(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、電磁放射によって環境を照らす方法を提供することである。この目的は、請求項1の特徴を有する方法によって達成される。本発明の別の目的は、照明装置を提供することである。この目的は、請求項4の特徴を有する照明装置によって達成される。本発明の別の目的は、照明装置を有するカメラを提供することである。この目的は、請求項8の特徴を有するカメラによって達成される。従属請求項には、さまざまな修正形態が記載されている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
電磁放射によって環境を照らす方法においては、周囲光の相関色温度を求める。この場合、前記電磁放射のスペクトルパワーは、以下のように、すなわち、380nmから780nmまでの波長間隔にわたるスペクトルパワーの積分が公称値を有し、420nmから460nmまでの波長間隔にわたるスペクトルパワーの積分が第1の値を有し、510nmから550nmまでの波長間隔にわたるスペクトルパワーの積分が第2の値を有し、580nmから620nmまでの波長間隔にわたるスペクトルパワーの積分が第3の値を有し、公称値に対する第1の値の比が、−4.13×10
−2と、+1.96×10
−5/Kと相関色温度の積との和と、+5.63×10
−2と、+3.91×10
−5/Kと相関色温度の積との和、の間であり、公称値に対する第2の値の比が、+7.66×10
−2と、+7.55×10
−6/Kと相関色温度の積との和と、+2.08×10
−1と、+9.87×10
−6/Kと相関色温度の積との和、の間であり、公称値に対する第3の値の比が、+1.40×10
−1と、−5.77×10
−6/Kと相関色温度の積との和と、+3.45×10
−1と、−2.06×10
−5/Kと相関色温度の積との和、の間であるように、選択される。この方法においては、照らされる環境の写真記録によって再現される色と、観察者がその環境を直接観察するときに知覚する色とが類似するようにスペクトルパワーが分布する電磁放射によって環境が照らされ、これは有利である。この場合、環境を照らすために使用される電磁放射のスペクトルパワーの分布は、特に、カメラのカラーフィルタと、カメラによって実行されるホワイトバランシングとに起因する色再現の歪みが補正されるような分布となるようにする。したがって、本方法によって照らされる環境の写真記録は、良好な色再現を有することができ、これは有利である。
【0005】
本方法の一実施形態においては、前記電磁放射のスペクトルパワーが、以下のように、すなわち、公称値に対する第1の値の比が、−2.13×10
−2と、+1.96×10
−5/Kと相関色温度の積との和と、+1.63×10
−2と、+3.91×10
−5/Kと相関色温度との積との和、の間であり、公称値に対する第2の値の比が、+9.66×10
−2と、+7.55×10
−6/Kと相関色温度の積との和と、+1.78×10
−1と、+9.87×10
−6/Kと相関色温度の積との和、の間であり、公称値に対する第3の値の比が、+1.52×10
−1と、−5.77×10
−6/Kと相関色温度の積との和と、+3.19×10
−1と、−2.06×10
−5/Kと相関色温度の積との和、の間であるように、選択される。この場合、環境を照らすために使用される電磁放射は、特に最適化されたスペクトルパワー分布を有し、したがって、環境の写真記録は、さらに改善された色再現を有することができ、これは有利である。
【0006】
本方法の一実施形態においては、前記電磁放射のスペクトルパワーが、以下のように、すなわち、公称値に対する第1の値の比が、−1.30×10
−3と、+1.96×10
−5/Kと相関色温度の積との和と、−2.37×10
−2と、+3.91×10
−5/Kと相関色温度の積との和、の間であり、公称値に対する第2の値の比が、+1.17×10
−1と、+7.55×10
−6/Kと相関色温度の積との和と、+1.48×10
−1と、+9.87×10
−6/Kと相関色温度の積との和、の間であり、公称値に対する第3の値の比が、+1.64×10
−1と、−5.77×10
−6/Kと相関色温度の積との和と、+2.93×10
−1と、−2.06×10
−5/Kと相関色温度の積との和、の間であるように、選択される。この場合、環境を照らすために使用される電磁放射は、さらに大幅に最適化されたスペクトルパワー分布を有し、したがって、環境の写真記録は、さらに改善された色再現を有することができ、これは有利である。
