(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
(I)定義
他に断らない限り、本欄及び他の欄に記載する定義及び実施形態は、当業者には理解されるように、本明細書に記載する本出願の適切なあらゆる実施形態及び局面に適用可能である。
【0017】
単数形態の用語は、本明細書で使用する場合、1つのメンバーを有する局面を含むばかりでなく、1つより多くのメンバーを有する局面も包含する。
【0018】
「追加の」又は「第2の」成分を含む実施形態では、本明細書で使用する場合第2の成分は他の成分又は第1の成分と化学的に異なる。「第3の」成分は他の、第1の、及び第2の成分と異なり、さらに列挙された又は「追加の」成分は同様に異なる。
【0019】
用語「マトリックス」はポリマー分子の規則的、不規則及び/又はランダムの配列を意味する。これらの分子は架橋されていてもいなくてもよい。SEM、x−線又はFTNMRから得られるようなスケールで、分子の配列は、分子のネットワーク、メッシュ、アレイ、フレームワーク、スカフォールド、三次元の網又は三次元の絡み合いのような三次元の物理的配置を示し得る。マトリックスは通常非自立性であり、殆どの場合支持材料上のコーティング又は層として構築される。
【0020】
用語「アシル」及び「アシル部分」は、次式でも表される官能基「C(O)」をいう。
【0021】
【化1】
用語「アミン」及び「アミン部分」は、孤立電子対を有する塩基性窒素原子を含有する官能基をいう。アミンは、アンモニア(NH
3)の誘導体であり、1以上の水素原子がアルキル又はアリール基で置き換えられている。第一アミンは構造R’−NH
2を有し、第二アミンは構造R’R''NHを有し、第三アミンは構造R’R''R''’Nを有し、ここでR’、R''及びR''’はアルキル又はアリール基である。
【0022】
用語「アミド」は、次式の化学的部分をいう。
【0023】
【化2】
用語「残基」は、本明細書で使用する場合、モノマーの重合により形成される化学基をいう。例えば、アミン化合物残基はアミンモノマーを重合させたときに形成される化学基をいい、アシル化合物残基はポリアシルモノマーを重合させたときに形成される化学基をいい、保護アミン化合物残基とは保護アミンモノマーを重合させたときに形成される化学基をいう。
【0024】
用語「保護アミノ基基」は、本明細書で使用する場合、水又は酸と接触すると第一又は第二アミノ基を形成する官能基をいう。保護アミノ基基を含有するモノマー単位はトルエン、キシレン、炭化水素等のような有機溶媒に可溶性である。例えば、一実施形態では、保護アミノ基基は部分−N=S=Oを含み、水又は酸溶液と接触した際アミノ基(−NH
2)を形成する。この方法は脱保護工程としても公知である。従って、反応は次のスキーム1に示すように進行する。
【0025】
【化3】
従って、一実施形態では、保護アミノ基基は、水又は酸性溶液と接触し、遊離のアミノ基を形成し、これがその後重合プロセスでさらに反応して本開示のポリマーマトリックスを調製することができるあらゆる部分である。一実施形態では、保護アミノ基基を含むモノマー単位は1以上のアミン反応性のアシル部分も含み、これは自己重合し、より広いポリマーマトリックス内に別のポリアミドポリマーを形成することができるモノマー単位を生じ、このためナノ−構造が形成され、膜として使用する場合ポリマーマトリックスのA値を増大する。
【0026】
用語「C
a-b(アルキレン)」は、本明細書で使用する場合、「a」〜「b」の炭素原子を含有し、その1以上の炭素原子が適宜O、S、NH及びNC
1-6アルキルから選択されるヘテロ部分で置き換えられている直鎖及び/又は枝分れ飽和アルキレン基を意味し、(「a」及び「b」の数に応じて)メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、n−ブチレン、s−ブチレン、イソブチレン、t−ブチレン、2,2−ジメチルブチレン、n−ペンチレン、2−メチルペンチレン、3−メチルペンチレン、4−メチルペンチレン、n−ヘキシレンなどを包含し、ここで変量「a」は炭素原子の最低の数を表し、変数「b」はアルキレン基内の炭素原子の最大の数を表す整数である。
【0027】
用語「C
a-b(アルケニレン)」は、本明細書で使用する場合、「a」〜「b」の炭素原子及び1以上の二重結合(例えば、1、2、3又は4の二重結合)を含有し、1以上の炭素原子が適宜O、S、NH及びNC
1-6アルキルから選択されるヘテロ部分で置き換えられている直鎖及び/又は枝分れ飽和アルケニレン基を意味し、(「a」及び「b」の値に応じて)エテニレン、プロペニレン、イソプロペニレン、n−ブテニレン、s−ブテニレン、イソブテニレン、t−ブテニレン、2,2−ジメチルブテニレン、n−ペンテニレン、2−メチルペンテニレン、3−メチルペンテニレン、4−メチルペンテニレン、n−ヘキセニレンなどを包含し、ここで変数「a」は炭素原子の最低の数を表す整数であり、変数「b」はアルケニレン基中の炭素原子の最大の数を表す整数である。
