(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記疎水性高分子がポリスルホン、ポリエーテルスルホン及びセルロースアセテートからなる群から選択されるいずれかである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の中空糸膜型血液浄化装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という)について、詳細に説明する。本発明は以下の本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0016】
本実施形態の中空糸膜型血液浄化装置は、中空糸膜を容器に充填した中空糸膜型血液浄化装置であって、該中空糸膜は、疎水性高分子、親水性高分子及び脂溶性ビタミンを含み、中空糸膜束を長さ方向に5分割し、最端部に位置する分割成分を胴端部とした際に、少なくとも一方の胴端部に存在する脂溶性ビタミン量が全分割成分に存在する脂溶性ビタミン量の中で最大であり、かつ該少なくとも一方の胴端部の中空糸膜内表面1m
2あたりの脂溶性ビタミン量が20mg/m
2以上300mg/m
2以下である。
本実施形態の「中空糸膜型血液浄化装置」とは、血液透析器、血液濾過透析器、血液濾過器、持続式血液濾過(透析)器等の血液体外循環治療のために使用される、血液を浄化する機器である。
【0017】
<中空糸膜>
本実施形態において、「中空糸膜」は、中空糸膜型血液浄化装置に用いられる血液処理用の中空糸形状の膜である。
中空糸膜の内径、膜厚及び長さ等の形態は任意に調整し得るが、例えば、内径は100μm以上300μm以下であってよく、膜厚は10μm以上100μm以下であってよく、長さは10μm以上40cm以下であってよい。
高い分子量分画性と高透水性を両立するために薄い緻密層(活性分離層)と、中空糸膜強度を担う多孔質層(支持層)を有する、いわゆる非対称膜であるか、分子量分画を重視し薄い緻密層(活性分離層)のみを有する対象膜であってよい。
本実施形態において、「中空糸膜内表面」とは、中空糸膜の内腔部側表面である。
本実施形態の中空糸膜型血液浄化装置には、中空糸膜型血液浄化装置を構成する容器に中空糸膜が充填されているが、複数本の中空糸膜が中空糸膜の束として充填されている。
【0018】
<疎水性高分子>
本実施形態において、疎水性高分子とは、水に溶解しないか、あるいは、水に親和性を示さない合成高分子又は天然高分子である。
疎水性高分子としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルスルホン−ポリアリレートのポリマーアロイ等のポリスルホン系樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレートやメチルメタクリレートやヒドロキシエチルメタクリレートを含む共重合体等のメタクリレート系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−3−メチルブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1等のポリオレフィン、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート等のセルロースアセテート、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリルエーテルケトン等が挙げられる。
疎水性高分子として、これらの単独、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
中では、ポリマーとしての組成の均一性から合成高分子が好ましく、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン−ポリアリレートのポリマーアロイ、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンは、血液浄化用途での好適な臨床実績が数多くあり、原料としての安定供給性に優れるためより好ましい。
【0019】
ポリスルホン系樹脂としては、ポリフェニルスルホンやポリアリルエーテルスルホン等も含まれ、芳香環の一部が化学修飾された化合物であってもよい。
ポリスルホン系樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、繰り返し単位が下記化学式(1)〜(5)で示される高分子が挙げられる。nは重合度であり任意の値でよい。
【0020】
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【0021】
化学式(1)のポリスルホンは、特に限定されるものではないが、例えば、ソルベイ・アドバンスド・ポリマーズ社(以下、「ソルベイ」と記載する。)より「ユーデル」の商品名で、また、ビー・エー・エス・エフ社より「ウルトラゾーン」の商品名で市販されており、重合度によって複数の種類が存在する。
化学式(2)のポリエーテルスルホンは、特に限定されるものではないが、例えば、住友化学(株)より「スミカエクセルPES」の商品名で、また、ビー・エー・エス・エフ社より「ウルトラゾーン」の商品名で市販されている。取扱性や、入手容易であるという観点から、1(W/V)%のジメチルホルムアミド溶液で測定した還元粘度が、好ましくは0.30〜0.60であり、より好ましくは0.36〜0.50である。
【0022】
ポリアリレートとしては、特に限定されるものではないが、例えば、繰り返し単位が下記化学式(6)で示される高分子が挙げられ、芳香環の一部が化学修飾された化合物等を用いることができる。nは重合度であり任意の値でよい。
【0024】
化学式(6)中、R1及びR2は、炭素数が1〜5の低級アルキル基である。R1及びR2は互いに同一であっても相違していてもよい。
R1及びR2としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。
【0025】
ポリアリレートは、取扱い性や、入手容易であるという観点から、分子量が20,000〜50,000程度であることが好ましい。
ポリアリレートとしては、二価フェノールと芳香族ジカルボン酸とを重縮合することにより適宜に合成したポリアリレートを用いてもよく、また市販品を用いてもよい。
市販品としては、特に限定されるものではないが、例えば、ユニチカ(株)より「Uポリマー」の商品名で、バイエル社により「APE」の商品名で、セラニーズ社により「DUREL」の商品名で、また、デュポン社より「Arylon」の商品名で市販されている。
【0026】
メタクリレート系樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、繰り返し単位が下記化学式(7)で示されるポリメチルメタクリレートが挙げられる。nは重合度であり任意の値でよい。
ポリメチルメタクリレートとしては、特に限定されるものではないが、例えば、三菱レイヨン(株)より「ダイヤナールBR−80」の商品名で市販されている。
【0028】
ポリオレフインとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−3−メチルブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1等が挙げられる。
中では、充分に大きい孔径の中空糸膜が得られることから、ポリエチレン、ポリプロピレンが好ましい。
ポリエチレンとしては、繰り返し単位が下記化学式(8)で示され、特に限定されるものではないが、例えば、プライムポリマー社より「ハイゼックス2208J」の商品名で、また、旭化成ケミカルズ(株)より「サンテックHdJ240」の商品名で市販されている。
【0030】
<親水性高分子>
本実施形態において、親水性高分子としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリプロピレングリコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体等が挙げられる。
紡糸の安定性や、ポリスルホン系樹脂との親和性の観点からは、ポリビニルピロリドンが好ましく用いられる。
親水性高分子として、これらの単独、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
ポリビニルピロリドンは、特に限定されるものではないが、例えば、ビー・エー・エス・エフ(BASF)社より「プラスドン」の商品名で市販されており、K−15、30、90等の分子量違いのものが存在する。
エチレン−ビニルアルコール共重合体は、特に限定されるものではないが、例えば、日本合成化学工業(株)より「ソアノールE」の商品名で、また、(株)クラレより「エバール」の商品名で市販されている。
【0031】
<脂溶性ビタミン>
本実施形態において、脂溶性ビタミンとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK等が挙げられる。
中では、過剰摂取をしても障害を誘発しないという観点から、ビタミンEが好ましい。
脂溶性ビタミンとして、これらの単独、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
ビタミンEとしては、特に限定されるものではないが、例えば、α−トコフェロール、α−酢酸トコフェロール、α−ニコチン酸トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロール等が挙げられる。
中では、α−トコフェロールは生体内抗酸化作用、生体膜安定化作用、血小板凝集抑制作用等の種々の生理作用に優れており、酸化ストレスを抑制する効果が高いため好ましい。
【0032】
<中空糸膜束を長さ方向に5分割した場合における各分割成分に存在する脂溶性ビタミン>
本実施形態において、中空糸膜束を長さ方向に5分割した際に最端部に位置する成分を胴端部と定義する(
図1及び
図2)。
図2に示すように、1つの中空糸膜型血液浄化装置に対して胴端部は2か所存在する。
血液を循環する場合、この胴端部は一方が血液入口側、他方が血液出口側に相当する。
【0033】
本実施形態において、中空糸膜束とは、中空糸膜型血液浄化装置のうち実質的に血液処理能力を有する部分であり、例えば、中空糸膜型血液浄化装置を解体した際に、中空糸膜型血液浄化装置両端に存在するポッティング層(ポッティング剤添加領域と非添加領域の界面)間に存在する部分である(
図3)。
【0034】
<中空糸膜束を1/2半径の内円内を中心部とし、中心部に入らない部分を外周部とした場合における中心部及び外周部に存在する脂溶性ビタミン>
本実施形態において、中空糸膜束において断面方向における1/2半径での円を内円とする。そして、中空糸膜束の断面方向の内円内に入る部分を中心部と、中心部に入らない部分を外周部と定義する(
図4)。
換言すれば、中空糸膜束の外周に相当する部分を外円として、その断面方向における1/2半径での円を内円とする場合に、中空糸膜束の内円内に属さない部分、すなわち、断面方向の1/2半径以上外周(半径に相当)に入る部分が外周部となる(
図4)。
【0035】
<脂溶性ビタミンの分布>
