(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6196749
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】感熱記録媒体用の新規な顕色剤及びそれを使用する感熱組成媒体
(51)【国際特許分類】
C07C 275/36 20060101AFI20170904BHJP
B41M 5/333 20060101ALI20170904BHJP
B41M 5/327 20060101ALI20170904BHJP
B41M 5/337 20060101ALI20170904BHJP
【FI】
C07C275/36CSP
B41M5/333 220
B41M5/327 215
B41M5/337 212
B41M5/337 214
B41M5/337 230
【請求項の数】34
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-516952(P2017-516952)
(86)(22)【出願日】2015年9月25日
(86)【国際出願番号】US2015052303
(87)【国際公開番号】WO2016049498
(87)【国際公開日】20160331
【審査請求日】2017年3月23日
(31)【優先権主張番号】62/055,932
(32)【優先日】2014年9月26日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517103234
【氏名又は名称】パフォーマンス・ケミカルズ・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】PERFORMANCE CHEMICALS,INC.
(73)【特許権者】
【識別番号】517103245
【氏名又は名称】マルベニ・スペシャルティ・ケミカルズ・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】MARUBENI SPECIALTY CHEMICALS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ラファー,ロナルド・キュー・ジュニア
【審査官】
斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−162941(JP,A)
【文献】
特開平7−214907(JP,A)
【文献】
特開平7−108761(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
CAplus/REGISTRY(STN)
C07C 275/36
B41M 5/327
B41M 5/333
B41M 5/337
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感熱記録媒体用の顕色剤として特に有用な化合物であって、前記化合物は、p−(p−{3−[p−(p−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ウレイド}フェノキシ)フェノール、m−(p−{3−[p−(p−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ウレイド}フェノキシ)フェノール、o−(p−{3−[p−(p−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ウレイド}フェノキシ)フェノール、p−(p−{3−[m−(p−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ウレイド}フェノキシ)フェノール、及びp−(m−{3−[o−(p−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ウレイド}フェノキシ)フェノールからなる群より選択される、化合物。
【請求項2】
前記化合物が、p−(p−{3−[p−(p−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ウレイド}フェノキシ)フェノールである、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
前記化合物が、m−(p−{3−[p−(p−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ウレイド}フェノキシ)フェノールである、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
前記化合物が、o−(p−{3−[p−(p−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ウレイド}フェノキシ)フェノールである、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
前記化合物が、p−(p−{3−[m−(p−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ウレイド}フェノキシ)フェノールである、請求項1記載の化合物。
【請求項6】
前記化合物が、p−(m−{3−[o−(p−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ウレイド}フェノキシ)フェノールである、請求項1記載の化合物。
【請求項7】
