特許第6196687号(P6196687)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6196687
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】動揺低減装置及びこれを備えた浮体
(51)【国際特許分類】
   B63B 39/06 20060101AFI20170904BHJP
   B63B 35/44 20060101ALI20170904BHJP
【FI】
   B63B39/06 C
   B63B35/44 Z
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-555029(P2015-555029)
(86)(22)【出願日】2014年12月25日
(86)【国際出願番号】JP2014084422
(87)【国際公開番号】WO2015099093
(87)【国際公開日】20150702
【審査請求日】2016年4月21日
(31)【優先権主張番号】特願2013-273153(P2013-273153)
(32)【優先日】2013年12月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】池末 俊一
(72)【発明者】
【氏名】太田 真
(72)【発明者】
【氏名】小松 正夫
(72)【発明者】
【氏名】矢野 州芳
(72)【発明者】
【氏名】熊本 均
【審査官】 岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−142569(JP,A)
【文献】 特開2012−066671(JP,A)
【文献】 特開2004−058691(JP,A)
【文献】 特開2004−268683(JP,A)
【文献】 特開2004−161203(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/057112(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 3/44,35/00,35/44,39/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水上に浮遊する浮体本体の動揺低減装置であって、
前記浮体本体の鉛直方向下側に配置された板部と、
前記板部と前記浮体本体とを、前記浮体本体と前記板部との間に水が流れる状態で接続する接続部と、を有し、
前記浮体本体の底面との間に、前記浮体本体の外側から内側の方向が、前記浮体本体の内側から外側の方向よりも前記浮体本体の底面上の水流が速くなる流路を形成し、
前記浮体本体の喫水をdとし、前記板部の前記接続部と接続している部分の面積が最も大きい面の幅をbとし、垂直方向における前記浮体本体と前記板部との距離をsとした場合、0.05≦b/d≦0.5であり、かつ、0.01≦s/d≦0.2であり、
前記板部は、面積が最も大きい面が、前記浮体本体の底面に対して前記浮体本体から離れるに従って鉛直方向下側に向かう方向に傾斜している部分を含み、鉛直方向から見た場合、前記浮体本体と一部が重なり、一部が重ならないことを特徴とする動揺低減装置。
【請求項2】
前記板部は、前記板部の前記接続部と接続している部分の面積が最も大きい面と垂直方向とのなす角が0°以上90°以下であることを特徴とする請求項1に記載の動揺低減装置。
【請求項3】
前記板部の前記接続部と接続している部分の面積が最も大きい面の幅をbとし、前記板部の前記接続部と接続している部分の面積が最も大きい面と垂直方向とのなす角をθとし、水平方向における前記浮体本体の端面と前記板部の鉛直方向上側の端部との距離をx0とした場合、0≦x0≦b×sinθであることを特徴とする請求項1または2に記載の動揺低減装置。
【請求項4】
前記板部は、前記接続部と接続している部分である第1板部と、前記第1板部の鉛直方向下側の端部に接続され、最も大きい面が鉛直方向と平行となる第2板部と、を有し、
前記第2板部の最も大きい面の鉛直方向の長さをhとし、前記第1板部の面積が最も大きい面の幅をbとした場合、0<h/b≦1であることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の動揺低減装置。
【請求項5】
請求項1からのいずれか一項に記載の動揺低減装置と、
前記動揺低減装置が設置された浮体本体と、を有することを特徴とする浮体。
【請求項6】
前記浮体本体は、底面の外縁が複数の辺で形成され、
前記動揺低減装置は、複数の前記辺のうち、少なくとも1辺に配置されていることを特徴とする請求項に記載の浮体。
【請求項7】
前記動揺低減装置は、前記浮体本体の外縁の全域に配置されていることを特徴とする請求項に記載の浮体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮体本体の動揺を低減する動揺低減装置及びこれを備えた浮体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
海や湖等の水上に各種施設を設置する場合、底に支柱を埋めて設置する方法や水上に浮体を浮かべる方法がある。水上に浮体を浮かべる場合、浮体は、水面の波によって動揺してしまう。
【0003】
