(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記上側伝達部材と前記下側伝達部材のうち少なくとも一方は、前記プレートに接続された部位から、前記対向するプレートと平行な面に沿って延び、互いの間隔が左右に徐々に拡がるように延在した2本のブレースを備え、
前記間柱は、前記2本のブレースの間に、前記対向するプレートおよび粘弾性体が設けられた部位を通るように上下方向に沿って延び、
前記切り欠きは、前記対向するプレートおよび粘弾性体を横切る部位に形成された、請求項5に記載された制震装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態に係る制震装置を図面に基づいて説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。また、同じ作用を奏する部材または部位には、適宜に同じ符号を付している。また、各図面は模式的に描かれており、必ずしも実物を反映していない。また、各図面は、一例を示すのみであり、特に言及されない限りにおいて本発明を限定しない。
【0012】
《建物200》
図1は、制震装置100が取り付けられた建物200の壁の構造を示している。ここで、建物200は、上下に対向した一対の横軸材(例えば、土台60と、梁50)と、一対の横軸材にそれぞれ連結された一対の縦軸材(例えば、柱70a、70b)とで囲まれた矩形の枠組み204を備えている。制震装置100は、かかる矩形の枠組み204内に配置されている。かかる建物200は、例えば、木造軸組工法と、枠組壁工法(ツーバイフォー工法とも称される)のような枠組み工法によって建てられた木造住宅が例示されうる。
【0013】
《矩形の枠組み204》
例えば、いわゆる木造軸組工法では、一対の柱70a、70bと、土台60と、梁50とで囲まれた矩形の枠組み204が構築される。
図1は、木造軸組工法によって建てられた建物が示されている。なお、制震装置100は、いわゆる枠組壁工法によって建てられた建物にも適用される。いわゆる枠組壁工法は、例えば、2インチ×4インチあるいはその整数倍の断面の木材で木枠を作り、その上に合板などを釘打ちで止めつけて壁が組み立てられている。枠組壁工法には、いわゆる2×6、2×10、4×4、2×8などの断面の木材が用いられる場合もあり、必ずしも2インチ×4インチあるいはその整数倍の断面の木材に限定されるものではない。かかる枠組壁工法によって建てられた建物に対しては、ここで提案される制震装置100は、図示は省略するが、枠組壁工法の壁を構築する木枠に取り付けられる。この場合、一対の縦軸材(柱)に相当する竪枠と、一対の横軸材に相当する上枠と、下枠とで囲まれた矩形の枠組みに制震装置100が取り付けられる。なお、枠組壁工法では、後述する間柱40も竪枠材に相当する。
【0014】
《制震装置100》
図1は、制震装置100を示している。制震装置100は、
図1に示すように、制震ユニット10と、上側伝達部材20と、下側伝達部材30と、間柱40とを備えている。
図1に示す例では、制震装置100は、建物200の梁50と、土台60と、柱70a、70bで囲まれた矩形の枠組み204に配置されている。ここで、梁50と土台60と、柱70a、70bは、それぞれ建物200の構造材である。ここで、梁50と土台60は、互いに上下に対向する梁である。
【0015】
この実施形態では、建物200は、木造住宅である。制震装置100は、建物200の1階に取り付けられている。ここでは、土台60は、具体的には、アンカーボルトによってコンクリート基礎202に取り付けられている。以下、適宜に、「土台60」という。また、梁50は天井梁(2階建ての住宅では、2階床梁とも称される)であり、以下、適宜に、「天井梁50」という。
【0016】