無色又は薄く着色した染料前駆体と、加熱すると前記染料前駆体と反応して色を呈することができる顕色剤とを含有する感熱記録層を有し、前記顕色剤が、p−(p−{3−[p−(p−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ウレイド}フェノキシ)フェノール、m−(p−{3−[p−(p−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ウレイド}フェノキシ)フェノール、o−(p−{3−[p−(p−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ウレイド}フェノキシ)フェノール、p−(p−{3−[m−(p−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ウレイド}フェノキシ)フェノール、及びp−(m−{3−[o−(p−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ウレイド}フェノキシ)フェノールからなる群より選択される化合物である、感熱記録シート。
【請求項8】
無色又は薄く着色した染料前駆体と、加熱すると前記染料前駆体と反応して色を呈することができる顕色剤とを含有する記録層をその上に有する基材を含み、前記顕色剤が、p−(p−{3−[p−(p−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ウレイド}フェノキシ)フェノール、m−(p−{3−[p−(p−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ウレイド}フェノキシ)フェノール、o−(p−{3−[p−(p−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ウレイド}フェノキシ)フェノール、p−(p−{3−[m−(p−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ウレイド}フェノキシ)フェノール、及びp−(m−{3−[o−(p−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ウレイド}フェノキシ)フェノールからなる群より選択される化合物である、感熱記録媒体。
【請求項9】
2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(CAS# 5397−34−2)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(CAS# 80−90−1)、ビス−(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン(CAS# 41481−66−7)、4−[4’−[(1’−メチルエチルオキシ)フェニル]スルホニル]フェノール(CAS# 191680−83−8)、4−ヒドロキシフェニル 4−イソプロポキシフェニルスルホン(CAS# 95235−30−6)、N−(p−トルエンスルホニル)−N’−(3−p−トルエンスルホニルオキシフェニル)尿素(CAS# 232938−43−1)、フェノール,4−[[4−(2−プロペン−1イルオキシ)フェニル]スルホニル(CAS# 97042−18−7)、4−ヒドロキシ−4’ベンジルオキシジフェニルスルホン(CAS# 63134−33−8)、及び4,4’ビス(N−カルバモイル−4−メチルベンゼンスルホンアミド)ジフェニルメタン(CAS# 151882−81−4)からなる群より選択される電子受容材料を更に含む、請求項7記載の感熱記録シート。
【請求項10】
2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(CAS# 5397−34−2)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(CAS# 80−90−1)、ビス−(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン(CAS# 41481−66−7)、4−[4’−[(1’−メチルエチルオキシ)フェニル]スルホニル]フェノール(CAS# 191680−83−8)、4−ヒドロキシフェニル 4−イソプロポキシフェニルスルホン(CAS# 95235−30−6)、N−(p−トルエンスルホニル)−N’−(3−p−トルエンスルホニルオキシフェニル)尿素(CAS# 232938−43−1)、フェノール,4−[[4−(2−プロペン−1イルオキシ)フェニル]スルホニル(CAS# 97042−18−7)、4−ヒドロキシ−4’ベンジルオキシジフェニルスルホン(CAS# 63134−33−8)、及び4,4’ビス(N−カルバモイル−4−メチルベンゼンスルホンアミド)ジフェニルメタン(CAS# 151882−81−4)からなる群より選択される電子受容材料を更に含む、請求項8記載の感熱記録媒体。
【請求項11】
無色又は薄く着色した染料前駆体が、2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−N−プロピルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−アミルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−N−エチル−N−sec−ブチルアミノフルオラン、3−ジ−(n−ペンチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−イソアミル−N−エチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−n−ヘキシル−N−エチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−[N−(3−エトキシプロピル)−N−エチルアミノ]−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ−(n−ブチルアミノ)−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、及び3−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオランからなる群より選択される、請求項7記載の感熱記録シート。
【請求項12】
