(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動測色装置は、たとえば起動時や、長時間使用時に、測色計のキャリブレーション(以下、単に校正ともいう)が行われる。特許文献1〜3には、測色計の校正方法が明記されていない。ところで、測色計の校正は、測色計そのものの機構にもよるが、通常は校正用パネル(たとえば色が既知の白色パネル)を測定し、測色計に記憶されている濃度データとの比較により行われる。この際、校正用パネルは、測定位置とは別の位置(たとえば自動測色装置上の所定の位置)に設けられているか、測色計に内蔵されている。測定位置とは別の位置に校正用パネルが設けられている場合、自動測色装置は、所定の位置まで測色計を移動させ、その後、校正を行う。また、校正用パネルが測色計に内蔵されている場合、測色計は、いったん自動測色装置から取り外されてから校正が実施され得る。このように、従来の校正作業は、測色計を移動させるか、または測色計を取り外す必要があり、手間や時間を要していた。
【0005】
また、自動測色装置は、測色前に、被測定物における測定範囲を画定する必要がある。特許文献1〜3には、測定範囲の画定方法が明記されていない。測定範囲は、たとえば被測定物上の基準となる3点を指定し、その3点の基準点により画定される矩形領域として定義される。この場合、ユーザーは、測色計を被測定物上に移動させ、たとえば測色計の近傍に設けられた照準窓から真下方向にのぞき、基準点を定める。この際、照準窓から真下方向をのぞくことが困難である場合、ユーザーは、斜め方向から基準点を指定せざるを得ない。一般に、カラーチャートを構成するそれぞれのカラーパッチの寸法は、1個当たり数ミリ程度である。そのため、このような方法では、基準点を正確に指定することが難しい。
【0006】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、校正作業が簡便であるか、または、高精度で測定範囲を画定し得ることにより、適切に被測定物を測色し得る測色方法および自動測色装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の測色方法および自動測色装置には、以下の構成が主に含まれる。
【0008】
(1)被測定物を測色する測色計が取り付けられる自動測色装置を用いて前記被測定物を測色する測色方法であり、前記測色計を校正する校正工程を含み、前記測色計は、前記被測定物を測色する第1姿勢と、校正を行う第2姿勢とに変位し、前記被測定物を測色する測定部と、前記測定部によって測色される校正用タイルと、前記校正用タイルが取り付けられ、前記測色計が前記第1姿勢から前記第2姿勢に変位する際に、前記測定部の測定位置に前記校正用タイルを移動させるタイル移動機構とを備え、前記自動測色装置は、前記校正工程において前記測色計の前記第1姿勢から前記第2姿勢への変位を許容する変位機構を備え、前記校正工程は、前記変位機構を駆動して、前記測色計の前記第1姿勢から前記第2姿勢への変位を許容し、前記タイル移動機構によって前記校正用タイルを前記測色計の前記測定位置に移動させてから校正を行う、測色方法。
【0009】
このような構成によれば、測色方法は、校正工程を含む。校正工程は、変位機構を駆動して、測色計の第1姿勢から第2姿勢への変位を許容し、タイル移動機構によって校正用タイルを測色計の測定位置に移動させてから校正を行う。そのため、校正作業は、測色計を測定位置とは別の位置に移動させたり、取り外したりすることなく、タイル移動機構による簡便な動作によって短時間のうちに実施され得る。その結果、被測定物の測色は、適切に実施され得る。
【0010】
(2)前記校正工程は、前記測色計が前記自動測色装置に取り付けられたまま行われる、(1)記載の測色方法。
【0011】
このような構成によれば、校正工程は、測色計が自動測色装置に取り付けられたまま行われる。そのため、校正作業は、取り外しや再度の取り付けによるわずかな位置のズレ等が生じにくい。その結果、校正作業は、より正確に行われ得る。
【0012】
(3)前記被測定物上に、前記測色計による測定範囲を画定する範囲設定工程をさらに含み、前記範囲設定工程は、前記被測定物上に、前記測定範囲を画定するための光学ポインタを表示する表示工程を含む、(1)または(2)記載の測色方法。
【0013】
このような構成によれば、測色計による測定範囲を画定する範囲設定工程が行われる際、被測定物上に光学ポインタが表示される。そのため、たとえばユーザーは、測定範囲を画定するための基準点を設定する際に、斜め方向から目視で観察する場合であっても、基準点として設定すべき位置を正確に設定しやすく、誤差が軽減されやすい。
