特許第6196657号(P6196657)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6196657
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】キャリアを有する電子顕微鏡
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/20 20060101AFI20170904BHJP
   G01N 1/28 20060101ALI20170904BHJP
【FI】
   H01J37/20 E
   H01J37/20 A
   G01N1/28 K
   G01N1/28 F
   G01N1/28 W
【請求項の数】16
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-240457(P2015-240457)
(22)【出願日】2015年12月9日
(65)【公開番号】特開2016-115676(P2016-115676A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2016年2月1日
(31)【優先権主張番号】103143021
(32)【優先日】2014年12月10日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】390023582
【氏名又は名称】財團法人工業技術研究院
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100134577
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 雅章
(72)【発明者】
【氏名】李 信宏
(72)【発明者】
【氏名】李 正宇
(72)【発明者】
【氏名】江 ▲俊▼▲霖▼
(72)【発明者】
【氏名】▲蔡▼ 昆志
(72)【発明者】
【氏名】林 文地
【審査官】 鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−026840(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0057581(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/20
H01J 37/28
G01N 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルを載置するキャリアと、
第1流体を前記サンプルを通過する第1流動経路に沿って流すように駆動する第1駆動ユニットと、
前記第1流動経路に配置され、前記第1流体にバッファリングを実行するフローバッファユニットと、
電子ビームを前記サンプルに提供する電子源と、
を含み、前記第1流体が前記フローバッファユニット及び前記キャリアを流れる、キャリアを有する電子顕微鏡。
【請求項2】
前記キャリアは、
フローバッファ傾斜面を有する第1通路を有するボディと、
前記ボディに配置され、前記サンプルを載置するフィルムと、
を含み、前記サンプルは、前記第1通路に位置し、前記第1流体は、前記第1通路に沿って流れ、前記フローバッファ傾斜面及び前記サンプルを通過する請求項1に記載の電子顕微鏡。
【請求項3】
前記キャリアは、
第1通路及び第2通路を有し、前記第1通路及び前記第2通路が互いに堆積されるボディと、
前記ボディに配置され、前記サンプルを載置するフィルムと、
を含み、前記サンプルは、前記第1通路に位置し、前記第1流体は、前記第1通路に沿って流れ、前記サンプルを通過し、第2流体は、前記第2通路に沿って流れ、第1流体の温度を調整する請求項1に記載の電子顕微鏡。
【請求項4】
前記フローバッファユニットは、2つのチャネルを有し、
前記第1流体は、前記チャネルの一方及び前記サンプルを流れ、
第2流体は、前記チャネルの他方及び前記キャリアを流れ、前記第1流体の温度を調整し、
前記フローバッファユニットは、それぞれ前記第1流体及び前記第2流体にバッファリングを実行する請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の電子顕微鏡。
【請求項5】