無色又は薄く着色した染料前駆体が、2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)フルオラン素、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−N−プロピルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−アミルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−N−エチル−N−sec−ブチルアミノフルオラン、3−ジ−(n−ペンチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−イソアミル−N−エチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−n−ヘキシル−N−エチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−[N−(3−エトキシプロピル)−N−エチルアミノ]−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ−(n−ブチルアミノ)−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、及び3−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオランからなる群より選択される、請求項8記載の感熱記録媒体。
【請求項13】
増感剤を更に含む、請求項7記載の感熱記録シート。
【請求項14】
増感剤が、ステアルアミド、N−ヒドロキシメチルステアルアミド、N−ステアリルステアルアミド、エチレンビスステアルアミド、N−ステアリル尿素、ベンジル−2−ナフチルエーテル、m−ターフェニル、4−ベンジルビフェニル、4−アセチルビフェニル、4−(4−メチルフェノキシ)ビフェニル、1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタン、1,2−ジフェノキシエタン、2,2’−ビス(4−メトキシフェノキシ)ジエチルエーテル、ジフェノキシキシレン、ビス(4−メトキシフェニル)エーテル、ジフェニルアジパート、ジベンジルオキサラート、ジ(4−メチルベンジル)オキサラート、ジ(4−クロロベンジル)オキサラート、ジメチルテレフタラート、ジベンジルテレフタラート、フェニルベンゼンスルホン酸エステル、ジフェニルスルホン、ビス(4−アリルオキシフェニル)スルホン、4−アセチルアセトフェノン、アセト酢酸アニリド、及び脂肪酸アニリドからなる群より選択される、請求項13記載の感熱記録シート。
【請求項15】
増感剤を更に含む、請求項8記載の感熱記録媒体。
【請求項16】
増感剤が、ステアルアミド、N−ヒドロキシメチルステアルアミド、N−ステアリルステアルアミド、エチレンビスステアルアミド、N−ステアリルステアルアミド、エチレンビスステアルアミド、N−ステアリル尿素、ベンジル−2−ナフチルエーテル、m−ターフェニル、4−ベンジルビフェニル、4−アセチルビフェニル、4−(4−メチルフェノキシ)ビフェニル、1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタン、1,2−ジフェノキシエタン、2,2’−ビス(4−メトキシフェノキシ)ジエチルエーテル、ジフェノキシキシレン、ビス(4−メトキシフェニル)エーテル、ジフェニルアジパート、ジベンジルオキサラート、ジ(4−メチルベンジル)オキサラート、ジ(4−クロロベンジル)オキサラート、ジメチルテレフタラート、ジベンジルテレフタラート、フェニルベンゼンスルホン酸エステル、ジフェニルスルホン、ビス(4−アリルオキシフェニル)スルホン、4−アセチルアセトフェノン、アセト酢酸アニリド、及び脂肪酸アニリドからなる群より選択される、請求項15記載の感熱記録媒体。
【請求項17】
バインダーを更に含む、請求項7記載の感熱記録シート。
【請求項18】
バインダーが、ポリビニルアルコールである、請求項17記載の感熱記録シート。
【請求項19】
バインダーが、アクリル酸エマルション、スチレンコポリマーエマルション、ブタジエンコポリマーエマルション、アクリロニトリルコポリマー及びターポリマーエマルション、ポリビニルアセタートエマルション、ビニルアセタートエチレンエマルション、ポリウレタンエマルション、デンプン、ならびにヒドロキシメチルセルロースからなる群より選択される、請求項17記載の感熱記録シート。
【請求項20】
バインダーを更に含む、請求項8記載の感熱記録媒体。
【請求項21】
バインダーが、ポリビニルアルコールである、請求項20記載の感熱記録媒体。
【請求項22】
バインダーが、アクリル酸エマルション、スチレンコポリマーエマルション、ブタジエンコポリマーエマルション、アクリロニトリルコポリマー及びターポリマーエマルション、ポリビニルアセタートエマルション、ビニルアセタートエチレンエマルション、ポリウレタンエマルション、デンプン、ならびにヒドロキシメチルセルロースからなる群より選択される、請求項21記載の感熱記録媒体。
【請求項23】
充填材を更に含む、請求項7記載の感熱記録シート。
【請求項24】
充填材が、二酸化チタン、シリカ、アルミニウム三水和物、クレイ、マイカ、炭酸カルシウム、タルク、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、中空のプレスチックスフェア、及びポリスチレンからなる群より選択される、請求項23記載の感熱記録シート。
【請求項25】
充填材を更に含む、請求項8記載の感熱記録媒体。
【請求項26】
充填材が、二酸化チタン、シリカ、アルミニウム三水和物、クレイ、マイカ、炭酸カルシウム、タルク、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、中空のプレスチックスフェア、及びポリスチレンからなる群より選択される、請求項25記載の感熱記録媒体。
【請求項27】
スリップ剤を更に含む、請求項7記載の感熱記録シート。
【請求項28】