【0007】
照明装置は、上述したタイプの方法を実行するように構成されている。したがって、本照明装置は、カメラによって写真で記録されるように意図される環境を照らすのに適しており、これは有利である。この場合、本照明装置は、環境の写真記録において環境の色が高い色忠実度で再現されるように、環境を照らすことができる。この場合、本照明装置は、写真用カメラに起因する色歪み、特に、カメラのカラーフィルタに起因する色歪みが補正されるように、環境を照らすことができる。
【0008】
本照明装置の一実施形態においては、本照明装置は発光ダイオードを備えている。したがって、本照明装置は、コンパクトかつ経済的に構成することができ、これは有利である。さらに、本照明装置は、低いエネルギ必要量のみを有する。
【0009】
本照明装置の一実施形態においては、本照明装置は、少なくとも2つの発光ダイオードを備えている。少なくとも2つの発光ダイオードによって放出される、本照明装置の電磁放射を混合させて、これらの電磁放射の重ね合わせが好ましいスペクトルパワー分布を有するようにすることができ、これは有利である。
【0010】
本照明装置の一実施形態においては、本照明装置は、周囲光を検出するセンサを備えている。周囲光を検出するセンサにより、本照明装置によって環境を照らすときに、周囲光の相関色温度を考慮することが可能になり、これは有利である。
【0011】
カメラは、上述したタイプの照明装置を有する。本カメラによって記録されるシーンを、照明装置を使用して照らすことができ、したがって、シーンの写真記録における信号対雑音比が改善され、これは有利である。さらには、照明装置によってシーンを照らすことにより、本カメラによって記録される、シーンの記録の色再現を改善することができる。
【0012】
本カメラの一実施形態においては、照明装置がフラッシュ装置として構成されている。したがって、照明装置により、カメラによって環境の写真記録が行われるときにカメラの環境を照らすことが可能になり、これは有利である。
【0013】
本カメラの一実施形態においては、本カメラはデジタル撮像素子を備えている。したがって、本カメラにより、デジタル写真記録を作成することが可能になり、これは有利である。
【0014】
本カメラの一実施形態においては、本カメラは、携帯電話として構成されている。この場合、本カメラは、カメラの実用性が高まるように複数の機能を有することが有利である。
【0015】
以下では、例示的な実施形態について図面を参照しながらさらに詳しく説明する。本発明の上述した特性、特徴、および利点と、これらを達成する方法は、以下の説明からさらに明確になり、完全に理解することができるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、シーンの写真記録を行うときに生じうる色差を説明するための概略図を示している。
【0018】
人の観察者130がシーン100を観察する。シーン100は、例えば、建物の中または屋外に位置している。シーン100は、物体、景色、さらには、例えば1つまたは複数の定義された試験色を有するカラーチャートを含むことができる。
【0019】
シーン100は、周囲光110によって照らされている。シーン100が屋外に位置している場合、周囲光110は、例えば昼光、例えば晴れた空における明るい日光、雲に覆われた空の光、または夕暮れ時の光である。シーン100が閉ざされた空間内に位置している場合、周囲光110は、例えば、白熱電球の光、ハロゲンランプの光、蛍光灯の光、または放電灯の光である。いま挙げたすべての例において、周囲光110は、それぞれ異なるスペクトル組成を有する。周囲光110は、周囲光110の相関色温度を指定することによっておよそ特徴付けることができる。
【0020】
観察者130がシーン100を観察すると、観察者130の第1の印象131につながる。第1の印象131は、シーン100に含まれている色を観察者130がどのように知覚しているかを示す。観察者130の色の知覚は、シーン100から観察者130に反射される光のスペクトル組成、すなわち、観察者130の網膜に当たる光子の物理的波長に依存する。しかしながら、これに加えて、観察者130の第1の印象131は、生理的要素によっても決まる。観察者の色受容体は、ある波長範囲内の色を、別の波長範囲内の色よりも良好に認識することができる。さらに、観察者130の目は、シーン100を照らしている周囲光110の色温度に順応する。
【0021】