第1チャンバを更に含み、前記キャリアは、前記第1チャンバ内に配置され、前記第1駆動ユニットは、真空吸引モジュールであり、前記真空吸引モジュールは、前記第1チャンバを真空吸引し、前記サンプルを流れるように前記第1流体を駆動する請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の電子顕微鏡。
【請求項6】
クランプを更に含み、前記クランプは、前記キャリアを挟持することに適用され、第1流体案内構造を有し、前記クランプが前記キャリアを挟持する時、前記第1流体案内構造は、前記キャリアに接続され、前記第1流動経路は、前記第1流体案内構造を通過する請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の電子顕微鏡。
【請求項7】
第2流体は、第2流動経路に沿って前記キャリアを流れて前記第1流体の温度を調整し、前記クランプは、第2流体案内構造を更に有し、前記クランプが前記キャリアを挟持する時、前記第2流体案内構造は、前記キャリアに接続され、前記第2流動経路は、前記第2流体案内構造を通過する請求項6に記載の電子顕微鏡。
【請求項8】
前記クランプは、
前記キャリアを載置することに適用されるベースと、
前記ベース上に移動可能に配置される2つの挟持部材と、
互いにピボット回転可能に設けられ、且つそれぞれ2つの前記挟持部材に移動可能に接続される2つの把手と、
を更に含み、2つの前記把手は、互いにピボット回転され、2つの前記挟持部材を駆動して前記キャリアを挟持又は開放する請求項6または請求項7に記載の電子顕微鏡。
【請求項9】
前記キャリア内に第1温度検出素子を有する請求項1乃至請求項8の何れか1項に記載の電子顕微鏡。
【請求項10】
前記フローバッファユニット内に第2温度検出素子を更に有する請求項1乃至請求項9の何れか1項に記載の電子顕微鏡。
【請求項11】
フローバッファ傾斜面を有する第1通路を有するボディと、
前記ボディに配置され、サンプルを載置し、前記サンプルは、前記第1通路に位置し、第1流体は、前記第1通路に沿って流れ、前記フローバッファ傾斜面及び前記サンプルを通過するフィルムと、
を含むキャリアと、
電子ビームを前記サンプルに提供する電子源と、
フローバッファユニットと、
を備え、前記第1流体は、前記フローバッファユニット及び前記キャリアを流れ、前記フローバッファユニットは、前記第1流体にバッファリングを実行する、キャリアを有する電子顕微鏡。
【請求項12】
サンプルを載置するフィルムを有するキャリアと、
2つのチャネルを有し、第1流体が前記チャネルの一方及び前記サンプルを流れ、第2流体が前記チャネルの他方及び前記キャリアを流れ、前記第1流体の温度を調整し、それぞれ前記第1流体及び前記第2流体にバッファリングを実行するフローバッファユニットと、
電子ビームを前記サンプルに提供する電子源と、
を含む、キャリアを有する電子顕微鏡。
【請求項13】
前記フローバッファユニットは、それぞれ2つの前記チャネルに圧力を加えることによって、前記第1流体及び前記第2流体にバッファリングを行う請求項1に記載の電子顕微鏡。
【請求項14】
各前記チャネル内にガスを有し、前記フローバッファユニットは、前記ガスの圧力を用いることによって前記第1流体又は前記第2流体にバッファリングを行う請求項1又は請求項1に記載の電子顕微鏡。
【請求項15】
温度制御ユニットを更に含み、前記温度制御ユニットは、前記フローバッファユニットに接続され、2つの前記チャネルを流れる前記第1流体及び前記第2流体の温度を制御する請求項1乃至請求項1の何れか1項に記載の電子顕微鏡。
【請求項16】
前記温度制御ユニットは、
前記フローバッファユニットに接続される冷却チップと、
前記冷却チップに接続される放熱フィン組と、
前記放熱フィン組の一側に配置される放熱ファンと、
を含む請求項1に記載の電子顕微鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子顕微鏡に関し、特にキャリアを有する電子顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に述べて、原子間力顕微鏡(atomic force microscopy = AFM)や電子顕微鏡等の機器は、通常、ナノレベルで物質の幾何学的外形を観察することに用いられる。AFMを使用して測定する時、プローブを使用してサンプルの幾何学的外形を測定する必要がある。このような測定プロセスは、プローブの尖端を損壊し易く、測定に長時間を要するだけでなく、更に、サンプルの測定範囲も比較的狭くなる。電子顕微鏡は、一方で、そのような問題がない。
