(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6196742
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】電極セット、特に除細動器用の電極セット
(51)【国際特許分類】
A61N 1/04 20060101AFI20170904BHJP
A61N 1/362 20060101ALI20170904BHJP
【FI】
A61N1/04
A61N1/362
【請求項の数】24
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-553601(P2016-553601)
(86)(22)【出願日】2015年2月23日
(65)【公表番号】特表2017-510330(P2017-510330A)
(43)【公表日】2017年4月13日
(86)【国際出願番号】AT2015000031
(87)【国際公開番号】WO2015143460
(87)【国際公開日】20151001
【審査請求日】2016年8月30日
(31)【優先権主張番号】A219/2014
(32)【優先日】2014年3月27日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】507163677
【氏名又は名称】レオン.ラング
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラング,バーハス
(72)【発明者】
【氏名】フォーガー,サイモン
【審査官】
石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】
特表2010−508939(JP,A)
【文献】
特表2007−530125(JP,A)
【文献】
特表2008−513079(JP,A)
【文献】
特開2008−272023(JP,A)
【文献】
特表2002−542865(JP,A)
【文献】
特開昭62−72319(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/04
A61N 1/362
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも二つの電極(1a,1b)を含む、特に除細動器(35)用の電極セットであって、前記電極の各々が、
キャリア層(2)、
導電性の接触層(3)、
導電性のゲル層(4)および、
非導電性の電極カバー(5)を備えてなる、電極セットにおいて、
電極セット(30)の貯蔵状態において、前記電極カバー(5)はお互いに、前記少なくとも二つの電極(1a,1b)のゲル層(4)から離れた側において、少なくとも部分的に平面的な関係でもたれあっており、
前記電極(1a,1b)のゲル層(4)はお互いに、前記電極カバー(5)における少なくとも二つの開口部(14,15)を介して、部分的に直接接触している、
ことを特徴とする電極セット。
【請求項2】
電極の数が、電極セット(30)あたり二つの電極(1a,1b)に制限される、ことを特徴とする請求項1に記載の電極セット。
【請求項3】
電極セット(30)の貯蔵状態において、電流導体(6)が前記電極(1a,1b)に固定されている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電極セット。
【請求項4】
電極セット(30)の貯蔵状態において、気密性のパッケージ(10)が電極セット(30)を包み込んでいる、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電極セット。
【請求項5】
電極セット(30)の貯蔵状態において、前記電流導体(6)が前記気密性のパッケージ(10)を通って外に延びている、ことを特徴とする請求項3〜4のいずれか一項に記載の電極セット。
【請求項6】
前記電極(1a,1b)の各々について、それぞれ分離した電極カバー(5)が設けられている(
図8参照)、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の電極セット。
【請求項7】
前記電極のそれぞれの電極カバー(5)は、共通の(好ましくは一体物の)電極カバー(5)を形成している(
図4参照)、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の電極セット。
【請求項8】
少なくとも部分的にはほぼ平らである前記電極のそれぞれの電極カバー(5)は、折り目線(13)によってお互いに対し恒常的に接続されている(
図4参照)、ことを特徴とする請求項7に記載の電極セット。
【請求項9】
前記電極カバー(5)を接続するための折り目線(13)は、少なくとも部分的に付与されたミシン目として提供されている、ことを特徴とする請求項8に記載の電極セット。
