(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、
図1〜
図9を参照して、本発明による加工プログラム作成方法の実施形態を説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る加工プログラム作成方法が適用されるワーク加工システムの概略構成を示すブロック図である。
【0010】
図1に示すように、ワーク加工システムは、加工プログラムPRを作成する加工プログラム作成装置1と、加工プログラム作成装置1により作成された加工プログラムPRに従い動作し、ワークを加工する工作機械2とを有する。加工プログラム作成装置1は、工作機械2から離れた場所、例えば工場の外部に配置され、加工プログラム作成装置1と工作機械2とはLANで接続されている。工作機械2は、工作機械本体20と、工作機械本体20の動作を制御するNC装置21と、NC装置21に接続された入力部22および表示部23とを有する。
【0011】
図2は、工作機械本体20の一例を示す図である。
図2の工作機械本体20は、水平方向の軸線L0に沿って工具4が延在する5軸横形マシニングセンタである。以下では、図示のように軸線L0に平行な方向をZ軸方向(前後方向)、水平方向かつZ軸方向に垂直な方向をX軸方向(左右方向)、鉛直方向をY軸方向(上下方向)とそれぞれ定義する。
【0012】
図2に示すように、工作機械本体20は、床面に固定されるベッド201と、ベッド201の上面に水平方向(Z軸方向)に移動可能に立設されたコラム202と、コラム202の前方において、ベッド201の上面に水平方向(X軸方向)に移動可能に設けられたテーブル203と、コラム202の前面に上下方向(Y軸方向)に移動可能に設けられた主軸台204とを有する。テーブル203の上面にはイケール205が取り付けられ、イケール205の後面であるワーク取付け面205aに、ワークWが固定されている。
【0013】
主軸台204には、Z軸を中心とした回転送り軸(C軸)周りに回転可能に旋回台206が取り付けられている。旋回台206は、左右方向に離間して配置された一対の腕部を有し、一対の腕部の間に主軸頭207が、C軸に対して垂直な回転送り軸(A軸)周りに回転可能に支持されている。主軸頭207は、主軸208を回転可能に支持し、主軸208の先端部に工具4が装着されている。工具4は、例えば先端部が半球状のボールエンドミルである。なお、図示は省略するが、工作機械本体20は工具自動交換装置を有し、主軸208から工具4を自動的に取り外して工具マガジンに収納する一方、工具マガジンから所望の工具4を自動的に取り外して主軸208に装着することができる。
【0014】
テーブル203、主軸台204およびコラム202は、それぞれ直線送り機構によりX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向に移動する。各直線送り機構は、例えばボールねじとボールねじを回転駆動するサーボモータ(X軸用サーボモータ、Y軸用サーボモータ、Z軸用サーボモータ)等からなる。主軸頭207および旋回台206は、それぞれサーボモータ(A軸用サーボモータ、C軸用サーボモータ)の駆動によりA軸周りおよびC軸回りに回転する。これにより工具4に対してワークWが相対移動し、工具4を所望の加工姿勢としてワークWを加工することができる。なお、各サーボモータはそれぞれ位置検出器を有しており、位置検出器からの信号により、ワークWに対する工具4の相対位置および姿勢を検出することができる。
【0015】
図3A,
図3Bは、それぞれワークWに対する工具4の加工姿勢を示す図であり、
図4は、工具先端部の拡大図である。工具4はボールエンドミルであり、
図4に示すように工具先端部は点aを中心とした半球形状をしている。工具4の使用部位は、軸線L0に対する角度θ、すなわち、中心点aと工具表面の使用部位とを結ぶ線分Lと、軸線L0とのなす角度θで表すことができる。この使用部位は、ある範囲を有しており、使用部位の範囲は、軸線L0に対する角度θの範囲(開始角度と終了角度)で表すことができる。
【0016】
工具4の使用部位(角度θの範囲)は、工具4の加工姿勢(ワークWに対する相対姿勢)に応じて定まる。例えば、
図3Aに示すように工具4の軸線L0がワーク加工面Waに対し垂直な加工姿勢では、0≦θ≦θ1の工具先端部の外周面の領域S1が工具4の使用部位となる。このとき、開始角度は0°、終了角度はθ1(例えば30°)である。一方、
図3Bに示すように工具4の軸線L0がワーク加工面waに垂直な軸線L1に対し所定角度αだけ傾いた加工姿勢では、θ2≦θ≦θ3の工具先端部の外周面の領域S2が工具4の使用部位となる。このとき、開始角度はθ2(例えば60°)、終了角度はθ3(例えば90°)である。なお、工具4の使用部位を表す角度θ1〜θ3は、軸線L1に対する工具軸線L0の角度αだけでなく、工具4の加工深さによっても変化し、角度αと加工深さにより工具4の加工姿勢が定まる。
