特許第6196629号(P6196629)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6196629カウンターパルセーション装置とともに使用するためのグラフト
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6196629
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】カウンターパルセーション装置とともに使用するためのグラフト
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/10 20060101AFI20170904BHJP
   A61F 2/06 20130101ALI20170904BHJP
【FI】
   A61M1/10 100
   A61F2/06
【請求項の数】22
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-543562(P2014-543562)
(86)(22)【出願日】2012年11月21日
(65)【公表番号】特表2015-506725(P2015-506725A)
(43)【公表日】2015年3月5日
(86)【国際出願番号】US2012066292
(87)【国際公開番号】WO2013078338
(87)【国際公開日】20130530
【審査請求日】2015年11月19日
(31)【優先権主張番号】61/563,238
(32)【優先日】2011年11月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510121444
【氏名又は名称】アビオメド インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100114889
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】スペンス ポール
(72)【発明者】
【氏名】ダウリング ロブ
(72)【発明者】
【氏名】クン ボブ
(72)【発明者】
【氏名】ヘイスティー ケイトリン
(72)【発明者】
【氏名】ザイス トーステン
(72)【発明者】
【氏名】グラッツ エリック
(72)【発明者】
【氏名】シュパニアー ゲルト
【審査官】 寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05084064(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0280306(US,A1)
【文献】 特開平02−277466(JP,A)
【文献】 米国特許第04240409(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0095210(US,A1)
【文献】 特開2005−124859(JP,A)
【文献】 特表2006−520621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/10
A61F 2/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カウンターパルセーション装置(CPD)をヒトまたは動物対象内の血管に取り付けるための装置であって、
該血管に取り付けられるように構成された第一端と、第二端と、該第一端と該第二端との間の流体接続を提供する内部通路とを有するインターポジショングラフト;および
該インターポジショングラフトの該第二端に取り付けられた第一端と、該CPDに取り付けられるように構成された第二端と、該第一端と該第二端との間の流体接続を提供する内部通路とを有するポンプグラフト
を含み、
該インターポジショングラフトの該内部通路が、粗面上での生物学的成長を促進するように構成された粗面を含み、
該ポンプグラフトの該内部通路が、平滑面上での生物学的成長を抑制するように構成された平滑面を含み、
該インターポジショングラフトの該内部通路が、
該ポンプグラフトの該第一端が該粗面と物理的に接触することなく該インターポジショングラフトの該内部通路の中に延びるように構成された、該インターポジショングラフトの該第二端の近くに位置する直径増大領域
を有する、
装置。
【請求項2】
インターポジショングラフトが、粗面から平滑面上への生物学的成長を抑制するために、該粗面と該平滑面との接触を防ぐように成形されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
インターポジショングラフトの第二端が第一の縫合リングを含み、ポンプグラフトの第一端が第二の縫合リングを含み、該第一および第二の縫合リングが互いに取り付けられている、請求項1〜2のいずれか一項に記載の装置。
【請求項4】
インターポジショングラフトが実質的に可撓性である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
粗面が布材料を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
布材料が、ポリマー繊維を含む布を含む、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
繊維がポリエステル繊維を含む、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
ポンプグラフトが発泡熱可塑性ポリマーを含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
インターポジショングラフトが実質的に弾性であり、使用中に、該インターポジショングラフトと血管との接続部を開いた状態に維持するのに十分な力を提供する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
カウンターパルセーション装置(CPD)を血管に取り付けるためのキットであって、
該血管に取り付けられるように構成された第一端と、第二端と、該第一端と該第二端との間の流体接続を提供する内部通路とを有するインターポジショングラフト;および
該インターポジショングラフトの該第二端に取り付けられるように構成された第一端と、該CPDに取り付けられるように構成された第二端と、該第一端と該第二端との間の流体接続とを提供する内部通路とを有するポンプグラフト
を含み、
該インターポジショングラフトの該内部通路が、粗面上での生物学的成長を促進するように構成された粗面を含み、
該ポンプグラフトの該内部通路が、平滑面上での生物学的成長を抑制するように構成された平滑面を含
該インターポジショングラフトの該内部通路が、
該ポンプグラフトの該第一端が該粗面と物理的に接触することなく該インターポジショングラフトの該内部通路の中に延びるように構成された、該インターポジショングラフトの該第二端の近くに位置する直径増大領域
を有する、
キット。
【請求項11】
インターポジショングラフトが、粗面から平滑面上への生物学的成長を抑制するために、該粗面と該平滑面との接触を防ぐように成形されている、請求項10に記載のキット。
【請求項12】
インターポジショングラフトの第二端が第一の縫合リングを含み、ポンプグラフトの第一端が第二の縫合リングを含み、該第一および第二の縫合リングが互いに取り付けられるように構成されている、請求項1011のいずれか一項に記載のキット。