【請求項10】
前記接続された電極カバー(5)は、合わさるように折り畳み可能であり、貯蔵状態で前記電極(1a,1b)間に配置される、ことを特徴とする請求項7〜9のいずれか一項に記載の電極セット。
【請求項11】
前記電極カバー(5)の全表面積が、前記電極(1a,1b)のゲル層(4)の面積の少なくとも2倍である、ことを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の電極セット。
【請求項12】
前記電極(1a,1b)が固定されている表面と反対側の、前記電極カバー(5)の表面には、電極(1a,1b)が存在しない、ことを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の電極セット。
【請求項13】
前記電極カバー(5)はそれぞれ、受入れ領域(20a,20b)において少なくとも1つの開口部(14,15)を有している、ことを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の電極セット。
【請求項14】
前記電極カバー(5)は、一つの受入れ領域(20a,20b)において少なくとも1つの大きな開口部(14)を有していると共に、別の受入れ領域(20a,20b)において少なくとも1つの小さな開口部(15)を有している、ことを特徴とする請求項13に記載の電極セット。
【請求項15】
電極セット(30)の貯蔵状態において、前記少なくとも1つの小さな開口部(15)は、前記少なくとも1つの大きな開口部(14)と整列する、ことを特徴とする請求項14に記載の電極セット。
【請求項16】
前記貯蔵状態において、前記電極カバー(5)が折り目線(13)に沿って折り畳まれたとき、前記少なくとも1つの小さな開口部(15)は、前記少なくとも1つの大きな開口部(14)の領域内に完全に配置される、ことを特徴とする請求項14又は15に記載の電極セット。
【請求項17】
前記少なくとも1つの小さな開口部(15)の面積は、前記少なくとも1つの大きな開口部(14)の面積の30%〜70%の間にある、ことを特徴とする請求項14〜16のいずれか一項に記載の電極セット。
【請求項18】
前記開口部(14,15)は、好ましくは円形状に形成されている、ことを特徴とする請求項13〜17のいずれか一項に記載の電極セット。
【請求項19】
少なくとも1つの位置決め補助部(18)及び/又は折り目線(13)が、前記電極カバー(5)によって形作られている、ことを特徴とする請求項1〜18のいずれか一項に記載の電極セット。
【請求項20】
特に除細動器(35)用の電極セットを製造する方法であって、
少なくとも1つの穴打抜きパンチ(21)又はレーザーによって、一帯の電極カバー(5)上に展開する材料に、互いに異なる開口部(14,15)を付与する工程と、
帯状に走行する電極カバー(5)の材料に対し、打抜きパンチ加工されない電極(1a,1b)の基礎材料を適用する、又は、仕上がった電極(1a,1b)を適用する工程と、
少なくとも1つの電極パンチ(22)又はレーザーによって、残りの材料を取り除きながら電極(1a,1b)の形状を仕上げると共に、カードパンチ(23)又はレーザーによって、好ましくは対をなす関係で接着された電極(1a,1b)を具備した状態で電極カバー(5)の形状を切り出し、それと同時に折り目線(13)にミシン目を入れる工程であって、前記カードパンチによる、対をなす関係で接着された電極(1a,1b)を具備した電極カバー(5)の形状を切り出す操作、及び、それと同時的な折り目線(13)にミシン目を入れる操作が、別の加工工程(23)で行われる、あるいは、分離した電極カバー(5)の場合には省略することができる、という工程と、
別の加工工程で、又は、他の加工工程のうちの一つの最中に、前記電極カバー(5)及び前記付与された開口部(14,15)の残りの材料を引き剥がす工程と、
を備えてなることを特徴とする電極セットの製造方法。
【請求項21】
電極カバー(5)の材料に開口部(14,15)を付与することは、電極カバー(5)の材料に電極(1a,1b)を接着する前に行われる、
ことを特徴とする請求項20に記載の電極セットの製造方法。
【請求項22】
前記レーザー、並びに/又は、前記穴打抜きパンチ(21)、前記電極パンチ(22)および前記カードパンチ(23)は、電極セット(30)の製造用の自動化された製造設備(24)の一部である、
ことを特徴とする請求項20又は21に記載の電極セットの製造方法。
【請求項23】
自動供給装置は、電極カバー(5)及び電極(1a,1b)のための材料に前記製造設備(24)を通過させる、
ことを特徴とする請求項20〜22のいずれか一項に記載の電極セットの製造方法。
【請求項24】
