(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6196670
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】鉱物を含有する表面改質された炭酸カルシウムおよびこの使用
(51)【国際特許分類】
C01F 11/18 20060101AFI20170904BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20170904BHJP
C09D 7/12 20060101ALI20170904BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20170904BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20170904BHJP
C09C 1/02 20060101ALI20170904BHJP
D21H 17/67 20060101ALI20170904BHJP
D21H 19/38 20060101ALI20170904BHJP
【FI】
C01F11/18 H
C09D201/00
C09D7/12
C09J11/04
C09J201/00
C09C1/02
D21H17/67
D21H19/38
【請求項の数】25
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-520968(P2015-520968)
(86)(22)【出願日】2013年7月10日
(65)【公表番号】特表2015-529615(P2015-529615A)
(43)【公表日】2015年10月8日
(86)【国際出願番号】EP2013064548
(87)【国際公開番号】WO2014009403
(87)【国際公開日】20140116
【審査請求日】2015年3月5日
(31)【優先権主張番号】12176320.5
(32)【優先日】2012年7月13日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/673,797
(32)【優先日】2012年7月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505018120
【氏名又は名称】オムヤ インターナショナル アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェラード,ダニエル・エドワード
(72)【発明者】
【氏名】シェルコップ,ヨアヒム
(72)【発明者】
【氏名】ゲイン,パトリック・アーサー・チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】レーナー,フリッツ
(72)【発明者】
【氏名】ベルナー,デニス
【審査官】
村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/124564(WO,A1)
【文献】
欧州特許出願公開第02264108(EP,A1)
【文献】
特表2006−523251(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第02264109(EP,A1)
【文献】
特開2003−147275(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F 1/00−17/00
C09C 1/02
C09D 7/12
C09D 201/00
C09J 11/04
C09J 201/00
D21H 17/67
D21H 19/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボール形状の球状の表面改質された炭酸カルシウムを含む粒子を製造する方法であって、
a)少なくとも1つの水性炭酸カルシウム含有鉱物スラリーを提供する工程;
b)少なくとも1つの水溶性の酸を提供する工程;
c)場合により外部経路を介してさらにガス状のCO2を提供する工程;
d)撹拌条件下、工程a)の前記水性炭酸カルシウム含有鉱物スラリーを、工程b)の前記酸ならびにインサイチュで生じたおよび/または外部供給された工程c)の前記CO2と接触させる工程;
e)場合により水性スラリーを脱水する工程
を含み、
少なくとも1つの加工処理剤は、工程a)の前記水性炭酸カルシウム含有鉱物スラリーを、工程b)の前記酸ならびにインサイチュで生じたおよび/または外部から供給された工程c)の前記CO2と接触させる前、接触中または接触後に添加され、
加工処理剤が、1つ以上の工程において、前記水性炭酸カルシウム含有鉱物スラリーに投与され、且つ、スラリーの乾燥重量に基づいて最大8重量%の量で添加され、そして
少なくとも1つの加工処理剤が、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸アルミニウムおよび/またはこれらの水和形態からなる群から選択される、
方法。
【請求項2】
前記炭酸カルシウム含有鉱物が、大理石、チョーク、石灰岩、方解石、ドロマイト、沈澱炭酸カルシウム(PCC)、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