【請求項13】
インターポジショングラフトが実質的に可撓性である、請求項1012のいずれか一項に記載のキット。
【請求項14】
粗面が布材料を含む、請求項1013のいずれか一項に記載のキット。
【請求項15】
布材料が、ポリマー繊維を含む布を含む、請求項14に記載のキット。
【請求項16】
繊維がポリエステル繊維を含む、請求項15に記載のキット。
【請求項17】
ポンプグラフトが成形熱可塑性ポリマーを含む、請求項10〜16のいずれか一項に記載のキット。
【請求項18】
インターポジショングラフトが実質的に弾性であり、使用中に、該インターポジショングラフトと血管との接続部を開いた状態に維持するのに十分な力を提供する、請求項10〜17のいずれか一項に記載のキット。
【請求項19】
カウンターパルセーション装置(CPD);
該CPDをヒトまたは動物対象内の血管に取り付けるように構成されている、請求項1〜9のいずれか一項に記載の装置
を含む、システム。
【請求項20】
CPDとCPD駆動装置との空気連通を提供する駆動ラインをさらに含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
CPD駆動装置をさらに含む、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
CPDが、駆動ラインと空気連通している駆動チャンバ、および該駆動チャンバと遮断されている血液チャンバを含む、請求項20または21に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2011年11月23日出願のCOUNTERPULSATION DEVICES, SYSTEMS, AND METHODSと題する米国特許仮出願第61/563,238号の恩典を主張する。この出願の全内容が参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
背景
以下のセクションは情報提供目的のみに提示される。このセクションにおける資料の包含は、そのような資料が本願の先行技術であることを認めるものとみなされるべきではない。
【0003】
鬱血性心不全のような心疾患が米国だけでも500万人超の患者を苦しめている。そのような障害に罹患した多くの患者は機械式循環支援を必要とする。カウンターパルセーション療法が心疾患の処置に使用される場合がある。カウンターパルセーションとは、外部血液ポンピングを心臓の周期と同期させて、循環を支援し、心臓の負担を減少させる技術である。カウンターパルセーションポンプは、心臓が充満しているとき(弛緩期)に拍出して、心臓へ向かう血流および酸素を増加させる。カウンターパルセーションポンプは、心臓が拍出しているときに充満して、心臓の作業負荷を軽減し、酸素要求量を減少させる。
【0004】
カウンターパルセーションは、カウンターパルセーション装置(CPD)と呼ばれる植込み型ポンプ装置を使用して遂行することができる。たとえば検出された心電図(EKG)信号を使用して、CPDのポンピング動作を患者の心拍に同調させてカウンターパルセーションを提供し得る。
【発明の概要】
【0005】
概要
本出願人らは、カウンターパルセーション装置(CPD)とともに使用するための、本明細書に記載されるような装置、システム、および方法を開発した。
【0006】
一つの局面において、カウンターパルセーション装置(CPD)をヒトまたは動物対象内の血管に取り付けるための装置であって、血管に取り付けられるように構成された第一端と、第二端と、第一端と第二端との間の流体接続を提供する内部通路とを有するインターポジショングラフト;およびインターポジショングラフトの第二端に取り付けられた第一端と、CPDに取り付けられるように構成された第二端と、第一端と第二端との間の流体接続を提供する内部通路とを有するポンプグラフトを含む装置が開示される。いくつかの態様において、インターポジショングラフトの内部通路は、粗面上での生物学的成長を促進するように構成された粗面を含み、ポンプグラフトの内部通路は、平滑面上での生物学的成長を抑制するように構成された平滑面を含む。
【0007】
いくつかの態様において、インターポジショングラフトは、粗面から平滑面上への生物学的成長を抑制するために、粗面と平滑面との接触を防ぐように成形されている。
【0008】
いくつかの態様において、インターポジショングラフトの内部通路は、ポンプグラフトの第一端が粗面と物理的に接触することなくインターポジショングラフトの内部通路の中に延びるように構成された、インターポジショングラフトの第二端の近くに位置する直径増大領域を有する。
【0009】
いくつかの態様において、インターポジショングラフトの第二端は第一の縫合リングを含み、ポンプグラフトの第一端は第二の縫合リングを含む。いくつかの態様において、第一および第二の縫合リングは互いに取り付けられる。
【0010】
いくつかの態様において、インターポジショングラフトおよび/またはポンプグラフトは実質的に可撓性である。
【0011】
いくつかの態様において、粗面は布材料を含む。いくつかの態様において、布材料は、ポリマー繊維を含む布を含む。いくつかの態様において、繊維はポリエステル繊維を含む。
【0012】
いくつかの態様において、ポンプグラフトは発泡または成形材料、たとえば熱可塑性ポリマーを含む。いくつかの態様において、ポリマーはフルオロポリマー類(たとえばポリテトラフルオロエチレン)を含む。
【0013】
別の局面において、カウンターパルセーション装置(CPD)をヒトまたは動物対象内の血管に取り付ける方法であって、血管に取り付けられるように構成された第一端と、第二端と、第一端と第二端との間の流体接続を提供する内部通路とを有するインターポジショングラフトを得る工程;およびインターポジショングラフトの第二端に取り付けられた第一端と、CPDに取り付けられるように構成された第二端と、第一端と第二端との間の流体接続を提供する内部通路とを有するポンプグラフトを得る工程を含む方法が開示される。いくつかの態様において、インターポジショングラフトの内部通路は、粗面上での生物学的成長を促進するように構成された粗面を含み、ポンプグラフトの内部通路は、平滑面上での生物学的成長を抑制するように構成された平滑面を含む。いくつかの態様は、インターポジショングラフトの第一端を血管に取り付ける工程;インターポジショングラフトの第二端をポンプグラフトの第一端に取り付ける工程;およびポンプグラフトの第二端をCPDに取り付ける工程を含む。
【0014】
いくつかの態様において、インターポジショングラフトは、粗面から平滑面上への生物学的成長を抑制するために、粗面と平滑面との接触を防ぐように成形されている。
【0015】
いくつかの態様において、インターポジショングラフトの内部通路は、インターポジショングラフトの第二端の近くに位置する直径増大領域を有する。いくつかの態様は、ポンプグラフトの第一端が粗面と物理的に接触することなくインターポジショングラフトの内部通路の中に延びるように、インターポジショングラフトの第二端をポンプグラフトの第一端に取り付ける工程を含む。
【0016】
いくつかの態様において、インターポジショングラフトの第二端は第一の縫合リングを含み、ポンプグラフトの第一端は第二の縫合リングを含み、インターポジショングラフトの第二端をポンプグラフトの第一端に取り付ける工程は、第一および第二の縫合リングを互いに縫合する工程を含む。