これに対して、特許文献1には、浮体に生じる動揺を低減する装置として、浮体本体の下部に連結部材を介して動揺低減部材を配置し、当該動揺低減部材を海底から所定距離以内に吊り下げる装置が記載されている。また、特許文献2には、水上に浮かぶ浮体本体の少なくとも波上側に、該浮体本体から所定距離離間した板を設け、板と浮体本体との間に、貫通部を形成する動揺低減装置が記載されている。また、特許文献3には、浮体本体から所定間隔離間した板を、面積が最も大きい面を水面と平行な向きに配置することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−103449号公報
【特許文献2】特開2002−37184号公報
【特許文献3】米国特許第8347803号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、特許文献2及び特許文献3に記載の動揺低減装置を用いることで、浮体本体の動揺を低減することができるが、装置が大きくなったり、動揺の低減効果が小さかったりする場合がある。
【0006】
本発明は上述した課題を解決するものであり、簡単な構造で浮体本体の動揺を効率よく低減することができる動揺低減装置及びこれを備えた浮体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明の動揺低減装置は、水上に浮遊する浮体本体の動揺低減装置であって、前記浮体本体の鉛直方向下側に配置された板部と、前記板部と前記浮体本体とを、前記浮体本体と前記板部との間に水が流れる状態で接続する接続部と、を有し、前記浮体本体の底面との間に、前記浮体本体の外側から内側の方向が、前記浮体本体の内側から外側の方向よりも前記浮体本体の底面上の水流が速くなる流路を形成することを特徴とする。
【0008】
また、前記浮体本体の喫水をdとし、前記板部の前記接続部と接続している部分の面積が最も大きい面の幅をbとし、垂直方向における前記浮体本体と前記板部との距離をsとした場合、0.05≦b/d≦0.5であり、かつ、0.01≦s/d≦0.2であることが好ましい。
【0009】
また、前記板部は、前記板部の前記接続部と接続している部分の面積が最も大きい面と垂直方向とのなす角が0°以上90°以下であることが好ましい。
【0010】
また、前記板部の前記接続部と接続している部分の面積が最も大きい面の幅をbとし、前記板部の前記接続部と接続している部分の面積が最も大きい面と垂直方向とのなす角をθとし、水平方向における前記浮体本体の端面と前記板部の鉛直方向上側の端部との距離をx0とした場合、0≦x0≦b×sinθであることが好ましい。
【0011】
また、前記板部は、前記接続部と接続している部分である第1板部と、前記第1板部の鉛直方向下側の端部に接続され、最も大きい面が鉛直方向と平行となる第2板部と、を有し、前記第2板部の最も大きい面の鉛直方向の長さをhとし、前記第1板部の面積が最も大きい面の幅をbとした場合、0<h/b≦1であることが好ましい。
【0012】
また、前記板部は、鉛直方向から見た場合、前記浮体本体と一部が重なり、一部が重ならないことが好ましい。
【0013】
また、前記板部は、面積が最も大きい面が、前記浮体本体の底面と平行である部分を含むことが好ましい。
【0014】
また、前記板部は、面積が最も大きい面が、前記浮体本体の底面に対して傾斜している部分を含むことが好ましい。
【0015】
上述の目的を達成するために、本発明の浮体は、上記のいずれかに記載の動揺低減装置と、前記動揺低減装置が設置された浮体本体と、を有することを特徴とする。
【0016】
また、前記浮体本体は、底面の外縁が複数の辺で形成され、複数の前記辺のうち、少なくとも1辺に配置されていることが好ましい。
【0017】
また、前記動揺低減装置は、前記浮体本体の外縁の全域に配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、浮体本体の底面よりも下側に配置した板部によって、浮体本体と板部との間に不可逆流路を形成することができる。これにより、浮体本体を押す方向の水の流れが生じた場合、浮体本体を引く方向に水の流れが生じた場合のいずれの場合も、その力を打ち消す方向の力を作用させることができる。これにより、簡単な構造で浮体本体の動揺を効率よく低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本実施形態に係る浮体の概略構成を示す上面図である。
図2図2は、本実施形態に係る浮体の概略構成を示す断面図である。
図3図3は、浮体の動揺低減装置の動作を説明するための説明図である。
図4図4は、浮体の動揺低減装置の動作を説明するための説明図である。
図5図5は、他の実施形態の浮体の概略構成を示す断面図である。
図6図6は、他の実施形態の浮体の概略構成を示す上面図である。
図7図7は、他の実施形態の浮体の概略構成を示す上面図である。
図8図8は、他の実施形態の浮体の概略構成を示す上面図である。
図9図9は、他の実施形態の浮体の概略構成を示す上面図である。
図10図10は、他の実施形態の浮体の概略構成を示す上面図である。
図11図11は、他の実施形態の浮体の概略構成を示す断面図である。
図12図12は、他の実施形態の浮体の概略構成を示す断面図である。
図13図13は、他の実施形態の浮体の概略構成を示す断面図である。
図14図14は、他の実施形態の浮体の概略構成を示す断面図である。
図15図15は、他の実施形態の浮体の概略構成を示す断面図である。
図16図16は、図15の動揺低減装置の動作を説明するための断面図である。