【0014】
(4)被測定物の濃度を測定する測色計が取り付けられる自動測色装置を用いて前記被測定物の濃度を測定する測色方法であり、前記被測定物上に、前記測色計による測定範囲を画定する範囲設定工程を含み、前記範囲設定工程は、前記被測定物上に、前記測定範囲を画定するための光学ポインタを表示する表示工程を含む、測色方法。
【0015】
このような構成によれば、測色方法は、測色計による測定範囲を画定する範囲設定工程を含む。また、範囲設定工程は、被測定物上に、測定範囲を画定するための光学ポインタを表示する表示工程を含む。そのため、たとえばユーザーは、測定範囲を画定するための基準点を設定する際に、斜め方向から目視で観察する場合であっても、基準点として設定すべき位置を正確に設定しやすく、誤差が軽減されやすい。その結果、被測定物の測色は、適切に実施され得る。
【0016】
(5)被測定物を測色する第1姿勢と、校正を行う第2姿勢とに変位する測色計が取り付けられ、前記測色計を走査する制御部を備える自動測色装置であり、校正時に前記測色計の前記第1姿勢から前記第2姿勢への変位を許容する変位機構を備え、前記測色計は、前記被測定物を測色する測定部と、前記測定部によって測色される校正用タイルと、前記校正用タイルが取り付けられ、前記測色計が前記第1姿勢から前記第2姿勢に変位する際に、前記測定部の測定位置に前記校正用タイルを移動させるタイル移動機構とを備え、前記制御部は、前記変位機構を駆動して、前記測色計の前記第1姿勢から前記第2姿勢への変位を許容し、前記タイル移動機構によって前記校正用タイルを前記測色計の前記測定位置に移動させる、自動測色装置。
【0017】
このような構成によれば、制御部は、変位機構を駆動して、測色計の第1姿勢から第2姿勢への変位を許容し、タイル移動機構によって校正用タイルを測色計の測定位置に移動させる。そのため、校正作業は、測色計を移動させたり取り外したりすることなく、タイル移動機構による簡便な動作によって短時間のうちに実施され得る。
【0018】
(6)前記測色計から所定間隔を置いて配置されるポインタ表示部と、前記ポインタ表示部を移動させるための操作部とをさらに備え、前記ポインタ表示部は、前記被測定物上に、前記測色計による測定範囲を画定するための光学ポインタを表示する、(5)記載の自動測色装置。
【0019】
このような構成によれば、測色計による測定範囲を画定する際、被測定物上に光学ポインタが表示される。そのため、たとえばユーザーは、測定範囲を画定するための基準点を設定する際に、斜め方向から目視で観察する場合であっても、基準点として設定すべき位置を正確に設定しやすく、誤差が軽減されやすい。
【0020】
(7)前記被測定物は、格子状に配列された複数のカラーパッチである、(5)または(6)記載の自動測色装置。
【0021】
このような構成によれば、自動測色装置は、格子状に配列された複数のカラーパッチを連続して測色し得る。その際、校正が必要となる場合において、校正作業は、簡便かつ迅速に実施され得る。
【0022】
(8)前記被測定物が載置される載置台をさらに備え、前記載置台は、前記被測定物を吸着する静電吸着部を備える、(5)〜(7)のいずれかに記載の自動測色装置。
【0023】
このような構成によれば、自動測色装置は、被測定物をより強固に載置台に吸着して強固に保持し得る。
【0024】
(9)被測定物の濃度を測定する測色計が取り付けられ、前記測色計を走査する制御部と、前記測色計から所定間隔を置いて配置されるポインタ表示部と、前記ポインタ表示部を移動させるための操作部とを備え、前記ポインタ表示部は、前記被測定物上に、前記測色計による測定範囲を画定するための光学ポインタを表示する、自動測色装置。
【0025】
このような構成によれば、測色計による測定範囲を画定する際、被測定物上に光学ポインタが表示される。そのため、たとえばユーザーは、測定範囲を画定するための基準点を設定する際に、斜め方向から目視で観察する場合であっても、基準点として設定すべき位置を正確に設定しやすく、誤差が軽減されやすい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、校正作業が簡便であるか、または、高精度で測定範囲を画定し得ることにより、適切に被測定物を測色し得る測色方法および自動測色装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<自動測色装置>
