(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6196811
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】ロックアップ装置
(51)【国際特許分類】
F16H 45/02 20060101AFI20170904BHJP
F16H 41/28 20060101ALI20170904BHJP
F16H 41/24 20060101ALI20170904BHJP
【FI】
F16H45/02 Z
F16H45/02 X
F16H41/28
F16H41/24 B
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-112534(P2013-112534)
(22)【出願日】2013年5月29日
(65)【公開番号】特開2014-231864(P2014-231864A)
(43)【公開日】2014年12月11日
【審査請求日】2016年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】300034334
【氏名又は名称】ヴァレオトランスミッションジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110559
【弁理士】
【氏名又は名称】友野 英三
(72)【発明者】
【氏名】山本 喜誉司
(72)【発明者】
【氏名】井上 敦
(72)【発明者】
【氏名】角田 康一
【審査官】
塚原 一久
(56)【参考文献】
【文献】
特開平03−144153(JP,A)
【文献】
特開2009−121685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 39/00−47/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、原動機によって回転駆動される前面カバー部、および前記前面カバー部とともに回転するポンプインペイラ部を有して内部にトルク伝達をするための流体を満たしたハウジングと、
外部装置を回転駆動するための出力軸と、
前記ポンプインペイラ部に配設されたインペイラブレードと、
前記インペイラブレードと対向して配設されて、前記流体によって前記ハウジングからのトルクが伝達されるタービンブレードと、
前記タービンブレードに伝達されたトルクを前記出力軸に伝達するためのタービンランナとタービンハブとを備えた流体伝動装置におけるロックアップ装置であって、
前記タービンハブと前記タービンランナとが略円環形状の一体構造であり前記出力軸に連結する構造であるAプレートと、
前記前面カバー部と略平行するように前記Aプレートと前記前面カバー部との間に配設されて、前記Aプレートに内周近傍領域で接続固定され、前記Aプレートとの間にトーションスプリングを挟み位置固定する構造を有する略円環形状のCプレートと、
前記Aプレートと前記Cプレートとの間に位置し、前記Cプレートの外周外殻面に該Cプレートと相対回転可能となる状態でシーリング接続されて、前記Cプレートが前記軸方向の変位によって前記前面カバー部に向けて変位したときにロックアップクラッチフェーシング部を介して前記前面カバー部の摺動面に摺接し、前記トーションスプリングの両端部に接触部を有するロックアップピストン機能と捩り振動を緩衝低減する機能とを備えた略円環形状であるBプレートとを備えて構成され、
前記原動機による入力トルクを、タービン機能、ロックアップピストン機能、捩り振動低減機能を備えて出力側回転部材へとトルク伝達する一体型構造を特徴とするロックアップ装置。
【請求項2】
前記Aプレートは、
前記Bプレートの前記前面カバー部の摺動面に摺接するための円環摺動板の近傍で、前記Bプレートを前記前面カバー部方向に矯正するための突起部を有することを特徴とする請求項1に記載のロックアップ装置。
【請求項3】
前記Aプレートは、その材質をアルミニウムを主材質としたことを特徴とする請求項2に記載のロックアップ装置。
【請求項4】
前記Aプレートは、トルク出力軸へのスプライン嵌合部分を分離させ該スプライン嵌合部分のみの強度を向上させることを特徴とする請求項3に記載のロックアップ装置。
【請求項5】
