある。そのような選択工程は、(下記でさらに詳しく記載されるように)、PBMCが対象に対して非同系である状況における潜在的な宿主反応性T細胞の除去を助ける。
【0176】
したがって、活性化された細胞を単離することが2段階の取り組みで行われる場合がある。第1の段階において、活性化された細胞が、当該細胞をIL−15およびIL−7の存在下において培養する前に選択される。この第1の段階は典型的には、PBMCをIL−21の存在下において第三者抗原(1つまたは複数)と最初に接触させた後で行われる。この選択プロセスにより、第三者抗原によって活性化されたそのような細胞(例えば、下記で記載されるような活性化マーカーを発現するそのような細胞)のみが選ばれ、この選択プロセスは典型的には、PBMCを第三者抗原(1つまたは複数)と最初に接触させた後において約12時間〜24時間、約24時間〜36時間、約12時間〜36時間、約36時間〜48時間、約12時間〜48時間、約48時間〜60時間、約12時間〜60時間、約60時間〜72時間、約12時間〜72時間、約72時間〜84時間、約12時間〜84時間、約84時間〜96時間、約12時間〜96時間行われる。1つの具体的な実施形態によれば、この選択プロセスは、PBMCを第三者抗原(1つまたは複数)と最初に接触させた後において約12時間〜24時間(例えば、14時間)行われる。
【0177】
活性化された細胞を単離することが、親和性に基づく精製(例えば、MACSビーズ、FACS選別機および/または捕獲ELISA標識化の使用による精製など)によって行われる場合があり、また、細胞表面マーカー(例えば、CD69、CD44、CD25、CFSE、CD137など、これらに限定されない)または非細胞表面マーカー(例えば、IFN−γおよびIL−2など、これらに限定されない)を含めて、どのような活性化マーカーに対しても行われる場合がある。活性化された細胞を単離することがまた、この技術分野で知られているいずれかの方法を使用する(例えば、FACSによる)形態学に基づく精製(例えば、大型の細胞を単離すること)によって行われる場合がある。典型的には、活性化された細胞はまた、CD8
+細胞の発現について選択される。そのうえ、上記方法のどのような組合せも、活性化された細胞を効率よく単離するために利用される場合がある。
【0178】
本発明の1つの実施形態によれば、活性化された細胞について選択することが、CD137+細胞および/またはCD25+細胞を選択することによって行われる。
【0179】
活性化された細胞を単離する第2の段階が典型的には、培養が終了したときに(すなわち、IL−21、IL−15およびIL−7を伴う抗原非存在の環境における培養の後で)行われる。この段階により、同種反応性細胞が、セントラルメモリーTリンパ球(Tcm)を、放射線照射された、宿主の抗原提示細胞(APC、例えば、樹状細胞)と接触させた後で活性化されたそのような細胞の枯渇化によって枯渇させられる。上記で述べられたように、活性化された細胞を単離することが、親和性に基づく精製(例えば、MACSビーズ、FACS選別機および/または捕獲ELISA標識化の使用による精製など)によって行われる場合があり、また、細胞表面マーカー(例えば、CD69、CD44、CD25、CFSE、CD137など、これらに限定されない)または非細胞表面マーカー(例えば、IFN−γおよびIL−2など、これらに限定されない)を含めて、どのような活性化マーカーに対しても行われる場合がある。
【0180】
本発明の1つの実施形態によれば、同種反応性細胞を枯渇させることが、CD137+細胞および/またはCD25+細胞の枯渇化によって行われる。
【0181】
下記は、本発明のいくつかの実施形態に従って使用することができるプロトコルのいくつかの限定されない例である。
【0182】
本発明の1つの実施形態によれば、セントラルメモリーTリンパ球(Tcm)表現型を有する抗第三者細胞(ただし、前記細胞は寛容性誘導細胞であり、かつ/または、抗疾患活性(例えば、移植片対白血病(GVL)活性)を備え、かつ、リンパ節へのホーミングを移植後に行うことができる)を含む単離された細胞集団を作製する方法であって、(a)非接着性の末梢血単核細胞(PBMC)を、CD4+細胞および/またはCD56+細胞を枯渇化することができる作用因により処理して、その結果、CD8+T細胞を得るようにすること、(b)前記CD8+T細胞をIL−21の存在下において第三者樹状細胞と12時間〜5日間接触させて、その結果、抗原反応性細胞の濃縮を可能にするようにすること、(c)工程(b)から生じる細胞を、IL−21、IL−15およびIL−7の存在下において前記第三者樹状細胞とともに12時間〜3日間培養すること、および、(d)工程(c)から生じる細胞を、抗原非存在の環境で、IL−21、IL−15およびIL−7の存在下において5日間〜20日間培養して、その結果、前記セントラルメモリーTリンパ球(Tcm)表現型を含む細胞の増殖を可能にするようにすることを含む方法が提供される。
【0183】
上記プロトコルは典型的には、非同系移植のために使用され、したがって、使用されるPBMCが典型的には、対象に対して同種である(例えば、同種ドナーから得られる)。
【0184】
本発明の1つの実施形態によれば、セントラルメモリーTリンパ球(Tcm)表現型を有する抗第三者細胞(ただし、前記細胞は抗疾患活性(例えば、抗腫瘍細胞活性)を備え、かつ、リンパ節へのホーミングを移植後に行うことができる)を含む単離された細胞集団を作製する方法であって、(a)非接着性の末梢血単核細胞(PBMC)を、CD4+細胞および/またはCD56+細胞を枯渇化することができる作用因により処理して、その結果、CD8+T細胞を得るようにすること、(b)前記CD8+T細胞をIL−21の存在下において非同系樹状細胞と12時間〜5日間接触させて、その結果、抗原反応性細胞の濃縮を可能にするようにすること、(c)工程(b)から生じる細胞を、IL−21、IL−15およびIL−7の存在下において前記非同系樹状細胞とともに12時間〜3日間培養すること、および、(d)工程(c)から生じる細胞を、抗原非存在の環境で、IL−21、IL−15およびIL−7の存在下において5日間〜20日間培養して、その結果、前記セントラルメモリーTリンパ球(Tcm)表現型を含む細胞の増殖を可能にするようにすることを含む方法が提供される。
【0185】
上記プロトコルは典型的には、同系移植のために使用され、したがって、使用されるPBMCが典型的には、対象に対して自己である(例えば、対象から得られる)。
【0186】
したがって、述べられたように、PBMCは対象に対して同系または非同系である場合がある。
【0187】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本発明の非同系PBMCは、(本明細書中下記でさらに詳しく説明されるように)対象に対して同種または異種である場合がある。
【0188】
PBMCの供給源が、細胞の意図された使用に関して決定されるであろうし(本明細書中下記のさらなる詳細を参照のこと)、また、PBMCの供給源は、とりわけ本明細書中に提供される詳細な開示に照らして十分に当業者の能力の範囲内である。
【0189】
寛容性誘導細胞の使用は、移植片拒絶反応を排除し、移植片対宿主病(GVHD)を克服する必要がある状況において、例えば、同種または異種の細胞または組織の移植などにおいて、とりわけ有益である。
【0190】
したがって、本発明の別の態様によれば、細胞移植または組織移植を必要としている対象を処置する方法であって、細胞移植片または臓器移植片を前記対象に移植すること、および、前記対象に上記単離された細胞集団の治療効果的な量を投与することを含む方法が提供される。
【0191】
本明細書中で使用される場合、用語「治療する/処置する」には、状態の進行を取り消すこと、実質的に阻害すること、遅くすること、または、逆向きにすること、状態の臨床的症状または審美的症状を実質的に改善すること、あるいは、状態の臨床的症状または審美的症状の出現を実質的に防止することが含まれる。
【0192】
本明細書中で使用される場合、用語「対象」または用語「その必要性のある対象」は、細胞移植または組織移植を必要としているか、またはTcm細胞によって処置されることができる疾患にかかっている、任意の年齢の雄性または雌性の哺乳動物(好ましくは、ヒト)を示す。典型的には、対象は、細胞移植または組織移植による処置を受け入れることができる障害、あるいは、病理学的または望まれない健康状態または状態または症候群、あるいは、物理的、形態学的または生理学的な異常のために、細胞移植または組織移植を必要としている(対象はまた、本明細書中ではレシピエントとして示される)。そのような障害の例が下記においてさらに示される。
【0193】
本明細書中で使用される場合、表現「細胞移植片または組織移植片」は身体の細胞(例えば、1個だけの細胞または細胞群)または組織(例えば、充実組織/器官または軟部組織、これらは全体または一部を移植することができる)を示す。本発明の教示に従って移植され得る例示的な組織または器官には、肝臓、膵臓、脾臓、腎臓、心臓、肺、皮膚、腸およびリンパ系/造血系組織(例えば、リンパ節、パイエル板、胸腺または骨髄)が含まれるが、これらに限定されない。本発明の教示に従って移植され得る例示的な細胞には、幹細胞を含む未成熟造血細胞が含まれるが、これらに限定されない。さらに、本発明ではまた、臓器全体の移植、例えば、腎臓、心臓、肺、肝臓または皮膚などの移植が意図される。
【0194】
適用に依存して、上記方法は、対象と同系または非同系である細胞または組織を使用して行うことができる。
【0195】
本発明の1つの実施形態によれば、対象およびドナーの両方がヒトである。
【0196】
適用および利用可能な供給源に依存して、本発明の細胞または組織は、出生前の生物ドナー、出生後の生物ドナー、成体ドナーまたは死体ドナーから得ることができる。そのうえ、必要とされる適用に依存して、細胞または組織はナイーブであり得るか、または、遺伝子操作され得る。そのような決定は十分に当業者の能力の範囲内である。
【0197】
この技術分野で知られているどの方法も、(例えば、移植用の)細胞または組織を得るために用いることができる。
【0198】
細胞または組織を対象に移植することを、様々なパラメーターに依存して、例えば、細胞タイプまたは組織タイプ;レシピエントの疾患(例えば、臓器不全)のタイプ、段階または重篤度;対象に特異的な物理的パラメーターまたは生理学的パラメーター;および/あるいは、所望される治療結果などに依存して、数多くの様式で行うことができる。
【0199】
本発明の細胞移植片または組織移植片を移植することを、適用に依存して、細胞移植片または組織移植片を様々な解剖学的場所のいずれか1つに移植することによって行うことができる。細胞移植片または組織移植片は同位置の解剖学的場所(移植片のための通常の解剖学的場所)に移植することができ、または、異所性の解剖学的場所(移植片のための変則的な解剖学的場所)に移植することができる。適用に依存して、細胞移植片または組織移植片は好都合には、腎被膜下に、あるいは、腎臓、精巣脂肪、皮下組織、網、門脈、肝臓、脾臓、心臓腔、心臓、胸腔、肺、皮膚、膵臓および/または腹腔内空間の中に埋め込むことができる。