本実施形態においては、少なくとも一方の胴端部に存在する脂溶性ビタミン量が全分割成分に存在する脂溶性ビタミン量の中で最大である。さらに、中心部に存在する脂溶性ビタミン量が外周部に存在する脂溶性ビタミン量より多いことが好ましい。
下記実施例において記載するとおり、胴端部又は中心部の中空糸膜内表面1m
2あたりの脂溶性ビタミン量と、他の分割成分又は外周部の中空糸膜内表面1m
2あたりの脂溶性ビタミン量とを比較することにより、胴端部又は中心部に存在する脂溶性ビタミン量が他の分割成分又は外周部に存在する脂溶性ビタミン量よりも多いことを測定することができる。なお、中空糸膜束中の内円円周上に存在する中空糸膜については、中心部に入るものとする。
実際に血液を循環する場合、中空糸膜型血液浄化装置内を通過する血液中に存在する過酸化物質の濃度が最も高くなるのは、中空糸膜型血液浄化装置の血液出入口部分である。中空糸膜型血液浄化装置の血液入口側胴端部の脂溶性ビタミン量が最大である場合、過酸化物質が脂溶性ビタミンによって効率よく消去される。また、中空糸膜型血液浄化装置の血液出口側胴端部の脂溶性ビタミン量が最大である場合、中空糸膜と血液間の作用によって発生した活性酸素を効率よく消去することができる。2か所の胴端部の脂溶性ビタミン量を最大とすることにより、過酸化物質と活性酸素の双方を効率よく消去してもよい。
また、中空糸膜型血液浄化装置の中心部と外周部とで比較すると、線速の影響を受けて血液量が多くなる中空糸膜型血液浄化装置の中心部の方が、外周部よりも、中空糸膜型血液浄化装置内を通過する血液中に存在する過酸化物質の濃度が高い。そのため、中心部の脂溶性ビタミン量が外周部の脂溶性ビタミン量に比して多い場合、過酸化物質が脂溶性ビタミンによって効率よく消去される。また、中空糸膜と血液間の作用によって発生した活性酸素を効率よく消去することができる。
【0036】
本実施形態においては、少なくとも一方の胴端部に存在する脂溶性ビタミン量の中空糸膜内表面面積換算値、つまり、胴端部の中空糸膜内表面1m
2あたりの脂溶性ビタミン量が20mg/m
2以上300mg/m
2以下であり、好ましくは20mg/m
2以上250mg/m
2以下であり、より好ましくは20mg/m
2以上200mg/m
2以下である。脂溶性ビタミン量が、20mg/m
2以上であることにより、脂溶性ビタミンを付与したことによる効果を得ることができ、また300mg/m
2以下であることにより、血液適合性能や透水性能に優れる。
【0037】
本実施形態においては、中心部に存在する脂溶性ビタミン量の中空糸膜内表面面積換算値、つまり、中心部の中空糸膜内表面1m
2あたりの脂溶性ビタミン量が好ましくは20mg/m
2以上300mg/m
2以下であり、より好ましくは20mg/m
2以上250mg/m
2以下であり、さらに好ましくは20mg/m
2以上200mg/m
2以下である。脂溶性ビタミン量が、20mg/m
2以上であることにより、脂溶性ビタミンを付与したことによる効果を得ることができ、また300mg/m
2以下であることにより、血液適合性能や透水性能に優れる。
【0038】
本実施形態においては、少なくとも一方の胴端部の中空糸膜内表面1m
2あたりの脂溶性ビタミン量が全分割成分に存在する脂溶性ビタミン量の中で最大であり、かつ該少なくとも一方の胴端部の中空糸膜内表面1m
2あたりの脂溶性ビタミン量が20mg/m
2以上300mg/m
2以下であり、さらに、中空糸膜束の1/2半径の内円内を中心部、中心部に入らない部分を外周部とした際に、中心部の中空糸膜内表面1m
2あたりの脂溶性ビタミン量が外周部の中空糸膜内表面1m
2あたりの脂溶性ビタミン量よりも多いことが好ましい。
中心部の中空糸膜内表面1m
2あたりの脂溶性ビタミン量が、より好ましくは20mg/m
2以上300mg/m
2以下であり、さらに好ましくは20mg/m
2以上250mg/m
2以下であり、よりさらに好ましくは20mg/m
2以上200mg/m
2以下である。また、中心部と外周部の脂溶性ビタミン量が好ましい範囲内において、少なくとも一方の胴端部の中空糸膜内表面1m
2あたりの脂溶性ビタミン量が、好ましくは20mg/m
2以上250mg/m
2以下であり、より好ましくは20mg/m
2以上200mg/m
2以下である。
【0039】
本実施形態において、「中空糸膜中に存在する脂溶性ビタミン量」とは、中空糸膜に付着、吸着又は被覆した脂溶性ビタミンの含有量をいい、中空糸膜中に存在する脂溶性ビタミン量は、例えば、中空糸膜を破壊又は溶解せずに溶媒によって抽出される脂溶性ビタミンの含有量によって定量することができる。
【0040】
中空糸膜中に存在する脂溶性ビタミン量の測定方法の一例を説明する。
中空糸膜型血液浄化装置を分解し、中空糸膜を採取し、水洗した後、乾燥処理を施す。続いて精秤した乾燥後の中空糸膜に脂溶性ビタミンを溶解する界面活性剤、例えば1質量%のポリエチレングリコール−t−オクチルフェニルエーテル水溶液を加え撹拌・抽出を行う。抽出した中空糸膜の中空糸膜内表面面積は中空糸膜の内径及び長さから算出する。
中心部及び外周部それぞれの中空糸膜中に存在する脂溶性ビタミンの量を測定する際には、中空糸膜型血液浄化装置を分解し、中心部と外周部とに区別し、それぞれから中空糸膜を採取して行う。
定量操作は、例えば、液体クロマトグラフ法により行い、脂溶性ビタミン標準溶液のピーク面積から得た検量線を用いて、抽出液中の脂溶性ビタミンの濃度を算出する。
液体クロマトグラフ法は、例示として記載するが、以下のようにして実施することができる。高速液体クロマトグラフ装置(ポンプ:日本分光PU−1580、検出器:島津RID−6A、オートインジェクター:島津SIL−6B、データ処理:東ソーGPC−8020、カラムオーブン:GL Sciences556)に、カラム(Shodex Asahipak社製ODP−506E packed column for HPLC)を取り付け、カラム温度40℃において、移動相である高速液体クロマトグラフィー用メタノールを、例えば流量1mL/minで通液し、UV検出器で波長295nmにおける吸収ピークの面積から脂溶性ビタミンの濃度を求める。
【0041】
本実施形態において、脂溶性ビタミン量が最大である少なくとも一方の胴端部に存在する中空糸膜内表面1m
2あたりの脂溶性ビタミン量をA(mg/m
2)、他の分割成分のうち脂溶性ビタミン量が最小である分割成分に存在する中空糸膜内表面1m
2あたりの脂溶性ビタミン量をB(mg/m
2)とした際、AとBの比(A/B)が、好ましくは1.1以上10以下であり、より好ましくは1.3以上10以下であり、さらに好ましくは1.3以上5.0以下である。
A/Bが1.1以上であることにより、中空糸膜型血液浄化装置の抗酸化性能に優れ、A/Bが10以下であることにより、中空糸膜型血液浄化装置は胴端部以外の分割成分における脂溶性ビタミンの固定化量を適正なものとすることができ、中空糸膜型血液浄化装置全体としての抗酸化性能に優れる。
【0042】
中心部の中空糸膜内表面1m
2あたりの脂溶性ビタミン量をC(mg/m
2)、外周部中空糸膜内表面1m
2あたりの脂溶性ビタミン量をD(mg/m
2)とした際、CとDの比(C/D)が1.1以上50以下であることが好ましく、より好ましくは1.3以上50以下であり、さらに好ましくは2.0以上50以下であり、よりさらに好ましくは4.0以上50以下である。
C/Dが1.1以上であることにより、中空糸膜型血液浄化装置の抗酸化性能に優れ、C/Dが50以下であることにより、中空糸膜型血液浄化装置は外周部における脂溶性ビタミンの固定化量を適正なものとすることができ、中空糸膜型血液浄化装置全体としての抗酸化性能に優れる。
【0043】
本実施形態においては、抗酸化性能のばらつきを抑えることができるため、少なくとも一方の胴端部に存在する脂溶性ビタミン量が全分割成分に存在する脂溶性ビタミン量の中で最大であり、かつ中心部の中空糸膜内表面1m
2あたりの脂溶性ビタミン量が外周部の中空糸膜内表面1m
2あたりの脂溶性ビタミン量よりも多いことが好ましい。
そして、中心部の中空糸膜内表面1m
2あたりの脂溶性ビタミン量をC(mg/m
2)、外周部の中空糸膜内表面1m
2あたりの脂溶性ビタミン量をD(mg/m
2)とした際、CとDの比(C/D)が1.1以上50以下であることが好ましく、また、脂溶性ビタミン量が最大である前記胴端部に存在する中空糸膜内表面1m
2あたりの脂溶性ビタミン量をA(mg/m
2)、他の分割成分のうち脂溶性ビタミン量が最小である分割成分に存在する中空糸膜内表面1m
2あたりの脂溶性ビタミン量をB(mg/m
2)とした際、AとBの比(A/B)が1.1以上10以下であることが好ましい。
本実施形態においては、A/Bが1.1以上10以下であると共に、C/Dが1.1以上50以下であることが好適である。
A/B及びC/Dの双方が上記範囲内であること、すなわち、中空糸膜の長さ方向にも断面方向にも脂溶性ビタミンの分布があることで、抗酸化性能のばらつきを抑えることができ、安定した抗酸化性能を発揮する中空糸膜型血液浄化装置とすることができる。
【0044】
これまでの検討から、中空糸膜に脂溶性ビタミンを固定化すると、中空糸膜型血液浄化装置の透水性能は低下することがわかっている。この問題に対して、通常は脂溶性ビタミンを固定化する前の中空糸膜構造を変更することにより、全体の透水性能を底上げすることにより解決するが、脂溶性ビタミンの固定化量によって透水性能の低下度合いは変化するので、様々な透水性能を有する中空糸膜を製造・保持する必要があり、製造者の負担が非常に高い。
本実施形態の中空糸膜型血液浄化装置では、中空糸膜束の胴端部と他の分割成分のビタミン固定化条件を選択することで透水性能を制御することが可能である。また、胴端部と同量の脂溶性ビタミンが長さ方向に略均一に分布している中空糸膜型血液浄化装置と比較して、ほぼ同等の抗酸化性能を持ちながら、高い透水性能を有することができる。
【0045】
<溶解度パラメータδ>
本実施形態における疎水性高分子は、溶解度パラメータ(cal/cm
3)
1/2が13.0以下であることにより、脂溶性ビタミンとの親和性が良好となり、中空糸膜へ脂溶性ビタミンを保持させることが容易となるため好ましい。溶解度パラメータδが9.5以上12.0以下であることが好ましい。
溶解度パラメータδとは、例えば、「高分子データハンドブック基礎編」社団法人高分子学会編、株式会社培風館、昭和61年1月30日初版発行、591〜593頁に記載される指標であり、溶解度パラメータが高い場合には親水性が強く、低い場合には疎水性が強いことを示し、この範囲の溶解度パラメータを持つ疎水性高分子を用いると脂溶性ビタミンが所定量中空糸膜に保持される。
疎水性高分子としては、例えば、ポリエチレン(8.4)、ポリメチルメタクリレート(δ=9.10)、ポリアリレート(9.3)、ポリエーテルスルホン-ポリアリレートのポリマーアロイ(9.6)、ポリスルホン(δ=9.9)、ポリエーテルスルホン(9.9)、ポリヒドロキシエチルメタクリレート(δ=10.0)、セルロースジアセテート(δ=11.4)、ポリアクリロニトリル(δ=12.4)、セルローストリアセテート、ポリカーボネート等が挙げられる。δとして記載する値は、一例として記載するものである。
疎水性高分子として、これらの単独、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0046】
<中空糸膜の製造方法>
本実施形態において、中空糸膜は、公知の製膜技術を利用することにより製造できる。