スリップ剤が、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアルアミド、及びポリエチレンロウからなる群より選択される、請求項27記載の感熱記録シート。
【請求項29】
スリップ剤を更に含む、請求項8記載の感熱記録媒体。
【請求項30】
スリップ剤が、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアルアミド、及びポリエチレンロウからなる群より選択される、請求項29記載の感熱記録媒体。
【請求項31】
UV吸収剤を更に含む、請求項7記載の感熱記録シート。
【請求項32】
蛍光増白剤を更に含む、請求項7記載の感熱記録シート。
【請求項33】
UV吸収剤を更に含む、請求項8記載の感熱記録媒体。
【請求項34】
蛍光増白剤を更に含む、請求項8記載の感熱記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[背景技術]
一般的には、感熱記録シートを得るために、無色又は薄く着色した電子供与染料及び顕色剤(電子受容材料)、例えば、フェノール性化合物が、個々に微粒子に粉砕され、互いに、そして、バインダー、充填材、増感剤、スリップ剤と混合され、他の添加剤が加えられて、塗工剤を得る。この塗工剤が、基材、例えば、紙、合成紙、フィルム、プラスチック等にコートされる。このコートされたシートは、可視記録を得るために、感熱ヘッド、ホットスタンプ、レーザ光等による加熱により誘引される基本的に即時の化学反応により呈色される。感熱記録シートは、広い各種の用途、例えば、計測記録装置、コンピュータ用のターミナルプリンタ、ファクシミリ機、自動発券機、バーコードラベル装置等に使用することができる。
【0002】
尿素化合物は、電子受容材料として周知であり、感熱記録媒体中の顕色剤として一般的に使用されている。米国特許第5,470,816号、同第5,656,569号、同第5,811,369号、及び同第6,927,007号(特許文献1〜4)には、このような尿素化合物を含むことができる感熱記録媒体が記載されている。いずれにしても、感熱記録媒体は、高効率で、良好な反応性を可能にする一方で、更なる所望の特性に合致する顕色剤を含むべきである。この更なる所望の特性は、適切な感熱応答、耐熱性、耐水性、耐油性、可塑剤耐性、及び低背景色を含むことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5,470,816号
【特許文献2】米国特許第5,656,569号
【特許文献3】米国特許第5,811,369号
【特許文献4】米国特許第6,927,007号
【発明の概要】
【0004】
本発明は、新規で、感熱記録紙に使用するのに有用な感熱顕色剤を調製するために、尿素化合物の公知の性質と、ヒドロキシル末端化フェニル化合物(例えば、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン又はビスフェノールA;ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン又はビスフェノールF;及び、4−ヒドロキシフェニルスルホン又はビスフェノールS)の公知の性質と、エーテル化合物、例えば、4−ヒドロキシフェニル 4−イソプロポキシフェニルスルホン(D−8として一般に公知)及び4[4’−{(1’メチルエチルオキシ)フェニル]スルホニル]フェノール(D−90として一般に公知)の公知の性質とを組み合わせた、新規な顕色剤に関する。本発明の顕色剤は、複数の電子受容部位を含む化学構造を有する。同電子受容部位は、適切な感熱応答、耐熱性、耐水性、耐油性、可塑剤耐性、及び低背景色を含む他の所望の特性を損なうことなく、高効率で良好な反応性を可能にする。本発明の顕色剤は、感熱紙、例えば、タグ、チケット、及びラベルに典型的に使用される感熱紙と共に利用される感熱記録媒体に使用するのに特に望ましい特徴を有する。いずれにしても、本発明の顕色剤を用いて製造された感熱記録媒体は、広い範囲の基材上で使用することができる。同基材は、紙、金属、プラスチック、金属フィルム、合成フィルム、織布、及び不織布を含むが、これらに限定されない。例えば、この基材として使用される合成フィルムは、ポリオレフィン、例えば、ポリエチレンもしくはポリプロピレン;ビニルポリマー、例えば、ポリ塩化ビニル;ポリカーボナート;ポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタラートもしくはポリエチレンナフタラート;又は、ポリアミド、例えば、ナイロン−6,6からなることができる。
【0005】
主題の発明は、より具体的には、感熱記録媒体用の顕色剤として特に有用な化合物を開示する。これらの化合物は、p−(p−{3−[p−(p−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ウレイド}フェノキシ)フェノール、m−(p−{3−[p−(p−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ウレイド}フェノキシ)フェノール、o−(p−{3−[p−(p−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ウレイド}フェノキシ)フェノール、p−(p−{3−[m−(p−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ウレイド}フェノキシ)フェノール、及びp−(m−{3−[o−(p−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ウレイド}フェノキシ)フェノールを含む。
【0006】
