【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の要旨)
本発明は、官能化された天然および/または合成炭酸カルシウム(FCC)を新規な医薬賦形剤として含む、錠剤、小型錠剤、顆粒剤または丸剤の形態の速崩性剤形に関する。そのような頬内速崩性錠剤は、口腔内分散性または崩壊性錠剤(ODT)としてまたは口腔内速溶性錠剤(FDT)としても周知である。そのようなODTまたはFDTは、固形の単回投与剤形で、それらは唾液等の水性環境中で、即時分散または溶解する。しかしながら、本発明の速溶性剤形は、頬内投与または経口投与のみに限定されるわけではない。速崩性剤形はまた水道水、茶またはジュース等の別の水性環境においても溶解し得る。従って、官能化された天然および/または合成炭酸カルシウム(FCC)を含む速溶性剤形は、医薬的および製菓の分野で有用である。官能化された天然または合成炭酸カルシウム(FCC)は、鉱物を含む粉砕された天然炭酸カルシウムもしくは沈降炭酸カルシウムと呼ばれることもある合成炭酸カルシウムのいずれかからまたはそれらの混合物から調製され得る。
【0014】
本発明はまた、錠剤、小型錠剤(つまり直径3mm未満の錠剤)、顆粒剤または丸剤等の速崩性剤形の、直接打錠、押出し、造粒化またはローラー圧縮による調製方法も含む。
【0015】
本発明はまた、速崩性剤形におけるFCCの使用にも関する。
【0016】
本発明は、新規な医薬賦形剤として官能化された天然および/または合成炭酸カルシウム(FCC)を含む、頬内速崩性および崩壊性剤形の錠剤、小型錠剤、顆粒剤または丸剤に関する。
【0017】
本発明の速崩性剤形は、官能化された天然もしくは合成炭酸カルシウムまたは官能化された天然および合成炭酸カルシウムのブレンド、少なくとも1つの活性または不活性成分ならびに少なくとも1つの崩壊剤を含み、ここで前記官能化された天然もしくは合成炭酸カルシウムは、天然もしくは合成炭酸カルシウムまたはそれらの混合物と二酸化炭素および1つ以上の酸との反応生成物であり、ここで二酸化炭素は、インサイチュでの酸処理により形成される、および/または外部源から供給され、ここで錠剤は水性環境内に導入された場合、3分以内に、望ましくは2分以内に、さらに望ましくは1分以内に、またさらに望ましくは30秒以内に崩壊する。崩壊時間は、10秒以上20秒以下の崩壊時間等の20秒以下にさえ減少され得る。
【0018】
官能化された炭酸カルシウム(FCC)を調製するための天然炭酸カルシウム源は、大理石、方解石、胡粉、石灰石およびドロマイトならびに/またはそれらの混合物の群から選択される。
【0019】
特定の実施形態において、官能化された炭酸カルシウム調製のための合成炭酸カルシウムは、霰石、バテライトおよび/または方解石の鉱物結晶体、特に柱面体、斜方面体もしくは偏三角面体のPCCまたはそれらの混合物を含む沈降炭酸カルシウム(PCC)である。
【0020】
官能化された天然および/または合成炭酸カルシウム(FCC)の調製プロセスは、ここでさらに述べられる。
【0021】
望ましい実施形態において、天然または合成炭酸カルシウムは、1つ以上の酸および二酸化炭素で処理する前に粉砕される。粉砕ステップは、当業者に周知の粉砕機等の任意の従来の粉砕装置で実施され得る。
【0022】
望ましいプロセスにおいて、天然または合成炭酸カルシウムは、粉砕等で微粉化してまたは微粉化しないで、水中で懸濁される。スラリーは、スラリー重量に基づき1wt%から80wt%、さらに望ましくは3wt%から60wt%、またさらに望ましくは5wt%から40wt%の範囲内の天然または合成炭酸カルシウム含量を有することが望ましい。
【0023】
次のステップにおいて、酸は、天然または合成炭酸カルシウムを含有する水性懸濁液に添加される。酸は、25℃で2.5以下のpK
aを有することが望ましい。25℃におけるpK
aが0以下であるならば、酸は、硫酸、塩酸またはそれらの混合物から選択されることが望ましい。25℃におけるpK
aが0から2.5であるならば、酸またはその金属塩はH
2SO
3、HSO
4−M
+、H
3PO
4、H
2PO
4−M
+またはそれらの混合物から選択されることが望ましく、ここでM
+はNa
+および/またはK
+であり得る。
【0024】
別の実施形態において、酸は、リン酸と、酢酸、ギ酸もしくはクエン酸またはそれらの酸の塩との組み合わせであることが望ましい。
【0025】
酸は、リン酸単独であることがさらに望ましい。
【0026】
1つ以上の酸は、濃縮溶液またはより希薄な溶液として懸濁液に添加され得る。H