前記Aプレートは、結合する前記タービンブレードを連結した一体構造にすることにより一体部品として製造することを特徴とする請求項3に記載のロックアップ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばエンジンのクランクシャフトと変速機の入力軸との間に介在する、流体伝動装置(いわゆるトルクコンバータ)のロックアップ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用自動変速機に組み込まれるトルクコンバータは、コンバータハウジングの前面部を構成するフロントカバーがクランクシャフトで回転駆動され、さらにコンバータハウジングのポンプインペイラ側の羽と、タービンランナ側の羽との間でトルクが伝達されて、タービンランナで駆動される出力軸から、変速機の入力軸変速機の入力軸へとトルクが伝達されるようになっている。さらにトルクコンバータは、燃費向上を図るためにエンジンのクランクシャフトのトルクを変速機の入力軸に直接伝達するためのロックアップ装置を有している。
【0003】
ロックアップ装置では、コンバータハウジング(典型的にはフロントカバー)と出力軸とが、流体圧力(油圧)で駆動されるクラッチで接続されることによって、エンジンのクランクシャフトのトルクが変速機の入力軸に直接伝達される。こうしたロックアップ装置は、少なくともクラッチと、クラッチと出力軸との間に介在する捩り振動低減機構(ダンパ)とを備えて、捩り振動を吸収し減衰させている。
【0004】
例えば、特許文献1に開示されたロックアップクラッチ(ロックアップ装置)は、少なくとも、(1)クラッチフェーシングを介してフロントカバーに摺接するロックアップピストンと、(2)ロックアップピストンにリベット留めされた入力側回転部材と、(3)トランスミッションの入力軸に連結される出力軸へ動力を伝達するためのタービンハブにリベット留めされた出力側回転部材と、(4)入力側回転部材と出力側回転部材との間に介在するダンパ機構とを有している。なおタービンランナは出力側回転部材とともにタービンハブにリベット留めされている。
【0005】
こうしたロックアップクラッチは、ロックアップするときには、油圧によってロックアップピストンをフロントカバー側に移動させて、ロックアップピストンをフロントカバーの摺動部に摺接させ、ロックアップを解除するときには、油圧によってロックアップピストンをフロントカバーから遠ざけるように移動させて、ロックアップピストンとフロントカバーの摺動部とを離間させる。
【0006】
ロックアップの解除時は、トルクコンバータは、インペイラからタービンランナ(タービンランナはタービンハブにリベット留めされている。)へとトルクを伝達する。また、ロックアップ装置はロックアップピストンに隣接して、トーションスプリングを介したサイドプレート(出力側回転部材)とドライブプレート(入力側回転部材)によるダンパ機能を有し、それらがトランスミッションの入力軸に連結される出力軸へ動力を伝達するためのタービンハブにリベット留めされることによりダンパ機構を包含した態様で構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−211707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
トルクコンバータ内には流体伝動装置として機能するポンプインペイラ、タービンランナ、ブレード(羽根)、ステータなどの構成要素があり、かつロックアップ装置として機能するロックアップピストン、タービンハブなどの構成要素があり、また捩り振動低減装置として機能するドライブプレート、サイドプレート、トーションスプリング、ハブクラッチなどの構成要素があり、これらの総合的な構成においてトルクコンバータ全体の機能を果たし得ている。
【0009】
しかしこれらの個々の部材は高剛性を必要とする略円環形状を有する鉄製部材であり重量がある。また、タービンハブやロックアップピストンのように機能上一定の重さを必要とする構成要素もある。それぞれの構成要素は上記三種類の機能を発揮するためにはどれも必要なものである。また、トルクコンバータ製造工程においても、これらの構成要素をすべて組み込むための製造工程が必要であり煩雑な工程となる。
【0010】
以上の理由などによりトルクコンバータの軽量化、部材種類(部品点数)の削減、部品コストの削減、製造工程の簡略化、生産コストの削減などの更なる改善が望まれている。本発明はこのような課題に着目してなされたものであり、軽量化され小型化されたトルクコンバータを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため本発明にかかるロックアップ装置は、次の構成を採用する。本発明は、トランスミッションへの出力軸にトルクを伝達するタービンランナ9(符号は本願の