本発明の一実施形態の自動測色装置について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明で用いられる「+X方向」、「−X方向」、「+Y方向」、「−Y方向」、「+Z方向」、「−Z方向」などの方向を表す用語は、単に、図示された本実施形態の方向に関する説明の明瞭化を目的とする。また、単に「X方向」と記載する場合、これらは「+X方向」および「−X方向」の両方を指す。「Y方向」、「Z方向」に関しても同様である。したがって、これらの用語は、自動測色装置の原理を何ら限定するものではない。
【0029】
図1は、本実施形態の自動測色装置1の概略的な斜視図である。自動測色装置1は、カラーチャート(被測定物の一例、図示せず)が載置される載置台2と、分光濃度計6が取り付けられ、分光濃度計6をX−Y方向およびZ方向に走査する駆動装置3と、分光濃度計6と後述する制御部とを電気的、光学的に接続するフレキシブルケーブル(図示せず)とを備える。載置台2の内部には、自動測色装置1の各部の動作を統括的に制御する制御部および各構成要素に電源を供給する電源系統が内蔵されている。駆動装置3の駆動は、制御部によって制御される。なお、本実施形態の自動測色装置1は、駆動装置3(特に走行部4)、または、照明装置5に特徴を有する。そのため、これら以外の構成は例示であり、適宜設計変更が可能である。以下、それぞれの構成について説明する。
【0030】
(カラーチャート)
カラーチャートは、カラープリンタや印刷機において、出力色の再現性を一定に保持するため、所定のカラーチャートデータに基づいて出力されるチャートである。カラーチャートには、複数のカラーパッチが格子状に配置されている。それぞれのカラーパッチは、正方形であり、寸法は、1〜20mm程度である。カラーチャートは、このような微細なカラーパッチが配列されているため、測色の際の測定位置の設定は、高精度で行われる必要がある。
【0031】
(載置台2)
載置台2は、カラーチャートを載置するための部位である。載置台2は、略直方体状であり、その上面にカラーチャートが載置される平坦な載置部21(静電吸着部の一例)を備える。載置部21は、静電吸着性の素材からなり、カラーチャートを静電的に吸着し、保持する。載置部21には、静電吸着性の素材に代えて、または、当該載置部21に加えて、複数のエア吸入孔(図示せず)が設けられていてもよい。エア吸入孔上にカラーチャートが載置されることにより、カラーチャートは、吸引されて、より強固に載置部21に保持され得る。
【0032】
載置台2の上面の端部領域には、X方向に延びる一対のX方向レール22が設けられている。X方向レール22は、後述する駆動装置3の本体部31がX方向に走行するためのガイドレールである。X方向レール22には、駆動装置3の本体部31の脚部が挿入される。
【0033】
載置台2の側面には、後述する自動測色装置1の各部の動作(たとえば後述する照明装置5(ポインタ表示部の一例)を移動させる動作)を実行するための操作ボタン23(操作部の一例)が設けられている。操作ボタン23は、各種入力ボタンから構成されている。
【0034】
(駆動装置3)
駆動装置3は、分光濃度計6をX方向、Y方向、およびZ方向に走査するための装置である。駆動装置3は、略直方体状の本体部31と、本体部31内に設けられ、Y方向に延びるY方向レール32と、Y方向レール32上をY方向に走行する走行部4とを備える。また、駆動装置3は、Y方向レール32自体をZ方向に駆動するためのZ方向レール(図示せず)を備える。さらに、本体部31の裏面には、X方向レール22に挿し込まれる一対の脚部が設けられている。駆動装置3そのものの動作は、後述する制御部によって制御される。本体部31は、上記Y方向レール32やZ方向レールが内蔵され得るよう概略中空である。また、本体部31の前壁は、他の四方を構成する壁と比べ、略下半分が開口している。そのため、本体部31は、Y方向およびZ方向に駆動される走行部4の走行を妨げない。
【0035】
図2および
図3は、−X方向に向かってみた自動測色装置の模式図である。
図4は、−Y方向に向かってみた走行部4の模式図である。
図2は、後述する延設片42cが第1姿勢にある状態を示し、
図3は、延設片42cが第2姿勢にある状態を示している。
図4は、延設片42cが第2姿勢にある状態を示している。
図2および
図3に示されるように、走行部4は、Y方向レール32(
図1参照)上を走行する部位であり、分光濃度計6(図示せず)が設置される設置台41と、設置台41に対して、Y方向レール32のZ方向への駆動とは独立してZ方向に駆動する駆動片42と、駆動片42のZ方向への移動をガイドするガイド片43と、設置台41に取り付けられ、後述する照明装置5が取り付けられる照明取付部44とを主に備える。
【0036】
設置台41は、Y方向に延びる扁平な板状部材であり、分光濃度計6が設置される。設置台41の上面には、分光濃度計6の裏面に設けられた嵌合穴64(