【0017】
いくつかの態様において、インターポジショングラフトおよび/またはポンプグラフトは実質的に可撓性である。いくつかの態様は、インターポジショングラフトの第一端を血管に取り付ける工程中に、インターポジショングラフトを撓ませることを含む。いくつかの態様において、インターポジショングラフトを撓ませることは、グラフトを撓ませて血管の視認性の増大を提供することを含む。
【0018】
いくつかの態様において、粗面は布材料を含む。いくつかの態様において、布材料は、ポリマー繊維を含む布を含む。いくつかの態様において、繊維はポリエステル繊維を含む。
【0019】
いくつかの態様において、ポンプグラフトは発泡または成形材料、たとえば熱可塑性ポリマーを含む。いくつかの態様において、ポリマーはフルオロポリマー類(たとえばポリテトラフルオロエチレン)を含む。
【0020】
いくつかの態様において、血管は鎖骨下動脈を含む。
【0021】
いくつかの態様は、CPDを対象内に植込む工程を含む。いくつかの態様において、CPDは対象の胸腔の外側に表在的に植込まれ、ポンプおよびインターポジショングラフトがCPDと胸腔内の血管との流体連通を提供する。
【0022】
別の局面において、カウンターパルセーション装置(CPD)を血管に取り付けるためのキットであって、血管に取り付けられるように構成された第一端と、第二端と、第一端と第二端との間の流体接続を提供する内部通路とを有するインターポジショングラフト;およびインターポジショングラフトの第二端に取り付けられるように構成された第一端と、CPDに取り付けられるように構成された第二端と、第一端と第二端との間の流体接続を提供する内部通路とを有するポンプグラフトを含むキットが開示される。いくつかの態様において、インターポジショングラフトの内部通路は、粗面上での生物学的成長を促進するように構成された粗面を含み、ポンプグラフトの内部通路は、平滑面上での生物学的成長を抑制するように構成された平滑面を含む。
【0023】
いくつかの態様において、インターポジショングラフトは、粗面から平滑面上への生物学的成長を抑制するために、粗面と平滑面との接触を防ぐように成形されている。
【0024】
いくつかの態様において、インターポジショングラフトの内部通路は、ポンプグラフトの第一端が粗面と物理的に接触することなくインターポジショングラフトの内部通路の中に延びるように構成された、インターポジショングラフトの第二端の近くに位置する直径増大領域を有する。
【0025】
いくつかの態様において、インターポジショングラフトの第二端は第一の縫合リングを含み、ポンプグラフトの第一端は第二の縫合リングを含む。いくつかの態様において、第一および第二の縫合リングは、互いに取り付けられるように構成されている。
【0026】
いくつかの態様において、粗面は布材料を含む。いくつかの態様において、布材料は、ポリマー繊維を含む布を含む。いくつかの態様において、繊維はポリエステル繊維を含む。
【0027】
いくつかの態様において、ポンプグラフトは発泡または成形材料、たとえば熱可塑性ポリマーを含む。いくつかの態様において、ポリマーはフルオロポリマー類(たとえばポリテトラフルオロエチレン)を含む。
【0028】
別の局面において、カウンターパルセーション装置(CPD);およびCPDをヒトまたは動物対象内の血管に取り付けるように構成されている、上記タイプのいずれか一つの装置を含むシステムが開示される。いくつかの態様は、CPDとCPD駆動装置との空気連通を提供する駆動ラインを含む。いくつかの態様はCPD駆動装置を含む。
【0029】
様々な態様が上記要素のいずれかを単独で、または任意の適当な組み合わせで含み得る。
[本発明1001]
カウンターパルセーション装置(CPD)をヒトまたは動物対象内の血管に取り付けるための装置であって、
該血管に取り付けられるように構成された第一端と、第二端と、該第一端と該第二端との間の流体接続を提供する内部通路とを有するインターポジショングラフト;および
該インターポジショングラフトの該第二端に取り付けられた第一端と、該CPDに取り付けられるように構成された第二端と、該第一端と該第二端との間の流体接続を提供する内部通路とを有するポンプグラフト
を含み、
該インターポジショングラフトの該内部通路が、粗面上での生物学的成長を促進するように構成された粗面を含み、
該ポンプグラフトの該内部通路が、平滑面上での生物学的成長を抑制するように構成された平滑面を含む、装置。
[本発明1002]
インターポジショングラフトが、粗面から平滑面上への生物学的成長を抑制するために、該粗面と該平滑面との接触を防ぐように成形されている、本発明1001の装置。
[本発明1003]
インターポジショングラフトの内部通路が、
ポンプグラフトの第一端が粗面と物理的に接触することなく該インターポジショングラフトの該内部通路の中に延びるように構成された、該インターポジショングラフトの第二端の近くに位置する直径増大領域
を有する、本発明1002の装置。
[本発明1004]
インターポジショングラフトの第二端が第一の縫合リングを含み、ポンプグラフトの第一端が第二の縫合リングを含み、該第一および第二の縫合リングが互いに取り付けられている、前記本発明のいずれかの装置。
[本発明1005]
インターポジショングラフトが実質的に可撓性である、前記本発明のいずれかの装置。
[本発明1006]
粗面が布材料を含む、前記本発明のいずれかの装置。
[本発明1007]
布材料が、ポリマー繊維を含む布を含む、本発明1006の装置。
[本発明1008]
繊維がポリエステル繊維を含む、本発明1007の装置。
[本発明1009]
ポンプグラフトが発泡熱可塑性ポリマーを含む、前記本発明のいずれかの装置。
[本発明1010]
インターポジショングラフトが実質的に弾性であり、使用中に、該インターポジショングラフトと血管との接続部を開いた状態に維持するのに十分な力を提供する、前記本発明のいずれかの装置。
[本発明1011]
カウンターパルセーション装置(CPD)をヒトまたは動物対象内の血管に取り付ける方法であって、
該血管に取り付けられるように構成された第一端と、第二端と、該第一端と該第二端との間の流体接続を提供する内部通路とを有するインターポジショングラフトを得る工程;および
該インターポジショングラフトの該第二端に取り付けられた第一端と、該CPDに取り付けられるように構成された第二端と、該第一端と該第二端との間の流体接続を提供する内部通路とを有するポンプグラフトを得る工程
を含み、
ここで該インターポジショングラフトの該内部通路が、粗面上での生物学的成長を促進するように構成された粗面を含み、
該ポンプグラフトの該内部通路が、平滑面上での生物学的成長を抑制するように構成された平滑面を含み、
該インターポジショングラフトの該第一端を該血管に取り付ける工程;
該インターポジショングラフトの該第二端を該ポンプグラフトの該第一端に取り付ける工程;および
該ポンプグラフトの該第二端を該CPDに取り付ける工程
をさらに含む、方法。
[本発明1012]
インターポジショングラフトが、粗面から平滑面上への生物学的成長を抑制するために、該粗面と該平滑面との接触を防ぐように成形されている、本発明1011の方法。
[本発明1013]
インターポジショングラフトの内部通路が、該インターポジショングラフトの第二端の近くに位置する直径増大領域を有し、