【0028】
用語「C
1-6(アルキル)」は、本明細書で使用する場合、直鎖及び/又は枝分れ飽和アルキル基を意味し、メチル、エチル、プロピル、イソプロピレン、n−ブチル、s−ブチル、イソブチル、t−ブチル、2,2−ジメチルブチル、n−ペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、n−ヘキシルなどを包含する。
【0029】
用語「C
2-6(アルケニル)」は、本明細書で使用する場合、1以上(例えば、1、2又は3)の二重結合を含有する直鎖及び/又は枝分れ不飽和アルキル基を意味し、エテニル、プロペニル、イソプロペニル、n−ブテニル、s−ブテニル、イソブテニル、t−ブテニル、2,2−ジメチルブテニル、n−ペンテニル、2−メチルペンテニル、3−メチルペンテニル、4−メチルペンテニル、n−ヘキセニルなどを包含する。
【0030】
用語「脂肪族」又は「脂肪族基」は当技術分野で公知であり、完全に飽和である(アルキル)か又は鎖中に1以上(例えば1、2、3、又は4)の二重結合を含む(アルケニル)枝分れ又は非枝分れの炭素鎖を包含する。
【0031】
用語「脂環式」又は「脂環式基」は当技術分野で公知であり、完全に飽和である(シクロアルキル)か又は環中に1以上(例えば1、2、3、又は4)の二重結合を含む(シクロアルケニル)単環式及び多環式の炭化水素を包含する。
【0032】
用語「アリール」は、本明細書で使用する場合、例えば炭素原子6〜14の芳香族炭素環式系をいい、単一の環を含むか、又は互いに縮合若しくは連結しており、その縮合若しくは連結した環の少なくとも一部が共役芳香族系を形成する複数の芳香環を含むことができる。アリール基としては、限定されることはないが、フェニル、ナフチル、ビフェニル、アントリル、テトラヒドロナフチル、フェナントリル、インデン、ベンゾナフチル、及びフルオレニルがある。
【0033】
用語「ポリアミンモノマー」は、本明細書で使用する場合、アミン反応性ポリアシルモノマー単位と反応してポリアミドポリマーを形成することができる2以上の親核性の第一又は第二アミノ基を含有するあらゆるモノマーをいい、ここでアミン反応性ポリアシルモノマー単位は水溶液に可溶性である。ポリアミンモノマーの例には、限定されることはないが、芳香族、脂肪族及び/又は脂環式(又は芳香族、脂肪族及び脂環式部分を全て含有する化合物)ポリアミンモノマーがある。当業者には理解されるように、ポリアミンモノマー単位はポリマーを製造するのに使用される化合物を指すが、用語「アミン化合物残基」は重合しており、従ってポリマーマトリックス内の残基である化合物を指す。
【0034】
用語「脂肪族ポリアミンモノマー」、「環式脂肪族ポリアミンモノマー」又は「芳香族ポリアミンモノマー」は、本明細書で使用する場合、2以上の親核性の第一又は第二アミノ基を含有する脂肪族、環式脂肪族又は芳香族モノマーをいい、これらのアミノ基は各々がアミン反応性ポリアシルモノマーと反応してポリアミドポリマーを形成し、このアミン反応性ポリアシルモノマーは水溶液に可溶性である。当業者には理解されるように、脂肪族又は芳香族ポリアミンモノマー単位はポリマーを製造するのに使用される化合物を指すが、用語「アミン化合物残基」は既に重合しており、従ってポリマーマトリックス内の残基である化合物を指す。
【0035】
用語「アミン反応性ポリアシルモノマー」は、本明細書で使用する場合、次式の反応性(親電子性)アシル部分を少なくとも2つ含有する化合物をいう。
【0036】
【化4】
式中、X’は脱離基であり、従ってこのアシル部分は親核性アミン部分と反応してポリアミドポリマーを形成することができる。脱離基(X’)の例には、ハロゲン(クロリド、フルオリド、ブロミド及びヨージド)、無水物、活性化エステル、及びその他の脱離基、例えばトシレート、メシレート、トリフレート等がある。
【0037】
用語「ハロゲン」、「ハライド」又は「ハロ」は、本明細書で使用する場合、クロロ、フルオロ、ブロモ又はヨードを包含する。
【0038】
化学構造内の下記式の構造は、本明細書で使用する場合、本開示のポリマーマトリックスの繰り返しサブユニットを指し、従って、当該構造の後に別の繰り返しモノマーサブユニットが続く。
【0039】
【化5】
用語「A値」は、本明細書で使用する場合、膜の透過流量RO水透過性をいい、気圧単位で測定される圧力において透過水の立方センチメートル/膜面積の平方センチメートル×秒で表される。
【0040】
用語「透過」又は「透過液(水)」は、膜を通過する物質の伝達を意味する。
【0041】
用語「膜」は、本明細書で逆浸透膜又はナノ濾過膜と関連して使用する場合、供給流体の溶解成分を、膜を通過する透過液(例えば、水)と膜により排斥又は保持される残余分(例えば、塩)とに分離するのに使用される選択的バリヤーをいう。本開示のポリマーマトリックスは基材により支持されて膜を形成し、このポリマーマトリックスが溶解成分を分離することが理解される。基材は溶解成分の分離に関与しない。