スラリー中の前記炭酸カルシウム含有鉱物が、0.01μmから10μmの重量中位粒径を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程a)の前記スラリーが、スラリーの重量に基づいて、5重量%から20重量%の固形分含有量を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
工程a)の前記スラリーが、1つ以上の分散剤の添加によって安定化される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
工程b)の少なくとも1つの水溶性の酸が、0から6のpKaを有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
工程b)の少なくとも1つの水溶性の酸が、リン酸、クエン酸、ホウ酸またはこれらの混合物から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
工程b)において提供される少なくとも1つの水溶性の酸が、1つ以上の工程において、前記水性炭酸カルシウム含有鉱物スラリーに添加される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
工程b)の少なくとも1つの水溶性の酸の添加、ならびに工程a)の前記水性炭酸カルシウム含有鉱物スラリーと、工程b)の前記酸ならびにインサイチュで生じたおよび/または外部から供給された工程c)の前記CO2との接触が、本質的に層流を生じさせる撹拌条件下で撹拌反応器中で行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項10】
20℃以上の温度範囲において、水性環境で行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項11】
25℃から95℃の温度範囲において、水性環境で行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
加工処理剤が、スラリーの乾燥重量に基づいて0.01重量%から5重量%の量で添加される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項13】
加工処理剤は、硫酸アルミニウムまたはこの水和物が、1つの工程において、前記水性炭酸カルシウム含有鉱物スラリーに投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
硫酸アルミニウムの含有量が、乾燥スラリーの重量に基づいて最大5重量%である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
加工処理剤が、工程b)前、工程b)中または工程b)後に添加される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項16】
ボール形状の表面改質された炭酸カルシウム含有鉱物の水性スラリーであって、
前記炭酸カルシウム含有鉱物が、大理石、チョーク、石灰岩、方解石、ドロマイト、沈澱炭酸カルシウム(PCC)、およびこれらの混合物からなる群から選択され、
前記表面改質された炭酸カルシウム含有鉱物が、マルバーンマスターサイザーによる測定で、4μmから100μmの中位粒径を有し、
前記表面改質された炭酸カルシウム含有鉱物が、20m2/gから200m2/gのBET比表面積を有し、
ボール形状の表面改質された炭酸カルシウム含有鉱物が、3未満の範囲の狭い粒径分布d98/d50を有する、水性スラリー。
【請求項17】
前記表面改質された炭酸カルシウム含有鉱物が、30m2/gから90m2/gのBET比表面積、およびマルバーンマスターサイザーによる測定で10μmから50μmの中位粒径を有する、請求項16に記載の水性スラリー。
【請求項18】
ボール形状の表面改質された炭酸カルシウム含有鉱物が、1.4から2.9の範囲の狭い粒径分布d98/d50を有する、請求項16または17に記載の水性スラリー。
【請求項19】
ボール形状の表面改質された炭酸カルシウム含有鉱物であって、
前記炭酸カルシウム含有鉱物が、大理石、チョーク、石灰岩、方解石、ドロマイト、沈澱炭酸カルシウム(PCC)、およびこれらの混合物からなる群から選択され、
前記表面改質された炭酸カルシウム含有鉱物が、マルバーンマスターサイザーによる測定で、4μmから100μmの中位粒径を有し、
前記表面改質された炭酸カルシウム含有鉱物が、20m2/gから200m2/gのBET比表面積を有し、
ボール形状の表面改質された炭酸カルシウム含有鉱物が、3未満の範囲の狭い粒径分布d98/d50を有する、ボール形状の表面改質された炭酸カルシウム含有鉱物。
【請求項20】
30m2/gから90m2/gのBET比表面積、およびマルバーンマスターサイザーによる測定で10μmから50μmの中位粒径を有する、請求項19に記載のボール形状の表面改質された炭酸カルシウム含有鉱物。
【請求項21】
請求項16から18のいずれか一項に記載の水性スラリーの表面改質された炭酸カルシウム含有鉱物、または請求項19または20に記載の乾燥したボール形状の表面改質された炭酸カルシウム含有鉱物の、紙、紙コーティング、ティッシュペーパー、デジタル写真紙、塗料、コーティング、接着剤、プラスチック、廃水処理または廃水処理剤における、使用。