【0003】
走査型電子顕微鏡(scanning electron microscope = SEM)を例とすれば、このような顕微鏡は、液体サンプルを観察することに用いられる。液体サンプルを観察する時、流体は、サンプルを載置するフィルムを流れるように駆動され、サンプルの代謝物を持ち去る必要があり、又は流体は、測定に必要な薬剤をサンプルに添加するための媒体として提供される必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
流体の乱れによってフィルムが損壊を受けることを如何に回避し、観察の要求に応じてサンプルを流れる流体の温度を如何に制御するかは、液体サンプルをうまく観察することができるかどうかを決定する重要な因子である。また、電子顕微鏡は、液体の流れを駆動する駆動源を実装するための追加の空間及びコストを必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態に基づく電子顕微鏡は、キャリアと、第1駆動ユニットと、フローバッファユニット、電子源と、を含む。キャリアは、サンプルを載置する。第1駆動ユニットは、第1流体を第1流動経路に沿って流すように駆動する。前記第1流動経路が前記サンプルを通過する。フローバッファユニットは、前記第1流動経路に配置され、前記第1流体にバッファリングを実行する。前記第1流体が前記フローバッファユニット及び前記キャリアを流れる。電子源は、電子ビームを前記サンプルに提供する。
【0006】
本発明の実施形態に基づく電子顕微鏡は、キャリアと、電子源と、を含む。キャリアは、ボディ及びフィルムを有する。ボディは、第1通路を有し、前記第1通路がフローバッファ傾斜面を有する。フィルムは、前記ボディに配置され、サンプルを載置する。前記サンプルは、前記第1通路に位置し、第1流体は、前記第1通路に沿って流れ、前記フローバッファ傾斜面及び前記サンプルを通過する。電子源は、電子ビームを前記サンプルに提供する。
【0007】
本発明の実施形態に基づく電子顕微鏡は、キャリアと、電子源と、を含む。キャリアは、ボディ及びフィルムを有する。ボディは、第1通路及び第2通路を有し、前記第1通路及び前記第2通路が互いに堆積される。フィルムは、前記ボディに配置され、サンプルを載置する。前記サンプルは、前記第1通路に位置し、第1流体は、前記第1通路に沿って流れ、前記サンプルを通過し、第2流体は、前記第2通路に沿って流れ、第1流体の温度を調整する。電子源は、電子ビームを前記サンプルに提供する。
【0008】
本発明の実施形態に基づく電子顕微鏡は、キャリアと、フローバッファユニットと、電子源と、を含む。キャリアは、サンプルを載置するフィルムを有する。フローバッファユニットは、2つのチャネルを有する。第1流体が前記チャネルの一方及び前記サンプルを流れ、第2流体が前記チャネルの他方及び前記キャリアを流れ、前記第1流体の温度を調整する。フローバッファユニットは、それぞれ前記第1流体及び前記第2流体にバッファリングを実行する。電子源は、電子ビームを前記サンプルに提供する。
【0009】
本発明の実施形態に基づく電子顕微鏡は、第1チャンバと、キャリアと、真空吸引モジュールと、電子源と、を含む。キャリアは、第1チャンバ内に配置され、サンプルを載置する。真空吸引モジュールは、前記第1チャンバを真空吸引し、前記サンプルを流れるように第1流体を駆動する。電子源は、電子ビームを前記サンプルに提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、サンプルにバッファリング及び温度制御を効果的に実行し、電子顕微鏡のサイズ及びコストを低減することができる電子顕微鏡を提供する。
【0011】