図6参照)が嵌め込まれる嵌合突起45が設けられている。
【0037】
ガイド片43は、設置台41に対して垂直方向(+Z方向)に延びる柱状部材である。ガイド片43は、円柱状の筒部46と、筒部46に内挿される軸部47とからなる。軸部47の上端は、駆動片42と連結されている。ガイド片43は、実質的には軸部47がZ方向に上下動することにより駆動片42のZ方向への移動をガイドする。
【0038】
駆動片42は、ガイド片43に沿ってZ方向に駆動する部位である。駆動片42は、
図4に示されるように、−Y方向に向かってみた場合、−Z方向に落ち窪んだ凹部42aと、凹部42aの一端(−X方向側の端部)であって軸部47の上端が連結された連結部42bと、凹部42aの他端(+X方向側の端部)であって+X方向に延設された延設片42c(第1姿勢から第2姿勢への変位を許容する変位機構の一例)とからなる。凹部42aは、走行部4がZ方向に駆動される際に本体部31の前壁と干渉しないように落ち窪んだ部位である。延設片42cは、分光濃度計6の本体部62の上部を付勢するための部位である。延設片42cの裏面には、ローラー48が設けられている。駆動片42は、Y方向レール32のZ方向への駆動とは独立してZ方向に上下動する。これにより、延設片42cは、分光濃度計6の第1姿勢から第2姿勢への変位を許容し得る。延設片42cを含む駆動片42の駆動は、制御部によって制御される。
【0039】
照明取付部44は、設置台41の上面から+Z方向に延設された取付部本体44aと、取付部本体44aに取り付けられ、照明装置5が取り付けられる取付治具44bとを主に含む。取付治具44bは、後述する照明装置5を位置決めするための挿入孔が形成されている。
【0040】
(フレキシブルケーブル)
フレキシブルケーブルは、分光濃度計6と後述する制御部とを電気的、光学的に接続するケーブルである。フレキシブルケーブルは、たとえば分光濃度計6の一部に設けられるコネクタ(図示せず)に接続され得る。
【0041】
(照明装置5)
照明装置5(ポインタ表示部の一例)は、カラーチャート上に光学ポインタを投射する装置である。
図5は、照明装置5により光学ポインタがカラーチャートC上に投射された状態を説明する模式図である。照明装置5は、略棒状の本体部51と、本体部51に取り付けられたLED光源52とを主に含む。本体部51は、取付治具44bの挿入孔に挿入されることにより照明取付部44に固定されている。そのため、照明装置5は、分光濃度計6から所定間隔を置いて配置されている。
【0042】
光学ポインタ53は、分光濃度計6によって測定すべき測定範囲を画定する際のX−Y座標の指標となる。すなわち、上記のとおり、照明装置5は駆動片42の照明取付部44に取り付けられ、分光濃度計6は設置台41に取り付けられ、これらは走行部4の駆動により一体的に動作する。また、照明取付部44に固定された状態において、LED光源52がカラーチャートC上に投射する光学ポインタ53のX−Y座標は、分光濃度計6が測定する測定箇所のX−Y座標と、所定距離離れている。そのため、ユーザーは、光学ポインタ53を観察しながら、操作ボタン23(
図1参照)を操作して、光学ポインタ53が投射する位置を測定範囲を画定する基準点として入力すればよい。自動測色装置1は、入力された基準点のX−Y座標(光学ポインタ53のX−Y座標)を、光学ポインタ53と分光濃度計6による測定箇所のX−Y座標との離間距離に基づいて入力された基準点の位置を換算し、実際の基準点として記憶する。基準点に関するデータは、制御部のチャート用メモリーに記憶される。
【0043】
ところで、従来の自動測色装置は、光学ポインタ53に代えて、たとえば測色計の近傍に照準窓が設けられているものがある。この場合、ユーザーは、測色計を被測定物上に移動させ、たとえば測色計の近傍に設けられた照準窓から真下方向にのぞき、基準点を定める。この際、照準窓から真下方向をのぞくことが困難である場合、ユーザーは、斜め方向から基準点を指定せざるを得ない。一般に、カラーチャートCを構成するそれぞれのカラーパッチの寸法は、数ミリ程度である。そのため、このような方法では、基準点を正確に指定することが難しい。これに対し、本実施形態の自動測色装置1は、
図5に示されるように、カラーチャート上に光学ポインタ53を表示し得る。そのため、ユーザーは、斜め方向から基準点を指定する場合であっても、測定範囲を画定するための基準点を設定する際に、誤差が軽減されやすい。
【0044】
<分光濃度計>
分光濃度計は、本実施形態の自動測色装置1に取り付けられる外部機器である。
図6および
図7は、分光濃度計6が取り付けられた自動測色装置1を−X方向に向かってみた模式図である。