電極セット(30)におけるゲル層(4)の導電性(S)をチェックするための方法であって、
電気的装置、好ましくは除細動器(35)からのチェック電流(K)を、貯蔵状態で配置された梱包後の電極セット(30)に通すものであり、
ここで、前記電極セットにおいては、少なくとも1つの小さな開口部(15)が少なくとも1つの大きな開口部(14)の領域内に完全に収まり、お互いに対して電極(1a,1b)の接触表面を形成しており、当該接触表面は、前記小さな開口部(15)の面積によって定義され、前記接触表面を介して前記チェック電流(K)は電極カバー(5)を通過でき、前記導電性(S)を確かめることができる、ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも二つの電極を含む、特に除細動器用の電極セットであって、それらの電極の各々が、
キャリア層と、
導電性の接触層と、
導電性のゲル層と、
非導電性の電極カバーと、を備えてなる電極セットに関する。
【0002】
本発明は更に、本発明に従う電極セットの製造方法、及び、電極セットにおけるゲル層のコンダクタンス(導電性、伝導性)をチェックするための方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
この種の電極セットは既に従来技術の一部となっており、例えば米国特許第5579919号明細書に示されている。
【0004】
従来の技術は、それら(電極群)を保護すべく電極群が気密な(ガス密な)パッケージ内配置された様々な電極セットを含む。電極群に適合された電流導体は、そのケースにおける気密なパッケージから外に突出しており、その結果、それらを例えば除細動器のような電気的装置に接続することができる。
【0005】
過去、特に一般人用の除細動器については、気密に梱包された電極が使用されており、それらは、接触表面または追加的に適合されたテスト用コンタクト(接触部)によって、いわゆる「インライン計測」(inline measurement)を遂行することができるものであった。その「インライン計測」は、電極上に適用されたゲル層のコンダクタンスをチェックするのに役立つ。多くの電極セットは、インライン計測用に追加的に適合されたコンタクト(接触部)を有しておらず、それらにおいては、ゲル層によって形作られた接触表面を介してコンダクタンスが直接的にチェックされる。そのような接触表面は、電極間に配置された絶縁性の電極カバーにおける1つ以上の開口部によって生み出される。
【0006】
電極が使用されるとき、それはパッケージ(梱包材)から取り除かれて、問題の人物の身体にゲル層と共に固定される必要がある。その接着性のゲル層は同時に、緊急事態下で除細動器によって供給されるところの電流の導体でもある。長期にわたって保管した場合、当該ゲル層が例えば乾燥によってその伝導性(導電性)を失うということが起こり得る。そのことは、電極の使用時に重大な問題を引き起こすことになる。そのため、ゲル層のコンダクタンスが正常であるか否かに関し、除細動器によるインライン計測によってチェックが定期的になされる。
【0007】
インライン計測はチェック用電流によってなされる。そのチェック用電流は、除細動器から電流導体を経由して電極のパッケージに送られるものであり、それは(1つの)電極を通過し、接触表面を経由して他方の電極へ流れることができ、第2の電流導体を経由して除細動器へ戻る。仮に電極間の接触が十分に良くないならば、除細動器は警告を発する。インライン計測にとって重要なことは、二つの電極間の接触が、その伝導性に基づいてチュックすることが意図されているときに、ゲル層の表面において生じていることであることは理解されよう。
【0008】
具体的な構成において、それぞれの電極は電極カバーに対し両側に適用される。そのことは、組立て手順を複雑化しコスト高なものとする。というのも、電極セットの製造又は組立てにおいて、製造プロセスの実行時に電極カバーをひっくり返す必要があり、その下側面は何か他の方法でアクセス可能とする必要がある。そのことは、追加の作業工程および高い製造コストという結果をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5579919号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、上述のような不利益を回避すること、そして、従来技術を超えて改良された電極セット、及び、電極セットの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、請求項1,20及び24の各発明によって達成される。
【0012】