疎水性高分子と親水性高分子とを、共通溶媒に溶解し、紡糸原液を調製する。
共通溶媒は、特に限定されるものではないが、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、スルホラン、アセトン、ジオキサン等、又はこれら溶媒を2種類以上混合した混合溶媒等が挙げられる。
紡糸原液を連続的に中空糸形状に押し出すと同時に凝固剤を接触させて凝固した連続中空糸膜を得る。凝固剤は、疎水性高分子の溶媒及び非溶媒の混合液からなり、溶媒の濃度が0%以上70%以下である。なお、目的とする中空糸膜の孔径制御のため、紡糸原液には水等の添加物を加えてもよい。
【0047】
紡糸原液中の疎水性高分子濃度は、製膜可能で、かつ得られた膜が透過膜としての性能を有するような濃度の範囲であれば特に限定されるものではないが、好ましくは5質量%以上35質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上30質量%以下である。高い透水性能を達成するためには、疎水性高分子濃度は低い方がよく、さらに好ましくは10質量%以上25質量%以下である。
【0048】
紡糸原液中の親水性高分子の疎水性高分子に対する濃度は、疎水性高分子100質量%に対する親水性高分子の混和比率が、好ましくは27質量%以下であり、より好ましくは18質量%以上27質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以上27質量%以下である。
疎水性高分子に対する親水性高分子の混和比率が27質量%以下であることにより、親水性高分子の溶出量を減少させる傾向にあるため好ましい。また、18質量%以上であることにより、中空糸膜の表面の親水性高分子濃度が低下し、患者の血液中の白血球濃度が急激に低下するロイコペニア症状の発生を減少させることができより好ましい。
【0049】
中空糸膜を製造する工程においては、二重環状紡口を用い、紡糸口金から紡糸原液を、凝固剤としての中空内液と同時に、チューブから空中に吐出させる。
【0050】
中空内液としては、水、又は水を主体とした溶液が使用でき、目的とする中空糸膜の透過性能に応じてその組成等を決定すればよい。一般的には、紡糸原液に使用した共通溶媒と水との混合溶液が好適に使用される。膜の溶質透過性能を制御する目的を満たすために共通溶媒の濃度を調整することが好ましく、一般に、0質量%以上70質量%以下の水溶液が用いられる。中空内液に親水性高分子を0質量%以上2質量%以下となるように添加して中空糸膜の表面の親水性高分子の存在量を調整することもできる。
紡糸口金から中空内液とともに吐出された紡糸原液は、空走部を走行させ、紡糸口金下部に設置した水を主体とする凝固浴中へ導入、浸漬して凝固を完了させ、洗浄工程等を経て、湿潤状態の中空糸膜を巻き取り機で巻き取り、中空糸膜の束を得、その後乾燥処理を行う。或いは、上記洗浄工程を経た後、乾燥機内にて乾燥を行い、中空糸膜の束を得てもよい。
【0051】
疎水性高分子として、ポリオレフィンを含む中空糸膜は、湿式相転換法、溶融相分離法、延伸開孔法等公知の方法を利用することにより製造できる。
中では、延伸開孔法は、結晶性高分子を中空糸又はフィルム状に成型した後、冷延伸により結晶ラメラ間を開裂させ、ざらに熱延伸により孔径を拡大させ多孔質構造物とする方法であり、高分子素材に溶剤その他の添加物を加えずに延伸という物理的手段によって多孔質構造物を製造するもので、残留溶剤等の問題がなく、本実施形態においても、ポリオレフィンを含む中空糸膜を製造する上で好ましく利用することができる。
具体的には、二重環状紡口を用いポリオレフィンを、紡口温度を145℃以上155℃以下の範囲で紡糸し、得られた中空糸を115℃以上120℃以下で1時間以上3時間以下アニール処理した後、室温以上100℃以下の範囲で10%以上30%以下、ついで100℃以上120℃以下の範囲で30%以上350%以下熱延伸を施し中空糸膜を製造する。
【0052】
疎水性高分子として、ポリオレフィンを用いる場合には、親水性高分子として、中空糸膜の細孔表面を被覆し血液適合性を向上させる観点で、エチレン−ビニルアルコール共重合体を用いることが好ましい。
エチレン−ビニルアルコール共重合体におけるエチレン含量は、接着性を高くし、中空糸膜と被覆層の剥離を防ぐ観点及び親水性の観点で、好ましくは20モル%以上70モル%以下、より好ましくは25モル%以上50モル%以下である。
ポリオレフィンを含む中空糸膜の細孔表面を、エチレン−ビニルアルコール共重合体溶液で処理することにより、疎水性高分子及び親水性高分子を含有する中空糸膜とすることができる。
エチレン−ビニルアルコール共重合体溶液に脂溶性ビタミンを含有させることにより、エチレン−ビニルアルコール共重合体を中空糸膜に被覆すると共に、脂溶性ビタミンを有する中空糸膜とすることができる。
エチレン−ビニルアルコール共重合体を含有する中空糸膜の束を得、その後乾燥処理を行う。
【0053】
エチレン−ビニルアルコール共重合体は水混和性の有機溶剤に溶解させる。
水混和性の有機溶剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、インプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ホルムアミド、エチレンクロルヒドリン等が挙げられる。
中では、エチレン−ビニルアルコール共重合体の局在によるポリオレフィンへの接着性向上の観点で、極性の強い有機溶剤を用いることが好ましく、溶解性及び低毒性の観点で、エタノール、アセトンが好ましい。
有機溶剤は単独でも用いてもよく、混合溶剤として用いてもよい。極性が向上することから、水との混合溶剤を用いることが好ましい。
混合溶剤における水の割合は、エチレン−ビニルアルコール共重合体の溶解性を阻害しない範囲内であれば特に限定されるものではなく、該共重合体のエチレン含量、溶液の温度等によりその割合を適宜設定すればよい。水の割合は、例えば、5質量%以上75質量%以下が好ましい。
用いる該共重合体濃度は被覆に適した任意の濃度を選ぶことができるが、例えば、0.1質量%以上5重量%以下であることが好ましい。
脂溶性ビタミンを含む溶液を用いる場合は、脂溶性ビタミンの濃度は、好ましくは0.01質量%以上10質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上5質量%以下である。
【0054】
<中空糸膜型血液浄化装置の製造方法>
本実施形態の中空糸膜型血液浄化装置の好ましい製造方法としては、例えば、上述したように中空糸膜の束を製造し、中空糸膜の束を中空糸膜の外側と接する処理液の出入口を有する筒状の容器に挿入し、両束端にポリウレタン等のポッティング剤を注入してポッティング層を形成して両端をシールし、その後、硬化後の余分なポッティング剤を切断除去して端面を開口させ、流体の出入口を持つヘッダーを取り付けた後に、脂溶性ビタミンを固定化して中空糸膜型血液浄化装置を製造する方法が挙げられる。
【0055】
典型的な中空糸膜型血液浄化装置を
図3に示すが、その目的の範囲内でデザインは適宜変更してもよい。また、ヘッダーの取り付けは脂溶性ビタミンを固定化した後で実施してもよい。
後述する滅菌処理工程を施すことが好ましい。脂溶性ビタミンの固定化は後述するように中空糸膜の束の状態で行ってもよい。
【0056】
<中空糸膜への脂溶性ビタミンの固定化工程>
本実施形態の中空糸膜型血液浄化装置は、例えば、以下に製造例1〜製造例6として記述するような直接浸漬法とコート法を組み合わせて製造してもよく、下記に限定されるものではない。
【0057】
(製造例1)
中空糸膜束の一方の胴端部に相当する中空糸膜の束における部分を、脂溶性ビタミン溶液中に直接浸漬する。一定時間経過後、溶液から中空糸膜を取り出す。次いで、必要に応じて中空糸膜の端の一方からエアーブロー等によって中空糸膜中に残存する溶液を吹き飛ばし乾燥する(エアーブロー工程)。脂溶性ビタミン溶液に浸漬させた側から非浸漬側に向かってエアーブローすることにより、浸漬していない側にも少量の脂溶性ビタミンをコートすることが可能である。エアーブロー工程を実施せずに乾燥してもよい。
得られた中空糸膜の束を組み立てることによって、本実施形態の中空糸膜型血液浄化装置を得ることができる。
浸漬前の中空糸膜の束としては、脂溶性ビタミンが全く固定化されていない中空糸膜を使用してもよいし、コート法によってある程度脂溶性ビタミンが長さ方向に均一に固定化された中空糸膜を使用してもよく、これらの方法を組み合わせることによって、長さ方向の脂溶性ビタミン分布を制御することができる。
本実施形態において、コート法とは、中空糸内腔に脂溶性ビタミン溶液を通液した後に溶媒を乾燥することにより脂溶性ビタミンが固定化された中空糸膜を得る方法を指す。また、中空糸膜型血液浄化装置を組み立てた後に、脂溶性ビタミンのコート液を中空糸膜型血液浄化装置にさらに通液してもよい。
浸漬する脂溶性ビタミン溶液の脂溶性ビタミン濃度、溶媒の種類、グリセリン等の界面活性剤によっても、中空糸膜型血液浄化装置の長さ方向に対する脂溶性ビタミン分布を制御することが可能である。1つの中空糸膜型血液浄化装置に胴端部は2つ存在するが、2つの胴端部ともに脂溶性ビタミン固定化量を増やしたい場合は、両方の胴端部に対して上記方法を実施する。
少なくとも1つの胴端部に脂溶性ビタミンを固定化することにより、
図1のような中空糸膜束となり、2つの胴端部に脂溶性ビタミンを固定化することにより、
図2のような中空糸膜束とすることもできる。また、2つの胴端部に対して異なる固定化量となるように脂溶性ビタミンを固定化してもよい。
【0058】
(製造例2)
中空糸膜束の一方の胴端部に相当する中空糸膜の束における部分を、脂溶性ビタミン溶液中に直接浸漬する。一定時間経過後、中空糸膜全体を脂溶性ビタミン溶液中にさらに直接浸漬する。脂溶性ビタミン溶液から中空糸膜を取り出し、必要に応じて中空糸膜の端の一方からエアーブロー等によって中空糸膜中に残存する溶液を吹き飛ばし乾燥する。この際、一方の胴端部のみが相対的に長時間脂溶性ビタミン溶液に浸漬しているので、該一方の胴端部の脂溶性ビタミン固定化量が最大となる。エアーブロー工程を実施せずに乾燥してもよい。
得られた中空糸膜の束を組み立てることによって、本実施形態の中空糸膜型血液浄化装置を得ることができる。
浸漬前の中空糸膜の束としては、脂溶性ビタミンが全く固定化されていない中空糸膜を使用してもよいし、コート法によってある程度脂溶性ビタミンが長さ方向に均一に固定化された中空糸膜を使用してもよく、これらの方法を組み合わせることによって、長さ方向の脂溶性ビタミン分布を制御することができる。
また、中空糸膜型血液浄化装置を組み立てた後に、脂溶性ビタミンのコート液を中空糸膜型血液浄化装置にさらに通液してもよい。
浸漬する脂溶性ビタミン溶液の脂溶性ビタミン濃度、溶媒の種類、グリセリン等の界面活性剤によっても、中空糸膜型血液浄化装置の長さ方向に対する脂溶性ビタミン分布を制御することが可能である。製造例2においては、胴端部に相当する部分を浸漬する際の脂溶性ビタミン溶液の脂溶性ビタミン濃度と、中空糸膜全体を浸漬する際の脂溶性ビタミン溶液の脂溶性ビタミン濃度を変更することが可能であるため、中空糸膜型血液浄化装置の長さ方向における脂溶性ビタミン分布を制御することができる。脂溶性ビタミン濃度だけでなく、溶媒の種類、界面活性剤の濃度・種類にも同様な手法が可能である。1つの中空糸膜型血液浄化装置に胴端部は2つ存在するが、2つの胴端部ともに脂溶性ビタミン固定化量を増やしたい場合は、両方の胴端部に対して上記方法を実施する。