図6は、延設片42cが第1姿勢にある状態を示し、
図7は、延設片42cが第2姿勢にある状態を示している。分光濃度計6は、本実施形態の自動測色装置1に適用でき、カラーパッチの測色を行い得る機器であれば特に限定されない。そのため、以下の分光濃度計6の構成は例示であり、適宜設計変更が可能である。なお、本実施形態の自走測色装置に適用可能な分光濃度計6としては、たとえばeXact(イグザクト、エックスライト社製分光濃度計)、FD−5、FD−7(コニカミノルタ(株)製蛍光分光濃度計)等が例示される。
【0045】
分光濃度計6は、設置台41に取り付けられる底部61と、底部61に対して所定の角度だけ回動自在に取り付けられる本体部62とを主に備える。本体部62は、カラーチャートを測色する光学系(被測定物を測色する測定部の一例)を備える。光学系は、光源部62、照明光学系、受光光学系および測色処理部から主に構成される。
【0046】
(底部61)
底部61は、設置台41に取り付けられる部位である。底部61は、扁平な板状部材であり、本体部62の光源部65から照射される白色光が通過するための通過窓63が、光源部65と対応する位置に形成されている。また、底部61の裏面には、設置台41の上面に設けられた嵌合突起45が嵌め込まれる嵌合穴64が形成されている。底部61の一端(+Y方向側の端部)には、本体部62が所定の角度だけ回動し得るよう回動機構(図示せず)が取り付けられている。
【0047】
回動機構は、底部61の一端(+Y方向の端部)と本体部62の一端(+Y方向の端部)とを回動可能に連結する部位である。回動機構は、本体部62を上方向に付勢する付勢部材(図示せず)を備える。そのため、自然状態において、本体部62は、底部61に対して所定の角度だけ傾斜した状態(
図7参照)に変位する。一方、本体部62の上面が延設片42cによって下方向に付勢される場合(
図6参照)、底部61と本体部62とは、互いに重なるよう折り畳まれる。本実施形態の自動測色装置1は、分光濃度計6が折り畳まれた状態(被測定物を測色する第1姿勢の一例。以下、単に第1姿勢ともいう)で測色を実行し、本体部62が底部61に対して傾斜した状態(校正を行う第2姿勢の一例。以下、単に第2姿勢ともいう)で校正を実行する。
【0048】
(本体部62)
本体部62は、カラーパッチを照明するための光源部65と、光源部65からの照明光(白色光)をカラーパッチに導くための照明光学系(図示せず)と、照明されたカラーパッチから反射される光線を受光する受光光学系(図示せず)と、受光した反射光を処理する測色処理部(図示せず)等を主に備える。また、本体部62は、白色光が射出される射出口66と、校正時に射出口66を適宜開閉する開閉部材67(校正用タイルを移動させるタイル移動機構の一例)とを備える。
【0049】
・光源部65
光源部65は、白熱電球を備える。白熱電球には、フラットケーブルが接続されており、制御部から電源が供給される。白熱電球に電源が供給されると、所定の光度で白色光が発光する。照射された白色光は、光源部65内で適宜反射され、その後、照明光学系に導かれる。
【0050】
・照明光学系
照明光学系は、白色光をカラーパッチに照射するための光学系であり、各種開口レンズや反射鏡等から構成される。照明光学系に入射した白色光は、適宜角度等が調整され、カラーパッチ上に照射される。照明光学系を通じてカラーパッチに照射される白色光は、本体部62に設けられた射出口66から射出される。
【0051】
・受光光学系
受光光学系は、カラーパッチ上で反射した白色光を測色処理部に入射させるための光学系であり、各種開口レンズや反射鏡等から構成される。
【0052】
・測色処理部
測色処理部は、受光した白色光を電気信号(電流値)として処理するための部位であり、回折格子、センサアレイおよび信号処理回路を主に備える。回折格子は、400〜700nmの範囲の光束をたとえば10nmピッチで分光する。センサアレイは、入射された光をその強度に応じて電気信号に変換する。信号処理回路は、信号処理により、それぞれのカラーパッチ毎の分光特性を算出し、算出結果をフラットケーブルを介して制御部に転送する。
【0053】
・開閉部材67
開閉部材67は、校正時に射出口66を閉止する部材である。開閉部材67は、本体部62の裏面に設けられた略板状の部材である。開閉部材67は、一端(+Y方向の端部)が本体部62の裏面に所定の角度および距離だけ可動するよう取り付けられており、他端(−Y方向の端部)が自由端である。開閉部材67の他端の上面には、校正時に参照される白色パネル68(校正用タイルの一例)が取り付けられている。開閉部材67の一端は、バネ機構(図示せず)を介して分光濃度計6の回動部材と接続されている。以下に、開閉部材の動作について説明する。