【請求項22】
塗料またはコーティングにおける艶消し剤としての、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
艶消し剤が、湿潤塗料に基づいて1から10重量%の量で存在する、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
乾燥した塗料またはコーティングの表面が、DIN67530に従った測定の場合、85°で、10未満の範囲の光沢を有する、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
請求項16から18のいずれかに記載の水性スラリーのボール形状の表面改質された炭酸カルシウム含有鉱物、または請求項19または20に記載の乾燥したボール形状の表面改質された炭酸カルシウム含有鉱物を含む、紙、ティッシュペーパー、デジタル写真紙、塗料、コーティング、接着剤、プラスチック、または廃水処理剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸カルシウム含有鉱物、特に1μmを超える平均粒径直径を有するボール形状の球状表面改質された球状炭酸カルシウムを含む鉱物粒子、およびこの使用に関する。特定の使用は、塗料およびコーティングにおけるものであり、塗料およびコーティングの表面艶消し効果を与えると同時に、平滑な塗料またはコーティング表面を提供する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、改質された炭酸カルシウム含有鉱物、および例えば塗料およびコーティングにおける低投与量でのこれらの使用を対象とし、より詳細には塗料およびコーティングに艶消し効果を与えると同時に、平滑な塗料またはコーティングフィルムを提供する改質された炭酸カルシウム含有鉱物を対象とする。
【0003】
現在の艶消し効果は、塗料またはコーティングフィルム表面の微小粗さを提供する限り、様々な手段によって達成でき、ここで入射光は、艶消し表面をもたらすように散乱される。この背景にある物理学は既知である。完全な光吸収を採用するのではなく、完全な艶消し効果を得る条件は、入射光を鏡面反射角度から外れて散乱することである。このことは、基材を照らす指向性光を回折して拡散散乱を生じることを意味する。
【0004】
塗料およびコーティング産業において、こうした種々の艶消し剤は既知であり、塗料およびコーティングに混合され、例えばシリカ、ワックス、有機材料およびさらには充填剤が添加されて、塗料またはコーティングの乾燥工程後に微小粗さを有する表面を形成する。概して、塗料またはコーティングにおける艶消し剤の用量が多くなるにつれて、艶消し効果が強くなることが認識されている。対照的には、より大きな粒径を有する製品は、艶消し効率はより強力になるが、得られる塗料またはコーティングフィルムの表面は平滑ではない。より小さい平均粒径分布を有する艶消し剤は、十分な艶消し効果を提供しないが、より平滑な塗料またはコーティング表面を提供する。
【0005】
JP−A−2003 147275には、バインダ構成成分およびリン酸で処理された炭酸カルシウムを含むコーティング材料組成物が開示されている。このコーティング材料は、処理された炭酸カルシウムが10μm未満の平均粒子直径、70から100m
2/gの比表面積、および130から20ml/100gの吸油量を有する場合には、艶消し表面を提供する。
【0006】
WO2006/105189A1には、凝集された粒子状鉱物、および凝集された炭酸カルシウムを含む組成物が言及されている。この乾燥した凝集炭酸カルシウムビーズは、少なくとも5μmの重量中位凝集物粒径d
50、さらには少なくとも100μmのサイズを有する。この凝集炭酸カルシウムビーズは、紙、塗料、コーティングまたはセラミックに製造される。
【0007】
US5,634,968には、鉱物充填剤を含有する炭酸塩、より詳細には艶消し剤としての使用するためのものが言及されている。この鉱物材料は、9.6から20.5μmのd
50を有する天然および/または沈澱炭酸カルシウムであり、ここで粉砕天然炭酸カルシウムが好ましい。
【0008】
US5,531,821およびUS5,584,923には、炭酸カルシウムをアニオン性塩およびカチオン性塩と混合することによって製造される耐酸性炭酸カルシウムが開示され、特許請求される。この耐酸性炭酸カルシウムは、中性または弱酸性の製紙方法に使用されている。
【0009】
US6,666,953には、中程度の強酸から強酸のH
3O
+イオンの1つ以上の供与体およびガス状CO
2で処理される天然炭酸塩を含有する充填剤の顔料が開示されている。
【0010】
US2008/0022901には、炭酸カルシウム、この炭酸塩と1つ以上の穏やかな強酸から強酸H
3O
+イオン供与体との反応生成物、およびこの炭酸カルシウムとインサイチュで形成されたおよび/または外部供給源を起源とするガス状CO
2と式R−Xの1つ以上の化合物との反応生成物の間の複数の反応によって、インサイチュで形成された乾燥生成物を含有する鉱物顔料について言及されている。
【0011】
EP2264109A1およびEP2264108A1は、表面反応炭酸カルシウムを調製するための方法、およびこの使用、ならびに弱酸を含浸した表面反応炭酸カルシウムを調製するための方法、得られた生成物および使用が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2003−147275号公報