【0042】
用語「自己重合ポリマー」は、本明細書で使用する場合、モノマー単位が自身で重合して第1のポリマーサブ構造を形成することができるポリマーをいい、第1のポリマーサブ構造は次いでより広いポリマーマトリックス中に組み込まれる(より広いポリマーマトリックス内のポリマーサブ構造、又は重合してより広いポリマーマトリックスになるポリマーサブ構造)。用語「基材」は、その上にマトリックスを適用することができるあらゆる基材又は支持材料を意味する。基材は多孔性でも非多孔性でもよい。
【0043】
本開示の範囲を理解する際、用語「含む」及びその派生語は、本明細書で使用する場合、述べられている特徴、要素、成分、基、完全体、及び/又は工程の存在を明示するが、他の述べられていない特徴、要素、成分、基、完全体及び/又は工程の存在を除外しない開放型の用語であることを意図している。これは、用語「包含する」、「有する」、「含有する」及びこれらの派生語のような同様な意味を有する単語にも当てはまる。用語「からなる」及びその派生語は、本明細書で使用する場合、述べられている特徴、要素、成分、基、完全体、及び/又は工程の存在を明示するが、述べられていない特徴、要素、成分、基、完全体及び/又は工程の存在を除外する閉鎖型の用語であることを意図している。用語「本質的に からなる」は、本明細書で使用する場合、述べられている特徴、要素、成分、基、完全体、及び/又は工程並びに特徴、要素、成分、基、完全体、及び/又は工程の基本的で新規な特性(複数でもよい)に実質的に影響しないものの存在を明示するものである。
【0044】
「ほぼ」、「約」及び「およそ」のような程度に関する用語は、本明細書で使用する場合、最終結果が大きく変化することがないように修飾された用語の偏差の妥当な量を意味する。これらの程度に関する用語は、修飾された用語の少なくとも±5%の偏差が修飾している単語の意味を打ち消さないならば、この偏差を含むものとして解釈されるべきである。
【0045】
(II)マトリックス及び膜
本開示は、その上面上の負電荷の量が低減した膜(例えば、逆浸透膜又はナノ濾過膜)に有用なポリマーマトリックスに関する。従って、本開示の膜は、膜が詰まる可能性が低くなっている。保護アミノ基基を含むモノマー単位を、ポリアミンモノマーとアミン反応性ポリアシルモノマーとの界面重合プロセス中の有機相に組み込むと、そのマトリックスを含む膜の上面上に形成される遊離のカルボキシル基の量が低下する。また、本開示のマトリックスはバランスのとれた表面官能性、並びにナノスケール未満の不均一性も有する。加えて、本開示のポリマーマトリックスは、保護アミノ基基を含むモノマーの存在のために重合プロセス中高度に架橋され、その結果pHと遊離塩素の両方に対してより高い安定性を有する膜が生じる。最後に、本開示のポリマーマトリックスを含む膜は、その場で形成されるナノ−構造体のために、保護アミンモノマーを含むモノマー単位の自己重合の結果として形成される、より高いA値を超える。
【0046】
従って、本開示は、
(i)2以上のアミン部分を有するアミン化合物残基、
(ii)2以上のアシル部分を有するアシル化合物残基、及び
(iii)(a)2以上のアミン部分、又は
(b)1以上のアミン部分及び1以上のアシル部分
を有する保護アミン化合物残基
からなるポリマーマトリックスに関する。
【0047】
別の実施形態では、保護アミン化合物残基が1以上のアミン部分と1以上のアシル部分とを含有する場合、その残基の少なくとも一部分は自己重合により形成される。一実施形態では、1以上のアミン反応性アシル部分及び1以上の保護アミノ基部分を含む保護アミノ基基を含むモノマーは、水又は酸の存在下で脱保護されると自己重合することができる。一実施形態では、これらのモノマーは次に自己重合してポリマーサブ構造(ナノサイズの構造であり、一実施形態ではかかる構造を含有する膜の流れを増大する)となることができ、これはその後、例えば界面重合プロセス中に、より広いポリマーマトリックス(ポリアミンモノマー及びアミン反応性ポリアシルモノマー、及び/又は保護アミノ基基を含むモノマーから形成される)中に組み込まれる。
【0048】
別の実施形態では、ポリマーマトリックスはさらに基材を含んで膜を形成し、この膜はゼロより大きく、適宜少なくとも約5.0のA値を有する。
【0049】
別の実施形態では、保護アミノ基化合物残基は次式(I)の残基である。
【0050】
【化6】
式中、Arは炭素原子数6〜14の適宜置換されていてもよいアリール基であり、Rは独立に又は同時に次式のものであり、
【0051】
【化7】
nは1、2又は3である。ここで、任意の置換基は1〜5個のハロ、(C
1〜C
6)アルキル、(C
1〜C
6)アルケニル、又は(C
1〜C
6)アルキニルを含む。
【0052】
別の実施形態では、Arは炭素原子数6〜10の適宜置換されていてもよいアリール基、例えばフェニル又はナフチルである。別の実施形態では、Arは適宜置換されていてもよいC