ポンプグラフトの第一端が粗面と物理的に接触することなく該インターポジショングラフトの該内部通路の中に延びるように、該インターポジショングラフトの該第二端を該ポンプグラフトの該第一端に取り付ける工程
を含む、本発明1012の方法。
[本発明1014]
インターポジショングラフトの第二端が第一の縫合リングを含み、ポンプグラフトの第一端が第二の縫合リングを含み、該インターポジショングラフトの該第二端を該ポンプグラフトの該第一端に取り付ける工程が、該第一および第二の縫合リングを互いに縫合することを含む、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1015]
インターポジショングラフトが実質的に可撓性であり、該インターポジショングラフトの第一端を血管に取り付ける工程中に、該インターポジショングラフトを撓ませることをさらに含む、本発明1011〜1014のいずれかの方法。
[本発明1016]
インターポジショングラフトを撓ませることが、該グラフトを撓ませて血管の視認性の増大を提供することを含む、本発明1015の方法。
[本発明1017]
粗面が布材料を含む、本発明1011〜1016のいずれかの方法。
[本発明1018]
布材料が、ポリマー繊維を含む布を含む、本発明1017の方法。
[本発明1019]
繊維がポリエステル繊維を含む、本発明1018の方法。
[本発明1020]
ポンプグラフトが成形熱可塑性ポリマーを含む、本発明1011〜1019のいずれかの方法。
[本発明1021]
インターポジショングラフトが実質的に弾性であり、使用中に、該インターポジショングラフトと血管との接続部を開いた状態に維持するのに十分な力を提供する、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1022]
血管が鎖骨下動脈を含む、本発明1011〜1020のいずれかの方法。
[本発明1023]
CPDを対象内に植込む工程をさらに含む、本発明1011〜1021のいずれかの方法。
[本発明1024]
CPDが対象の胸腔の外側に表在的に植込まれ、ポンプおよびインターポジショングラフトが該CPDと該胸腔内の血管との流体連通を提供する、本発明1023の方法。
[本発明1025]
カウンターパルセーション装置(CPD)を血管に取り付けるためのキットであって、
該血管に取り付けられるように構成された第一端と、第二端と、該第一端と該第二端との間の流体接続を提供する内部通路とを有するインターポジショングラフト;および
該インターポジショングラフトの該第二端に取り付けられるように構成された第一端と、該CPDに取り付けられるように構成された第二端と、該第一端と該第二端との間の流体接続とを提供する内部通路とを有するポンプグラフト
を含み、
該インターポジショングラフトの該内部通路が、粗面上での生物学的成長を促進するように構成された粗面を含み、
該ポンプグラフトの該内部通路が、平滑面上での生物学的成長を抑制するように構成された平滑面を含む、キット。
[本発明1026]
インターポジショングラフトが、粗面から平滑面上への生物学的成長を抑制するために、該粗面と該平滑面との接触を防ぐように成形されている、本発明1025のキット。
[本発明1027]
インターポジショングラフトの内部通路が、
ポンプグラフトの第一端が粗面と物理的に接触することなく該インターポジショングラフトの該内部通路の中に延びるように構成された、該インターポジショングラフトの第二端の近くに位置する直径増大領域
を有する、本発明1026のキット。
[本発明1028]
インターポジショングラフトの第二端が第一の縫合リングを含み、ポンプグラフトの第一端が第二の縫合リングを含み、該第一および第二の縫合リングが互いに取り付けられるように構成されている、本発明1025〜1027のいずれかのキット。
[本発明1029]
インターポジショングラフトが実質的に可撓性である、本発明1025〜1028のいずれかのキット。
[本発明1030]
粗面が布材料を含む、本発明1025〜1029のいずれかのキット。
[本発明1031]
布材料が、ポリマー繊維を含む布を含む、本発明1030のキット。
[本発明1032]
繊維がポリエステル繊維を含む、本発明1031のキット。
[本発明1033]
ポンプグラフトが成形熱可塑性ポリマーを含む、前記本発明のいずれかのキット。
[本発明1034]
インターポジショングラフトが実質的に弾性であり、使用中に、該インターポジショングラフトと血管との接続部を開いた状態に維持するのに十分な力を提供する、前記本発明のいずれかのキット。
[本発明1035]
カウンターパルセーション装置(CPD);
該CPDをヒトまたは動物対象内の血管に取り付けるように構成されている、本発明1001〜1024のいずれかの装置
を含む、システム。
[本発明1036]
CPDとCPD駆動装置との空気連通を提供する駆動ラインをさらに含む、本発明1035のシステム。
[本発明1037]
CPD駆動装置をさらに含む、本発明1036のシステム。
[本発明1038]
CPDが、駆動ラインと空気連通している駆動チャンバ、および該駆動チャンバと遮断されている血液チャンバを含む、本発明1036または1037のシステム。
【図面の簡単な説明】
【0030】
添付図面は、例示のためだけに示され、一定の縮尺で描かれていると意図したものではない。
【0031】
図1】カウンターパルセーション装置(CPD)の図である。
図2】CPD、CPD駆動装置、およびCPDグラフトを含むCPDシステムの図である。
図3】CPDグラフトの図である。
図4A】CPDグラフト用のインターポジショングラフトの写真である。
図4B】CPDグラフト用のインターポジショングラフトの写真である。
図5】CPDグラフト用のポンプグラフトの写真である。
図6】取り付けられた駆動ラインを備えるCPDの写真である。
図7A】ヒト対象でのCPD装置の植込みを示す。
図7B】ヒト対象でのCPD装置の植込みを示す。
図7C】ヒト対象でのCPD装置の植込みを示す。
図7D】ヒト対象でのCPD装置の植込みを示す。
図7E】ヒト対象でのCPD装置の植込みを示す。
図7F】ヒト対象でのCPD装置の植込みを示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
詳細な説明
以下の開示は、植込み可能なカウンターパルセーション装置(CPD)とともに使用するためのグラフトおよび関連の方法を説明する。
【0033】
図1はCPD10の例示的態様を示す。CPD10は、グラフト100(図示せず、以下に記す)を使用して対象の血管に取り付けることができるポンプポート11を有する。ポンプポート11はCPD10への血液流入およびCPD10からの血液流出を可能にする。CPD10はまた、たとえば以下に詳述するようにCPD10の動作を制御し得る駆動ライン201(図示せず、以下に記す)を受けることができる駆動ラインポート12を含む。いくつかの態様において、CPD10は、ポンプポート11と流体連通した血液ポンプ、たとえばバルブレスポンプを含み得る。いくつかの態様において、CPDは、膜で駆動チャンバから分けられた血液チャンバを含む。駆動チャンバは駆動ラインと空気連通しており、一方、血液チャンバはグラフト100を介して血管と流体連通している。
【0034】
いくつかの態様において、CPD10は、Abiomed, Inc.(Danvers, MA.)から入手可能なSymphony(登録商標)製品ラインで入手可能なタイプであってもよい。
【0035】