カラーアピアランスモデル(color appearance model)(例えばCIECAM02モデル)を使用することによって、観察者130において生じるシーン100の第1の印象131を、計算的にモデル化することができる。カラーアピアランスモデルによって、観察者130において生じる第1の印象131を、周囲光110のスペクトル組成の情報と、シーン100に含まれている色(例えば定義された試験色)の反射特性の情報とから、計算的に求めることが可能になる。
【0022】
図1は、さらに、シーン100の写真画像を作成および観察するときのプロセスの概略図を示している。シーン100を、カメラ140によって撮影する。カメラ140は、例えば、デジタルカメラとすることができる。この場合、カメラ140のカメラセンサ(撮像素子)の前にカラーフィルタ141が配置されており、カラーフィルタ141は、カメラ140のカメラチップに当たるシーン100からの光をフィルタリングする。さらに、カメラ140はホワイトバランシング142を実行し、ホワイトバランシングによって、カメラ140は周囲光110のさまざまな色温度を補正することを試みる。カメラ140のカラーフィルタ141およびホワイトバランシング142のいずれも、カメラ140によって写真で記録されるシーン100の色の歪みにつながる。
【0023】
観察者130は、カメラ140によって記録されたシーン100の写真画像をモニター150によって観察することができる。モニター150によっても、色歪みが引き起こされうる。しかしながら、以下の説明においては、さらなる色歪みを発生させることのない理想的なモニター150を想定する。
【0024】
シーン100の画像をモニター150で観察するとき、観察者130の目は、その時点において支配的な周囲光に順応する。カメラ140によって記録されたシーン100の画像を観察すると、観察者130の第2の印象132につながる。第2の印象132は、シーン100の画像に含まれている色を観察者130がどのように知覚しているかを示す。上述した色歪みの理由で、第2の印象132は、一般的に第1の印象131に一致しない。シーン100を直接的に観察する場合と比較して、モニター150上に表示されるシーン100の画像は、観察者130からは偽の色再現を伴って見える。
【0025】
周囲光110のスペクトル組成と、シーン100に含まれる色の反射特性とに加えて、カラーフィルタ141の物理特性と、カメラ140によって実行されるホワイトバランシング142の特性も(例えば測定から)既知である場合、シーン100の画像を観察するときに観察者130において生じる第2の印象132を、カラーアピアランスモデルを使用することによってモデル化することができる。上に挙げた影響するパラメータを考慮に入れることにより、カラーアピアランスモデルによって、シーン100に含まれる色の画像を観察するときに観察者130において生じる色の知覚を計算的に求めることができる。したがって、このような色知覚モデルによって、(シーンを直接観察するときに観察者130が受ける)第1の印象131と、(シーン100の写真画像を観察するときに観察者130が受ける)第2の印象132との間の差を定量化することも可能になる。
【0026】
シーン100の記録を行うときに周囲光110による照明に加えてフラッシュライト120によってシーン100を照らす目的で、カメラ140はフラッシュ装置を備えることができる。シーン100からカメラ140に反射される光のスペクトル組成は、フラッシュライト120のスペクトル組成に依存して変化する。したがって、シーン100の画像に含まれている、モニター150上に表示される色も変化し、したがって、観察者130の第2の印象132も、フラッシュライト120のスペクトル組成に依存して変化する。フラッシュライト120のスペクトル組成は、結果として生じる第2の印象132と第1の印象131との差が最小限であるように選択することができる。
【0027】
組織的な研究として、フラッシュライト120の最適なスペクトル組成を求める目的で、異なるスペクトル組成を有する複数のフラッシュライト120を、互いに比較することができる。複数の定義された試験色(例えば84色の定義された試験色)の各スペクトルについて、説明したモデルを利用して、(直接観察するときに観察者130において生じる)試験色の第1の印象131と、(写真記録を観察するときに生じる)試験色の第2の印象132とを計算することができる。すべての試験色の第1の印象131と第2の印象132との間の色距離(color distance)を合計することができる。色距離の合計は、それぞれのスペクトルを有するフラッシュライト120を使用するときに生じる色差の測度を表す。
【0028】