6アリール基、例えばフェニルである。別の実施形態では、任意の置換基はメチル、エチル、プロピル又はイソプロピルを含む。
【0053】
別の実施形態では、式(I)の残基は次式(Ia)、(Ib)又は(Ic)の残基である。
【0054】
【化8】
式中、Rは次式のものである。
【0055】
【化9】
一実施形態では、式(Ia)の残基は次式のものである。
【0056】
【化10】
別の実施形態では、式(Ib)の残基は次式のものである。
【0057】
【化11】
別の実施形態では、式(Ic)の残基は次式のものである。
【0058】
【化12】
別の実施形態では、アミン化合物残基は2以上のアミノ(−NH)部分を含む。ある実施形態では、アミン化合物残基は脂肪族アミン化合物残基、芳香族アミン化合物残基又は環式脂肪族アミン化合物残基を含む。さらに別の実施形態では、芳香族アミン化合物残基は次式(II)の残基を含む。
【0059】
【化13】
式中、Arは炭素原子数6〜14の適宜置換されていてもよいアリール基であり、pは2又は3であり、任意の置換基は1〜5個のハロ、(C
1〜C
6)アルキル、(C
1〜C
6)アルケニル、又は(C
1〜C
6)アルキニルを含む。
【0060】
別の実施形態では、Arは炭素原子数6〜10の適宜置換されていてもよいアリール基、例えばフェニル又はナフチルである。別の実施形態では、Arは適宜置換されていてもよいC
6アリール基、例えばフェニルである。別の実施形態では、任意の置換基はメチル、エチル、プロピル又はイソプロピルを含む。
【0061】
別の実施形態では、式(II)の芳香族ポリアミン残基は次式のものである。
【0062】
【化14】
別の実施形態では、式(II)の芳香族ポリアミン残基は次式のものである。
【0063】
【化15】
本開示の別の実施形態では、環式脂肪族アミン化合物残基は次式(III)の残基である。
【0064】
【化16】
式中、qは0、1、2、3又は4であり、2以上の炭素原子はポリマーマトリックスとの結合に関与するN原子で置き換えられている。
【0065】
別の実施形態では、環式脂肪族アミン化合物残基はC
5〜C
7環式脂肪族であり、2以上の炭素原子はポリマーマトリックスとの結合に関与するN原子で置き換えられている。別の実施形態では、環式脂肪族アミン化合物残基はC
6−環式脂肪族であり、2以上の炭素原子はポリマーマトリックスとの結合に関与するN原子で置き換えられている。
【0066】
別の実施形態では、式IIIの環式脂肪族アミン化合物残基は次式のものである。
【0067】
【化17】
本開示の一実施形態では、脂肪族アミン化合物残基は2以上の遊離のアミノ(−NH
2)部分を含むモノマーから誘導される。別の実施形態では、脂肪族アミン化合物残基は次式(IV)の残基である。
【0068】
【化18】
式中、Wは(C
2-20)アルキレン基又は(C
2-20)アルケニレン基であり、このアルキレン又はアルケニレン基中の1以上の炭素原子、適宜2以上の炭素原子は適宜O、S、NH又はN(C
1-6)アルキル部分、適切にはNH又はN(C
1-6)アルキル部分で置き換えられている。別の実施形態では、Wは(C
4-10)アルキレン基であり、このアルキレン基中の1以上の炭素原子、適宜2以上の炭素原子は適宜NH又はN(C
1-6)アルキル部分で置き換えられている。本開示の別の実施形態では、式(IV)の脂肪族アミン化合物残基は次式のものである。
【0069】
【化19】
別の実施形態では、アシル化合物残基は次式(V)の残基である。
【0070】
【化20】
式中、Arは炭素原子数6〜14の適宜置換されていてもよいアリール基であり、mは2、3又は4であり、任意の置換基は1〜5個のハロ、(C
1〜C
6)アルキル、(C
1〜C
6)アルケニル、又は(C
1〜C
6)アルキニルを含む。
【0071】
別の実施形態では、Arは炭素原子数6〜10の適宜置換されていてもよいアリール基、例えばフェニル又はナフチルである。別の実施形態では、Arは適宜置換されていてもよいC
6アリール基、例えばフェニルである。別の実施形態では、任意の置換基はメチル、エチル、プロピル又はイソプロピルを含む。
【0072】
ある実施形態では、式(V)のアシル化合物残基は次式のものである。
【0073】
【化21】
式中、mは2又は3である。
【0074】
ある実施形態では、式(V)のアシル化合物残基は次式のものである。
【0075】
【化22】
本開示はポリアミドポリマーを含むポリマーマトリックスに関し、このマトリックスは、
(i)ポリアミンモノマー、
(ii)アミン反応性ポリアシルモノマー、及び
(iii)保護アミノ基基を含むモノマー
から形成される。
【0076】
本開示はまた、
(i)ポリアミンモノマー、
(ii)アミン反応性ポリアシルモノマー、及び
(iii)保護アミノ基基を含むモノマー
の界面重合で形成されるポリマー反応生成物を含む。
【0077】
本開示の別の実施形態では、保護アミノ基基を含むモノマーは次式(VI)の化合物である。
【0078】