図2に示す。)とハブクラッチ6とタービンハブ7とロックアップピストン3とを連結一体型構造とし、ロックアップピストン3のロックアップクラッチフェーシング部14とハブクラッチ6とを連結一体型構造とすることにより要素部材数を削減し軽量化と小型化を成し、かつトルク伝達機能や捩り振動低減効果を失わずにトルクコンバータ機能を維持するロックアップ装置である。(
図1参照)
【0012】
また本発明は、タービンハブ7、タービンランナ9の主材質をアルミニウムとし、かつ連結一体型構造にすることによって軽量化したロックアップ装置としても実現されるものである。
【0013】
本発明は、ロックアップピストン3のロックアップクラッチフェーシング部14とハブクラッチ6とが連結一体型構造とされた上で、ハブクラッチ近傍部はトーションスプリング8の受け部が従来と同じように設けられることにより捩り振動低減機能を有するダンパとして機能し、前記一体型構造の外周部の一体化されたロックアップクラッチフェーシング部はフロントカバー1の摺動部に面しロックアップの際には接触して摺動する構造にする。
【0014】
また、ロックアップクラッチフェーシング部14はフロントカバーとのロックアップ接触の際に均一な面接触を必要とするため、ロックアップクラッチフェーシング部を背後から抑えて矯正するための突起部構造をタービンランナ部に設ける。
【発明の効果】
【0015】
上記構成を有する本発明にかかるロックアップ装置によれば、ハブクラッチとロックアップクラッチフェーシング部とが一体化したことにより、従来と比較してドライブプレートなどの構成要素数が減少するため軽量化が図られる。
【0016】
一体構造化されたタービンランナとロックアップピストンによってトーションスプリングを挟み位置固定する構造にすることによりドライブプレートとサイドプレートが不要になり構成要素数が削減される。次に、タービンランナやタービンハブの材質を鉄材からアルミニウムに変更すれば、より軽量化が図られる。
【0017】
一体化構造のタービンランナ部に設けられたロックアップクラッチフェーシング部を背後から抑えて矯正するための突起部構造は、アルミニウム材質である場合、ロックアップクラッチフェーシング部の鉄材質との摩擦において摩擦熱を都合よく放熱する効果を発揮する。ロックアップクラッチでの摩擦熱放熱にはアルミニウムが望ましいため、この選択は軽量化に加えた新たな効果を奏する。
【0018】
本発明は、捩り振動低減装置(ダンパ)製造工程におけるコスト低減効果が大きい。従来はサイドプレートとドライブプレート嵌合のために多数のリベット固定方法を用いていたが、リベット数削減による部品削除、製造工程におけるリベット嵌合工程の削減など、製造コスト削減の大きな効果が生ずる。
【0019】
トルクコンバータ全製造工程においては、組み立て部品点数の削減、製造工程数の削減による部材コスト削減と製造コスト削減が図られる。また、トルクコンバータ全体として軽量化が図られるため、車体重量の軽量化と燃費向上につながる。その他、トルクコンバータ構造全体としての薄型化、小型化が可能となるため車体エンジン動力機構全体の小型化に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明にかかるロックアップ装置の一実施形態における断面概略構造を示す図である。
【
図2】ロックアップ装置の従来の構造における断面概略構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るトルクコンバータのロックアップ装置(捩り振動低減装置ダンパを含む。)を示す概略的断面図である。同図において、フロントカバー1の右方向がエンジン側であり、ポンプインペイラ2の左方向がトランスミッション側の出力方向である。動力伝達軸の図は省略し、トルクコンバータ全体の上半分断面図を示している。
図2は、上記同様の従来のトルクコンバータのロックアップ装置を示す図である。
【0022】
ここで、まず説明の都合上、
図2を用いてトルクコンバータのロックアップクラッチの作用を説明する。エンジンの回転がクランクシャフトを介して外周部のカバーボス15へ伝達され、カバーボス15からフロントカバー1へ伝達される。そして、フロントカバー1と一体のポンプインペイラ2が回転し、ポンプインペイラ2の回転が流体継手の流体を介してタービンブレード10へ伝わる。タービンランナ9の回転がタービンハブ7を介してトランスミッションへの出力軸へ伝達される。
【0023】
車両の走行速度やエンジンの回転数が所定の値に達すると、油圧によりロックアップピストン3が右方向に移動し、ロックアップクラッチフェーシング部14(表面には摩擦材18が貼付されている。)がフロントカバー1の摺動部へ押圧される。すると、フロントカバー1の回転がロックアップピストン3へ伝わり、ロックアップピストン3の回転がダンパ機構を介してタービンハブ7へ伝わり、タービンハブ7の回転がトランスミッションへの出力軸へ伝わる。つまり、流体継手を介することなく直接にトランスミッションの出力軸へ伝わる。