バッファリングがフローバッファユニットにより第1流体に実行され、それから、第1流体がキャリアに流れ込む。更に、フローバッファ傾斜面が再び第1流体にバッファリングを行うことができ、従って、更に、キャリアにおけるサンプルを流れる第1流体の乱れを減少させる。このように、使用者は、電子顕微鏡を使用することでうまくサンプルを観察することができる。更に、第1流体が流れるために提供される第1通路に加え、第1流路に互いに堆積される第2通路が、第2流体が流れるためのキャリアに提供されることもでき、従って、第1流体の温度が第2流体を使用することによって調整されることができる。このようにして、サンプルは、予期される適切な温度で観察されることができる。また、電子顕微鏡の既存の真空吸引装置は、更に第1流体の流動を駆動することに用いられることができる。このようにして、第1流体の駆動源としての追加のポンプを必要とせず、電子顕微鏡の空間及びコストが低減されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例に基づく電子顕微鏡の幾つかの部材を示す概略図である。
図2図1に示されるキャリアの部分構造の断面図である。
図3図2に示されるキャリアの実施例のフィルム箇所の局部拡大図である。
図4】本発明の実施例に基づくフローバッファユニットの具体構造を示す図である。
図5図4に示されるフローバッファユニットを示す局部断面図である。
図6】本発明の実施例に基づく温度制御ユニットの具体構造を示す図である。
図7図1に示されるキャリアがクランプで挟持された実施形態を示す図である。
図8図7に示されるクランプとキャリアを示す局部拡大図である。
図9】本発明のもう1つの実施例に基づく電子顕微鏡の幾つかの部材を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の実施例に基づく電子顕微鏡の幾つかの部材を示す概略図である。図1を参照し、本実施例の電子顕微鏡100は、例えば、走査型電子顕微鏡であり、且つキャリア110、第1駆動ユニット120、フローバッファユニット130、及び電子源140を含む。キャリア110は、第1チャンバ150aに配置され、且つフィルム112を有する。フィルム112は、サンプル(例えば、生物細胞の液体サンプル)を載置するように構成され、第1チャンバ150aは、サンプルの観察のための真空チャンバである。電子源140は、観察のために電子ビームEをサンプルに提供するように構成される。
【0014】
第1駆動ユニット120は、例えば、ポンプであり、且つ第1流体を第1流動経路P1に沿って流すように駆動する。更に、第1流体は、第1流動経路P1に沿って流れ、フィルム112上のサンプルを通過し、従って、サンプルの代謝物を持ち去って収集ユニット180中に代謝物を収集するか、又は第1流体を媒体として用いることによってサンプルの測定のための薬剤をサンプルに添加する。第1駆動ユニット120は、例えば、電子顕微鏡100の制御ユニット100aに電気接続され、制御ユニット100aの制御下で動作される。フローバッファユニット130は、第1流動経路P1上に配置され、第1チャンバ150aの外側に位置する。第1流体は、フローバッファユニット130及びキャリア110を流れる。フローバッファユニット130は、第1流体上でバッファリングを実行し、第1流体の乱れを減少するように構成される。フローバッファユニット130も、例えば、制御ユニット100aに接続され、制御ユニット100aの制御下で動作される。実施形態において、フローバッファユニット130に接続される管路は、第1チャンバ150aの外側から第1チャンバ150aの内側まで第1チャンバ150aの外壁を貫通するよう構成され、これにより、第1流体が第1駆動ユニット120の駆動によって管路を介して第1チャンバ150内側のキャリア110に到達する。
【0015】
図2は、図1に示されるキャリアの部分構造の断面図である。図2を参照し、キャリア110は、ボディ114を含む。ボディ114は、例えば、上部構造114a及び下部構造114bを含む。更に、上部構造114aは、第1流動経路P1上に位置する第1通路114cを有し、第1通路114cは、フィルム112を通過してサンプルを第1通路114cに位置させる。キャリア110は、更に、突起構造116を含む。突起構造116は、第1通路114cに位置し、第1通路114cにフローバッファ傾斜面Iを形成する。第1流体は、第1通路114cに沿ってフローバッファ傾斜面I及びフィルム112上のサンプルを通過する。このような設計により、バッファリングは、フローバッファユニット130を用いることによってキャリア110に到達する前の第1流体上に実行されるだけでなく、更に、フローバッファ傾斜面Iを用いることによって第1流体がキャリア110に入った後にもフィルム112に流れる前に実行され、従って、フィルム112が第1流体の過度の乱れによって損壊を受けることを回避する。