フラッシュライト120の評価対象のスペクトル組成の適合性を評価するための別の基準は、カメラ140によって実行されるホワイトバランシング142に関連する。カメラ140によって実行されるホワイトバランシング142が有する行列要素が残りの行列要素よりも大きい場合、カメラ140のカメラセンサの雑音信号が大きく増幅され、したがって、カメラ140によって行われる記録の品質が低下する。フラッシュライト120のスペクトルは、カメラ140によって実行されるホワイトバランシング142において過度に大きな行列要素が生じないように選択するべきである。
【0029】
フラッシュライト120のスペクトル組成の適合性を評価するための上述した基準から、評価関数(メリット値)を形成することができる。この評価関数は、ホワイトバランシング142の最大行列要素と、第1の印象131と第2の印象132との間の(すべての試験色にわたり合計された)色距離の0.01倍との和として定義することができる。フラッシュライト120の好ましいスペクトルの場合、この評価関数は小さい値を有する。周囲光110のさまざまな相関色温度の場合においてフラッシュライト120の複数の異なるスペクトルを比較することによって、周囲光110の相関色温度それぞれの場合の、フラッシュライト120の好ましいスペクトルを識別することができる。
【0030】
図2は、例示的なスペクトル
図400を示しており、この図は、3200Kの相関色温度を有する周囲光110の場合に好ましいことが判明したフラッシュライト120のスペクトルを表している。このスペクトル
図400の横軸には、波長401(単位:nm)がプロットされている。スペクトル
図400の縦軸には、スペクトルパワー402(単位:10
−6W/nm)がプロットされている。複数のスペクトル210を示してある。これらのスペクトル210は、他のスペクトルと比較して、好ましいスペクトル211である(すなわち上に定義した評価関数の値が小さい)ことが判明した。
【0031】
同様にして、周囲光110の他の相関色温度の場合に好ましいスペクトル211を見つけることができる。好ましいスペクトル211は、それぞれ共通の特徴的な特性を有することが判明した。好ましいスペクトル211の特徴的な特性は、以下に説明するように、さまざまな方法で表現することができる。
【0032】
好ましいスペクトル211は、カメラ140のカラーフィルタ141のRGBフィルタ空間(RGB filter space)において特徴付けることができる。これを目的として、評価対象のスペクトル組成を有する光がカメラ140に直接送られるときに得られるR信号、G信号、およびB信号を求める。
図3は、3200Kの相関色温度を有する周囲光110の場合において得られた、例示的なRGBフィルタ空間
図200(RGB filter space diagram)を示している。このRGBフィルタ空間
図200の横軸には、結果としてのRGB信号の赤色成分201(単位:R/(R+G+B))がプロットされている。RGBフィルタ空間
図200の縦軸には、結果としてのRGB信号の青色成分202(単位:B/(R+G+B))がプロットされている。フラッシュライト120の評価対象のスペクトル210それぞれは、RGBフィルタ空間
図200における点を形成している。この例示的なRGBフィルタ空間
図200において、評価関数の値が小さい好ましいスペクトル211は、評価関数の値が大きい好ましくないスペクトル213よりも、縦軸の値が小さい位置において群をなしている。
【0033】
周囲光110の他の相関色温度の場合にも、好ましいスペクトル211について対応する図を作成することができる。全体として、周囲光110の相関色温度が2800K、3200K、4500K、5500K、6500K、および8500Kである場合、好ましいスペクトル211の赤色成分201および青色成分202は、以下の範囲内に入ることが判明した。
【0034】
【表1】
さらに、フラッシュライト120の好ましいスペクトル211は、さまざまな波長範囲における周囲光110のスペクトル成分に対する、さまざまな波長範囲における好ましいスペクトル211のスペクトル成分の観点から特徴付けることもできる。これを目的として、以下の量を定義することができる。
【0037】
【数3】
上の式において、s
flash(λ)は、波長λに依存するフラッシュライト120のスペクトルパワーであり、s
ambient(λ)は、波長に依存する周囲光110のスペクトルパワーである。
【0038】
図4は、周囲光110に関連する例示的な第1のスペクトル
図300を示している。この第1のスペクトル