【化23】
式中、
Arは炭素原子数6〜14の適宜置換されていてもよいアリール基であり、
Yは保護アミノ基基であり、
Rは独立に又は同時にY又は−C(O)−Xであり、
Xは脱離基であり、
nは1、2又は3であり、
任意の置換基は1〜5個のハロ、(C
1〜C
6)アルキル、(C
1〜C
6)アルケニル、又は(C
1〜C
6)アルキニルを含む。
【0079】
別の実施形態では、Arは炭素原子数6〜10の適宜置換されていてもよいアリール基、例えばフェニル又はナフチルである。別の実施形態では、Arは適宜置換されていてもよいC
6アリール基、例えばフェニルである。別の実施形態では、任意の置換基はメチル、エチル、プロピル又はイソプロピルを含む。
【0080】
別の実施形態では、保護アミノ基基(Y)は−N=S=Oである。
【0081】
本開示の別の実施形態では、式(VI)の化合物は次式(VIa)、(VIb)又は(VIc)の化合物である。
【0082】
【化24】
ある実施形態では、式(VIa)の化合物は次式のものである。
【0083】
【化25】
式中、Xは脱離基である。
【0084】
本開示の別の実施形態では、式(VIb)の化合物は次式のものである。
【0085】
【化26】
式中、Xは脱離基である。
【0086】
別の実施形態では、式(VIc)の化合物は次式のものである。
【0087】
【化27】
式中、Xは脱離基である。
【0088】
本開示の別の実施形態では、式(VI)の化合物の基Rの1つが−C(O)−X部分である場合、これらの化合物は二元の官能性を保有し、従って保護アミノ基基及びアミン反応性アシル部分を含有する。従って、一実施形態では、かかる二元の官能性モノマーはポリアミドポリマーの製造中アミン及びアシルモノマーとして作用することができ、従って例えば水又は酸溶液と接触すると自己重合プロセスで反応することができる。保護アミノ基基は、遊離のアミノ基に変換(脱保護)されると、式(VI)の別の化合物のアミン反応性アシル部分(−C(O)−X)と反応することができる。一実施形態では、かかる自己重合プロセスの結果、(ポリアミンモノマー、アミン反応性ポリアシルモノマー及び/又は保護アミノ基基を含むモノマーから形成される)より広いポリアミドポリマーマトリックス内にナノサイズの構造(第1のポリマーサブ構造)がその場で形成される。一実施形態では、本開示のポリマーマトリックスが基材上に支持されて膜(RO又はNF)を形成する場合、自己重合プロセスの結果として形成されるナノサイズの構造は流れ値を上昇させ、膜を通過する液体のより多くの流れを可能にする。一実施形態では、かかるナノサイズの構造は膜の流動性を増大するが、膜の塩選択性には影響しない。
【0089】
一実施形態では、保護アミノ基基を含むモノマーは、界面重合(IP)プロセス後、よりバランスのとれた表面電荷を有するポリマーマトリックスを生ずる。IPプロセス中、ポリアミンモノマー単位を含有する水溶液に由来する水分子は、アミン反応性ポリアシルモノマー単位を含有する有機溶液中に拡散する。水は親核性でもあるので、これらの水分子はまたアミン反応性アシル部分と反応してポリマーマトリックスの上面にカルボン酸基を形成する。理論に縛られることはないが、保護アミノ基基を含むモノマー単位を添加すると、保護アミノ基部分の脱保護の結果として生成するカルボン酸基の数が低下し、かかるアミノ基は次にアミン反応性アシル部分(水ではなく)と反応すると考えられる。保護アミノ基部分もまた水分子と反応し、有機溶液中に遊離のアミノ基を形成し、これが次にアミン反応性アシル部分と反応することができ、その後IPプロセス中に形成されるカルボン酸基の数を低減する。
【0090】
別の実施形態では、保護アミノ基基を含むモノマーを組み込むことにより、上記モノマーを使用して製造されるポリアミドポリマーの架橋が増大する。別の実施形態では、保護アミノ基基及びアミン反応性アシル部分を含む二元官能性モノマーは、他のかかる二元官能性モノマーと反応(自己重合)して前駆体ポリアミドポリマー(ポリマーサブ構造)を形成することができ、これが次にポリアミン/ポリアシルモノマーと重合する。例えば、スキーム2に示されているように、一実施形態では、保護アミノ基基を含むモノマーが二元の官能性モノマー(式(VId)及び(VIe)の化合物)である場合、これらのモノマーは自身と反応して(VII及びVIIIを形成する)ポリマーサブ構造を形成し(自己重合プロセス)、次にこれがより広いポリアミドポリマー中に組み込まれる。
【0091】
【化28】
従って、保護アミノ基基を含むかかるモノマー単位はその場でナノ/超枝分れ構造を形成し、従って得られる膜の気孔率及び対応する膜のA値を増大する。加えて、これらのモノマーはまたポリアミンモノマー及びアミン反応性ポリアシルモノマーから形成されるポリアミドポリマーマトリックスの重合速度を遅くする。
【0092】