ここでは、制震装置100は、かかる土台60と、天井梁50と、土台60から立ち上がり、天井梁50を支持する建物200の1階の柱70a、70bとで囲まれた矩形の枠組み204に取り付けられている。また、柱70a、70bには、ホールダウン金物150が取り付けられている。柱70a、70bは、ホールダウン金物150をコンクリート基礎202に埋め込まれたホールダウンボルト105に取り付けて固定されている。また、コンクリート基礎202と土台60との間には、厚さ2cm程度の基礎パッキン106が取り付けられており、コンクリート基礎202内の通気が確保されている。
【0017】
<制震ユニット10>
図2は、制震ユニット10を拡大した図である。
図2では、ここでは、制震ユニット10は、上側伝達部材20を介して天井梁50に取り付けられている。また、制震ユニット10には、下側伝達部材30が取り付けられている。ここでは、
図2は、
図1における間柱40を取り除いた状態で制震ユニット10を拡大した正面図である。
図3から
図5は、制震装置100に取り付けられる前の状態における、制震ユニット10がそれぞれ示されている。
図3は、制震ユニット10の正面図であり、
図4は、制震ユニット10の底面図であり、
図5は、制震ユニット10の側面図であり、
図3の左側面図である。この制震ユニット10は、制震部材(ここでは、粘弾性体18a、18b)と、制震部材(粘弾性体18a、18b)に相対的な変位が入力される一対の取付部(ここでは、一対のプレート(12、13)、14)とを備えている。
【0018】
<一対のプレート(12、13)、14>
この実施形態では、一対のプレート(12、13)、14は、それぞれ矩形の鋼板である。
図3から
図5に示すように、一対のプレート(12、13)、14の法線方向から見て、プレート14に対して、プレート12、13がそれぞれ対向するように配置されている。プレート12とプレート13は、同形状の長方形の鋼板であり、それぞれ向きを揃えて平行に配置されている。プレート14は、長手方向片側がプレート12とプレート13の間に配置され、反対側がプレート12とプレート13からはみ出るように配置されている。
【0019】
プレート14の片側は、プレート12とプレート13が重なった領域に対して重なっているが、プレート14の反対側は当該領域からはみ出ている。また、プレート12とプレート13の両側は、それぞれプレート14が重なった領域からはみ出ている。プレート12とプレート13の両側部には、プレート14が重なった領域からはみ出た部位に、ボルトを挿通するための挿通孔17が形成されている。また、プレート12およびプレート13と重なった領域からはみ出た、プレート14の一端には、プレート14に直交するようにフランジ15が設けられている。この実施形態では、フランジ15は、プレート14の一端に溶接されている。当該フランジ15には、ボルトを挿通するための挿通孔15aが形成されている。
【0020】
<粘弾性体18a、18b>
粘弾性体18a、18bは、例えば、高減衰性を有する粘弾性ゴム(制震ゴム)で構成されている。この実施形態では、粘弾性体18a、18bは、それぞれ矩形の平板状に成形されている。粘弾性体18a、18bは、プレート(12、13)、14の法線方向から見て、プレート(12、13)、14が重なった四角形の領域内にそれぞれ配置されている。ここで、粘弾性体18aは、プレート14とプレート12との間に配置されており、プレート14とプレート12とにそれぞれ接着されている。粘弾性体18bはプレート14とプレート13との間に配置されており、プレート14とプレート13とにそれぞれ接着されている。ここで、粘弾性体18a、18bと、プレート(12、13)、14とは、それぞれ加硫接着によって接着されている。
【0021】
なお、粘弾性体18a、18bとして用いられる高減衰性を有する粘弾性ゴム(制震ゴム)には、例えば、天然ゴム,スチレンブタジエンゴム(SBR),ニトリルブタジエンゴム(NBR),ブタジエンゴム素材(BR),イソプレンゴム(IR),ブチルゴム(IIR),ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR),クロロプレンゴム(CR)のゴム素材に、高減衰性を発揮する添加剤を加えて生成された高減衰性ゴム組成物を用いることができる。高減衰性を発揮する添加剤としては、例えば、カーボンブラックなど、種々の添加剤が知られている。