3O
+イオン対天然または合成炭酸カルシウムのモル比が0.1から2であることが望ましい。
【0027】
別の方法として、天然または合成炭酸カルシウムが懸濁される前に、酸を水に添加することも可能である。
【0028】
次のステップにおいて、天然または合成炭酸カルシウムは二酸化炭素で処理される。硫酸もしくは塩酸等の強酸または中強度の酸が天然または合成炭酸カルシウムの酸処理に用いられるならば、二酸化炭素は自然に形成される。その代わりにまたはそれに加えて、二酸化炭素は外部源から供給され得る。
【0029】
酸処理および二酸化炭素を用いた処理は、強酸が用いられる場合、同時に実施され得る。例えば0から2.5の範囲のpK
aを有する中強度の酸を用いた酸処理を最初に行い、その後に外部源から供給される二酸化炭素を用いた処理を実施してもよい。
【0030】
懸濁液中における気体の二酸化炭素の濃度は、体積に関して(懸濁液の体積):(気体のCO
2の体積)の比が1:0.05から1:20であることが望ましく、1:0.05から1:5であることがさらに望ましい。
【0031】
望ましい実施形態において、酸処理ステップおよび/または二酸化炭素処理ステップは少なくとも1回、さらに望ましくは数回繰り返される。
【0032】
酸処理および二酸化炭素処理の後で、20℃で測定された水性懸濁液のpHは、6.0より大きい、望ましくは6.5より大きい、さらに望ましくは7.0より大きい、またさらに望ましくは7.5より大きい値に自然に到達し、それにより、官能化された天然または合成炭酸カルシウムが、6.0より大きい、望ましくは6.5より大きい、さらに望ましくは7.0より大きい、またさらに望ましくは7.5より大きいpHを有する水性懸濁液として調製される。水性懸濁液が自然に平衡に達する場合、そのpHは7より大きい。水性懸濁液の撹拌が十分な時間、望ましくは1時間から10時間、さらに望ましくは1から5時間続ければ、塩基を添加しなくても6.0より大きいpHに調整することが可能である。
【0033】
別の方法として、7より大きいpHで起こる平衡に達する前に、水性懸濁液のpHを、二酸化炭素処理後に塩基を添加することにより6より大きい値に増加させてもよい。水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム等の任意の従来の塩基が使用できる。
【0034】
官能化された天然炭酸カルシウムの調製に関するさらなる詳細は、WO00/39222およびUS2004/0020410A1に開示されており、ここで官能化された天然炭酸カルシウムは、製紙用の充填剤として記載されており、これらの文献の内容は共に本出願に組み込まれる。
【0035】
さらに、本発明に適した官能化された天然炭酸カルシウムの異なる調製プロセスが同じ出願人のEP2264108に開示されており、この文献の内容は共に本出願に組み込まれる。基本的に、水性環境中の、官能化された炭酸カルシウム調製のプロセスは、以下:
a)少なくとも1つの粉砕された天然炭酸カルシウム(GNCC)を提供するステップと、
b)少なくとも1つの水溶性の酸を提供するステップと、
c)気体のCO
2を提供するステップと、
d)ステップa)の前記GNCCを、ステップb)の前記酸およびステップc)の前記CO
2と接触させるステップ
とを含み、
(i)ステップb)の前記酸が、20℃で測定した場合、それぞれ2.5より大きく7以下のpK
aを有し、利用可能な第1の水素のイオン化、および利用可能なこの第1の水素を失ったときに形成される、水溶性のカルシウム塩を形成できる対応するアニオンを伴い、
(ii)前記酸と前記GNCCとを接触させた後、水素含有塩の場合、20℃で測定したとき7より大きいpK
aを有し、利用可能な第1の水素のイオン化を伴い、その塩アニオンが水不溶性カルシウム塩を形成できる、少なくとも1つの水溶性塩が追加的に提供されること
を特徴とするプロセスがさらに提供される。
【0036】
粉砕された天然炭酸カルシウムは、大理石、胡粉、方解石、石灰石およびそれらの混合物からなる群から選択される。GNCCの適切な粒径は水溶性の酸と共に、引用した文献中で容易に確認でき、例えば0.01から10μmの重量メジアン粒径を有する粒子ならびに酢酸、ギ酸、プロパン酸およびそれらの混合物から選択される酸が挙げられる。
【0037】
以下の例は様々な出発物質からのFCC生成を例証する。
出発物質:石灰石
得られた水性懸濁液が懸濁液の総重量に対して乾燥重量で16wt%に相当する固体含有物を有するように、水と、33%の粒子が2μm未満の直径を有するd