図17図17は、他の実施形態の浮体の概略構成を示す断面図である。
図18図18は、図17の浮体の動揺低減装置を拡大して示す拡大図である。
図19図19は、他の実施形態の浮体の概略構成を示す断面図である。
図20図20は、動揺低減装置の一例を示す断面図である。
図21図21は、動揺低減装置の一例を示す断面図である。
図22図22は、計測結果の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0021】
図1は、本実施形態に係る浮体の概略構成を示す上面図である。図2は、本実施形態に係る浮体の概略構成を示す断面図である。浮体は、浮桟橋、浮倉庫、浮駐車場、作業船、石油生産プラットフォーム、洋上風車の土台等、種々の水上に浮かぶ構造物である。
【0022】
図1及び図2に示すように、浮体10は、浮体本体12と、動揺低減装置14と、を有する。浮体本体12は、水面Wに対して浮かぶ構造物である。浮体本体12は、例えば、外面が鋼板によって形成され、内部に密閉された空間が形成されている。浮体本体12は、内部の空間に空気が充填された状態とすることで、比重を水よりも軽くし、水面Wに対して浮かぶ。また、浮体本体12は、構造物の全体を、水よりも比重の軽い物体で形成してもよい。本実施形態の浮体本体12は、底面(鉛直方向下側の面)が矩形となる直方体である。
【0023】
動揺低減装置14は、浮体本体12の外縁に設けられている。動揺低減装置14は、4つの低減ユニット20を備える。4つの低減ユニット20は、浮体本体12の底面の4辺にそれぞれ配置されている。
【0024】
低減ユニット20は、板部22と、板部22と浮体本体12とを接続する接続部24と、を有する。板部22は、対応する浮体本体12の底面の辺の延在方向が長手方向となる板状の部材であり、面積が最も大きい面(表面)が浮体本体12の底面と平行な向きで配置されている。板部22は、浮体本体12の底面の辺の略全域を覆うように配置されている。つまり、板部22は、長手方向の長さが浮体本体12の底面の辺と略同じであり、辺の延在方向において重なる位置に配置されている。また、板部22は、図2に示すように、鉛直方向において、浮体本体12の底面よりも所定距離下側に離れて配置されている。また、板部22は、図1及び図2に示すように鉛直方向(水面Wに直交する方向)から見た場合、一部が浮体本体12と重なり一部が浮体本体12と重ならない状態となる。つまり、板部22は、浮体本体12の底面の近傍に配置され、一部が浮体本体12からはみ出している。
【0025】
接続部24は、棒状の部材であり、板部22を浮体本体12に対して固定する。接続部24は、浮体本体12の底面の辺の延在方向に複数設けられており、板部22を複数個所で浮体本体12に対して固定している。また、接続部24と接続部24との間には隙間がある。
【0026】
動揺低減装置14は、以上のような構成であり、接続部24により板部22が浮体本体12との間に隙間がある状態で固定されている。また、板部22は、上述したように鉛直方向から見た場合、一部が浮体本体12と重なっている。
【0027】
次に、図3及び図4を用いて、動揺低減装置14の機能について説明する。図3及び図4は、浮体の動揺低減装置の動作を説明するための説明図である。なお、図3及び図4は、複数の低減ユニット20のうち、1つの低減ユニット20について説明するが、他の低減ユニット20も同様の機能を備えている。
【0028】
浮体10は、図3に示すように、浮体本体12を押す方向の波、いわゆる押し波50が浮体本体12に衝突した場合、浮体本体12には、波強制力モーメント52が作用する。この時、動揺低減装置14は、押し波50によって移動する水流54の一部が、板部22と浮体本体12の底面との間を通過する水流56となる。この水流56は、押し波50で押し出された高速流となることで、浮体本体12の板部22の近傍の底面には、底面の他の部分よりも圧力が低い領域が発生する。これにより、動揺低減装置14は、押し波50側の面の低減ユニット20の近傍に、波強制力モーメント52を打ち消す方向の力であるキャンセル力58を発生させる。動揺低減装置14は、キャンセル力58を発生させることで、押し波50が浮体本体12に作用した場合に浮体本体12に生じる力を小さくすることができる。
【0029】
浮体10は、図4に示すように、浮体本体12を引く方向の波、いわゆる引き波60が浮体本体12に作用した場合、浮体本体12には、波強制力モーメント62(波強制力モーメント52とは反対方向の力)が作用する。この時、動揺低減装置14は、引き波60によって移動する水流の一部が、板部22と浮体本体14の底面との間を通過する水流64となり、残りの水流が、板部22の底面を回り込む水流66となる。つまり、浮体本体12から板部22側に向かう水流の場合、板部22と浮体本体12の底面とが重なっている領域の間が狭い空間となり、水流が通りにくくなるため(水が流れにくく)、水流64と水流66が形成される。これにより、引き波60で浮体本体12から板部22側に向かう水流は、動揺低減装置14の近傍で抵抗が増加し、浮体本体12の板部22の近傍の底面に、底面の他の部分よりも圧力が増加する領域が発生する。これにより、動揺低減装置14は、引き波60側の面の低減ユニット20の近傍に、波強制力モーメント62を打ち消す方向の力であるキャンセル力68を発生させる。動揺低減装置14は、キャンセル力68を発生させることで、引き波60が浮体本体12に作用した場合に浮体本体12に生じる力を小さくすることができる。