図2は、カウンターパルセーション療法を対象に提供するために使用される例示的なCPDシステム200を示す。CPD10は、グラフト100、たとえば下記のタイプのグラフトを使用して血管300(たとえば鎖骨下動脈)に取り付けられる。以下に詳述するように、いくつかの態様において、CPDは、対象内に、たとえば対象の胸腔の外側のいわゆる「ペースメーカポケット」に表在的に植込まれ得、グラフト100が、CPDと胸腔内の血管300との流体連通を提供する。
【0036】
駆動ライン201(たとえば空気ライン)はCPD10を駆動制御装置202に取り付けて、CPD10の動作の制御を可能にする。たとえば、いくつかの態様において、駆動制御装置202は、CPD10からの外部血液ポンピングを対象の心周期と同期させて循環を支援し、心臓の負担を減少させる。制御装置はCPD10に、心臓が弛緩するときには血液を拍出させて、心臓へ向かう血流および酸素を増加させ、心臓が収縮するときにはポンプを受動的または能動的に充満させて血液を拍出させて、心臓の作業負荷を減少させかつ酸素要求量を減少させ得る。または、たとえば駆動制御装置202は、駆動ライン201を通して正の圧および真空を適用して、CPD10を空にしてもよく、充満させてもよい。たとえば、駆動制御装置202に送られる検出されたEKGシグナルを使用して、CPD10のポンピング動作を患者の心拍に同期させてカウンターパルセーションを提供してもよい。
【0037】
図3は、グラフト100の一態様の詳細図を示す。グラフト100はインターポジショングラフト101とポンプグラフト110とで構成されている。インターポジショングラフト101は、任意の適当な吻合術を使用して血管300に取り付けられる第一端102と、ポンプグラフト110に取り付けられる第二端103とを有する。たとえば、いくつかの態様において、インターポジショングラフト101は血管300に縫い付けられる。ポンプグラフト110との流体連通を提供する内部通路104(たとえば管状通路)がインターポジショングラフト101中に形成されている。
【0038】
いくつかの態様において、グラフト100は、2012年8月16日に公開されたLockable Quick Couplingと題する米国特許公開公報第2012/0209057号に記載されているコネクタの一つまたは複数を含み得る。この公報の全内容が参照により本明細書に組み入れられる。
【0039】
ポンプグラフト110は、任意の適当な取り付け技術を使用してインターポジショングラフト101の第二端103に取り付けられる第一端112を有する。図示するように、インターポジショングラフト101およびポンプグラフト110はそれぞれ、縫合リング105および115を(それぞれ)含む。これらのリングを縫い合わせると、インターポジショングラフト101とポンプグラフト110とを取り付けることができる。
【0040】
ポンプグラフト110は、任意の適当なコネクタ(図示せず)を使用してCPD10(図示せず)に取り付ける第二端113を有する。たとえば、以下さらに詳細に説明する図5が、金属(図示するように、チタン)スクリューオン型コネクタを取り入れたポンプグラフト110の態様を示す。
【0041】
CPD10との流体連通を提供する内部通路114(たとえば管状通路)がポンプグラフト110中に形成されている。したがって、完全に組み立てられたとき、グラフト100は、血管300からインターポジショングラフト101およびポンプグラフト110を通ってCPD10に達する流体連通を提供する。
【0042】
いくつかの態様において、グラフト100は、インターポジショングラフト101に接触している、およびインターポジショングラフト101を取り囲んでいる生物学的組織の成長を促進しながらも(たとえば、血管100への接続を改善するため)、ポンプグラフト110上への組織成長を抑制する(たとえば、CPDの動作への干渉を避けるため)ように構成されている。
【0043】
いくつかの態様において、この構成は、CPD10とともに使用する場合、たとえば、グラフト100を介する血管300との接続によって血流がCPD10に出入りする場合に好都合である。本明細書に記載されるグラフト100の態様は、好都合には、グラフトの隅々までの良好な洗浄を促進すること、および血栓形成を防止することまたは軽減することによって、両方向に流れるための血液適合性を提供し得る。
【0044】
この構成は、心室補助装置(VAD)のような他の血液ポンプ装置とは対照的である。典型的には、VADは流入導管および流出導管を別々に有し、したがって本明細書に記載されるタイプのグラフト接続を要しない。
【0045】
いくつかの態様において、インターポジショングラフト101の内部通路104(および/または他の面)は、表面上の生物学的成長を促進するように構成された粗面を含む。いくつかの態様において、粗面は布材料を含む。いくつかの態様において、布材料は、ポリマー繊維を含む布を含む。いくつかの態様において、繊維はポリエステル繊維を含む。たとえば、いくつかの態様において、インターポジショングラフト101は、当業者にはよく知られる、ある長さのDACRON(登録商標)布で構成されてもよい。
【0046】
いくつかの態様において、ポンプグラフト110の内部通路114は、表面上の生物学的成長を抑制するように構成された平滑な面または実質的に平滑な面を含む。たとえば、いくつかの態様において、ポンプグラフト110は、プラスチックまたは他の適当な材料、たとえば成形されたおよび/または発泡熱可塑性ポリマーで作られ得る。いくつかの態様において、ポリマーはフルオロポリマー、たとえばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む。いくつかの態様において、ポンプグラフト110の内部通路114は、通路の平滑さをさらに高めるためにコートされていてもよい(たとえばシリコーンコーティングを使用して)。
【0047】
いくつかの態様において、インターポジショングラフト101および/またはポンプグラフト110の物理的形状は、ポンプグラフト110の内部通路114の中への組織の内方成長を防ぐように設計され得る。たとえば、図示するように、インターポジショングラフト101は、インターポジショングラフト101の粗面または表面とポンプグラフト110の内部通路114の平滑面との接触を防ぐように成形されている。インターポジショングラフト101の内部通路104は、ポンプグラフト110との接続箇所の近くに位置する直径増大領域である、いわゆる「チムニー特徴」106を有する。チムニー特徴106は、ポンプグラフト110の第一端112が任意の粗面と物理的に接触することなくインターポジショングラフト101の内部通路104の中に延びるように配置される。いくつかの態様において、これは、ポンプグラフト110の内部通路114の中への組織の内方成長を抑制または実質的に防止し得る。
【0048】
典型的なケースでは、血管110(たとえば鎖骨下動脈)への外科的アクセスが制限される場合があり、視認性が制限される。これを補うため、いくつかの態様において、インターポジショングラフト101は、変形させることができるように可撓性材料でできている。これにより、外科医は、インターポジショングラフト101の吻合を実施するときに動脈の切り口を見ることができる。インターポジショングラフト110の吻合が完了したのち、たとえば縫合リング105および115または任意の他の適当な技術を使用して、ポンプグラフト110がインターポジショングラフトに取り付けられる。いくつかの態様において、インターポジショングラフト101の弾性は、血管とグラフトとの接続部を開いた状態に、すなわちポンプの充満期間中、維持するのに十分である。