【特許文献2】国際公開第2006/105189号
【特許文献3】米国特許第5,634,968号明細書
【特許文献4】米国特許第5,531,821号明細書
【特許文献5】米国特許第5,584,923号明細書
【特許文献6】米国特許第6,666,953号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2008/0022901号明細書
【特許文献8】欧州特許出願公開第2264109号明細書
【特許文献9】欧州特許出願公開第2264108号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、球状形状の表面改質された炭酸カルシウムを含む鉱物およびこの使用に関する。特にこれらは塗料またはコーティングに使用され、低投与量にて艶消し効果および平滑な塗料またはコーティング表面を提供する。表面改質された炭酸カルシウムを含む鉱物は、先行技術において記載されるような方法によって得ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
粒子を含む球状形状の表面改質された炭酸カルシウムを製造するための方法は、基本的に以下の工程を含む:
a)少なくとも1つの水性炭酸カルシウムを含有する鉱物スラリーを提供する工程;
b)少なくとも1つの水溶性の酸を提供する工程;
c)場合により外部経路を介してさらにガス状のCO
2を提供する工程;
d)撹拌条件下、工程a)の水性炭酸カルシウムを含有する鉱物スラリーを、工程b)の酸ならびにインサイチュで生じたおよび/または外部供給された工程c)のCO
2と接触させる工程。
e)場合により水性スラリーを脱水する工程;
【0015】
こうした方法によって得られる球状でボール形状の表面改質された炭酸カルシウム含有鉱物は、15m
2/gを超える、好ましくは約20m
2/gから約200m
2/g、より好ましくは約30m
2/gから約150m
2/g、さらにより好ましくは約40m
2/gから約100m
2/gのBET比表面積、約4μmから約100μm、好ましくは約5μmから約75μm、より好ましくは約1μmから約50μm、さらにより好ましくは約15μmから約30μmの中位粒径を有する。
【0016】
本発明の内容の中で、球状形状は、球状形状の表面改質された炭酸カルシウム含有鉱物の外観が、球形またはボール形状であることを意味する。
【0017】
さらに、ボール形状の表面改質された炭酸カルシウムを含む鉱物は、好ましくは3未満、より好ましくは2.5未満、好ましくは1.4から2.9の範囲の狭い粒径分布d
98/d
50を有する。
【0018】
これらの特異な特性は、少なくとも1つの水性炭酸カルシウム含有鉱物スラリーが、スラリーの重量に基づいて4重量%を超える、好ましくは5重量%から約20重量%、より好ましくは約7重量%から約10重量%の固形分含有量を有する場合に特に得られる。低固形分含有量、例えば4重量%未満またはこれ以上の固形分含有量、例えば20重量%を超える含有量も同様に使用できる。
【0019】
炭酸カルシウム含有鉱物は、大理石、チョーク、石灰岩、方解石、ドロマイトおよび沈澱炭酸カルシウム(PCC)、およびこれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。PCCは、合成炭酸カルシウムと称されることもある。この炭酸カルシウム含有鉱物は、基本的に水性系に供給される。この水性系は、スラリーであることが多い。
【0020】
本発明の意味において、「スラリー」は、懸濁液(本質的に不溶性の固体と、水と、場合によりさらなる添加剤とを含む。)であり、通常はこれが形成される固形分を含まない液体よりも高密度である。
【0021】
本発明によれば、炭酸カルシウム含有鉱物は、一般に粉砕大理石、チョーク、石灰岩、方解石、ドロマイトまたはこれらの混合物のいずれかを含むが、沈澱炭酸カルシウム(PCC)を包含し、これは出発材料として合成炭酸カルシウムとしても既知である。
【0022】
有利なことには、スラリー中に存在する炭酸カルシウム含有鉱物は、Sedigraphによって測定される場合、0.01μmから10μm、好ましくは0.2μmから2μm、より好ましくは0.5μmから1μmの重量中位粒径を有する。
【0023】
本発明の方法におけるスラリーは、安定化されることができ、または安定化できない。スラリーが安定化される場合、当業者に既知の従来の分散剤が使用できる。好ましい分散剤は、ポリアクリル酸であり、または他の部分的もしくは完全に中和された形態、例えばポリアクリル酸ナトリウムである。
【0024】
工程b)において提供される少なくとも1つの水溶性の酸は、EP2264109A1号および/またはEP2264108A1に開示されるような酸から選択できる。こうした酸の例は、リン酸または硫酸である。
【0025】
工程b)において提供される少なくとも1つの水溶性の酸は、0.01mol/molから約1mol/molの範囲の炭酸カルシウム含有鉱物のモル数に対するモル量において投与される。好ましくは0.1から0.6mol/molである。
【0026】