【0017】
このように工具4は、ワーク加工時に全域が使用されるのではなく、通常は一部のみが使用され、工具4の摩耗量は各部位毎に異なる。したがって、ワーク加工後に工具4の特定の部位が摩耗してその部位が使用不能となった場合であっても、工具4には未使用または使用可能な部位が残存する場合がある。工具4を有効利用する観点からは、このような未使用または使用可能な部位をワーク加工に利用することが好ましい。そこで、本実施形態では、以下のように加工プログラム作成装置1を構成し、工具4のどの部位がどの程度使用されたかの情報(使用実績情報)を取得するとともに、この使用実績情報に基づいて工作機械2の加工プログラムPRを作成する。
【0018】
図1に示すように、加工プログラム作成装置1は、CAM装置10と、入力部11と、表示部12と、工具データベース13とを有する。CAM装置10は、図示しないCAD装置からワーク形状に対応したCADデータを取り込み、このCADデータを用いて加工プログラムPRを作成する。加工プログラムPRには、工具経路と工具4の加工姿勢とが含まれる。加工姿勢は、工具4の使用部位に応じて定まり、入力部11を介してユーザが工具4の使用すべき角度θ(目標使用角度と呼ぶ)の範囲を入力することで、工具4の加工姿勢が決定される。
【0019】
工具データベース13は、工具使用実績経路として工作機械2で実測された各工具4の使用状態を表す実測値MVを取り込む。実測値MVは、サーボモータの位置検出器により検出された工具4の加工姿勢や、加工時間、加工速度、加工距離等を含む。工具データベース13は、工具4の加工姿勢を表す実測値MVに基づき工具4の使用部位(軸線L0に対する角度θ)を演算するとともに、工具4の使用状態を表す物理量(例えば使用時間)を演算し、工具4の使用部位に対応付けた使用状態を表す物理量を使用実績情報として記憶する。
【0020】
すなわち、工作機械2からの実測値MVをそのまま使用実績情報として記憶するのではなく、実測値MVから工具4の使用部位と工具4の使用状態を表す物理量を求め、これを工具4の使用実績情報として記憶する。工具データベース13に格納された使用実績情報は、ワークWの加工が終了する度に更新される。なお、工具データベース13には、新品の工具4の使用実績情報も格納される。この場合の使用実績情報は、使用部位が存在しないという情報である。
【0021】
工具データベース13に格納された使用実績情報は、CAM装置10に取り込まれ、加工プログラム作成装置1の表示部12に表示される。なお、工具データベース13に格納された使用実績情報を工作機械2が取り込んで、工作機械2の表示部23に表示することもできる。
【0022】
図5は、加工プログラム作成装置1の表示部12に表示される表示画面120の一例を示す図である。この図は、
図3Aの加工姿勢でワークWが加工された後の表示画面である。
図5に示すように、表示画面120には、工具4の先端部を表す半円形状の工具画像121が表示されるとともに、工具4の使用部位(角度θの範囲)を表す使用部位画像122が工具画像121に重ねて扇形で表示される。表示画面120には、使用部位画像122に対応して角度θの範囲が数値で表示される。
図5の例では、使用部位の角度範囲は0°〜θ1である。
図5において、角度範囲がθ1〜90°の領域は、工具4の未使用部位を表す未使用部位画像123である。
【0023】
使用部位画像122と未使用部位画像123とは互いに異なる表示形態(例えば異なる色)で表示される。これによりユーザは工具4の使用部位を容易に認識することができる。なお、工具4の使用部位と未使用部位とを色分け表示するだけでなく、使用部位がどの程度使用されたかの情報を併せて表示するようにしてもよい。例えば、工具4の使用部位における使用時間が長いほど、使用部位画像122の表示色を濃くするようにしてもよい。
【0024】
ユーザは、表示画面120を参照して工具4の使用部位を確認すると、入力部11を介して工具4の目標使用角度θ(目標開始角度と目標終了角度)を入力する。表示画面120には目標角度表示部124が設けられ、目標角度表示部124には、入力された目標使用角度θの範囲が表示される。
図5の例では、目標開始角度がθ2であり、目標終了角度がθ3である。
【0025】
次に、本実施形態に係る加工プログラム作成装置1のCAM装置10で実行される処理について説明する。
図6は、CAM装置10で実行される処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、入力部11を介してユーザが使用すべき工具4を選択すると開始される。各工具4には、予め各工具4を識別するための工具番号が割り振られており、工具番号の指定により工具4が選択される。
【0026】
ステップS1では、工具データベース13から、選択された工具4に対応する使用実績情報を読み込む。ステップS2では、