【0024】
ダンパ機構では、動力伝達軸に対する捩り振動低減が目的であるために、ハブクラッチ6はサイドプレート5及びドライブプレート4に対して相対回転を可能にさせている。また、サイドプレート5及びドライブプレート4の間に構成されハブクラッチ6の受け部を緩衝するトーションスプリング8の収容部は、サイドプレート5及びドライブプレート4の切り欠かれた収容部によってトーションスプリング8が外周固定される構造を形成している。
【0025】
ドライブプレートとサイドプレートとは一体的にリベット結合されていて相対回転不能となっている。ドライブプレート4の回転時には、トーションスプリング8が圧縮変形されながら、エンジン側からドライブプレート4に入力される回転トルクをハブクラッチ6へと伝達し、そのハブクラッチ6からトランスミッション側へと伝達することになる。さらに、入力側・出力側回転部材同士が正転方向に相対回転した場合だけでなく、入力側・出力側回転部材同士が逆転方向に相対回転した場合にも、左右対称構造を有することにより共に同じ回転トルク特性を実現することができる。
【0026】
このように従来のトルクコンバータの動力トルク出力側機構である流体伝動装置と捩り振動低減装置及びロックアップ機構は、構成要素として
図2に示すように、油圧動力伝達を行うタービンランナ9と、ロックアップピストン3がフロントカバー方向へ動くことによりロックアップクラッチフェーシング部14がフロントカバーの摺動部に摺接させられるロックアップ機構と、捩り振動を低減させるトーションスプリング8とその保持のためのドライブプレート4、サイドプレート5を有するダンパ機構と、そしてトルクを出力としてトランスミッション側に出力するハブクラッチ6及びタービンハブ7とを備えて構成されていた。
【0027】
これらの上記各機能を維持したまま、各構成要素の共通化及び一体化と軽量化を図る目的のために創出した新たなる構成が本発明の技術的特定事項の主要部分である。
図1を一実施形態として以下に説明する。
【0028】
まずタービンハブ7及びタービンランナ9の材質をアルミニウムに変更し、連結一体型構造とする。このタービンハブ7及びタービンランナ一9連結一体型構造をAプレート19とする。
【0029】
図1においては、出力伝達軸とスプライン結合する部分は噛み合わせ強度を確保するために便宜的にAプレートから除いて示しているが、このスプライン結合部を含めた従来のタービンハブ7全体をアルミニウム化する構造であってもよい。もちろんタービンブレード10をもアルミニウム化し同時成形できる構造にしてもよい。
【0030】
従来の鉄材質強度と同等に剛性を維持するために、この連結一体型構造では軸方向に対して若干の肉厚化を必要とする。Aプレートの径軸側の肉厚を増加させているのは、強度及び重量のある他部材とのリベット固定での強度確保を考慮している。
【0031】
Aプレートの具体的製造方法としてはアルミ鋳物(アルミダイカスト)として成形加工するのが望ましい。アルミダイカスト製造は成形型への液状アルミニウムの流し込みによる成形であるため、略円盤状鉄材の従来加工に比較して、製造方法が簡易でありかつAプレートのとり得る形状の自由度が増す。
【0032】
また捩り振動低減装置であるトーションスプリング8の位置を固定するためのトーションスプリング収容部構造をAプレートの構造に設けることにより従来のサイドプレート5によるトーションスプリング固定機能を兼ね備えることができる。サイドプレート5は不要となり、アルミニウムによる軽量化と部品点数削減、組み立て工程短縮、サイドプレートとドライブプレートとの固定用リベット削減に効果が生ずる。
【0033】
次に、ロックアップピストン3の円周外側に有するロックアップ機能部であるロックアップクラッチフェーシング部14をロックアップピストン3とは分離し、従来のハブクラッチ6の円周外側に屈曲させて連結した一体型構造にする。ロックアップクラッチフェーシング部14は、ロックアップの際にフロントカバー1の摺動部と摺接しエンジン側のトルク出力を直接伝達する機能を有する。
【0034】
良好なロックアップを実現するために、ロックアップクラッチフェーシング部14のフロントカバー摺動部にかかる油圧の面圧分布をより均等にすることが望まれ、また耐久性の向上のために、摩擦熱によるロックアップクラッチフェーシング部およびその隣接部の熱容量を増大化して、当該領域の温度上昇を低減することが望まれる。よって鉄材料を用い、ハブクラッチ6と連結させることにより、捩り振動低減効果を維持しつつ同時にトランスミッション側に直接トルク出力を伝達し得る一体構造にすることはトルク伝達効率からも好ましい。