【0054】
<開閉部材67の動作の詳細>
(第1姿勢における開閉部材67)
まず、分光濃度計6が第1姿勢にある場合の開閉部材67について
図6を参照して説明する。
図6に示されるように、分光濃度計6の本体部62の上面は、延設片42cによって−Z方向へ付勢されている。このように、測定時において延設片42cによって底部61と本体部62とが折り畳まれた第1姿勢では、開閉部材67は、射出口66を開放するよう射出口66の正面位置から退避する。その結果、開閉部材67は、射出口66から射出される白色光の射出経路を遮断しない。したがって、分光濃度計6は、通過窓63を介して白色光をカラーチャート上に射出し得る。
【0055】
(第1姿勢から第2姿勢に変位する際の開閉部材67の動作)
一方、校正時において延設片42cが+Z方向に駆動されると、延設片42cによる本体部62の上面の付勢が解除される。これにより、分光濃度計6は、回動機構が回動し、本体部62が底部61に対して傾斜した第2姿勢に変位する(
図7参照)。その結果、開閉部材67は、射出口66を閉止し、射出口66の正面位置(白色光の射出経路上)に白色パネル68を配置するよう変位する。これにより、分光濃度計6は、白色パネル68を測色することにより、校正を実施し得る。
【0056】
(制御部)
自動測色装置1全体の説明に戻り、本実施形態の自動測色装置1は、当該自動測色装置1の各部の動作を統括的に制御する制御部(図示せず)を備える。制御部は、CPU(Central Processing Unit)、制御プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、CPUの作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)、チャート用メモリーおよびその周辺回路等から構成されており、載置台2に内蔵されている。
【0057】
CPUは、自動測色装置1および分光濃度計6を動作させるために必要な制御を、自動測色装置1および分光濃度計6のそれぞれの構成要素に対して実行する。ROMは、自動測色装置1および分光濃度計6の動作の制御に必要なソフトウェアを記憶している。RAMは、ソフトウェアの実行時に発生するデータの一時的な記憶およびアプリケーションソフトの記憶等に利用される。チャート用メモリーは、カラーチャートにおけるそれぞれのカラーパッチの配置等を一時的に記憶する。
【0058】
本実施形態の自動測色装置1において、自動測色装置1の各部の動作は、操作ボタン23が操作されることにより実行される。操作ボタン23によって実行が指示される動作としては、分光濃度計6の認識を行うための濃度計認識動作、分光濃度計6を校正するための校正動作、カラーチャートの位置を認識するためのチャート認識動作、測色を行うための測色動作等が例示される。
【0059】
以上、本実施形態の自動測色装置1は、延設片42cを+Z方向に駆動させることにより、分光濃度計6を第1姿勢から第2姿勢に変位させ得る。これにより、分光濃度計6は、開閉部材67を動作させて、白色パネル68を射出口66の正面位置に配置し、校正し得る。そのため、本実施形態の自動測色装置1は、分光濃度計6を移動させたり取り外したりすることなく、開閉部材67による簡便な動作によって短時間のうちに校正作業を実施し得る。
【0060】
また、本実施形態の自動測色装置1は、カラーチャート上に光学ポインタ53を投射する照明装置5を備える。これにより、自動測色装置1は、分光濃度計6による測定範囲を画定する際、カラーチャート上に光学ポインタ53が表示される。そのため、ユーザーは、斜め方向から基準点を指定する場合であっても、測定範囲を画定するための基準点を設定する際に、誤差が軽減されやすい。
【0061】
<測色方法>
本発明の一実施形態の測色方法について、図面を参照しながら説明する。本実施形態の測色方法は、上記した実施形態の自動測色装置1(
図1参照)および分光濃度計6を用いてカラーチャートの測色を行う方法である。測色方法は、たとえば、自動測色装置の起動時に分光濃度計6を校正する工程(校正工程)、分光濃度計6による測定範囲を画定する工程(範囲設定工程)、カラーチャートを測色する工程(測色工程)を主に含む。範囲設定工程は、カラーチャート上に光学ポインタ53を表示する工程(表示工程)を含む。本実施形態の測色方法は、これらの中でも、校正工程または表示工程に特徴を備える。以下、それぞれの工程について説明する。
【0062】
(校正工程)