【0200】
例えば、本発明の教示に従って、肝臓組織を、肝臓、門脈、腎被膜、皮下組織、網、脾臓および腹腔内空間に移植することができる。様々な解剖学的場所(例えば、これらなど)への肝臓の移植が、肝臓移植による処置を受け入れることができる疾患(例えば、肝不全)を処置するためにこの技術分野では一般に実施される。同様に、膵臓組織を本発明に従って移植することを、組織を門脈、肝臓、膵臓、精巣脂肪、皮下組織、網、腸ループ(小腸のUループの漿膜下組織)および/または腹腔内空間に移植することによって都合よく行うことができる。膵臓組織の移植を、膵臓移植による処置を受け入れることができる疾患(例えば、糖尿病)を処置するために使用することができる。同様に、組織の移植、例えば、腎臓組織、心臓組織、肺組織または皮膚組織などの移植を、例えば、腎不全、心不全、肺不全または皮膚損傷(例えば、火傷)に苦しむレシピエントを処置するという目的のために上記のいずれかの解剖学的場所に対して行うことができる。
【0201】
本発明の方法はまた、例えば、未成熟造血細胞移植を必要とする疾患に苦しむレシピエントを処置するために使用することができる。
【0202】
後者の場合、未成熟な自己、同種または異種の造血細胞(幹細胞を含む)で、例えば、ドナーの骨髄、動員された末梢血(例えば、白血球除去法によるもの)、胎児肝臓、卵黄嚢および/または臍帯血に由来することができ、かつ、好ましくは、T細胞枯渇化されたCD34+の未成熟な造血細胞であるものを、疾患に苦しむレシピエントに移植することができる。そのような疾患には、白血病、例えば、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性非リンパ芽球性白血病(ANLL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、重症複合免疫不全症候群(SCID)(アデノシンデアミナーゼ(ADA)を含む)、大理石病、再生不良性貧血、ゴーシュ病、サラセミア、および、他の先天的造血系異常または遺伝的に決定された造血系異常などが含まれるが、これらに限定されない。
【0203】
本発明の未成熟な自己、同種または異種の造血細胞は、細胞移植のためにこの技術分野で知られているいずれかの方法を使用して、例えば、細胞注入(例えば、I.V.)、腹腔内経路を介する方法(これらに限定されない)などを使用してレシピエントに移植され得ることが理解されるであろう。
【0204】
必要に応じてであるが、本発明の細胞移植片または組織移植片を、欠陥臓器を有する対象に移植するときには、最初、その機能不全臓器を対象から少なくとも部分的に除き、その結果、移植片の最適な発達、および、対象の解剖学的構造/生理機能とのその構造的/機能的な一体化を可能にするようにすることが好都合である場合がある。
【0205】
1つの実施形態によれば、未成熟造血細胞および単離された細胞集団は、同じドナーに由来する。
【0206】
1つの実施形態によれば、未成熟造血細胞および単離された細胞集団は、同じ対象に由来する。
【0207】
本発明の方法ではまた、いくつかの臓器(例えば、心臓および肺組織)の同時移植が、対象にそのような手法によって利益が達成され得る場合には想定される。
【0208】
1つの実施形態によれば、同時移植は、未成熟造血細胞および実質組織/臓器またはいくつかの実質組織/臓器を移植することを含む。
【0209】
1つの実施形態によれば、未成熟造血細胞および実質臓器は、同じドナーから得られる。
【0210】
別の実施形態によれば、未成熟造血細胞および実質臓器/組織(1つまたは複数)は、異なる(非同系)ドナーから得られる。
【0211】
1つの実施形態によれば、未成熟造血細胞が、実質臓器の移植の前に、または、実質臓器の移植と同時に、または、実質臓器の移植の後で移植される。
【0212】
1つの実施形態によれば、造血系のキメラ現象が、未成熟造血細胞を本発明のTcm細胞と併せて移植し、これにより、同じドナーから移植される他の組織/臓器の寛容性を引き起こすことによって対象に最初に導入される。
【0213】
1つの実施形態によれば、本発明のTcm細胞は、移植された組織/臓器、同じドナーから移植された臓器の拒絶反応を軽減するためにそれ自体で使用される。
【0214】
さらなる実施形態によれば、細胞移植片または組織移植片および単離された細胞集団は、同じドナーに由来する。
【0215】
さらなる実施形態によれば、細胞移植片または組織移植片が対象と同系であり、かつ、単離された細胞集団が対象と非同系である。
【0216】
さらなる実施形態によれば、細胞移植片または組織移植片が対象と同系であり、かつ、単離された細胞集団が対象と同系である。
【0217】
細胞移植片または組織移植片を本発明の教示に従って対象に移植した後では、標準的な医療実務によれば、臓器の成長、機能性および免疫適合性をこの技術分野における様々な標準的技術のいずれか1つに従ってモニターすることが望ましい。例えば、膵臓組織移植片の機能性を標準的な膵臓機能試験(例えば、インスリンの血清中レベルの分析)によって移植後にモニターすることができる。同様に、肝臓組織移植片を標準的な肝機能試験(例えば、アルブミン、総タンパク質、ALT、ASTおよびビリルビンの血清中レベルの分析、ならびに、血液凝固時間の分析)によって移植後にモニターすることができる。細胞または組織の構造的発達をコンピューター断層撮影法または超音波造影によりモニターすることができる。
【0218】
移植背景に依存して、細胞移植片または組織移植片の生着を促進させるために、上記方法はさらに好都合には、対象を、上記移植する前に、亜致死的条件、致死的条件または超致死的条件のもとで前処理することを含む場合がある。
【0219】
本明細書中で使用される場合、本発明の対象の前処理に関連するときにおける用語「亜致死的」、用語「致死的」および用語「超致死的」は、当該対象の代表的集団に適用されるとき、それぞれ典型的には、無菌の通常の条件のもとで当該集団の本質的にすべてのメンバーに対して非致死的であり、または、当該集団のすべてのメンバーではなく、一部のメンバーに対して致死的であり、または、当該集団の本質的にすべてのメンバーに対して致死的である骨髄毒性処置および/またはリンパ球毒性処置を示す。
【0220】
1つの実施形態によれば、前処理工程が、対象を超致死的条件のもとで前処理することによって、例えば、骨髄機能破壊的条件のもとなどで前処理することによって行われる。
【0221】
代替において、前処理工程が、対象を致死的条件または亜致死的条件のもとで前処理することによって、例えば、対象を骨髄機能低下条件のもとで前処理することなどによって行われる場合がある。
【0222】
対象を前処理するために使用される場合がある前処理作用因の例には、限定されないが、(本明細書中に記載されるように)放射線照射、薬理学的作用因および寛容性誘導細胞が含まれる。
【0223】
薬理学的作用因の例には、骨髄毒性薬物、リンパ球毒性薬物および免疫抑制薬物が含まれる。
【0224】
骨髄毒性薬物の例には、限定されないが、ブスルファン、ジメチルミレラン、メルファランおよびチオテパが含まれる。
【0225】
上記方法はさらに好都合には、対象を、細胞移植片または組織移植片の移植の前に、あるいは、細胞移植片または組織移植片の移植と同時に、あるいは、細胞移植片または組織移植片の移植の後で免疫抑制療法により前処理することを含む場合がある。
【0226】
好適なタイプの免疫抑制療法の例には、免疫抑制薬物、寛容性誘導細胞集団(本明細書中下記で詳しく記載されるようなもの)および/または免疫抑制放射線照射を施すことが含まれる。
【0227】
移植のための好適な免疫抑制療法を選択し、施すための十分な指針がこの技術分野の文献において提供される(例えば、下記を参照されたい:Kirkpatrick CH.およびRowlands DT Jr.、1992、JAMA.、268、2952;Higins RM.他、1996、Lancet、348、1208;Suthanthiran M.およびStrom TB.、1996、New Engl. J. Med.、331、365;Midthun DE.他、1997、Mayo Clin Proc.、72、175;Morrison VA.他、1994、Am J Med.、97、14;Hanto DW.、1995、Annu Rev Med.、46、381;Senderowicz AM.他、1997、Ann Intern Med.、126、882;Vincenti F.他、1998、New Engl. J. Med.、338、161;Dantal J.他、1998、Lancet、351、623)。
【0228】
好ましくは、免疫抑制療法は、少なくとも1つの免疫抑制剤を対象に投与することからなる。
【0229】
免疫抑制剤の例には、メトトレキサート、シクロホスファミド、シクロスポリン、シクロスポリンA、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、スルファサラジン(スルファサラゾピリン)、金塩、D−ペニシラミン、レフルノミド、アザチオプリン、アナキンラ、インフリキシマブ(REMICADE)、エタネルセプト、TNF.アルファ.遮断剤、炎症性サイトカインを標的とする生物学的薬剤、および、非ステロイド系抗炎症性薬物(NSAID)が含まれるが、これらに限定されない。NSAIDの例には、アセチルサリチル酸、サリチル酸コリンマグネシウム、ジフルニサル、サリチル酸マグネシウム、サルサラート、サリチル酸ナトリウム、ジクロフェナク、エトドラク、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラク、メクロフェナマート、ナプロキセン、ナブメトン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、スリンダク、トルメチン、アセトアミノフェン、イブプロフェン、Cox−2阻害剤、トラマドール、ラパマイシン(シロリムス)およびラパマイシンアナログ(例えば、CCI−779、RAD001、AP23573)が含まれるが、これらに限定されない。これらの薬剤は個々に投与することができ、または、組み合わせて投与することができる。
【0230】
移植片タイプにかかわらず、移植片拒絶反応および移植片対宿主病を回避するために、本発明の方法では、(本明細書中上記で詳しく記載されるような)新規な抗第三者Tcm細胞が利用される。
【0231】
本発明の方法によれば、これらの抗第三者Tcm細胞が、細胞移植片または組織移植片の移植と同時に、あるいは、細胞移植片または組織移植片の移植の前に、あるいは、細胞移植片または組織移植片の移植の後でのいずれかで投与される。
【0232】
抗第三者Tcm細胞は、細胞移植のためにこの技術分野で知られているいずれかの方法(例えば、細胞注入(例えば、I.V.)など(これに限定されない))により、または、腹腔内経路により投与される場合がある。
【0233】