【0016】
図3は、図2に示されるキャリアの実施例のフィルム箇所の局部拡大図である。本実施形態のフィルム112は、例えば、半導体製造プロセスを実行することにより基板113上に形成される窒化ケイ素層であり、基板113は、例えば、シリコン基板である。電子ビームEは、窒化ケイ素層を通過してサンプルに作用することができる。他の実施形態において、フィルム112は、他の適当な材質で形成され且つ他の適当なプロセスを実行することによって製造されることができる。本発明は、この点に制限を加えることを意図するものではない。
【0017】
実施形態において、電子顕微鏡100は、図1に示されるように、第2駆動ユニット160を含むことができる。第2駆動ユニット160は、第2流体を駆動し、第2流動経路P2に沿って流すように構成され、第2流動経路P2は、キャリア110を通過する。第2駆動ユニット160は、例えば、制御ユニット100aに電気接続され、制御ユニット100aの制御下で動作される。管路は、第1チャンバ150aの外側から第1チャンバ150aの内側まで第1チャンバ150aの外壁を貫通するように配置され、このようにして、第2流体は、第2駆動ユニット160の駆動によって管路を介して第1チャンバ150a内側のキャリア110に到達する。図2に示すように、キャリア110のボディ114の下部構造114bは、第2流動経路P2上の第2通路114dを有し、このようにして、第2流体は、第2通路114dに沿って流れる。更に、第1通路114c及び第2通路114dは、互いに堆積される。第2流体は、適当な温度を有し、且つ第2通路114dを循環的に流れるように制御されることができ、従って、隣接する第1通路114c中のサンプルの温度を制御する。他の実施形態において、温度調整モジュールが第1通路114cのサンプルの温度を調整するためにキャリア110に配置されることもでき、本発明は、この点に制限を加えることを意図するものではない。
【0018】
図1を参照し、実施形態において、フローバッファユニット130は、2つのチャネル132を有することができる。第1流動経路P1及び第2流動経路P2は、それぞれチャネル132を通過する。フローバッファユニット130は、それぞれ第1流体及び第2流体にバッファリングを行うことができる。更に、フローバッファユニット130は、それぞれチャネル132に圧力を加えることによって第1流体及び第2流体にバッファリングを行うことができる。また、電子顕微鏡100は、更に温度制御ユニット170を含む。温度制御ユニット170は、冷却チップを含み、且つフローバッファユニット130に接続されることができ、従って、チャネル132を流れる第1流体及び第2流体の温度を制御し、これにより確実にキャリア110を流れる第1流体及び第2流体が予期する温度を有する。温度制御ユニット170は、制御ユニット100aに電気接続され、制御ユニット100aの制御下で動作される。実施形態において、第1流動経路P1及び第2流動経路P2は、単一のフローバッファユニット130に配置される。このように、フローバッファユニット130は、同時に第1流体及び第2流体にバッファリングを行うことができ、温度制御ユニット170は、第1流体及び第2流体の温度を同時に制御することができ、従って、フローバッファ及び温度制御の効率を改善する。
【0019】
以下において、本発明の実施形態に基づくフローバッファユニットを詳細に説明する。図4は、図1に示されるフローバッファユニットの実施形態を示す図である。図5は、図4に示されるフローバッファユニットを示す局部断面図である。図4及び図5を参照し、本実施形態のフローバッファユニット130において、各チャネル132は、チャンバ132aを含み、チャンバ132aは、それぞれ第1流体及び第2流体を収容するように構成される。図5に示すように、流体の流量を制御することによって、各チャネル132におけるチャンバ132aは、ガスGを収容するための空間を有する。更に、フローバッファユニット130は、ガスGの圧力を利用し、チャンバ132aにおける流体L(即ち、第1流体又は第2流体)にバッファリングを実行することができる。他の実施形態において、フローバッファユニット130は、他の方法でバッファリングを実行することができ、本発明は、この点に制限を加えることを意図するものではない。
【0020】