【0030】
浮体10は、浮体本体12の底面との間に隙間があり、かつ、鉛直方向から見た場合一部が重なって配置された板部22を設けることで、浮体本体12の底面と板部22との間に流入する水流の方向によって、水流の挙動が異なる不可逆流路を形成することができる。これにより、押し波50が作用した場合と、引き波60が作用した場合とで浮体本体12に異なる方向のモーメントを発生させることができ、押し波50、引き波60で作用する波強制力モーメント52、62をキャンセル力58,68で好適に低減することができる。また、浮体10は、動揺低減装置14で効率よく動揺を低減できることで、浮体本体12に取り付ける装置を小さくすることができる。
【0031】
また、動揺低減装置14は、板部22を接続部24で固定した簡単な構造で、浮体本体12の動揺を低減することができる。これにより、簡単な構造で効果的に浮体本体12の動揺を低減することができる。
【0032】
動揺低減装置14は、板部22の浮体本体12と重なっている領域を適正な割合とすることで、押し波50が発生した場合の水流56と、引き波60が発生した場合の水流64、66を適切なバランスで発生させることができる。特に、引き波60が発生した場合に、板部22と浮体本体12の底面との間を水流が通りにくい状態とすることができ、キャンセル力68を好適に発生させることができる。
【0033】
動揺低減装置14は、板部22と浮体本体12との距離を適正な範囲とすることで、押し波50が発生した場合の水流56と、引き波60が発生した場合の水流64、66を適切なバランスで発生させることができる。具体的には、押し波50が発生した場合、圧縮された水流56を適切な速度の水流とすることができ、引き波60が発生した場合、板部22と浮体本体12の底面との間を水流が通りにくい状態とすることができる。つまり、浮体本体12の底面と板部22との間に、浮体本体12の外側から内側の方向が、浮体本体の内側から外側の方向よりも水流が通りやすい流路(水が流れやすい流路)を形成することができる。具体的には、浮体本体12の底面と板部22との間において、浮体本体12の外側から内側の方向が、浮体本体の内側から外側の方向よりも浮体本体12の底面上(底面付近)の水流が速くなる。これにより、キャンセル力58、68を好適に発生させ、浮体本体12の動揺をより確実に低減することができる。
【0034】
ここで、浮体10及び動揺低減装置14は、上記実施形態に限定されない。以下、図5から図10を用いて、浮体10及び動揺低減装置14の変形例である他の実施形態について説明する。なお、下記変形例において、浮体10及び動揺低減装置14と同様の構成については、同様の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0035】
図5は、他の実施形態の浮体の概略構成を示す断面図である。図5に示す浮体10aは、浮体本体12と、動揺低減装置14aと、を有する。動揺低減装置14aは、複数の低減ユニット20aを有する。低減ユニット20aは、板部22aと複数の接続部24とを有する。板部22aは、面積が最も大きい面が、浮体本体12の底面に対して、所定角度傾斜している。具体的には、板部22aは、長手方向に直交する断面において、浮体本体12(浮体本体12の中心)から離れるに従って鉛直方向下側に向かう方向に傾いている。また、板部22aは、一部が浮体本体12と重なり、一部が浮体本体12と重なっていない。この点は、板部22と同様である。
【0036】
動揺低減装置14aは、板部22aを浮体本体12の底面に対して傾斜させることでも板部22と同様の水流を形成することができる。さらに、板部22aは、板部22aを、浮体本体12から離れるに従って鉛直方向下側に向かう方向に傾けることで、押し波時に板部22aと浮体本体12との間に流入する水流をより多くすることができ、引き波時に、板部22aと浮体本体12との間に流入する水流の抵抗をより大きくすることができる。これにより、浮体本体12の動揺を低減することができる。
【0037】
図6は、他の実施形態の浮体の概略構成を示す上面図である。図6に示す浮体10bは、浮体本体12と、動揺低減装置14bと、を有する。動揺低減装置14bは、2つの低減ユニット20を有する。動揺低減装置14bは、浮体本体12の4辺のうち対向する2つの辺のみに低減ユニット20を設けている。このように、動揺低減装置14bは、浮体本体12の外縁の全域に設けることに限定されず、複数の辺のなかで選択的に動揺低減装置14bを設けてもよい。また、変形例では、4辺のうち対向する2辺としたが、3辺としても1辺としても対向しない2辺としてもよい。
【0038】
図7は、他の実施形態の浮体の概略構成を示す上面図である。図7に示す浮体10cは、浮体本体12と、動揺低減装置14cと、を有する。動揺低減装置14cは、4つの低減ユニット20cを有する。低減ユニット20cは、2つの板部22cと板部22cと浮体本体12とを接続する複数の接続部24とを有する。2つの板部22cは、浮体本体12の辺に沿って、直列に配置されている。つまり、2つの板部22cは、浮体本体12の辺の異なる位置と重なって配置されている。板部22cは、一部が浮体本体12と重なり、一部が浮体本体12と重なっていない。この点は、板部22と同様である。浮体10cは、浮体本体12の1辺に対して配置する動揺低減装置14cの板部22cを複数に分割しても、上記と同様の効果を得ることができる。また、上記変形例では1つの低減ユニット20cの板部を2つの板部22cとしたが、板部の数は特に限定されない。低減ユニットは、板部を3つ以上備えていてもよい。