少なくとも1つの胴端部に脂溶性ビタミンを固定化することにより、
図1のような中空糸膜束となり、2つの胴端部に脂溶性ビタミンを固定化することにより、
図2のような中空糸膜束とすることもできる。また、2つの胴端部に対して異なる固定化量となるように脂溶性ビタミンを固定化してもよい。
【0059】
(製造例3)
中空糸膜束の一方の胴端部に相当する中空糸膜の束における部分を、脂溶性ビタミン溶液中に直接浸漬する。この際、脂溶性ビタミン溶液に用いられる溶媒として、脂溶性ビタミンの良溶媒と貧溶媒からなる混合溶媒、例えば、アルコール/水を用い、さらに良溶媒(例としてはアルコール)の濃度を、脂溶性ビタミンが溶解し得る最低濃度としておく。一定時間経過後、中空糸膜を脂溶性ビタミン溶液から取り出すか、あるいは中空糸膜全体を脂溶性ビタミン溶液中にさらに一定時間直接浸漬後ビタミン溶液から取り出す。得られた中空糸膜を、必要に応じて中空糸膜の端の一方からエアーブロー等によって中空糸膜中に残存する溶液を吹き飛ばし乾燥する。この際、胴端部のみが相対的に長時間、脂溶性ビタミン溶液に浸漬し、さらに良溶媒(例としてはアルコール)の濃度を、脂溶性ビタミンが溶解可能な下限域まで下げているので、疎水性高分子に選択的に脂溶性ビタミンが固定化されるため、胴端部の脂溶性ビタミン固定化量が最大となる。エアーブロー工程を実施せずに乾燥してもよい。
得られた中空糸膜の束を組み立てることによって、本実施形態の中空糸膜型血液浄化装置を得ることができる。
浸漬前の中空糸膜の束としては、脂溶性ビタミンが全く固定化されていない中空糸膜を使用してもよいし、コート法によってある程度脂溶性ビタミンが長さ方向に均一に固定化された中空糸膜を使用してもよく、これらの方法を組み合わせることによって、長さ方向の脂溶性ビタミン分布を制御することができる。
また、中空糸膜型血液浄化装置を組み立てた後に、脂溶性ビタミンのコート液を中空糸膜型血液浄化装置にさらに通液してもよい。
浸漬する脂溶性ビタミン溶液の脂溶性ビタミン濃度、良溶媒・貧溶媒の種類及び濃度、グリセリン等の界面活性剤によっても、中空糸膜型血液浄化装置の長さ方向に対する脂溶性ビタミン分布を制御することが可能である。製造例3においては、胴端部に相当する部分を浸漬する際の脂溶性ビタミン溶液の組成と、中空糸膜全体を浸漬する際の脂溶性ビタミン溶液の脂溶性ビタミン溶液の組成を変更することが可能であるため、中空糸膜型血液浄化装置の長さ方向における脂溶性ビタミン分布をさらに精度よく制御することができる。
1つの血液浄化装置に胴端部は2つ存在するが、2つの胴端部ともに脂溶性ビタミン固定化量を増やしたい場合は、両方の胴端部に対して上記方法を実施する。少なくとも1つの胴端部に脂溶性ビタミンを固定化することにより、
図1のような中空糸膜束となり、2つの胴端部に脂溶性ビタミンを固定化することにより、
図2のような中空糸膜束とすることもできる。また、2つの胴端部に対して異なる固定化量となるように脂溶性ビタミンを固定化してもよい。
【0060】
(製造例4)
製造例1〜3の製法で胴端部に脂溶性ビタミンを付着させた中空糸膜の束を容器に組み立て、脂溶性ビタミン溶液のコート装置にセットする。コート装置の先端には、外周部の部分に圧力抵抗部位を設けた治具が備えられている。該治具は、中空糸膜型血液浄化装置に密着する構造であり、圧力抵抗部位はメッシュ状のものや外周部をすべてマスクするものでもよい。コート装置から脂溶性ビタミン溶液を流速100mL/min以上1500mL/min以下の速さで30秒間以上100秒間以下にわたり中空糸膜型血液浄化装置内に通液させた後、中空糸膜型血液浄化装置を取り出す。次いで、必要に応じて中空糸膜型血液浄化装置端の一方からエアーブロー等によって中空糸膜中に残存する脂溶性ビタミン溶液を吹き飛ばし乾燥する。この際、脂溶性ビタミン溶液をコートした側からエアーブローすることにより、コートしていない側にも脂溶性ビタミン溶液を移動させ長さ方向に均一にコートすることが可能である。また、エアーブロー工程を実施せずにコート側を上にして乾燥してもよい。キャップを取り付けることにより、本実施形態の中空糸膜型血液浄化装置を得ることができる。
【0061】
(製造例5)
製造例1〜3の製法で胴端部に脂溶性ビタミンを付着させた中空糸膜の束を容器に組み立て、脂溶性ビタミン溶液のコート装置にセットする。コート装置の先端には、中空糸膜型血液浄化装置に密着する治具が備えられている。治具に脂溶性ビタミン溶液を送る配管内径は中空糸膜束断面積の1/10以上1/50以下であるコート装置から脂溶性ビタミン溶液を流速100mL/min以上1500mL/min以下の速さで30秒間以上100秒間以下にわたり中空糸膜型血液浄化装置内に通液させた後、中空糸膜型血液浄化装置を取り出す。次いで、必要に応じて中空糸膜型血液浄化装置端の一方からエアーブロー等によって中空糸膜中に残存する溶液を吹き飛ばし乾燥する。この際、脂溶性ビタミン溶液をコートした側からエアーブローすることにより、コートしていない側にも脂溶性ビタミン溶液を移動させ長さ方向に均一にコートすることが可能である。エアーブロー工程を実施せずにコート側を上にして乾燥してもよい。キャップを取り付けることにより、本実施形態の中空糸膜型血液浄化装置を得ることができる。
【0062】
(製造例6)
製造例1〜3の製法で胴端部に脂溶性ビタミンを付着させた中空糸膜の束を容器に組み立て、脂溶性ビタミン溶液のコート装置にセットする。コート装置の先端には、中空糸膜型血液浄化装置に密着する治具が備えられている。コート装置から脂溶性ビタミン溶液を流速100mL/min以上1500mL/min以下の速さで30秒間以上100秒間以下にわたり中空糸膜型血液浄化装置内に通液させた後、中空糸膜型血液浄化装置を取り出す。次いで、必要に応じて中空糸膜型血液浄化装置端の一方から中心部をマスクして、エアーブロー等によって外周部の中空糸膜中に残存する脂溶性ビタミン溶液を吹き飛ばし乾燥する。その後、1時間以上12時間以下静置し中心部の中空糸膜に脂溶性ビタミン溶液を膜厚方向に浸漬させた後、中心部のマスクを外しエアーブロー等によって中空糸膜中に残存する溶液を吹き飛ばし乾燥する。この際、溶液をコートした側からエアーブローすることにより、コートしていない側にも脂溶性ビタミン溶液を移動させ長さ方向に均一にコートすることが可能である。キャップを取り付けることにより、本実施形態の中空糸膜型血液浄化装置を得ることができる。
【0063】
中空糸膜型血液浄化装置を組み立てた後に、脂溶性ビタミンのコート液を中空糸膜型血液浄化装置にさらに通液してもよい。
コートする脂溶性ビタミン溶液の脂溶性ビタミン濃度、溶媒の種類、グリセリン等の界面活性剤によっても、中空糸膜型血液浄化装置の長さ方向及び断面方向に対する脂溶性ビタミン分布を制御することが可能である。
【0064】
本実施形態における製造例1〜製造例6において、脂溶性ビタミン溶液中の脂溶性ビタミン濃度としては、好ましくは0.01質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以上5質量%以下である。また、水性の脂溶性ビタミン溶液に脂溶性ビタミンを可溶にする添加剤(界面活性剤等)を脂溶性ビタミンに対して1/10倍以上2倍以下の量で添加するのが好ましい。
【0065】
脂溶性ビタミン溶液に用いられる溶媒としては様々なものが使用可能であるが、50質量%以上80質量%以下のプロパノール等のアルコール水溶液が好ましい。
脂溶性ビタミンを0.1質量%以上2.0質量%以下溶解した脂溶性ビタミン溶液中に中空糸膜を浸漬させる時間は、好ましくは30秒間以上60分間以下であり、より好ましくは40秒間以上10分間以下である。
脂溶性ビタミン溶液を通液させる条件は、流速100mL/min以上1500mL/min以下の速さで30秒間以上60分間以下、好ましくは流速300mL/min以上1200mL/min以下の速さで50秒間以上10分間以下である。
【0066】
本実施形態における製造例1〜製造例6において、コート前の中空糸膜の束としては、脂溶性ビタミンが全く固定化されていない中空糸膜を使用してもよいし、コート法によってある程度脂溶性ビタミンが断面方向に均一に固定化されたものを用いてもよく、また、中心部と外周部で透水性能の異なる中空糸膜の束を使用してもよい。これらの方法を組み合わせることによって、長さ方向及び断面方向の脂溶性ビタミン分布を制御することができる。
【0067】
<中空糸膜の湿潤化工程>
脂溶性ビタミンを固定化し、組み立てられた中空糸膜型血液浄化装置は、滅菌前に水系溶液で中空糸膜を湿潤化してもよい。水系溶液で中空糸膜を湿潤することにより中空糸膜が安定し、透水性能、透析性能、濾過性能等の性能の変化を起こすことが少なくなる。水系溶液で中空糸膜を湿潤化する方法は、中空糸膜を充填した容器に水系溶液を充填する方法、容器に水系溶液を充填した後排液する方法等が挙げられる。この中空糸膜の湿潤化工程は、以下に述べる滅菌保護剤の添加工程を兼ねることもできる。
【0068】
<滅菌保護剤の添加工程>
滅菌保護剤とは、後述する滅菌処理工程において照射される放射線エネルギーによって、中空糸膜の親水性高分子が著しく変性を受けないように保護するためのものであって、一分子中に複数の水酸基や芳香環を有するラジカル捕捉剤である。
滅菌保護剤としては、例えば、グリセリンやプロピレングリコール等の(多価)アルコール類、オリゴ糖や多糖等の水溶性糖類、亜硫酸塩等の抗酸化作用を有する無機塩類等が挙げられる。
滅菌保護剤を中空糸膜に含浸させる方法は、滅菌保護剤を適当な溶媒に溶解して中空糸膜型血液浄化装置に導入する方法、例えば、水又は生理的塩溶液に滅菌保護剤を溶解させて中空糸膜型血液浄化装置内部の空間に充填させる、あるいは中空糸膜だけに含浸させる方法等が用いられる。湿潤化工程において、水系溶液として滅菌保護剤を含む水系溶液で湿潤化してもよい。
中空糸膜型血液浄化装置内に滅菌保護剤が存在すると、後述する放射線滅菌処理により中空糸膜型血液浄化装置、特に中空糸膜が変化を受けるのを抑制することができる。
滅菌保護剤を溶液状態にして用いる場合、滅菌保護剤の濃度は、中空糸膜型血液浄化装置の材質、親水性高分子の種類及び滅菌の条件によって最適な濃度を決定すればよいが、好ましくは0.001質量%以上1質量%以下であり、より好ましくは0.005質量%以上0.5質量%以下である。
【0069】
<中空糸膜型血液浄化装置の滅菌処理工程>
中空糸膜型血液浄化装置に対して、滅菌処理を施すことが好ましい。滅菌処理方法としては、放射線滅菌法、蒸気滅菌法等が挙げられる。
脂溶性ビタミンを多量に含む中空糸膜は、極度な加熱により破損を起こすリスクが生じるため、放射線滅菌法がより好ましい。放射線滅菌法には、電子線、ガンマ線、エックス線等を用いることができる。放射線の照射線量は、γ線や電子線の場合は、好ましくは5kGy以上50kGy以下であり、より好ましくは20kGy以上40kGy以下である。
【実施例】
【0070】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。本実施例に用いた測定方法は以下のとおりである。
【0071】
<中空糸膜束の分割成分の中空糸膜中に存在する脂溶性ビタミン量の測定>