理論にとらわれることはないが、治療効果的な量は、GVHDを誘導することなく、寛容化、抗腫瘍効果および/または免疫再構成のために十分である抗第三者Tcm細胞の量である。本発明のTcm細胞はリンパ節へのホーミングを移植後に行うので、(以前に使用された細胞用量(例えば、国際公開WO2001/049243を参照のこと)と比較して)より少ない量の細胞が、当該細胞の有益な効果(例えば、寛容化、抗腫瘍効果および/または免疫再構成)を達成するために必要となる場合がある。より少ないレベルの免疫抑制薬物が本発明のTcm細胞との併用において必要となる場合があることが理解されるであろう(例えば、治療プロトコルからのラパマイシンの除外など)。
【0234】
治療効果的な量の決定は、とりわけ本明細書中に提供される詳細な開示に照らして十分に当業者の能力の範囲内である。
【0235】
本発明の方法で使用されるどのような調製物についても、治療効果的な量または用量は、最初はインビトロアッセイおよび細胞培養アッセイから推定することができる。例えば、用量を、所望される濃度または力価を達成するために動物モデルにおいて策定することができる。そのような情報は、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定するために使用することができる。
【0236】
例えば、組織移植の場合、レシピエントに注入される抗第三者Tcm細胞の数は1×10
4個/Kg体重よりも多くなければならない。レシピエントに注入される抗第三者Tcm細胞の数は典型的には、1×10
3個/Kg体重〜1×10
4個/Kg体重の範囲、1×10
4個/Kg体重〜1×10
5個/Kg体重の範囲、1×10
4個/Kg体重〜1×10
6個/Kg体重の範囲、1×10
4個/Kg体重〜1×10
7個/Kg体重の範囲、1×10
4個/Kg体重〜1×10
8個/Kg体重の範囲、1×10
3個/Kg体重〜1×10
5個/Kg体重の範囲、1×10
4個/Kg体重〜1×10
6個/Kg体重の範囲、1×10
6個/Kg体重〜1×10
7個/Kg体重の範囲、1×10
5個/Kg体重〜1×10
7個/Kg体重の範囲、1×10
6個/Kg体重〜1×10
8個/Kg体重の範囲でなければならない。1つの具体的な実施形態によれば、レシピエントに注入される抗第三者Tcm細胞の数は1×10
5個/Kg体重〜1×10
7個/Kg体重の範囲でなければならない。
【0237】
したがって、本発明の新規な抗第三者Tcm細胞は、(本明細書中上記で記載されるように)細胞移植または組織移植のための補助療法として使用される場合がある。加えて、本発明の新規なTcm細胞はまた、抗疾患活性(例えば、本明細書中上記でさらに詳しく記載されるように、抗腫瘍細胞活性)を備えており、したがって、疾患処置のためにそれ自体で使用される場合がある。
【0238】
1つの具体的な実施形態によれば、移植片対病的細胞活性(例えば、抗腫瘍効果、例えば、抗白血病処置など)を得るために、同系の細胞、同様にまた、非同系の細胞が使用される場合がある。
【0239】
したがって、本発明の方法は、悪性疾患、移植片の移植に伴う疾患、感染性疾患(例えば、ウイルス性疾患または細菌性疾患など)、炎症性疾患および/または自己免疫疾患(これらに限定されない)などのどのような疾患をも処置するために適用される場合がある。
【0240】
本発明の方法を使用して処置されることがある疾患には、下記の疾患が含まれるが、それらに限定されない:悪性疾患、例えば、白血病[例えば、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性プレB細胞白血病、急性リンパ芽球性T細胞白血病、急性巨核芽球性白血病、単球性白血病、急性骨髄性(myelogenous)白血病、急性骨髄性(myeloid)白血病、好酸球増加症を伴う急性骨髄性白血病、B細胞白血病、好塩基球性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性白血病、B細胞白血病、好酸球性白血病、フレンド白血病、顆粒球性白血病または骨髄球性白血病、ヘアリー細胞白血病、リンパ球性白血病、巨核芽急性白血病、単球性白血病、単球マクロファージ白血病、骨髄芽球性白血病、骨髄性白血病、骨髄単球性白血病、形質細胞白血病、プレB細胞白血病、前骨髄球性白血病、亜急性白血病、T細胞白血病、リンパ系新生物、骨髄系悪性腫瘍の素因、急性非リンパ性白血病、T細胞急性リンパ性白血病(T−ALL)およびB細胞慢性リンパ性白血病(B−CLL)]、リンパ腫(例えば、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、組織球性リンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫、T細胞リンパ腫、胸腺性リンパ腫)、ガン腫、芽細胞腫および肉腫;移植片の移植に伴う疾患(例えば、移植片拒絶反応、慢性的移植片拒絶反応、亜急性的移植片拒絶反応、超急性的移植片拒絶反応、急性的移植片拒絶反応および移植片対宿主病);感染性疾患、これには、慢性的感染性疾患、亜急性的感染性疾患、急性的感染性疾患、ウイルス性疾患(EBV、CMV、HIV)、細菌性疾患、原虫性疾患、寄生虫性疾患、真菌性疾患、マイコプラズマ疾患およびプリオン疾患が含まれるが、これらに限定されない;炎症性疾患(例えば、慢性炎症性疾患および急性炎症性疾患);ならびに、自己免疫疾患(例えば、心臓血管疾患、リウマチ様疾患、腺疾患、胃腸疾患、皮膚疾患、肝疾患、神経学的疾患、筋疾患、腎疾患、生殖関連疾患、結合組織疾患および全身性疾患)。
【0241】
したがって、本発明の方法はさらに、(例えば、細胞移植片または組織移植片および抗第三者細胞が、同じドナーに由来する状況では)抗第三者Tcm細胞と同系である細胞または組織の移植片の生着を同時に容易にしながら、疾患を対象において処置することに対して都合良く適用することができる。
【0242】
本明細書中で使用される用語「約」は、±10%を示す。
【0243】
用語「含む/備える(comprises、comprising、includes、including)」、「有する(having)」、およびそれらの同根語は、「含むが、それらに限定されない(including but not limited to)」ことを意味する。
【0244】
用語「からなる(consisting of)」は、「含み、それらに限定される(including and limited to)」ことを意味する。
【0245】
表現「から本質的になる(consisting essentially of)」は、さらなる成分、工程および/または部分が、主張される組成物、方法または構造の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合にだけ、組成物、方法または構造がさらなる成分、工程および/または部分を含み得ることを意味する。
【0246】
本明細書中で使用される場合、単数形態(「a」、「an」および「the」)は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数の参照物を包含する。例えば、用語「化合物(a compound)」または用語「少なくとも1つの化合物」は、その混合物を含めて、複数の化合物を包含し得る。
【0247】
本開示を通して、本発明の様々な態様が範囲形式で提示され得る。範囲形式での記載は単に便宜上および簡潔化のためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈すべきでないことを理解しなければならない。従って、範囲の記載は、具体的に開示された可能なすべての部分範囲、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値を有すると見なさなければならない。例えば、1〜6などの範囲の記載は、具体的に開示された部分範囲(例えば、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6など)、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値(例えば、1、2、3、4、5および6)を有すると見なさなければならない。このことは、範囲の広さにかかわらず、適用される。
【0248】
数値範囲が本明細書中で示される場合には常に、示された範囲に含まれる任意の言及された数字(分数または整数)を含むことが意味される。第1の示された数字および第2の示された数字「の範囲である/の間の範囲」という表現、および、第1の示された数字「から」第2の示された数「まで及ぶ/までの範囲」という表現は、交換可能に使用され、第1の示された数字と、第2の示された数字と、その間のすべての分数および整数とを含むことが意味される。
【0249】
本明細書中で使用される用語「方法(method)」は、所与の課題を達成するための様式、手段、技術および手順を示し、これには、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の実施者に知られているそのような様式、手段、技術および手順、または、知られている様式、手段、技術および手順から、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の実施者によって容易に開発されるそのような様式、手段、技術および手順が含まれるが、それらに限定されない。
【0250】
明確にするため別個の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴が、単一の実施形態に組み合わせて提供されることもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施形態で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで、あるいは本発明の他の記載される実施形態において好適なように提供することもできる。種々の実施形態の文脈において記載される特定の特徴は、その実施形態がそれらの要素なしに動作不能である場合を除いては、それらの実施形態の不可欠な特徴であると見なされるべきではない。
【0251】
本明細書中上記に描かれるような、および、下記の請求項の節において特許請求されるような本発明の様々な実施形態および態様のそれぞれは、実験的裏付けが下記の実施例において見出される。
【実施例】
【0252】
次に下記の実施例が参照されるが、下記の実施例は、上記の説明と一緒に、本発明を非限定様式で例示する。
【0253】