【0035】
ロックアップピストン3から分離したロックアップクラッチフェーシング部14と一体化したハブクラッチ6の円周中央部は、トーションスプリング8の緩衝を受けて従来同様に捩り振動を低減するダンパとして機能し、ロックアップ機能とダンパ機能とを同時に得たトルク出力をスプライン結合するトランスミッション側への出力伝達軸に伝達する構造とする。
【0036】
このロックアップクラッチフェーシング部14とハブクラッチ6との連結一体型構造をBプレート20とする。
【0037】
そして、ロックアップクラッチフェーシング部を分離したロックアップピストン3の内周部は、トーションスプリング8固定のための収容部を有する略円盤状構造とし、前記Aプレートと軸心近傍でリベット固定される。この一体型構造をCプレート21とする。前記Bプレートとトーションスプリング8とをAプレート19及びCプレート21で挟み込む構造となる。
【0038】
Aプレートのフロントカバー側にも同様にトーションスプリングを固定する収容部を設けることにより、従来のダンパ機能を有していた構造であるドライブプレートとサイドプレートとをAプレートとCプレートとが代替することになり、従来のドライブプレート及びサイドプレートが不要となる。ドライブプレート、サイドプレートの部品削除、軽量化、組み立て工程削減の効果が生ずる。
【0039】
Cプレート21は、Bプレート20のロックアップクラッチフェーシング部の内周屈曲部においてO−リングシーリング22で連結される。BプレートはAプレート及びCプレートに対して相対回転が可能である。よってロックアップによって生じた急回転トルクによる捩り振動は、従来と同様にトーションスプリング8で緩衝低減された状態でCプレート21につながりAプレート19を経てトランスミッション側へトルク出力される。
【0040】
次に、Aプレート19には、Bプレート20のロックアップクラッチフェーシング部をフロントカバー方向に抑えるための矯正用突起部23を有する。この矯正用突起部23をロックアップクラッチフェーシング部の裏側に設けることにより、ロックアップの際のフロントカバー摺動部とBプレート20のロックアップクラッチフェーシング部の接触面圧分布が径方向に対して略均一となり、スリップの際のフェーシング焼けと完全ロックアップの際の剥離強度の両立範囲が広く確保可能となる。
【0041】
Aプレート19の矯正用突起部23は、鉄材質であるBプレート20と材質の違うアルミニウムであることにより、Bプレートとの相対回転による摩擦においてヒステリシスの低減や放熱効果に有効であり、この部分でAプレート19の材質をアルミニウムに変更したことによる特別な効果が得られる。また矯正用突起部23でのアルミニウムの摩擦減衰を低減させるためのベアリング挿入などの対応も可能である。
【0042】
ここで、上記の実施の形態は一実施例にすぎず、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の変形あるいは改良が可能であることは言うまでもない。また、本発明が二次的製造物に組み込まれた場合でも、本発明を用いて生産される装置、方法、システムが、その二次的製造物に登載されて商品化された場合であっても、本発明の価値は何ら減ずるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明に係るロックアップ装置によれば、ロックアップ機能および捩り振動低減効果、高能率でのトルク伝達機能等を従来通り長期にわたり維持し、信頼性品質を確保しつつ自動車燃費を向上することができるため、自動車産業等で大いなる利用可能性を有する。また、本発明にかかるロックアップ装置のもたらすトルクコンバータの軽量化、コスト低減化、薄型化の技術的かつ経済的意義は大きく、自動車全体としての軽量化による燃費の向上にも寄与するため、産業上利用価値は極めて大きい。
【符号の説明】
【0044】
1・・・フロントカバー
2・・・ポンプインペイラ
3・・・ロックアップピストン
4・・・ドライブプレート
5・・・サイドプレート
6・・・ハブクラッチ
7・・・タービンハブ
8・・・トーションスプリング
9・・・タービンランナ
10・・タービンブレード(タービン羽根)
11・・インペイラブレード(ポンプ羽根)
12・・ステータ
14・・ロックアップクラッチフェーシング部
15・・カバーボス
16・・リベット
17・・スプライン嵌合
18・・摩擦材
19・・Aプレート
20・・Bプレート
21・・Cプレート
22・・O−リングシーリング
23・・矯正用突起部