校正工程は、それぞれのカラーパッチの分光特性を正確に取得するために、基準となる被測定物(たとえば白色パネル68)の分光特性を取得し、基準を更新する工程である。校正工程は、一般的には、自動測色装置1の起動時に行われる。校正工程は、起動時だけでなく、長時間の測定の合間や所定時間毎に随時行われてもよい。
【0063】
本実施形態の測色方法は、上記実施形態において
図6および
図7を参照して説明したとおり、延設片42cを+Z方向に駆動させ、分光濃度計6の第1姿勢から第2姿勢への変位を許容する。これにより、分光濃度計6の開閉部材67は、回動機構と連動し、射出口66を閉止し、射出口66の正面位置(白色光の射出経路上)に白色パネル68を配置するよう変位する。その結果、分光濃度計6は、白色パネル68を測色することにより、校正を実施し得る。
【0064】
このように、校正工程は、分光濃度計6を自動測色装置1に取り付けたまま実施され得る。そのため、校正作業は、分光濃度計6の取り外しや再度の取り付けによるわずかな位置のズレ等が生じにくい。その結果、校正作業は、より正確に行われ得る。
【0065】
(範囲設定工程)
本実施形態の測色方法は、校正が行われた後、範囲設定工程を実施する。範囲設定工程は、分光濃度計6による測定範囲を画定する工程である。具体的には、範囲設定工程は、カラーチャートのうち、カラーパッチが配置された領域を指定する工程である。カラーパッチは、通常、格子状に配置されている。そのため、範囲設定工程は、このように格子状に配置されたカラーパッチの全体を測定範囲とする場合、格子状に配置された複数のカラーパッチのうち、四隅のカラーパッチの少なくとも3個を基準点として指定する工程である。基準点の指定は、たとえば操作ボタン23を操作することに行われる。
【0066】
より具体的には、基準点の指定は、操作ボタン23が操作され、基準点となる位置に分光濃度計6を移動させ、その位置を基準点として制御部に記憶させることにより行われる。この際、分光濃度計6が所望の基準点に移動されたかどうかを確認するために、本実施形態の測色方法は、表示工程を含むことが好ましい。
【0067】
・表示工程
表示工程は、カラーチャート上に、測定範囲を画定するための光学ポインタ53(
図5参照)を表示する工程である。光学ポインタ53は、上記した照明装置5からカラーチャートC上に投射されるポインタである。光学ポインタ53の形状は特に限定されない。
図5に示されるように、本実施形態における光学ポインタ53は、十字形状である。このような十字形状の光学ポインタ53は、それぞれのカラーパッチに投射される際に、中心位置が把握されやすい。ユーザーは、カラーチャートC上に投射された光学ポインタ53を観察しながら操作ボタン23を操作して、光学ポインタ53の位置を所望の基準点と一致するよう移動させることができる。そのため、たとえば従来のように斜め方向から分光濃度計6の位置を確認しながら基準点を指定する場合と比べて、基準点を正確に指定でき、誤差が軽減され得る。なお、上記のとおり、照明装置5および分光濃度計6は、いずれも設置台41に取り付けられている。そのため、これら照明装置5と分光濃度計6とは、所定距離だけ離間されている。したがって、制御部は、光学ポインタ53の位置を参照してユーザーから入力されたX−Y座標の位置情報を元に、実際の分光濃度計6の射出口66の位置を決定し得る。
【0068】
範囲設定工程の説明に戻り、少なくとも3個の基準点が適切に指定されることにより、カラーチャート上の測定範囲が設定される。設定された測定範囲は、制御部においてチャート用メモリーとして記憶される。なお、チャート用メモリーには、測定範囲のほか、カラーチャートの配置、それぞれのカラーパッチの大きさ、個数、配色等が記憶されてもよい。
【0069】
(測色工程)
校正工程および範囲設定工程が行われた後、測色工程が実施される。測色工程は、カラーチャートを構成するそれぞれのカラーパッチを1つ1つ測色する工程である。制御部のチャート用メモリーから読み出される測定範囲に基づいて、制御部は、分光濃度計6が載置された走行部4を駆動させる。より具体的には、制御部は、測定範囲の四隅の端部(たとえば−X方向および−Y方向の端部)に配置されたカラーパッチ上に分光濃度計6の射出口66が配置されるよう分光濃度計6を駆動させ、その後、当該カラーパッチの測色を行う。当該カラーパッチの測色が終了すると、制御部は、当該カラーパッチとたとえば+X方向または+Y方向に隣接するカラーパッチ上に射出口66が配置されるよう分光濃度計6を移動させ、その後、測色を行う。測色は、測定範囲内のカラーパッチがすべて測色されるまで繰り返される。なお、測色すべきカラーパッチの数が多い場合、測色工程の途中で校正工程が実施されてもよい。
【0070】