【0022】
図6に示すように、プレート12およびプレート13に対して、プレート14を平行に移動して、粘弾性体18a、18bにせん断変形を生じさせる。このとき、粘弾性体18a、18bに生じたせん断変位と、せん断荷重との関係から
図7に示すようなヒステリシスループA(実測ヒステリシス曲線)が描かれる。
図7中、横軸はせん断方向の変位を示し、縦軸はその際のせん断荷重を示している。かかるヒステリシスループAによれば、せん断変位の増加につれてせん断荷重が高くなり、粘弾性体18a、18bの抵抗力が大きくなることが分かる。この粘弾性体18a、18bは、せん断変形を伴う振動を受けると、一周期毎に、当該ヒステリシスループAで囲まれたエネルギに相当するエネルギを吸収し得る。
【0023】
この制震ユニット10は、上述したように、制震部材として機能する粘弾性体18a、18bと、粘弾性体18a、18bに相対的な変位が入力される一対の取付部として機能する一対のプレート(12、13)、14とを備えている。ここで、一対の取付部として機能する部位は、具体的には、プレート(12、13)に形成された挿通孔17と、プレート14に形成された挿通孔15aとも言える。プレート12とプレート13の両側部に形成された挿通孔17に上側伝達部材20が連結され、プレート14のフランジ15に形成された挿通孔15aに下側伝達部材30が連結される。これにより、上側伝達部材20と下側伝達部材30とを通じて、建物200の天井梁50と土台60に生じた相対的なせん断変位が一対のプレート(12、13)、14に伝達される。そして、一対のプレート(12、13)、14に伝達されたせん断変位に相当するせん断変位が、制震部材としての粘弾性体18a、18bに入力される。
【0024】
次に、上側伝達部材20と下側伝達部材30を説明する。上側伝達部材20と下側伝達部材30は、建物200に生じたせん断変位を制震ユニット10に伝達する部材である。
【0025】
<上側伝達部材20>
上側伝達部材20は、
図2に示すように、上梁側固定部20Aと、第1ユニット側固定部20Bとを備えている。上梁側固定部20Aは、建物200の天井梁50に固定される部位である。第1ユニット側固定部20Bは、制震ユニット10の一対の取付部のうち一方の取付部に固定される部位である。この実施形態では、上側伝達部材20は、制震ユニット10の対向する一対のプレート(12、13)、14のうち、一方のプレート(12、13)と、天井梁50とに接続される部材である。上側伝達部材20は、
図2に示すように、上梁側固定部20Aとして機能するベース22と、第1ユニット側固定部20Bとして機能する取付片24a、24bとを備えている。ベース22は、天井梁50の下面に沿って配置される鋼板部材である。ベース22には、ボルト挿通孔22aが貫通して形成されている。ベース22は、ボルト挿通孔22aにボルト52を挿通して天井梁50に取り付けられる。
【0026】
2つの取付片24a、24bは、ベース22に溶接されており、ベース22から下側に延びる片材である。2つの取付片24a、24bは、上述した制震ユニット10のプレート12、13の間(
図4参照)に嵌り、かつ、所要の剛性を備えている。2つの取付片24a、24bは、
図2に示すように、プレート12、13の間に配置されている制震ユニット10のプレート14に対して、それぞれ所要の間隔をあけて、プレート12、13の両側部に配置されている。この実施形態では、プレート12、13は、上側伝達部材20の2つの取付片24a、24bに、ボルトナット17aで固定されている。かかる2つの取付片24a、24bによって、制震ユニット10のプレート12、13の間隔が保たれる。さらに、プレート14と2つの取付片24a、24bとの間には、プレート14が予め定められた振幅で揺動できるように所要の空隙がある。
【0027】
<下側伝達部材30>