工程b)において提供される少なくとも1つの水溶性の酸は、1つ以上の工程、好ましくは1つの工程において、この水性炭酸カルシウム含有鉱物スラリーに添加される。
【0027】
1つ以上の工程での添加はまた、規定の期間、例えば5分、10分、20分、30分、60分またはこれ以上、例えば120分または180分の期間にわたって実行できる。添加が特定の期間にわたって行われる場合、添加は、連続的にまたは断続的に行われることができる。故に、例えば10分にわたる30%の用量添加は、毎分3%の用量となる。
【0028】
場合により、工程b)において少なくとも1つの水溶性の酸の添加の後、ガス状CO
2が、外部経路によってスラリーに提供できる。こうしたガス状CO
2の添加は、当業者に既知である。しかし、CO
2は、炭酸塩を含有する鉱物が、H
3O+イオンと反応する場合にインサイチュで生じ得る。このため、CO
2の起源は、インサイチュであるか、または外部から供給されるか、またはさらにはこれらの組み合わせであることができる。
【0029】
ガス状CO
2のスラリーへの任意の添加に拘わらず、本発明の方法はさらに、工程a)の水性炭酸カルシウム含有鉱物スラリーと、工程b)の酸およびインサイチュで生じたおよび/または工程d)の外部供給されたCO
2とを接触させる工程e)を含み、この接触は、撹拌下または混合条件下で行われる。
【0030】
この方法はさらに、工程a)の少なくとも1つの水性炭酸カルシウム含有鉱物を、工程b)の少なくとも1つの水溶性の酸およびインサイチュで生じたまたは外部から供給された工程d)のCO
2またはこれらの組み合わせと接触させる前、接触中または接触後、加工処理剤が提供される工程c)を含んでいてもよい。
【0031】
好ましくは加工処理剤は、工程a)の少なくとも1つの水性炭酸カルシウム含有鉱物スラリーを、工程b)の少なくとも1つの水溶性酸およびインサイチュで生じたまたは外部から供給された工程d)のCO
2またはこれらの組み合わせと接触させる前および/または接触中に提供される。
【0032】
故に、本明細書に開示されるように方法の特定実施形態において、加工処理剤は、工程b)の水溶性の酸の添加前に添加されて、続いて工程c)、d)およびe)が続く。
【0033】
本明細書に開示されるような方法のさらなる特定の実施形態において、加工処理剤は、工程b)の水溶性の酸の添加の間に添加され、続いて工程c)、d)およびe)が続く。
【0034】
本明細書に開示されるような方法のさらに別の実施形態において、加工処理剤は、工程b)の水溶性の酸の添加の後に添加され、続いて工程c)、d)およびe)が続く。
【0035】
好ましくは、加工処理剤は、工程b)の水溶性の酸の添加の前および/または添加の間に添加され、続いて工程c)、d)およびe)が続く。
【0036】
この少なくとも1つの加工処理剤は、好ましくは硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸アルミニウムおよび/またはこれらの水和形態、ケイ酸塩、水溶性のカチオン性ポリマー、水溶性の両性ポリマー、水溶性の非イオン性ポリマーおよびこれらの組み合わせ、ならびに沈澱炭酸カルシウム(PCC)のシード、先行技術の表面反応炭酸カルシウム、または本発明の方法によって得られるボール形状の表面反応炭酸カルシウムを含む鉱物を含む群から選択されてもよい。
【0037】
いかなる理論にも束縛されないが、本発明者らは、少なくとも1つの加工処理剤は、凝固剤として機能し、炭酸カルシウム含有鉱物粒子のアセンブリを促進し、これはさらに方法において記述された化学物質にさらに曝される際にボール形状の表面改質された炭酸カルシウム含有粒子を提供すると考えられる。
【0038】
本明細書に記載されるような方法の反応条件は、水性環境において、10℃以上の温度範囲、例えば約25℃から約95℃、好ましくは約30℃から約80℃、より好ましくは約50℃から約75℃の範囲において行われる。
【0039】
加工処理剤は、工程b)の少なくとも1つの水溶性の酸の添加前、添加の間または添加後に、1つ以上の工程、好ましくは1つの工程において、水性の炭酸カルシウム含有鉱物スラリーに投与される。加工処理剤は、スラリーの乾燥重量に基づいて最大で8重量%の量で添加される。好ましくは加工処理剤は、スラリーの乾燥重量に基づいて0.01重量%から約5重量%、より好ましくは約0.05重量%から約4重量%、さらにより好ましくは約0.4重量%から約3重量%の量で添加される。
【0040】
特定の実施形態において、加工処理剤は、硫酸アルミニウムである。さらなる特定の実施形態において、加工処理剤は、水和形態における硫酸アルミニウムである。好ましい実施形態において、加工処理剤は硫酸アルミニウム十六水和物である。
【0041】
なおさらなる実施形態において、本明細書に記載されるような方法における硫酸アルミニウム含有量は、乾燥スラリーの重量に基づいて4重量%までであり、好ましくは乾燥スラリーに基づいて約0.1重量%から約2重量%、より好ましくは約0.2重量%から約1重量%の範囲である。硫酸アルミニウムの含有量は重要であるので、水和物の投与は、所望の量を達成するため、対応した適合が必要であることを考慮するべきである。
【0042】
混合した後、スラリーは、当業者に既知の熱および/または機械的方法のいずれかのタイプによって任意の工程e)において脱水できる。
【0043】