本開示の別の実施形態では、保護アミノ基基を含むモノマーは、塩化チオニル又は塩化オキサリルなどのようなハロゲン化剤を用いる保護されてない前駆体(例えば、アミノベンゾ酸)のハロゲン化により製造される。一実施形態における保護アミノ基基を含むモノマー単位の製造をスキーム3に示す。保護アミノ基基を含むモノマーを形成するための他の一般的な反応はKimの米国特許第5321162号(援用によりその全体が本明細書の一部をなす)に教示されている。かかる前駆体化合物のハロゲン化はかかる化合物の製造の単なる一例であり、また任意の脱離基のかかる前駆体化合物への組み込みは当業者の知識の範囲内であることが了解されよう。
【0093】
【化29】
ある実施形態では、本開示のポリマーマトリックスが基材上に支持され、膜(例えばRO又はNF膜)として使用される場合、これらの膜は現在の圧力制限の下で海水及び/又は汽水の脱塩のための処理に適切なA値を有する。一実施形態では、A値は0より大きい。一実施形態では、A値は少なくとも約5.0、約5.5又は約6.0である。別の実施形態では、
図1に示されているように、本開示のポリマーは膜のA値を(保護アミノ基基を含むモノマー単位を含有しない膜と比較して)少なくとも倍増大する。理論に縛られることはないが、この効果は、得られるポリマーマトリックスの気孔率を増大(又は導入)し、従って、対応してA値を増大する超枝分れしたナノサイズの構造の結果であり得る。
【0094】
別の実施形態では、ポリアミンモノマーは2以上の反応性アミノ部分を含む。ある実施形態では、ポリアミンモノマーは脂肪族ポリアミン、環式脂肪族ポリアミン又は芳香族ポリアミンを含む。一実施形態では、脂肪族ポリアミンモノマーの脂肪族部分は2〜20個の炭素原子を含有する枝分れ又は非枝分れで飽和又は不飽和のアルキル鎖であり、2以上の第一アミノ基を含有する。かかるモノマー単位の例としては、限定されることはないが、トリエチレンテトラアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、又はトリス(2−アミノエチル)アミンがある。芳香族ポリアミンモノマーの例としては、限定されることはないが、ジアミノベンゼン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、トリアミノベンゼン、1,3,5−トリアミノベンゼン、1,3,4−トリアミノベンゼン、2,4−ジアミノトルエン、キシリレン−ジアミンなどがある。環式脂肪族ポリアミンモノマーの例としては、限定されることはないが、ピペラジン、イミダゾリジン、ジアゼパン及び異性体などがある。
【0095】
さらに別の実施形態では、芳香族ポリアミンは次式(IX)の化合物を含む。
【0096】
【化30】
式中、Arは炭素原子数6〜14のアリール基であり、pは2又は3であり、任意の置換基は1〜5個のハロ、(C
1〜C
6)アルキル、(C
1〜C
6)アルケニル、又は(C
1〜C
6)アルキニルを含む。
【0097】
別の実施形態では、Arは炭素原子数6〜10の適宜置換されていてもよいアリール基、例えばフェニル又はナフチルである。別の実施形態では、Arは適宜置換されていてもよいC
6アリール基、例えばフェニルである。別の実施形態では、任意の置換基はメチル、エチル、プロピル又はイソプロピルを含む。
【0098】
別の実施形態では、式(IX)の芳香族ポリアミンは次式のものである。
【0099】
【化31】
別の実施形態では、式(IX)の芳香族ポリアミンは次式のものである。
【0100】
【化32】
本開示の別の実施形態では、環式脂肪族ポリアミンモノマーは次式(X)のモノマーである。
【0101】
【化33】
式中、qは1、2、3又は4であり、2以上の炭素原子は−NHで置き換えられており、環式脂肪族環は1〜5個のハロ、(C
1〜C
6)アルキル、(C
1〜C
6)アルケニル、又は(C
1〜C
6)アルキニルで適宜置換されている。
【0102】
別の実施形態では、環式脂肪族ポリアミンモノマーはC
5〜C
7環式脂肪族環であり、2以上の炭素原子は−NHで置き換えられている。別の実施形態では、環式脂肪族ポリアミンモノマーはC
6−環式脂肪族環であり、2以上の炭素原子は−NHで置き換えられている。
【0103】
別の実施形態では、式Xの環式脂肪族ポリアミンモノマーは次式のものである。
【0104】
【化34】
本開示の別の実施形態では、脂肪族ポリアミンモノマーは2以上の反応性アミノ(−NH
2)部分を含む。別の実施形態では、脂肪族ポリアミンモノマーは次式(XI)の化合物である。
【0105】
【化35】
式中、Wは(C
2-20)アルキレン基又は(C
2-20)アルケニレン基であり、アルキレン又はアルケニレン基中の1以上の炭素原子、適宜2以上の炭素原子は、適宜O、S、NH又はN(C
1-6)アルキル部分、適切にはNH又はN(C
1-6)アルキル部分で置き換えられる。別の実施形態では、Wは(C
4-10)アルキレン基であり、アルキレン基中の1以上の炭素原子、適宜2以上の炭素原子は適宜NH又はN(C