下側伝達部材30は、下梁側固定部30Aと、第2ユニット側固定部30Bとを備えている。下梁側固定部30Aは、建物200の土台60に固定される部位である。第2ユニット側固定部30Bは、制震ユニット10の一対の取付部のうち他方の取付部に固定される部位である。この実施形態では、下側伝達部材30は、制震ユニット10の対向する一対のプレート(12、13)、14のうち他方のプレート14と、土台60とに接続された部材である。この実施形態では、下側伝達部材30は、
図1および
図2に示すように、第2ユニット側固定部30Bとして機能するフランジ38が設けられた2本のブレース32a、32bと、下梁側固定部30Aとして機能する基部34とを備えている。フランジ38は、2本のブレース32a、32bの一端に設けられている。下側伝達部材30のフランジ38は、制震ユニット10のプレート14の一端に設けられたフランジ15に面を合わせて当接させて、ボルトナット38aによって締結している。フランジ38には、2本のブレース32a、32bを取り付けるための取付片39が、フランジ38から立ち上がった状態(
図2では、フランジ38から下側に延在した状態)で溶接されている。
【0028】
<ブレース32a、32b>
2本のブレース32a、32bは、プレート14に接続された部位から、互いの間隔が徐々に拡がるように延在している。この実施形態では、2本のブレース32a、32bは、プレート14に接続されるフランジ38から立ち上がった取付片39に溶接されている。2本のブレース32a、32bは、フランジ38から互いの間隔が徐々に拡がるように延在している。
【0029】
図8および
図9は、2本のブレース32a、32bの上側の基端部32cと、フランジ38に設けられた一対の取付片39、39との取り付け構造を示している。ここで、
図8は、
図2のVIII−VIII断面矢視図である。また、
図9は、2本のブレース32a、32bの基端部32cを示す、下側伝達部材30の左側面図である。この実施形態では、
図8および
図9に示すように、2本のブレース32a、32bの基端部32cを挟んで対向するように一対の取付片39、39が、フランジ38に設けられている。2本のブレース32a、32bの基端部32cは、当該一対の取付片39、39にそれぞれ取り付けられている。
【0030】
また、フランジ38と、フランジ38に直交するように設けられたプレート14とは溶接されている。また、フランジ38と、一対の取付片39、39とは、溶接されている。さらに、一対の取付片39、39と、2本のブレース32a、32bの基端部32cとは、それぞれ溶接されている。
【0031】
また、2本のブレース32a、32bは、
図8に示すように、横断面が矩形の角柱材である。2本のブレース32a、32bの基端部32cは、フランジ38に設けられた一対の取付片39、39に挟まれている。この際、
図8および
図9に示すように、矩形の角柱材からなる2本のブレース32a、32bのうち、横断面において対向する一対の側面a、bが、フランジ38に設けられた一対の取付片39、39にそれぞれ当接している。そして、2本のブレース32a、32bの基端部32cと、一対の取付片39、39とは、2本のブレース32a、32bの側周面の角部c1〜c4に沿って溶接されている。
【0032】
さらに、この実施形態では、2本のブレース32a、32bの側面と一対の取付片39、39の縁d1、d2とが重なった部位は、一対の取付片39、39の縁d1、d2に沿って溶接されている。これにより、2本のブレース32a、32bと、一対の取付片39、39とが強固に溶接されている。
【0033】
<基部34(下梁側固定部30A)>
基部34は、
図1に示すように、下側伝達部材30の下梁側固定部30Aとして機能する。この実施形態では、基部34は、土台60の長手方向に沿って土台60の上に配置される部位であり、長尺の部材である。基部34は、2本のブレース32a、32bの先端(図示した例では下端)33a、33bに架け渡され、当該2本のブレースの両方に取り付けられている。この実施形態では、基部34は、
図1に示すように、底板部34aと、側板部34b、34bとを備えている。
【0034】