図300は、3200Kの相関色温度を有する周囲光110に適用される。第1のスペクトル
図300の横軸には、評価301(すなわち上に定義した評価関数の値)がプロットされている。第1のスペクトル
図300の縦軸には、値(F
1U
tot)/(F
totU
1)として定義される第1の相対スペクトルパワー302がプロットされている。評価対象のスペクトル210それぞれは、第1のスペクトル
図300において点によって表されている。評価関数の値が小さい好ましいスペクトル211は、第1のスペクトル
図300において左側に位置している。評価関数の値が大きい好ましくないスペクトル213は、第1のスペクトル
図300において右側に位置している。好ましいスペクトル211と好ましくないスペクトル213との間には、評価関数の値が中間的である中程度のスペクトル212が存在している。好ましいスペクトル211の場合、第1の相対スペクトルパワー302は、特徴的な区間内に位置している。
【0039】
図5は、周囲光110に関連する例示的な第2のスペクトル
図310を示している。この第2のスペクトル図も、3200Kの相関色温度を有する周囲光110に適用される。周囲光110に関連する第2のスペクトル
図310の横軸には、評価301(すなわち評価関数の値)がプロットされている。第2のスペクトル
図310の縦軸には、式(F
2U
tot)/(F
totU
2)によって定義される第2の相対スペクトルパワー303がプロットされている。評価対象のスペクトル210それぞれは、第2のスペクトル
図310において点によって表されている。好ましいスペクトル211は、第2のスペクトル
図310の左側領域に位置している。好ましくないスペクトル213は、第2のスペクトル
図310の右側部分における点によって表されている。好ましいスペクトル211と好ましくないスペクトル213との間には、中程度のスペクトル212が存在している。好ましいスペクトル211の場合、第2の相対スペクトルパワー303は、特徴的な区間内に位置している。
【0040】
図6は、周囲光110に関連する例示的な第3のスペクトル
図320を示している。この第3のスペクトル
図320は、3200Kの相関色温度を有する周囲光に関連する。第3のスペクトル
図320の横軸には、評価301がプロットされている。第3のスペクトル
図320の縦軸には、式(F
3U
tot)/(F
totU
3)によって定義される第3の相対スペクトルパワー304がプロットされている。好ましいスペクトル211は、第3のスペクトル
図320の左側領域における点によって表されている。中程度のスペクトル212は、第3のスペクトル
図320の中央領域における点として表されている。評価関数の値が高い好ましくないスペクトル213は、第3のスペクトル
図320の右側領域における点によって表されている。好ましいスペクトル211の場合、第3の相対スペクトルパワー304は、特徴的な区間内に位置している。
【0041】
3200K以外の相関色温度を有する周囲光110についても、
図4〜
図6のスペクトル
図300,310,320に類似するスペクトル図を作成することができる。これらのスペクトル図から、好ましいスペクトル211の一般的な特性を読み取ることができる。評価関数の値が小さい好ましいスペクトル211の特性は、次のように要約することができる。
【0042】
【表2】
上の表から、例えば、周囲光110が4500Kの相関色温度を有するときのフラッシュライト120の好ましいスペクトル211の場合、第2の相対スペクトルパワー303(F
2U
tot)/(F
totU
2)は1.4〜2の間であるべきことを推論することができる。
【0043】
フラッシュライト120の好ましいスペクトル211の特徴付けは、それぞれのスペクトル全体のうち限られた波長間隔内のスペクトル成分の観点から行うことも可能である。
【0044】
図7は、それぞれのスペクトル全体に関連する第1のスペクトル
図330を一例として示している。スペクトル全体に関連する第1のスペクトル
図330は、3200Kの相関色温度を有する周囲光110に適用される。スペクトル全体に関連する第1のスペクトル
図330の横軸には、この場合も、それぞれのスペクトル210の評価301がプロットされている。それぞれのスペクトル全体に関連する第1のスペクトル
図330の縦軸には、第1の部分スペクトルパワー305(first fractional spectral power)がプロットされている。第1の部分スペクトルパワー305は、式F
1/F