【0039】
図8は、他の実施形態の浮体の概略構成を示す上面図である。図8に示す浮体10dは、浮体本体12と、動揺低減装置14dと、を有する。動揺低減装置14dは、4つの低減ユニット20dを有する。低減ユニット20dは、板部22dと板部22dと浮体本体12とを接続する複数の接続部24とを有する。板部22dは、浮体本体12の辺に沿って配置されている。板部22dは、長手方向の長さが浮体本体12の設置されている辺よりも短い。したがって、板部22dは、浮体本体12の辺に沿った方向において、浮体本体12の辺の一部に配置されている。本変形例の板部22dは、浮体本体12の辺の中心を含む一部に配置されている。板部22dは、一部が浮体本体12と重なり、一部が浮体本体12と重なっていない。この点は、板部22と同様である。浮体10dは、浮体本体12の1辺に対して配置する動揺低減装置14dの板部22dを浮体本体12よりも短くしても、上記と同様の効果を得ることができる。
【0040】
また、動揺低減装置は、浮体本体の辺に対して、板部を適正な範囲で配置することで、波強制力モーメントに対するキャンセル力を好適な大きさとすることができ、動揺を低減することができる。
【0041】
図9は、他の実施形態の浮体の概略構成を示す上面図である。図9に示す浮体10eは、浮体本体12aと、動揺低減装置14eと、を有する。浮体本体12aは、鉛直方向から見た場合の外周が円形となる円柱形状の構造物である。動揺低減装置14eは、浮体本体12aの底面の円形の外縁の一部に配置された低減ユニット20eを有する。本変形例の動揺低減装置14eは、2つの低減ユニット20eが円形の外縁の対向する部分にそれぞれ配置されている。低減ユニット20eは、リングの一部を切り取った形状(扇型形状)の板部22eと板部22eと浮体本体12aとを接続する接続部24とを有する。
【0042】
図10は、他の実施形態の浮体の概略構成を示す上面図である。図10に示す浮体10fは、浮体本体12bと、動揺低減装置14fと、を有する。浮体本体12bは、鉛直方向から見た場合の外周が八角形となる多角柱形状の構造物である。動揺低減装置14fは、浮体本体12bの底面の八角形の外縁の8辺のそれぞれに配置された低減ユニット20fを有する。低減ユニット20fは、板部22fと板部22fと浮体本体12bとを接続する複数の接続部24とを有する。板部22fは、浮体本体12の辺に沿って配置されている。
【0043】
図9及び図10に示すように、動揺低減装置を設置する浮体本体の形状は底面が矩形となる直方体に限定されず、種々の形状に適用することができる。
【0044】
次に、図11は、他の実施形態の浮体の概略構成を示す断面図である。図11に示す浮体10gは、浮体本体12と、動揺低減装置14gと、を有する。動揺低減装置14gは、複数の低減ユニット20gを有する。低減ユニット20gは、板部22gと複数の接続部24とを有する。板部22gは、面積が最も大きい面が、浮体本体12の底面に対して、所定角度傾斜している第1板部70と、第1板部70の鉛直方向下側の端部に連結され、面積が最も大きい面が、浮体本体12の底面に対して直交する第2板部72と、を有する。つまり、板部22gは、角度の異なる2枚の板が連結している。また、第1板部70は、長手方向に直交する断面において、浮体本体12(浮体本体12の中心)から離れるに従って鉛直方向下側に向かう方向に傾いている。また、板部22gは、一部が浮体本体12と重なり、一部が浮体本体12と重なっていない。この点は、板部22と同様である。
【0045】
動揺低減装置14gは、板部22gとして、浮体本体12の底面に対して傾斜した第1板部70と、第2板部70の鉛直方向下側の端部に鉛直方向に伸びた第2板部72を設けることでも、板部22と同様の水流を形成することができる。さらに、板部22gは、第1板部70を、浮体本体12から離れるに従って鉛直方向下側に向かう方向に傾けることで、押し波時に板部22gと浮体本体12との間に流入する水流をより多くすることができ、引き波時に、板部22gと浮体本体12との間に流入する水流の抵抗をより大きくすることができる。これにより、浮体本体12の動揺を低減することができる。さらに第2板部72により、引き波時に、板部22gと浮体本体12との間に流入する水流の抵抗をより大きくすることができる。また、板部22gは、第1板部70と第2板部72とを組み合わせることで、板部22aの場合よりも大きさを小さくすることができる。
【0046】
図12は、他の実施形態の浮体の概略構成を示す断面図である。図12に示す浮体10hは、浮体本体12と、動揺低減装置14hと、を有する。動揺低減装置14hは、複数の低減ユニット20hを有する。低減ユニット20hは、板部22hと複数の接続部24とを有する。低減ユニット20hは、低減ユニット20aを浮体本体12の中心側に移動させ、板部22hが全て浮体本体12と重なっている以外は低減ユニット20aと同様の構造である。
【0047】