底板部34aは、土台60の長手方向に沿って土台60の上に配置される長尺の平板状の部位である。底板部34aは、ブレース32a、32bの先端33a、33bに対向している。側板部34b、34bは、底板部34aの幅方向の両側から互いに対向するようにそれぞれ立ち上がっている。基部34は、底板部34aと側板部34bで構成されており、上部と長さ方向の両端部は開口している。底板部34aの幅方向の両側の側板部34b、34bには、2本のブレース32a、32bの先端が接合される箇所が高くなった溶接部位34c、34cが設けられている。溶接部位34c、34cは、2本のブレース32a、32bの先端に対応し、底板部34aの長手方向に2箇所に設けられている。
【0035】
<基部34とブレース32a、32bとの組み付け>
下側伝達部材30の2本のブレース32a、32bは、底板部34aの幅方向の両側から立ち上がった側板部34b、34bの間(壁の手前側と奥側に配置される側板部34b、34bの間)に入れ込まれて、当該側板部34b、34bに溶接されている。この実施形態では、
図1に示すように、2本のブレース32a、32bは、基部34の長手方向の両側の離れた位置にそれぞれ溶接されている。基部34の側板部34b、34bの溶接部位34c、34cは、各ブレース32a、32bに沿ってそれぞれ高くなっている。これにより、基部34と、各ブレース32a、32bとの溶接面積が増え、基部34と各ブレース32a、32bとが強固に固定されている。
【0036】
基部34の底板部34aは、土台60に固定される。底板部34aには、基部34を土台60に固定するための複数のビス孔が形成されており、複数のビス110、120によって、土台60に固定されている。
【0037】
<制震装置100の取り付け構造>
この制震装置100は、
図1に示すように、建物200の天井梁50と、土台60と、柱70a、70bとによって囲まれた矩形の枠組み204内に配置され、土台60と、天井梁50と、柱70a、70bに取り付けられている。
【0038】
この制震装置100は、例えば、上側伝達部材20を天井梁50に取り付け、下側伝達部材30を土台60に取り付ける。次に、上側伝達部材20と下側伝達部材30とに制震ユニット10を取り付ける。ここで、上側伝達部材20は、
図1に示すように、ボルト52によって天井梁50に取り付けられる。下側伝達部材30の基部34は、ビス110、120によって、土台60に取り付けられる。そして、制震ユニット10は、
図2に示すように、上側伝達部材20の一対の取付片24a、24bと、下側伝達部材30のフランジ38に取り付けられる。制震ユニット10と、上側伝達部材20の一対の取付片24a、24bおよび下側伝達部材30のフランジ38との取り付けは、既に説明したとおりである。
【0039】
図10(a)、(b)は、制震装置100が取り付けられた建物200について、天井梁50と土台60とが水平方向に相対的に変位した状態を示している。ここで、
図10(a)は、天井梁50が、土台60に対して右側に変位した状態を示しており、
図10(b)は、天井梁50が、土台60に対して左側に変位した状態を示している。なお、ここでは、間柱40は、除外した状態が図示されている。
【0040】
かかる建物200において、大きな地震時には、天井梁50と土台60とが水平方向に相対的な変位を伴って揺れる。このため、天井梁50に取り付けられた上側伝達部材20と、土台60に取り付けられた下側伝達部材30との間に相対的な変位が生じる。上側伝達部材20と、下側伝達部材30とが相対的に変位すると、制震ユニット10の対向するプレート(12、13)、14に相対的な変位が生じる。対向するプレート(12、13)、14に相対的な変位が生じると、
図6に示すように、粘弾性体18a、18bにせん断変形が生じる。大きな地震時には、天井梁50(上側伝達部材20)およびプレート(12、13)と、土台60(下側伝達部材30)およびプレート14とが水平方向に相対的な変位を伴って揺れる。この際、粘弾性体18a、18bに、繰返しせん断荷重が入力される。
【0041】
粘弾性体18a、18bは、