中空糸膜型血液浄化装置を分解して中空糸膜を取り出し、長さ方向に5分割し各分割成分の中空糸膜を採取した。水洗した後、40℃で真空乾燥した。乾燥後の中空糸膜内表面面積として0.2m
2となるように中空糸膜をガラス瓶に秤取し、1質量%のトリトンX−100(キシダ化学、化学用)水溶液を80mL加え、室温で60分間、超音波振動を加えながら、脂溶性ビタミンの抽出を行った。定量操作は、液体クロマトグラフ法により行い、脂溶性ビタミン標準溶液のピーク面積から得た検量線を用いて、抽出液の脂溶性ビタミン量を求めた。すなわち、本実施例において、脂溶性ビタミン量は、中空糸内表面面積が0.2m
2となる中空糸膜の平均値として求めることができる値である。
高速液体クロマトグラフ装置(ポンプ:日本分光PU−1580、検出器:島津RID−6A、オートインジェクター:島津SIL−6B、データ処理:東ソーGPC−8020、カラムオーブン:GL Sciences556)に、カラム(Shodex Asahipak ODP−506E packed column for HPLC)を取り付け、カラム温度40℃において、移動相である高速液体クロマトグラフィー用メタノールを流量1mL/minで通液し、紫外部の吸収ピークの面積から脂溶性ビタミン濃度を求めた。この濃度から、抽出効率を100%として、中空糸膜の分割成分に存在する中空糸膜中の脂溶性ビタミン量(mg/m
2)を求めた。
滅菌処理により部分酸化した脂溶性ビタミン量も中空糸膜内表面1m
2あたりの脂溶性ビタミン量に含めた。滅菌処理により部分酸化した脂溶性ビタミン量を定めるべく、予め検量線作成に用いる脂溶性ビタミンを空気中で50kGyの放射線に当て、部分酸化した脂溶性ビタミンの吸収ピークを予め定めておき、面積計算に用いるピーク群に含め、加算した。
【0072】
<中心部及び外周部の中空糸膜中に存在する脂溶性ビタミン量の測定>
中空糸膜型血液浄化装置を分解して中心部と外周部とに区別し、それぞれから中空糸膜を採取し、水洗した後、40℃で真空乾燥した。乾燥後の中空糸膜内表面面積として0.2m
2となるように中空糸膜をガラス瓶に秤取し、1質量%のトリトンX−100(キシダ化学、化学用)水溶液を80mL加え、室温で60分間、超音波振動を加えながら、脂溶性ビタミンの抽出を行った。定量操作は、液体クロマトグラフ法により行い、脂溶性ビタミン標準溶液のピーク面積から得た検量線を用いて、抽出液の脂溶性ビタミン量を求めた。すなわち、本実施例において、脂溶性ビタミン量は、中空糸内表面面積が0.2m
2となる中空糸膜の平均値として求めることができる値である。
高速液体クロマトグラフ装置(ポンプ:日本分光PU−1580、検出器:島津RID−6A、オートインジェクター:島津SIL−6B、データ処理:東ソーGPC−8020、カラムオーブン:GL Sciences556)に、カラム(Shodex Asahipak ODP−506E packed column for HPLC)を取り付け、カラム温度40℃において、移動相である高速液体クロマトグラフィー用メタノールを流量1mL/minで通液し、紫外部の吸収ピークの面積から脂溶性ビタミン濃度を求めた。この濃度から、抽出効率を100%として、中空糸膜に存在する脂溶性ビタミン量(mg/m
2)を求めた。
滅菌処理により部分酸化した脂溶性ビタミン量も中空糸膜内表面1m
2あたりの脂溶性ビタミン量に含めた。滅菌処理により部分酸化した脂溶性ビタミン量を定めるべく、予め検量線作成に用いる脂溶性ビタミンを空気中で50kGyの放射線に当て、部分酸化した脂溶性ビタミンの吸収ピークを予め定めておき、面積計算に用いるピーク群に含め、加算した。
【0073】
<中空糸膜型血液浄化装置の抗酸化能力の測定>
塩化第二鉄6水和物を純水に溶解し、0.3w/v%(溶液100mL中の溶質の量(g))水溶液を調製した。次いで、中空糸膜型血液浄化装置を分解して中空糸膜を採取し、水洗した後、40℃で真空乾燥した。乾燥後の中空糸膜1gと塩化第二鉄水溶液20mLとをガラス瓶に秤取し、60mmHgで10分間脱泡した後、振とう下で30℃×4時間インキュベートした(中空糸膜に存在する脂溶性ビタミンが鉄(III)イオンを還元し、鉄(II)が生じる。)。インキュベートした水溶液を2.6mL、エタノール0.7mL、別途調製した0.5w/v%の2,2’−ビピリジルエタノール水溶液0.7mLを混合し、振とう下で30℃×30分間インキュベートした(鉄(II)とビピリジルとが錯体を形成し、呈色する)。分光計を用いて、呈色した液の520nmにおける吸光度を測定した。
中空糸膜の代わりに、濃度既知の脂溶性ビタミンエタノール溶液を用いて、同様のインキュベーション、呈色反応、吸光度の測定を行って、検量線を作成し、中空糸膜内表面1m
2が発現する抗酸化能力を、脂溶性ビタミンの質量相当値として求めた(小数点以下第一位を四捨五入した)。
中空糸膜内表面1m
2あたりの脂溶性ビタミンの質量相当値が15(mg/m
2)以上の場合を抗酸化能力が良好であると判断して○とし、15(mg/m
2)未満の場合を抗酸化能力が良好でないと判断して×とした。
また、抗酸化性能のばらつきを測定するため、1条件において3本の中空糸膜型血液浄化装置内の中空糸膜を測定し、標準偏差を導き出した。標準偏差が10未満であればばらつきが少ないと判断して○とし、10以上であれば抗酸化性能が安定していないと判断して×とした。
【0074】
<中空糸膜型血液浄化装置の透水性能増加量の測定>
実施例及び比較例で製造された中空糸膜型血液浄化装置、及び、該中空糸膜型血液浄化装置の脂溶性ビタミン量が最大である少なくとも一方の胴端部と同量の脂溶性ビタミン量が、長さ方向に略均一に固定化されている中空糸膜型血液浄化装置(別途、調製した)の両方において、一定圧力(200mmHg)、温度(37℃)条件下において、中空糸膜型血液浄化装置内を純水で全濾過させ、濾過に要する時間を測定した。この結果より、透水性能(UFR(mL/hr・mmHg))を算出した。
【0075】
続いて、下記式(1)により透水性能増加量の算出を行った。
透水性能増加量(UFR(mL/hr・mmHg))=C−D ・・・(1)
C:中空糸膜型血液浄化装置の透水性能(UFR(mL/hr・mmHg))
D:胴端部と同量の脂溶性ビタミン量が、長さ方向に略均一に固定化されている中空糸膜型血液浄化装置の透水性能(UFR(mL/hr・mmHg))
【0076】
透水性能増加量が大きいほど、同一水準の抗酸化性能を有する血液浄化装置に対する透水性能が高く、かつ高い生産合理性を意味するものとして評価し、透水性能増加量が10(UFR(mL/hr・mmHg))以上の場合を透水性能が良好であると判断した。
【0077】
<中空糸膜型血液浄化装置の乳酸脱水素酵素(LDH)活性の測定>
中空糸膜型血液浄化装置を分解し、中心部と外周部の中空糸膜に分け、中心部の中空糸膜数と外周部の中空糸膜数の比が1:3となるようにそれぞれの部分からランダムに中空糸膜を採取した。有効長15cm内に脂溶性ビタミンが多い胴端部の中空糸膜を含むように長さを揃えた。次いで、中空糸膜内表面面積が50mm
2となるように両端をエポキシ接着剤で接着してミニモジュールを作製した。このミニモジュールに対し、生理食塩水(大塚製薬、大塚生食注)3mLを流速0.6mL/minで中空糸膜の内腔部に流し洗浄した。
その後、ヘパリン加人血15mLを37℃に温調し、1.2mL/minでの流速でミニモジュール内に4hr循環した。循環後、生理食塩水によりミニモジュールの内腔部を10mL、外側を10mLでそれぞれ洗浄した。
洗浄したミニモジュールから中空糸膜を採取後、これを細断してLDH活性測定用のスピッツ管に入れたものを測定用試料とした。
次に、燐酸緩衝溶液(PBS)(和光純薬工業)にTritonX−100(ナカライテスク)を溶解して得た0.5容量%のTritonX−100/PBS溶液をLDH活性測定用のスピッツ管に0.5mL添加後、遠心(2700rpm×5min)して中空糸膜を液中に沈め、振とう抽出を60分間行って中空糸膜に付着した細胞(主に血小板)を破壊し、細胞中のLDHを抽出した。この抽出液を0.05mL分取し、さらに0.6mMのピルビン酸ナトリウム溶液2.7mL、1.277mg/mLのニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)溶液0.3mLを加えて反応させ、さらに37℃で1時間反応させた後に、340nmの吸光度を測定した。
同様に血液と反応させていない中空糸膜(ブランク)についても吸光度を測定し、下記式(2)により吸光度の差を算出した。さらに下記式(2)で得られた値を、中空糸膜内表面面積で割った下記式(3)で得られた値をLDH活性として測定した。
Δ340nm=サンプルの60分後吸光度−ブランクの60分後吸光度 ・・・(2)
LDH活性=Δ340nm/中空糸膜内表面面積 ・・・(3)
【0078】
上記式(3)で得られた値が大きいほど中空糸膜内表面への血小板の付着量が多いことを意味するものとして評価し、中空糸膜型血液浄化装置のLDH活性が50以下の場合を血液適合性が良好であると評価した。
【0079】
〔実施例1〕
紡糸原液として、ポリスルホン(ソルベイ P−1700、溶解度パラメータδ 9.9)17.5質量%、ポリビニルピロリドン
(BASF K90)3.5質量%を、N,N−ジメチルアセトアミド79.0質量%に溶解して均一な溶液を得た。紡糸原液中のポリスルホンに対するポリビニルピロリドンの混和比率は20質量%であった。
得られた紡糸原液を60℃に保ち、N,N−ジメチルアセトアミド58.1質量%と水41.9質量%との混合溶液からなる中空内液とともに、二重環状紡口から吐出させ、0.96mのエアーギャップを通過させて75℃の水からなる凝固浴へ浸漬し、80m/分にて糸束を巻き取った。巻き取った糸束を切断後、束の切断面上方から80℃の熱水シャワーを2時間かけて注ぎ、洗浄することにより膜中の残溶剤を除去し、該膜をさらに乾燥することにより含水量が1%未満、内径185.0μm、膜厚45.0μmの乾燥膜を得た。
次に、イソプロパノール57質量%の水溶液に脂溶性ビタミンとしてα−トコフェロール(和光純薬工業 特級)を3.2質量%溶解したコート液中に、乾燥膜の長さ方向略1/5(胴端部)を含む部分を直接浸漬させた。5分経過後、中空糸膜全体をさらに5分コート液中に浸漬させた。コート液から中空糸膜を取り出し、24℃の乾燥空気を30分間通気して溶媒を乾燥除去することにより、脂溶性ビタミンを被覆により中空糸膜に固定化した。
脂溶性ビタミン固定化後の中空糸膜を、液体の導入及び導出用の2本のノズルを有する筒状容器に充填して両端部をウレタン樹脂で包埋後、硬化したウレタン部分を切断して中空糸膜が開口した端部に加工した。両端部に血液導入(導出)用のノズルを有するヘッダーキャップを装填し、中空糸膜内表面面積が1.5m
2の中空糸膜型血液浄化装置の形状に組み上げた。
湿潤化工程として、滅菌保護剤であるピロ亜硫酸ナトリウムを0.06質量%含み、さらにpH調整のための炭酸ナトリウムを0.03質量%含む水溶液を中空糸膜型血液浄化装置の血液側流路及び濾液側流路に充填し、各ノズルを密栓した状態でγ線を25kGy照射滅菌することにより、中空糸膜型血液浄化装置を得た。
【0080】
〔実施例2]
紡糸原液として、ポリスルホン(ソルベイ P−1700、溶解度パラメータδ 9.9)17.5質量%、ポリビニルピロリドン(BASF K90)3.5質量%を、N,N−ジメチルアセトアミド79.0質量%に溶解して均一な溶液を得た。紡糸原液中のポリスルホンに対するポリビニルピロリドンの混和比率は20質量%であった。