図5に示すように、読み込んだ使用実績情報を表示部12に表示させる。ステップS3では、工具4の使用部位が存在するか否か、すなわち選択された工具4が新品であるか否かを判定する。ステップS3が肯定されると、すなわち工具4が既に使用済みであると判定されるとステップS4に進み、ステップS3が否定されるとステップS7に進む。
【0027】
ステップS4では、新品の工具4(新工具)を使用するか否かを判定する。この判定は、入力部11を介してユーザが新工具4の選択を指令したか否かの判定である。例えば入力部11には、新工具4の選択を指令する新工具選択スイッチと、新工具4の非選択を指令するキャンセルスイッチとが設けられている。ユーザは、表示部12に表示された使用実績情報を見ながら、当初選択した工具4に代えて新工具4を使用するか否かを判断し、新工具を使用すると判断すると新工具選択スイッチを操作し、新工具を使用しないと判断するとキャンセルスイッチを操作する。新工具選択スイッチが操作されると、ステップS4が肯定されてステップS5に進み、キャンセルスイッチが操作されると、ステップS4が否定されてステップS7に進む。
【0028】
ステップS5では、予備工具の交換指令を有効化する。予備工具とは、予め各工具4に割り振られた交換用の新工具であり、予備工具交換指令を有効化することで、後述する処理(ステップS9)において、当初工具番号が割り振られた工具4に代えて所定の予備工具(新工具)を選択するように加工プログラムが作成される。次いで、ステップS6で、当初選択した工具4の工具番号に対応した使用実績情報をクリアする。つまり、当初選択した工具4の工具番号には、新たに予備工具が割り振られるため、ステップS6で、過去に使用した工具4の使用実績情報をクリアする。
【0029】
ステップS7では、ユーザにより工具4の目標使用部位(角度θの範囲)が指令されたか否かを判定する。ステップS7は、ユーザが入力部11を操作して目標開始角度と目標終了角度を入力するまで繰り返される。ステップS7で目標使用部位が指令されたと判定するとステップS8に進み、使用する工具4に対応した加工条件を設定する。加工条件は、工具4の材質や形状等の工具情報である。この加工条件は、予め工具データベース13に記憶されており、工具データベース13から加工条件を読み込んで設定する。
【0030】
ステップS9では、ユーザによって指令された工具4の目標使用部位を用いてワークWを加工するように、ワーク形状や工具4の目標使用部位、加工条件等に基づき加工プログラムPRを作成する。このとき、ステップS5で予備工具交換指令が有効化されている場合には、工具自動交換装置による予備工具の選択指令が加工プログラムPRに含まれる。次いで、ステップS10で加工プログラムPRを工作機械2のNC装置21に出力する。
【0031】
最後に、工具4の目標使用部位に基づき、工具データベース13の工具4の使用実績情報を更新する。すなわち、工具4の目標使用部位がワーク加工に使用されたと仮定して、使用実績情報を更新する。ここでの更新は仮更新であり、工具データベース13の本更新は、ワークWの加工終了後に、工作機械2から出力される各工具4の使用状態を表す実測値MVに基づき行われる。ステップS11で工具データベース13の仮更新を行う理由は、ステップS10で加工プログラムPRを出力してから工作機械2でワークWの加工が終了する前に、次の加工プログラムPRを作成する場合があることを考慮したためである。すなわち、この場合に使用実績情報を更新していないと、工具4の目標使用部位が使用されたにも拘わらず未使用として扱われることとなり、次の加工における工具4の使用部位を誤って指令するおそれがあるからである。
【0032】
次に、工作機械のNC装置21で実行される処理について説明する。
図7は、NC装置21で実行される処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、例えばNC装置21の電源がオンすると開始される。
【0033】
ステップS31では、加工プログラム作成装置1から加工プログラムPRを読み込む。ステップS32では、工具データベース13に格納された工具4の使用実績情報に基づき、加工プログラムPRの実行によって使用される予定の工具4の使用部位を、工作機械2の表示部23に表示させる。工作機械2を動作させる前に、ユーザは、使用すべき工具4が工作機械2(工具マガジン等)に装着されているか否か、工具4の使用部位に有効に切れ刃が存在するか否か等を目視で確認する確認作業を行う。この確認作業を表示部23の表示を参照しながら行うことで、確認作業を容易かつ正確に行うことができる。
【0034】