こうして得られた水性スラリーはさらに、球状またはボール形状の乾燥した表面改質炭酸カルシウムを含む鉱物を得るために、水性スラリーを乾燥するように処理できる。球状またはボール形状の乾燥した表面改質炭酸カルシウムを含む鉱物を得るために適用される乾燥方法は、当業者に周知のいずれかの種類の乾燥方法であることができる。
【0044】
本発明の方法によって得られるスラリーに含まれる水性ボール形状の表面改質された炭酸カルシウム含有鉱物は、4μmから約100μm、好ましくは約5μmから約75μm、より好ましくは約10μmから約50μm、さらにより好ましくは約15μmから約30μmの中位粒径を有する。
【0045】
本発明の方法によって得られたスラリーに含まれる水性ボール形状の表面改質された炭酸カルシウム含有鉱物は、同時に、好ましくは3未満、より好ましくは2.5未満、好ましくは1.4から2.9の範囲の狭い粒径分布d
98/d
50を有する。
【0046】
本明細書に記載される方法によって得られるスラリーに含まれる水性の表面改質された炭酸カルシウム含有鉱物は、15m
2/gを超える、好ましくは約20m
2/gから約200m
2/g、より好ましくは約30m
2/gから約150m
2/g、さらにより好ましくは約40m
2/gから約100m
2/gのBET比表面積を有する。
【0047】
本発明の意味内ではBET比表面積は、以降の実施例の項において提供される方法を介して測定される比表面積に関する。
【0048】
好ましい実施形態において、本発明の方法によって得られるスラリーに含まれる水性のボール形状の表面改質炭酸カルシウム含有鉱物は、30m
2/gから約90m
2/gのBET比表面積、および10μmから50μmの中位粒径を有する。
【0049】
別の実施形態によれば、本明細書に記載されるような方法によって得られるボール形状の表面改質炭酸カルシウム含有鉱物の水性スラリーはさらに乾燥でき、乾燥したボール形状の表面改質炭酸カルシウム含有鉱物を得る。
【0050】
さらに別の実施形態によれば、この乾燥したボール形状の表面改質炭酸カルシウム含有鉱物は、15m
2/gを超える、好ましくは約20m
2/gから約200m
2/g、より好ましくは約30m
2/gから約150m
2/g、さらにより好ましくは約40m
2/gから約100m
2/gのBET比表面積を有する。さらにこの乾燥したボール形状の表面改質された炭酸カルシウム含有鉱物は、4μmから約100μm、好ましくは約5μmから約75μm、より好ましくは約10μmから約50μm、さらにより好ましくは約15μmから約30μmの中位粒径を有する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】本発明に従う表面改質された炭酸カルシウム含有鉱物の粒径分布曲線を示す。
【
図2a】500x倍率のE2のボール形状の表面改質炭酸カルシウム含有鉱物のSEM写真を示す。
【
図2b】2500x倍率のE2のボール形状の表面改質炭酸カルシウム含有鉱物のSEM写真を示す。
【
図3a】500x倍率での、E6のボール形状の表面改質炭酸カルシウム含有鉱物のSEM写真を示す。
【
図3b】2500x倍率のE6のボール形状の表面改質炭酸カルシウム含有鉱物のSEM写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本発明の使用
本発明は、ボール形状の表面改質された炭酸カルシウム含有鉱物またはこの本発明のボール形状の表面改質された炭酸カルシウム含有鉱物を含むスラリーは、紙、ティッシュペーパー、デジタル写真紙、塗料、コーティング、接着剤、プラスチック、または廃水処理または廃水処理剤に使用されてもよい。
【0053】
好ましい実施形態において、本発明のボール形状の表面改質された炭酸カルシウム含有鉱物は、艶消し剤として塗料またはコーティングに使用される。艶消し剤によって、本出願人は、この艶消し剤が入射光を鏡面反射角度から外れて散乱できると理解する。このことは、基材を照らす指向性光を回折して拡散散乱を生じることを意味する。
【0054】
特に艶消し剤は、塗料またはコーティングの総重量に基づいて1から10重量%の量、好ましくは2から7重量%の量、より好ましくは3から5重量%の量において存在する。
【0055】
艶消し剤としての、本発明のボール形状の表面改質された炭酸カルシウム含有鉱物を含む塗料またはコーティングは、上記記載の量において、DIN67530に従って測定される場合に、85°で、塗料またはコーティングの乾燥したフィルムの光沢単位(GU)が、10未満、好ましくは0.5から9.5、より好ましくは1から8、さらにより好ましくは2から6.5の範囲の表面光沢を提供するものであり、このような低含有量艶消し剤は非常に驚くべきことである。
【0056】
上記で記載されるような量で存在する本発明のボール形状の表面改質された炭酸カルシウム含有鉱物のさらなる利点は、塗料またはコーティングの乾燥したフィルムにおける艶消し効果の他に、この乾燥した塗料またはコーティングの表面が平滑であることである。
【0057】
故に、塗料および/またはコーティングに使用される場合に本発明のボール形状の表面改質された炭酸カルシウム含有鉱物は、艶消し外観を与えると同時に、触覚に基づく平滑表面を提供する。
【0058】
以下の実施例は、本発明の範囲を制限することなく、本発明を例示することを目的とする:
【0059】
測定方法