一般に、本願で使用される用語と、本発明で利用される実験方法には、分子生化学、微生物学および組み換えDNAの技法が広く含まれている。これらの技術は文献に詳細に説明されている。例えば以下の諸文献を参照されたい:「Molecular Cloning:A laboratory Manual」Sambrookら、(1989);「Current Protocols in Molecular Biology」I〜III巻、Ausubel,R.M.編(1994);Ausubelら、「Current Protocols in Molecular Biology」、John Wiley and Sons、米国メリーランド州バルチモア(1989);Perbal「A Practical Guide to Molecular Cloning」、John Wiley & Sons、米国ニューヨーク(1988);Watsonら、「Recombinant DNA」Scientific American Books、米国ニューヨーク;Birrenら編「Genome Analysis:A Laboratory Manual Series」1〜4巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press、米国ニューヨーク(1998);米国特許の第4666828号、同第4683202号、同第4801531号、同第5192659号および同第5272057号に記載される方法;「Cell Biology:A Laboratory Handbook」I〜III巻、Cellis,J.E.編(1994);「Current Protocols in Immunology」I〜III巻、Coligan,J.E.編(1994);Stitesら編「Basic and Clinical Immunology」(第8版)、Appleton & Lange、米国コネティカット州ノーウォーク(1994);MishellとShiigi編「Selected Methods in Cellular Immunology」、W.H. Freeman and Co.、米国ニューヨーク(1980);利用可能な免疫アッセイ法は、特許と科学文献に広範囲にわたって記載されており、例えば:米国特許の第3791932号、同第3839153号、同第3850752号、同第3850578号、同第3853987号、同第3867517号、同第3879262号、同第3901654号、同第3935074号、同第3984533号、同第3996345号、同第4034074号、同第4098876号、同第4879219号、同第5011771号および同第5281521号;「Oligonucleotide Synthesis」Gait,M.J.編(1984);「Nucleic Acid Hybridization」Hames,B.D.およびHiggins S.J.編(1985);「Transcription and Translation」Hames,B.D.およびHiggins S.J.編(1984);「Animal Cell Culture」Freshney,R.I.編(1986);「Immobilized Cells and Enzymes」IRL Press(1986);「A Practical Guide to Molecular Cloning」Perbal,B.(1984)および「Methods in Enzymology」1〜317巻、Academic Press;「PCR Protocols:A Guide To Methods And Applications」、Academic Press、米国カリフォルニア州サンディエゴ(1990);Marshakら、「Strategies for Protein Purification and Characterization−A Laboratory Course Manual」CSHL Press(1996);これらの文献の全ては、あたかも本願に完全に記載されているように援用するものである。その他の一般的な文献は、本明細書を通じて提供される。それらの文献に記載の方法は当業技術界で周知であると考えられ、読者の便宜のために提供される。それらの文献に含まれるすべての情報は本願に援用するものである。
【0254】
末梢血単核細胞(PBMC)
PBMCをFicoll密度勾配遠心分離によって患者の全血から、また、健康な志願者から単離した。示されるときには、細胞を、以前に記載されたように清学的方法によってクラスI HLAについてタイプ分類した[Manual of Tissue Typing Techniques、Washington DC、National Institute of Allergy and Infectious Diseases、NIH DHEW Publication 76−545、1976、22頁]。
【0255】
腫瘍細胞株
H.My2 C1R HLA A2 K66Aトランスフェクタント細胞およびH.My2 C1R HLA A2 w.t.トランスフェクタントB細胞株を使用した。
【0256】
C1R、すなわち、以前に記載されたように[Storkus WJ他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、(1989)、86:2361〜2364]、ガンマ線照射、その後で、クラスIモノクローナル抗体および補体についての選択を行うことによってHmy.2 B−LCLに由来する、表面HLAのA抗原およびB抗原を欠くヒトB細胞リンパ芽球様系統を使用した。
【0257】
C1R−neo、すなわち、以前に記載されたように[Grumet FC他、Hum.Immunol、(1994)、40:228−234]、改変されたネオマイシン薬物抵抗性真核生物ベクターpSP65−Neo(このベクターは挿入物を運んでいなかった)を用いたC1R細胞株のエレクトロポレーションによって1987年に樹立された安定なトランスフェクタント細胞株を使用した。
【0258】
樹状細胞の作製
単球をプラスチック接着によって単離し、1%ヒト血清およびペニシリン/ストレプトマイシンならびにGM−CSF(800IU/ml)およびIL−4(20ng/ml)(Peprotech、Hamburg、ドイツ)が補充される3mlのCellgro DC培地を使用して6ウエルプレートにおいて培養した。48時間の培養の後、1.5mlの培地を加えた(GM−CSFを1600IU/mlで、かつ、IL4を20ng/mlで)。24時間後、非接着性細胞を集め、大型の細胞(主として未成熟DC)を計数し、GM−CSF(800IU/ml)、IL−4(20ng/ml)、E.coli O55:B5由来のLPS(10ng/mlで)(Sigma、Deisenhofen、ドイツ)およびIFNγ(Peprotech、100IU/ml)を含有する新鮮な培地に再懸濁し、2mlにおいてウエルあたりおよそ106個のDCで置床し、一晩インキュベーションした。翌日、非接着性細胞を捨て、接着性DCを、氷上での20分間のインキュベーションの後、冷PBS/1%HSを使用して穏やかに取り出した。成熟DCからなる大型の細胞を計数した。細胞への30Gyの放射線照射を、ごく少数の潜在的に混入しているNK細胞またはメモリーT細胞の成長を避けるために行い、その後、細胞をT細胞刺激のために使用した。
【0259】
ナイーブCD8 T細胞のPBMCからの単離
ナイーブCD8 T細胞を、CD8負選択キット(Miltenyi、Bergisch Gladbach、ドイツ)を製造者の説明書に従って使用して最初の負の選択によって単離した。その後、抗原経験のCD8+T細胞をCD45RO−ビーズを使用して、かつ、LDカラムで枯渇させた。
【0260】
抗第三者セントラルメモリー・ヒトCD8 T細胞の作製
ナイーブCD8 T細胞を単離し、IL−21(Peprotech、30ng/ml)が補充されるT細胞培地に再懸濁した。放射線照射されたDCを、48ウエルプレートのウエルあたり4×10
5個のT細胞に関して1:4のDC:T細胞比率で加えた。それぞれのウエルの総体積が500μlであった。
【0261】
培養開始後72時間で、IL−7およびIL−15(Peprotech、5ng/mlの最終濃度)を伴う500μlのT細胞培地を加え、続いて、細胞に、結果の節で概略されるように2日〜3日毎に与えた。
【0262】
GVLアッセイ
H.My C1R(“Neo”)およびH.My C1R HLA A2 K66A変異トランスフェクタント(“K66A”)のBリンパ芽球系細胞をFicoll密度勾配遠心分離によって得て、0.15μg/mlのカルセインAM(Molecular Probes,Inc、Eugene、OR)(細胞死のときに放出される生体染色色素)により製造者の説明書に従って標識した。次に、2×10
5個のカルセイン標識されたBリンパ芽球系細胞を、抗第三者Tcmを伴って、または伴うことなく、24ウエルプレートにおいて抗第三者Tcmに有利になるように1対5の比率で22時間インキュベーションした。共培養の前に、抗第三者Tcmを負選択キット(Miltenyi、Bergisch Gladbach、ドイツ)によってCD8+T細胞について濃縮した。外因性サイトカインをMLRに何ら加えなかった。細胞を回収し、生存しているカルセイン染色されたBリンパ芽球系細胞の数をFACSによって測定することにより生存について分析した。アネキシンV+によるアポトーシスの検出のために、サンプルを5μlのアネキシンV−APC(BD)と室温で15分間インキュベーションした。続いて、非結合のアネキシンVを洗い流し、サンプルをFACSによって分析した。細胞の絶対値を得るために、サンプルを一定量の体積で懸濁し、それぞれのサンプルについてのフローサイトメトリーカウント数を一定の所定の期間の期間中に得て、一定体積および一定数の投入細胞を用いて得られるフローサイトメトリーカウント数と比較した。生存率が、Bリンパ芽球系細胞単独の生存に対して示される。
【0263】
Bリンパ芽球系細胞死滅の割合を下記の式によって計算した:
【0264】
特異的アポトーシスを受けるBリンパ芽球系細胞の割合を下記の式によって計算した:=(アッセイウエルにおける%カルセイン+アネキシンV+のBリンパ芽球系細胞)−(コントロールウエルにおける%カルセイン+アネキシンV+のBリンパ芽球系細胞)。
【0265】
CD137活性化マーカーに基づく、同種反応性を枯渇化するための2段階の磁気的選別取り組み
ナイーブCD8 T細胞を、放射線照射された同種第三者DCにより、IL−21(Peprotech、30ng/ml)の存在下において6:1の比率で刺激した。14時間の活性化の後、CD137+細胞を磁気的選別(Miltenyi、Bergisch Gladbach、ドイツ)による正の選択に供した。CD137+細胞をその後、放射線照射された同種第三者DCにより、IL−21(Peprotech、30ng/ml)の存在下において4:1の比率で3日目まで再刺激した。その後で、細胞を5ng/mlのIL−7および5ng/mlのIL−15(Peprotech)とともに10日目まで拡大培養した。10日目に、細胞を2つの試験群に分割した。第1の群において、細胞は、IL−7およびIL−15とともに14日目まで拡大培養され続け、一方、第2の試験群における細胞は、放射線照射された宿主PBMCにより、IL−7およびIL−15の存在下において(1:2の比率で)活性化された。24時間後、CD137+細胞を磁気的選別によって枯渇化した。CD137枯渇細胞をIL−7およびIL−15とともに再置床し、14日目まで培養した(“抗第三者CD137+および抗宿主CD137−”)。14日目に、抗第三者および抗宿主の同種反応性を、第三者PBMCまたは放射線照射された宿主PBMCに対するCFSEアッセイによって評価した。CFSEアッセイのために、1×10
6個のCFSE+応答細胞を、2×10