各電極に対してそれぞれ別の電極カバーが提供されるならば、その点に関して特に有利であることが判明した。パッケージング(梱包)に先だって電極カバーは共に横たえられ、各電極は、組み立てられた電極カバーの外側に配置される。その電極セットの製造コストは低減され得る、なぜなら、一電極当り一つの電極カバーが提供されるので、電極カバーは、それを両側で電極(複数)とフィットさせるために製造プロセスにおいてひっくり返す必要が無い。電極カバー上に接着された電極(複数)は、製造後、お互いに対をなす関係で梱包される。
【0013】
更なる実施形態によれば、(二つの)電極カバーは、共通の(好ましくは一体物の)電極カバーを形成する。一体物の変形例は、両方の電極が一つの電極カバー上に固定され且つ同(両方の)電極がその後に続けて梱包されることを可能にする。(本発明が提供するように)両方の電極が同じ側に接着されるならば、電極セットの製造において電極カバーをひっくり返す操作を免除することが可能になる。
【0014】
製造時に(好ましくは製造用のベルト上で)電極カバーを電極とフィット(適合)させることは、一方の側から(好ましくは上から)素早く且つ容易に行われる。
【0015】
少なくとも部分的にはほぼ平らである電極カバー(複数)が折り目線を介して恒常的に繋がれているならば、当該電極カバーを(重ね)合わさるように折り畳むことが可能である。そのことは、合わさるように折り畳まれた電極カバーがより小さなパッケージ(梱包材)を必要とし、空間的に節約した関係で除細動器に取り付けられることを可能にする、といった結果につながる。
【0016】
更なる実施形態では、前記折り目線は、電極カバーにおいて少なくとも部分的に付与されたミシン目であることが可能である。かくして電極カバーを折り畳む際、このことは、合わさるように折り畳み後に(二つの)電極がきちんと上下に並んで、電極カバーの切断エッジ、及び、開口部または位置決め補助部がお互いに整列すること、を確かなものとする。
【0017】
接続された(互いに繋がった)電極カバーが合わさるように折り畳むことができ、貯蔵状態において電極間に配置されるならば、このことは、(二つの)電極が非梱包の電極セットの外側に配置されることを確かなものとする。(二つの)電極は、パッケージの中で偶発的に互いに接触状態となることはできず、(二つの)接触部が相手と出くわしたときにインライン計測動作で可能性としてエラーを生じさせる。
【0018】
更なる実施形態では、電極カバーの全表面積は(二つの)電極のゲル層の面積の少なくとも2倍であり、電極が固定されている表面と反対側の前記電極カバーの表面には、電極が存在しない、ということも可能である。既に述べたように、そのことは、電極間に十分なフリースペース(自由空間)が存在するがゆえに電極はお互いに偶発的に接触し得ない、という効果をもたらす。このことは、合わさるように折り畳まれ得る前記一体物の変形例と、別々の電極カバーを具備した「2部品タイプの変形例」との両方に当てはまる。両方の変形例では、電極カバーはお互いにもたれ合った状況で梱包され、(二つの)電極は電極セットの外側面に配置される。かくして、例えば電極カバーの開口部を通じて(それが)所望されている場合を除いて、ゲル層の(及び電極の互いに対する)接触が排除される。
【0019】
各電極のゲル層の領域には、電極カバーにおいて開口部(opening)が存在する。電極カバーが重ね合わせて置かれたとき、電極のゲル層は、当該開口部を介して互いに接触することによる相互の接触部を形成する。それ故、そのことは、両サイドへの電極の取り付けにおいて、開口部を有するたった一枚の電極カバーを使用する際に、電極(群)に対して追加のコンタクト(接触部)を取り付ける必要なく、又は、製造プロセスにおいて電極カバーをひっくり返すという複雑で費用のかかる操作を行う必要なく、インライン計測を可能にする。
【0020】
電極の受入れ領域の外側に配置されるところの電極カバーの外側エッジにおける位置決め用補助部(好ましくは、ガイド孔や形状化された部分)は、電極カバーを合わせてフィットさせる際の製造プロセスにおいて、(二つの)開口部のお互いに対する正確な位置決めを確実なものとする。
【0021】
その点において、一体物の電極カバーが、一つの受入れ領域において少なくとも1つの大きな開口部を、そして別の受入れ領域において少なくとも1つの小さな開口部を有することは、特に有利であることが判明した。それ故、これにより、電極カバーが(重ね)合わさるように折り畳まれるかフィットされた後で、相対的に小さい方の開口部が相対的に大きい方の開口部の領域内に常に居場所を見つけ、これが二つの電極の二つのゲル層間のクリーンな接触表面を確保する、ということが確かなものになる。電極カバーが折り目線で曲げられる、又は、位置決め補助部によってガイドされながら合わさるように折り畳まれるならば、(二つの)開口部の重なり合い(overlapping)は、その異なるサイズのために有り得ない。サイズの異なる開口部は、(二つの)電極を合わさるように折り畳む又はそれらを重ね合わせて配置するという操作を非常に精密に行う必要が無い、という利点をもたらす。そのことは、より効率的な生産スピードやより低い棄却率(reject rate)に反映される。