以下の測定方法は、詳細な説明、実施例および特許請求の範囲に与えられるパラメータを評価するために使用される。
【0060】
材料のBET比表面積(SSA)
比表面積は、30分間、250℃に加熱することによってサンプルを調整した後に、MICROMERITICS(商標)社によって販売されるGeminiVを用いてISO9277に従うBET方法を介して窒素により測定される。こうした測定の前に、サンプルはブフナ漏斗内で濾過し、脱イオン水ですすぎ、オーブン中で90℃から100℃で一晩乾燥させる。続いて、乾燥ケークを乳鉢中で完全に粉砕し、得られた粉末を、一定重量に到達するまで130℃にて湿分バランスをとる。
【0061】
水性スラリーの固形分含有量
スラリー固形分含有量(また「乾燥重量」として既知)は、以下の設定にてMettler−Toledoから市販されているMoisture Analyser HR73を用いて決定される:120℃の温度、自動スイッチオフ3、標準乾燥、5から20gのスラリー。
【0062】
非表面反応炭酸カルシウムを含む材料(即ち、炭酸カルシウム出発材料)の粒径分布(直径<xを有する粒子の質量%)および重量中位径(d50)
粒子状材料、例えば炭酸カルシウムの重量中位粒径および粒径質量分布は、沈降方法、即ち重力場において沈降挙動の分析を介して決定される。測定は、Sedigraph(商標)5120を用いて行われる。
【0063】
方法および機器は、当業者に既知であり、充填剤および顔料の粒径を決定するために一般に使用されている。測定は、0.1重量%Na
4P
2O
7の水溶液中に行われる。サンプルは、高速ミキサおよび超音波を用いて分散させた。
【0064】
ボール形状の表面改質された炭酸カルシウム含有鉱物の中位粒径d
50およびd
98
ボール形状の表面改質された炭酸カルシウム含有鉱物の中位粒径d
50およびd
98は、1.57の規定RIおよび0.005のiRI、Malvern Application Software5.60を用い、マルバーンマスターサイザー(Malvern Mastersizer)2000レーザー回折システムを用いて測定された。測定は、水性分散液について行われた。サンプルは、高速撹拌器を用いて分散した。この点に関して、d
50およびd
98値は、直径を規定し、ここで測定された粒子の50体積%または98体積%は、それぞれd
50またはd
98より小さい直径を有する。
【0065】
粘度測定
A.
EN ISO 2884−1に従うICI粘度
ICI粘度は、(23±0.2)℃の温度にて、100001/sの剪断速度にてコーン/プレート型粘度計(Epprecht Instruments+Controls,Bassersdorf,Switzerland)を用いるEN ISO2884−1に従って測定された。15秒後の測定値は、一定値であるはずであり、サンプルの測定粘度を示す。
【0066】
B.
Paar Physica M301 PP25レオメータを用いる粘度
この測定は、以下のレジームに従って、Anton Paar GmbH社,AustriaからのPaar Physica M301 PP25 Rheometerを用いて行った:
温度:23℃
出発剪断速度:0.11/s
最終剪断速度:1001/s、ディケードあたり10測定点の対数勾配、各測定点は5秒後にとる。
【0067】
測定点は、10進対数様式において示され、結果として負の傾きをもつ線形プロットがこの測定から得られる。グラフのx軸は、10進対数様式において剪断速度を表し、y軸はPa・sの測定粘度を示す。
【0068】
コーティングされた表面の光沢
光沢値は、コントラストカードにおいて150μmおよび300μmのコーターギャップで調製された塗布面においてDIN67530に従って列挙された角度で測定される。使用されるコントラストカードは、Lenetaコントラストカード、フォーム3−B−H、サイズ7−5/8x11−3/8(194×289mm)(Leneta社から販売され、Novamart,Stafa,Switzerlandから配給される。)である。光沢は、Byk Gardner社,Geretsried,Germanyからの光沢測定デバイスを用いて測定される。光沢は、光沢測定デバイスを用いて、カード上の5つの異なる点を測定することによって得られ、平均値は、デバイスによって形成され、デバイスのディスプレイから導くことができる。
【0069】
スクラビングテスト
スクラビングテストについて、上記で記述されるように、300μmのコーターギャップでコーティングされたLanetaコントラストカード、フォーム3−B−H,サイズ7−5/8×11−3/8(194×289mm)(Leneta社によって販売され、Novamart,Stafa,Switzerlandから配給される。)が、スクラビングテストに提示された。スクラビングは、スクラビングデバイスに固定された四角いフェルトグライダ22mm×22mmを用いて行った。フェルトグライダを保持するアームにより、500g重りをロードして、コーティングされたLenetaカードの表面上にフェルトグライダを加圧した。スクラビングのパス長さは、5cm、50サイクル(1サイクル=前方および後方)であり、60秒±2秒内で行われた。フェルトグライダは、Wilhelm Ritterath GmbH,Meckenheim,Germanyから提供されるfix−o−mollタイプであった。光沢は、スクラビングの前後において、60°および85°にてDIN67530に従って測定された。