6個の放射線照射(20Gy)されたPBMC刺激細胞を伴って、または伴うことなく、IL−7の存在下において84時間インキュベーションした。84時間後、細胞を回収し、CFSE低染色されたCD8 T細胞(CD3+CD8+CD56−)の数をFACSによって測定することにより細胞分裂について分析した。細胞の絶対値を得るために、サンプルを一定量の体積で懸濁し、それぞれのサンプルについてのフローサイトメトリーカウント数を一定の所定の期間の期間中に得た。特定の分裂細胞の数=(APCを伴う分裂細胞の数)−(APCを伴わない分裂細胞の数)。負の値は、宿主PBMCによる活性化に対する応答における分裂細胞の数が、活性化を何ら伴わない分裂細胞の数よりも一層少なかったことを意味する。
【0266】
実施例1
ヒト抗第三者Tセントラルメモリー(Tcm)細胞の作製および最適化
以前に示されたマウス研究を臨床応用に移すために、手順を、ヒト抗第三者細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を作製するために最適化した。その目的のために、種々のパラメーターを、応答細胞のCD8細胞を単離するための種々の試薬、刺激細胞の組成、および、サイトカイン環境を含めて評価した。
【0267】
潜在的には、以前に示されたマウスモデルにおいて見出されたように、セントラルメモリーT細胞(Tcm)による処置は、自己骨髄移植に関連して[Lask A他、Blood(ASH Annual Meeting Abstracts)、(2010)、116:424]、または、同種骨髄移植(BMT)において[Ophir E他、Blood、(2010)、115(10):2095〜104;Ophir E.、37th EBMT annual meeting、2011年4月3日〜6日、Paris(フランス)、Oral Presentation Abstract Nr:662]、そのどちらでも有益であり得ると思われる。
【0268】
ヒトの自己状況において(
図1A)、抗第三者Tcmを自己BMTと一緒に投与することができる。患者自身のCD8+T細胞が単離され、同種ドナーからの同種樹状細胞に対して刺激される。
【0269】
ヒトの同種状況において(
図1B)、抗第三者Tcmを同種のT枯渇BM細胞と一緒に投与することができる。同種BMドナーに由来するナイーブCD8+T細胞が応答細胞として働き、第三者ドナーの樹状細胞が、宿主非反応性Tcmの作製を可能にするための刺激細胞として使用される。GVHDを避けるために、第三者ドナーが、そのHLAクラスI対立遺伝子のどれもが宿主のHLAクラスI対立遺伝子と共有されないことを保証するように選択される。
【0270】
マウスおよびヒトの両方において、基本的な想定されるプロトコルは類似して、CD8 T細胞の単離、その後で、第三者細胞に対する刺激を含んでいた(
図1A〜
図1Bおよび
図2A〜
図2B)が、いくつかの他のパラメーターを、表1(下記)に概略されるように、ヒト用プロトコルでは変更しなければならなかった。
【0271】
自己TcmはGVHDの危険性がないことを考慮して、産生プロトコルの最適化は主として、セントラルメモリー表現型を有する抗第三者CD8 T細胞の効果的な拡大培養を達成することに集中した。
【0272】
図3Aにおいて認められ得るように、新しいプロトコルが、下記の3つの主要な工程に基づいて開発された:a)CD8 T細胞のPBMCからの選択、b)IL−21の存在下における3日間の、同種樹状細胞(DC)に対する刺激、および、c)さらに8日間にわたる、IL−7、IL−15およびIL−21を伴う抗原非存在の環境における拡大培養。
【0273】
したがって、この新しく開発されたプロトコルにおいて、様々なパラメーターが、マウスTcmの作製のために使用されるパラメーターと異なる(表1および
図3A〜
図3B)。主要な違いは、応答細胞および刺激細胞のための起源となる組織(PBMC対脾細胞)、刺激細胞(樹状細胞対脾細胞)、ならびに、サイトカイン組成に関する。
【0274】
【0275】
ヒト抗第三者Tcmを作製するためのGMP規格プロトコルの最適化:
抗第三者Tcmを作製するためのヒト用プロトコルを開発するための最初の試みは、セントラルメモリー表現型を有するヒト抗原特異的CD8 T細胞を作製するための手順を記載したWolfl他による近年の研究に基づいていた[Wolfl M他、Cancer Immunol Immunother、(2011)、60(2):173〜186]。
【0276】
今回の取り組みは、抗原によりパルス刺激されたDCに対する、IL−21の存在下での3日間の刺激と、IL−7およびIL−15の存在下におけるさらに8日間のその後の拡大培養とに基づいていた。
【0277】
抗第三者Tcmの感嘆させる拡大培養をもたらし、その後には、さらなる最適化のための参照として役立ったこれらの初期の実験では、下記の工程を使用した:a)非CD8
+細胞(すなわち、CD4
+T細胞、γ/δT細胞、B細胞、NK細胞、樹状細胞、単球、顆粒球および赤血球系細胞)の枯渇化によるPBMCからのCD8 T細胞の濃縮;b)CD45ROを発現する活性化細胞の枯渇化によるナイーブ細胞の濃縮;およびc)IL−21の存在下における3日間の、同種樹状細胞に対するナイーブCD8 T細胞の刺激、その後、IL−7およびIL−15を伴う抗原非存在の環境でのさらに8日間の拡大培養。
【0278】
これらの初期の参照実験の結果が
図4A〜
図4Cに示されるが、これらの結果は、プロトコルにおける種々のパラメーターの役割を評価することを、(下記で詳しく記載されるように)細胞拡大のレベルおよびTcm表現型の発現レベルに対するそれぞれのパラメーターの影響を明確にすることによって可能にした。
【0279】
第三者DCによる初回抗原刺激の役割
自己Tcmは、当然のこととして、GVHDの危険性がないことを考慮して、評価された最初のパラメーターは、第三者DCに対する刺激の役割であった。この工程は元々、同種状況におけるGVHDの危険性を、GVHDを媒介する抗宿主クローンの刺激の非存在下における抗第三者クローンの選択的拡大培養によって軽減させるために意図された。
【0280】
図5A〜
図5Cおよび
図6A〜
図6Bに例示されるように、樹状細胞による同種刺激の非存在下においてIL−21を用いて成長させたナイーブCD8 T細胞は、低い増殖レベル(参照コントロール群によって示される増殖レベルの2.7±1.1%)を示し、これにより、7日目において、0日目からのおよそ0.4倍の拡大を表し(ほとんどの細胞が10日目までに死滅した)、かつ、それらのナイーブ表現型(CD45RO−CD62L+、小さい形態学)を維持した(Tcmレベルが参照コントロール群のTcmレベルからのほんの10%にすぎなかった)。分化および拡大培養の類似した不良なレベルが、細胞が樹状細胞による同種刺激の非存在下においてIL−7およびIL−15とともに維持されたときに見出された;これらの条件のもとで、細胞はそれらのナイーブ表現型を維持し(Tcmレベルが参照コントロール群のTcmレベルからのほんの7±1.6%にすぎなかった)、だが、若干の増殖が誘導された(コントロール群の値の12±3.2%、これは、13日目において、0日目からのおよそ6倍の拡大を表す)。したがって、同種第三者DCの役割は、Tcm表現型の誘導のために、また、ロバストな細胞拡大培養のために非常に重要であった。
【0281】
抗第三者Tcmの初回抗原刺激段階および拡大培養段階におけるIL−21の役割
一般に、マウス用およびヒト用の両方の従来のT細胞拡大培養プロトコルでは、拡大培養段階が抗原非存在の環境で行われる。しかしながら、マウス用プロトコルでは、IL−15のみが添加された(
図3B)が、Wolfl他(Wolfl他、2011、上掲)によって記載されるヒト用プロトコルでは、細胞拡大培養が、IL−7およびIL−15の存在下において行われた。そのうえ、IL−21は、最初の初回抗原刺激段階の期間中に加えられたならば、有益であることが示されたことを考慮して、IL−21の役割をここで評価した。
【0282】
興味深いことに、
図7A〜
図7Cおよび
図8A〜
図8Bに示されるように、IL−21の存在下または非存在下における同種DCによるナイーブCD8 T細胞の初回抗原刺激は、細胞組成に対するほんの些細な影響を有しただけであった(データは示されず)が、IL−21の非存在下における初回抗原刺激はTcm表現型(CD45RO+CD62L+)の獲得を妨げ(参照コントロール群におけるTcmレベルのほんの69±18%)、低下した増殖もまたもたらした(参照コントロール群における拡大レベルの76±23%)(
図8A〜
図8B)。4つのうちのただ1つの実験においてでさえ、この場合、拡大が低下しなかった(参照コントロール群の140%)が、Tcm表現型が、参照コントロール群におけるTcmレベルのほんの35%にすぎず、このことは、IL−21の存在下における初回抗原刺激が、ナイーブCD8 T細胞集団からのTcm表現型の拡大と、ナイーブCD8 T細胞集団からのTcm表現型の誘導との両方のために重要であることを示唆していた。
【0283】
興味深いことに、初回抗原刺激段階(IL−21単独)および拡大培養段階(IL−7およびIL−15と一緒での)の両方におけるIL−21の連続した存在は、セントラルメモリー表現型の細胞の誘導を一貫して改善させた(参照コントロール群におけるTcmレベルの108±1.9%)(
図7A〜
図7Cおよび
図8A〜
図8B)。細胞拡大培養に対する連続したIL−21存在の影響は、より大きい平均増大(参照コントロール群において見出される値の135±47%)を明瞭に引き起こしたにもかかわらず、あまり一貫しておらず、3つのうちの2つの実験では、わずかに低下した拡大(参照値の95%および81%、それぞれ)を引き起こし、一方、第3の実験では、劇的に高まった拡大(228%)を示し、このことは、IL−21を初回抗原刺激段階および拡大培養段階の両方において加えることが望ましいかもしれないことを示していた(
図8A〜
図8B)。
【0284】
刺激細胞としての第三者細胞の組成
上記の結果は、IL−21、IL−7およびIL−15の逐次添加には、Tcm表現型の成功した誘導のための、また、ロバストな細胞拡大培養のための単球由来の成熟DCによる同種刺激が伴わなければならないことを示す。
【0285】
手順を簡略化するために、実験を、不可欠な同種刺激が、4日間の調製を必要とする単球由来の成熟DCの代わりに、放射線照射されたPBMCによってもたらされ得るかどうかを評価するために行った。
【0286】
表2(下記)において認められ得るように、培養の7日目で、刺激細胞としてのPBMCによるTcm表現型の誘導効率が、刺激細胞としての単球由来の成熟DC(md−mDC)とは対照的に、精製されたナイーブCD8 T細胞が応答細胞として働いたとき(92%対92%、それぞれ)と、非分離のCD8 T細胞が応答細胞として働いたとき(77%対80%、それぞれ)との両方において非常に類似していた。しかしながら、PBMC刺激細胞は、DCと比較して同じレベルのTcm拡大を、ナイーブCD8 T細胞(6.75対20.5、それぞれ)または非分離のCD8 T細胞(1.8対16)のどちらかを応答細胞として使用して誘発することができなかった。
【0287】