得られた紡糸原液を60℃に保ち、N,N−ジメチルアセトアミド58.1質量%と水41.9質量%との混合溶液からなる中空内液とともに、二重環状紡口から吐出させ、0.96mのエアーギャップを通過させて75℃の水からなる凝固浴へ浸漬し、80m/分にて糸束を巻き取った。巻き取った糸束を切断後、束の切断面上方から80℃の熱水シャワーを2時間かけて注ぎ、洗浄することにより膜中の残溶剤を除去し、該膜をさらに乾燥することにより含水量が1%未満、内径185.0μm、膜厚45.0μmの乾燥膜を得た。
次に、イソプロパノール57質量%の水溶液に脂溶性ビタミンとしてα−トコフェロール(和光純薬工業 特級)を0.64質量%溶解したコート液中に、乾燥膜の長さ方向略1/5(胴端部)を含む部分を直接浸漬させた。2分経過後、コート液から中空糸膜を取り出し、中空糸膜の端のうち、イソプロパノール溶液に浸漬させた側からエアーブローすることによって膜中に残存するコート液を吹き飛ばすと同時にコート液の非浸漬部分にもコート液を塗布した。24℃の乾燥空気を30分間通気して溶媒を乾燥除去することにより、脂溶性ビタミンを被覆により中空糸膜に固定化した。
脂溶性ビタミン固定化後の中空糸膜を、液体の導入及び導出用の2本のノズルを有する筒状容器に充填して両端部をウレタン樹脂で包埋後、硬化したウレタン部分を切断して中空糸膜が開口した端部に加工した。両端部に血液導入(導出)用のノズルを有するヘッダーキャップを装填し、中空糸膜内表面面積が1.5m
2の中空糸膜型血液浄化装置の形状に組み上げた。
湿潤化工程として、滅菌保護剤であるピロ亜硫酸ナトリウムを0.06質量%含み、さらにpH調整のための炭酸ナトリウムを0.03質量%含む水溶液を中空糸膜型血液浄化装置の血液側流路及び濾液側流路に充填し、各ノズルを密栓した状態でγ線を25kGy照射滅菌することにより、中空糸膜型血液浄化装置を得た。
【0081】
〔実施例3〕
イソプロパノール57質量%の水溶液に脂溶性ビタミンとしてα−トコフェロール(和光純薬工業 特級)を0.21質量%溶解した溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で中空糸膜型血液浄化装置を得た。
【0082】
〔実施例4〕
実施例3で得られた脂溶性ビタミン固定化後の中空糸膜において、該中空糸膜の胴端部を含む部分を、イソプロパノール57質量%の水溶液に脂溶性ビタミンとしてα−トコフェロール(和光純薬工業 特級)を3.2質量%溶解したコート液中にさらに浸漬させた。1分経過後、コート液から中空糸膜を取り出し、中空糸膜の端のうち、コート液に浸漬させた側と反対側からエアーブローすることによって膜中に残存するコート液を吹き飛ばした。24℃の乾燥空気を30分間通気して溶媒を乾燥除去することにより、脂溶性ビタミンを被覆により中空糸膜に固定化した。
脂溶性ビタミン固定化後の中空糸膜を、液体の導入及び導出用の2本のノズルを有する筒状容器に充填して両端部をウレタン樹脂で包埋後、硬化したウレタン部分を切断して中空糸膜が開口した端部に加工した。
イソプロパノール57質量%の水溶液に脂溶性ビタミンとしてα−トコフェロール(和光純薬工業 特級)を1.1質量%溶解し、コート装置内に準備した。加工した中空糸膜を、外周部に圧力抵抗部位を設けた治具を備えたコート装置にセットし、コート装置からコート液を流速500mL/minの速さで30秒間にわたり中空糸膜内に通液させた後、中空糸膜を取り出した。コート液を通液した側から35℃の乾燥空気を30分間通気して溶媒を乾燥除去することにより、脂溶性ビタミンを被覆により固定化した。
両端部に血液導入(導出)用のノズルを有するヘッダーキャップを装填し、中空糸膜内表面面積が1.5m
2の中空糸膜型血液浄化装置の形状に組み上げた。
湿潤化工程として、滅菌保護剤であるピロ亜硫酸ナトリウムを0.06質量%含み、さらにpH調整のための炭酸ナトリウムを0.03質量%含む水溶液を中空糸膜型血液浄化装置の血液側流路及び濾液側流路に充填し、各ノズルを密栓した状態でγ線を25kGy照射滅菌することにより、中空糸膜型血液浄化装置を得た。
【0083】
〔実施例5〕
紡糸原液として、ポリスルホン(ソルベイ P−1700、溶解度パラメータδ 9.9)17.5質量%、ポリビニルピロリドン(BASF K90)3.5質量%を、N,N−ジメチルアセトアミド79.0質量%に溶解して均一な溶液を得た。紡糸原液中のポリスルホンに対するポリビニルピロリドンの混和比率は20質量%であった。
得られた紡糸原液を60℃に保ち、N,N−ジメチルアセトアミド58.1質量%と水41.9質量%との混合溶液からなる中空内液とともに、二重環状紡口から吐出させ、0.96mのエアーギャップを通過させて75℃の水からなる凝固浴へ浸漬し、80m/分にて糸束を巻き取った。巻き取った糸束を切断後、束の切断面上方から80℃の熱水シャワーを2時間かけて注ぎ、洗浄することにより膜中の残溶剤を除去し、該膜をさらに乾燥することにより含水量が1%未満、内径185.0μm、膜厚45.0μmの乾燥膜を得た。
次に、イソプロパノール57質量%の水溶液に脂溶性ビタミンとしてα−トコフェロール(和光純薬工業 特級)を0.64質量%溶解したコート液中に、乾燥膜の長さ方向略1/5(胴端部)を含む部分を直接浸漬させた。1分経過後、中空糸膜全体をさらに1分コート液中に浸漬させた。コート液から中空糸膜を取り出し、24℃の乾燥空気を30分間通気して溶媒を乾燥除去することにより、脂溶性ビタミンを被覆により中空糸膜に固定化した。次いで、液体の導入及び導出用の2本のノズルを有する筒状容器に充填して両端部をウレタン樹脂で包埋後、硬化したウレタン部分を切断して中空糸膜が開口した端部に加工した。
イソプロパノール57質量%の水溶液に脂溶性ビタミンとしてα−トコフェロール(和光純薬工業 特級)を1.2質量%溶解し、コート装置内に準備した。加工した中空糸膜を、コート装置にセットしコート液を流速1500mL/minの速さで10秒間にわたり中空糸膜内に通液させた後、中空糸膜を取り出した。コート液の配管内径は中空糸膜束断面積の1/40であった。中空糸膜の端のうち、コート液を通液した側から35℃の乾燥空気を30分間通気して溶媒を乾燥除去することにより、脂溶性ビタミンを被覆により中空糸膜に固定化した。
両端部に血液導入(導出)用のノズルを有するヘッダーキャップを装填し、中空糸膜内表面面積が1.5m
2の中空糸膜型血液浄化装置の形状に組み上げた。
湿潤化工程として、滅菌保護剤であるピロ亜硫酸ナトリウムを0.06質量%含み、さらにpH調整のための炭酸ナトリウムを0.03質量%含む水溶液を中空糸膜型血液浄化装置の血液側流路及び濾液側流路に充填し、各ノズルを密栓した状態でγ線を25kGy照射滅菌することにより、中空糸膜型血液浄化装置を得た。
【0084】
〔実施例6〕
紡糸原液として、ポリスルホン(ソルベイ P−1700、溶解度パラメータδ 9.9)17.5質量%、ポリビニルピロリドン(BASF K90)3.5質量%を、N,N−ジメチルアセトアミド79.0質量%に溶解して均一な溶液を得た。紡糸原液中のポリスルホンに対するポリビニルピロリドンの混和比率は20質量%であった。
得られた紡糸原液を60℃に保ち、N,N−ジメチルアセトアミド58.1質量%と水41.9質量%との混合溶液からなる中空内液とともに、二重環状紡口から吐出させ、0.96mのエアーギャップを通過させて75℃の水からなる凝固浴へ浸漬し、80m/分にて糸束を巻き取った。巻き取った糸束を切断後、束の切断面上方から80℃の熱水シャワーを2時間かけて注ぎ、洗浄することにより膜中の残溶剤を除去し、該膜をさらに乾燥することにより含水量が1%未満、内径185.0μm、膜厚45.0μmの乾燥膜膜を得た。
次に、イソプロパノール57質量%の水溶液に脂溶性ビタミンとしてα−トコフェロール(和光純薬工業 特級)を1.7質量%溶解したコート液中に、乾燥膜の長さ方向略1/5(胴端部)を含む部分を直接浸漬させた。30秒経過後、コート液から中空糸膜を取り出し、中空糸膜の端のうち、コート液に浸漬させた側からエアーブローすることによって膜中に残存するコート液を吹き飛ばすと同時にコート液の非浸漬部分にもコート液を塗布した。24℃の乾燥空気を30分間通気して溶媒を乾燥除去することにより、脂溶性ビタミンを被覆により中空糸膜に固定化した。
脂溶性ビタミン固定化後の中空糸膜を、液体の導入及び導出用の2本のノズルを有する筒状容器に充填して両端部をウレタン樹脂で包埋後、硬化したウレタン部分を切断して中空糸膜が開口した端部に加工した。
イソプロパノール57質量%の水溶液に脂溶性ビタミンとしてα−トコフェロール(和光純薬工業 特級)を1.3質量%溶解し、コート装置内に準備した。加工した中空糸膜を、外周部に圧力抵抗部位を設けた治具を備えたコート装置にセットし、コート装置からコート液を流速500mL/minの速さで2分間にわたり中空糸膜内に通液させた後、中空糸膜を取り出した。コート液の配管内径は中空糸膜束断面積の1/10であった。中空糸膜の端のうち、コート液を通液した側から35℃の乾燥空気を30分間通気して溶媒を乾燥除去することにより、脂溶性ビタミンを被覆により固定化した。
両端部に血液導入(導出)用のノズルを有するヘッダーキャップを装填し、中空糸膜内表面面積が1.5m
2の中空糸膜型血液浄化装置の形状に組み上げた。
湿潤化工程として、滅菌保護剤であるピロ亜硫酸ナトリウムを0.06質量%含み、さらにpH調整のための炭酸ナトリウムを0.03質量%含む水溶液を中空糸膜型血液浄化装置の血液側流路及び濾液側流路に充填し、各ノズルを密栓した状態でγ線を25kGy照射滅菌することにより、中空糸膜型血液浄化装置を得た。
【0085】
〔実施例7〕
紡糸原液として、ポリスルホン(ソルベイ P−1700、溶解度パラメータδ 9.9)17.5質量%、ポリビニルピロリドン(BASF K90)3.5質量%を、N,N−ジメチルアセトアミド79.0質量%に溶解して均一な溶液を得た。紡糸原液中のポリスルホンに対するポリビニルピロリドンの混和比率は20質量%であった。
得られた紡糸原液を60℃に保ち、N,N−ジメチルアセトアミド58.1質量%と水41.9質量%との混合溶液からなる中空内液とともに、二重環状紡口から吐出させ、0.96mのエアーギャップを通過させて75℃の水からなる凝固浴へ浸漬し、80m/分にて糸束を巻き取った。巻き取った糸束を切断後、束の切断面上方から80℃の熱水シャワーを2時間かけて注ぎ、洗浄することにより膜中の残溶剤を除去し、該膜をさらに乾燥することにより含水量が1%未満、内径185.0μm、膜厚45.0μmの乾燥膜を得た。
次に、イソプロパノール57質量%の水溶液に脂溶性ビタミンとしてα−トコフェロール(和光純薬工業 特級)を2.2質量%溶解したコート液中に、乾燥膜の長さ方向略1/5(胴端部)を含む部分を直接浸漬させた。1分経過後、コート液から中空糸膜を取り出し、中空糸膜の端のうち、コート液に浸漬させた側からエアーブローすることによって膜中に残存するコート液を吹き飛ばすと同時にコート液の非浸漬部分にもコート液を塗布した。24℃の乾燥空気を30分間通気して溶媒を乾燥除去することにより、脂溶性ビタミンを被覆により中空糸膜に固定化した。