totによって定義される。評価対象のスペクトル210それぞれは、スペクトル全体に関連する第1のスペクトル
図330において点によって表されている。好ましいスペクトル211は、
図330の左側領域に位置している。中程度のスペクトル212は、
図330の中央領域に表されている。好ましくないスペクトル213は、スペクトル全体に関連する第1のスペクトル
図330の右側領域における点によって表されている。好ましいスペクトル211の場合、第1の部分スペクトルパワー305は、特徴的な区間内に位置している。
【0045】
図8は、それぞれのスペクトル全体に関連する例示的な第2のスペクトル
図340を示している。それぞれのスペクトル全体に関連する第2のスペクトル
図340も、3200Kの相関色温度を有する周囲光110に適用される。横軸には、この場合も、評価301がプロットされている。縦軸には、式F
2/F
totによって定義される第2の部分スペクトルパワー306がプロットされている。低い評価301(すなわち評価関数の小さい値)を有する好ましいスペクトル211は、スペクトル全体に関連する第2のスペクトル
図340の左側領域に表されている。中程度のスペクトル212は、スペクトル全体に関連する第2のスペクトル
図340の中央領域に位置している。好ましくないスペクトル213は、スペクトル全体に関連する第2のスペクトル
図340の右側領域に表されている。好ましいスペクトル211の場合、第2の部分スペクトルパワー306は、特徴的な区間内に位置している。
【0046】
図9は、それぞれのスペクトル全体に関連する例示的な第3のスペクトル
図350を示している。スペクトル全体に関連する第3のスペクトル
図350も、3200Kの相関色温度を有する周囲光110に適用される。横軸には、この場合も、評価対象のスペクトル210の評価301がプロットされている。縦軸には、式F
3/F
totによって定義される第3の部分スペクトルパワー307がプロットされている。評価関数の値が小さい好ましいスペクトル211は、
図350の左側領域に位置している。好ましくないスペクトル213は、
図350の右側領域に表されている。中程度のスペクトル212は、好ましいスペクトル211と好ましくないスペクトル213の間に位置している。好ましいスペクトル211の場合、第3の部分スペクトルパワー307は、特徴的な区間内に位置している。
【0047】
図7〜
図9におけるそれぞれのスペクトル全体に関連するスペクトル
図330,340,350からと、他の相関色温度を有する周囲光110の場合のそれぞれ類似する図から、評価関数の値が小さい好ましいスペクトル211の共通の特性を読み取ることができる。このようにして判明した、好ましいスペクトル211の共通の特性は、次の表におけるように、周囲光110のさまざまな相関色温度について要約することができる。
【0048】
【表3】
上の表から、例えば、6500Kの相関色温度を有する周囲光110の場合、好ましいスペクトル211を有するフラッシュライト120は、式F
2/F
totによって定義される、0.16〜0.23の間の第2の部分スペクトルパワー306を有するものと推論することができる。
【0049】
図10は、好ましいスペクトル211をさらに特徴付けるための概略的な第1の特性
図500を示している。この第1の特性
図500の横軸には、周囲光110の相関色温度501(単位:K)がプロットされている。第1の特性
図500の縦軸には、フラッシュライト120のスペクトル210の第1の部分スペクトルパワー305がプロットされている。
【0050】
第1の下限510は、周囲光110の相関色温度501のさまざまな値における、上の表に指定されている好ましいスペクトル211の第1の部分スペクトルパワー305の下限の値を表している。第1の上限511は、好ましいスペクトル211の第1の部分スペクトルパワー305の対応する最大値を表している。
【0051】
第1の区間下限520,530,540(first lower interval limit)は、相関色温度501に依存する、第1の下限510のプロファイルを直線近似している。第1の区間上限521,531,541(first upper interval limit)は、相関色温度501に依存する、第1の上限511のプロファイルを直線近似している。第1の区間下限520,530,540と第1の区間上限521,531,541との間の領域は、第1の下限510と第1の上限511の間の(場合によっては好ましいスペクトル211の)第1の部分スペクトルパワー305の値の範囲を、異なる精度で近似する。
【0052】