50が3μmの未分散の石灰石(水中で湿式粉砕、場合によってモノプロピレングリコール(MGP)等の食品認可された分散助剤または粉砕助剤の存在下)とを20−Lのステンレス製反応器内で添加することにより、炭酸カルシウム懸濁液を調製する。これ以後この懸濁液の温度を70℃にしてそれを維持する。本質的な層流が形成されるようにおよそ1000rpmで撹拌しながら、30%溶液の形態のリン酸を、分液ロートを介して10分間にわたり、炭酸カルシウムの乾燥重量で30重量%に相当する量で炭酸カルシウム懸濁液に添加する。この添加の後、懸濁液をさらに5分間撹拌する。
【0038】
得られた懸濁液を一晩沈殿させたところ、FCCは36m
2/gの比表面積、9.3μmのd
50(Malvern)および23.5のd
98(Malvern)を示した。
【0039】
出発物質:大理石
得られた水性懸濁液が懸濁液の総重量に対して乾燥重量で16wt%に相当する固体含有物を有するように、水と、33%の粒子が2μm未満の直径を有するd
50が3.5μmの未分散の大理石(水中で湿式粉砕、場合によってモノプロピレングリコール(MGP)等の食品認可された分散助剤または粉砕助剤の存在下)とを20−Lのステンレス製反応器内で添加することにより、炭酸カルシウム懸濁液を調製する。これ以後この懸濁液の温度を70℃にしてそれを維持する。本質的な層流が形成されるようにおよそ1000rpmで撹拌しながら、30%溶液の形態のリン酸を、分液ロートを介して10分間にわたり、炭酸カルシウムの乾燥重量で30重量%に相当する量で炭酸カルシウム懸濁液に添加する。この添加の後、懸濁液をさらに5分間撹拌する。
【0040】
結果得られた懸濁液を一晩沈殿させたところ、FCCは46m
2/gの比表面積、9.5μmのd
50(Malvern)および18.9のd
98(Malvern)を示した。
【0041】
出発物質:大理石
得られた水性懸濁液が懸濁液の総重量に対して乾燥重量で16wt%に相当する固体含有物を有するように、水と、48%の粒子が2μm未満の直径を有するd
50が2μmの未分散の大理石(水中で湿式粉砕、場合によってモノプロピレングリコール(MGP)等の食品認可された分散助剤または粉砕助剤の存在下)とを20−Lのステンレス製反応器内で添加することにより、炭酸カルシウム懸濁液を調製する。これ以後この懸濁液の温度を70℃にしてこれを維持する。本質的な層流が形成されるようにおよそ1000rpmで撹拌しながら、30%溶液の形態のリン酸を、分液ロートを介して10分間にわたり、炭酸カルシウムの乾燥重量で50重量%に相当する量で炭酸カルシウム懸濁液に添加する。この添加の後、懸濁液をさらに5分間撹拌する。
【0042】
結果得られた懸濁液を一晩沈殿したところ、FCCは71m
2/gの比表面積、10.6μmのd
50(Malvern)および21.8のd
98(Malvern)を示した。
【0043】
同様にして、官能化された沈降炭酸カルシウムが得られる。同じ出願人からのEP2070991B1から詳細が得られるように、官能化された沈降炭酸カルシウムは、沈降炭酸カルシウムを、H
3O
+イオンと、水媒体に可溶化され、水不溶性カルシウム塩を形成することが可能なアニオンと接触させて、水媒体中で官能化された沈降炭酸カルシウムのスラリーを形成することにより得られ、ここで前記官能化された沈降炭酸カルシウムは、沈降炭酸カルシウムの少なくとも一部の表面上に形成された、不溶性で少なくとも部分的に結晶質の前記アニオンのカルシウム塩を含む。
【0044】
前記可溶化カルシウムイオンは、H
3O
+イオンによる沈降炭酸カルシウムの溶解の際に自然に生成した可溶化カルシウムイオンと比較して過剰の可溶化カルシウムイオンに相当し、ここで前記H
3O
+イオンはアニオンの対イオンの形態で、すなわち酸または非カルシウム酸塩の形態でのアニオンの添加によって、いかなる追加のカルシウムイオンまたはカルシウムイオン生成源も存在しない条件下で単独で提供される。
【0045】
前記過剰の可溶化カルシウムイオンは、好ましくは、可溶性で中性または酸性のカルシウム塩を添加することにより提供され、または酸または中性もしくは酸性の非カルシウム塩を添加して、可溶性で中性または酸性のカルシウム塩をインサイチュで生成することにより提供される。
【0046】
前記H
3O
+イオンは、酸もしくは前記アニオンの酸の塩を添加することにより提供されてもよいし、または前記過剰の可溶化カルシウムイオンの全部または一部が同時に生じるよう作用する酸もしくは酸の塩を添加することにより提供されてよい。
【0047】