【0022】
電極セットの貯蔵状態において、前記少なくとも1つの小さな開口部が前記少なくとも1つの大きな開口部と整列し、その結果として、電極のゲル層が互いに接触状態となるならば、その接触表面は前記小さな開口部によって決定される。電極カバーにおける小さな開口部を介して二つの電極のゲル表面を接続することにより、それは、電極を介して電流が流れるや否や、電極カバーの小さな開口部での電気抵抗をもたらす結果となる。このように、小さな開口部のサイズの寸法取りによって、電極でのゲル層の伝導性(導電性)をチェックするための固定値(一定の値)を設定することが可能となる。小さな開口部のサイズに起因するその固定値は、電極セットの各梱包単位において同じ大きさとなる。加えて、梱包された状態では、その寸法取りの観点からの小さな開口部と大きな開口部との間の面積の違いは、電極及び電極カバーの一方の組合せに対する電極及び電極カバーの他方の組合せの接続表面を表すものである。ゲル層の接着的な性質を用いることができるために、追加的な接着性のフィルムや結合剤の使用が省かれるという点で有利である。かくして、接着剤などのような追加的な資材を用いることなく、電極及び電極カバーの二つの組合せがパッケージ(梱包材)内で互いから分離できないようにすることを確かなものとする。
【0023】
更なる実施形態では、二つの開口部の相手側との重なり(overlap)を許さないようにするために、貯蔵状態において、前記少なくとも一つの小さな開口部が前記少なくとも一つの大きな開口部の領域内に完全に配置されるようにすることが可能である。そのことは、開口部の異なるサイズによるだけでなく、例えば折り目線/ミシン目または位置決め補助部によっても達成される。折り目線/ミシン目で折り畳むことで、一つの開口部は別の開口部の上に置かれる。別々の電極カバーを備えた「2ピース(二部品)」構成をフィットさせるときには、(二つの)開口部の相手方に対する精密な位置決めは、例えば位置決め補助部の使用によって達成される。開口部の異なったサイズは、(二つの)開口部が実際上お互いに整列されることへの追加的な確実性を付与する。前記少なくとも一つの小さな開口部の面積が、前記少なくとも一つの大きな開口部の面積の30%〜70%の間にあることは好ましい。
【0024】
更なる実施形態では、開口部は、好ましくは円形状に形成されている。なぜなら、それら(円形状)は、製造時に容易に作ることができ、折り目線によって合わさるように折り畳まれた際に、例えば三角形状や多角形状よりもずっと容易にお互いを整列させることができるからである。
【0025】
少なくとも1つの位置決め補助部が電極カバーによって形作られることは、特に有利であることが判明した。当該位置決め補助部を利用して(好ましくは、穴や電極カバーの形状を利用して)電極セットを組み立てた際には、エラーを回避することができる。それ故これは、電極セットの不正確な組立てを防止すると共に、電極カバーの(二つの)開口部の互いに対する正確な位置決めを確かなものとする。
【0026】
更なる実施形態では、電極カバーの材料(素材)に開口部を付与することは、電極カバーの材料(素材)に接着性電極を接着する前に行われる。そのことは、打抜き加工工程(stamping process)を簡素化すると共に、インライン計測手順で必要とされるように、開口部の互いに対する配置が常に精密に打抜き加工されことを確かなものとする。
【0027】
更なる実施形態では、レーザー、並びに/又は、穴パンチ装置、電極パンチ装置およびカードパンチ装置は、電極セットの製造用の自動化された製造設備の一部分であることができる。そして、そのことは、電極セットの経済的な製造を可能にする。
【0028】
その点において、自動供給装置が、電極カバー及び電極のための材料に前記製造設備を通過させるようガイド(案内)することは、特に有利であることが判明した。それはまた、電極セットのより効率的でより素早い製造に対して実質的に貢献する。
【0029】
本発明の別の観点においては、電気的装置、好ましくは除細動器からのチェック電流(検査電流)が、貯蔵状態にある梱包後の電極セットに通される。ここで、電極セットにおいては、少なくとも1つの小さな開口部が少なくとも1つの大きな開口部の領域内に完全に収められており、このことは、電極のお互いに対する接触表面を形成し、当該接触表面は前記小さな開口部の面積によって定義される。この接触表面を介して前記チェック電流は電極カバーを通過でき、コンダクタンス(導電性)の値を確かめることができる。
【0030】
本発明の更なる詳細は、図面に示された例示による実施形態を参照した具体的な説明によって、以下で十分に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、電極の構成部品の概略的な分解図を示す。