第1の広区間下限520(first broad lower interval limit)は、関数1.96×10
−5/K×T−4.13×10
−2によって定義される。この式において、Tは相関色温度501を表し、Kはケルビン単位を表す。第1の広区間上限521(first broad upper interval limit)は、関数3.91×10
−5/K×T+5.63×10
−2によって定義される。第1の中央区間下限530(first central lower interval limit)は、関数1.96×10
−5/K×T−2.13×10
−2によって定義される。第1の中央区間上限531(first central upper interval limit)は、関数3.91×10
−5/K×T+1.63×10
−2によって定義される。第1の狭区間下限540(first narrow lower interval limit)は、関数1.96×10
−5/K×T−1.30×10
−3によって定義される。第1の狭区間上限541(first narrow upper interval limit)は、関数3.91×10
−5/K×T−2.37×10
−2によって定義される。
【0053】
周囲光110のすべての相関色温度501の場合において、フラッシュライト120の好ましいスペクトルは、その第1の部分スペクトルパワー305が、第1の広区間下限520と第1の広区間上限521との間に位置するときに「好ましい」スペクトルと定義される。好ましくは、好ましいスペクトル211の第1の部分スペクトルパワー305は、第1の中央区間下限530と第1の中央区間上限531との間に位置する。特に好ましくは、好ましいスペクトル211の第1の部分スペクトルパワー305は、第1の狭区間下限540と第1の狭区間上限541との間に位置する。
【0054】
図11は、好ましいスペクトル211をさらに特徴付けるための第2の特性
図600を示している。この第2の特性
図600の横軸には、この場合も、周囲光110の相関色温度501がプロットされている。第2の特性
図600の縦軸には、第2の部分スペクトルパワー306がプロットされている。第2の下限610および第2の上限611は、さまざまな相関色温度501の場合において上の表に従って生じる、好ましいスペクトル211の第2の部分スペクトルパワー306の値が間に位置する限界を示している。
【0055】
第2の下限610は、第2の区間下限620,630,640によって直線近似される。第2の上限611は、第2の区間上限621,631,641によって直線近似される。第2の広区間下限620は、関数7.55×10
−6/K×T+7.66×10
−2によって定義される。第2の広区間上限621は、関数9.87×10
−6/K×T+2.08×10
−1によって定義される。第2の中央区間下限630は、関数7.55×10
−6/K×T+9.66×10
−2によって定義される。第2の中央区間上限631は、関数9.87×10
−6/K×T+1.78×10
−1によって定義される。第2の狭区間下限640は、関数7.55×10
−6/K×T+1.17×10
−1によって定義される。第2の狭区間上限641は、関数9.87×10
−6/K×T+1.48×10
−1によって定義される。
【0056】
周囲光110のすべての相関色温度501の場合において、フラッシュライト120の好ましいスペクトル211は、その第2の部分スペクトルパワー306が、第2の広区間下限620と第2の広区間上限621との間に位置するときに「好ましい」スペクトルと定義される。好ましくは、第2の部分スペクトルパワー306は、第2の中央区間下限630と第2の中央区間上限631との間に位置する。特に好ましくは、フラッシュライト120の好ましいスペクトル211の第2の部分スペクトルパワー306は、第2の狭区間下限640と第2の狭区間上限641との間に位置する。
【0057】
図12は、周囲光110のさまざまな相関色温度の場合におけるフラッシュライト120の適切なスペクトル211をさらに特徴付けるための概略的な第3の特性
図700を示している。この第3の特性
図700の横軸には、周囲光110の相関色温度501がプロットされている。第3の特性
図700の縦軸には、第3の部分スペクトルパワー307がプロットされている。第3の下限710および第3の上限711は、周囲光110のさまざまな相関色温度501の場合において上の表に従って生じる、フラッシュライト120の好ましいスペクトル211の第3の部分スペクトルパワー307の値の限界を示している。
【0058】