また、本発明は、無色又は薄く着色した染料前駆体と、加熱すると前記染料前駆体と反応して色を呈することができる顕色剤とを含有する感熱記録層を有し、前記顕色剤が、p−(p−{3−[p−(p−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ウレイド}フェノキシ)フェノール、m−(p−{3−[p−(p−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ウレイド}フェノキシ)フェノール、o−(p−{3−[p−(p−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ウレイド}フェノキシ)フェノール、p−(p−{3−[m−(p−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ウレイド}フェノキシ)フェノール、及びp−(m−{3−[o−(p−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ウレイド}フェノキシ)フェノールからなる群より選択される化合物である、感熱記録シートを明らかにする。
【0007】
また、主題の発明は、無色又は薄く着色した染料前駆体と、加熱すると前記染料前駆体と反応して色を呈することができる顕色剤とを含有する記録層をその上に有する基材を含み、前記顕色剤が、p−(p−{3−[p−(p−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ウレイド}フェノキシ)フェノール、m−(p−{3−[p−(p−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ウレイド}フェノキシ)フェノール、o−(p−{3−[p−(p−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ウレイド}フェノキシ)フェノール、p−(p−{3−[m−(p−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ウレイド}フェノキシ)フェノール、及びp−(m−{3−[o−(p−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ウレイド}フェノキシ)フェノールからなる群より選択される化合物である、感熱記録媒体を開示する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施例2において行われた静的感度試験の結果を示すグラフである。
【
図2】
図2は、実施例2において行われた動的感度試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の好ましい顕色剤であるp−(p−{3−[p−(p−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ウレイド}フェノキシ)フェノールのIUPAC名は、1,3−ビス(4−(4−ヒドロキシフェノキシ)フェニル)尿素としても公知である。この化合物は、構造式:
【化1】
で表示されるものである。
【0010】
p−(p−{3−[p−(p−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ウレイド}フェノキシ)フェノールの種々の異性体も、本発明に関連する顕色剤として有用である。例えば、一方又は両方のヒドロキシル基は、ヒドロキシフェノキシ構造において、エーテル結合に対してオルト位又はメタ位に存在することができる。例えば、m−(p−{3−[p−(p−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ウレイド}フェノキシ)フェノール(同フェノールは、構造式:
【化2】
で表示されるものである)及びo−(p−{3−[p−(p−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ウレイド}フェノキシ)フェノール(同フェノールは、構造式:
【化3】
で表示されるものである)である。
【0011】
本発明の別の実施態様では、エーテル結合は、尿素結合に対してオルト位又はメタ位に存在することができる。このような異性体の例は、p−(p−{3−[m−(p−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ウレイド}フェノキシ)フェノール(同フェノールは、構造式:
【化4】
で表示されるものである)及びp−(m−{3−[o−(p−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ウレイド}フェノキシ)フェノール(同フェノールは、構造式:
【化5】
で表示されるものである)を含む。
【0012】
上記で表わされた異性体のいずれか又は全ての組み合わせが、本発明の顕色剤として使用することができることに、更に留意されたい。本発明の新規な顕色剤(異性体の任意の組み合わせ)は、感熱記録媒体における従来の顕色剤との組み合わせにおいて、総顕色剤の主要又は副成分として顕色剤の配合に使用することができることに、更に留意されたい。すなわち、本発明の新規な顕色剤は、単独で、又は、他の顕色剤と組み合わせて、顕色剤総量の主要又は副成分のいずれかとして使用することができる。例えば、本発明の顕色剤は、他の公知の電子受容材料、例えば、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(CAS# 5397−34−2)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(CAS# 80−90−1)、ビス−(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン(CAS# 41481−66−7)、4−[4’−[(1’−メチルエチルオキシ)フェニル]スルホニル]フェノール(CAS# 191680−83−8)、4−ヒドロキシフェニル 4−イソプロポキシフェニルスルホン(CAS# 95235−30−6)、N−(p−トルエンスルホニル)−N’−(3−p−トルエンスルホニルオキシフェニル)尿素(CAS# 232938−43−1)、フェノール,4−[[4−(2−プロペン−イルオキシ)フェニル]スルホニル(CAS# 97042−18−7)、4−ヒドロキシ−4’ベンジルオキシジフェニルスルホン(CAS# 63134−33−8)、及び4,4’ビス(N−カルバモイル−4−メチルベンゼンスルホンアミド)ジフェニルメタン(CAS# 151882−81−4)との組み合わせにおいて使用することができる。また、本発明の顕色剤は、米国特許第5,470,816号、同第5,656,569号、同第5,811,369号、及び同第6,927,007号に開示された1つ以上の顕色剤と組み合わせて、感熱記録媒体に利用することができる。米国特許第5,470,816号、同第5,656,569号、同第5,811,369号、及び同第6,927,007号の教示は、このような顕色剤を開示する目的で、参照により本明細書に組み入れられる。