【
図3a】
図3a及び
図3bは、電極カバー上に電極をスタンピング(打抜き加工)する際の製造手順の概略図を示す。
【
図3b】
図3a及び
図3bは、電極カバー上に電極をスタンピング(打抜き加工)する際の製造手順の概略図を示す。
【
図4】
図4は、開いた状態でパッケージング無しの電極セットの概略図を示す。
【
図5】
図5は、パッケージ(梱包)された状態での電極セット概略断面図を示す。
【
図6】
図6は、除細動器に接続された電極セットの概略図を示す。
【
図7】
図7は、電極セットのチェック動作(インライン計測)における電流の流れの概略図を示す。
【
図8】
図8は、個々の電極カバー上におけるパッケージング無しでの電極セットの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、通常、対をなして配設される電極の一つの分解図を示しており、当該電極は、キャリア層2(好ましくは薄い発泡材料から作られる)と、導電性であり且つ接触要素7に接続される接触層3(好ましくは金属膜から作られる)とを備えている。接触要素7は、端部にプラグ8を有する電流導体6に導電的に固定されている。ゲル層4が接触層3に配置されている。ゲル層4は接着性で導電性の材料からなり、除細動器を使用する際、本体と電極との間の接続を形成する。接着性要素9は、個々の層を一体的に接続するために使用される。絶縁要素11とカバー要素12は、接触要素7と接触層3との間の接続を確保する例えば導電性リベットを絶縁しカバーする役割を担う。電極カバー5は、電極1のゲル層4によって接着され、当該ゲル層4が
図1には示されていない第2の電極に貼りつく(又は、くっつく)ことから保護する。
【0033】
電極カバー5は更に、電極カバーの曲げ(即ち換言すれば、折り畳み)を許容する折り目線13を有している。
【0034】
図2は、折り目線13(ここでは、破線の形態をしたミシン目により生み出されるもの)を具備する電極カバー5を示す。電極カバー5は折り目線13によって二つの領域に分割され、一方では受入れ領域20a,他方では受入れ領域20bに分割される。引き続いて、これら受入れ領域20a,20bの各々の上に電極が置かれる。それらは
図2にはまだ見えない。受入れ領域20a,20bの各々には、それぞれの開口部14,15が配置されている。これらの開口部は、折り目線13で電極カバー5を折り畳んだ後で開口部15が開口部14と整列するように配置されている。仮に開口部14,15が他方よりもずっと大きな寸法にあるならば、そのことは、折り畳み後に開口部14,15が互いに整列しなくなる可能性を低減する。電極カバー5が折り畳まれたとき、例えば小さな開口部15は大きな開口部14の中に場所取りできると共に、完全に収容されることができる。仮に電極カバーが2パーツ(2部品)構成であった場合(
図8参照)、異なったサイズの二つの開口部14,15はまた、組立てプロセスを簡素化するであろう、つまり、それらを折り畳む又は一体的にフィット(適合)させる際に必要な精度は低くても良い。かくして、組立てプロセスは、より素早く、より有利なものとなることができる。
【0035】
図3aは、電極1用の製造プロセスを概略図的に示す。製造工程において二つの開口部14,15は、穴打抜きパンチ21で、電極カバー用のウェブ(一帯)として移送中の材料から打抜き加工される。
【0036】
ウェブ(一帯)の更なる加工工程では、準備された電極1が電極カバーの材料上に接着される。次の加工工程では、1つ以上の電極1が、相次いで又は同時的に、電極打抜きパンチ22によって電極用の材料から打抜き加工、カットまたはレーザー加工される。更なる加工工程では、電極1のキャリア層2の(もはや必要ではなくなった)残りのフィルムが引き剥がされる。電極1は依然として、電極カバー5用の材料上の開口部14,15の上にゲル層4が正確に配置された状態で、配置されている。
【0037】
更なる加工工程では、カードパンチ23又はレーザー27によって、一対の電極が電極カバーの材料から切り出される。電極カバー5用のフィルムの残りの材料は、次の加工工程で取り除かれる。電極カバー5における折り目線13のミシン目は、レーザーによって生み出され得るか、又は、カードパンチ23による打抜きを伴う一つの加工工程で、あるいは引き続く別の工程で付与され得る。
【0038】
図3bは、
図3aと同じ加工工程(群)を平面図として示す。電極用のキャリア層2の適用後は、概略図内で開口部はもはや見えなくなるので、開口部14,15だけが破線で示されている。この図では、折り目線13のミシン目が、カードパンチ23による打抜きによって同時に付与されるか、又は、電極カバー5のアウトライン(外形線)と同様にしてレーザー27によって切り込まれ得る。
【0039】