ステップS33では、入力部22の操作によりワークWの加工開始が指令されたか否かを判定する。この判定は、例えば入力部22に設けられたスタートスイッチがオンされたか否かの判定である。スタートスイッチは、ユーザが一連の確認作業を終了すると、オン操作される。ステップS34では、NC装置21が加工プログラムPRを実行する。これにより加工プログラムPRに従い工作機械本体20が動作し、ワークWが加工される。ワーク加工中に表示部23には、加工進行状況等を示す情報が表示される。加工プログラムPRの実行が完了すると、ステップS35に進む。
【0035】
ステップS35では、ワーク加工時に工作機械2で実測された各工具4の使用状態を表す実測値MV(工具4の加工姿勢、加工時間、加工速度、加工距離等)を、工具データベース13に出力する。これにより工具データベース13における工具4の使用実績情報が更新(本更新)される。このとき、工作機械2の表示部23には、例えば
図5と同様な表示形態で、工具4の使用実績情報が表示される。これによりユーザはワーク加工後の工具4の使用状態を容易に認識することができる。
【0036】
以上の本実施形態の動作をまとめると次のようになる。CAM装置10のユーザは、NC装置21の加工プログラムPRを作成する際、まず、入力部11を介して使用すべき工具4を選択する。CAM装置21は、選択された工具4の使用実績情報を工具データベース13から取得し、例えば
図5に示すような表示形態で使用実績情報を表示部12に表示させる(ステップS1、ステップS2)。ユーザは、表示部12の表示画面120を参照し、入力部11を介して工具4の目標使用部位を設定する。例えば、ワークWの精密加工を行う場合、工具4の未使用の部位を目標使用部位として設定し、ワークWの荒加工を行う場合、工具4の既に使用された部位を目標使用部位として設定する。
【0037】
目標使用部位の設定値(目標開始角度と目標終了角度)は、入力値表示部124に表示される。ユーザが表示部を参照し、選択した工具4に目標使用部位が存在しないと判断した場合、新工具選択スイッチを操作し、新工具4を選択する。このとき、予備工具交換指令が有効化され(ステップS5)、工具4の使用実績情報がクリアされる(ステップS6)。入力部11を介して工具4の目標使用部位が指令されると、CAM装置10はその目標使用部位を用いてワークWを加工するように加工プログラムPRを作成し(ステップS9)、NC装置21に出力する(ステップS10)。
【0038】
NC装置21は、加工プログラムPRを読み込み(ステップS31)、加工プログラムPRに従い工作機械本体20を動作させ、ワークWを加工する(ステップS34)。これにより工具4の一部が摩耗等により使用不能となった場合で、工具4の残りの部分に使用可能な部位が存在している場合に、その使用可能な部位を用いてワークWを加工することができ、工具4を有効利用することができる。ワーク加工後には、ワーク加工時に取得された工具4の使用状態を表す実測値MVが工具データベース13に出力され(ステップS35)、これにより工具データベース13の工具使用実績情報が更新される。
【0039】
本実施形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)本実施形態に係る加工プログラム作成方法では、工具データベース13を介して工作機械2から工具4の各部位の使用実績情報を取得し(取得手順)、取得した使用実績情報に基づきユーザが目標使用部位を入力することで、CAM装置10が工具4の目標使用部位を設定するとともに(設定手順)、設定した工具4の目標使用部位を用いてワークWを加工するように加工プログラムPRを作成する(作成手順)。これにより工具4に使用可能な部位が残存している場合に、その使用可能な部位を用いてワークWを加工することができ、工具4を有効利用することができる。その結果、工具4のコストを低減できる。
【0040】
(2)工具データベース13を介して取得した工具4の各部位の使用実績情報を表示部12に表示するようにしたので(表示手順)、ユーザは表示部12の表示を参照することで工具4の使用状態を認識することができ、工具4の目標使用部位の設定が容易である。
【0041】
(3)表示部12には工具4の使用部位と未使用部位とを異なる表示形態で表示するので、容易に工具4の未使用部位から目標使用部位を選択して設定することができ、工具4の全域を万遍なく使用することが可能である。
【0042】
(変形例)
上記実施形態では、工具データベース13を介して工具4の各部位の使用実績情報を取得するとともに、その使用実績情報を表示部12に表示し、入力部11を介してユーザが手動で目標使用部位を入力することで、目標使用部位を設定するようにしたが、目標使用部位を手動で設定するのではなく、設定部としてのCAM装置10で自動的に設定するようにしてもよい。
【0043】
この場合、予め工具4の使用部位の優先順位を定めて工具データベース13に登録しておき、その優先順位に従い、