脂溶性ビタミン固定化後の中空糸膜を、液体の導入及び導出用の2本のノズルを有する筒状容器に充填して両端部をウレタン樹脂で包埋後、硬化したウレタン部分を切断して中空糸膜が開口した端部に加工した。両端部に血液導入(導出)用のノズルを有するヘッダーキャップを装填し、中空糸膜内表面面積が1.5m
2の中空糸膜型血液浄化装置の形状に組み上げた。
湿潤化工程として、滅菌保護剤であるピロ亜硫酸ナトリウムを0.06質量%含み、さらにpH調整のための炭酸ナトリウムを0.03質量%含む水溶液を中空糸膜型血液浄化装置の血液側流路及び濾液側流路に充填し、各ノズルを密栓した状態でγ線を25kGy照射滅菌することにより中空糸膜型血液浄化装置を得た。
【0086】
〔実施例8〕
紡糸原液として、ポリスルホン(ソルベイ P−1700、溶解度パラメータδ 9.9)17.5質量%、ポリビニルピロリドン(BASF K90)3.5質量%を、N,N−ジメチルアセトアミド79.0質量%に溶解して均一な溶液を得た。紡糸原液中のポリスルホンに対するポリビニルピロリドンの混和比率は20質量%であった。
得られた紡糸原液を60℃に保ち、N,N−ジメチルアセトアミド58.1質量%と水41.9質量%との混合溶液からなる中空内液とともに、二重環状紡口から吐出させ、0.96mのエアーギャップを通過させて75℃の水からなる凝固浴へ浸漬し、80m/分にて糸束を巻き取った。巻き取った糸束を切断後、束の切断面上方から80℃の熱水シャワーを2時間かけて注ぎ、洗浄することにより膜中の残溶剤を除去し、該膜をさらに乾燥することにより含水量が1%未満、内径185.0μm、膜厚45.0μmの乾燥膜を得た。
次に、イソプロパノール57質量%の水溶液に脂溶性ビタミンとしてα−トコフェロール(和光純薬工業 特級)を3.2質量%溶解したコート液中に、乾燥膜の長さ方向略1/5(胴端部)を含む部分を直接浸漬させた。5分経過後、中空糸膜全体をさらに3分コート液中に浸漬させた。コート液から中空糸膜を取り出し、24℃の乾燥空気を30分間通気して溶媒を乾燥除去することにより、脂溶性ビタミンを被覆により中空糸膜に固定化した。次いで、液体の導入及び導出用の2本のノズルを有する筒状容器に充填して両端部をウレタン樹脂で包埋後、硬化したウレタン部分を切断して中空糸膜が開口した端部に加工した。
イソプロパノール57質量%の水溶液に脂溶性ビタミンとしてα−トコフェロール(和光純薬工業 特級)を1.6質量%溶解し、コート装置内に準備した。加工した中空糸膜を、外周部に圧力抵抗部位を設けた治具を備えたコート装置にセットし、コート装置からコート液を流速500mL/minの速さで30秒間にわたり中空糸膜内に通液させた後、中空糸膜を取り出した。中空糸膜の端のうち、コート液を通液した側から35℃の乾燥空気を30分間通気して溶媒を乾燥除去することにより、脂溶性ビタミンを被覆により中空糸膜に固定化した。
両端部に血液導入(導出)用のノズルを有するヘッダーキャップを装填し、実施例1と同様にして湿潤化工程を施し滅菌処理を行うことで中空糸膜内表面面積が1.5m
2の中空糸膜型血液浄化装置の形状に組み上げた。
【0087】
〔実施例9〕
イソプロパノール57質量%の水溶液に脂溶性ビタミンとしてα−トコフェロール(和光純薬工業 特級)を3.2質量%溶解したコート液を用いたこと以外は、実施例7と同様の方法で中空糸膜型血液浄化装置を得た。
【0088】
〔実施例10〕
α−トコフェロール(和光純薬工業 特級)に乾燥膜の長さ方向略1/5(胴端部)を含む部分を直接浸漬させる時間を40秒とし、中空糸膜内表面面積が2.5m
2とした以外は、実施例3と同様の方法で中空糸膜型血液浄化装置を得た。
【0089】
〔実施例11〕
紡糸原液として、ポリスルホン(ソルベイ P−1700、溶解度パラメータδ 9.9)17.5質量%、ポリビニルピロリドン(BASF K90)3.5質量%を、N,N−ジメチルアセトアミド79.0質量%に溶解して均一な溶液を得た。紡糸原液中のポリスルホンに対するポリビニルピロリドンの混和比率は20質量%であった。
得られた紡糸原液を60℃に保ち、N,N−ジメチルアセトアミド58.1質量%と水41.9質量%との混合溶液からなる中空内液とともに、二重環状紡口から吐出させ、0.96mのエアーギャップを通過させて75℃の水からなる凝固浴へ浸漬し、80m/分にて糸束を巻き取った。巻き取った糸束を切断後、束の切断面上方から80℃の熱水シャワーを2時間かけて注ぎ、洗浄することにより膜中の残溶剤を除去し、該膜をさらに乾燥することにより含水量が1%未満、内径185.0μm、膜厚45.0μmの乾燥膜を得た。
次に、イソプロパノール57質量%の水溶液に脂溶性ビタミンとしてα−トコフェロール(和光純薬工業 特級)を3.2質量%溶解したコート液中に、乾燥膜の長さ方向略1/5(胴端部)を含む部分を直接浸漬させた。5分経過後、中空糸膜全体をさらに1分コート液中に浸漬させた。コート液から中空糸膜を取り出し、24℃の乾燥空気を30分間通気して溶媒を乾燥除去することにより、脂溶性ビタミンを被覆により中空糸膜に固定化した。
脂溶性ビタミン固定化後の中空糸膜を、液体の導入及び導出用の2本のノズルを有する筒状容器に充填して両端部をウレタン樹脂で包埋後、硬化したウレタン部分を切断して中空糸膜が開口した端部に加工した。
イソプロパノール57質量%の水溶液に脂溶性ビタミンとしてα−トコフェロール(和光純薬工業 特級)を1.6質量%溶解し、コート装置内に準備した。加工した中空糸膜を、外周部に圧力抵抗部位を設けた治具を備えたコート装置にセットし、コート装置からコート液を流速500mL/minの速さで10秒間にわたり中空糸膜内に通液させた後中空糸膜を取り出した。中空糸膜の端のうち、コート液を通液した側から35℃の乾燥空気を30分間通気して溶媒を乾燥除去することにより、脂溶性ビタミンを被覆により固定化した。
両端部に血液導入(導出)用のノズルを有するヘッダーキャップを装填し、中空糸膜内表面面積が2.5m
2の中空糸膜型血液浄化装置の形状に組み上げた。
湿潤化工程として、滅菌保護剤であるピロ亜硫酸ナトリウムを0.06質量%含み、さらにpH調整のための炭酸ナトリウムを0.03質量%含む水溶液を中空糸膜型血液浄化装置の血液側流路及び濾液側流路に充填し、各ノズルを密栓した状態でγ線を25kGy照射滅菌することにより、中空糸膜型血液浄化装置を得た。
【0090】
〔実施例12〕
乾燥膜の長さ方向略1/5(胴端部)を含む部分を最初に直接浸漬させる脂溶性ビタミンの水溶液濃度が、イソプロパノール57質量%の水溶液に脂溶性ビタミンとしてα−トコフェロール(和光純薬工業 特級)を2.5質量%溶解したコート液を用いたことと、中空糸膜内表面面積が2.5m
2とした以外は、実施例4と同様の方法で中空糸膜型血液浄化装置を得た。
【0091】
〔実施例13〕
実施例3で得られた脂溶性ビタミン固定化後の中空糸膜において、該中空糸膜の胴端部を含む部分を、イソプロパノール57質量%の水溶液に脂溶性ビタミンとしてα−トコフェロール(和光純薬工業 特級)を3.0質量%溶解したコート液中にさらに浸漬させた。1分経過後、コート液から中空糸膜を取り出し、中空糸膜の端のうち、コート液に浸漬させた側と反対側からエアーブローすることによって膜中に残存するコート液を吹き飛ばし、24℃の乾燥空気を30分間通気して溶媒を乾燥除去することにより、脂溶性ビタミンを被覆により中空糸膜に固定化した。
脂溶性ビタミン固定化後の中空糸膜を、液体の導入及び導出用の2本のノズルを有する筒状容器に充填して両端部をウレタン樹脂で包埋後、硬化したウレタン部分を切断して中空糸膜が開口した端部に加工した。
イソプロパノール57質量%の水溶液に脂溶性ビタミンとしてα−トコフェロール(和光純薬工業 特級)を3.2質量%溶解し、コート装置内に準備した。加工した中空糸膜を、外周部に圧力抵抗部位を設けた治具を備えたコート装置にセットし、コート装置からコート液を流速500mL/minの速さで25秒間にわたり中空糸膜内に通液させた後血液処理装置を取り出した。コート液を通液した側から35℃の乾燥空気を30分間通気して溶媒を乾燥除去することにより、脂溶性ビタミンを被覆により中空糸膜に固定化した。
両端部に血液導入(導出)用のノズルを有するヘッダーキャップを装填し、中空糸膜内表面面積が2.5m
2の中空糸膜型血液浄化装置の形状に組み上げた。
湿潤化工程として、滅菌保護剤であるピロ亜硫酸ナトリウムを0.06質量%含み、さらにpH調整のための炭酸ナトリウムを0.03質量%含む水溶液を中空糸膜型血液浄化装置の血液側流路及び濾液側流路に充填し、各ノズルを密栓した状態でγ線を25kGy照射滅菌することにより、中空糸膜型血液浄化装置を得た。
【0092】
〔実施例14〕
イソプロパノール57質量%の水溶液に脂溶性ビタミンとしてα−トコフェロール(和光純薬工業 特級)を0.7質量%溶解したコート液を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で中空糸膜型血液浄化装置を得た。
【0093】
〔実施例15〕
ポリエーテルスルホン(住友化学 4800P、溶解度パラメータδ 9.9)17.5質量%、ポリビニルピロリドン(BASF K90)3.5質量%、トリエチレングリコール(三菱化学製)31.2質量%、非溶媒として水1.0質量%、溶媒としてジメチルアセトアミド(三井化学製)46.8質量%を含む紡糸原液を、45℃に保ち、中空内液として水とともに、二重環状紡口から吐出させ、600mmのエアーギャップを通過させて水からなる凝固浴へ浸漬し、60m/分にて糸束を巻き取った。巻き取った糸束を切断後、束の切断面上方から80℃の熱水シャワーを2時間かけて注ぎ、洗浄することにより膜中の残溶剤を除去し、該膜をさらに乾燥することにより含水量が1%未満の乾燥膜を得た。
その後、純水45℃にて1分間、純水80℃にて90秒洗浄し、カセへ巻き取り、内径199.0μm、膜厚29.5μmの中空糸膜を得た。
脂溶性ビタミンの固定化方法は、イソプロパノール57質量%の水溶液に脂溶性ビタミンとしてα−トコフェロール(和光純薬工業 特級)を0.7質量%溶解した溶液を用い、中空糸膜内表面面積を2.5m
2としたこと以外は、実施例2と同様の方法で中空糸膜型血液浄化装置を得た。
【0094】
〔実施例16〕
紡糸原液として、ポリアリレート(ユニチカ Uポリマー、溶解度パラメータδ 9.3)15質量%と、ポリエーテルスルホン(住友化学工業 スミカエクセルPES、溶解度パラメータδ 9.9)15質量%を、N―メチルピロリドン70質量%に溶解して均一な溶液を得た。
得られた紡糸原液を60℃に保ち、ポリビニルピロリドン(BASF コリドンK―90)0.5質量%をN―メチルピロリドン19.5質量%と水80.0質量%に溶解させた混合溶液からなる中空内液とともに、二重環状紡口から吐出させ、0.9mのエアーギャップを通過させて50℃のN―メチルピロリドン19.5質量%と水80.5質量%からなる凝固浴へ浸漬し、700m/分にて糸束を巻き取った。巻き取った糸束を切断後、水で洗浄することにより膜中の残溶剤を除去し、該膜を35℃の乾燥空気でさらに乾燥することにより内径210μm、膜厚30μmの乾燥膜を得た。
脂溶性ビタミンの固定化方法は、イソプロパノール57質量%の水溶液に脂溶性ビタミンとしてα−トコフェロール(和光純薬工業 特級)を1.0質量%溶解した溶液を用い、中空糸膜内表面面積を2.1m
2としたこと以外は、実施例2と同様の方法で本発明の中空糸膜型血液浄化装置を得た。
【0095】
〔実施例17〕