【0049】
いくつかの態様において、端部102から端部103までの寸法に沿ったインターポジショングラフト101の長さは、端部112から端部113までの寸法に沿ったポンプグラフト110の長さよりも短くてもよい。たとえば、いくつかの態様において、ポンプグラフト110の長さは、インターポジショングラフトの長さの少なくとも1.25倍、1.5倍、1.75倍、2.0倍、2.5倍、3.0倍、3.5倍、4.0倍、4.5倍、5.0倍、5.5倍、6.0倍でもよく、それより長くてもよい。
【0050】
図4Aおよび4Bは、インターポジショングラフト101の例示的態様の写真(それぞれ側面および正面)を示す。図示するように、インターポジショングラフト101はDACRON(登録商標)布で構成されている。この布は、インターポジショングラフト101の外面の部分的シリコーンコーティングを含む。上記のように、通路104沿いの内面は、組織の内方成長を促進するために、コートされておらず、粗い。端部102は、血管300に取り付けられるときの適切な位置合わせを支援するために、斜めに切られている。
【0051】
図5は、ポンプグラフト110の例示的態様の写真を示す。ポンプグラフト110は発泡PTFE材料から構成されている。グラフト110の外部は溝付きまたは蛇腹状であるが、内部通路114(図示せず)は平滑であり、かつ組織成長を促進し得る特徴を有しないか、または実質的に有しない。ポンプグラフト110の内部通路114は(図示したように)平滑さを改善するためにシリコーンでコートされていてもよい。ポンプグラフト110は、CPD10への取り付けのために、金属(図示するように、チタン)スクリューオン型コネクタ120を含む。インターポジショングラフト101への取り付けのために縫合リング115が提供されている。
【0052】
ポンプグラフト110は、任意の適当な長さ、たとえば約3cm〜約10cmの範囲またはその任意の部分的な範囲の長さであり得る。いくつかの態様においては、対象の生理機能に最も適した長さを選択し得るよう、様々な長さのグラフトが提供されてもよい。たとえば、いくつかの態様においては、長さ4.5cm、5.5cmおよび7cmの長さのグラフトが提供され得る。
【0053】
図4A、4Bおよび5に示すように、グラフト101および110は、適切な位置合わせを支援するために、しるしで事前にマーキングされていてもよい。グラフトはまた、ポンプグラフトの端部112がインターポジショングラフト101の内部通路104の中で適切に中心に配されることを保証するために、縫合を誘導するためのしるしを含んでいてもよい。上記のように、これは、グラフトの隅々までの良好な洗浄を促進し、かつ血栓形成を防止または軽減し得る。
【0054】
図6は、駆動ラインポート12に取り付けられた駆動ライン201を備えるCPD10の例示的態様の写真を示す。ポンプポート11は、図5に示すコネクタ16に取り付けるために使用されるチタンコネクタ13を含む。図6に示す態様において、CPD10は、毎分約100以上の心拍数で、毎分約3.0リットル以上の速度でポンピングすることができるバルブレスポンプを含む。
【0055】
いくつかの態様において、上記コンポーネントのいくつかまたはすべて(たとえばインターポーザグラフト110およびポンプグラフト110)は、組み立てられていない状態でキットとして提供されてもよい。いくつかの態様において、キットは、たとえば印刷媒体または電子媒体に記録された、組み立ておよび使用のための取扱い説明書を含んでいてもよい。
【0056】
図7A〜7Fは、グラフト100を使用する、ヒト対象でのCPD10の例示的植込み法を示す。
【0057】
図7Aを参照すると、皮下組織中、胸筋筋膜の上方または下方の、ペースメーカ配置に使用される面に近い、またはそれと平行な面に、ポンプポケットが形成されている。いくつかの態様においては、CPD10のフィットモデルを使用して、ポケットを正しくサイズ決定してもよい。CPD10は、駆動ライン201を外に出した状態でポケット内に配置される(たとえば、生検用穿孔器具、穴開け器具または他の適当な器具を使用して)。
【0058】
図7Bを参照すると、たとえば当技術分野において公知の技術を使用して、鎖骨下動脈300を露出させている。近位および遠位の鉗子が鎖骨下動脈300に配置され、動脈切開術が実施される。
【0059】
図7Cを参照すると、インターポジショングラフト101が動脈300に縫合されている。いくつかの態様においては、グラフト101を撓ませて、または変形させて、動脈300の視認性の増大が提供されてもよい。
【0060】
図7Dを参照すると、インターポジショングラフト101が動脈300に取り付けられたのち、適切な長さのポンプグラフト110が選択される。ポンプグラフト110は、縫合リング105および115を使用してインターポジショングラフトに取り付けられる。いくつかの態様において、グラフト101および110は、適切な位置合わせを支援するために、しるしで事前にマーキングされていてもよい。グラフトはまた、ポンプグラフトの端部112がインターポジショングラフト101の内部通路104の中で正しく中心に配されることを保証するために、縫合を誘導するためのしるしを含んでいてもよい。上記のように、これは、グラフトの隅々までの良好な洗浄を促進し、かつ血栓形成を防止または軽減し得る。加えて、これらのしるしは、接続箇所の確実な封止を提供するのに十分な密度に縫合を維持するのに役立つさらなるマーキングを含んでいてもよい。いくつかの態様において、ひとたびグラフト100が組み立てられ、動脈に取り付けられたならば、栓(図示せず)をグラフトの開口端113に配置して(たとえばコネクタ120を使用して)血液によるグラフト100の逆充満を可能にしてもよい。
【0061】
図7Eを参照すると、グラフト100はCPD10のポンプポート11に取り付けられ(たとえば、栓を取り外したのちコネクタ120を使用して)、CPD10は、駆動ライン201に取り付けられたハンドポンプを使用してプライミングされる。エア漏れがないかチェックしたのち、駆動ラインを駆動制御装置202に取り付け、カウンターパルセーション支援を開始し得る。
【0062】
図7Fを参照すると、ひとたびCPD10の適切な配置および動作が確認されたならば、ポンプポケットの創傷を閉じ得る。
【0063】
上記例は、カウンターパルセーション用途に使用するためのCPD装置とのグラフトの使用に焦点を置いたものであるが、様々な態様において、本明細書に記載されるタイプのグラフトは、他のタイプの装置とともに、また、他の用途において使用されてもよいことが理解されよう。様々な態様において、本明細書に記載されるタイプのグラフトは、血液の流入および流出の両方に使用される単一のポートを取り入れた様々なタイプの血液ポンプとともに好都合に使用し得る。
【0064】