官能化された天然または合成炭酸カルシウムの調製に関する望ましい実施形態において、天然または合成炭酸カルシウムは、酸および/または二酸化炭素と、硫酸アルミニウム、ケイ酸塩、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミン酸ナトリウムまたはアルミン酸カリウム等のアルカリ土類のアルミン酸塩、酸化マグネシウムまたはそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物の存在下で反応される。少なくとも1つのケイ酸塩は、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウムまたはアルカリ土類金属ケイ酸塩から選択されることが望ましい。これらの成分は、天然または合成炭酸カルシウムを含む水性懸濁液に、酸および/または二酸化炭素を添加する前に添加され得る。
【0048】
別の方法として、ケイ酸塩および/またはシリカおよび/または水酸化アルミニウムおよび/またはアルカリ土類のアルミン酸塩および/または酸化マグネシウムの成分は、天然または合成炭酸カルシウムと、酸および二酸化炭素との反応がすでに始まっている状態で、天然または合成炭酸カルシウムの水性懸濁液に添加され得る。少なくとも1つのケイ酸塩および/またはシリカおよび/または水酸化アルミニウムおよび/またはアルカリ土類のアルミン酸塩の成分存在下での、官能化された天然または合成炭酸カルシウムの調製に関するさらなる詳細は、WO2004/083316に開示されており、この文献の内容は共に本出願に組み込まれる。
【0049】
官能化された天然または合成炭酸カルシウムは、懸濁液中に保持されていてもよく、場合によって分散剤によりさらに安定化される。当業者に周知の従来の分散剤が用いられ得る。望ましい分散剤はポリアクリル酸または部分的または全体的に中和したポリアクリル酸である。
【0050】
別の方法として、上述の水性懸濁液は乾燥され、それにより固体(すなわち乾燥しているか、または流動形態にはならない程度のわずかな水しか含んでいない)の官能化された天然または合成炭酸カルシウムを、顆粒または粉末の状態で得ることができる。
【0051】
望ましい実施形態において、官能化された天然または合成炭酸カルシウムは、ISO9277:2010に従い窒素およびBET法を用いて測定した場合、5m
2/gから200m
2/g、望ましくは15m
2/gから150m
2/g、さらに望ましくは40m
2/gから100m
2/gのBET比表面積を有する。
【0052】
さらに、官能化された天然または合成炭酸カルシウムは、Malvern Mastersizer Xロングベッド仕様を用いて測定した場合、0.1から50μm、望ましくは0.5から25μm、さらに望ましくは0.8から20μm、またさらに望ましくは1から15μmの重量メジアン粒径を有することが望ましい。
【0053】
望ましい実施形態において、官能化された天然または合成炭酸カルシウム(FCC)は、5m
2/gから200m
2/g範囲内のBET比表面積および0.1μmから50μm範囲内の重量メジアン粒径を有する。比表面積は15m
2/gから75m
2/gの範囲内であり、重量メジアン粒径は0.5μmから25μmの範囲内であることがさらに望ましい。比表面積は25m
2/gから55m
2/gの範囲内であり、重量メジアン粒径は1μmから15μmの範囲内であることがまたさらに望ましい。
【0054】
上述のプロセスにより、天然または合成炭酸カルシウムは変性され、一方ではFCCの多孔度を向上させ、また他方では表面積を拡大させる。FCCは従来の炭酸カルシウムと比較してより速い速度で水を吸収し、従来の炭酸カルシウムの10倍の液体を吸収できる。C.J.Ridgwayら、「Modified calcium carbonate coatings with rapid absorption and extensive liquid uptake capacity」、Colloids and Surfaces A: Physicochemical and Engineering Aspects、236巻、1−3号、91−102ページ、2004年4月を参照されたい。
【0055】
この点に関して、官能化された炭酸カルシウムの細孔内構造および細孔間構造のために、この材料は時間のかかる関連性の非官能化された炭酸カルシウムより速く細孔を介して液体を輸送する、より優れた作用物であると信じられている。
【0056】
従って、吸収および放出特性は、細孔径および/または細孔容積および/または表面積により制御され得る。