図7に示すように、せん断荷重に対して抵抗力を有するとともに、せん断変形を伴う振動を受けると、一周期毎に、当該ヒステリシスループAで囲まれたエネルギに相当するエネルギを吸収し得る。このため、この制震装置100は、地震時に建物200の揺れを小さく抑えるとともに、振動を早期に減衰させることができ、建物200に生じる損傷や被害の程度を小さくすることができる。
【0042】
《間柱40》
次に、間柱40を説明する。
【0043】
間柱40は、
図1に示すように、矩形の枠組み204において、一対の柱70a、70bの中間位置において、天井梁50と土台60に取り付けられる。この実施形態では、制震装置100の2本のブレース32a、32bの間に配置されている。そして、間柱40は、制震ユニット10(対向するプレート(12、13)、14および粘弾性体18a、18b)が設けられた部位を通るように上下方向に沿って延びている。
【0044】
図11は、建物200の矩形の枠組み204に取り付けられた間柱40の側面図であり、
図1のXI−XI縦断側面図である。
図12は、間柱40が制震ユニット10を横切る部位を拡大した側面図である。
図13は、間柱40を分解した側面図である。
【0045】
この実施形態では、間柱40は、
図1に示すように、制震装置100を上下に横切るように取り付けられている。
図11および
図12に示すように、間柱40は、制震装置100を上下に横切る部位に切り欠き41、42が形成されている。この実施形態では、切り欠き41は、制震ユニット10および上側伝達部材20を横切る部位に設けられている。つまり、かかる切り欠き41は、制震ユニット10(つまり、対向するプレート(12、13)、14および粘弾性体18a、18b)と、上側伝達部材20のベース22とが収められるように形成されている。
【0046】
図12に示すように、切り欠き41は、間柱40の片側の側面を切り欠いている。また、当該切り欠き41には蓋43が取り付けられている。蓋43は、切り欠かれた間柱40の前記一方の側部に沿って延びる板材である。ここでは、切り欠き41に連続して間柱40の側部には、蓋43の一端43aが嵌る凹部41aが形成されている。蓋43は、蓋43の一端43aをかかる凹部41aに嵌めて、切り欠き41が形成された間柱40の側部に沿って配置し、締結具、例えば、ビスによって間柱40に取り付けられる。ここで、凹部41aは、間柱40の切り欠き41に蓋43を取り付けた際に、間柱40の側面に段差が生じるのを防止する。
【0047】
また、この実施形態では、間柱40は、下側伝達部材30の基部34を横切っている。切り欠き42は、当該下側伝達部材30の基部34が横切る部位に形成されている。ここでは、間柱40の片側の側面(切り欠き41が形成されたのと同じ側の側面)が切り欠かかれている。また、当該切り欠き42には蓋44が取り付けられている。蓋44は、切り欠かれた間柱40の前記一方の側部に沿って延びる板材である。ここでは、切り欠き42に連続して間柱40の側部には、蓋44の一端44aが嵌る凹部42aが形成されている。蓋44は、蓋44の一端44aをかかる凹部42aに嵌めて、切り欠き42が形成された間柱40の側部に沿って配置し、締結具、例えば、ビスによって間柱40に取り付けられる。ここで、凹部42aは、間柱40の切り欠き42に蓋44を取り付けた際に、間柱40の側面に段差が生じるのを防止する。
【0048】
ここで、間柱40の側面には、壁材(図示省略)が取り付けられる。このため、間柱40の側面と蓋43、44の表面との段差は完全にないとよい。また、間柱40の側面と蓋43、44の表面とに段差が生じるとしても凡そ1.0mm以下、より好ましくは凡そ0.5mm以下であることが望ましい。
【0049】