1-6)アルキル部分で置き換えられている。ある実施形態では、脂肪族ポリアミンモノマーは、トリエチレンテトラアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、又はトリス(2−アミノエチル)アミンである。本開示の別の実施形態では、式(XI)のモノマーは次式のものである。
【0106】
【化36】
本開示の別の実施形態では、アミン反応性ポリアシルモノマーは次式(XII)の化合物である。
【0107】
【化37】
式中、mは2、3又は4であり、Arは炭素原子数6〜14の適宜置換されていてもよいアリール基であり、X’は脱離基であり、任意の置換基は1〜5個のハロ、(C
1〜C
6)アルキル、(C
1〜C
6)アルケニル、又は(C
1〜C
6)アルキニルを含む。アミン反応性ポリアシルモノマーの例としては、限定されることはないが、トリメソイルハライド、トリメリト酸ハロゲン化物、イソフタロイルハライド、テレフタロイルハライド、などのような芳香族アシルハライドがある。
【0108】
別の実施形態では、Arは炭素原子数6〜10の適宜置換されていてもよいアリール基、例えばフェニル又はナフチルである。別の実施形態では、Arは適宜置換されていてもよいC
6アリール基、例えばフェニルである。別の実施形態では、任意の置換基はメチル、エチル、プロピル又はイソプロピルを含む。
【0109】
別の実施形態では、式(XII)のアミン反応性ポリアシルモノマーは次式のものである。
【0110】
【化38】
式中、mは2又は3であり、X’は脱離基である。
【0111】
別の実施形態では、式(XII)のアミン反応性ポリアシルモノマーは次式のものである。
【0112】
【化39】
式中、X’は脱離基である。
【0113】
別の実施形態では、脱離基X’はクロロ、ブロモ、ヨード又はフルオロのようなハロゲンである。一実施形態では、脱離基X’はクロロである。
【0114】
一実施形態では、本開示のポリマーを含む膜は水の処理、例えば海水の脱塩に有用である。従って、本開示は、上記RO又はNF膜で水を濾過して、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、塩素イオン、硫酸イオン、等のようなイオンを除去することを含む、海水のような水を処理する方法を含む。一実施形態では、膜は、浄水装置、並びに溶解又は懸濁している成分を含む水性及び有機液体のための選択的分離システムのような用途に使用される。
【0115】
(III)方法、装置及び使用
本開示はまた、本開示のポリマーマトリックスを製造するための界面重合(IP)プロセスも含み、このマトリックスは低下した表面負電荷及び増大したA値を有する膜を提供する。IPプロセスは一般にポリアミンモノマーを含む水溶液とアミン反応性ポリアシルモノマーを含む有機溶液とを接触させることにより進行する。これら2つの溶液(水性及び有機溶液)の界面で、保護アミノ基基を含むモノマー単位は水との相互作用により脱保護されて、存在するマトリックスと反応して変性ポリアミドポリマーを形成する遊離アミノモノマーを形成する。IPにより製造された従来のポリアミドマトリックスでは、残留するアミン反応性ポリアシルモノマーと水(水溶液に由来する)が反応する結果としてIPプロセス中又はその後ポリマーの表面上に余分な遊離のカルボキシル基が形成される。本開示においては、一実施形態では、保護アミノ基基を含むモノマーを有機溶液に添加した結果として、IPプロセス中にモノマー単位の脱保護アミノ基基と残留するアミン反応性ポリアシルモノマーとの相互作用により形成される遊離のカルボキシル基(従って表面負電荷)の量が低下する。
【0116】
従って、本開示の一実施形態では、ポリアミドポリマーマトリックスを含む膜を製造するための界面重合プロセスが含まれ、この方法は、基材を、
(i)ポリアミンモノマー
を含む水溶液、並びに
(i)アミン反応性ポリアシルモノマー、及び
(ii)保護アミノ基基を含むモノマー
を含む有機溶液と接触させることを含み、
ここで、ポリアミンモノマー、アミン反応性ポリアシルモノマー及び保護アミノ基基を含むモノマーは上で定義した通りである。
【0117】
一実施形態では基材を最初に水溶液と、その後有機溶液と接触させ、又は別の実施形態では基材を最初に有機溶液と、その後水溶液と接触させる。
【0118】
本開示の別の実施形態では、このプロセスは、限定されることはないが4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)又はピリジンのような非親核性塩基の存在下で行われる。
【0119】
別の実施形態では、ポリアミンモノマーは1〜4%(wt/wt)、1.5〜2.5%(wt/wt)又は約2.0%(wt/wt)の量で水溶液中に存在する。別の実施形態では、アミン反応性ポリアシルモノマーは0.01〜0.5%(wt/wt)、約0.10〜0.30%(wt/wt)又は約0.20%(wt/wt)の量で有機溶液中に存在する。さらに別の実施形態では、保護アミノ基基を含むモノマーは0.01〜0.20%(wt/wt)、約0.03〜0.10%(wt/wt)又は約0.03〜0.06%(wt/wt)の量で有機溶液中に存在する。