関数−5.77×10
−6/K×T+1.40×10
−1によって定義される第3の広区間下限720は、第3の下限710を直線近似している。関数−2.06×10
−5/K×T+3.45×10
−1によって定義される第3の広区間上限721は、第3の上限711を直線近似している。関数−5.77×10
−6/K×T+1.52×10
−1によって定義される第3の中央区間下限730は、第3の下限710を直線近似している。関数−2.06×10
−5/K×T+3.19×10
−1によって定義される第3の中央区間上限731は、第3の上限711を直線近似している。関数−5.77×10
−6/K×T+1.64×10
−1によって定義される第3の狭区間下限740は、第3の下限710を直線近似している。関数−2.06×10
−5/K×T+2.93×10
−1によって定義される第3の狭区間上限741は、第3の上限711を直線近似している。
【0059】
周囲光110のすべての相関色温度501の場合において、フラッシュライト120の好ましいスペクトル211は、その第3の部分スペクトルパワー307が、第3の広区間下限720と第3の広区間上限721との間に位置するときに「好ましい」スペクトルと定義される。好ましくは、好ましいスペクトル211の第3の部分スペクトルパワー307は、第3の中央区間下限730と第3の中央区間上限731との間に位置する。特に好ましくは、フラッシュライト120の好ましいスペクトル211の第3の部分スペクトルパワー307は、第3の狭区間下限740と第3の狭区間上限741との間に位置する。
【0060】
図13は、カメラ800の概略図を示している。カメラ800は、デジタル撮像素子850を有するデジタルカメラであることが好ましい。カメラ800は、例えば、携帯電話に組み込む、または携帯電話として構成することができる。
【0061】
カメラ800は、照明装置810を備えている。照明装置810は、フラッシュ装置とも称することができる。照明装置810は、カメラ800の環境の記録をカメラ800によって行うときに、この環境を照らすために使用される。この場合、照明装置810は、上述した定義による好ましいスペクトル211を有する光によって、この環境を照らす。このようにすることで、観察者がカメラ800によって行われた記録を観察するときに受ける色印象と、撮影される環境を直接観察するときに受ける色印象との違いはわずかである。
【0062】
照明装置810は、周囲光検出センサ820を備えており、周囲光検出センサ820は、カメラ800の環境に存在する周囲光を検出するために使用される。周囲光検出センサ820は、検出された周囲光の相関色温度を求めるように構成されている。このようにして求めた相関色温度を利用することで、照明装置810は、周囲光のその相関色温度の場合に好ましいフラッシュライトのスペクトル211を求めることができる。
【0063】
周囲光検出センサ820は、カメラ800のデジタル撮像素子850によって形成することもできる。その場合、個別の周囲光検出センサ820は必要ない。
【0064】
さらに、照明装置810は、第1の発光ダイオード830および第2の発光ダイオード840を備えている。第1の発光ダイオード830および第2の発光ダイオード840は、それぞれ、設定されたスペクトル組成を有する電磁放射(可視光)を放出するように構成されている。第2の発光ダイオード840によって放出される電磁放射のスペクトル組成は、第1の発光ダイオード830によって放出される電磁放射のスペクトル組成とは異なる。照明装置810は、第1の発光ダイオード830および第2の発光ダイオード840によって放出される電磁放射が重なり合って、結果としての全体的な放射が、前に照明装置810によって求められた好ましいスペクトル211を有するように、第1の発光ダイオード830および第2の発光ダイオード840を駆動するように構成されている。
【0065】
照明装置810は、2つの発光ダイオード830,840より多くの発光ダイオードを備えていることもできる。しかしながら、ただ1つの発光ダイオード830を有するように照明装置810を構成することも可能である。
【0066】
ここまで、本発明について好ましい例示的な実施形態を利用して図示およひ詳細に説明してきた。しかしながら、本発明は、説明した例に制約されない。当業者には、本発明の保護範囲から逸脱することなく、説明した例から別の変形形態を導くことができるであろう。
【0067】
本特許出願は、独国特許出願第102013203429.6号の優先権を主張し、この文書の開示内容は参照によって本明細書に組み込まれている。