このように、この実施形態では、制震ユニット10は、対向するプレート(12、13)、14と、対向するプレート(12、13)、14の間に配置され、各プレート(12、13)、14にそれぞれ接着された粘弾性体18a、18bとを備えている。ここでは、対向するプレート(12、13)、14のうち一方のプレート(12、13)が上側伝達部材20に接続されている。また、対向するプレート(12、13)、14のうち他方のプレート14が下側伝達部材30に接続されている。そして、上側伝達部材20と下側伝達部材30のうち少なくとも一方(ここでは、下側伝達部材30)は、プレート(12、13)、14に接続された部位から、対向するプレート(12、13)、14と平行な面に沿って延び、互いの間隔が左右に徐々に拡がるように延在した2本のブレース32a、32bを備えている。上側伝達部材20または下側伝達部材30に、このような2本のブレース32a、32bを備えた構造であれば、間柱40を切り欠く領域を小さくできる。このため、間柱40に所要の強度を確保しやすい。
【0050】
間柱40は、2本のブレース32a、32bの間に、対向するプレート(12、13)、14および粘弾性体18a、18bが設けられた部位を通るように上下方向に沿って延びている。切り欠き41は、対向するプレート(12、13)、14および粘弾性体18a、18bを横切る部位に形成されている。このように、間柱40は、制震ユニット10を横切る部位、さらに、上側伝達部材20および下側伝達部材30を横切る部位に、切り欠き41、42が取り付けられている。このような切り欠きを設けることで、制震装置100を取り付けた矩形の枠組み204に間柱40を取り付けることができる。また、間柱40に形成された切り欠き41、42には、蓋43、44が設けられているとよい。かかる蓋43、44を取り付けることによって、間柱40を切り欠いた部分に生じる隙間を小さくできる。また、間柱40の切り欠き41、42に蓋43、44を取り付けることによって、壁材を当該蓋43、44にビス止めすることができる。このため、壁材を間柱40に適切に取り付けることができる。
【0051】
また、建物200は、上述したように、土台60(下横軸材)と、土台60(下横軸材)に立てられた一対の柱70a、70b(縦軸材)と、一対の柱70a、70bに架け渡された天井梁50(上横軸材)とで囲まれた矩形の枠組み204を備えている。そして、矩形の枠組み204内に制震装置100が配置されている。ここで、天井梁50には、制震装置100の上側伝達部材20および間柱40の上端が取り付けられている。また、土台60には、下側伝達部材30および間柱40の下端が取り付けられている。ここで、間柱40の上端および間柱40の下端と、天井梁50と土台60との接合部には、それぞれ釘やビスを斜めに打ち込むとよい。
【0052】
また、矩形の枠組み204の厚さ方向において、間柱40の切り欠き41、42に蓋43、44が取り付けられた状態において、間柱40に蓋43、44が取り付けられた部位は、矩形の枠組み204の厚さ方向の幅(例えば、天井梁50の幅あるいは土台60の幅)に収まっているとよい。つまり、この実施形態では、制震ユニット10、上側伝達部材20および下側伝達部材30は、矩形の枠組み204の厚さ方向において、天井梁50および土台60よりも幅が十分に狭い。このため、切り欠き41、42を設けることによって、制震ユニット10、上側伝達部材20、下側伝達部材30を横切らせて間柱40を取付ることができる。
【0053】
例えば、矩形の枠組み204の厚さ方向において、制震ユニット10、上側伝達部材20、下側伝達部材30の幅は、天井梁50および土台60よりも、例えば、30mm以上、より好ましくは、40mm程度狭いとよい。これにより、間柱40に切り欠き41、42を設ける部位に、15mm以上、より好ましくは20mm程度の厚さの間柱40を残すことができ、さらに蓋43、44の厚さも15mm以上、より好ましくは20mm程度とすることができる。例えば、この実施形態では、矩形の枠組み204の厚さ方向において、柱70a、70b、および、間柱40の幅t1(
図13参照)は105mmである。間柱40は、切り欠き41、42を設ける部位は、当該矩形の枠組み204の厚さ方向において85mm程度の深さt2で切り欠いている。また、蓋43、44を取り付ける凹部41a、42aとして、20mm程度の段差t3を切り欠いている。そして、矩形の枠組み204の厚さ方向に、凡そ20mmの厚さt4の間柱40を残し、また、蓋43、44の厚さt5も凡そ20mmとしている。なお、切り欠き41、42の深さや凹部41a、42aの深さの程度は、上記に限定されない。