紡糸原液として、重量平均分子量40万のsyn−PMMAを125g、重量平均分子量50万のiso−PMMA25gを、グリセリン150gとジメチルスルホキシド1200gに125℃で18時間攪拌して溶解し、静置脱泡して均一な溶液を得た。
得られた紡糸原液を、120℃のホッパーからギアポンプで、口金温度は60℃の中空糸用口金を通して空気中に5.3g/分の割合で吐出した。同時に、ジメチルスルホキシド70質量%と水30質量%との混合溶液からなる中空内液を1.65mL/分の割合で注入した。次いで、60℃の5%ジメチルスルホキシド水溶液からなる凝固浴へ浸漬した後、水洗し、保湿剤としてグリセリンを63質量%水溶液を中空糸膜に染み込ませた。熱処理浴温度を85℃とし、余分のグリセリンを除去した後、スペーサー糸を巻き付けて60m/分で巻き取った。巻き取った糸束を切断して中空糸束を得た。得られた中空糸膜の内径は200μm、膜厚は30μmであった。
脂溶性ビタミンの固定化方法は、イソプロパノール57質量%の水溶液に脂溶性ビタミンとしてα−トコフェロール(和光純薬工業 特級)を0.6質量%、グリセリン10質量%溶解した溶液を用い、中空糸膜内表面面積が1.6m
2としたこと以外は、実施例2と同様の方法で本発明の中空糸膜型血液浄化装置を得た。
【0096】
〔実施例18〕
高密度ポリエチレン(密度0.988、Mu直5.5 ハイゼックス2208J、溶解度パラメータδ 8.40)を、二重環状紡口を用い、紡口温度150℃で紡糸し、中空糸を得た。
得られた中空糸を120℃で2時間アニール処理した後、室温で30%、ついで105℃で350%熱延伸を施し中空糸膜を得た。中空糸膜の内径は300μm、膜厚は45μmであった。
75質量%アセトン水溶液にエチレン含量38モル%のエチレン−ビニルアルコール共重合体(日本合成化学工業 ソアノールE)を加熱溶解させ0.5質量%溶液とした。該溶液に脂溶性ビタミンとしてα−トコフェロール(和光純薬工業 特級)を0.9質量%溶解したコート液中に、中空糸膜の長さ方向略1/5(胴端部)を含む部分を5分間直接浸漬させた。次に、75容量%アセトン水溶液にエチレン含量38モル%のエチレン−ビニルアルコール共重合体(日本合成化学工業 ソアノールE)を加熱溶解させた0.5質量%溶液中に、中空糸膜全体を3分間浸漬させた。過剰の共重合体溶液を除いた後、40℃の熱風で3時間乾燥した。
脂溶性ビタミン固定化後の中空糸膜を、液体の導入及び導出用の2本のノズルを有する筒状容器に充填して両端部をウレタン樹脂で包埋後、硬化したウレタン部分を切断して中空糸膜が開口した端部に加工した。両端部に血液導入(導出)用のノズルを有するヘッダーキャップを装填し、膜面積が1.6m
2の中空糸膜型血液浄化装置の形状に組み上げた。
【0097】
〔実施例19〕
紡糸原液として、ポリスルホン(ソルベイ P−1700、溶解度パラメータδ 9.9)17.5質量%、ポリビニルピロリドン(BASF K90)3.5質量%を、N,N−ジメチルアセトアミド79.0質量%に溶解して均一な溶液を得た。紡糸原液中のポリスルホンに対するポリビニルピロリドンの混和比率は20質量%であった。
得られた紡糸原液を60℃に保ち、N,N−ジメチルアセトアミド58.1質量%と水41.9質量%との混合溶液からなる中空内液とともに、二重環状紡口から吐出させ、0.96mのエアーギャップを通過させて75℃の水からなる凝固浴へ浸漬し、80m/分にて糸束を巻き取った。巻き取った糸束を切断後、束の切断面上方から80℃の熱水シャワーを2時間かけて注ぎ、洗浄することにより膜中の残溶剤を除去し、該膜をさらに乾燥することにより含水量が1%未満、内径185.0μm、膜厚45.0μmの乾燥膜を得た。
次に、イソプロパノール57質量%の水溶液に脂溶性ビタミンとしてα−トコフェロール(和光純薬工業 特級)を0.64質量%溶解したコート液中に、乾燥膜の長さ方向略1/5(胴端部)を含む部分を直接浸漬させた。2分経過後、コート液から中空糸膜を取り出した。次いで、もう一方の1/5(胴端部)を含む部分を直接コート液に浸漬させた。2分経過後、最後にコート液へ浸漬させた側からエアーブローすることによって膜中に残存するコート液を吹き飛ばすと同時にコート液の非浸漬部分にもコート液を塗布した。24℃の乾燥空気を30分間通気して溶媒を乾燥除去することにより、脂溶性ビタミンを被覆により中空糸膜に固定化した。
脂溶性ビタミン固定化後の中空糸膜を、液体の導入及び導出用の2本のノズルを有する筒状容器に充填して両端部をウレタン樹脂で包埋後、硬化したウレタン部分を切断して中空糸膜が開口した端部に加工した。両端部に血液導入(導出)用のノズルを有するヘッダーキャップを装填し、中空糸膜内表面面積が1.5m
2の中空糸膜型血液浄化装置の形状に組み上げた。
湿潤化工程として、滅菌保護剤であるピロ亜硫酸ナトリウムを0.06質量%含み、さらにpH調整のための炭酸ナトリウムを0.03質量%含む水溶液を中空糸膜型血液浄化装置の血液側流路及び濾液側流路に充填し、各ノズルを密栓した状態でγ線を25kGy照射滅菌することにより、中空糸膜型血液浄化装置を得た。
【0098】
〔比較例1〕
紡糸原液として、ポリスルホン(ソルベイ P−1700、溶解度パラメータδ 9.90)17.5質量%、ポリビニルピロリドン(BASF K90)3.5質量%を、N,N−ジメチルアセトアミド79.0質量%に溶解して均一な溶液を得た。紡糸原液中のポリスルホンに対するポリビニルピロリドンの混和比率は20質量%であった。
得られた紡糸原液を60℃に保ち、N,N−ジメチルアセトアミド58.1質量%と水41.9質量%との混合溶液からなる中空内液とともに、二重環状紡口から吐出させ、0.96mのエアーギャップを通過させて75℃の水からなる凝固浴へ浸漬し、80m/分にて糸束を巻き取った。巻き取った糸束を切断後、束の切断面上方から80℃の熱水シャワーを2時間かけて注ぎ、洗浄することにより膜中の残溶剤を除去し、該膜をさらに乾燥することにより含水量が1%未満の乾燥膜を得た。
乾燥膜を、液体の導入及び導出用の2本のノズルを有する筒状容器に充填して両端部をウレタン樹脂で包埋後、硬化したウレタン部分を切断して中空糸膜が開口した端部に加工した。両端部に血液導入(導出)用のノズルを有するヘッダーキャップを装填し、中空糸膜内表面面積が1.5m
2の中空糸膜型血液浄化装置の形状に組み上げた。
次に、イソプロパノール57質量%の水溶液に、α−トコフェロール(和光純薬工業 特級)を3.5質量%溶解したコート液を、24℃温度下で中空糸膜型血液浄化装置の血液導入ノズルから中空糸膜の内腔部に1分間通液してα−トコフェロールを接触させた。この時、コート液の配管内径は中空糸膜束断面積の1/5であった。
その後、エアーブローして内腔部の残液を除去した後、イソプロパノール雰囲気の24℃の乾燥空気を30分間通気して溶媒を乾燥除去することにより、α−トコフェロールを中空糸膜に固定化した。
湿潤化工程として、滅菌保護剤であるピロ亜硫酸ナトリウムを0.06質量%含み、さらにpH調整のための炭酸ナトリウムを0.03質量%含む水溶液を中空糸膜型血液浄化装置の血液側流路及び濾液側流路に充填し、各ノズルを密栓した状態でγ線を25kGy照射滅菌することにより、中空糸膜型血液浄化装置を得た。
【0099】
〔比較例2〕
コート溶液中におけるα−トコフェロールの濃度を0.16質量%に変更した以外は比較例1と同様の方法により、中空糸膜型血液浄化装置を得た。
【0100】
〔比較例3〕
特開2006−296931号公報の実施例1に記載されている内容をもとに、具体的には以下のようにして、中空糸膜型血液浄化装置を得た。
紡糸原液として、ポリスルホン(ソルベイ P−1700、溶解度パラメータδ 9.90)18.0質量%、ポリビニルピロリドン(BASF K90)4.3質量%を、N,N−ジメチルアセトアミド77.7質量%に溶解して均一な溶液を得た。紡糸原液中のポリスルホンに対するポリビニルピロリドンの混和比率は24質量%であった。
得られた紡糸原液を60℃に保ち、N,N−ジメチルアセトアミド30質量%と水70質量%の混合溶液からなる中空内液とともに、二重環状紡口から吐出させ、0.96mのエアーギャップを通過させて75℃の水からなる凝固浴へ浸漬し、80m/分にて糸束を巻き取った。巻き取った糸束を切断後、束の切断面上方から80℃の熱水シャワーを2時間かけて注ぎ、洗浄することにより膜中の残溶剤を除去し、該膜をさらに乾燥することにより含水量が1%未満の乾燥膜を得た。
乾燥膜を、液体の導入及び導出用の2本のノズルを有する筒状容器に充填して両端部をウレタン樹脂で包埋後、硬化したウレタン部分を切断して中空糸膜が開口した端部に加工した。両端部に血液導入(導出)用のノズルを有するヘッダーキャップを装填し、中空糸膜内表面面積が1.5m
2の中空糸膜型血液浄化装置の形状に組み上げた。
次に、イソプロパノール57質量%の水溶液にα−トコフェロール(和光純薬工業 特級)を0.23質量%溶解したコート液を、中空糸膜の血液導入ノズルから中空糸膜の内腔部に52秒通液してα−トコフェロールを接触させた。さらにエアーフラッシュして内腔部の残液を除去した後、24℃の乾燥空気を30分間通気して溶媒を乾燥除去することにより、α−トコフェロールを中空糸膜に被覆した。
湿潤化工程として、滅菌保護剤であるピロ亜硫酸ナトリウムを0.06質量%含み、さらにpH調整のための炭酸ナトリウムを0.03質量%含む水溶液を中空糸膜型血液浄化装置の血液側流路と濾液側流路に充填し、各ノズルを密栓した状態でγ線を25kGy照射滅菌することにより、中空糸膜型血液浄化装置を得た。
【0101】
〔比較例4〕
特開2013−9761号公報の実施例2に記載されている内容をもとに、具体的には以下のようにして、中空糸膜型血液浄化装置を得た。
紡糸原液として、ポリスルホン(ソルベイ P−1700、溶解度パラメータδ 9.90)17.0質量%、ポリビニルピロリドン(BASF K90)4.0質量%、α−トコフェロール(和光純薬工業 特級)0.5質量部を、N,N−ジメチルアセトアミド78.5質量部に溶解して均一な溶液を得た。紡糸原液中のポリスルホンに対するポリビニルピロリドンの混和比率は20質量%であった。
得られた紡糸原液を60℃に保ち、N,N−ジメチルアセトアミド42.0質量%と水58.0質量%との混合溶液からなる中空内液とともに、二重環状紡口から吐出させ、0.5mのエアーギャップを通過させて60℃の水からなる凝固浴に浸漬し、30m/分の速度で凝固工程、水洗工程(水洗処理)を通過させた後に乾燥機に導入し、120℃で2分間乾燥後、さらに160℃で0.5分間の加熱処理を行った後、クリンプを付与したポリスルホン系中空糸膜を巻き取った。
巻き取った10000本の中空糸膜からなる束を、中空糸膜内表面面積が1.5m
2となるように設計したプラスチック製筒状容器に装填し、その両端部をウレタン樹脂で接着固定し、両端面を切断して中空糸膜の開口端を形成した。
蒸留水(大塚製薬)95質量部とグリセリン(和光純薬工業 特級)5質量部からなる水溶液を中空糸膜内に100mL通液し、0.3MPaのエアーで10秒間ブローした。次いで40℃の乾燥空気で1時間乾燥した。乾燥後、両端部にヘッダーキャップを取り付けた。血液流出入側ノズルに栓を施した後、電子線を20kGy照射して、中空糸膜型血液浄化装置を得た。
【0102】
【表1】
【0103】
【表2】
【0104】
本出願は、2013年12月16日出願の日本特許出願(特願2013−259551号)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。