ナイーブCD8 T細胞または非分離のCD8 T応答細胞が、IL−21を含有する培地において3日間、同じ同種ドナーに由来する単球由来の成熟DC(8:1の応答細胞/DC比率)またはPBMC(1:1の応答細胞/PBMC比率)に対して刺激されたMLR培養。その後で、細胞を、さらなる活性化を伴うことなく7日目まで、IL−7およびIL−15を用いて成長させた。培養の7日目に、これらの異なる群をFACS分析によってTcmの割合について評価し、トリパンブルー排除によって細胞数について評価した。
【0288】
したがって、放射線照射された脾細胞が、拡大培養を誘導するために十分であったマウス用プロトコルとは異なって、ヒト用プロトコルでは、同種の単球由来の成熟DCが、Tcm細胞の良好な拡大培養のために極めて重要であり、同種PBMCによって置き換えることができない。
【0289】
Tcm表現型の誘導および細胞拡大培養のための最適な応答細胞/DC比率を明確にすること。
最適な応答細胞/DC比率を明確にするために、MLRシステムを、種々の応答細胞/DC比率が試験されたことを除いて上記で記載されるように使用した。
図9A〜
図9Bにおいて認められ得るように、4×10
5個の応答細胞を使用したとき、Tcm表現型の最適な取得が、50〜100×10
3個のDCを加えたときに達成され、一方、拡大は、最も低いDC濃度で最適であった。より低い応答細胞/DC比率でのさらなる実験を調べた。
【0290】
GMP規格の試薬にもっぱら基づく最終的な自己用プロトコルを明確にすること。
抗第三者Tcmを作製するための満足すべき自己用プロトコルを確立したとき、実験を、現在市販されているGMP規格の試薬だけに基づく同等な手順を開発するために行い、その結果、この取り組みをヒト患者において試験することを可能にするようにした。
【0291】
プラスチック製ディッシュにおける接着性細胞の枯渇化。
CD8 T細胞選択のプロセスを最適化する前に、実験を、PBMCに存在するプラスチック接着性細胞を除去することによる著しい初期濃縮を達成するために行った。このプロセスは、所望されるCD8+T細胞の濃度を増大させるだけでなく、マウスモデルにおいて使用される新鮮な脾細胞とは対照的に、凍結保存されたヒトPBMCを処理するときにも有用である。この実験は、10%ヒト血清およびIL−7を伴う一晩のインキュベーションにより、解凍された細胞を、磁気的濃縮プロセスに供される前に回復させることができたことを明らかにした(データは示されず)。
【0292】
ナイーブCD8 T細胞の濃縮
次に、焦点は、ナイーブCD8 T細胞の濃縮を、できる限り少ない抗体を使用して臨床規格の試薬に適合化することについてであった。
【0293】
図10(これは典型的な実験を表す)に示されるように、CD8 T細胞の所望される集団は、接着細胞の枯渇化後において0日目の細胞の21%に相当し、一方、それ以外の主要な「混入している」亜集団には、CD4 T細胞(61%)、B細胞(7%)およびNK細胞(7%)が含まれる。したがって、このCD4細胞が最大の汚染となっており、また、CD8 T細胞と競合することが以前に示されていた;したがって、このような細胞は除かれなければならなかった。同様に、IL−15培養物において拡大することが知られているNK細胞を除くことが重要であった。対照的に、B細胞は、これらの培養条件のもとでは死滅する傾向がある。したがって、抗CD4および抗CD56の磁気ビーズを用いた、可能性のある枯渇化を最初に、CD19+B細胞の枯渇化を伴って、または伴うことなく評価した。
【0294】
加えて、B細胞悪性腫瘍を有する患者のPBMCでは、CD8 T細胞のレベルが、健康なドナーと比較してより低いので、ナイーブCD8 T細胞の濃縮をCD45RA+細胞の正の選択によって省略することの可能性を調べる並行した評価を行った。これは、CD45RA+細胞の正の選択は、回収されたCD8 T細胞の数をさらに低下させるからである。
【0295】
したがって、1日前に、ドナーPBMCを最初に、接着性の骨髄性細胞を除くために特別に設計されたgreiber−bio−one CELLSTAR組織培養プレート(Greiner Bio−One Ltd.、Stonehouse、英国)における一晩のインキュベーションによって接着性細胞から枯渇させ、0日目に、非接着性細胞を4つの試験群に分割し、それぞれを異なる磁気的選別プロトコルに供した。培養の0日目、7日目、10日目および14日目に、細胞をFACS分析によって細胞組成およびTcm表現型について評価し、また、生細胞をトリパンブルー排除に基づいて計数することによって拡大について評価した。
【0296】
図10において認められ得るように、抗CD4および抗CD56のビーズのみを使用する最小限の磁気的細胞選別は、CD4 T細胞およびNK細胞の割合を61%および7%から12%および1%にそれぞれ低下させ、これにより、23%から60%へのCD8 T細胞の濃縮をもたらした。しかしながら、この手順には、7%から24%へのB細胞レベルの濃縮が伴っていた。抗CD19を枯渇化カクテルに加えることにより、B細胞が完全に枯渇化され、これにより、CD8 T細胞の改善された濃縮(90%)がもたらされた。抗CD45RAによるナイーブ細胞の正の濃縮を行う第2の工程を加えることにより、ナイーブ細胞(CD45RO−CD45RA+、CD3+CD8+に対してゲート制御される)のパーセントが両方の群において磁気的選別前の53%から91%に増大した。しかしながら、この工程は際立った影響をCD8 T細胞の最終的レベルに与えず、CD8 T細胞の最終的レベルが、抗CD4および抗CD56を使用したときには60%から66%に増大し、または、負の選択工程が抗CD19もまた含んだときには90%から94%に増大した。
【0297】
磁気的細胞選別の後、4つすべての群を、IL−21の存在下において3日間、同種樹状細胞による初回抗原刺激に供し、その後で、細胞を、IL−21、IL−7およびIL−15の存在下において、抗原非存在の環境で14日目まで拡大培養した。拡大培養されなかったコントロール群として、抗CD4、抗CD56および抗CD19を使用する枯渇化工程、ならびに、抗CD45RAを使用する正の濃縮工程によって濃縮されるナイーブCD8 T細胞を、抗原非存在の環境で、IL−7のみの存在下において14日目まで維持した。
【0298】
興味深いことに、0日目において、抗CD19により処置されたか、または処置されなかった群は、CD8 T細胞の著しく異なるレベルを示したが、この違いが、おそらくは培養物におけるB細胞の選択的な死のためであると考えられるが、7日目もの初期にはなくなり(
図11)、また、14日目に試験されたときにもまたなくなった(
図12)。同様に、CD8 T細胞の最初の精製の後におけるCD45RA+細胞の正の選択は、Tcm表現型を有するCD8+T細胞の最終的な濃縮にほんのわずかに寄与しただけであった。したがって、4つすべての群が、所望される細胞の類似したレベルを示し、些細な利点が、抗CD45RAによってナイーブ細胞について同様に濃縮された2つの群について認められた。
【0299】
典型的な実験において上記で示されるこの初期の結果を、最適な細胞単離試薬(“CD4−CD56−CD19−CD45RA+”)にさらされたコントロール群において達成される平均結果を、抗CD19または抗CD45RAの使用を除外しようとする試みが行われた他の群と比較することによってさらに分析した。
【0300】
したがって、最適なコントロール群において達成されるレベルのパーセントとして計算されるときのCD8 T細胞の平均パーセント(
図13A)、および、より重要なことに、実験群のすべてにおけるパーセントTcm(
図13B)が、非常に類似していた。
【0301】
対照的に、顕著な違いが、培養の10日目で試験されたときのそれぞれの細胞調製物の平均拡大において見出され、この場合、平均拡大が、65.6±0.5%から、105.2%±6.8%にまで及んでいた(
図14A)。しかしながら、拡大能における違いが、第2の精製工程に伴う低下した産生量によって打ち消された(
図14B)。
【0302】
図14C(これは、10日目におけるTcmの最終的な計算された産生量を示す)において認められ得るように、抗CD45RAによるナイーブ細胞の正の濃縮を行う第2の工程を加えることにより、Tcm細胞の最終的な産生量が、抗CD4および抗CD56による最初の枯渇化を使用したときには141%から123%に低下しただけであり、または、負の選択工程が抗CD19もまた含んだときには157%から100%に低下しただけであった。
【0303】
まとめると、これらの結果は、CD8 T細胞を単離するための試薬の最小限の使用に基づくプロトコル、すなわち、抗CD4および抗CD56による負の選択が、自己状況における臨床適用のために申し分ないことを示唆している。
【0304】
実施例2
GMP規格の試薬を使用するプラスチック製バックにおけるヒト抗第三者Tcmの大規模調製
患者自身のPBMCを自己Tcmの作製のために使用するときに予想される条件をシミュレーションするために、最初、2つの大規模な白血球除去輸血手順を2名の正常なドナーから行い、多数の単核細胞を(数個のバッチ物に分割して)凍結保存した。それぞれのバッチ物を1つの大規模な実験のために使用した。第1の実験では、DCをWurzburgプロトコルに従って凍結バッグ物から作製することにおける困難さ、および、生物学的活性が明確でない新しいGMP規格IL−15を調達したことを含めて、いくつかの技術的問題に直面した。これらの問題は、CD8 T細胞の非常に不良な拡大(3倍前後)をもたらしたが、(上記で記載されるような)DCのための現在記載されるプロトコルを使用することによって、かつ、IL−15の適切な濃度(すなわち、300U/ml)を使用することによってその後の実験において修正された。
【0305】
図15において認められ得るように、同じドナーのPBMCが2つの異なる第三者DCに対して2つの大規模実験で作製されたとき、CD8 T細胞の類似した拡大が、11日目において26.8倍から31.0倍にまで及んで達成された。この日において、細胞が直線的な成長を示したことを考慮すると、さらなる拡大がより後の時点で達成され得るであろうことが考えられる。しかしながら、このレベルの拡大は、体重1Kgあたり3×10
7個までの細胞を潜在的には投与することを可能にするので申し分ないものである。興味深いことに、0日目において、白血球除去輸血調製物には、CD14+単球およびCD20 B細胞が主として混入していたことが見出されたが、これらの細胞は細胞培養時に消失し、12日目における最終的な細胞組成は94%および98%のCD8+CD3+T細胞をそれぞれ含んでいた(
図16A〜
図16B)。
【0306】
重要なことに、異なるDCに対してこれら2つの培養物で達成されたTcm表現型は小規模実験の範囲内であり、だが、いくらかの変動が生じていた(
図17A〜
図17B)。したがって、両方の実験における5日目で、高レベルのTcm表現型(77%および71%、それぞれ)が見出されたが、このレベルが、第2のDCドナーに対する培養物において、9日目(65%対46%)および12日目(62%対35%)ではより著しく低下した。小規模実験では著しく観測されなかったこの変動性は、部分的には、DCを5日目で除くことの相対的困難さによって説明され得ると思われる。これは、細胞が、小規模実験で使用されるプレートに対するそれらの接着と比較して、プラスチック製バッグには接着しにくいからである。したがって、より長期の存在およびDCによる刺激により、Tcm表現型からTeff表現型へのより顕著な移行が引き起こされ得ると思われる。