【0120】
この膜は、さらに処理して残留する化学物質を除去し、性能を調節し、及び/又は保護コーティングを設け得る。例えば、塩素化剤、アミンメチル化剤、酸化剤などによる形成後処理は性能を改良し得る。かかる任意の処理の後、膜はすぐに使用できる。また、膜は後の使用のために保管し得る。
【0121】
本開示のポリマーマトリックスは、本開示の複合膜に形成し、濾過、分離、濃縮装置並びに医療機器、血液処理装置などに組み込み得る。これらの装置はまた浄水、脱塩、産業排水処理、鉱業のような鉱物回収、及び産業処理の適用固体の回収にも有用である。さらに、限定されることはないが多孔性ビーズ、クロマトグラフィー材料、金属表面、微小デバイス、医療装置、カテーテルなどを含むあらゆる基材の表面上の層又はコーティングとしての使用が包含される。これらのコーティングは被覆された基材の上を通過する作用物質のための潤滑剤、抗生物質、リザーバー、及び/又はフィルターとして機能し得る。これらのコーティングはまた、生物学的作用物質(例えば抗体、抗生物質、抗血液血漿凝固剤、ヌクレオチド、医薬品、など)を担持し得る。またマトリックスはカプセル化し、また医薬品、診断剤、化粧品、などの制御放出を可能にするためにも使用し得る。
【0122】
ある実施形態では、本開示のポリマーマトリックスは水の処理、例えば海水の脱塩のための膜技術に有用である。従って、本開示は、基材に支持された本開示のポリマーマトリックスを含む膜(例えばRO又はNF膜)で水を濾過して、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、クロリド、硫酸イオン、等のようなイオンを除去することを含む、海水のような水を処理する方法を包含する。別の実施形態では、本開示のマトリックスを使用する膜は浄水装置並びに溶解又は懸濁した成分を有する水性及び有機液体のための選択的分離系にも有用である。
【0123】
本開示はまた、逆浸透又はナノ濾過プロセスで本開示のポリマーマトリックスを含む膜に水を通すことを含む、水を処理する、例えば海水の脱塩の方法を包含する。
【0124】
本開示の複合膜は溶質の溶媒からの分離を達成するためにあらゆる構成又は配置で使用することができる。これらの構成には、分配、絶対濾過、クロマトグラフィー、交換及び通過濃縮並びに当技術分野で公知のその他の構成がある。本発明の複合膜と共にデッドエンド濾過及びクロマトグラフィー構成を使用することができるが、クロスフロー濾過が最適である。デッドエンド構成では全ての溶媒が複合膜を通って通過し、複合膜の濾過側に溶質が保持される。膜表面での溶質の蓄積はケーキングを発生し得る。これらの構成において、濾過装置は周期的にバックフラッシュしてケーキ固形分を除去するか又はフィルターを廃棄しなければならない。クロスフロー構成では供給液が部分的に通過するので排斥された溶質は濾過膜表面から連続的に残余分と共に洗い流される。
【実施例】
【0125】
以下の非限定実施例は本開示の例示である。
【0126】
ここで、以下の実施例により本開示をさらに詳細に記載する。温度はセ氏で示し、略号は当技術分野で通常の意味を有する。
【0127】
実験
2重量部のm−フェニレンジアミン(MPD)及び6.6重量部のカンファースルホン酸/トリエチルアミン塩、並びに91.4重量部の水を一緒に混合して水溶液を調製した。この水溶液を典型的な多孔性支持フィルム(PET faber上のポリスルホン)に塗布した。過剰の水溶液を除去して多孔性支持フィルム上にフィルムを形成した。約0.2重量%のトリメソイルクロリド(TMC)又は合計で約0.2重量%の混合モノマー(TMC+保護アミンモノマー)を含有するisopar−G溶液をフィルムに塗布した。過剰のisopar−G溶液を除去し、この支持フィルムを60℃の乾燥オーブン中に6分間保持して多孔性支持フィルム上に薄いフィルムを形成した。こうして複合半透過性RO膜を得た。
【0128】
生成した複合半透過性RO膜を使用して透過試験に接触させた。すなわち、2000ppmの塩化ナトリウム水溶液を原水として、温度25C、pH6.5、圧力225psiの条件下で処理した。その結果、表1及び2、並びに
図1に見られるような塩化ナトリウム溶液排斥率及び透過流量(A値として表す)が得られた。
【0129】
【表1】
【0130】
【表2】
現在のところ好ましい実施例と考えられるものを参照して本開示を説明して来たが、開示された実施例に限定されないと理解されたい。逆に、本開示は後記特許請求の範囲の思想及び範囲に入る様々な改変及び等価な配列を包含するものである。
【0131】
全ての刊行物、特許及び特許出願は、各個々の刊行物、特許及び特許出願が具体的かつ個別に援用によりその全体が本明細書の一部をなすのと同程度に、援用によりその全体が本明細書の一部をなす。本出願中の用語が援用した文献と異なって定義されている場合は、本明細書に挙げた定義がその用語の定義とされる。