動揺低減装置14hは、板部22hが全て浮体本体12と重なる配置としても、板部22hを浮体本体12の底面に対して傾斜させ、板部22と同様の水流を形成することができる。さらに、動揺低減装置14hは、板部22hを、浮体本体12から離れるに従って鉛直方向下側に向かう方向に傾けることで、押し波時に板部22hと浮体本体12との間に流入する水流をより多くすることができ、引き波時に、板部22hと浮体本体12との間に流入する水流の抵抗をより大きくすることができる。これにより、浮体本体12の動揺を低減することができる。また、動揺低減装置14hは、板部22hが全て浮体本体12と重なる配置とすることで、船舶(船体)や浮体等の浮遊物80を浮体本体12に接舷することが可能となる。
【0048】
なお、動揺低減装置は、不可逆流路を形成できればよく、上記実施形態のように、板部が全て浮体本体12と重なる配置としてもよいが、板部の一部が浮体本体12と重なり、一部が浮体本体12と重なっていない配置とすることで、動揺の低減効果をより大きくすることができる。
【0049】
次に、図13は、他の実施形態の浮体の概略構成を示す断面図である。図13に示す浮体10iは、浮体本体12と、動揺低減装置14iと、を有する。動揺低減装置14iは、複数の低減ユニット20iを有する。低減ユニット20iは、板部22iと複数の接続部24とを有する。板部22iは、面積が最も大きい面が、浮体本体12の底面に対して直交する第1板部90と、面積が最も大きい面が、浮体本体12の底面に対して平行な第2板部92と、を有する。板部22iは、角度の異なる2枚の板が連結している。板部22iは、第1板部90と第2板部92の連結部が接続部24と連結している。第1板部90は、延鉛直方向上側の端部が接続部24に接続されている。第2板部92は、浮体本体12の中心側の端部が接続部24と接続されている。また、板部22iは、一部が浮体本体12と重なり、一部が浮体本体12と重なっていない。この点は、板部22と同様である。本実施形態では、第1板部90は、全てが浮体本体12と重なっている。第2板部92は、一部が浮体本体12と重なり、一部が浮体本体12と重なっていない。
【0050】
動揺低減装置14iは、板部22iとして、浮体本体12の底面に対して直交する第1板部90と、浮体本体12の底面に対して平行な第2板部92を設けることでも、板部22と同様の水流を形成することができる。さらに第1板部90より、引き波時に、板部22iと浮体本体12との間に流入する水流の抵抗をより大きくすることができる。
【0051】
次に、図14は、他の実施形態の浮体の概略構成を示す断面図である。図14に示す浮体10jは、浮体本体12と、動揺低減装置14jと、を有する。動揺低減装置14jは、複数の低減ユニット20jを有する。低減ユニット20jは、板部22jと複数の接続部24とを有する。板部22jは、面積が最も大きい面が、浮体本体12の底面に直交する第1板部94と、第1板部94の鉛直方向下側の端部に連結され、面積が最も大きい面が、浮体本体12の底面に対して平行な第2板部96と、を有する。つまり、板部22jは、角度の異なる2枚の板が連結している。また、第2板部96は、浮体本体12の中心側の端部が第1板部94と接続されている。また、第1板部94は、長手方向に直交する断面において、浮体本体12(浮体本体12の中心)から離れるに従って鉛直方向下側に向かう方向に傾いている。より具体的には、第1板部94は、浮体本体12の底面に直交する向きに延びている。また、板部22jは、一部が浮体本体12と重なり、一部が浮体本体12と重なっていない。この点は、板部22と同様である。本実施形態では、第1板部94は、全てが浮体本体12と重なっている。第2板部96は、一部が浮体本体12と重なり、一部が浮体本体12と重なっていない。
【0052】
動揺低減装置14jは、板部22jとして、浮体本体12の底面に対して直交する第1板部94と、浮体本体12の底面に対して平行な第2板部96を設けることでも、板部22と同様の水流を形成することができる。さらに第1板部94より、引き波時に、板部22jと浮体本体12との間に流入する水流の抵抗をより大きくすることができる。
【0053】
このように、板部は、不可逆流路が形成できればよく、浮体本体12の底面に対して種々の角度の板状部材を組み合わせることができる。また、角度が異なる複数の板部を組み合わせることもできる。
【0054】
次に、図15は、他の実施形態の浮体の概略構成を示す断面図である。図16は、図15の動揺低減装置の動作を説明するための断面図である。上記実施形態では、いずれの動揺低減装置も板部と板部を浮体本体に接続する接続部とを有する構造としたがこれにも限定されない。図15に示す浮体10kは、浮体本体12と、動揺低減装置14kと、を有する。動揺低減装置14kは、複数の低減ユニット20kを有する。低減ユニット20kは、流路101と回動部102、104と、を有する。流路101は、浮体本体12の側面と浮体本体12の底面とに開口が形成され、浮体本体12の側面と浮体本体12の底面とをつなげている。流路101は、浮体本体12の側面から浮体本体12の底面に向かうにしたがって流路面積が狭くなっている。
【0055】
回動部102は、流路101の浮体本体12の側面の開口の近傍に設けられている。回動部102は、開口の鉛直方向下側を基点として、板状の部材を回動させる。回動部102は、板状の部材を水平方向に配置することで、流路101を開放し、板状の部材を垂直方向に配置することで、流路101を塞ぐ。
【0056】
回動部104は、流路101の浮体本体12の底面の開口の近傍に設けられている。回動部104は、開口の浮体本体12の端部近傍側を基点として、板状の部材を回動させる。回動部104は、板状の部材を水平方向に配置することで、流路101を塞ぎ、板状の部材を垂直方向に配置することで、流路101を開放する。