【0307】
実施例3
樹立された細胞株に対するヒト第三者TcmのGVL能
自己状況では、抗第三者Tcmの起こり得る使用が、残存腫瘍細胞を根絶するためにだけであること(同種状況では、抗第三者Tcmはまた、BM細胞の生着を高めるために働くこと)を考慮すると、患者へのTcmの注入の前に品質管理のために使用され得るであろうエクスビボでの細胞毒性能についての直接的なアッセイを開発することが重要である。その目的のために、TCR非依存的アッセイを、MHC変異のためにTCRによって認識され得ないMHC変異型系統が依然として、それらのTCR非依存的殺傷機構を介して抗第三者CTLによって殺傷され得るという、Lask他[Lask A他、J Immunol、(2011)、187(4):2006〜14]による実証に基づいて使用した。明らかに、ヒトTcmのためにまた適用可能であるならば、そのような殺傷様式は、このTcm殺傷をNK細胞によって示されるTcm殺傷と区別するために役立ち得ると思われる。
【0308】
この疑問を検討するために、混合リンパ球反応(MLR)を、B細胞リンパ腫細胞株および形質細胞性白血病細胞株を標的とする抗第三者Tcmを用いて行い、パーセントアポトーシス細胞を22時間後に測定した。
図17C(これは典型的な実験を表す)において認められ得るように、顕著なGVL反応性がそのようなTcmによって示された。
【0309】
異なる実験において、CD8 T細胞を最初に、非CD8 T細胞(すなわち、CD4+T細胞、γ/δT細胞、B細胞、NK細胞、樹状細胞、単球、顆粒球および赤血球系細胞)を、磁気ビーズ選別を使用して大々的に枯渇化することによって濃縮した。
図18(これは典型的な実験を表す)において認められ得るように、混入しているNK細胞およびNKT細胞のパーセントが、試験された4つすべての群について非常に低かった(NK細胞については0.1%未満、NKT細胞については1.9%未満)。
【0310】
高度に精製されたCD8 T細胞をその後、下記の2つのタイプの細胞とインキュベーションした:a)TCR非依存的殺傷を明らかにするためのH.My C1R HLA−A2 K66A変異細胞株(K66A)、および、b)H.My C1R(neo)、すなわち、表面HLAのA抗原およびB抗原を欠き、したがって、Tcm上のCD8分子と、標的の白血病細胞のMHCにおけるα3ドメインとの間での相互作用を必要とする機構を介するTcmによる殺傷に対して非感受であるB細胞リンパ芽球様系統。
【0311】
図19A〜
図19Dに示されるように、MHC−I欠損のH.My C1R(neo)細胞と比較してK66A変異の標的細胞の顕著な殺傷が抗第三者Tcmによって示された。したがって、ヒト抗三者CTLと同様に、ヒトTcmは、TCR非依存的殺傷機構を介してB細胞腫瘍細胞を殺傷することができ、これは、標的細胞におけるMHC発現を必要とするNK媒介の殺傷とは対照的である。
【0312】
最も重要なことに、最適な細胞単離試薬(“CD4−CD56−CD19−CD45RA+”)にさらされたコントロール群において達成される平均結果を、抗CD19または抗CD45RAの使用(
図19A〜
図19D)が低減された他の群と比較することによってさらに分析されたとき、実験群のすべてにおけるH.My C1R HLA−A2 K66A変異細胞株のパーセントTCR非依存的殺傷(これは、最適なコントロール群において達成されるレベルのパーセントとして計算された)が非常に類似していた(
図20)(P>0.05、3つすべての試験群を参照コントロール群と比較したとき)。
【0313】
まとめると、これらの結果は、CD8 T細胞を単離するための試薬の最小限の使用により単離される細胞によって示されるGVL反応性が、より大々的な単離プロトコルに伴うGVL反応性よりも劣っていないことを示唆している。
【0314】
インビボでのTcmによる自己B−CLL腫瘍細胞の殺傷が、抗第三者CTLによるそのようなB−CLL殺傷を実証するために以前に用いられたHu/SCIDモデルを使用して行われる。
【0315】
実施例4
同種ヒト抗第三者Tcm細胞の作製
同種ヒト抗第三者Tcmを使用したときのGVHDの危険性を最小限に抑えるための新しいGMP規格取り組みの開始
マウスモデルにおいて以前に明らかにされたように、抗第三者Tcmは、同種BMTにおいて寛容性誘導体のために非常に有用であり得ると思われる[Ophir E他、Blood、(2010)、115(10):2095〜104]。この場合、同種BMドナーに由来するナイーブCD8+T細胞が応答細胞として働き、第三者ドナーの樹状細胞(DC)が、宿主非反応性Tcm細胞の作製を可能にするための刺激細胞として使用される。GVHDを避けるために、第三者ドナーが、そのHLAクラスI対立遺伝子のどれもが宿主のHLAクラスI対立遺伝子と共有されないことを保証するように選択される。
【0316】
それにもかかわらず、ヒト患者は近交系マウスよりもGVHDを受けやすい場合があることを考慮すると、この取り組みの臨床転換は慎重に進めなければならない。さらなる同種枯渇化(allo−depleting)工程、例えば、抗第三者同種刺激期間が終了したときの活性化された細胞の光枯渇化または選択などが、GVHDの危険性をさらに軽減するために必要とされるかもしれない。
【0317】
(同種用プロトコルのための)自己ヒト用プロトコルの改変
図21〜
図22に示されるように、同種状況のためのTcmを作製するためのプロトコルは、2つの主要な段階において自己状況のためのプロトコルと異なる:
a)CD8 T細胞を単離した後におけるCD45RA+細胞の選択。メモリーT細胞は、メモリーT細胞画分の非特異的なサイトカイン主導の拡大を引き起こすことができるナイーブT細胞よりも低い活性化閾値を有する。これらの細胞には、宿主抗原と交差反応し、したがって、GVHD誘導の危険性を増大させるクローンが含まれる場合がある。異なるヒトドナーの間でのナイーブT細胞の割合における差によって引き起こされる影響を最小限に抑えるために、また、GVHDの危険性を軽減させるために、ナイーブCD8 T(CD45RA+CD8+)細胞を、Tcm細胞を作製するための供給源として使用した。
b)CD137+の活性化されたCD8 T細胞の枯渇化による培養終了時における潜在的に宿主反応性のT細胞の除去。
【0318】
IL−7およびIL−15の遮断期間の延長
自己培養物(本明細書中上記)について記載されたように、本発明者らは、IL−7およびIL−15にさらされたナイーブCD8 T細胞が抗原非依存的様式で増殖することを認めている。他方で、同種刺激の非存在下においてIL−21にさらされたナイーブCD8 T細胞は増殖せず、培養の7日目を越えて生存さえしなかった。したがって、IL−7およびIL−15の添加を3日目から7日目に遅らせることは潜在的には、第三者刺激細胞に対する応答性を有しない抗宿主クローンの選択的枯渇化を引き起こし得ると思われる。
【0319】
サイトカインを添加するための最適な時期を同種反応性枯渇化に関して明確にするために、ナイーブCD8 T細胞を、放射線照射された同種第三者DCにより、IL−21の存在下または非存在下において4:1の比率で7日間刺激した。その後で、細胞はさらなる活性化を何ら受けず、IL−7およびIL−15とともに(
図23B)、または、IL−15およびIL−21とともに(
図23C)、または、IL−15単独とともに(
図23D)、13日目まで拡大培養した;生じた細胞集団を、参照コントロール群に従って培養され、自己状況について記載されるように拡大培養されたナイーブCD8 T細胞(IL21およびDCを伴うd(0−3)でのインキュベーション;IL7+IL15の添加を伴うd(3−13)でのインキュベーション)と比較した(
図23A)。
【0320】
時期は異なるが、参照コントロール群と同じ順序のサイトカイン添加を使用した場合、すなわち、IL−21の添加を3日から7日に延ばし、IL−7およびIL−15を、3日目ではなく、7日目に加えた場合、細胞の拡大培養が妨げられた(
図24A)(参照コントロール群によって示される増殖のほんの54±7%に達する増殖)。しかしながら、セントラルメモリー表現型の誘導は類似していた(
図24B)(参照コントロール群によって示されるセントラルメモリー表現型の99±14.8%)。
【0321】
示されるように、IL−7を除き、かつ、IL−21の添加を培養終了時にまで延ばすことにより、細胞の拡大が低下し(
図24A)(参照コントロール群によって示される増殖の60±13%)、同様にまた、セントラルメモリー表現型の獲得が低下した(参照コントロール群によって示されるTcmレベルの82±6.8%、
図24B)。
【0322】
7日間のサイトカイン遮断、その後、7日目からのIL−15のみの添加を使用するナイーブCD8 T細胞の初回抗原刺激は、細胞の拡大能を劇的に低下させ(参照コントロール群によって示される増殖のほんの5±1.3%の増殖)、セントラルメモリー表現型の獲得もまた低下させた(
図24B)(参照コントロール群によって示されるTcmレベルの68±26%)。
【0323】
最も重要なパラメーター、すなわち、(HLAクラスIにおいて、刺激のために使用される第三者細胞と完全に異なる適切なドナーに関して試験される)宿主反応性クローンの枯渇化が調べられる。サイトカイン遮断期間を最適化するためのさらなる実験もまた行われる。
【0324】
CD137活性化マーカーに基づく、同種反応性を枯渇化するための2段階の磁気的選別取り組み
第三者概念に基づいて抗宿主クローンを枯渇化するための洗練された方法が、下記のCD137選択工程を含む2段階の磁気的選別技術によって達成されるかもしれない:
a.培養開始時における抗第三者特異的クローンの正の選択。
b.培養終了間近における抗宿主特異的クローンの枯渇化。
【0325】
近年、CD137は、CD137が休止CD8
+T細胞では発現されず、かつ、その発現が24時間の刺激の後で確実に誘導されるので、ヒトCD8
+T細胞の抗原特異的な活性化のための好適なマーカーであることが記載されている。
【0326】
この取り組みを評価するために、ナイーブCD8 T細胞を、放射線照射された同種第三者DCにより、IL−21の存在下において刺激した。14時間の活性化の後、CD137+細胞を磁気的選別による正の選択に供した。CD137+細胞をその後、放射線照射された同種第三者DCにより、IL−21の存在下において3日目まで再刺激した。その後で、細胞をIL−7およびIL−15とともに10日目まで拡大培養し、その後、放射線照射された宿主PBMCにより、IL−7およびIL−15の存在下において活性化した。24時間の活性化の後、CD137+細胞を磁気的選別によって枯渇化した。CD137枯渇細胞をIL−7およびIL−15とともに再置床し、14日目まで培養した。選択された日に、細胞をトリパンブルー排除によって細胞数について評価し、また、FACS分析を使用してCD8 T細胞集団内のTcm(CD62L+CD45RO+)の割合について評価した。抗第三者および抗宿主の同種反応性細胞の頻度を第三者または宿主の放射線照射PBMCに対するCFSEアッセイによって評価した。これらの結果を、IL−21の存在下において3日間刺激され、その後で、IL−7およびIL−15とともに拡大培養されたコントロール群(“参照コントロール群”)において達成される結果と比較した。