測色工程の後、得られた分光特性の結果は、たとえば自動測色計に付設される出力装置(たとえばプリンタ等)で出力されてもよく、自動測色装置1に付設される画像表示装置(たとえばパーソナルコンピュータのディスプレイ)に表示されてもよい。ユーザーは、出力または表示された分光特性の結果を元に、当該カラーチャートを印刷した印刷機器を必要に応じて調整し得る。
【0071】
以上、本実施形態の測色方法は、延設片42cを+Z方向に駆動させることにより、分光濃度計6を第1姿勢から第2姿勢に変位させ得る。これにより、分光濃度計6は、開閉部材67を動作させて、白色パネル68を射出口66の正面位置に配置し、校正し得る。そのため、本実施形態の測色方法は、分光濃度計6を移動させたり取り外したりすることなく、開閉部材67による簡便な動作によって短時間のうちに校正作業を実施し得る。
【0072】
また、本実施形態の測色方法は、カラーチャートC上に光学ポインタ53を投射する表示工程を含む。これにより、測色方法は、分光濃度計6による測定範囲を画定する際、カラーチャートC上に光学ポインタを表示し得る。そのため、ユーザーは、斜め方向から基準点を指定する場合であっても、測定範囲を画定するための基準点を設定する際に、誤差が軽減されやすい。
【0073】
以上、本発明の実施形態について、図面を参照して説明したが、本発明の自動測色装置および測色方法は、たとえば次のような変形実施形態を採用することができる。
【0074】
(1)上記実施形態では、操作部が載置台の側面に設けられている場合について例示した。これに代えて、本発明は、操作部が省略されてもよい。この場合、操作部を介して行われるすべての操作は、処理内容をあらかじめプログラム化したソフトウェアをパーソナルコンピュータ等の外部機器に実行させてもよい。
【0075】
(2)上記実施形態では、分光濃度計を校正する際にZ方向に上下動する変位機構と、被測定物上に光学ポインタを表示するポインタ表示部との両方が設けられた自動測色装置および測色方法について例示した。これに代えて、本発明は、変位機構または光学ポインタのうち少なくともいずれかの一方が設けられた自動測色装置および測色方法であってもよい。
【0076】
(3)上記実施形態では、測色計が第1姿勢から第2姿勢に変位する際に、退避した状態から測定部の測定位置(正面位置)には校正用タイルを配置するタイル移動機構を備える自動測色装置および測色方法について例示した。これに代えて、本発明は、測色時において測色の経路が遮断されず、校正時においてのみ当該経路が遮断される態様であれば、いかなるタイル移動機構が採用されてもよい。一例を挙げると、本発明は、タイル移動機構として水平方向にスライド移動し得るシャッター部を設け、当該シャッター部の上面に校正用タイルを取り付けてもよい。また、上記実施形態では、測色計は、本体部と底部とが重なるよう折り畳まれた第1姿勢と、本体部が底部に対して傾斜した第2姿勢とに変位することにより、校正が実施される態様について例示した。これに代えて、本発明で使用し得る測色計は、たとえば上記シャッター部を設けることにより、折り畳まれた状態において第1姿勢から第2姿勢に変位し得る。すなわち、本発明で使用し得る測色計は、必ずしも外観が変化するよう変位する必要はない。すなわち、本発明で使用し得る測色計は、校正時にタイル移動機構が駆動されることにより、退避状態の校正用タイルが測定位置に移動されればよい。そのため、外観の変化を伴うこと無く、測色計の内部の部材だけが変位する場合も、本発明でいう第1姿勢から第2姿勢への変位に含まれる。
【0077】
(4)上記実施形態では、照明装置を構成する光源がLED光源であり、測色計を構成する光源が白熱電球である場合について例示した。これに代えて、本発明では、照明装置を構成する光源は被測定物上にポインタを表示し得る光源であればよく、測色計を構成する光源は被測定物を測色し得る光源であればよい。一例を挙げると、照明装置を構成する光源は白熱電球であってもよく、測色計を構成する光源はLED光源であってもよい。
【0078】
(5)上記実施形態では、測色計として分光濃度計を例示した。これに代えて、本発明の測色計は、被測定物を測色し得る機器であればよい。一例を挙げると、測色計は、たとえば、L*a*b値等を測定する測色計であってもよい。
【0079】
(6)上記実施形態では、校正用タイルが白色パネルである場合について例示した。これに代えて、本発明は、白色以外の有色パネルが使用されてもよい。
【0080】
(7)上記実施形態(特に測色方法)では、校正工程の後に範囲設定工程が実施される場合について例示した。これに代えて、本発明の測色方法は、校正工程が任意の時点で実施されればよく、たとえば範囲設定工程の後に実施されてもよい。