【0013】
新規な顕色剤は、画像形成を容易にするために、無色の電子供与染料との組み合わせで使用することができる。これらの染料の例は、2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−N−プロピルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−アミルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−N−エチル−N−sec−ブチルアミノフルオラン、3−ジ−(n−ペンチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−イソアミル−N−エチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−n−ヘキシル−N−エチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−[N−(3−エトキシプロピル)−N−エチルアミノ]−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ−(n−ブチルアミノ)−7−2−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、3−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン等を含む。これらの染料は、単独で、又は、米国特許第7,192,904号に開示された単一の感熱記録層中で2つ以上の他の染料との組み合わせで使用することができる。米国特許第7,192,904号の教示は、本発明の顕色剤と共に感熱記録媒体に利用することができる染料及び染料の組み合わせを開示する目的で、参照により本明細書に組み入れられる。
【0014】
増感剤は、画像安定性の改善、密度、及び画像を形成する温度の変更の目的で、本顕色剤と無色の電子供与染料との組み合わせにおいて使用することができる。これらの材料は、単独で、又は、互いに組み合わせてのいずれかで使用することができる。このような増感剤の例は、ステアルアミド、N−ヒドロキシメチルステアルアミド、N−ステアリルステアルアミド、エチレンビスステアルアミド
、N−ステアリル尿素、ベンジル−2−ナフチルエーテル、m−ターフェニル、4−ベンジルビフェニル、4−アセチルビフェニル、4−(4−メチルフェノキシ)ビフェニル、1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタン、1,2−ジフェノキシエタン、2,2’−ビス(4−メトキシフェノキシ)ジエチルエーテル、ジフェノキシキシレン、ビス(4−メトキシフェニル)エーテル、ジフェニルアジパート、ジベンジルオキサラート、ジ(4−メチルベンジル)オキサラート、ジ(4−クロロベンジル)オキサラート、ジメチルテレフタラート、ジベンジルテレフタラート、フェニルベンゼンスルホン酸エステル、ジフェニルスルホン、ビス(4−アリルオキシフェニル)スルホン、4−アセチルアセトフェノン、アセト酢酸アニリド、脂肪酸アニリド等を含む。米国特許第6,890,881号の教示は、本発明の顕色剤と共に感熱記録媒体に利用することができる増感剤及び増感剤の組み合わせを開示する目的で、参照により本明細書に組み入れられる。
【0015】
感熱記録媒体の製造において、上記で言及された材料は、典型的には、共にミルにおいて微細な粒子サイズにすり潰し、バインダー、例えば、ポリビニルアルコール(アニオン性グレード、例えば、スルホン化ポリビニルアルコールが特に有用である;低加水分解グレードも好ましい)及び/又は界面活性剤を使用して混合される。多くの場合、他の材料:更なるバインダー、例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、アクリル酸エマルション、スチレンコポリマーエマルション、ブタジエンコポリマーエマルション、アクリロニトリルコポリマー及びターポリマーエマルション、ポリビニルアセタートエマルション、ビニルアセタートエチレンエマルション、ポリウレタンエマルション、デンプン、ヒドロキシメチルセルロースならびに他の合成及び天然のバインダーも、混合物に加えられて、すり潰される(ただし、これらは、すり潰し段階後にも加えることができる)。ついで、これが、充填材、例えば、二酸化チタン、シリカ、アルミニウム三水和物、クレイ、マイカ、炭酸カルシウム、タルク、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム等;合成充填材、例えば、中空のプラスチックスフェア、ポリスチレン又はポリプロピレンビーズと混合される。これらの充填材も、本願に利用することができる。
【0016】
また、他の成分、例えば、スリップ剤(ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアルアミド、ポリエチレンロウ、界面活性剤等)、UV吸収剤、及び光学的光沢剤も、コーティング及び最終製品の機械的及び物理的特徴を改善するのに、一般的に加えられる。
【0017】