図6のステップS3〜ステップS7の代わりに目標使用部位を自動的に設定すればよい。優先順位は、例えば新品ではない工具4を優先的に使用する、荒加工時には工具4の未使用部分ではなく使用部分を優先的に使用する等、種々の条件を与えることで設定できる。自動設定した目標使用部位を仮の目標使用部位として一旦表示部12に表示し、その後、ユーザが決定指令を入力すると目標使用部位を最終的に設定するようにしてもよい。この場合、決定指令が入力されないときは、条件を変更して目標使用部位の設定をやり直すようにしてもよい。これにより、ユーザ自身による目標使用部位の入力の手間が省け、目標使用部位の設定が容易となる。
【0044】
上記実施形態では、工具データベース13が工作機械2から使用実績情報としての実測値MVを取得し、その実測値MVから工具4の使用部位、使用時間等を求めるようにしたが、工作機械側(例えばNC装置21)で実測値MVから工具4の使用部位、使用時間等を求め、これらを使用実績情報として工具データベース13に出力するようにしてもよい。CAM装置10が、工具データベース13を介して使用実績情報を取得するようにしたが、工具データベース13を介さずに工作機械2から使用実績情報を取得するようにしてもよく、情報取得部の構成は上述したものに限らない。
【0045】
上記実施形態では、工作機械本体20のサーボモータに付属する位置検出器等からの信号を、実測値MVとして工具データベース13に出力するようにしたが、工具4の使用部位を特定できるのであれば、他の検出信号を出力するようにしてもよい。例えば、工作機械本体20にCCDカメラを取り付け、工具4を回転させながらCCDカメラで工具4の先端部を撮像して寸法を測定し、測定した寸法を工具データベース13に出力するようにしてもよい。
【0046】
工具4の目標使用部位を手動設定する場合には、入力部11を介してユーザが目標使用部位を入力し、自動設定の場合には、設定部(CAM装置10)で目標使用部位を自動的に設定するようにしたが、これら工具4の目標使用部位を用いてワークWを加工するように加工プログラムPRを作成するのであれば、プログラム作成部としてのCAM装置10の構成はいかなるものでもよい。
【0047】
上記実施形態では、工作機械2に取り付けられる工具4としてボールエンドミルを用いたが、フラットエンドミルやブルノーズ等、他の工具4を用いる場合にも本発明を同様に適用することができる。したがって、工具4の目標使用部位を角度θ以外のパラメータで指令するようにしてもよく、工具4の使用部位を角度θ以外のパラメータを用いて表示部12に表示するようにしてもよい。
図8A,
図8Bは、それぞれ本発明をフラットエンドミルおよびブルノーズエンドミルに適用した場合の表示部12に表示される工具画像121、使用部位画像122および未使用部位画像123の一例を示す図である。
図8A,
図8Bでは、例えば工具先端部からの距離(開始距離と終了距離)を入力することで、目標使用部位を指令することができる。
【0048】
上記実施形態では、工作機械本体20として横形マシニングセンタを用いたが、
図9に示す立形マシニングセンタ等、他の工作機械本体20にも本発明を同様に適用することができる。
図9の工作機械本体20は、ベッド211と、ベッド211上に立設されたコラム212と、コラム212上に設けられたガイドレール222に沿ってX軸方向に移動可能な主軸台213と、主軸台213上に設けられたガイドレール214に沿ってX軸方向に移動可能な主軸頭215と、主軸頭215に回転可能に支持され、工具4が装着される主軸216とを備える。ベッド211上にはガイドレール217に沿ってY軸方向に移動可能にサドル218が設けられ、サドル218上に、X軸方向に離間した一対の側壁を有するトラニオン219が固定され、一対の側壁の間にX軸を中心とした回転送り軸(A軸)周りに回転可能にテーブル旋回台220が取り付けられる。テーブル旋回台220上には、Z軸を中心とした回転送り軸(C軸)周りに回転可能にテーブル221が取り付けられ、テーブル221上にワークWが固定される。
【0049】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、上述した実施形態および変形例により本発明が限定されるものではない。上記実施形態および変形例の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。すなわち、本発明の技術的思想の範囲内で考えられる他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。また、上記実施形態と変形例の1つまたは複数を任意に組み合わせることも可能である。
【0050】
本発明によれば、工具の各部位の使用実績情報を取得し、取得した使用実績情報に基づき工具の目標使用部位を設定し、設定した目標使用部位を用いてワークを加工するように加工プログラムを作成する。このため、工具の未使用または使用可能な部位を効率よく使用することができ、工具を有効利用することができる。