以下において、本実施形態の温度制御ユニットを図面の参照を併せて詳細に説明する。図6は、図1に示される温度制御ユニットの実施形態を示す図である。図6を参照し、本実施形態の温度制御ユニット170は、冷却チップ172、放熱フィン組174、及び放熱ファン176を含む。冷却チップ172は、フローバッファユニット130に接続され、フローバッファユニット130内の第1流体及び第2流体の温度を制御する。放熱フィン組174は、熱管178を介して冷却チップ172に接続し、冷却チップ172からの熱を受けて放散させる。放熱ファン176は、放熱フィン組174の一側に配置され、放熱気流を発生し、放熱フィン組174の熱を放散する。他の実施形態において、温度制御ユニット170は、他の適当な形式の温度制御装置であることができ、本発明は上記に制限されるものではない。
【0021】
電子顕微鏡100は、更に、キャリア110を挟持してキャリア110の配置を便利にさせるクランプを含む。この点に関する詳細を、図面を参照して以下に説明する。図7は、図1に示されるキャリアがクランプに挟持されることを示す図である。図7を参照し、電子顕微鏡100は、クランプ190を含む。クランプ190は、キャリア110のボディ114を挟持することに適し、第1流体案内構造192、例えば、管部材等を有する。クランプ190がキャリア110のボディ114を挟持する時、第1流体案内構造192は、キャリア110内側の第1通路114c(図2参照)に接続され、第1流動経路P1(図1図2参照)は、第1流体案内構造192を通過し、従って、第1流体案内構造192を使用することにより第1流体を誘導してキャリア110を流れる。更に、キャリア110に接続された第1流体案内構造192は、第1通路114cの開口H1を密閉するように構成される。
【0022】
図7に示される実施形態において、クランプ190は、更に、第2流体案内構造194を含む。図2に示される第2流体案内構造194及び第2通路114dは、図2に示される第1流体案内構造192及び第1通路114cの間の配置関係と同じである。この点に関する詳細を以下に説明する。クランプ190がキャリア110のボディ114を挟持する時、第2流体案内構造194は、キャリア110内側の第2通路114d(図2参照)に接続され、第2流動経路P2(図1図2参照)は、第2流体案内構造194を通過し、従って、第2流体案内構造194を使用することにより第1流体を誘導してキャリア110を流れる。更に、キャリア110に接続された第2流体案内構造194は、第2通路114dの開口H2(図2参照)を密閉するように構成される。
【0023】
実施形態におけるクランプ190は、ベース190a、2つの挟持部材190b、及び2つの把手190cを含む。ベース190aは、キャリア110を載置することに適用される。挟持部材190bは、ベース190a上に移動可能に配置される。2つの把手190は、互いにピボット回転可能に設けられ、且つそれぞれ挟持部材190bに移動可能に接続される。2つの把手190cは、使用者により加えられる力によって互いにピボット回転され、従って、挟持部材190bを駆動し、キャリア110を挟持又は開放する。
【0024】
図8は、図7に示されるクランプ及びキャリアを示す局部拡大図である。図8を参照し、各挟持部材190bは、挟持部C、ボールジョイント部B、牽引部T、及びガイドレール部Rを含む。ガイドレール部Rは、ベース190a上に方向Dに沿って滑動可能に配置され、挟持部Cは、ガイドレール部R上に配置され、第1流体案内構造192及び第2流体案内構造194は、挟持部Cに配置され、把手190cは、ボールジョイント部Bによって挟持部Cにボールジョイントされ、牽引部Tは、把手190c及び挟持部Cの間に接続される。使用者が把手190cに力を加える時、把手190cは、牽引部Tを介して挟持部Cを駆動し、ガイドレール部Rに従って方向Dに沿って移動し、従って、挟持部Cにキャリア110を挟持又は開放させる。他の実施形態において、クランプは、他の適当な形式に設計されることができる。本発明は、この点に制限を加えることを意図するものではない。
【0025】