特に、タグ、チケット、及びラベル用途の場合には、水、湿気、油(及び他の有機溶媒)及び/又はグリスに対する暴露下における画像の安定性を改善するために設計された保護コーティングが、特に重要である。この保護コーティングは、典型的には、顕色剤及び発色剤を含有する層の上面に塗工される。一般的に使用されるコーティングは、カルボキシ化ポリビニルアルコール(架橋又は非架橋)、アセトアセチル化ポリビニルアルコール(これも架橋又は非架橋)、標準的な非改質ポリビニルアルコール(完全にヒドロキシル化された高分子量グレードが好ましい)、デンプン、アクリル酸エマルション、ポリウレタンエマルション等の製品を含む。また、この層は、上記で言及された充填材を含有することができる。
【0018】
本発明は、下記実施例により例示される。下記実施例は、単に例示を目的とするものであり、本発明又は本発明を実施することができる方法の範囲を限定するとみなすものではない。特に断りない限り、部及びパーセントは、重量により与えられる。
【実施例】
【0019】
実施例1
この実験では、1,3−ビス(4−(4−ヒドロキシフェノキシ)フェニル)尿素を、3工程の手法を利用して合成した。この手法の第1の工程において、エチル(4−(4−メトキシフェノキシ)フェニル)カルバマートを、ピリジン及びエチルクロロホルマートの存在下で、下記反応:
【化6】
に従って、4−(4−メトキシフェノキシ)アニリンを反応させることにより合成した。
【0020】
使用された手法において、出発物質23.7mmol、DCM 100mL、及びピリジン46.5mmolを、丸底フラスコ中で混合し、0℃の温度に冷却した。ついで、エチルクロロホルマート34.8mmolを時間をかけて滴下し、0℃の温度で維持した。ついで、反応生成物を、塩酸(HCl)で反応を停止させ、乾燥させ、濃縮し、ヘキサン溶媒で洗浄し、乾燥させた。同手法のこの工程において、約94%の収率が達成された。
【0021】
この手法の第2の工程を、下記反応スキームに従って行った。すなわち、1,3−ビス(4−(4−メトキシフェノキシ)フェニル)尿素を、エチル(4−(4−メトキシフェノキシ)フェニル)カルバマート及び4−(4−メトキシフェノキシ)アニリンから、トルエン及びトリメチルアルミニウムの存在下において調製した。
【化7】
【0022】
同手法のこの工程では、4−(4−メトキシフェノキシ)アニリンを、トルエン中に溶解させ(トルエン中1:25)、−5℃の温度に冷却した。トリメチルアルミニウム(AlCH
3)
3を、窒素(N
2)の陽圧下において、時間をかけて加えたところ、顕著な発熱があった。エチル(4−(4メトキシフェノキシ)フェニル)カルバマートを、固体として少量ずつ加え、80℃の温度に8時間加熱した。冷却し、塩酸(HCl)で反応を停止させた。塩酸が顕著な発熱反応及びガス生成を生じるため、この工程は注意深く行った。得られたペーストをろ過し、エーテル及び水で洗浄し、ついで、真空下で乾燥させた。79%の収率が達成された。
【0023】
下記反応を、この合成手法の第3で、最後の工程として行った。すなわち、1,3−ビス(4−(4−ヒドロキシフェノキシ)フェニル)尿素(U−2EPO)を、ジクロロメタン及びテトラブロモボラン(BBr
3)中、1,3−ビス(4−(4−メトキシフェノキシ)フェニル)カルバマートから調製した。
【化8】
【0024】
同合成手法のこの工程では、1,3−ビス(4−(4(メトキシフェノキシ)フェニル)尿素を、CH
2Cl
2に加えた。ただし、溶解しなかった。この物質は、BBr
3を窒素(N
2)の陽圧下において時間をかけて加え、中程度に発熱性の反応があった際に、溶解したと認められた。混合物を、15℃の温度に達しさせ、ついで、0℃の温度に冷却し、水で反応を停止させた(非常に発熱性)。得られたペースト状の固体をろ過し、中性pHが達成されるまで、再度、水で洗浄した。ついで、このペーストを、エーテルで洗浄し、乾燥させた。57%の収率が達成された。
【0025】
実施例2
この実験では、感熱記録層用のコーティング液を、顕色剤として実施例1で合成したU−2EPOを使用して調製した。ついで、顕色剤としてU−2EPOを使用して調製した感熱記録層の特性を、数多くの従来の顕色剤を利用して調製された感熱記録層の特性と比較した。使用した手法において、第1の分散液(液体A)を、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノ−フルオラン(ODB−2)25重量部、20% スルホン化ポリビニルアルコール水溶液(日本合成化学株式会社からのGohsenx(商標)L-3266スルホン化ポリビニルアルコール)25重量部、及び水50重量部を、サンドグラインダーを使用して、12時間すり潰し、分散させることにより調製した。第2の分散液(液体B)を、表1に特定される顕色剤25重量部、20% スルホン化ポリビニルアルコール水溶液25重量部、及び水50重量部をサンドグラインダーにおいて、1時間すり潰し、分散させることにより調製した。ついで、顕色液を、第1の分散液(液体A)24重量部、第2の分散液(液体B)8.6重量部、67% 炭酸カルシウム水溶液9.0重量部、48% スチレン−ブタジエンコポリマーラッテクス水溶液6.3重量部、及び水52.1重量部を混合することにより調製した。
【0026】
保護層用のコーティング液を、40% スチレン−アクリル酸コポリマーエマルション水溶液165重量部、39% ステアリン酸亜鉛水溶液100重量部、及び67% 炭酸カルシウム溶液15重量部を混合することにより調製した。
【0027】
保護層用の顕色液及びコーティング液を、ワイヤバーを使用して、支持体(中性紙)に順に塗工した。顕色液を、4.6g/m
2の固形分レベルで塗工し、保護層用の溶液を、2.0g/m
2の固形分レベルで塗工した。コートした支持体を、50〜55℃の温度で5分間乾燥させて、感熱記録材料を生成した。その後、同感熱記録材料を、静的感度、動的感度、画像安定性、及び背景安定性を測定するために試験した。
【0028】
静的感度を、東洋精機Heat Gradient HG-100-2試験機を使用して、記録材料を1.0kg/m