【0327】
したがって、
図25において認められ得るように、ナイーブCD8 T細胞について濃縮した直後(0日目)では、総CD8 T細胞のほんの0.7%が、IL−21の存在下において14時間にわたって第三者DCに対して活性化されたときにはCD137を発現したが、総CD8 T細胞区画からの、CD137+を発現するCD8 T細胞の割合が、DC刺激の非存在下における2.5%とは対照的に、8.3%に増大した。活性化された細胞のこの亜集団の磁気的選別は、CD137+細胞の顕著な濃縮(85%、それぞれ)をもたらし、また、総CD8 T細胞区画におけるCD62L+CD8 T細胞のレベルが84%から14%に劇的に低下した(データは示されず)。
【0328】
表5(下記)に示されるように、この正の選択には、低下した細胞回収が伴った。したがって、0日目において、ナイーブCD8 T細胞についての濃縮の後における、接着性細胞が枯渇化されたPBMCからの産生量が7.6%であり、また、1日目において、CD137+についての正の選択の後では、産生量が0.25%に低下した(7.6%の3.3%)。培養の7日目で評価されたとき、CD137+細胞についての正の選択に供されたCD8 T細胞の試験群は、Tcm細胞のパーセントにおいて参照コントロール群に非常に似ており(67%対70%、それぞれ)、パーセントTcmにおける群間のこの類似性はまた、培養の10日目において維持された(54%対52%、それぞれ)(
図26)。
【0329】
ナイーブCD8 T細胞を、放射線照射された同種第三者DCにより、IL−21の存在下において4:1の比率で3日間刺激した。細胞はその後でのさらなる活性化を何ら受けず、細胞をIL−7およびIL−15とともに14日目まで拡大培養した(“参照コントロール群”)。代替として、ナイーブCD8 T細胞を、放射線照射された同種第三者DCにより、IL−21の存在下において5.7:1の比率で刺激した。14時間の活性化の後、CD137+細胞を磁気的選別による正の選択に供した。CD137+細胞をその後、放射線照射された同種第三者DCにより、IL−21の存在下において4:1の比率で3日目まで再刺激した。その後で、細胞をIL−7およびIL−15とともに10日目まで拡大培養した。10日目に、細胞を、放射線照射された宿主PBMCにより、IL−7およびIL−15の存在下において(1:2の比率で)活性化した。24時間後、CD137+細胞を磁気的選別によって枯渇化した。CD137枯渇細胞をIL−7およびIL−15とともに再置床し、14日目まで培養した(“抗第三者CD137+および抗宿主CD137−”)。示された日に、細胞をトリパンブルー排除によって計数した。
a=ナイーブCD8 T細胞の濃縮後の産生量(PBMC−接着細胞の開始数のパーセントとして表される)。
b=第三者DCによる活性化およびCD137+CD8+ T細胞の濃縮の後における産生量(PBMC−接着細胞の開始数のパーセントとして表される)。
c=13日目における0日目からの拡大倍数。
d=14日目における0日目からの拡大倍数。
e=最終的細胞数=(産生量)×(0日目からの拡大倍数)(PBMC−接着細胞の開始数のパーセントとして表される)。
【0330】
そのうえ、細胞組成(%CD8 T細胞、%NK細胞および%NKT細胞)を培養の7日目および10日目で評価したとき、CD137+細胞の正の選択に供されたCD8 T細胞の試験群は、その細胞組成において参照コントロール群に非常に似ていた(表6、下記)。
【0331】
ナイーブCD8 T細胞を、放射線照射された同種第三者DCにより、IL−21の存在下において4:1の比率で3日間刺激した。その後で、細胞はさらなる活性化を何ら受けず、細胞をIL−7およびIL−15とともに10日目まで拡大培養した(“参照コントロール群”)。代替として、ナイーブCD8 T細胞を、放射線照射された同種第三者DCにより、IL−21の存在下において5.7:1の比率で刺激した。14時間の活性化の後、CD137+細胞を磁気的選別による正の選択に供した。CD137+細胞をその後、放射線照射された同種第三者DCにより、IL−21の存在下において4:1の比率で3日目まで再刺激した。その後で、細胞をIL−7およびIL−15とともに10日目まで拡大培養した。細胞をFACS分析によって細胞組成について評価した。
【0332】
他方で、
図27に示されるように、CD137+細胞の正の選択に供されたCD8 T細胞の試験群は、両方の時点で参照コントロール群との比較において優れた拡大能を示した(7日目において0日目から35倍の拡大対7倍の拡大(それぞれ)、および、10日目において0日目から119倍の拡大対34倍の拡大(それぞれ))。10日目に、CD137+細胞の正の選択に供された群のCD8 T細胞を2つの試験群に分割した。第1の群において、細胞は、IL−7およびIL−15とともに14日目まで拡大培養され続け(“抗第三者CD137+”)、一方、第2の試験群における細胞は、放射線照射された宿主PBMCにより、IL−7およびIL−15の存在下において活性化された。24時間の活性化の後、CD137+細胞を磁気的選別によって枯渇化した。CD137枯渇細胞をその後、IL−7およびIL−15とともに再置床し、14日目まで培養した(“抗第三者CD137+および抗宿主CD137−”)。
【0333】
13日目で評価されたとき、CD137+の正の選択に供された試験群に由来するCD8 T細胞は、両方の時点で参照コントロール群との比較において優れた拡大能を示し続けた(134倍の拡大対61倍の拡大、それぞれ)。対照的に、CD137+の正の抗第三者選択と、抗宿主CD137+細胞の枯渇化との両方に供された試験群に由来するCD8 T細胞は、14日目で評価されたとき、より低い拡大能を示した(72倍の拡大)(
図27)。このことは、11日目から14日目までの間における細胞拡大は、CD137+の抗宿主特異的な同種反応性T細胞の枯渇化によって引き起こされる細胞喪失を補うことができなかったことを示している。
【0334】
図28に示されるように、CD137の発現が10日目で評価されたとき、CD137+細胞の正の選択に供されたCD8 T細胞における総CD8 T細胞区画のほんの0.5%がCD137+を発現しただけであった。したがって、この群におけるCD8 T細胞は、CD137の発現を(1日目における85%から、10日目におけるほんの0.5%にまで)相当にダウンレギュレーションした。
【0335】
しかしながら、放射線照射された宿主PBMCによる(宿主PBMCに有利になるように1:2の比率での)24時間の活性化の後では、総CD8 T細胞区画からの、CD137+を発現するCD8 T細胞のパーセントが16%に増大した。磁気的選別によるこれらのCD137+細胞の枯渇化は、総CD8 T細胞区画の、CD137を発現するCD8 T細胞のパーセントを16%から3%に低下させた。
【0336】
残存する抗宿主同種反応性の最後の分析を、IL−7の存在下における第三者PBMCとは対照的に、宿主PBMCに対して刺激したときのCFSE保持細胞のレベルを比較することによって14日目で行った。
【0337】
図29に示されるように、第三者PBMCによる刺激の後において特異的に分裂する細胞の数が、参照コントロール群と比較して、CD137に基づく正の選択および負の選択に供された群ではおよそ3倍多かった(2259個の分裂細胞対741個の分裂細胞、それぞれ)。最も重要なことに、培養終了近くでのCD137+細胞の除去は、検出可能な増殖(134個の分裂細胞)を示した参照コントロール群とは対照的に、宿主PBMCに対する応答における増殖を完全に妨げた。興味深いことに、培養終了時における抗宿主クローンの除去を伴うことなく第三者に対して活性化された細胞の正の選択を受ける群は、コントロール群と比較して、より高いレベルの宿主反応性細胞を示した。このことは、(HLAタイプ分類によって故意に不一致させたが)、宿主刺激細胞および第三者刺激細胞のMHCアロタイプの間での起こり得る交差反応性を示している。したがって、培養終了時における抗宿主枯渇化工程の重要性が明瞭に示されるが、さらなる研究が、抗第三者活性化細胞の最初の正の選択の潜在的な役割を評価するために必要である。
【0338】
しかしながら、表5(上記)に示されるように、CD137に基づく2段階の磁気的選別による抗宿主特異的クローンの成功した枯渇化は、全体的に見て、より低い細胞回収を培養終了時にもたらしている(18%対463%、PBMC−接着性細胞の投入数からのパーセントとしてそれぞれ表される)。
【0339】
まとめると、この予備的実験は、CD137活性化マーカーに基づく2段階の磁気的選別による同種反応性の枯渇化が実行可能であり、そして、宿主非反応性の同種Tcm細胞を作製するための今回のプロトコルに組み込まれるかもしれないであろうことを示している。示された勇気づける特質として、下記のことが挙げられる:1)正の選択を行ったときの同種活性化によって誘導される高い発現レベルが10日目において完全にダウンレギュレーションされ、このことは、宿主抗原に対する別の同種活性化を可能にした。2)細胞組成およびTcm細胞のパーセントが、CD137活性化マーカーに基づく磁気的選別によって劇的に影響されなかった。3)培養終了近くでのCD137+細胞の除去は、検出可能な増殖(134個の分裂細胞)を示した参照コントロール群とは対照的に、宿主PBMCに対する応答における増殖を完全に妨げた。現在の研究は下記のことを含む:1)正の選択工程の前におけるFcR阻止の使用。2)宿主DCを、培養終了時における宿主反応性細胞のより効果的な検出のためにPBMCの代わりに使用すること。3)CD25またはIFNガンマ捕捉のようなより多くの臨床利用可能な活性化マーカーを枯渇化工程に加えること。
【0340】
結論:
Tcm作製終了時におけるCD137枯渇化の使用は、これらの細胞から同種反応性をさらに枯渇させるための実行可能な取り組みをもたらすかもしれないであろう。
【0341】
CD25枯渇化と併用でのCD137枯渇化の使用(それらの両方がGMP試薬として利用可能である)を改良し続けるための試みが探求される。
【0342】
加えて、様々な実験が、ただ1つだけのHLA−I対立遺伝子を有する人工APCを使用することによって潜在的な交差反応性を最小限に抑えるために行われる。
【0343】
本発明はその特定の実施態様によって説明してきたが、多くの別法、変更および変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更および変形すべてを包含するものである。
【0344】
本明細書で挙げた刊行物、特許および特許出願はすべて、個々の刊行物、特許および特許出願が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用または確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。節の見出しが使用されている程度まで、それらは必ずしも限定であると解釈されるべきではない。