図7に示すように、実施形態において、第1温度検出素子S1は、キャリア110内に提供される。第1温度検出素子S1は、キャリア110を流れる第1流体及び第2流体の温度値を検出するように構成される。また、図4に示すように、実施形態において、第2温度検出素子S2は、フローバッファユニット130内に提供される。第2温度検出素子S2は、フローバッファユニット130を流れる第1流体及び第2流体の温度値を検出するように構成される。従って、図1に示される温度制御ユニット170は、第1温度検出素子S1及び第2温度検出素子S2により検出された温度値に基づいて第1流体及び第2流体の温度を制御することができる。第1温度検出素子S1及び第2温度検出素子S2は、例えば、図1に示すような制御ユニット100aに電気接続され、制御ユニット100aの制御下で動作される。
【0026】
図1に示される第1実施形態において、第1流体の流動を駆動する第1駆動ユニット120は、ポンプである。しかしながら、本発明はこれに制限するものではない。幾つかの他の実施形態において、第1駆動ユニットは、真空チャンバのための真空吸引装置であることができる。真空吸引装置を使用することにより第1チャンバを真空吸引することに加え、電子顕微鏡は、更に真空吸引装置を使用することにより発生される圧力差を利用し、第1流体をキャリアへ流すよう駆動し、サイフォン原理を利用することによってサンプルに通過させる。この点に関する詳細を以下に説明する。
【0027】
図9は、本発明のもう1つの実施形態に基づく電子顕微鏡の部分構造を示す概略図である。図9に示される電子顕微鏡200において、制御ユニット200a、キャリア210、フローバッファユニット230、第1チャンバ250a、第2駆動ユニット260、温度制御ユニット270の配置及び動作は、図1図6に示される制御ユニット100a、キャリア110、フローバッファユニット130、第1チャンバ150a、第2駆動ユニット160、及び温度制御ユニット170のそれらと類似する。従って、この点における詳細は、以下では繰り返し記載しない。電子顕微鏡200は、更に、第1流体を収容し且つキャリア210に接続される収容ユニット290を含むことができる。
【0028】
電子顕微鏡200及び電子顕微鏡100の実施例の相違は、電子顕微鏡200の第1駆動ユニット220がポンプではなく、電子顕微鏡200に既存の真空吸引装置であり、且つ電子顕微鏡200が第2チャンバ250bを更に含むことにある。真空吸引装置(即ち、第1駆動ユニット220)は、第1チャンバ250aに接続され、キャリア210内のサンプルを観察する為に第1チャンバ250aを真空吸引する。第2チャンバ250bは、真空吸引装置(即ち、第1駆動ユニット220)及び収容ユニット290の間に接続され、キャリア210は、第2チャンバ250b及び収容ユニット290の間に配置される。バルブV1(例えば、電磁弁)は、真空吸引装置(即ち、第1駆動ユニット220)及び第2チャンバ250bの間に配置され、バルブV2(即ち、電子バルブ)は、第2チャンバ250b及び第1チャンバ250aの間に配置される。バルブV1が開放され、バルブV2が閉鎖される時、真空吸引装置(即ち、第1駆動ユニット220)は、第2チャンバ250bを真空吸引することができる。
【0029】
また、バルブV2が開放され、バルブV1が閉鎖される時、真空の第2チャンバ250b及び収容ユニット290の間の圧力差は、第1流体を収容ユニット290からキャリア210へ流すように駆動し、これにより、第1流体は、サイフォン原理を利用して収容ユニット290からキャリア210へ流れることができる。このように、第1駆動ユニット220は、第1流体の流動を駆動することともに第1チャンバ250aを真空吸引することが可能となっている。従って、第1流体の駆動源として別途のポンプを必要とせず、電子顕微鏡200は、簡化されることができる。真空吸引により流体の流動を駆動することで流体圧力をより小さくさせ、それにより、フィルムが液体の流動により損壊される確率を低減する。他の実施形態において、電子顕微鏡200は、既存の真空吸引装置を使用して第1チャンバ250aを真空吸引し、他の真空吸引装置を使用して第1流体の流動を駆動することができる。本発明は、この点に制限を加えることを意図するものではない。
【0030】
図9に示すように、フィルタFは、第1駆動ユニット220及びバルブV1の間に配置される。フィルタFは、バルブV1から第1駆動ユニット220へ流れるガスを濾過するように構成される。収集ユニット280は、バルブV2及びキャリア210の間に提供される。収集ユニット280は、キャリア210におけるサンプルの代謝物を収集するように構成される。また、差圧計M1は、フィルタFに提供され、差圧計M2は、第2チャンバ250bに提供され、差圧計M3は、キャリア210に提供される。差圧計M1、差圧計M2、及び差圧計M3は、それぞれフィルタF、第2チャンバ250b、及びキャリア210における圧力値を測定するように構成されるから、第1駆動ユニット220、バルブV1、及びバルブV2は流体の流動を円滑に駆動するように動作される。