【0057】
動揺低減装置14kは、流路101が、押し波時に水流が通りやすく、引き波時に水流が通りにくい不可逆流路となる。このように、浮体本体12に流路を形成することでも、動揺低減装置14と同様の水流を形成することができる。また、流路101は、浮体本体12の側面から浮体本体12の底面に向かうにしたがって流路面積を狭くすることで、押し波時に流れる水流をより速くし、引き波時に水流がより流れにくくなる。これにより、動揺をより低減することができる。
【0058】
また、動揺低減装置14kは、回動部102、104の板状の部材が水流を誘導するフィンとなる。さらに、動揺低減装置14kは、回動部102、104によって、流路101を開閉することができる。これにより、浮体10kは、動揺の低減が不要な場合、例えば、浮体10kを目的地に設置するために移動(航行)させる場合には、回動部102、104で流路101を塞ぐことで、移動時の抵抗を低減することができる。
【0059】
図17は、他の実施形態の浮体の概略構成を示す断面図である。図18は、図17の浮体の動揺低減装置を拡大して示す拡大図である。図17及び図18に示す浮体110は、浮体本体12と、動揺低減装置114と、を有する。動揺低減装置114は、低減ユニット120を有する。低減ユニット120は、浮体本体12の底面の1つの辺に配置されている。
【0060】
低減ユニット120は、板部122と複数の接続部124とを有する。板部122は、上記実施形態と同様に、配置されている浮体本体12の辺(外縁)の方向が長手方向となる板である。板部122は、鉛直方向上側の端部が接続部124に接続されている。接続部124は、配置されている浮体本体12の辺(外縁)の方向に間隔を置いて複数配置されている。接続部124は、板部122と浮体本体12とに固定され、板部122を浮体本体12に固定している。
【0061】
板部122は、角度の異なる2枚の板が連結している。具体的には、板部122は、鉛直方向上側の端部が接続部124と接続する第1板部130と、第1板部130の鉛直方向下側の端部に連結される第2板部132と、を有する。本実施形態の第1板部130は、面積が最も大きい面が、浮体本体12の底面に対して、所定角度傾斜している。第2板部132は、面積が最も大きい面が、浮体本体12の底面に対して直交する。また、第1板部130は、長手方向に直交する断面において、浮体本体12(浮体本体12の中心)から離れるに従って鉛直方向下側に向かう方向に傾いている。また、板部122は、一部が浮体本体12と重なり、一部が浮体本体12と重なっていない。
【0062】
動揺低減装置114は、板部122として、浮体本体12の底面に対して傾斜した第1板部130と、第1板部130の鉛直方向下側の端部に鉛直方向に伸びた第2板部132を設けることでも、板部122と同様の水流を形成することができる。また、動揺低減装置114は、動揺低減装置14gと同様の効果を得ることができる。
【0063】
動揺低減装置114は、浮体本体12に設定されている喫水線から浮体本体12の鉛直方向下側の端(つまり底面)までの距離である浮体本体12の喫水をdとし、配置されている浮体本体12の辺(外縁)の方向に直交する面における最も大きい面の長さである、板部122の接続部124と接続している部分の面積が最も大きい面の幅をbとした場合、0.05≦b/d≦0.5であることが好ましい。ここで、板部122の接続部124と接続している部分の面積が最も大きい面の幅は、動揺低減装置114のように角度が異なる第1板部130と第2板部132を有する場合、第1板部130の幅である。また、動揺低減装置114は、垂直方向における浮体本体12と板部122との距離をsとした場合、0.01≦s/d≦0.2であることが好ましい。
【0064】
幅bと距離sと喫水dとの関係を上記範囲とすることで、浮体本体12と板部122との間で水が通過する範囲を適切な大きさにすることができ、板部122の周囲を通過する水流を所望の水流にするに形成することができる。これにより、浮体本体12の底面の領域での水流を好適に形成することができ、押し波時に浮体本体の底面上を流れる水流をより速くし、引き波時には浮体本体の底面上を流れる水流がより流れにくくなり、動揺をより低減することができる。
【0065】
また、動揺低減装置114は、板部122の接続部124と接続している部分である第1板部130の面積が最も大きい面と垂直方向とのなす角θを0°以上90°以下とすることが好ましい。ここで、本実施形態では、第1板部130を水平方向に対して傾斜させたが、第1板部130を水平方向(θ=90°)としてもよい。また、第1板部130を鉛直方向(θ=0°)としてもよい。
【0066】
角度θを0°以上90°以下とすることで、板部122と浮体本体12の間を通過する水流を所望の水流にすることができる。つまり、浮体本体12の底面の領域での水流を好適に形成することができ、押し波時に浮体本体の底面上を流れる水流をより速くし、引き波時には浮体本体の底面上を流れる水流がより流れにくくなる。これにより、動揺をより低減することができる。
【0067】
また、動揺低減装置114は、水平方向における浮体本体12の端面と板部122の鉛直方向上側の端部との距離をx0とした場合、0≦x0≦b×sinθであることが好ましい。つまり、本実施形態では、x0を0より大きくし、鉛直方向から見た場合、板部122は、浮体本体12と一部が重なり、一部が重ならない配置としたが、x0を0とし、鉛直方向から見た場合、板部122が浮体本体12と接する配置としてもよい。