【0054】
また、この実施形態では、制震ユニット10および上側伝達部材20を収める切り欠き41は、長さs1が320mmであり、蓋43を嵌める凹部41aの長さs2は100mmである。また、蓋43の長さs3は420mmである。つまり、制震ユニット10および上側伝達部材20は、間柱40に形成された、長さ320mm、深さ85mmの切り欠き41(20mmの蓋43が取り付けられるので、実質的には深さが65mmの空間)に収められている。なお、この実施形態では、対向するプレート(12、13)、14のうち、プレート(12、13)の厚さは、凡そ6mmであり、プレート14の厚さは凡そ9mmであり、粘弾性体18a、18bの厚さは、凡そ19.5mmである。ここで、切り欠き41の深さや長さ、凹部41aの深さや長さ、および、切り欠き42の深さや長さ、凹部42aの深さや長さを例示した。これらは収められる制震ユニット10および上側伝達部材20、下側伝達部材30の基部34の形状や大きさに合わせて適宜に調整されうる。また、間柱40の切り欠き41には、制震ユニット10が配置された状態で若干の隙間が生じ得る。かかる隙間は、建築基準法で定められる準耐火構造に準じる防火性能を持つ構造として問題がない程度であれば、若干の隙間は許容される。
【0055】
つまり、この実施形態では、間柱40、天井梁50、土台60および柱70a、70bの幅は同じである。間柱40が、制震装置100を横切る部位、つまり間柱40に蓋43、44が取り付けられた部位についても、矩形の枠組み204の厚さ方向において、天井梁50、土台60および柱70a、70bと同じ幅になっている。したがって、かかる間柱40は、矩形の枠組み204の空間を適切に区切ることができる。このような間柱40を取り付けることによって、制震装置100が取り付けられた建物200は、建築基準法で定められる準耐火構造に準じる防火性能を持つ構造としてみなされるようになる。
【0056】
以上、本発明の一実施形態に係る制震装置100を説明した。制震装置100は、上述した実施形態に限定されない。
【0057】
例えば、上述した実施形態では、制震装置100は、建物200の1階に取り付けた例を例示したが、制震装置100は、建物200の2階以上の階に取り付けてもよい。また、上述した実施形態では、制震装置100は、制震ユニット10の粘弾性体18a、18bによって振動エネルギを吸収する形態を例示したが、制震ユニット10の構造は、上記に限定されない。また、間柱40に形成された切り欠き41、42に取り付けられる蓋43、44は、例えば、間柱40と同じ木材を用いるとよい。また、蓋43、44は、例えば、金物(例えば、鉄)にしてもよい。
【0058】
図14は、他の実施形態を示す。ここでは、下側伝達部材30の基部34は、左側のブレース32aの下端に設けられた基部34Aと、右側のブレース32bの下端に設けられた基部34Bに分かれており、間柱40の下端には、下側伝達部材30の基部が延びていない。このため、間柱40の下端に切り欠き(
図1の形態で形成されていた切り欠き42)は不要であり、この形態では、切り欠き42は形成されていない。このため、間柱40の取り付けは容易になる。また、この実施形態では、下側伝達部材30の左右の基部34A,34Bは、コンクリート基礎202に設けられたアンカーボルト106A、106Bに固定されている。このように、下側伝達部材30は、コンクリート基礎202に設けられたアンカーボルト106A、106Bに固定してもよい。
【0059】
以上のように、ここで提案される制震装置は、建物に生じた振動を小さく抑え、かつ、早期に減衰させる制震装置として好適である。また、建築基準法で定められる準耐火構造に準じる防火性能を持つ構造として、間柱を取り付けた制震壁構造(建物に生じた振動を小さく抑え、かつ、早期に減衰させる壁構造)を実現できる。なお、ここで提案される制震装置は、特に言及されない限りにおいて、上述された何れの実施形態およびその変形例にも限定されない。