【0031】
図9を参照し、収容ユニット290は、複数の導管292を有することができる。導管292は、キャリア210に接続され、且つそれぞれ異なる管径を有する。第1流体は、何れか1つの導管292を介して収容ユニット290から流出することができる。更に、導管292の半径が大きいほど、サイフォンの原理により第1流体が導管292を介して収容ユニット290から流出する流量が大きくなる。従って、適当な管径を有する導管292が要求の流量に基づいて第1流体を輸送するように選択されることができる。各導管292は、バルブV3を有する。各バルブV3は、第1流体が対応する導管292を介して流出するかを制御するように構成される。
【0032】
上記のように、本発明の実施形態に基づく電子顕微鏡は、バッファリングがフローバッファユニットにより第1流体に実行され、それから、第1流体がキャリアに流れる。更に、フローバッファ傾斜面は、再び第1流体にバッファリングを実行することに用いられることもでき、従って、キャリアにおけるサンプルを流れる第1流体の乱れを軽減させる。このように、使用者は、電子顕微鏡を用いることによってサンプルを観察することができる。更に、第1流体の流動のために提供される第1通路に加えて、第1通路に堆積される第2通路も第2流体の流動のためにキャリア内に提供され、これにより、第1流体の温度は、第2流体を用いることによって調整されることができる。このように、サンプルは、予期する適当な温度下で観察されることができる。更に、フローバッファユニットは、同時に第1流体及び第2流体にバッファリングを行うことに使用されることもでき、フローバッファユニットに統合された温度制御ユニットは、第1流体及び第2流体の温度を同時に制御することに用いられることもでき、従って、電子顕微鏡のフローバッファと温度制御の効率を改善する。電子顕微鏡の既存の真空吸引装置は、更に第1流体の流動を駆動することに用いられることもできる。このように、第1流体の駆動源として追加のポンプを必要とせず、従って、電子顕微鏡の空間及びコストが減少されることができる。
【0033】
以上のごとく、本発明を実施形態により開示したが、もとより、本発明を限定するためのものではなく、当業者であれば容易に理解できるように、本発明の技術思想の範囲内において、適当な変更ならびに修正が当然なされうるものであるから、その特許権保護の範囲は、特許請求の範囲および、それと均等な領域を基準として定めなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、キャリアを有する電子顕微鏡に関し、ナノレベルでの物質の幾何学的な外観を観察するための走査型電子顕微鏡(SEM)に適用できる。
【符号の説明】
【0035】
100,200 電子顕微鏡
100a,200a 制御ユニット
110,210 キャリア
112 フィルム
113 基板
114 ボディ
114a 上部構造
114b 下部構造
114c 第1通路
114d 第2通路
116 突起構造
120,220 第1駆動ユニット
130,230 フローバッファユニット
132 チャネル
132a チャンバ
140 電子源
150a,250a 第1チャンバ
160,260 第2駆動ユニット
170,270 温度制御ユニット
172 冷却チップ
174 放熱フィン組
176 放熱ファン
178 熱管
180,280 収集ユニット
190 クランプ
190a ベース
190b 挟持部材
192 第1流体案内構造
194 第2流体案内構造
250b 第2チャンバ
290 収容ユニット
292 導管
B ボールジョイント部
C 挟持部
D 距離
E 電子ビーム
F フィルタ
G ガス
H1,H2 開口
L 流体
M1,M3 差圧計
M2 圧力計
P1 第1流動経路
P2 第2流動経路
I フローバッファ傾斜面
R ガイドレール部
S1 第1温度検出素子
S2 第2温度検出素子
T 牽引部
V1,V2,V3 バルブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9