以上、さまざまな発明態様を本明細書に説明および提示したが、本明細書に説明する機能を行うため、ならびに/または、本明細書に説明する結果および/もしくは本明細書に説明する利点のうち1つまたは複数を得るための、他のさまざまな手段および/または構造を当業者は容易に想定できるものと考えられ、そのようなバリエーションおよび/または改変の各々は、本明細書に説明する発明態様の範囲内に入るものとみなされる。より一般的には、本明細書に説明するすべてのパラメータ、寸法、材料、および構成は例示的なものであると意図されていること、ならびに、実際のパラメータ、寸法、材料、および/または構成は本発明の教示が用いられる具体的な用途によって異なりうることを、当業者は容易に理解できるであろう。当業者は、本明細書に説明する具体的な発明態様に対する多くの同等物を、認識するか、または日常的な実験法のみを用いて確認できるであろう。したがって、以上の態様は例示としてのみ提示されていること、ならびに、具体的に説明および特許請求されている以外の発明態様も、添付の特許請求の範囲およびその同等物の範囲内において実施されうることが理解されるべきである。
【0065】
本開示の発明態様は、本明細書に説明する個々の特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法を対象としている。加えて、そのような特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法の2つ以上の任意の組み合わせは、そのような特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法が互いに矛盾するのでなければ、本開示の発明の範囲内に含まれる。
【0066】
上述の態様は任意の多数の様式で実施されうる。例えば、ハードウェア、ソフトウェア、またはその組み合わせを用いて態様が実施されてもよい。ソフトウェアで実施される場合、ソフトウェアコードは任意の好適なプロセッサまたはプロセッサの集合において実行されてもよく、これは単一のコンピュータで提供されていてもまたは複数のコンピュータに分散されていてもよい。
【0067】
さらに、理解されるべき点として、コンピュータは、ラックマウント式コンピュータ、デスクトップ式コンピュータ、ラップトップ式コンピュータ、またはタブレット式コンピュータなど、複数の形態のうち任意のもので具現化されていてもよい。加えて、コンピュータは、携帯情報端末(PDA)、スマートフォン、または他の任意の好適な可搬式もしくは固定式の電子デバイスなど、一般にコンピュータとはみなされていないが好適な処理能力を備えたデバイスに組み込まれていてもよい。
【0068】
コンピュータはまた、1つまたは複数の入力デバイスおよび出力デバイスをもっていてもよい。これらのデバイスを用いて、ほかにもあるが特に、ユーザーインターフェースを提示してもよい。ユーザーインターフェースを提供するために用いられうる出力デバイスの例としては、出力を視覚的に提示するためのプリンタまたは表示画面、および、出力を聴覚的に提示するためのスピーカまたは他の音響生成デバイスなどがある。ユーザーインターフェースのために用いられうる入力デバイスの例としては、キーボード、ならびに、マウス、タッチパッド、およびデジタル化タブレットなどのポインティングデバイスなどがある。別の例として、コンピュータは、音声認識または他の聴覚的フォーマットによって入力情報を受け取ってもよい。
【0069】
そのようなコンピュータは、1つまたは複数のネットワークによって任意の好適な形式で相互接続されていてもよく、そのようなネットワークとしては、ローカルエリアネットワーク、または、企業ネットワーク、インテリジェントネットワーク(IN)、もしくはインターネットなどのワイドエリアネットワークなどがある。そのようなネットワークは、任意の好適な技術に基づいていてもよく、任意の好適なプロトコルに従って動作してもよく、かつ、ワイヤレスネットワーク、ワイヤードネットワーク、または光ファイバーネットワークを含んでいてもよい。
【0070】
本明細書に説明する機能性の少なくとも一部を実施するために利用されるコンピュータは、メモリ、1つまたは複数の演算処理ユニット(本明細書において単に「プロセッサ」ともいう)、1つまたは複数の通信インターフェース、1つまたは複数の表示ユニット、および、1つまたは複数のユーザー入力デバイスを備えていてもよい。メモリは任意のコンピュータ可読媒体を備えていてもよく、かつ、本明細書に説明するさまざまな機能性を実施するためのコンピュータ命令(本明細書において「プロセッサ実行可能な命令」ともいう)を保存してもよい。演算処理ユニットは命令を実行するために用いられてもよい。通信インターフェースは、ワイヤードネットワーク、ワイヤレスネットワーク、バス、または他の通信手段に連結されていてもよく、かつこれにより、コンピュータが他のデバイスに通信を送ることおよび/または他のデバイスから通信を受け取ることを可能にしてもよい。表示ユニットは、例えば、命令の実行との関連においてユーザーがさまざまな情報を見ることを可能にするなどのために提供されてもよい。ユーザー入力デバイスは、例えば、ユーザーが手動調整を行うこと、選択すること、データもしくは他のさまざまな情報を入力すること、および/または命令の実行中に任意のさまざまな様式でプロセッサと対話することを可能にするなどのために提供されてもよい。
【0071】
本明細書に概説するさまざまな方法または処理は、さまざまなオペレーティングシステムまたはプラットフォームのうち任意の1つを利用する1つまたは複数のプロセッサで実行できるソフトウェアとしてコード化されていてもよい。加えて、そのようなソフトウェアは、複数の好適なプログラミング言語および/またはプログラミング用もしくはスクリプト用ツールのうち任意のものを用いて書かれてもよく、かつまた、フレームワークまたは仮想マシンで実行される実行可能な機械語コードまたは中間コードとしてコンパイルされてもよい。
【0072】
この点において、本発明のさまざまな概念は、1つまたは複数のコンピュータまたは他のプロセッサで実行されたときに上述の本発明のさまざまな態様を実施する方法を行う1つまたは複数のプログラムが書き込まれたコンピュータ可読式記憶媒体(または複数のコンピュータ可読式記憶媒体)(例えば、コンピュータメモリ、1つまたは複数のフロッピーディスク、コンパクトディスク、光ディスク、磁気テープ、フラッシュメモリ、Field Programmable Gate Arrayもしくは他の半導体デバイス内の回路構成、または、他の非一時的な媒体もしくは有形のコンピュータ記憶媒体など)として実施されてもよい。コンピュータ可読媒体は、そこに保存された1つまたは複数のプログラムが1つまたは複数の異なるコンピュータまたは他のプロセッサにロードされて上述の本発明のさまざまな局面が実施されうるよう、可搬性であってもよい。
【0073】
本明細書において「プログラム(program)」または「ソフトウェア(software)」という用語は総称的な意味で用いられ、上述の態様のさまざまな局面を実施するようコンピュータまたは他のプロセッサをプログラムするために利用されてもよい任意の種類のコンピュータコードまたはコンピュータ実行可能命令のセットを指す。加えて、理解されるべき点として、1つの局面において、実行されたときに本発明の方法を行う1つまたは複数のコンピュータプログラムは、本発明のさまざまな局面を実施するうえで、単一のコンピュータまたはプロセッサ上に存在していなくてもよく、複数の異なるコンピュータまたはプロセッサ間にモジュール様式で分散していてもよい。
【0074】
コンピュータ実行可能命令は、1つまたは複数のコンピュータまたは他のデバイスにより実行される多数の形式であってもよく、例えばプログラムモジュールなどであってもよい。一般に、プログラムモジュールは、特定のタスクを行うかまたは特定の抽象データ型を実装する、ルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造などを含む。典型的に、プログラムモジュールの機能性は、さまざまな態様において所望により組み合わせられるかまたは分散されてもよい。