図4は、電極カバー5上の梱包されていない電極セット30を示す。ここでは透き通って図示されている電極カバー5は、この概略図では最上層である。接着性の電極が、電極カバー5の下側面に貼り付けられている。電極カバー5の折り畳まれていないこの状況では、小さな開口部15は大きな開口部14に接触した状態にない。電極カバー5が、破線のミシン目として図示されている折り目線13によって合わさるように折り畳まれるや否や、それぞれの電極のゲル層4が小さな開口部15を介して互いに接合する。
【0040】
図5は、梱包された電極セット30の概略断面図を示す。この場合、パッケージ(梱包材)10は、電極1及び電極カバー5からなる完全なユニットを包み込む。この場合、電流導体6は当該パッケージから外に気密的に延び出ている。電流導体6は、接続要素17を介して接触層3に接続されている。気密なパッケージ10から延び出た電流導体6は、一端にプラグ8を有する。電極セット30はそのプラグで除細動器35に接続することができる。電極カバー5は、二つの電極1間に合わさるように折り畳まれた状態で配置され、それはここでは二つの層で示されている。開口部14,15が、電極カバーからなるこれらの層の各々に設けられている。各電極1のゲル層4は、それら開口部14,15を介して互いに接触した状態にある。このようにしてゲル層4間に生み出されるところの接触領域、他の言葉ではチェック(検査)用接触部16として言及されるところの接触領域は、梱包された電極(群)1の二つのゲル層4間における唯一の接続を提供する。
【0041】
図6は、電流導体6及びプラグ8を介して除細動器35に接続された状態での電極セット30を示す。この状況ではチェック電流(検査電流)を除細動器35から電極セット30に送り込み、再び(除細動器で)受け取ることができる。もし、梱包された電極1のゲル層の伝導性(導電性)に問題があるならば、除細動器35はエラーの警告を発することになる。
【0042】
図7は、除細動器35からプラグ8、電流導体6(好ましくは二極ケーブル)を経て電極セット30に向かうチェック電流(検査電流)Kの形態を概略的に示す。電極セット30では、電流Kは、接触要素7を経由して、ゲル層4に接続された接触層3に流れる。開口部14,15によって形成されたチェック(検査)用接触部16は、矢印で示したチェック電流Kが、一方のゲル層4から他方のゲル層4に流れるのを許容する。続いて、チェック電流Kは、(別の)接続要素7へ、そして前記プラグ8を介して除細動器35に接続された前記二極ケーブルへと戻る別の経路を流れる。チェック電流Kが大きな抵抗を伴うこと無く電極セット30を流れることができるならば、つまり、インライン計測動作が成功裏に終わるならば、その電極セット30は使用し続けることができ、取り換えられる必要は無い。仮に、パッケージや電極セット30全体に対する機械的なダメージの結果として起こり得るところの、ゲル層4の伝導性(導電性)がもはや十分ではない、というのであるならば、そのことは、除細動器35において「フォールト(不良)」と登録される。その場合には、電極セット30を取り換える必要がある。
【0043】
図8は、それぞれの電極1がそれぞれ個別の電極カバー5上にある状態での梱包されていない電極セット30を示す。この実施形態では、電極カバー(複数)は一体物構造ではない。ここでは透明なものとして図示されるところの電極カバー5は、電極1の前方(手前側)に略図的に示した状態で配置されており、電極1を覆い隠している。(電極カバーが)合わされるように折り畳まれていないという電極カバー5のこの状態では、小さな開口部15は大きな開口部14と接触状態にない。(二つの)電極カバー5が、電極から離れたそれぞれの側において合わせられるや否や、(二つの)電極1は小さな開口部15を介して互いに連絡し合うようになる。その点に関して重要なことは、電極カバー5が合わせられる際に、開口部14,15が整列するか、又は、小さな開口部15が大きな開口部14内に現に配置されることを確実にするよう注意を払うことである。それは例えば、電極カバー5に設けられた位置決め補助部18によってなし得る。かくして例えば、デバイス(装置)は、位置決め補助部18において電極カバー5を受承でき、それら電極カバーを正しい位置にて一体的に連結することができる。なお、位置決め補助部18はまた、電極カバー5の外形状によって提供することもでき、開口部(又は孔)の形である必要は無い。
【符号の説明】
【0044】
1 電極
2 キャリア層
3 接触層
4 ゲル層
5 電極カバー
6 電流導体
10 パッケージ(梱包材)
13 折り目線
14 大きな開口部
15 小さな開口部
18 位置決め補助部
20a,20b 受入れ領域
21 穴打抜きパンチ
22 電極打抜きパンチ
23 カードパンチ
24 自動化された製造設備
27 レーザー
30 電極セット
35 除細動器
K チェック電流(検査電流)