【0070】
色値(Rx,Ry,Rz)の決定
色値Rx、Ry、Rzは、Lenetaコントラストカードのホワイトおよびブラックフィールドにわたって決定され、Datacolor社,Montreuil,Franceのspectraflas SF 450 X spectrophotomerで測定される。
【0071】
コーティングされた表面のコントラスト比(不透明度)
コントラスト比値は展延速度7.5m
2/lにてISO2814に従って決定される。
【0072】
コントラスト比は、色値の測定によって得られるRy
ブラックおよびRy
ホワイトを用いて、以下に記載の式によって計算される:
【実施例】
【0074】
以下の本発明の例示実施例は、10lのバッチサイズにおいて層状混合システムを装備したジャケット付きスチール反応器において、本発明の方法に従って、炭酸カルシウム含有鉱物、即ち粉砕天然大理石を接触させる工程を含む。固形分含有量は、表1に示されるように10重量%または8重量%に調整される。
【0075】
工程b)の少なくとも1つの水溶性の酸の添加および工程a)のこの水性炭酸カルシウム含有鉱物スラリーと工程b)の酸ならびにインサイチュで生じたおよび/または外部から供給された工程d)のCO
2との接触は、撹拌条件、例えば特に層流が現れるような撹拌反応器において行われる。
【0076】
本発明の方法に使用され、表1においてH90として示される大理石は、出願人から商標名Hydrocarb(登録商標)90−ME78%として販売されて市販され、これはNorwayのMoldeからの天然粉砕大理石であり、5μmのトップカットd
98および0.7μmの重量中位粒径d
50(Sedigraphによって決定されるサイズ)を有し、スラリーの乾燥物に基づいて78重量%の固形分含有量、および400mPasの粘度を有するスラリーの形態で提供される。
【0077】
混合速度は、140または300rpmのいずれかに調整され、温度は70℃に調整される。10または30分の期間にわたって添加されるリン酸溶液の30重量%の用量の前に、加工処理剤の硫酸アルミニウム十六水和物を、0.5重量%または0.6重量%の量で、炭酸カルシウム含有鉱物スラリーに一度に添加した。
【0078】
反応物を、表1に示される混合速度および時間にて混合した。
【0079】
【表1】
【0080】
実施例E1からE7の粒径分布(PSD)は、Malvern Mastersizerにて測定され、粒径分布曲線を
図1に示す。表2は、実施例E1からE/について、BET比表面積SSA、トップカットd
98および中位粒径d
50を示す。
【0081】
【表2】
【0082】
表面改質された炭酸カルシウムの実施例E2、E6、およびE7は、塗料で試験された。このため、E2、E6およびE7は、配合物に混合され、この領域において使用される艶消し剤、例えば珪藻土(C1,C3)またはケイ酸アルミニウム(C2)と比較した。すべての艶消し剤の投与量レベルは3重量%であった。この配合物はさらに、一般的な添加剤、例えば脱泡剤、分散剤、水酸化ナトリウム、防カビ剤、殺菌剤、二酸化チタン(ルチル)、タルカン、充填剤、顔料、増粘剤、可塑剤、粘度調整剤、水および当業者に既知の他のものを含む。表3は、テスト塗料の組成を示す。
【0083】
【表3】
【0084】
充填剤および顔料は、体積基準で、即ち同一の顔料容積濃度(PVC)にて置き換えた。塗料は、乾燥不透明度(ISO 2814)、白色度Ry(DIN53145)および艶(DIN67530)(85°での光沢)について試験した。ベースのテスト塗料の構成成分および機能は、当業者に既知の市販の製品であり、以下の表4に列挙される。
【0085】
【表4】
【0086】
テストされた塗料の性能を表5に要約するが、ここでC1、C2、およびC3は、比較塗料の実施例に関するものであり、P2、P6、およびP7は、本発明の方法によって得られる表面改質された炭酸カルシウム含有鉱物を含む塗料の実施例に関するものである。
【0087】
【表5】
【0088】
表4の結果からわかるように、本発明の例は、先行技術の艶消し剤と同様の艶消し効果の性能を示す。こうした艶消し効果は、これまで、本発明の中位粒径約10μmから約50μmを有し、BET比表面積約30m
2/gから約90m
2/gを有する表面改質された炭酸カルシウム含有鉱物を含む塗料については観察されていなかった。塗料特性は、150μmおよび300μmフィルム厚さでの乾燥不透明度について測定され、コントラスト比は、7.5m
2/lで測定された。P2、P6、およびP7は、300μmのコーティング厚さにて4.1、6.2、4.1の85°の光沢を提供する。これはまた、粒径が小さくなるに従い艶消し効果が減少することを見込んでいる。
【0089】
故に、本発明は、炭酸カルシウム含有鉱物に基づいて代替艶消し剤を提供し、塗料および/またはコーティングに使用される場合に艶消し効果を提供し、同時に触覚に基づく平滑表面を提供する。さらに本発明は、こうした表面改質された炭酸カルシウム含有鉱物を得るための方法を提供し、ここでこの表面改質された炭酸カルシウム含有鉱物は、紙および紙コーティング、ティッシュペーパー、デジタル写真紙、塗料、コーティング、接着剤、プラスチック、または廃水処理剤に使用できる。