【0075】
加えて、データ構造も、任意の好適な形式でコンピュータ可読媒体に保存されてもよい。説明を単純にするため、データ構造は、データ構造内の場所を介して関連付けされるフィールドをもつように示されてもよい。そのような関連性もまた同様に、フィールド間の関連性を伝えるコンピュータ可読媒体内の場所を伴う保存領域をフィールドに割り当てることによって実現されてもよい。しかし、データ構造のフィールドにおいて情報間の関連性を確立するため任意の好適なメカニズムが用いられてもよく、これには、ポインタ、タグ、またはデータ要素間の関連性を確立する他のメカニズムの使用を介したものも含まれる。
【0076】
加えて、本発明のさまざまな概念は1つまたは複数の方法として具現化されてもよく、その1例はすでに提供したとおりである。本発明の方法の一部として行われる行為は任意の好適な様式で順序立てされてもよい。したがって、提示したのと異なる順序で行為が行われるように態様が構築されてもよく、これには、実例的態様において順次的な行為として示されているものであっても、いくつかの行為を同時に行うことも含まれうる。
【0077】
本明細書において定義および使用されるすべての定義は、その支配において、辞書の定義、参照により組み入れられる文書における定義、および/または定義される用語の通常の意味を上回ると理解されるべきである。
【0078】
本明細書および特許請求の範囲において使用される不定冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」は、そうでないことが明示されているのでない限り、「少なくとも1つの(at least one)」を意味するものと理解されるべきである。
【0079】
本明細書および特許請求の範囲において使用される「および(ならびに)/または(もしくは)(and/or)」という句は、等位接続された要素の「いずれかまたは両方(either or both)」、すなわち、一部の場合において接続的に存在し他の場合において離接的に存在する要素を意味するものと理解されるべきである。「および/または」を伴って列挙される複数の要素も同じ様式で解釈されるべきであり、すなわち、等位接続された要素のうち「1つまたは複数(one or more)」と解釈されるべきである。「および/または」の節によって具体的に特定された要素以外に、任意で他の要素が存在していてもよく、それは具体的に特定された要素と関連していてもまたは関連していなくてもよい。したがって、非限定的な例として、「Aおよび/またはB(A and/or B)」への参照は、「含む、備える(comprising)」などのオープンエンド語句との関連において用いられた場合、1つの態様においてAのみを参照し(任意でB以外の要素を含む);別の態様においてBのみを参照し(任意でA以外の要素を含む);さらに別の態様においてAおよびBの両方を参照する(任意で他の要素を含む);などの可能性がある。
【0080】
本明細書および特許請求の範囲において使用される「または(もしくは)(or)」は、上記に定義した「および/または」と同じ意味をもつものと理解されるべきである。例えば、列挙内の項目を分けるとき、「または」または「および/または」は包含的であると解釈されるべきであり、すなわち、複数または列挙の要素のうち少なくとも1つを含むが、1つより多くもまた含み、そして列挙されていない追加の項目も任意で含むと解釈されるべきである。そうでないことを明示している用語、例えば「〜のうち1つのみ(only one of)」もしくは「〜のうち厳密に1つ(exactly one of)」、または特許請求の範囲において用いられる場合の「〜からなる(consisting of)」などのみが、複数または列挙の要素のうち厳密に1つの要素を含むことを参照する。概して、本明細書において用いられる「または」という用語は、「いずれか(either)」、「〜のうち1つ(one of)」、「〜のうち1つのみ」、または「〜のうち厳密に1つ」など、排他性の用語が先行している場合にのみ、排他的な二者択一(すなわち「1つまたは他方であるが両方ではない(one or the other but not both)」)を示すものとして解釈されるべきである。特許請求の範囲において用いられる場合の「本質的に〜からなる(consisting essentially of)」は、特許法の分野において用いられる通常の意味をもつ。
【0081】
本明細書および特許請求の範囲において使用される「少なくとも1つの(at least one)」という句は、1つまたは複数の要素の列挙への参照において、要素の列挙内の任意の1つまたは複数の要素から選択される少なくとも1つの要素を意味するが、要素の列挙内に具体的に列挙されている各々の要素のうち少なくとも1つを必ずしも含んでいる必要はなく、かつ、要素の列挙内の要素の任意の組み合わせを排除しないと理解されるべきである。この定義はまた、「少なくとも1つの」という句が参照する要素の列挙内で具体的に特定された要素以外に、任意で要素が存在していてもよく、それは具体的に特定された要素と関連していてもまたは関連していなくてもよいことを許容する。したがって、非限定的な例として、「AおよびBのうち少なくとも1つ(at least one of A and B)」(または等価的に「AまたはBのうち少なくとも1つ(at least one of A or B)」、または等価的に「Aおよび/またはBのうち少なくとも1つ(at least one of A and/or B)」)は、1つの態様において、少なくとも1つであり任意で1つより多くを含むAであって、Bが存在しないこと(そして任意でB以外の要素を含むこと)を参照し;別の態様において、少なくとも1つであり任意で1つより多くを含むBであって、Aが存在しないこと(そして任意でA以外の要素を含むこと)を参照し;さらに別の態様において、少なくとも1つであり任意で1つより多くを含むA、および、少なくとも1つであり任意で1つより多くを含むB(そして任意で他の要素を含むこと)を参照する;などの可能性がある。
【0082】
以上の本明細書と同様に、特許請求の範囲において、「含む、備える(comprising)」、「含む(including)」、「帯びる(carrying)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」、「伴う(involving)」、「保持する(holding)」、「〜で構成される(composed of)」などのすべての移行句は、オープンエンドである、すなわち包含するが限定的でないことを意味すると理解されるべきである。United States Patent Office Manual of Patent Examining Proceduresのセクション2111.03に定められているように、「〜からなる(consisting of)」および「本質的に〜からなる(consisting essentially of)」という移行句のみが、それぞれクローズドおよびセミクローズドの移行句である。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F