【0068】
板部122を浮体本体12に対して上記範囲で配置することで、板部122と浮体本体12の間を通過する水流を所望の水流にすることができる。つまり、浮体本体12の底面の領域での水流を好適に形成することができ、押し波時に浮体本体12の底面上(浮体本体12の底面と板部122との間うち浮体本体12の底面付近)を流れる水流をより速くし、引き波時には浮体本体12の底面上を流れる水流がより流れにくくなる。これにより、動揺をより低減することができる。
【0069】
また、動揺低減装置114は、第2板部132の最も大きい面の鉛直方向の長さ(高さ)をhとした場合、0<h/b≦1であることが好ましい。第2板部132を上記範囲の大きさとすることで、板部122と浮体本体12の間を通過する水流を所望の水流にすることができる。つまり、浮体本体12の底面の領域での水流を好適に形成することができ、押し波時に浮体本体の底面上を流れる水流をより速くし、引き波時には浮体本体の底面上を流れる水流がより流れにくくなる。これにより、動揺をより低減することができる。
【0070】
なお、動揺低減装置114は、板部122が第2板部132を有する形状としたが、上述した実施形態のように板部122が第2板部132を有さない、つまり、h=0となる形状としてもよい。この場合も板部122と浮体本体12の間を通過する水流を所望の水流にすることができる。つまり、浮体本体12の底面の領域での水流を好適に形成することができ、押し波時に浮体本体の底面上を流れる水流をより速くし、引き波時には浮体本体の底面上を流れる水流がより流れにくくなる。これにより、動揺をより低減することができる。このように、幅bと長さhとの関係は、0≦h/b≦1が好ましい。
【0071】
本実施形態の動揺低減装置114は、低減ユニット120を1つ備える場合として説明するが、上記実施形態のように複数備えていてもよい。ここで、図19は、他の実施形態の浮体の概略構成を示す断面図である。図19に示す浮体160は、浮体本体112と搖動低減装置162とを有する。動揺低減装置162は、浮体本体112の底面(外縁)の対向する2つの辺のそれぞれに低減ユニット120を配置している。浮体160のように、浮体本体112の外縁の対向する2つの辺のそれぞれに低減ユニット120を配置してもよい。
【0072】
次に、図20から図22を用いて、動揺低減装置の計測結果の一例について説明する。図20及び図21は、それぞれ動揺低減装置の一例を示す断面図である。図22は、計測結果の一例を示す断面図である。本計測では、本実施形態の動揺低減装置を有する実施例1、実施例2について、計測を行った。また、比較のために、動揺低減装置を備えない、つまり浮体本体のみを備える場合についても計測を行った。
【0073】
実施例1は、図20に示す浮体110aで計測を行った。図20に示す浮体110aは、動揺低減装置114aを有する。動揺低減装置114aは、低減ユニット120aを有する。低減ユニット120aは、板部122aと複数の接続部124とを有する。板部122aは、第1板部130aと第2板部132aとを有する。板部122aは、上述する距離x0が0であり、角度θが90°未満となる。つまり、第1板部130aは、水平方向(浮体本体12の底面)に対して傾斜している。また、動揺低減装置114aは、上述した好ましい範囲の、0.05≦b/d≦0.5、0.01≦s/d≦0.2、0°≦θ≦90°、0≦x0≦b×sinθ、0≦h/b≦1の全てを満たしている。接続部124aは、配置されている浮体本体12の辺(外縁)の方向に間隔を置いて複数配置されている。接続部124aは、板部122aと浮体本体12とに固定され、板部122aを浮体本体12に固定している。
【0074】
実施例2は、図21に示す浮体110bで計測を行った。図21に示す浮体110bは、動揺低減装置114bを有する。動揺低減装置114bは、低減ユニット120bを有する。低減ユニット120bは、板部122bと複数の接続部124とを有する。板部122bは、1枚の板で形成されている。つまり、第2板部を備えない。板部122bは、上述する距離x0が0より大きく、角度θが90°未満となる。また、長さhが0となる。上記形状の動揺低減装置114bは、上述した好ましい範囲の、0.05≦b/d≦0.5、0.01≦s/d≦0.2、0°≦θ≦90°、0≦x0≦b×sinθ、0≦h/b≦1の全てを満たしている。接続部124bは、配置されている浮体本体12の辺(外縁)の方向に間隔を置いて複数配置されている。接続部124bは、板部122bと浮体本体12とに固定され、板部122bを浮体本体12に固定している。
【0075】
このような、実施例1、2及び比較例の浮体を、水面に浮かべ、波を発生させた場合に浮体本体に生じる傾斜(ロール角)の振幅を計測した。計測結果を図22に示す。図22は、規則波試験の結果であり、浮体ロール角が大きくなる波周期でのデバイス有無による振幅の違いを示している。図22に示すように、実施例1、2の浮体は、浮体の動揺を低減出来ていることがわかる。
【符号の説明】
【0076】
10 浮体
12 浮体本体
14 動揺低減装置
20 低減ユニット
22 板部
24 接続部
W 水面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22