2の圧力下で呈色させることにより測定した。同圧力を、60℃〜250℃の温度範囲にわたって、5秒間加えた。呈色により得られた画像密度を、X-Rite Co., Ltdにより製造されたSpectroEye(登録商標)比色分析システムを使用して測定した。この静的感度試験の結果を、表1に示し、
図1においてグラフで示す。
【表1】
【0029】
この一連の実験において評価した顕色剤は、下記を含む:
U−2EPO=1,3−ビス(4−(4−ヒドロキシフェノキシ)フェニル)尿素
Bis−S=4−ヒドロキシフェニルスルホン(ビスフェノールS)
Pergafast(登録商標)201=BASFからの非フェノール性顕色剤
TG−SH=3,3’−ジアリル−4,4’−ジヒドロキシ−ジフェニルスルホン
Bis−A=2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)
D−8=4−ヒドロキシフェニル 4−イソプロポキシフェニルスルホン
【0030】
表1中のデータをレビューし、
図1を見れば分かるように、静的感度試験から、本発明のU−2EPO顕色剤を使用して調製したコート支持体は、従来の顕色剤より高い温度での用途について非常に良好な特徴を有したことが示された。分かるように、温度を110℃超に上げた場合、U−2EPO顕色剤及び従来の顕色剤により得られた静的感度における差はより顕著になった。この差は、150℃〜180℃の温度範囲にわたって、非常に劇的であった。
【0031】
動的感度を、オオクラエンジニアリング TH-M2/PP試験機を使用し、印刷電圧16.0ボルト、ライン周期1.6m秒、及びパルス幅0.50〜1.40mm/秒を利用して測定した。顕色剤により得られた画像密度を、X-Rite Co., Ltdにより製造されたSpectroEye(登録商標)比色分析システムにより測定した。この動的感度試験の結果を、表2に報告し、
図2にグラフで示す。
【表2】
【0032】
表2中のデータをレビューし、
図2を見れば分かるように、動的感度試験から、本発明のU−2EPO顕色剤を使用して調製したコート支持体は、従来の顕色剤より高い温度での用途について非常に良好な特徴を有したことが示された。分かるように、エネルギーレベルが約0.7mm/秒のパルス幅を超えて上昇するとともに、この差は、より明らかとなった。本発明のU−2EPO顕色剤と従来の顕色剤との間の差は、約0.80mm/秒を超えて、特に、0.90mm/秒〜1.20mm/秒の範囲内でのエネルギーレベルにおいて非常に明らかであった。
【0033】
画像安定性を、加速エージング試験法を利用して評価した。この方法では、材料サンプルを、保存前と、(1)水中に24時間浸漬させて保存した後、(2)60℃の熱水中で24時間エージングした後、(3)90℃に1時間加熱した後、及び(4)相対湿度80%、50℃で24時間保持した後とにおいて、記録された領域における密度について評価した。再度、画像密度を、SpectroEye(登録商標)比色分析システムにより測定した。
【0034】
感熱記録材料の背景安定性を、画像安定性試験に使用した条件下での記録前に、この記録材料をエージングすることにより測定した。サンプルの背景領域における密度を、このエージング法の前後に測定した。再度、画像密度を、SpectroEye(登録商標)比色分析システムにより測定した。該サンプルの画像安定性及び背景安定性を、表3に報告する。
【表3】
【0035】
本発明の変形例が、本明細書で提供された説明を考慮して可能である。特定の代表的な実施態様及び詳細が主題の発明を例証する目的で示されているが、種々の変更及び改変が、主題の発明の範囲を逸脱することなく、主題の発明になされ得ることは、当業者に明らかであろう。したがって、下記に添付された特許請求の範囲により定義された本発明の完全に意図した範囲内にあるであろう、説明された特定の実施態様に変更がなされ得ることを理解されたい。
【要約】
主題の発明は、感熱記録媒体用の顕色剤として特に有用な化合物をより具体的に開示する。これらの化合物は、p−(p−{3−[p−(p−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ウレイド}フェノキシ)フェノール、m−(p−{3−[p−(p−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ウレイド}フェノキシ)フェノール、o−(p−{3−[p−(p−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ウレイド}フェノキシ)フェノール、p−(p−{3−[m−(p−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ウレイド}フェノキシ)フェノール、及びp−(m−{3−[o−(p−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ウレイド}フェノキシ)フェノールを含む。また、本発明は、無色又は薄く着色した染料前駆体と、加熱すると前記染料前駆体と反応して色を呈することができる顕色剤とを含有する感熱記録層を有し、前記顕色剤が、p−(p−{3−[p−(p−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ウレイド}フェノキシ)フェノール、m−(p−{3−[p−(p−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ウレイド}フェノキシ)フェノール、o−(p−{3−[p−(p−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ウレイド}フェノキシ)フェノール、p−(p−{3−[m−(p−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ウレイド}フェノキシ)フェノール、及びp−(m−{3−[o−(p−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ウレイド}フェノキシ)フェノールからなる群より選択される化合物である、感熱記録シートも明らかにする。